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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043211
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】補正装置及び補正方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148269
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼宮 英泰
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC04
5E353EE51
5E353EE53
5E353EE88
5E353EE89
5E353GG01
5E353GG05
5E353GG21
5E353HH30
5E353HH51
5E353JJ02
5E353JJ25
5E353JJ48
5E353KK02
5E353KK03
5E353KK11
5E353QQ07
5E353QQ12
(57)【要約】
【課題】変形した被補正部材の曲線形状を推定する際に必要な点を仮想的に決定することができる補正装置及び補正方法を提供すること。
【解決手段】補正装置は、基準部材及び被補正部材の一方部材にそれぞれ付された第一マーク及び第二マークの位置を、基準部材及び被補正部材の他方部材に設けられた測定装置により測定して取得する取得部と、測定された第一マーク及び第二マークの位置を用いて、一方部材に仮想的に決定可能な第三マークの位置を算出し、第一マーク、第二マーク、及び第三マークの位置に基づいて、基準部材に対して変形した被補正部材の形状を推定する推定部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準部材及び被補正部材の一方部材にそれぞれ付された第一マーク及び第二マークの位置を、前記基準部材及び前記被補正部材の他方部材に設けられた測定装置により測定して取得する取得部と、
測定された前記第一マーク及び前記第二マークの位置を用いて、前記一方部材に仮想的に決定可能な第三マークの位置を算出し、前記第一マーク、前記第二マーク、及び前記第三マークの位置に基づいて、前記基準部材に対して変形した前記被補正部材の形状を推定する推定部と、
を備えた、補正装置。
【請求項2】
前記被補正部材は、一面側における熱膨張率と変形した第一方向にて前記一面側に対する背面側における熱膨張率とが異なり、
前記被補正部材の前記形状は、熱膨張率の差に起因して前記第一方向に沿って凸となる曲線形状である、請求項1に記載の補正装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記被補正部材が熱変形する前と、前記被補正部材が熱変形した後との各々において、前記測定装置によって前記第一マーク及び前記第二マークを測定して取得する、請求項1又は2に記載の補正装置。
【請求項4】
前記被補正部材は、両端位置が支持されており、
前記推定部は、前記被補正部材の前記両端位置の間において設定可能な対称軸について、前記第一マーク又は前記第二マークと線対称となる前記第三マークを算出する、請求項1又は2に記載の補正装置。
【請求項5】
前記被補正部材の変形に伴って移動した前記被補正部材の任意点を、前記任意点が移動する前に位置していた起点に一致するように補正するための補正量を算出する補正量算出部を備えた、請求項1又は2に記載の補正装置。
【請求項6】
前記補正量は、前記第一マークに対応する第一点、前記第二マークに対応する第二点及び前記第三マークに対応する第三点のそれぞれの前記起点から前記第一点、前記第二点及び前記第三点への各々の変化量を用いた二次曲線近似によって算出される、請求項5に記載の補正装置。
【請求項7】
前記補正量は、前記第一点、前記第二点及び前記第三点に対応する各々の前記変化量を用いて前記二次曲線近似を表す二次関数における3つの係数を決定し、決定した3つの前記係数を用いた前記二次関数に従って算出される、請求項6に記載の補正装置。
【請求項8】
前記補正量算出部は、所定条件が成立するごとに、前記補正量を算出する、請求項5に記載の補正装置。
【請求項9】
前記所定条件は、
前回前記補正量を算出してから所定時間が経過した場合、基板に部品を装着する部品装着機において生産した前記基板の枚数が所定枚数に達した場合、及び、前記部品装着機の内部温度が所定温度に達した場合のうちの少なくとも一つである、請求項8に記載の補正装置。
【請求項10】
前記取得部は、
基板に部品を装着する部品装着機に設けられて前記基板を撮像する基板カメラを前記測定装置として用い、
前記基板カメラによって前記基準部材を撮像した画像に基づいて、前記基準部材に付された前記第一マーク及び前記第二マークを測定して取得する、請求項1又は2に記載の補正装置。
【請求項11】
前記基準部材及び前記被補正部材は、
前記被補正部材が変形した第一方向に直交する第二方向に延伸すると共に、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に互いに離間して配置される、請求項1又は2に記載の補正装置。
【請求項12】
前記被補正部材は、
基板に部品を装着する部品装着機に設けられており、前記第二方向に相当する前記基板の搬送方向に沿って延設されて前記部品装着機の装着ヘッドを支持するYスライドである、請求項11に記載の補正装置。
【請求項13】
基準部材及び被補正部材の一方部材にそれぞれ付された第一マーク及び第二マークの位置を、前記基準部材及び前記被補正部材の他方部材に設けられた測定装置により測定して取得する取得工程と、
測定された前記第一マーク及び前記第二マークの位置を用いて、前記一方部材に仮想的に決定可能な第三マークの位置を算出し、前記第一マーク、前記第二マーク、及び前記第三マークの位置に基づいて、前記基準部材に対して変形した前記被補正部材の形状を推定する推定工程と、
前記被補正部材の変形に伴って移動した前記被補正部材の任意点を、前記任意点が移動する前に位置していた起点に一致するように補正するための補正量を算出する補正量算出工程と、
を備えた、補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、補正装置及び補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示された部品搭載装置が知られている。従来の部品搭載装置は、基準固定レール上に設定された3つの基準マークを、装着ヘッドと一体に軸状の被補正部材上を移動するCCDカメラによって撮像するようになっている。そして、従来の部品搭載装置においては、3つの基準マークを、製造組立時と、設置時との2回撮像し、それぞれの基準マークの位置変化の差分を被補正部材の反り量として算出し、座標補正を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-165564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の部品搭載装置では、基準固定レール上に予め設定された3つの基準マークを撮像し、撮像した3つの基準マークの各々の座標を用いて、反りが発生した被補正部材の反り量の算出を行う。この場合、CCDカメラを移動させることにより、反り量の算出に必要な、換言すれば、変形した被補正部材の曲線形状の把握に必要な3つの基準マークを撮像できる場合には、変形した被補正部材の曲線形状を把握することができて、反り量を算出することができる。しかしながら、CCDカメラを移動させても、設定されている3つの基準マークのうちの1つでも基準マークの撮像が困難である場合には、変形した被補正部材の曲線形状を把握すること、即ち、反り量を算出することが困難になる。
【0005】
本明細書は、変形した被補正部材の曲線形状を推定する際に必要な点を仮想的に決定することができる補正装置及び補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、基準部材及び被補正部材の一方部材にそれぞれ付された第一マーク及び第二マークの位置を、基準部材及び被補正部材の他方部材に設けられた測定装置により測定して取得する取得部と、測定された第一マーク及び第二マークの位置を用いて、一方部材に仮想的に決定可能な第三マークの位置を算出し、第一マーク、第二マーク、及び第三マークの位置に基づいて、基準部材に対して変形した被補正部材の形状を推定する推定部と、を備えた、補正装置を開示する。
【0007】
又、本明細書は、基準部材及び被補正部材の一方部材にそれぞれ付された第一マーク及び第二マークの位置を、基準部材及び被補正部材の他方部材に設けられた測定装置により測定して取得する取得工程と、測定された第一マーク及び第二マークの位置を用いて、一方部材に仮想的に決定可能な第三マークの位置を算出し、第一マーク、第二マーク、及び第三マークの位置に基づいて、基準部材に対して変形した被補正部材の形状を推定する推定工程と、被補正部材の変形に伴って移動した被補正部材の任意点を、任意点が移動する前に位置していた起点に一致するように補正するための補正量を算出する補正量算出工程と、を備えた、補正方法を開示する。
【0008】
本明細書では、出願当初の請求項4において、「請求項1又は2記載の補正装置」を「請求項1-3の何れか一項に記載の補正装置」に変更した技術的思想も開示されている。又、本明細書では、出願当初の請求項5において、「請求項1又は2記載の補正装置」を「請求項1-4の何れか一項に記載の補正装置」に変更した技術的思想も開示されている。又、本明細書では、出願当初の請求項10において、「請求項1又は2記載の補正装置」を「請求項1-9の何れか一項に記載の補正装置」に変更した技術的思想も開示されている。更に、本明細書では、出願当初の請求項11において、「請求項1又は2記載の補正装置」を「請求項1-10の何れか一項に記載の補正装置」に変更した技術的思想も開示されている。
【発明の効果】
【0009】
これらによれば、補正装置は、取得した第一マーク及び第二マークを用いて、変形した被補正部材の形状を推定する際に必要な点に対応する第三マークを仮想的に決定することができる。そして、補正装置は、推定された被補正部材の形状に基づいて、変形した被補正部材を変形する前の形状に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】部品装着機の構成例を示す平面図である。
図2】被補正部材の一例を示す斜視図である。
図3】被補正部材の変形(熱変形)を説明するための模式図である。
図4】補正装置の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
図5】変形前(熱変形前)の第一マーク及び第二マークを説明するための模式図である。
図6】変形後(熱変形後)の第一マーク及び第二マークを説明するための模式図である。
図7】被補正部材の変形(熱変形)の線対称を説明するための模式図である。
図8】第三マークの仮想的な決定を説明するための模式図である。
図9】被補正部材の形状の推定を説明するための模式図である。
図10】変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、補正装置及び補正方法について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、補正装置及び補正方法が、部品(例えば、電子部品等)を基板に装着する装着作業を実施する部品装着機に設けられている基板カメラを用いる場合を例示する。ここで、本実施形態の補正装置及び補正方法においては、基板Kを搬送するX軸方向とし、X軸方向に直交する方向をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向として説明する。そして、以下の説明において、「第一方向」はY軸方向に相当し、「第二方向」はX軸方向に相当し、「第三方向」はZ軸方向に相当するものとして説明する。
【0012】
1.部品装着機10の構成
部品装着機10の構成について、図1を参照して説明する。部品装着機10は、基板Kに複数の部品Bを装着する。このため、部品装着機10は、基板搬送装置11、部品供給装置12、部品移載装置13、部品カメラ14、測定装置としての基板カメラ15及び制御装置16を備えている。
【0013】
基板搬送装置11は、第一ガイドレール111及び第二ガイドレール112を備えている。第一ガイドレール111及び第二ガイドレール112は、X軸方向(第二方向)に延在し、且つ、Y軸方向(第一方向)にて互いに平行となるように図示を省略する基台に組み付けられている。ここで、第一ガイドレール111は、基台に対して固定されており、特に、Y軸方向(第一方向)への変形(熱変形を含む)が生じにくくなっている。一方、第二ガイドレール112は、例えば、搬送する基板Kの大きさ(幅の大きさ)に応じて、第一ガイドレール111に対してY軸方向(第一方向)に沿って接近可能又は離間可能になっている。
【0014】
従って、本実施形態においては、第一ガイドレール111を「基準部材」として説明する。そして、本実施形態においては、図1に示すように、「基準部材及び被補正部材の一方部材」としての基準部材である第一ガイドレール111に第一マークM1及び第二マークM2が付されている。
【0015】
又、基板搬送装置11は、第一ガイドレール111及び第二ガイドレール112に沿って、互いに離間して平行に配置された一対のコンベアベルトが設けられる。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kを載置した状態で輪転して、基板KをX軸方向(第二方向)に沿って搬送する。ここで、基板Kは、回路基板であり、例えば、電子回路、電気回路、磁気回路等が形成される。基板搬送装置11は、部品装着機10の機内に基板Kを搬入し、機内の所定位置に基板Kを位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による複数の部品Bの装着処理が終了した後に、基板Kを部品装着機10の機外に搬出する。
【0016】
部品供給装置12は、基板Kに装着される複数の部品Bを供給する。部品供給装置12は、基板Kの搬送方向(X軸方向)に沿って設けられる複数のフィーダ121を備えている。複数のフィーダ121の各々には、リールが装備されている。リールには、複数の部品Bが収納されているキャリアテープが巻回されている。フィーダ121は、キャリアテープをピッチ送りさせて、フィーダ121の先端側に位置する供給位置において部品Bを採取可能に供給する。尚、部品供給装置12は、チップ部品等に比べて比較的大型のリード部品をトレイ上に配置した状態で供給することもできる。
【0017】
部品移載装置13は、一対のY軸レール131、Yスライド132及びXスライド133を主として備えている。一対のY軸レール131は、Y軸方向(第一方向)に沿って延在して設けられている。被補正部材としての軸状のYスライド132は、X軸方向(第二方向)に相当する基板Kの搬送方向に沿って延設されて一対のY軸レール131に懸架されている。そして、Yスライド132は、一対のY軸レール131よって両端位置が支持されている。Yスライド132は、図示を省略する直動機構によって、Y軸方向(第一方向)に移動する。Xスライド133は、Yスライド132に懸架されている。Xスライド133は、図示を省略する直動機構によって、X軸方向(第二方向)に移動する。
【0018】
ここで、Yスライド132は、図2に示すように、断面形状が矩形であり、軽量化等を目的として、異なる材料から形成された第一スライド部材132A及び第二スライド部材132Bが互いに接着されて形成されている。第一スライド部材132Aは、例えば、金属材料(鉄材料、アルミニウム、アルミニウム合金等)から形成されている。第二スライド部材132Bは、例えば、カーボン材料、炭素繊維強化樹脂やアラミド樹脂強化繊維等を含む繊維強化樹脂等から形成されている。このため、第一スライド部材132Aと第二スライド部材132Bとでは、熱膨張率が異なる。例えば、カーボン材料等から形成される第二スライド部材132Bの熱膨張率は、鉄材料等から形成される第一スライド部材132Aの熱膨張率よりも小さい。
【0019】
そして、Yスライド132は、図1及び図2に示すように、Y軸方向(第一方向)に沿って一面側に第一スライド部材132Aが配置され且つ背面側に第二スライド部材132Bが配置される。このため、後述するように、Yスライド132は、部品装着機10の機内の温度変化、具体的には、温度上昇に応じて、第一スライド部材132Aの熱膨張に伴う熱変形の変形量が第二スライド部材132Bの熱膨張に伴う熱変形の変形量よりも大きくなる。その結果、Yスライド132は、生じた熱変形の変形量の差に起因して変形した形状、例えば、弓なりに湾曲して変形したY軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状になる傾向を有する(図3を参照)。尚、第一スライド部材132A及び第二スライド部材132Bは、それぞれ、一対のY軸レール131によって拘束された状態で、X軸方向(第二方向)にも膨張するように熱変形する。
【0020】
又、Yスライド132に懸架されたXスライド133には、クランプ部材によって装着ヘッド20が着脱可能(交換可能)に設けられている。即ち、Yスライド132は、Xスライド133を介して、装着ヘッド20を支持する。装着ヘッド20は、少なくとも一つの保持部材21を用いて、部品供給装置12によって供給された部品Bを採取して保持し、基板搬送装置11によって位置決めされた基板Kに部品Bを装着する。保持部材21は、例えば、吸着ノズルや、チャック等を用いることができる。尚、吸着ノズルは、鉛直方向即ちZ軸方向(第三方向)に沿って昇降可能とされており、負圧の供給によってフィーダ121の供給位置から部品Bを吸着して採取する吸着動作、及び、正圧の供給によって部品Bを基板Kに装着する装着動作を行う。
【0021】
部品カメラ14は、光軸がZ軸方向(第三方向)即ち鉛直方向において上向きになるように、例えば、部品装着機10の基台に固定された第一ガイドレール111に支持されている。このため、部品カメラ14は、吸着ノズル等の保持部材21に保持されている部品B等を鉛直方向にて下方から撮像することができる。
【0022】
測定装置としての基板カメラ15は、光軸がZ軸方向(第三方向)即ち鉛直方向において下向きになるように、「基準部材及び被補正部材の他方部材」としての被補正部材である部品移載装置13のYスライド132、より詳しくは、Yスライド132に懸架されたXスライド133に設けられている。このため、基板カメラ15は、Yスライド132及びXスライド133と共にY軸方向(第一方向)及びX軸方向(第二方向)に移動して、基板K及び基板Kに装着された部品B、並びに、第一ガイドレール111に付された第一マークM1及び第二マークM2を鉛直方向にて上方から撮像する。
【0023】
部品カメラ14及び基板カメラ15は、制御装置16から送出される制御信号に基づいて、撮像を行う。そして、部品カメラ14によって撮像された画像及び基板カメラ15によって撮像された後述する第一マークM1及び第二マークM2の画像を含む画像データGは、制御装置16に送信される。尚、部品カメラ14及び基板カメラ15は、CCDやCMOS等の撮像素子を有する公知のデジタル式の撮像機器を用いることができるため、その詳細な構造についての説明を省略する。
【0024】
制御装置16は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェース等を有するコンピュータ装置及び各種情報を記憶する記憶装置等を備えている。制御装置16は、部品装着機10に設けられている各種センサから出力される検出値や情報、或いは、部品カメラ14及び基板カメラ15から各種画像の画像データGが入力される。制御装置16は、制御プログラムを実行し、例えば、所定の装着条件として予め設定されている部品Bの指定装着位置及び指定装着角度等に応じて、或いは、入力した画像データGに基づいて、各装置に制御信号を送出する。
【0025】
例えば、制御装置16は、基板搬送装置11によって位置決めされた基板Kを基板カメラ15に撮像させる。そして、制御装置16は、基板カメラ15によって撮像された画像の画像データGを画像処理し、基板Kの位置決め状態を認識する。又、制御装置16は、部品供給装置12によって供給された部品Bを保持部材21に採取させて保持させ、保持されている部品Bを部品カメラ14に撮像させる。そして、制御装置16は、部品カメラ14によって撮像された画像の画像データGを画像処理し、部品Bの姿勢を認識する。
【0026】
制御装置16は、制御プログラムを実行し、基板Kに部品Bを装着する指定装着位置の上方に向かって保持部材21を移動させるために、部品移載装置13のYスライド132及びXスライド133を駆動させる。又、制御装置16は、基板Kの位置決め状態や部品Bの姿勢等に基づいて指定装着位置や指定装着角度を補正し、実際に部品Bを装着する装着位置及び装着角度を設定する。
【0027】
制御装置16は、装着位置及び装着角度に合わせて、保持部材21の目標位置(X軸座標及びY軸座標)と回転角度とを補正する。そして、制御装置16は、補正された目標位置において補正された回転角度で保持部材21を降下させ、基板Kに部品Bを装着する。制御装置16は、上述したようにピックアンドプレースサイクルを繰り返すことにより、基板Kに複数の部品Bを装着する装着処理を実行する。
【0028】
2.補正装置30の構成
部品装着機10の機内に配置されて部品Bのピックアンドプレースサイクルを繰り返す部品移載装置13のYスライド132は、機内の温度変化の影響を受け、温度上昇と共に膨張するように熱変形する場合がある。そして、熱膨張による熱変形が生じた場合には、Yスライド132に支持された吸着ノズル等の保持部材21の位置が、例えば、制御装置16による指令値に対して熱変形分だけ位置ずれが生じ得る。
【0029】
ところで、上述したように、本実施形態の部品装着機10における部品移載装置13のYスライド132は、例えば、軽量化を達成するために、金属材料等を主とする第一スライド部材132Aと、カーボン材料等を主とする第二スライド部材132Bとを用いて形成されている。即ち、Yスライド132は、熱膨張率の異なる材料から形成された第一スライド部材132Aと第二スライド部材132BとがY軸方向(第一方向)にて隣接して接着されて形成される。
【0030】
従って、本実施形態において例示するYスライド132においては、図3に示すように、部品装着機10の機内の温度変化に伴ってYスライド132の長手方向への熱変形に加え、熱膨張の差に起因したYスライド132の熱変形、具体的には、Y軸方向(第一方向)に沿って凸の曲線形状となる熱変形が生じる。尚、図3においては、理解を容易とするために、Yスライド132の熱変形(変形)を誇張して示している。
【0031】
この場合、図3に示すように、Yスライド132に懸架されたXスライド133を介して保持された保持部材21にもY軸方向(第一方向)に生じた弓なりの熱変形が影響しており、この状態において仮に周知の線形補正を行っても、正確な線形補正、換言すれば、保持部材21の装着位置を正確に補正できない虞がある。従って、従来から行われている周知の線形補正の精度を高めて、保持部材21の装着位置を正確に補正するためには、熱膨張に伴って弓なりに熱変形した後のYスライド132を熱変形する前の形状(例えば、直線状)に補正する必要がある。
【0032】
ここで、弓なりに熱変形したYスライド132を熱変形する前の直線状のYスライド132とみなせるように補正するためには、Yスライド132の曲線形状を推定する必要がある。この場合、一般には、二次曲線近似方法を用いることが有効である。
【0033】
しかしながら、曲線形状を推定するためには、上述した従来の部品搭載装置のように三点の測定(撮像)が必要になるものの、二点しか測定できない(撮像できない)場合には、二次曲線近似方法を用いて曲線形状を近似することができない。又、仮に三点の測定(撮像)ができる場合においては、例えば、三点の測定(撮像)に時間を要した場合には、線形補正によって保持部材の装着位置への位置ずれを速やかに補正することが難しい。
【0034】
そこで、本実施形態においては、補正装置30が、図4に示すように、取得部31と、推定部32とを備える。更に、本実施形態においては、補正装置30は、補正量算出部33を備える。これらにより、補正装置30は、基板カメラ15によって撮像された画像データGに基づいて測定された第一マークM1及び第二マークM2の二点を用いて、第三マークM3を仮想的に決定することができる。又、補正装置30は、測定された第一マークM1及び第二マークM2と、仮想的に決定した第三マークM3とを用いて、熱膨張の差に起因して熱変形したYスライド132の形状、より詳しくは、Y軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状を推定することができる。
【0035】
そして、補正装置30は、推定したYスライド132の曲線形状に基づいて、Y軸方向(第一方向)に沿って熱変形した後のYスライド132を熱変形する前のYスライド132とみなすための補正量Aを算出することができる。従って、補正装置30によれば、線形補正による補正の精度を高めることができ、その結果、保持部材21の装着位置を正確に補正することが可能となる。
【0036】
尚、取得部31、推定部32及び補正量算出部33は、種々の制御装置、管理装置、演算装置、画像処理装置等に設けることができる。例えば、取得部31、推定部32及び補正量算出部33の少なくとも一つは、部品装着機10の制御装置16に設けることができる。又、取得部31、推定部32及び補正量算出部33の少なくとも一つは、制御装置16と通信可能に接続される管理装置に設けることもできる。更に、取得部31、推定部32及び補正量算出部33の少なくとも一つは、クラウド上に形成することもできる。
【0037】
本実施形態においては、図1及び図4に示すように、取得部31、推定部32及び補正量算出部33が部品装着機10の制御装置16に設けられている。即ち、補正装置30は、部品装着機10に設けられている。
【0038】
2-1.取得部31
取得部31は、部品移載装置13の他方部材であるYスライド132、より詳しくは、Yスライド132に懸架されXスライド133に支持された基板カメラ15によって撮像された、一方部材である基板搬送装置11の第一ガイドレール111に付された第一マークM1及び第二マークM2の各々の画像データGを取得する。即ち、取得部31(制御装置16)は、部品移載装置13のYスライド132をY軸方向(第一方向)に移動させると共に、Xスライド133をX軸方向(第二方向)に移動させることによって基板カメラ15をX軸方向及びY軸方向に移動させる。
【0039】
そして、取得部31は、移動した基板カメラ15に基板搬送装置11の第一ガイドレール111に付された第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像させ、撮像した画像Gs(図5及び図6を参照)を表す画像データGを取得する。尚、画像データGには、Yスライド132及びXスライド133の位置情報(より詳しくは、基板カメラ15の位置情報)が紐付けられている。
【0040】
ここで、取得部31は、Yスライド132に熱膨張に伴う熱変形が生じる前、例えば、部品装着機10の稼働前に、基板カメラ15に第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像させて各々の画像データGを取得する。この場合、取得部31は、熱変形前のYスライド132に支持された基板カメラ15から、図5に示すように、画像データGによって表される画像Gsの中心位置、即ち、基板カメラ15の基準位置に第一マークM1及び第二マークM2の各々が一致するように撮像された画像データGを取得する。
【0041】
そして、取得部31は、Yスライド132に熱変形が生じ得る状況、例えば、後述する所定条件が成立する状況に応じて、基板カメラ15に第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像させて各々の画像データGを取得する。この場合、取得部31は、熱変形前に第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像した撮像位置にYスライド132(及びXスライド133)を移動させて、基板カメラ15に第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像させる。
【0042】
この場合、Yスライド132は、Y軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状に熱変形している(図3を参照)。従って、Yスライド132に支持された基板カメラ15が熱変形前と同一の撮像位置にて第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像しても、基板カメラ15の基準位置がYスライド132と共に熱変形前の位置から移動している。このため、画像Gsにおいては、図6に示すように、画像Gsの中心位置から第一マークM1及び第二マークM2の各々がずれて撮像される。そして、画像Gs上の第一マークM1及び第二マークM2の中心位置からの各々の位置ずれ、即ち、熱変形前から熱変形後に移動した移動量が、Yスライド132の熱変形に伴う変化量(絶対値)に対応する。
【0043】
具体的に、図3に示すように、Yスライド132がY軸方向(第一方向)に沿って図3の紙面下方に向けて凸となる曲線形状に熱変形した場合、基板カメラ15は、第一マークM1及び第二マークM2の各々に対して、相対的に接近する方向(図3において紙面下方)に移動することになる。即ち、図6に示すように、一点鎖線の交点に対応する画像Gsの中心位置(即ち、基板カメラ15の基準位置)は、Yスライド132の熱変形と共に図6にて下方向に移動することになる。この場合、画像Gsにおいては、図6において黒丸で示すように、第一マークM1及び第二マークM2の各々の位置は、画像Gsの中心位置よりも上に位置するようになる。
【0044】
他方、図示を省略するが、Yスライド132がY軸方向(第一方向)にて図3の紙面上方に向けて凸となる曲線形状に熱変形した場合、基板カメラ15は、第一マークM1及び第二マークM2の各々に対して、相対的に離間する方向(図3において紙面上方)に移動することになる。この場合、画像Gsにおいては、図6に示すように、画像Gsの中心位置がYスライド132の熱変形と共に上方向に移動するため、二点鎖線の白丸によって示す第一マークM1及び第二マークM2の各々の位置は、画像Gsの中心位置よりも下に位置するようになる。
【0045】
即ち、Yスライド132に支持された基板カメラ15が第一ガイドレール111に付された第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像する場合においては、画像Gs上における第一マークM1及び第二マークM2の各々の移動方向は、Yスライド132がY軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状に熱変形する方向と逆になる。
【0046】
ここで、取得部31は、基板カメラ15から画像データGを取得した場合、例えば、画像Gsの中心位置(基板カメラ15の基準位置に一致)に対して画像Gs上の第一マークM1及び第二マークM2の各々を点対称(画像Gsの中心位置回りに180度回転処理)となる画像処理を行うことができる。これにより、第一マークM1及び第二マークM2の各々が熱変形前から熱変形後に移動した移動方向と、Yスライド132のY軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状に熱変形する方向とを一致させることができる。
【0047】
尚、本実施形態の以下の説明においては、取得部31は、上記画像処理等を行うことなく、即ち、第一マークM1及び第二マークM2の各々の移動方向と、Yスライド132の熱変形する方向とが逆になった画像データGを取得する。これにより、画像処理に要する時間を省略することができる。
【0048】
取得部31は、図5に示す熱変形前の画像Gs及び撮像した際の位置情報に基づいて、共に、画像Gsの中心位置に一致するように撮像された第一マークM1に対応する第一起点P1bの座標(Xrt,Yrt)、及び、第二マークM2に対応する第二起点P2bの座標(Xct,Yct)を測定する(図9を参照)。そして、取得部31は、図6に示す熱変形後に取得した画像Gs及び撮像した際の位置情報に基づいて、Yスライド132の熱変形に伴って第一起点P1bから移動した変化量Δr(Xrd,Yrd)を算出し、第一マークM1に対応する第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)を測定(算出)する(図9を参照)。
【0049】
又、取得部31は、Yスライド132の熱変形に伴って第二起点P2bから移動した変化量Δc(Xcd,Ycd)を算出し、第二マークM2に対応する第二点P2mの座標(Xct+Xcd,Ycd)を測定(算出)する(図9を参照)。そして、取得部31は、図4に示すように、測定して取得した第一マークM1に対応する第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)、及び、第二マークM2に対応する第二点P2mの座標(Xct+4Xcd,Ycd)を推定部32及び補正量算出部33に出力する。
【0050】
2-2.推定部32
推定部32は、取得部31によって測定された第一マークM1の第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)と、第二マークM2の第二点P2mの座標(Xct+Xcd,Ycd)とを取得する。そして、推定部32は、第一マークM1の第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)及び第二マークM2の第二点P2mの座標(Xct+Xcd,Ycd)を用いて、第一ガイドレール111に仮想的に決定可能な第三マークM3の第三点P3mの座標を算出する。
【0051】
ここで、補正装置30を完成させるにあたり種々の実験を行った。その結果、部品装着機10における部品移載装置13のYスライド132、より詳しくは、一対のY軸レール131によって両端位置が支持されて第一スライド部材132A及び第二スライド部材132Bから形成されるYスライド132については、図7に示すように、Yスライド132のX軸方向(第二方向)、即ち、Yスライド132の延伸方向における中心において、対称に熱変形することが分かった。つまり、図7に示すように、Yスライド132の延伸方向における中心(Yスライド132の各々の端部からの距離がLとなる位置)を通る対称軸としての対称軸線Oを設定可能であることが分かった。尚、対称軸線Oの設定については、Yスライド132の中心を必ずしも通る必要はなく、Yスライド132の両端位置の間において設定可能である。
【0052】
従って、推定部32は、図8に示すように、第一マークM1の線対称として、破線の丸印によって示す第三マークM3を仮想的に決定する。具体的に、推定部32は、第一マークM1の第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)を用いて、対称軸線Oに対する線対称として、第三マークM3の第三点P3mの座標を座標(-Xrt-Xrd,Yrd)と算出する。
【0053】
ここで、第三マークM3の第三点P3mは、第一マークM1の第一点P1mの線対称によって仮想的に決定される。従って、第三マークM3の第三起点P3b(図9を参照)についても、第一マークM1の第一起点P1bの線対称によって仮想的に決定することができる。即ち、第三マークM3の起点P3bの座標は、座標(-Xrt,Yrt)と仮想的に決定することができる。又、第三マークM3の変化量Δl(図9を参照)についても、第一マークM1の線対称に対応するため、変化量Δrに基づいて変化量Δl(-Xrd,Yrd)と仮想的に決定することができる。これらにより、第三マークM3の第三点P3mは、第三起点P3bと変化量Δlとに基づいて決定されるとも言える。
【0054】
尚、本実施形態においては、第二マークM2は、被補正部材であるYスライド132のX軸方向(第二方向)における中心に対応するように付されており、図8においては対称軸線O上に存在するように示す。しかし、上述したように、対称軸線OがYスライド132の中心からずれるように設定された場合には、第二マークM2の線対称として、第三マークM3を仮想的に決定することも可能である。
【0055】
そして、推定部32は、第一マークM1の第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)と、第二マークM2の第二点P2mの座標(Xct+Xcd,Ycd)と、仮想的に算出して決定した第三マークM3の第三点P3mの座標(-Xrt-Xrd,Yrd)と、を用いた周知の二次曲線近似方法を用いて二次曲線近似を行う。そして、推定部32は、二次曲線近似により、Yスライド132の形状、具体的には、Y軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状を推定する。尚、熱変形前と熱変形後の変化量を用いて二次曲線近似を行うため、特に、第一起点P1b、第二起点P2b及び第三起点P3bについては、Y軸方向(第一方向)に厳密に全く同じ位置に配置されていなくても良い。
【0056】
具体的に、推定部32は、図9に示すように、第一起点P1b、第二起点P2b及び第三起点P3bと、算出した変化量Δr、Δc及びΔlとを用いて算出された第一点P1m、第二点P2m及び第三点P3mが存在する近似曲線を算出する。尚、二次曲線近似方法については、周知であるため、以下に式を示しながら簡単に説明しておく。
【0057】
本実施形態の二次曲線近似方法においては、近似曲線、具体的には、下記式1に示す二次関数を用いて、二次曲線近似を行う。
【数1】

ここで、前記式1の二次関数における係数a、係数b及び係数cは、一般化した三点の座標(x1、y1)、(x2、y2)及び(x3、y3)を用いた下記式2-4に従って求めることができる。
【数2】

【数3】

【数4】
【0058】
このため、推定部32は、前記式1における係数a,b,cを決定するために、例えば、前記式1における(x1、y1)を第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)に対応させ、前記式1における(x2、y2)を第二点P2mの座標(Xct+Xcd,Ycd)に対応させ、前記式1における(x3、y3)を仮想的に決定した第三点P3mの座標(-Xrt-Xrd,Yrd)に対応させる。
【0059】
これにより、第一点P1m、第二点P2m及び第三点P3mを通る近似曲線の係数aは下記式5によって求めることができ、係数bは下記式6によって求めることができ、係数cは下記式7に従って求めることができる。
【数5】

【数6】

【数7】
【0060】
このように、前記式1における係数a、係数b及び係数cを求めることにより、推定部32は、前記式1によってYスライド132のY軸方向(第一方向)に凸となる曲線形状を近似して推定することができる。尚、図示を省略するが、推定部32が推定した曲線形状については、例えば、表示装置等を介して、外部に出力することが可能である。
【0061】
ここで、上述したように、本実施形態においては、第一マークM1、第二マークM2及び推定された第三マークM3の各々の移動方向と、Yスライド132の熱変形する方向とが逆になっている。このため、本実施形態の推定部32は、Yスライド132の形状(即ち、Y軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状)を推定するに当たり、例えば、前記式1の両辺にマイナスを乗じて係数a,b,cを求める。尚、上述したように、取得部31が画像処理を行い、第一マークM1、第二マークM2及び推定された第三マークM3の各々の移動方向と、Yスライド132の熱変形する方向とを一致させた場合には、推定部32は、前記式1に従って係数a,b,cを求めることができる。
【0062】
2-3.補正量算出部33
補正量算出部33は、図3に示すように、Yスライド132の熱変形に伴って移動したYスライド132上に設定した任意点Pa(Xa,Ya)を、任意点Pa(Xa,Ya)が移動する前に位置していた起点Pab(Xab,Yab)に一致するように補正するための補正量Aを算出する。ここで、補正量算出部33は、上述したように、推定部32が第一点P1m、第二点P2m及び第三点P3m、即ち、それぞれの第一起点P1b、第二起点P2b及び第三起点P3bから第一点P1m、第二点P2m及び第三点P3mへの各々の変化量Δr、変化量Δc及び変化量Δlを用いて算出した近似曲線である二次関数によって表される二次曲線近似により、補正量Aを算出する。つまり、補正量算出部33は、求められた係数a、係数b及び係数cを反映した前記式1、本実施形態においては二次関数に基づいて補正量Aを算出する。
【0063】
具体的に、補正量算出部33は、Yスライド132上に設定された任意点Pa(Xa,Ya)について、下記式8に従って補正量Aを算出する。
【数8】

そして、補正量算出部33は、算出した補正量Aを用いて、任意点Pa(Xa,Yb)を補正する。即ち、補正量算出部33は、補正後の任意点Paとして、補正後の任意点Pad(Xa,Ya-A)に補正する。
【0064】
つまり、任意点Paは、熱変形後のYスライド132上に設定されている。このため、任意点Paにおいては、熱変形前の起点Pab(Xab,Yab)に対して、Yスライド132がY軸方向(第一方向)に沿って熱変形することにより、補正量AだけY軸方向(第一方向)に沿ってずれている。
【0065】
従って、補正量算出部33は、算出した補正量Aを用いて、Y座標値を(Ya-A)として算出することにより、Y軸方向(第一方向)に沿って熱変形した後のYスライド132を熱変形する前の直線状のYスライド132とみなすことができる。これにより、Yスライド132にY軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状の熱変形が生じた場合であっても、線形補正による補正の精度を高めることができ、その結果、保持部材21の装着位置を正確に補正することが可能となる。
【0066】
ここで、補正量算出部33は、所定条件が成立するごとに、補正量Aを算出することができる。所定条件としては、例えば、前回、補正量Aを算出してから所定時間が経過した場合、部品装着機10において生産した基板Kの枚数が所定枚数に達した場合、及び、部品装着機10の内部温度が所定温度に達した場合のうちの少なくとも一つとすることができる。これにより、補正量算出部33は、Yスライド132に熱変形が生じる可能性の高いタイミングで補正量Aを算出することができる。従って、適正なタイミングで算出される補正量Aを用いて補正することにより、線形補正による補正の精度を効果的に高めることができる。
【0067】
尚、上述したように、本実施形態においては、第一マークM1、第二マークM2及び推定された第三マークM3の各々の移動方向と、Yスライド132の熱変形する方向とが逆になっている。このため、推定部32が、例えば、前記式1の両辺にマイナスを乗じることなく係数a,b,cを求めた場合には、補正量算出部33は、例えば、前記式8に従って算出した補正量Aについて、符号を変更(正を負、負を正)する。これにより、補正量算出部33は、Yスライド132の熱変形する方向に応じた補正量Aを算出することができる。
【0068】
3.補正装置30による補正方法
補正装置30について上述したことは、補正装置30による補正方法についても同様である。具体的に、補正方法は、取得工程と、推定工程と、補正量算出工程とを備える。取得部31が行う処理は、取得工程に相当する。推定部32が行う処理は、推定工程に相当する。補正量算出部33が行う処理は、補正量算出工程に相当する。
【0069】
以上の説明からも理解できるように、本実施形態の補正装置30は、基準部材としての第一ガイドレール111及び被補正部材としてのYスライド132の一方部材である第一ガイドレール111にそれぞれ付された第一マークM1及び第二マークM2の位置を、第一ガイドレール111及びYスライド132の他方部材であるYスライド132に設けられた測定装置としての基板カメラ15により測定して取得する取得部31を備える。又、本実施形態の補正装置30は、測定された第一マークM1の位置及び第二マークM2の位置を用いて、第一ガイドレール111に仮想的に決定可能な第三マークM3の位置を算出し、第一マークM1、第二マークM2、及び第三マークM3の位置に基づいて、第一ガイドレール111に対して変形したYスライド132の形状を推定する推定部32を備える。更に、本実施形態の補正装置30は、Yスライド132の変形に伴って移動したYスライド132の任意点Paを、任意点Paが移動する前に位置していた起点Pabに一致するように補正するための補正量Aを算出する補正量算出部33を備える。
【0070】
これによれば、補正装置30は、取得した第一マークM1及び第二マークM2を用いて、変形、具体的には、熱膨張率の差に起因して熱変形したYスライド132の曲線形状を推定する際に必要な点、即ち、第三点P3mに対応する第三マークM3を仮想的に決定することができる。そして、補正装置30は、推定されたYスライド132の曲線形状に基づいて、曲線形状に熱変形したYスライド132を熱変形する前の形状(直線状)に補正することができる。
【0071】
4.実施形態の変形例
上述した実施形態においては、取得部31が、測定装置として、被補正部材であり且つ他方部材であるYスライド132に支持された基板カメラ15を用い、基準部材であり且つ一方部材である第一ガイドレール111に付された第一マークM1及び第二マークM2を撮像して測定するようにした。これに代えて、取得部31が、測定装置として基準部材であり且つ他方部材である第一ガイドレール111に支持された部品カメラ14を用い、被補正部材であり且つ一方部材であるYスライド132に付された第一マークM1及び第二マークM2を撮像して測定するようにしても良い。
【0072】
この場合、取得部31は、部品カメラ14によって撮像された熱変形前及び熱変形後のYスライド132に付された第一マークM1及び第二マークM2の各々を撮像した画像Gsを用いる。取得部31は、上述した実施形態と同様に、第一マークM1に対応する第一起点P1bの座標(Xrt,Yrt)及び第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)と、第二マークM2に対応する第二起点P2bの座標(Xct,Yct)及び第二点P2mの座標(Xct+Xcd,Ycd)と、を測定する。そして、取得部31は、第一点P1mの座標(Xrt+Xrd,Yrd)及び第二点P2mの座標(Xct+Xcd,Ycd)を推定部32及び補正量算出部33に出力する。
【0073】
これにより、変形例においても、推定部32は、上述した実施形態と同様に、線対称の関係に基づいて第三マークM3を仮想的に決定することができると共に、Yスライド132の形状(具体的には、Y軸方向(第一方向)に沿って凸となる曲線形状)を推定することができる。又、補正量算出部33は、推定部32によって推定されたYスライド132の形状(具体的には、上述した前記式8)に従って、補正量Aを算出することができる。従って、この変形例においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
尚、部品カメラ14によってYスライド132に付された第一マークM1及び第二マークM2を撮像した画像Gsにおいては、Yスライド132の熱変形(変形)方向と、第一マークM1及び第二マークM2の移動方向とは一致する。従って、この変形例においては、取得部31は、上述した実施形態にて説明したような前記式1及び前記式8における符号の変更や、画像処理(例えば、画像Gsの中心位置に対する点対称移動や画像Gsの回転処理等)を行う必要はない。
【0075】
5.実施形態のその他の変形例
上述した実施形態においては、推定部32が前記式1の両辺にマイナスを乗じて係数a,b,cを求めたり、或いは、補正量算出部33が前記式8に従って算出される補正量Aの符号を変更したりするようにした。これは、Yスライド132に支持された基板カメラ15が第一ガイドレール111に付された第一マークM1及び第二マークM2を撮像する場合には、画像Gs上における第一マークM1及び第二マークM2の各々の移動方向が、Yスライド132がY軸方向(第一方向)に凸となる曲線形状に熱変形する方向と逆になるからである。
【0076】
ところで、画像Gs上における第一マークM1及び第二マークM2の各々の移動方向とYスライド132の熱変形する方向とを合わせる場合、例えば、算出した変化量Δr(Xrd,Yrd)、及び、変化量Δc(Xcd,Ycd)にマイナスを乗じても良い。このように、変化量Δr,Δcの符号を変更(正を負、負を正)することにより、第一マークM1及び第二マークM2の各々の移動方向とYスライド132の熱変形する方向とを合わせることができる。
【0077】
或いは、上述した実施形態においては、熱変形前の画像Gsの中心位置と熱変形後の画像Gsの中心位置とを一致させるようにした。これに対し、図10に示すように、画像Gs上の第一マークM1(第二マークM2)を熱変形前の画像Gs(例えば、図5の黒丸)と熱変形後の画像Gs(例えば、図6の黒丸)とを重ねた場合には、それぞれの画像Gsの中心位置の移動方向(図10にて矢印により示す)をYスライド132の熱変形する方向に合わせることができる。そして、この場合、熱変形後の画像Gsの第一マークM1(第二マークM2)を熱変形前の画像Gsの第一マークM1(第二マークM2)に一致させるための移動量を変化量とすることができる。
【0078】
又、上述した実施形態の部品装着機10においては、基板搬送装置11が、1つのコンベアベルト等によって形成された1つの搬送路に沿って1つの基板Kを搬送するようにした。これに代えて、部品装着機が、例えば、2つのコンベアベルト等の各々によって形成された2つの搬送路に沿って2つの基板Kをそれぞれ独立して搬送可能な基板搬送装置を備えた部品装着機であっても良い。
【0079】
又、上述した実施形態の部品装着機10においては、部品移載装置13のY軸レール131及びYスライド132を1組だけ備え、Yスライド132に装着ヘッド20を1つ備えるようにした。これに代えて、部品移載装置が、互いに対向するように配置された2組のY軸レール及びYスライドを備え、各々のYスライドに装着ヘッドを備えるようにした、所謂、対向(ダブル)型の部品装着機であっても良い。
【0080】
又、上述した実施形態においては、被補正部材が軸状のYスライド132である場合を例示した。しかし、被補正部材としては、Yスライド132のように軸状である必要はなく、他の形状として、例えば、熱膨張率の差に起因して変形可能なブロック状や球状の部材であっても良い。
【0081】
又、上述した実施形態においては、測定装置として部品装着機10に設けられた基板カメラ15を用いる場合を例示して説明した。又、上述した変形例においては、測定装置として部品装着機10に設けられた部品カメラ14を用いる場合を例示して説明した。しかしながら、測定装置としては、基板カメラ15を用いることに限られず、別途設けられた撮像装置(カメラ等)を用いても良い。
【0082】
又、上述した実施形態及び上述した変形例においては、取得部31は、第一マークM1及び第二マークM2の各々を熱変形前と熱変形後とで撮像して画像データGを取得し、画像データGによって表される画像Gsを用いて、第一起点P1b,第二起点P2b、第一点P1m、第二点P2mを測定するようにした。これに代えて、又は、加えて、取得部31は、測定装置として、例えば、電磁的又は光学的に第一マークM1及び第二マークM2の各々を測定することができるセンサ装置を用いて、直接的に、第一起点P1b,第二起点P2b、第一点P1m、第二点P2mを測定して取得することも可能である。この場合においても、上述した実施形態及び上記変形例と同様の効果が得られる。
【0083】
更に、上述した実施形態及び上記変形例においては、被補正部材であるYスライド132が熱膨張率の差に起因して熱変形する場合を例示した。しかしながら、被補正部材の変形については、熱膨張率の差に起因した熱変形に限られない。例えば、両端位置が支持された被補正部材に対して両端から軸線に沿って中心に向かって外力が付与されることによって、被補正部材が弾性変形する場合であっても良い。この場合、被補正部材であるYスライド132の変形形状については、例えば、Yスライド132の中心に位置する対称軸に対して対称となる曲線形状に限らず、例えば、弾性領域において線対称となる突条形状や弾性座屈(オイラー座屈やS字状座屈等)によって線対称となる形状であっても良い。
【符号の説明】
【0084】
10…部品装着機、111…第一ガイドレール(基準部材)、132…Yスライド(被補正部材)、15…基板カメラ(測定装置)、30…補正装置、31…取得部、32…推定部、33…補正量算出部、G…画像データ、Gs…画像、K…基板、B…部品、M1…第一マーク、M2…第二マーク、M3…第三マーク、P1b…第一起点(起点)、P2b…第二起点(起点)、P3b…第三起点(起点)、P1m…第一点、P2m…第二点、P3m…第三点、Pa…任意点、Pab…起点、A…補正量、O…対称軸線(対称軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10