(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004322
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】熱分解装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20240109BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
B09B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103931
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004AC04
4D004BA03
4D004BA04
4D004CA24
4D004CB31
(57)【要約】
【課題】従来よりも効率的な熱分解装置を提供しようとするもの。
【解決手段】高比重耐熱液体1を貯留する熱分解機構2を有し、前記高比重耐熱液体1中に処理対象物3を圧入し、前記処理対象物3に対し全周囲から伝熱して高比重耐熱液体1を熱源として機能させるようにした。前記高比重耐熱液体1との比重差で処理対象物3の熱分解物を浮上させて回収するようにしてもよい。前記熱分解機構2の加熱バーナーの火炎の位置を調整できるようにしてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高比重耐熱液体(1)を貯留する熱分解機構(2)を有し、前記高比重耐熱液体(1)中に処理対象物(3)を圧入し、前記処理対象物(3)に対し全周囲から伝熱して高比重耐熱液体(1)を熱源として機能させるようにしたことを特徴とする熱分解装置。
【請求項2】
前記高比重耐熱液体(1)との比重差で処理対象物(3)の熱分解物を浮上させて回収するようにした請求項1記載の熱分解装置。
【請求項3】
前記熱分解機構(2)の加熱バーナーの火炎の位置を調整できるようにした請求項1又は2記載の熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来よりも効率的な熱分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の廃棄物を燃焼し熱を回収するリサイクルシステムに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、タイヤを含めたゴム製品等の廃棄に大きな問題となっていた。タイヤを含む自動車部品の処分は環境汚染などの観点により、粗大ごみで捨てることができず、廃棄物処理法で適正処理困難物に指定されており、適切な方法で処分する必要があった。
この従来提案は、ゴムの廃棄物を焼却することで発生した熱を回収し、その熱によって蒸気を発生させる蒸気発生装置と、前記蒸気を熱プレス成型機まで運ぶ蒸気搬送経路と、前記ゴムの廃棄物又はゴムの原料を型に供給し、前記蒸気の熱を利用して熱プレスによってゴムの成形品を形成する熱プレス成型機と、を備えたこととし、廃棄物を燃焼させ、廃棄物の燃焼から生成した熱をゴムの成形品を成形する際に利用することによって、熱を有効に活用することが可能である、というものである。
しかし、もっと効率的な熱分解装置に対する要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来よりも効率的な熱分解装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の熱分解装置は、高比重耐熱液体を貯留する熱分解機構を有し、前記高比重耐熱液体中に処理対象物を圧入し、前記処理対象物に対し全周囲から伝熱して高比重耐熱液体を熱源として機能させるようにしたことを特徴とする。
この熱分解装置は、高比重耐熱液体を貯留する熱分解機構を有し、前記高比重耐熱液体中に処理対象物を圧入するようにしたので、熱分解機構で昇温した高比重耐熱液体の内部に処理対象物を押し込んで熱分解することができる。
【0006】
また、処理対象物に対し全周囲から伝熱して高比重耐熱液体を(疑似)熱源として機能させるようにしたので、炎により処理対象物を下方からあぶって空気などの介在物を介して(間接的に)加熱するのではなく、処理対象物の外周が高比重の耐熱液体に直接包み込まれて高密度に全接触して伝熱加熱することができる。
すなわち、高比重耐熱液体内における全周囲からの伝熱加熱により処理対象物を熱分解するための熱量をより確実に伝達することができる。
【0007】
前記処理対象物の態様として、液(状)体、固体を例示することができる。処理対象物として、(可燃性)固体有機物や、高濃度有機液体を例示することができる。
処理対象物の固体(処理により減容化、資源化の効用がある)として、廃タイヤ類、廃プラスチック類(ポリウレタン、発泡スチロールなど)、段ボール類、布切れ、医療用廃棄物(血液に汚染された衣類等)、貝殻(炭酸カルシウムであり熱処理により生石灰にできる)などを例示することができる。固体の処理対象物は、クラッシャー等により細分化し分断して供給することができる。
【0008】
処理対象物の固体の湿潤物、軟体物として、生ごみ(処理により腐敗防止、異臭防止の効用がある)、残飯、コーヒー滓、汚泥、使用済みおむつ、ぺフなどを例示することができる。
処理対象物の液(状)体として、排水、廃水、高濃度廃液(例えばCOD 50,000ppm)などの有機成分を含むものを例示することができる。
【0009】
前記高比重耐熱液体(熱処理時に液状であればよい)として、錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、密度7.3g/cm3)、鉛(熱伝導率 31W/mK、融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(熱伝導率 82W/mK、融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(熱伝導率 88W/mK、融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)、ビスマス(熱伝導率 8W/mK、融点272℃、沸点1,564℃、密度10g/cm3)などの低融点金属(密度6以上)を例示することができる。
前記熱分解機構の温度として、450~900℃を例示することができる。このうち、例えば650℃に設定することができる。熱分解機構で高比重耐熱液体を昇温する熱源として、電熱ヒーター、LNGバーナー、LPGバーナー、またこの熱分解機構で得たメタンガス、油状成分などを例示することができる。熱分解機構の排ガス(廃棄ガス)は、煙道を介して外部に排出することができる。
【0010】
熱分解機構でできた熱分解物・炭化物は、肥料(廃液含有成分の熱分解後のリン酸カルシウム)、燃料(廃タイヤの揮発成分の液化物、有機物から揮発したメタンなどの炭化水素ガス)などとして利用することができる。また、熱分解機構でできた炭化物(有機物の炭素成分)を水処理用の活性炭、カーボン・パウダー、土壌改良材、土壌湿度調整材などとして利用することができる。
熱分解機構で気化した水分は、冷却機構(冷却水を循環する)により冷やして蒸留した清浄水(蒸留排水)を得ることができる。
【0011】
(2)前記高比重耐熱液体との比重差で処理対象物の熱分解物を浮上させて回収するようにしてもよい。このようにすると、処理対象物の熱分解物を効率的に回収して有効利用することができる。
【0012】
例えば、高比重耐熱液体としての錫(比重7.3)中で、熱分解物たる炭化物粒子(比重0.5)を浮上させることにより、高比重耐熱液体(錫)の表面から回収することができる。
そして、高比重耐熱液体の表面に浮上した炭化物を、モータにより回転駆動されるスパイラルコンベアによって外部に取り出すことができる。また処理対象物を、前記スパイラルコンベアにより供給することができる。
【0013】
(3)前記熱分解機構の加熱バーナーの火炎の位置を調整できるようにししてもよい。このようにすると、加熱バーナーの火炎部分の酸素の吸い込み量を加減して燃焼雰囲気(還元雰囲気など)を制御することができる。また、加熱バーナー自体の空気の混合比率の調整と併せて、燃焼ガス量の増大を回避しつつ燃焼雰囲気を制御することができる。
【0014】
(4)熱分解機構の外周に冷却水循環機構を設けることができる。このようにすると、熱分解機構を取り囲む冷却水循環機構により作業者の安全性を担保することができ火災のガードにもなる。
【0015】
(5)冷却水循環機構は、熱分解機構の排ガスを注入するスクラバー槽として機能させることもできる。冷却水循環機構には電解水を循環することができる。前記電解水として、オゾン(O3)を注入して酸素ラジカル(・O)を生成させた酸素ラジカル含有水を用いることもできる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
高比重耐熱液体内における全周囲からの伝熱加熱により処理対象物を熱分解するための熱量をより確実に伝達することができるので、従来よりも効率的な熱分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の熱分解装置の実施形態を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の熱分解装置は、高比重耐熱液体1を貯留する熱分解機構2を有し、前記高比重耐熱液体1中に処理対象物3を圧入し、前記処理対象物3に対し全周囲から伝熱して高比重耐熱液体1を熱源として機能させるようにした。
【0019】
前記高比重耐熱液体1として、錫(熱伝導率 64W/mK、融点232℃、沸点2,063℃、密度7.3g/cm3)を用いた。
前記熱分解機構2の温度は、650℃に設定した。熱分解機構2で高比重耐熱液体1を昇温する熱源として、LNGバーナーを用いた。熱分解機構2の排ガス(廃棄ガス)は、煙道を介して外部に排出した。
【0020】
処理対象物3として、高濃度廃液である高濃度有機液体(COD 50,000ppm程度の有機成分を含むもの)を供給した。なお、可燃性固体有機物をクラッシャーにより細分化し分断し、モータMにより回転駆動されるスパイラルコンベア4により高比重耐熱液体1の上方に供給した。
熱分解機構2で気化した水分は、冷却機構(冷却水を循環する)により冷やして蒸留した清浄水(蒸留排水)を得ることができた。
【0021】
また、前記高比重耐熱液体1との比重差で処理対象物3の熱分解物を浮上させて回収するようにした。したがって、処理対象物3の熱分解物を効率的に回収して有効利用することができた。
具体的には、高比重耐熱液体1としての錫(比重7.3)中で、熱分解物たる炭化物粒子(比重0.5)を浮上させることにより、高比重耐熱液体1(錫)の表面から回収することができた。そして、高比重耐熱液体1の表面に浮上した炭化物を、前記スパイラルコンベア4によって外部に取り出すことができた。
【0022】
さらに、前記熱分解機構2の加熱バーナーの火炎の位置を調整できるようにした。したがって、加熱バーナーの火炎部分の酸素の吸い込み量を加減して燃焼雰囲気(還元雰囲気など)を制御することができた。また、加熱バーナー自体の空気の混合比率の調整と併せて、燃焼ガス量の増大を回避しつつ燃焼雰囲気を制御することができた。
【0023】
次に、この実施形態の熱分解装置の使用状態を説明する。
この熱分解装置は、高比重耐熱液体1を貯留する熱分解機構2を有し、前記高比重耐熱液体1中に処理対象物3を圧入するようにしたので、熱分解機構2で昇温した高比重耐熱液体1の内部に処理対象物3を押し込んで熱分解することができた。
【0024】
また、処理対象物3に対し全周囲から伝熱して高比重耐熱液体1を(疑似)熱源として機能させるようにしたので、炎により処理対象物3を下方からあぶって空気などの介在物を介して間接的に加熱するのではなく、処理対象物3の外周が高比重の耐熱液体に直接包み込まれて高密度に全接触して伝熱加熱することができた。
すなわち、高比重耐熱液体1内における全周囲からの伝熱加熱により処理対象物3を熱分解するための熱量をより確実に伝達することができた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
従来よりも効率的であることによって、種々の熱分解装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 高比重耐熱液体
2 熱分解機構
3 処理対象物