(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043175
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】コミュニケーション装置
(51)【国際特許分類】
A47C 7/72 20060101AFI20240322BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240322BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20240322BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240322BHJP
H04R 3/02 20060101ALI20240322BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240322BHJP
G06F 3/048 20130101ALI20240322BHJP
【FI】
A47C7/72
H04R1/00 310G
H04R1/02 103E
H04R3/00 310
H04R3/02
G06F3/01 560
G06F3/048
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148210
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊治
(72)【発明者】
【氏名】田島 優輝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 翔太
(72)【発明者】
【氏名】今野 智明
(72)【発明者】
【氏名】小林 達也
【テーマコード(参考)】
3B084
5D017
5D220
5E555
【Fターム(参考)】
3B084JA02
3B084JA05
3B084JD06
5D017AA12
5D220AA34
5D220CC08
5E555AA61
5E555BA11
5E555BA13
5E555BB11
5E555BB13
5E555BC04
5E555BD06
5E555CA42
5E555CA47
5E555CB74
5E555DA21
5E555DB03
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】複数の人物が視覚、聴覚及び触覚を介して双方向で違和感の少ないコミュニケーションを図ることができるコミュニケーション装置を提供する。
【解決手段】各Sync Sofa1A,1Bは、カメラ、マイクロフォン、加速度センサ、スピーカ及び振動アクチュエータ並びに大型ディスプレイ10を備え、各Sync Sofa1A,1Bのユーザはコントロールシステムを介して視覚的、聴覚的及び触覚的に双方向でコミュニケーションを図ることができる。各Sync Sofa 1A,1Bはいずれも、座面及び背もたれを備えたソファ形状を有し、大型ディスプレイ10は座面の左右両側の少なくとも一方の側に座面側を指向するように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔コミュニケーションに供されるコミュニケーション装置において、
触覚情報の取得手段及び提示手段、聴覚情報の取得手段及び提示手段並びに視覚情報の取得手段及び提示手段のうち少なくとも視覚情報の取得手段及び提示手段を具備して椅子形状を有し、
前記視覚情報の提示手段が、前記椅子形状の一端側及び他端側の少なくとも一方に設けられたことを特徴とするコミュニケーション装置。
【請求項2】
前記各取得手段が提示した情報をネットワーク経由で他のコミュニケーション装置へ送信し、前記各提示手段は他のコミュニケーション装置の各取得手段が取得した情報をネットワーク経由で受信して提示することを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーション装置。
【請求項3】
前記他のコミュニケーション装置から受信した視覚情報と前記他のコミュニケーション装置へ送信した視覚情報との関係に基づいて前記ディスプレイに表示する映像を制御する提示位置制御手段を具備したことを特徴とする請求項2に記載のコミュニケーション装置。
【請求項4】
前記提示位置制御手段は、前記他のコミュニケーション装置から受信した視覚情報に基づいて推定した人物領域の位置情報に基づいて前記提示する聴覚情報を制御することを特徴とする請求項3に記載のコミュニケーション装置。
【請求項5】
前記提示位置制御手段は、前記他のコミュニケーション装置から受信した視覚情報に基づいて推定した人物領域の位置情報に基づいて前記提示する触覚情報を制御することを特徴とする請求項3または4に記載のコミュニケーション装置。
【請求項6】
受信した聴覚情報を提示するスピーカと各マイクロフォンとの距離に基づいて、送信する聴覚情報の取得に用いるマイクフォンを切り替える第1のループ抑止手段を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のコミュニケーション装置。
【請求項7】
受信した聴覚情報を提示するスピーカと各マイクロフォンとの距離及び当該受信した聴覚情報の周波数特性に基づいて、送信する聴覚情報の取得に用いるマイクフォンを切り替える第1のループ抑止手段を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のコミュニケーション装置。
【請求項8】
前記第1のループ抑止手段が、前記聴覚情報の提示を抑制する手段を更に具備したことを特徴とする請求項6に記載のコミュニケーション装置。
【請求項9】
前記第1のループ抑止手段が、前記聴覚情報の提示を抑制する手段を更に具備したことを特徴とする請求項7に記載のコミュニケーション装置。
【請求項10】
受信した触覚情報を提示する振動アクチュエータと各加速度センサとの距離に基づいて、送信する触覚情報の取得に用いる加速度センサを切り替える第2の抑止するループ抑止手段を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のコミュニケーション装置。
【請求項11】
受信した触覚情報を提示する振動アクチュエータと各加速度センサとの距離及び当該受信した触覚情報の周波数特性に基づいて、送信する触覚情報の取得に用いる加速度センサを切り替える第2の抑止するループ抑止手段を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のコミュニケーション装置。
【請求項12】
前記第2のループ抑止手段が、前記触覚情報の提示を抑制する手段を更に具備したことを特徴とする請求項10に記載のコミュニケーション装置。
【請求項13】
前記第2のループ抑止手段が、前記触覚情報の提示を抑制する手段を更に具備したことを特徴とする請求項11に記載のコミュニケーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の人物が視覚、聴覚及び触覚を介して双方向にコミュニケーションを図るコミュニケーション装置に係り、特に、ソファ型の双方向コミュニケーションシステムに好適なコミュニケーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、対人コミュニケーションを遠隔地間でオンラインにより実現する遠隔コミュニケーション装置やソフトウェアが広く利用されている。また、五感提示を伴う身体的コミュニケーション装置やソフトウェアの活用も進められている。
【0003】
非特許文献1には、視聴覚技術に加えて触覚技術を活用することにより、隣に腰掛ける、背中を撫でるといった全身を介した身体的コミュニケーションを遠隔地間でオンラインにより実現する、ソファ型の身体的コミュニケーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「触覚技術で離れていても気持ちがつながるソファ型コミュニケーションシステム「Sync Sofa」を開発」,KDDI総合研究所プレスリリース2021112501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術が開示する視聴触覚技術による身体的コミュケーション装置及び音響信号の調整プログラムは、単方向の五感提示を想定したもので、双方向の五感提示を望ましく実行することができない。
【0006】
具体的には、視覚情報、聴覚情報、触覚情報を含め、五感情報の取得及び提示を同時に実行する双方向の五感提示において、単方向の五感提示を互いに実行しても、取得と提示に係る装置及び各々の情報が物理的に干渉するためにハウリングが発生し、望ましい結果は得られないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、隣り合うコミュニケーション様式による視覚、聴覚及び触覚を介した双方向の遠隔コミュニケーションを実現できる身体的コミュニケーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、遠隔コミュニケーションに供されるコミュニケーション装置において、以下の構成を具備した点に特徴がある。
【0009】
(1) 触覚情報の取得手段及び提示手段、聴覚情報の取得手段及び提示手段並びに視覚情報の取得手段及び提示手段のうち少なくとも視覚情報の取得手段及び提示手段を具備して椅子形状を有し、前記視覚情報の提示手段を前記椅子形状の一端側及び他端側の少なくとも一方に設けた。
【0010】
(2) 各取得手段が提示した情報をネットワーク経由で他のコミュニケーション装置へ送信し、前記各提示手段は他のコミュニケーション装置の各取得手段が取得した情報をネットワーク経由で受信して提示するようにした。
【0011】
(3) 受信した聴覚情報を提示するスピーカと各マイクロフォンとの距離に基づいて、送信する聴覚情報の取得に用いるマイクフォンを切り替える第1のループ抑止手段を具備した。
【0012】
(4) 受信した聴覚情報を提示するスピーカと各マイクロフォンとの距離及び当該受信した聴覚情報の周波数特性に基づいて、送信する聴覚情報の取得に用いるマイクフォンを切り替える第1のループ抑止手段を具備した。
【0013】
(5) 前記第1のループ抑止手段が、聴覚情報の提示を抑制する手段を更に具備した。
【0014】
(6) 受信した触覚情報を提示する振動アクチュエータと各加速度センサとの距離に基づいて、送信する触覚情報の取得に用いる加速度センサを切り替える第2の抑止するループ抑止手段を具備した。
【0015】
(7) 受信した触覚情報を提示する振動アクチュエータと各加速度センサとの距離及び当該受信した触覚情報の周波数特性に基づいて、送信する触覚情報の取得に用いる加速度センサを切り替える第2の抑止するループ抑止手段を具備した。
【0016】
(8) 前記第2のループ抑止手段が、触覚情報の提示を抑制する手段を更に具備した。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隣り合うコミュニケーション様式による双方向の五感提示を伴った遠隔コミュニケーションを実現させることができる。
【0018】
本発明によれば更に、聴覚情報や触覚情報がコミュにケーション装置間でループすることで生じ得るハウリングを防止できるので、違和感の少ない高品質な双方向コミュニケーションを実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るソファ型コミュニケーションシステムを模式的に示した図である。
【
図2】Sync Sofaの主要部の構成を示した図である。
【
図3】一方のSync Sofaの大型ディスプレイに他方のSync Sofaのユーザが表示される例を示した図である。
【
図4】Sync Sofa間で双方向コミュニケーションを実現するコントロールシステムの構成を示した機能ブロック図である。
【
図5】3台以上のSync Sofaによる双方向コミュニケーションの例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るソファ型コミュニケーションシステム1を模式的に示した図であり、遠隔配置された一対の双方向コミュニケーションソファ(以下、Sync Sofaと表現する)1A,1Bをネットワークで接続して構成される。
【0021】
各Sync Sofa1A,1Bは、視覚情報取得手段としてのカメラ、聴覚情報取得手段としてのマイクロフォン、触覚情報取得手段としての加速度センサ、聴覚情報提示手段としてのスピーカ及び触覚情報提示手段としての振動アクチュエータ(
図1では、いずれも図示省略)並びに視覚情報提示手段としての大型ディスプレイ10を備え、各Sync Sofa1A,1Bのユーザはコントロールシステムを介して視覚的、聴覚的及び触覚的に双方向でコミュニケーションを図ることができる。
【0022】
各Sync Sofa 1A,1Bはいずれも、座面及び背もたれを備えたソファ形状を有し、大型ディスプレイ10は座面の左右両側の少なくとも一方の側に座面側を指向するように配置される。一方のSync Sofaにおける大型ディスプレイ10の配置位置は他方のSync Sofaに予め通知される。
【0023】
図2は、各Sync Sofa 1A,1Bの主要部の構成を示した図であり、ここでは各種のクッション部材や表面を覆う生地等が取り除かれている。Sync Sofaは、少なくとも一つの大型ディスプレイ10、複数のカメラ11、複数のマイクロフォン12、複数の加速度センサ13、複数のスピーカ14及び複数の振動アクチュエータ15を備え、更に各部を制御して双方向コミュニケーションを実現するコントロールシステムを具備する。
【0024】
前記カメラ11は、主に各Sync Sofaの座面に着座したユーザを撮影する。前記カメラ11は深度センサを備えていることが望ましいが必須ではない。前記マイク12は、主に各Sync Sofaの座面に着座したユーザの音声及び衣擦れ音などの所作音を検知する。本実施形態では、主に音声を検知する音声マイクと主に所作音を検知する所作音マイクとが別々に設けられている。
【0025】
前記加速度センサ13は、主に各Sync Sofaの座面に着座したユーザの挙動を検知する。前記加速度センサ13には振動センサなどのユーザの挙動を検知できる各種センサを用いることができる。本実施形態の説明では各種センサの総称を加速度センサ13とする。
【0026】
前記スピーカ14は、コミュニケーション相手のSync Sofaにおいて前記マイク12が検知した音声及び所作音を再生する。前記振動アクチュエータ15は、コミュニケーション相手のSync Sofaにおいて前記加速度センサ13が検知した振動を提示する。一方のSync Sofaにおいてカメラ11が撮影した映像は他方のSync Sofaにおいて大型ディスプレイ10に表示される。
【0027】
図3は、Sync Sofa 1Bの大型ディスプレイ10にSync Sofa 1Aのユーザが表示される例を示している。なお、Sync Sofa 1Aの大型ディスプレイ10にもSync Sofa 1Bのユーザが表示され、視覚情報に関する双方向のコミュニケーションが実現されている。
【0028】
本実施形態では、振動アクチュエータ15が座面8に4か所、背もたれ9に6か所の計10か所に設けられている。各振動アクチュエータ15は人の肩幅や臀部の幅を参考に、背部については左背部、右背部及び背部中央に、臀部については左臀部及び右臀部に、それぞれ接触するように配置されている。これは、人の背部及び臀部における触覚の各々の側部の知覚に働きかけるためである。
【0029】
振動アクチュエータ15は、直接人体に触れることはなく、厚さ2cm程度のクッション材と厚み1mm程度の頑丈な布地にカバーされており、提示される振動は、そのクッション材と布地を介して提示される。なお、一方のSync Sofaに対して提示される振動は、他方のSync Sofaの座面8及び背もたれ9に配置された加速度センサ13が検知した振動とマイクロフォン12が検知した所作音とを合成した信号である。
【0030】
図4は、Sync Sofa 1A,1B間で双方向コミュニケーションを実現するコントロールシステム20の構成を示した機能ブロック図である。
【0031】
コントロールシステム20は、前記大型ディスプレイ10、カメラ11、マイクロフォン12、加速度センサ13、スピーカ14,振動アクチュエータ15及び通信制御部16を制御する周知の制御機能に加えて、運動視差映像生成部201、提示位置制御部202及びハウリング抑止部203を備え、各Sync Sofa 1A,1Bは通信制御部16及びネットワークを介して相互に接続される。コントロールシステム20はSync Sofa毎に設けても良いし、クラウド上に設けて各Sync Sofaが共用できる構成としても良い。
【0032】
運動視差映像生成部201は、視点の異なる複数のカメラ映像および被写体人物の推定位置に基づいて運動視差映像を生成する。提示位置制御部202は、前記被写体人物の推定位置に基づいて聴覚情報や触覚情報を所定の位置に定位させる。ハウリング抑止部203は、第1ループ抑止部2031及び第2ループ抑止部2032を具備し、聴覚情報及び触覚情報のハウリングを抑止する。
【0033】
このようなコントロールシステム20は、CPU、ROM、RAM、バス、インタフェース等を備えた汎用のコンピュータやサーバに、以下に詳述する各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装することで構成できる。あるいはアプリケーションの一部をハードウェア化またはソフトウェア化した専用機や単能機としても構成できる。
【0034】
本実施形態では、実質的に同一構成のSync Sofa1A及びSync Sofa1Bがコントロールシステム20を介して協調動作することで双方向コミュニケーションが実現されるので、ここでは主にSync Sofa1A側の動作に着目して本実施形態の動作を説明する。また、説明を分かり易くするために、Sync Sofa1A側の各構成には添え字Aを付し、Sync Sofa1B側の各構成には添え字Bを付することで両者を区別する。
【0035】
Sync Sofa1Aの運動視差映像生成部201Aは、Sync Sofa1Bから受信した視覚情報をSync Sofa1AのユーザUAの運動視差を反映した映像に編集する。本実施形態では、3D空間上に配置した前景及び背景のポリゴンモデルを仮想カメラでレンダリングすることにより動視差映像が生成される。
【0036】
前景は、Sync Sofa1Bが送信した視覚情報から抽出した人物領域を1枚の矩形ポリゴンにマッピングしたユーザUBの人物オブジェクトである。背景は、隣り合う感覚や実在感を提供する観点から、ソファ、壁、床等を模したオブジェクトとすることが望ましい。前記人物オブジェクトは大型ディスプレイ10Aに等身大で表示されるように3D空間に配置される。
【0037】
前記仮想カメラの位置は、深度センサ付きカメラ11Aから得られるユーザUAの頭部の位置情報の追跡結果として取得できる。これにより、Sync Sofa1AのユーザUAは自身の運動視差を反映した状態で、Sync Sofa1BのユーザUBと互いに目が合うコミュニケーションを実現できる。なお、運動視差映像は複数のカメラを用いて同時撮影した前景映像を視点位置に応じて切り替える又は中間映像を合成することでも生成できる。
【0038】
提示位置制御部202Aは、Sync Sofa1Bから受信した音声及び所作音の各聴覚情報を所定の位置に定位させる。提示位置制御部202Aは更に、Sync Sofa1Bから受信した振動及び所作音の各触覚情報を所定の位置に定位させることもできる。
【0039】
聴覚情報に関して、本実施形態ではSync Sofa1Aの座面8の左右に4か所、背もたれ9の左右に2か所の計6か所にフルレンジのスピーカ14を備えている。各スピーカ14は音像を定位させるのに十分な距離で配置されている。
【0040】
本実施形態では、所作音として姿勢を変えた際にユーザの着衣とSync Sofa1の表面生地とが擦れる音、足を組み替えたりもじもじさせたりする際に発せられる摩擦音、及びユーザがSync Sofa1に座った際に発せられる衝突音等を想定している。各ユーザの所作音は当該ユーザの座面位置に定位させ、音声は大型ディスプレイ10が表示する各ユーザの口元に定位させる。
【0041】
触覚情報は聴覚情報に較べて周波数が低いものの、聴覚情報の場合と同様に各ユーザの位置に応じて触覚提示の提示位置を異ならせても良い。
【0042】
例えば、受信した視覚情報からユーザの手、背中、臀部などの動作を検出した場合、振動の提示位置を変更し、または動作に合わせて提示位置を連続的に変更することで動かしても良い。したがって、背中を撫ぜるような動きが視覚情報から検出されれば、その位置に対応する振動アクチュエータ15を選択的に駆動させる。
【0043】
ハウリング抑止部203Aは、双方向コミュニケーション時のハウリングを防止するために、聴覚情報のループを抑止する第1ループ抑止部2031A及び触覚情報のループを抑止する第2ループ抑止部2032Aを備える。
【0044】
Sync Sofa1Aにおける聴覚情報のハウリングは、Sync Sofa1Bから受信した所作音及び音声がスピーカ14Aから出力されてマイクロフォン12Aにより取得され、更にSync Sofa1Bへ送信されて提示されることで聴覚情報の伝達経路に不要なループが生じ、このループが発振することが原因となって生じる。
【0045】
ここで、聴覚情報のループの周波数はスピーカ14Aとマイクロフォン12Aとの距離やインパルス応答に依存することが知られている。したがって、前記提示位置制御部202Aが制御する聴覚情報の提示位置とマイクロフォン12Aの位置との距離が大きくなるようにしたり、あるいは聴覚情報の周波数特性に応じてマイクロフォン12Aを切り替えたりすることでループの発生を抑えられる。
【0046】
本実施形態では、Sync Sofa1Bから受信した所作音及び音声を定位させる位置(聴覚情報の提示位置)を前記第1ループ抑止部2031Aが監視し、当該定位させる位置と各マイクロフォン12Aとの距離に基づいて、所作音を取得するマイクロフォン12A及び音声を取得するマイクロフォン12Aを切り替えることができる。
【0047】
あるいは、聴覚情報の短時間フレーム内の周波数特性(例えば、高域、中域、低域)並びに前記所作音及び音声を定位させる位置と各マイクロフォン12Aとの距離に基づいて、例えば高域はマイクロフォン12A_1、中域はマイクロフォン12A_2、低域はマイクロフォン12A_3といったように、聴覚情報の周波数帯毎にループの発生しにくい位置のマイクロフォン12Aが選択されるようにしても良い。
【0048】
あるいは、聴覚情報の短時間フレーム内のパワーが設定した閾値を超えた場合、より具体的には短時間フレーム内の全周波数の平均パワーとある周波数のパワーとの比が、予め設定した閾値を超えた場合に鳴音が発生したと判断し、スピーカ14Aの出力を抑制するようにしても良い。
【0049】
Sync Sofa1Aにおける触覚情報のハウリングは、Sync Sofa1Bから受信した触覚情報が振動アクチュエータ15Aから出力されて加速度センサ13Aにより取得され、更にSync Sofa1Bへ送信されて提示されることで触覚情報の伝達経路に不要なループが生じ、このループが発振することが原因となって生じる。
【0050】
ここで、触覚情報のループの周波数は振動アクチュエータ15Aと加速度センサ13Aとの距離やインパルス応答に依存することが知られている。したがって、前記提示位置制御部202Aが制御する触覚情報の提示位置と加速度センサ13Aの位置との距離が大きくなるようにしたり、あるいは触覚情報の周波数特性に応じて加速度センサ13Aを切り替えたりすることでループの発生を抑えられる。
【0051】
本実施形態では、Sync Sofa1Bから受信した振動及び所作音を定位させる位置(触覚情報の提示位置)を前記第2ループ抑止部2032Aが監視し、当該定位させる位置と各加速度センサ13Aとの距離に基づいて、振動を取得する加速度センサ13Aを切り替えることができる。
【0052】
あるいは、触覚情報の短時間フレーム内の周波数特性(例えば、高域、中域、低域)並びに前記振動及び所作音を定位させる位置と各加速度センサ13Aとの距離に基づいて、例えば高域は加速度センサ13A_1、中域は加速度センサ13A_2、低域は加速度センサ13A_3といったように、触覚情報の周波数帯毎にループの発生しにくい位置の加速度センサ13Aが選択されるようにしても良い。
【0053】
あるいは、触覚情報の短時間フレーム内のパワーが設定した閾値を超えた場合、より具体的には短時間フレーム内の全周波数の平均パワーとある周波数のパワーとの比が、予め設定した閾値を超えた場合に鳴音が発生したと判断し、振動アクチュエータ15Aの出力を抑制するようにしても良い。
【0054】
なお、上記の実施形態では視覚情報、聴覚情報及び触覚情報を介して双方向にコミュニケーションを図るものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、少なくとも視覚情報を介して双方向にコミュニケーションを図るコミュニケーションシステムであれば同様に適用できる。
【0055】
また、上記の実施形態では本発明をソファ形状のSync Sofaへの適用を例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、ベンチや椅子のように少なくとも座面を有する構造体であれば同様に適用できる。また、背もたれを有することが望ましいものの本発明に必須の構成ではない。
【0056】
更に、上記の実施形態では大型ディスプレイ10を座面の左右両側の少なくとも一方に設けるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、座面が円形状の椅子やバランスボールのように左右の概念が無い椅子であれば、その着座部分を挟んで対向する一端側及び他端側の少なくとも一方に大型ディスプレイ10を設けることができる。
【0057】
更に、上記の実施形態では本発明を2台のSync Sofaによる双方向コミュニケーションを例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、
図5に示したように、3台以上のSync Sofaによる双方向コミュニケーションにも同様に適用できる。
【0058】
そして、上記の実施形態によれば、隣り合うコミュニケーション様式による視覚、聴覚及び触覚を介した双方向の遠隔コミュニケーションを実現できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、包括的で持続可能な産業化を推進する」や目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1…ソファ型コミュニケーションシステム,1A,1B,1C…Sync Sofa,8…座面,9…背もたれ,10…大型ディスプレイ,11…カメラ,12…マイクロフォン,13…加速度センサ,14…スピーカ,15…振動アクチュエータ,16…通信制御部,20…コントロールシステム,201…運動視差映像生成部,202…提示位置制御部,203…ハウリング抑止部