(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043186
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】光空間通信装置、光空間通信システム、及び、光空間通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20240322BHJP
H04B 10/073 20130101ALI20240322BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148227
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】鴨居 敦
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】相薗 正樹
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA26
5K102AH24
5K102AH27
5K102AL11
5K102AL23
5K102KA01
5K102KA39
5K102LA03
5K102LA26
5K102LA54
5K102PB11
5K102PH01
5K102PH31
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】可用性を向上させた光空間通信装置を実現する。
【解決手段】光空間通信装置(1)は、複数の送受光部(10)と、複数の送受光部(10)を介した通信を制御する通信制御部(20)と、を備え、通信制御部(20)は、複数の送受光部(10)のうちの2以上の送受光部(10)から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光空間通信装置であって、
複数の送受光手段と、
前記複数の送受光手段を介した通信を制御する通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる、
ことを特徴とする光空間通信装置。
【請求項2】
前記通信制御手段は、前記2以上の送受光手段の各々の通信方式を、通信容量、遅延時間または再送率に基づいて決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項3】
前記通信制御手段は、前記2以上の送受光手段の各々の通信方式を所定のタイミングで変更し、該変更を、該2以上の送受光手段とは異なる送受光手段を介して送信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項4】
前記通信制御手段は、前記互いに異なる通信方式のうちの或る通信方式によって何れか複数の送受光手段に前記同一の情報を送信させ、
前記通信制御手段は、前記何れか複数の送受光手段に対して、同一の信号を分配する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項5】
前記通信方式は、変調方式である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項6】
前記2以上の送受光手段は、誤り訂正を行う通信方式を用いた送受光手段と、遅延時間対策を行う通信方式を用いた送受光手段とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項7】
複数の光空間通信装置を含み、
前記複数の光空間通信装置のうち、少なくとも何れか複数の光空間通信装置は、
複数の送受光手段と、
前記複数の送受光手段を介した通信を制御する通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる、
ことを特徴とする光空間通信システム。
【請求項8】
光空間通信方法であって、
複数の送受光手段を介した通信を制御することを含み、
前記通信を制御することには、
前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させること、を含む、
ことを特徴とする光空間通信方法。
【請求項9】
コンピュータを請求項1から6の何れか1項に記載の光空間通信装置として動作させるためのプログラムであって、前記コンピュータを前記各手段として機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光空間通信装置、光空間通信システム、及び、光空間通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間多重伝送を実現した通信システムとして、例えば特許文献1のようなシステムが知られている。特許文献1のシステムは、送信装置が、第1の送信データを変調して第1の変調信号を生成する第1変調部と、第2の送信データを変調して第1の変調信号の周波数よりも低い周波数及び第1の変調信号の振幅よりも大きな振幅を有する第2の変調信号を生成する第2変調部と、第1変調部により生成された第1の変調信号と、第2変調部により生成された第2の変調信号とを加算して加算変調信号を生成する信号加算部と、信号加算部により生成された加算変調信号に基づいて前記複数の光源を発光させる発光制御部と、を備える。
【0003】
また、特許文献2には、同一データを多重経路で送信し、受信側に設けられた切替処理部にて、何れかの通信経路のデータを選択して受信データとして出力する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には送信機と受信機との間で光空間伝送される光合波信号を波長多重化させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-029871号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2006/095411
【特許文献3】特開2000-124860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光空間通信においては、通信環境の変動が通信に影響を及ぼす。通信環境とは、一例としては、霧あるいは雨等の天候がある。そのため、このような通信環境の変動による影響が少ない光空間通信技術の開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、通信環境の変動による影響が少なく、従前よりも可用性を高めた光空間通信技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光空間通信装置は、複数の送受光手段と、前記複数の送受光手段を介した通信を制御する通信制御手段と、を備え、前記通信制御手段は、前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる。
【0009】
本発明の一態様に係る光空間通信システムは、複数の光空間通信装置を含み、前記複数の光空間通信装置のうち、少なくとも何れか複数の光空間通信装置は、複数の送受光手段と、前記複数の送受光手段を介した通信を制御する通信制御手段と、を備え、前記通信制御手段は、前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる。
【0010】
本発明の一態様に係る光空間通信方法は、複数の送受光手段を介した通信を制御することを含み、前記通信を制御することには、前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させること、を含む。
【0011】
本発明の一態様は、コンピュータを前記光空間通信装置として動作させるためのプログラムを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、環境条件の変動による影響が少なく、従前よりも可用性を高めた光空間通信技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の例示的実施形態1に係る光空間通信装置を具備する光空間通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の例示的実施形態1に係る光空間通信方法の処理フローを説明する図である。
【
図3】本発明の例示的実施形態2に係る光空間通信装置を具備する光空間通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の例示的実施形態2に係る光空間通信装置に具備される送受光部の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の例示的実施形態2に係る光空間通信装置の通信制御部の構成を示す図である。
【
図6】本発明の例示的実施形態2に係る光空間通信方法の処理フローを説明する図である。
【
図7】本発明の各例示的実施形態に係る光空間通信装置の一実現例であるコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0015】
(光空間通信システムの構成)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置を含む光空間通信システムの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、光空間通信システム400の構成を示すブロック図である。光空間通信システム400は、複数の光空間通信装置1、101を含み、複数ビームの同時接続による空間多重伝送を実現している。
図1では、二つの光空間通信装置1、101を例示しているが、この数には限らない。なお、以下では、一つの光空間通信装置1を中心として説明し、もう一つの光空間通信装置101は、光空間通信装置1の通信相手となる光空間通信装置として説明するが、これら光空間通信装置1、101は同一の構成とすることができる。
【0016】
(光空間通信装置の構成)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置1は、
図1に示すように、複数の送受光部10-1~10-nと、通信制御部20とを備える。複数の送受光部10-1~10-n、通信制御部20は、特許請求の範囲における送受光手段、通信制御手段の一実現例である。
【0017】
(送受光部10-1~10-n)
複数の送受光部10-1~10-nは、それぞれ、光通信媒体の送信(送光)と、光通信媒体の受信(受光)とが可能な構成となっている。複数の送受光部10-1~10-nそれぞれから送信される光通信媒体は、通信相手の光空間通信装置101の複数の送受光部130-1~130-nそれぞれによって受光される。反対に、通信相手の光空間通信装置101の複数の送受光部130-1~130-nそれぞれから送信される光通信媒体は、光空間通信装置1の複数の送受光部10-1~10-nそれぞれによって受光される。
【0018】
送受信される光通信媒体は、有指向性の光通信媒体であり、具体例は、例示的実施形態を限定するものではないが、概ね10GHz以上の周波数を有する高周波数領域の電磁波を例に挙げることができる。当該周波数領域の電磁波には、ミリ波、サブミリ波、赤外光、可視光、紫外光等が含まれ得る。
【0019】
送受光部10-1~10-nは、一例として、上記周波数領域の電磁波を所定の角度範囲内に向き付けて送出することによって、上述した有指向性の光通信媒体として通信に用いる。ここで、送受光部10-1~10-nが上記周波数領域の電磁波を向き付けるための具体的構成は本例示的実施形態を限定するものではないが、一例として、送受光部10-1~10-nは、
・ミリ波やサブミリ波を所定の角度範囲内に向き付けて送出するビームフォーミングアンテナ
・赤外光、可視光、又は紫外光をコリメートするコリメータ
・赤外光、可視光、又は紫外光のレーザーを生成するレーザー発振器
・液晶の位相を変更することによりレーザーを変調する変調器
などを備える構成とすることができる。
【0020】
送受光部10-1~10-nが光通信媒体である上記周波数領域の電磁波を向き付けて送出することによって、当該光通信媒体のエネルギー密度が上昇するので、当該光通信媒体を用いてより遠方の通信相手と通信することができる。
【0021】
(通信制御部20)
通信制御部20は、複数の送受光部10-1~10-nを介した通信を制御する。具体的には、通信制御部20は、複数の送受光部10-1~10-nのうちの2以上の送受光部から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる。2以上の送受光部は、一例では、送受光部10-1と送受光部10-2とすることができるが、これに限らない。
【0022】
通信制御部20は、送受光部10-1および送受光部10-2から互いに異なる通信方式で上述の情報を送信させる。通信制御部20は、一例として、伝送容量の大きさが互いに異なる通信方式を採用することができる。伝送容量が高い通信方式の場合、一例として、誤り訂正が無い通信方式である。一方で、伝送容量が小さい通信方式の場合、一例として、誤り訂正があり、再送し易い(通信が途切れにくい)通信方式である。このような二種類の通信方式によって、同一の情報を並行して送信することにより、一方の通信方式による送信が通信環境の影響で不良となった場合であっても、同じ環境下において他方の通信方式による送信を完了させることができる。
【0023】
以上のように、本例示的実施形態に係る光空間通信装置1、および光空間通信装置1を含む光空間通信システム400においては、複数の送受光部と、前記複数の送受光部を介した通信を制御する通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる構成が採用されている。このため、本例示的実施形態によれば、環境条件が変動した場合であっても変動した後の環境条件に適した通信方式での情報の送信が行われる。このことから、光空間通信装置1、および光空間通信装置1を含む光空間通信システム400は、可用性が高いと言える。
【0024】
(光空間通信方法の流れ)
本例示的実施形態に係る光空間通信方法S1の流れについて、
図2を参照して説明する。
図2は、光空間通信方法S1の流れを示すフロー図である。
【0025】
図2に示すように、光空間通信方法S1は、複数の送受光部を介した通信を制御する通信制御工程(S10)を含む。この通信制御工程(S10)では、複数の送受光部のうちの2以上の送受光部から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させることが含まれる。
【0026】
すなわち、ステップS10においては、通信制御部20が、2つ以上の送受光部(送受光部10-1,10-2)から送信させる情報を調整して、当該2つ以上の送受光部(送受光部10-1,10-2)のそれぞれから、当該情報を異なる通信方式によって並行して送信するよう制御する。
【0027】
以上のように、本例示的実施形態に係る光空間通信方法S1においては、通信環境が変動した場合であっても変動した後の通信環境に適した通信方式での情報の送信が行われる。このことから、光空間通信方法S1は、可用性が高い光空間通信方法であると言える。
【0028】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0029】
(光空間通信システムの構成)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置を含む光空間通信システムの構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、光空間通信システム400の構成を示すブロック図である。光空間通信システム400は、複数の送受光部10-1~10-nを含む第1の光空間通信装置1と、該複数の送受光部10-1~10-nに対応する複数の送受光部130-1~130-nを含む第2の光空間通信装置101とを含んだ、空間多重伝送を実現するシステムである。なお、
図3では、第1、第2の光空間通信装置1、101を例示しているが、光空間通信装置の数にはこれに限らない。なお、以下では、第1の光空間通信装置1を中心として説明し、第2の光空間通信装置101は、第1の光空間通信装置1の通信相手として説明する。なお、これら光空間通信装置1、101は同一の構成とすることができる。
【0030】
(第1の光空間通信装置1)
本例示的実施形態に係る第1の光空間通信装置1は、
図3に示すように、複数の送受光部10-1~10-nと、通信制御部20とを備える。複数の送受光部10-1~10-n、通信制御部20は、特許請求の範囲における送受光手段、通信制御手段の一実現例である。
【0031】
(送光部10-1~10-n)
複数の送受光部10-1~10-nのそれぞれから送受信される光通信媒体は、上述で説明したためここでの説明は省略する。
【0032】
各送受光部10-1~10-nは、光空間通信に用いることができる周知の送受光部を採用できるが、一例では、
図4に示す構成の送受光部を用いる。
図4では、光通信媒体を送信する送信部10tと、光通信媒体を受信する受信部10rとが別構成である態様を示す。送信部10tは、電気-光変換部10taからの信号を受けてレーザー光源10tbから発せられたレーザー光(光通信媒体)が、コリメータレンズ10tcを介して外部に送信される構成となっている。一方の受信部10rは、外部からのレーザー光をレンズ10raによって集光した後に受光素子10rbにて受光し、電気-光変換部10rcによって電気信号に変換される構成となっている。
【0033】
(通信制御部20)
図3に示す通信制御部20については、上述の例示的実施形態1において説明した通信制御部20と同等の機能を有するものを採用できるが、以下に、
図5を用いて、本例示的実施形態における光空間通信装置1に具備される通信制御部20の構成を説明する。
【0034】
図5は、通信制御部20の構成を示すブロック図である。通信制御部20は、取得部21と、通信方式決定部22と、送受光制御部23とを備える。
【0035】
取得部21は、通信環境の情報を取得する。通信環境の情報は、一例として、ノイズがある。ノイズは、通信環境が良い場合に小さい。取得部21は、ノイズを周知の方法により取得することが可能である。
【0036】
取得部21は、ノイズを取得する態様に限らない。通信環境の情報を取得することができる周知の方法を採用できる。
【0037】
ここで、通信環境は、一例として、天候あるいは時間帯がある。天候に関して、通信環境が良い場合とは快晴である場合があるが、快晴に限らない。また、時間帯に関して、通信境が良い場合とは、一例として、夜間(特には深夜帯)がある。
【0038】
通信方式決定部22は、取得部21が取得した通信環境の情報(以下、環境情報と称する場合がある)に基づいて、2つ以上の送受光部(一例として送受光部10-1および送受光部10-2)のそれぞれの通信方式を決定する。一例として、通信方式決定部22は、送受光部10-1および送受光部10-2各々の通信方式を、通信容量、遅延時間または再送率に基づいて決定することができる。通信方式は、一例として、変調方式である。しかし、これに限らず、2つ以上の送受光部は、1つの送受光部が誤り訂正を行う通信方式を用いた送受光部であり、他の1つの送受光部が、遅延時間対策を行う通信方式を用いた送受光部であってもよい。
【0039】
通信方式決定部22は、取得部21が取得した情報がノイズが無いことを示す情報、あるいはノイズが無いに等しいことを示す情報である場合には、伝送容量の高い通信方式を採用する。伝送容量の高い通信方式とは、誤り訂正の無い方式であり、例えば、多値変調あるいは位相変調がある。一方、通信方式決定部22は、取得部21が取得した情報がノイズが有ることを示す情報である場合には、誤り訂正があり、再送し易い通信方式を採用する。この場合、伝送容量は小さくなるが、通信が途切れ難い。通信方式決定部22は、一例として、過去の通信環境(天気)と通信方式とが対応付けられた過去データを参照して、通信方式を決定することができる。
【0040】
送受光制御部23は、2つ以上の送受光部(一例として送受光部10-1および送受光部10-2)から、通信方式決定部22が決定した通信方式によって、同一の情報を並行して送出させる。
【0041】
送受光制御部23による制御を受けた送受光部10-1および送受光部10-2から送出された同一の情報は、第2の光空間通信装置101の送受光部130-1~130-nの何れかに受光される。
【0042】
(第2の光空間通信装置101)
第2の光空間通信装置101は、第1の光空間通信装置1の複数の送受光部10-1~10-nに対応する複数の送受光部130-1~130-nを備える。また、第2の光空間通信装置101は、通信制御部120を備えている。
【0043】
(送受光部130-1~130-n)
送受光部130-1~130-nの構成は、送受光部10-1~10-nの構成と同一である。先述の送受光部10-1および送受光部10-2から送出された同一の情報は、送受光部130-1~130-nのうちの何れか送受光部によって受光される。通信環境によって、同一の情報を送出した送受光部10-1および送受光部10-2のうちの一方の送受光部(一例として送受光部10-1)の情報(光通信媒体)が、1つの送受光部(一例として送受光部130-1)によって受信される。あるいは、同一の情報を送出した送受光部10-1および送受光部10-2のそれぞれからの情報が、それぞれ異なる2つの送受光部(一例として、送受光部130-1および送受光部130-2)に受信される。
【0044】
(通信制御部120)
通信制御部120は、第1の光空間通信装置1に具備された通信制御部20と同じ構成である。すなわち、通信制御部120は、特許請求の範囲における通信制御手段の一実現例である。通信制御部120は、送受光部130の各構成を制御する。
【0045】
通信制御部120は、上述の2つ以上の送受光部(送受光部10-1および送受光部10-2)からの情報をどの送受光部130が受信したかを特定する。一例として、通信制御部20に具備された取得部21(
図5)が、送受光部130が受信した情報を取得することによって、送受光制御部23(
図5)において、受信した情報の通信方法を特定することができる。通信制御部120は、受信した情報の通信方式を、送受光部130の何れかによって第1の光空間通信装置1の送受光部10の何れかに通知する。この通知の通信方式は、先の通信方式と一致している。第1の光空間通信装置1の通信制御部20は、通知を受けた通信方式によって、各送受光部10から光空間通信を行う。
【0046】
ここで、2つ以上の送受光部(送受光部10-1および送受光部10-2)からの同一の情報が、2つ以上の送受光部(送受光部130-1および送受光部130-2)によって受信された場合には、通信品質がより良い方の通信方式が採用される。
【0047】
仮に、何れかの送受光部130によって受信できた場合であっても、受信品質が良好でない場合には、通信制御部120は、第1の光空間通信装置1の送受光部10の何れかに対して、送受光部130の何れかから通信方式の変更を指示する情報を送信させる。この場合、通信方式の変更の指示情報を受信した第1の光空間通信装置1の通信制御部20は、通信方式決定部22によって、先に決定した通信方式とは異なる通信方式のうち、先に取得部21が取得した環境情報に基づいて適切な通信方式が決定される。そして、上述の通信制御処理が繰り返される。
【0048】
(光空間通信装置の効果)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置(第1の光空間通信装置1および第2の光空間通信装置101)、およびこれら光空間通信装置を含む光空間通信システム400においては、複数の送受光部と、前記複数の送受光部を介した通信を制御する通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる構成が採用されている。このため、本例示的実施形態によれば、通信環境が変動した場合であっても変動した後の通信環境に適した通信方式での情報の送信が行われる。このことから、光空間通信装置1、および光空間通信装置1を含む光空間通信システム400は、可用性が高いと言える。
【0049】
また、本例示的実施形態に係る光空間通信装置(第1の光空間通信装置1および第2の光空間通信装置101)は、通信制御部20が、前記2以上の送受光部の各々の通信方式を、通信容量、遅延時間または再送率に基づいて決定する構成が採用されている。このため、本例示的実施形態によれば、最適な通信方式により通信を行うことが可能となる。
【0050】
(光空間通信方法の流れ)
本例示的実施形態に係る光空間通信方法S1の流れについて、
図6を参照して説明する。
図6は、本例示的実施形態に係る光空間通信システムによる光空間通信方法S1の流れを示すフロー図である。
【0051】
図6に示すように、光空間通信方法S1は、複数の送受光手段を介した通信を制御すること(通信制御工程、ステップS10)を含み、このステップS10は、ステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS14、ステップS15を含む。
【0052】
(ステップS11)
ステップS11では、通信制御部20の取得部21が、通信環境を取得する。取得の詳細については上述したためここでは説明を省略する。
【0053】
(ステップS12)
ステップS12では、通信制御部20の通信方式決定部22が、通信のために使用する通信方式を決定する。決定の詳細については上述したためここでは説明を省略する。
【0054】
(ステップS13)
ステップS13では、通信制御部20の通信方式決定部22が決定した通信方式によって、2つ以上の送受光部10-1、10-2から並行して同一の情報が送出される。
【0055】
(ステップS14)
ステップS14では、ステップS13の送信によって送出された情報に基づいて、第2の光空間通信装置101の通信制御部120と、第1の光空間通信装置1の通信制御部20とによって、通信方式を確定させる。これについては、上述の通信方式決定部22の説明において既に説明しているため説明は省略する。
【0056】
(ステップS15)
ステップS15では、ステップS14において確定した通信方式を用いて、複数の送受光部10-1~10-nと、複数の送受光部130-1~130-nとの間で通信が行われる(多重伝送)。
【0057】
(光空間通信方法の効果)
以上のように、本例示的実施形態に係る光空間通信方法においては、複数の送受光手段を介した通信を制御することを含み、前記通信を制御することには、複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させることを含む方法が採用されている。本方法によれば、通信環境が変動した場合であっても変動した後の通信環境に適した通信方式での情報の送信が行われる。このことから、光空間通信方法S1は、可用性が高い光空間通信方法であると言える。
【0058】
〔変形例1〕
上述の例示的実施形態は、決定した通信方式で光空間通信を行い、通信方式を変更しないことを基本的な態様としている。しかし、これに限定されず、決定した通信方式で光空間通信を行うが、或るタイミングで通信方式を変更してもよい。
【0059】
本変形例においては、複数の送受光部10-1~10-nのうちの、同一の情報を送信する2つ以上の送受光部(一例では送受光部10-1、10-2)とは異なる制御用の送受光部(一例では送受光部10-3)を使用して、変更する予定の通信方式と、変更するタイミングとを、第2の光空間通信装置の送受光部(一例では送受光部130-3)に通知する。ここで、変更する通信方式としては、変調方式は変更せず、誤り訂正率(符号化率)を変更する場合も含まれる。
【0060】
或るタイミングとは、天候が変動したときであってもよいし、時間(時刻)であってもよい。
【0061】
〔変形例2〕
上述の例示的実施形態では、異なる通信方式で同一の情報を並行して送信する送受光部は、1つの送受光部10-1と、1つの送受光部10-2とであるが、これに限定されず、或る通信方式で送信する送受光部が3つ(例えば送受光部10-1、10-3、10-5)あり、別の通信方式で送信する送受光部が3つ(例えば送受光部10-2、10-4、10-6)あってもよい。
【0062】
このように或る通信方式で送信する送受光部が複数ある態様において、該複数の送受光部のそれぞれに対して、通信制御部20が変調した同一の信号を分配するようにしてもよい。これにより、送受光部毎に通信制御部20が個々に変調した信号を提供する態様に比べ、装置の規模を縮小することができる。なお、変調は、電気信号を変調する態様であってもよく、光信号を変調する態様であってもよい。
【0063】
〔ソフトウェアによる実現例〕
光空間通信装置1、101の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0064】
後者の場合、光空間通信装置1、101は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を
図7に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを光空間通信装置1、101として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、光空間通信装置1、101の各機能が実現される。
【0065】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0066】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0067】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0068】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0070】
(付記1)
光空間通信装置であって、
複数の送受光手段と、
前記複数の送受光手段を介した通信を制御する通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる、
ことを特徴とする光空間通信装置。
【0071】
前記の構成によれば、通信環境が変動した場合であっても変動した後の通信環境に適した通信方式での情報の送信が行われる。したがって、従前よりも可用性の高い光空間通信装置を提供することができる。
【0072】
(付記2)
前記通信制御手段は、前記2以上の送受光手段の各々の通信方式を、通信容量、遅延時間または再送率に基づいて決定する、ことを特徴とする付記1に記載の光空間通信装置。
【0073】
前記の構成によれば、通信環境の変動に対応することができる。
【0074】
(付記3)
前記通信制御手段は、前記2以上の送受光手段の各々の通信方式を所定のタイミングで変更し、該変更を、該2以上の送受光手段とは異なる送受光手段を介して送信させる、ことを特徴とする付記1に記載の光空間通信装置。
【0075】
(付記4)
前記通信制御手段は、前記互いに異なる通信方式のうちの或る通信方式によって何れか複数の送受光手段に前記同一の情報を送信させ、
前記通信制御手段は、前記何れか複数の送受光手段に対して、同一の信号を分配する、ことを特徴とする付記1に記載の光空間通信装置。
【0076】
前記の構成によれば、同一の信号を分配するため、前記何れか複数の送受光手段のそれぞれに専用の通信制御手段が設けられている態様に比べて、装置規模を縮小することができる。
【0077】
(付記5)
前記通信方式は、変調方式である、ことを特徴とする付記1に記載の光空間通信装置。
【0078】
前記の構成によれば、異なる通信環境に対応することができる。
【0079】
(付記6)
前記2以上の送受光手段は、誤り訂正を行う通信方式を用いた送受光手段と、遅延時間対策を行う通信方式を用いた送受光手段とを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の光空間通信装置。
【0080】
(付記7)
複数の光空間通信装置を含み、
前記複数の光空間通信装置のうち、少なくとも何れか複数の光空間通信装置は、
複数の送受光手段と、
前記複数の送受光手段を介した通信を制御する通信制御手段と、を備え、
前記通信制御手段は、前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる、
ことを特徴とする光空間通信システム。
【0081】
前記の構成によれば、通信環境が変動した場合であっても変動した後の通信環境に適した通信方式での情報の送信が行われる。したがって、従前よりも可用性の高い光空間通信システムを提供することができる。
【0082】
(付記8)
光空間通信方法であって、
複数の送受光手段を介した通信を制御することを含み、
前記通信を制御することには、
前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させること、を含む、
ことを特徴とする光空間通信方法。
【0083】
前記の方法によれば、通信環境が変動した場合であっても変動した後の通信環境に適した通信方式での情報の送信が行われる。したがって、従前よりも可用性の高い光空間通信環境を提供することができる。
【0084】
(付記9)
コンピュータを付記1から6の何れか一に記載の光空間通信装置として動作させるためのプログラムであって、前記コンピュータを前記各手段として機能させる、ことを特徴とするプログラム。
【0085】
(付記10)
少なくとも1つのプロセッサを備えた光空間通信装置であって、
前記プロセッサは、
複数の送受光手段を介して通信を行う通信処理と、
前記通信を制御する通信制御処理と、を実行し、
前記通信制御処理では、
前記複数の送受光手段のうちの2以上の送受光手段から、同一の情報を、互いに異なる通信方式によって並行して送信させる処理を実行する光空間通信装置。
【0086】
なお、この光空間通信装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記各処理を前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 光空間通信装置(光空間通信装置)
10、10-1~10-n 送受光部(送受光手段)
20、120 通信制御部(通信制御手段)
21 取得部
22 通信方式決定部
23 送受信制御部
101 光空間通信装置(通信相手の光空間通信装置)
130、130-1~130-n 送受光部(通信相手の光空間通信装置の送受光手段)
400 光空間通信システム