(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043222
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】防水シート固定構造および防水シート固定工法
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
E04D5/14 F
E04D5/14 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148283
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村野 佳巳
(57)【要約】
【課題】機械的固定工法の先付け工法における防水シートの剥離や亀裂の発生を抑制するとともに、十分な固定強度を有する防水シート固定構造を提供する。
【解決手段】下地の上に配置されるシート片と、前記シート片の上に配置される固定板と、前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に固定される固定具と、前記下地と前記シート片および前記固定板の上に亘って敷設される防水シートとを備え、前記シート片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とが接合されている、防水シート固定構造である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地の上に配置されるシート片と、
前記シート片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記下地と前記シート片および前記固定板の上に亘って敷設される防水シートとを備え、
前記シート片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とが接合されている、防水シート固定構造。
【請求項2】
前記固定板の上面と前記防水シートの下面とが接合されている請求項1に記載の防水シート固定構造。
【請求項3】
前記シート片は上面に凹部を有し、前記凹部に前記固定板が収められている請求項1または2に記載の防水シート固定構造。
【請求項4】
前記シート片および前記防水シートは熱可塑性樹脂製シートからなる請求項1または2に記載の防水シート固定構造。
【請求項5】
前記固定板は少なくとも上面に熱可塑性樹脂層を有する請求項4に記載の防水シート固定構造。
【請求項6】
前記シート片が、補強層が積層されたシートからなる請求項1または2に記載の防水シート固定構造。
【請求項7】
前記下地と、前記シート片および前記防水シートとの間に断熱材を備える請求項1または2に記載の防水シート固定構造。
【請求項8】
下地の上に形成された既存防水層の上に配置されるシート片と、
前記シート片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記既存防水層と前記シート片および前記固定板の上に亘って敷設される防水シートとを備え、
前記シート片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とが接合されている、防水シート固定構造。
【請求項9】
下地の上にシート片を配置する工程と、
前記シート片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記シート片を前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記下地と前記シート片および前記固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程とを備え、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを接合する防水シート固定工法。
【請求項10】
さらに前記固定板の上面と前記防水シートの下面とを接合する工程を備える請求項9に記載の防水シート固定工法。
【請求項11】
前記シート片および前記防水シートが熱可塑性樹脂製シートからなり、前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを溶着剤を塗布して接合する請求項9または10に記載の防水シート固定工法。
【請求項12】
さらに前記固定板が少なくとも上面に熱可塑性樹脂層を有し、前記固定板の上面と前記防水シートの下面とを溶着剤を塗布して接合する請求項11に記載の防水シート固定工法。
【請求項13】
前記シート片および前記防水シートが熱可塑性樹脂製シートからなり、前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを熱風溶接機により加熱して接合する請求項9または10に記載の防水シート固定工法。
【請求項14】
さらに前記固定板が少なくとも上面に熱可塑性樹脂層を有し、前記固定板の上面と前記防水シートの下面とを熱風溶接機により加熱して接合する請求項13に記載の防水シート固定工法。
【請求項15】
下地の上に形成された既存防水層の上にシート片を配置する工程と、
前記シート片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を打ち込み前記下地に固定する工程と、
前記既存防水層と前記シート片および前記固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程と、
前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを接合する工程とを備える
防水シート固定工法。
下地の上に形成された既存防水層の上にシート片を配置する工程と、
前記シート片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記シート片を前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記既存防水層と前記シート片および前記固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程とを備え、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを接合する防水シート固定工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固定板を用いた防水シート固定構造、防水シート固定工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上や屋根等に防水シートを施工する際、下地に防水シートを固定する方法として接着剤を用いる接着工法と固定板を用いた機械的固定工法とがある。ここで、機械的固定工法の一つである先付け工法においては、通常樹脂を被覆した鋼板等からなる固定板(ディスク)をビスにより下地に固定し、その上から防水シートを敷設し、防水シート上から固定板に対応する位置に誘導加熱装置を配置して固定板を加熱することで固定板の上面の樹脂層と防水シートを接合固定するという方法がある。また、誘導加熱装置を用いずに防水シートと固定板の樹脂層とを熱風溶接機や溶着剤を用いて溶融着することにより接合する方法がある。
【0003】
機械的固定工法は防水シートを部分的に固定する部分固定であることから、全面接着の接着工法に比べて風の影響を受けやすく、強風が吹くと風圧により防水シートが持ち上げられ波打つフラッタリング現象が起こり、これを繰り返すことにより経年でビスが抜けたり、防水シートが接合端部から破断したりする危険がある。よって耐風圧性能の向上の為、種々の検討がなされている。例えば、固定部材(ディスク)に予め外端部から中央部側に向けて切れ込むスリットを設け、フラッタリングの発生時に接合部の外端部側を斜め外側上方に引き上げる力が作用すると、固定部材のうち力の作用した部位がスリットを境に曲げ変形し、防水シートの動きを吸収させて防水シートから接合部に力が作用し難くなるようにしたシート固定ユニットがある(特許文献1)。また、防水シートが強風下で煽られたとしても防水シートに亀裂が生じるのを低減するため、樹脂層付き固定ディスクの樹脂層と防水シートとの間の接合強度をA[N/mm]とし、前記樹脂層と前記固定ディスクとの間の接合強度をB[N/mm]としたとき、A>Bなる関係を満足するシート防水構造がある(特許文献2)。
【0004】
一つ目のシート固定ユニットにおいては、固定部材にスリットを設けることにより固定部材自体の強度が低下することが考えられ、フラッタリング発生時に固定部材が変形して固定部材を下地に留め付けているアンカー部材(ビス)に負荷がかかり、いわゆるビス抜けを起こす恐れがある。また、二つ目のシート防水構造においては、フラッタリング発生時に接合強度の小さい樹脂層と固定ディスクとの接合部分が剥がれることで防水シートの固定箇所が減少し、最終的に防水シートが飛ばされる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-031783号公報
【特許文献2】特開2016-044492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機械的固定工法の先付け工法における防水シートの剥離や亀裂の発生を抑制するとともに、十分な固定強度を有する防水シート固定構造および防水シート固定工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明が用いた手段は、以下に示す防水シート固定構造及び防水シート固定工法である。
【0008】
[1] 下地の上に配置されるシート片と、
前記シート片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記下地と前記シート片および前記固定板の上に亘って敷設される防水シートとを備え、
前記シート片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とが接合されている、防水シート固定構造。
【0009】
[2] 前記固定板の上面と前記防水シートの下面とが接合されている[1]に記載の防水シート固定構造。
【0010】
[3] 前記シート片は上面に凹部を有し、前記凹部に前記固定板が収められている[1]または[2]に記載の防水シート固定構造。
【0011】
[4] 前記シート片および前記防水シートは熱可塑性樹脂製シートからなる[1]または[2]に記載の防水シート固定構造。
【0012】
[5] 前記固定板は少なくとも上面に熱可塑性樹脂層を有する[4]に記載の防水シート固定構造。
【0013】
[6] 前記シート片が、補強層が積層されたシートからなる[1]または[2]に記載の防水シート固定構造。
【0014】
[7] 前記下地と、前記シート片および前記防水シートとの間に断熱材を備える[1]または[2]に記載の防水シート固定構造。
【0015】
[8] 下地の上に形成された既存防水層の上に配置されるシート片と、
前記シート片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記既存防水層と前記シート片および前記固定板の上に亘って敷設される防水シートとを備え、
前記シート片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とが接合されている、防水シート固定構造。
【0016】
[9] 下地の上にシート片を配置する工程と、
前記シート片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記シート片を前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記下地と前記シート片および前記固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程とを備え、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを接合する防水シート固定工法。
【0017】
[10] さらに前記固定板の上面と前記防水シートの下面とを接合する工程を備える[9]に記載の防水シート固定工法。
【0018】
[11] 前記シート片および前記防水シートが熱可塑性樹脂製シートからなり、前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを溶着剤を塗布して接合する[9]または[10]に記載の防水シート固定工法。
【0019】
[12] さらに前記固定板が少なくとも上面に熱可塑性樹脂層を有し、前記固定板の上面と前記防水シートの下面とを溶着剤を塗布して接合する[11]に記載の防水シート固定工法。
【0020】
[13] 前記シート片および前記防水シートが熱可塑性樹脂製シートからなり、前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを熱風溶接機により加熱して接合する[9]または[10]に記載の防水シート固定工法。
【0021】
[14] さらに前記固定板が少なくとも上面に熱可塑性樹脂層を有し、前記固定板の上面と前記防水シートの下面とを熱風溶接機により加熱して接合する[13]に記載の防水シート固定工法。
【0022】
[15] 下地の上に形成された既存防水層の上にシート片を配置する工程と、
前記シート片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記シート片を貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記シート片を前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記既存防水層と前記シート片および前記固定板の上に亘って防水シートを敷設する工程とを備え、
前記シート片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記シート片の外周縁の上面と前記防水シートの下面とを接合する防水シート固定工法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、機械的固定工法の先付け工法における防水シートの剥離や亀裂の発生を抑制するとともに、十分な固定強度を有する防水シート固定構造および防水シート固定工法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の防水シート固定構造の一実施形態の部分断面図である。
【
図2】本発明の防水シート固定構造の他の実施形態の部分断面図である。
【
図3】本発明の防水シート固定構造の他の実施形態の部分断面図である。
【
図4】本発明のシート片と固定板の例を説明する斜視図である。
【
図5】従来の防水シート固定構造と本発明の防水シート固定構造を説明する 部分断面図である。
【
図6】防水シートの固定強度検証試験の説明図である。
【
図7】本発明の防水シート固定構造の他の実施形態の部分断面図である。
【
図8】本発明の防水シート固定構造による改修構造の一実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
本発明の防水シート固定構造は、屋上等の防水工事を行う下地の上に機械的固定工法の先付け工法によって防水シートが施工されるものである。従来の先付け工法における防水シート固定構造は、一般的に下地の上にディスクと呼ばれる固定板が間隔を置いて複数配置され、各ディスクはビスなどの固定具により下地に固定されており、ディスクと下地とを覆い敷設された防水シートの裏面とディスクの上面とが接合されることで、防水シートが部分的に固定されている。
【0027】
図1により本発明の防水シート固定構造について説明する。
下地5の上にシート片1が配置され、シート片1の上に固定板2が配置されている。シート片1は固定板2よりも外周が大きく成形されており、シート片1の上に固定板2を重ねて配置する際に、固定板2の外周より外側にシート片1の外周縁11の上面11aが露出するように固定板2が配置されている。固定具4は固定板2およびシート片1を貫通して下地5に固定され、固定板2は固定具4により下地5に固定されており、固定板2の下に配置されているシート片1は固定板2および固定具4によって下地5に固定されている。防水シート3が下地5、シート片1および固定板2の上に亘って敷設されており、シート片1と防水シート3の重なり部分において、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとが接合されている。本発明においては、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとが接合されていれば固定板2と防水シート3の重なり部分において、固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとは接合されていなくてもよく、防水シート3の固定強度をより高めるために固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとが接合されていてもよい。
【0028】
図2、
図3および
図7は本発明の防水シート固定構造の他の実施形態を示すものである。
図2は下地5に絶縁シート6が敷設された上に、シート片1が配置されている。絶縁シート6は、例えば下地5の不陸が大きい場合にその上に敷設する防水シート3を保護する目的で敷設される。
図3は下地5に断熱材7が敷設された上に、シート片1が配置されている。断熱材7は建物の断熱効果を上げるためのいわゆる外断熱工法に用いられるものである。
図7は下地5に断熱材7が敷設され、さらに絶縁シート6が敷設された上に、シート片1が配置されている。このように下地5とシート片1の間には絶縁シート6や断熱材7など、必要に応じて敷設することができ、また絶縁シート6と断熱材7を併用することもできる。
【0029】
シート片1について説明する。
シート片1は可撓性を有しており、防水シート3と接合可能なシートからなる。シート片1は、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル樹脂系シート、ポリオレフィン、塩素化ポリエチレンなど熱可塑性エラストマー系シート、アクリル系シートといった熱可塑性樹脂製シートや、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどの加硫ゴム系/非加硫ゴム系といったゴム製シートなどからなり、それぞれ単層の均質シートからなるものや、これらを複合した積層シートからなるものでもよい。塩化ビニル樹脂系シートにおいては、可塑剤を含有した軟質シートが好ましい。また、シート片1は補強層が積層されたシートであってもよく、補強層としては例えばガラスクロスやポリエステルクロスなどの織布や、ガラス不織布やポリエステル不織布などの不織布が挙げられる。シート片1が、補強層が積層されたシートからなる場合は、防水シートの固定強度がより向上するため好ましい。補強層は最下層に積層されていてもよく、シート片1の中間層として積層されていてもよいが、中間層として積層されていることで補強効果がより高まり好ましい。
【0030】
シート片1の形状は、固定板2より外周が大きいものであれば特に限定されず、平面形状が真円形や楕円形などの円形や四角形などの多角形のシートでもよく、固定板2と同様の形状であれば、シート片1の上に固定板2を配置する際にシート片1の中心と固定板2の中心とを重ねて配置することにより、防水シート3と接合するシート片1の外周縁11が均一に形成されやすく好ましい。
また、シート片1の厚みは防水シート3と同程度であることが好ましく、通常1mm~5mm程度の厚みである。厚みが薄すぎると防水シート3の十分な固定強度が得られず、厚みが厚すぎると防水シート3を敷設固定したときに仕上がりが凸凹してしまい好ましくない。大きさは特に限定されないが、一辺または外径が50mm~200mm程度とすることができる。また、シート片1には予め固定具4が打ち込まれるための厚み方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよく、貫通孔はシート片1の中心部に設けられていることが好ましい。
【0031】
また、シート片1の上面に凹部を有していることが好ましい。
図4は
図2、
図7および
図8の防水シート固定構造に使用されているシート片1および固定板2の斜視図であり、シート片1の上面に固定板2を配置した際に、固定板2が収まるような凹部12を有している。シート片1の上面に凹部を有することにより、
図2のようにシート片1の外周縁11の上面と固定板2の上面との間に段差が形成されにくく略面一となるため、防水シート3を敷設固定したときに仕上がりが平滑になるだけでなく、シート片1の外周縁11の上面および固定板2の上面と防水シート3の下面とを接合する際に接合作業がしやすくなり好ましい。また、シート片1の上面の略中央に、固定板2の外周に合わせて形成された凹部を有していることが好ましい。凹部の深さは、固定板2の厚みに合わせて形成されていることが好ましく、0.5mm~3.0mm程度の深さであることが好ましい。
【0032】
固定板2について説明する。
本発明の防水シート固定構造において、固定板2はシート片1の上に重ねて配置され固定具4により下地5に固定されることでシート片1を下地5に対して押さえつけ、これによりシート片1が下地5に部分的に固定された状態となる。固定板2はおおよそ平坦な薄板であり、平面形状が真円形や楕円形などの円形や四角形などの多角形であってもよいが、シート片1を下地5に押さえつける際にシート片1を傷つけにくく、固定板2の上面と防水シート3の下面とを接合する防水シート固定構造としたときに、防水シート3が風に煽られた際に接合端部の一部に応力が集中することを避けるため、平面形状は円形が好ましく、さらに真円形であることが好ましい。固定板2の厚みは0.5mm~3.0mm程度であり、大きさは一辺または外径が30mm~100mm程度とすることができる。また、固定板2には固定具4が打ち込まれるための厚み方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよく、貫通孔は固定板2の中心部に設けられていることが好ましい。また、貫通孔には固定具4の頭部を受け入れるための座掘りが設けられていてもよい。さらに、
図1の防水シート固定構造に使用されている固定板2のように、固定板2の外周部分や上記貫通孔の周囲にリブが設けられていてもよく、リブが設けられることで固定板2に固定具4を打ち込む際に、固定板2に反りや曲がりが生じることを防止できる。
【0033】
固定板2は薄板状の鋼板や合成樹脂などから成形することができ、強度の面から薄板鋼板が好適である。固定板2が薄板鋼板の場合、表面が熱可塑性樹脂で被覆されていてもよい。少なくとも上面が防水シート3と同じ熱可塑性樹脂で被覆されている固定板2の場合、固定板2の上面と防水シート3の下面とを接合することが可能となり、具体的には溶剤による溶着や熱風溶接機などによる加熱圧着での溶接固定が可能となる。
【0034】
防水シート3について説明する。
防水シート3は長尺状のシートであり、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル樹脂系シート、ポリオレフィン、塩素化ポリエチレンなど熱可塑性エラストマー系シート、アクリル系シートといった熱可塑性樹脂製シートや、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどの加硫ゴム系/非加硫ゴム系といったゴム製シートなどからなり、それぞれ単層の均質シートからなるものや、これらを複合した積層シートからなるものでもよい。塩化ビニル樹脂系シートにおいては、可塑剤を含有した軟質シートが好ましい。また、防水シート3は補強層が積層されたシートであってもよく、補強層としては例えばガラスクロスやポリエステルクロスなどの織布や、ガラス不織布やポリエステル不織布などの不織布が挙げられる。防水シート3が、補強層が積層されたシートからなる場合は、施工時の固定強度がより向上するため好ましい。施工の際に防水シート3の下面が少なくともシート片1の上面に接合されるため、防水シート3の下面は熱可塑性樹脂層が露出していることが好ましく、補強層は防水シート3の中間層として積層されていることが好ましい。
【0035】
固定具4について説明する。
固定具4は固定板2を下地5に留め付け固定するものであり、ビスやボルト、釘など下地5に打ち込むことのできるものであり、金属製のビスが好適に用いることができ、アンカービス、タッピングビス、ドリルビスなどを用いることができる。材質としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材などが使用できる。また、固定板2の上面から頭部がはみ出ないように、ビスのビス頭の形状は皿、平、なべがよく、ドライバーやレンチで掛ける座面の窪み形状は十字穴、六角穴、四角穴が好ましい。
【0036】
下地5について説明する。
下地5は特に制限はなく、鉄筋コンクリート(RC)、プレキャストコンクリート(PC)、軽量発泡コンクリート(ALC)、金属下地、木質下地などである。
図1~
図3および
図8の実施形態では下地5はRC下地(5A)、
図7の実施形態では下地5は金属下地(5B)である。
【0037】
本発明の防水構造においては、上記以外のものをさらに備えることができ、例えば絶縁シート(6)、断熱材(7)、無機質板などが挙げられる。これらは主に下地5とシート片1との間に設けられ、不陸の解消や断熱性能、耐歩行性など付与するために備えられる。また、下地5に既存の防水層が形成されている場合にも本発明の防水構造を適用することが可能であり、そのような場合には既存防水層と新規防水層の間における可塑剤等の成分移行を防止するため、既存防水層の上に絶縁シートを設けることもできる。
【0038】
絶縁シート(6)としては、例えば柔軟性を有した発泡シート等が好適に用いられる。発泡シートとしては、ポリエチレンなどのオレフィン系発泡シートの他、スチレン系発泡シート、ポリウレタン系発泡シートなどを用いることができる。また、前述のような発泡シートに補強層として不織布や織布などが積層されたものを絶縁シート(6)として使用することもでき、補強層である不織布や織布に用いられる繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなどが挙げられる。絶縁シート(6)の厚みは通常0.5mm~3.0mm程度のものが使用できる。
【0039】
断熱材(7)としては、例えばポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフォーム等が使用できる。
図3の実施形態では断熱材7は硬質ウレタンフォーム(7A)、
図7の実施形態では断熱材7はポリスチレンフォーム(7B)である。なお、断熱材(7)としてポリスチレンフォームを用いる際には、防水シート3の成分の移行を防ぐため、
図7のように絶縁シート(6)を間に敷設することが好ましい。断熱材(7)の厚みは適宜選択でき、通常10mm~100mm程度のものが使用できる。
【0040】
無機質板としては、セメント板、スレート板、ケイカル板等が使用できる。厚みは適宜選択でき、通常5mm~30mm程度のものが使用できる。無機質板は主に断熱材(7)の上に敷設され耐歩行性を向上するほか、
図7のような山谷形状の金属下地の上に断熱材を敷設する際に下地の上に敷設され断熱材の踏み抜けを防止する効果がある。
【0041】
図5は従来の先付工法により施工された防水シート固定構造と本発明の防水シート固定構造とにおいて、フラッタリング現象が生じて防水シートが浮き上がったときの模式図を示したものである。(5-1)は従来の先付工法による防水シート固定構造であり、防水シート3´の固定板2´に固定されていない部分が風圧によって上向きの力を受けて固定板2´との接合端部P´(防水シート3´と固定板2´の外周部分との接合部)を支点として浮き上がった状態を示している。この場合、接合端部P´に応力が集中するため、度重なるフラッタリング現象と経年による防水シート3´の劣化の影響により、防水シート3´は接合端部P´から剥離するか、またシート本体が延ばされ接合端部P´を起点に破断することがある。
【0042】
これに対し、
図5(5-2)の本発明の防水シート固定構造においては、固定板2の外周より外側のシート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとが接合されており、シート片1は防水シート3と同様に可撓性を有することから、フラッタリング現象によって防水シート3が浮き上がった際にシート片1の外周縁11もこれに追従して動くため、接合端部Pに応力が集中することない。また、固定板2の端部においてはシート片1と防水シート3とが重なり接合一体化されているため、従来の防水シート固定構造に比べてシートとしての強度も増している。したがって、本発明の防水シート固定構造は、従来の防水シート固定構造に比べて防水シートの剥離や接合端部を起点とした破断のリスクを大幅に低減する効果を有している。
【0043】
本発明の防水シート固定構造は、既存防水層の改修にも適用することができる。
図8は本発明の防水シート固定構造による改修構造の一実施形態を示している。下地5の上に形成された既存防水層8の改修構造であり、既存防水層8の上に絶縁シート6が敷設され、絶縁シート6の上にシート片1が配置され、シート片1の上に固定板2が配置されている。
図8に用いたシート片1および固定板2は
図4に示したものであり、シート片1の上面の凹部に固定板2が収まるように配置されている。固定具4は固定板2およびシート片1を貫通して下地5に固定され、固定板2は固定具4により下地5に固定されており、固定板2の下に配置されているシート片1は固定板2および固定具4によって下地5に固定されている。防水シート3が既存防水層8、シート片1および固定板2の上に亘って敷設されており、シート片1と防水シート3の重なり部分において、シート片1の外周縁の上面11aと防水シート3の下面3aとが接合されている。固定具2と防水シート3の重なり部分において、固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bは接合されていなくてもよく、防水シート3の固定強度をより高めるために固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとが接合されていてもよい。
図8の実施形態において既存防水層8は接着剤により下地5に固定された塩化ビニル系防水シートであり、防水シート3の成分移行を防ぐために間に絶縁シート6が敷設されているが、既存防水層8の状態や種類によっては絶縁シート6が敷設されていなくてもよい。
【0044】
図1により本発明の防水シート固定工法について説明する。
まず、下地5の上にシート片1を配置する。このシート片1の上に固定板2を配置する。このとき、シート片1の外周より内側に固定板2が配置されるようにし、固定板2の全外周より外側にシート片1の外周縁11の上面11aが露出するように配置することが好ましい。また、シート片1の中心と固定板2の中心とが重なるように配置することが好ましい。
【0045】
次に固定板2の上から固定具4を固定板2およびシート片1を貫通して下地5に打ち込み固定する。固定具4により固定板2は下地5に固定され、シート片1は固定板2と固定具4により下地5に固定される。固定具4は下地5に打ち込み留め付ければよく、例えば下地5が金属下地や木質下地の場合には固定具4としてドリルビスを使用して下地5に直接打ち込み、下地5が
図1のような鉄筋コンクリート(RC)やプレキャストコンクリート(PC)、軽量発泡コンクリート(ALC)の場合には固定具4としてアンカービスを使用し、予め下地5に形成した穴にアンカーを挿入後にビスをアンカーに打ち込み下地5に固定する。
【0046】
次に下地5とシート片1及び固定板2の上に亘って防水シート3を敷設する。防水シート3は長尺状のシートであり、通常の施工においては下地5の上に所定の間隔をあけて複数のシート片1と固定板2を配置し、全ての固定板2に対して上から固定具4を打ち込み下地5に固定した後、これらの上から長尺状の防水シート3を敷設する。複数の防水シートを敷設する場合は防水シート3と隣接する防水シート3とは端部同士を重ねて敷設する。
【0047】
防水シート3を敷設した後、固定板2の外周より外側に配置されるシート片1の外周縁11の上面11aと、その上に重なる防水シート3の下面3aとを接合する。シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとの接合方法としては、シート片1および防水シート3が熱可塑性樹脂製シートからなる場合には、溶剤などの溶着剤を用いる方法と、加熱圧着による方法がある。溶着剤を用いる場合は、シート片1と防水シート3のいずれも溶かす溶着剤を刷毛などでシート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとに塗布した後に圧着することで接合する。例えば、シート片1および防水シート3が塩化ビニル樹脂製のシートの場合には、テトラヒドロフラン(THF)やメチルエチルケトン(MEK)やこれらの混合物などが好適に使用できる。また加熱圧着の場合には、シート片1および防水シート3が溶融する温度に設定した熱風溶接機等を用いてシート片1の外周縁11の上面と防水シート3の下面とに熱風を当てながら圧着することで接合する。例えば、シート片1および防水シート3が塩化ビニル樹脂製のシートの場合には、熱風溶接機の熱風温度を250℃~450℃に設定するとよい。
【0048】
通常の施工において複数の防水シートを敷設した場合、全てのシート片1の外周縁11の上面11aと、その上に重なる防水シート3の下面3aとを接合した後に、防水シート3と隣接する防水シート3を重ねた端部同士を溶着剤により溶着または熱風溶接機を用いた加熱圧着により接合する。
【0049】
また、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとを接合するだけでなく、さらに固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとを接合してもよい。固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとの接合方法としては、固定板2の少なくとも上面が熱可塑性樹脂で被覆され、防水シート3が熱可塑性樹脂製シートからなる場合には、溶剤などの溶着剤を用いて溶着する方法や、加熱圧着による方法を用いることができる。
【0050】
また、固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとを接合する場合には、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとを接合する工程と同時に行うことにより作業性が良く好ましい。例えば、シート片1および防水シート3が熱可塑性樹脂製シートからなり、固定板2の少なくとも上面2aが熱可塑性樹脂で被覆されている場合、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとを溶着剤により接合する際に固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとを同じく溶着剤により接合することが好ましい。また、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとを熱風溶接機により接合する際には固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとを同じく熱風溶接機により接合することが好ましい。
【0051】
本発明の防水シート固定工法は、既存防水層の改修にも適用することができる。
図8により既存防水層の改修における防水シート固定工法について説明する。
まず、既存防水層8の上にシート片1を配置する。この際、既存防水層8へのシート片1および防水シート3の成分移行を防ぐ目的で、予め既存防水層8の上に絶縁シート6を敷設してもよい。次にシート片1の上に固定板2を配置する。このとき、シート片1の外周より内側に固定板2が配置されるようにし、固定板2の全外周より外側にシート片1の外周縁11の上面11aが露出するよう配置することが好ましい。また、シート片1の中心と固定板2の中心とが重なるよう配置することが好ましい。
【0052】
次に固定板2の上から固定具4を固定板2およびシート片1を貫通して下地5に打ち込み固定する。固定具4により固定板2は下地5に固定され、シート片1は固定板2と固定具4により下地5に固定される。固定具4は下地5に打ち込み留め付ければよく、下地5が金属下地や木質下地の場合には固定具4としてドリルビスを使用して下地5に直接打ち込み、下地5が
図8のような鉄筋コンクリート(RC)やプレキャストコンクリート(PC)、軽量発泡コンクリート(ALC)の場合には固定具4としてアンカービスを使用し、予め下地5に形成した穴にアンカーを挿入後にビスをアンカーに打ち込み下地5に固定する。
【0053】
次に既存防水層8とシート片1及び固定板2の上に亘って防水シート3を敷設する。防水シート3は長尺状のシートであり、通常の施工においては既存防水層8の上に所定の間隔をあけて複数のシート片1と固定板2を配置して固定具4により固定した後、これらの上から長尺状の防水シート3を敷設する。複数の防水シートを敷設する場合は防水シート3と隣接する防水シート3とは端部同士を重ねて敷設する。
【0054】
防水シート3を敷設した後、固定板2の外周より外側に配置されるシート片1の外周縁11の上面11aと、その上に重なる防水シート3の下面3aとを接合する。シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとの接合方法としては、シート片1および防水シート3が熱可塑性樹脂製シートからなる場合には、溶剤などの溶着剤を用いる方法と、加熱圧着による方法がある。具体的には
図1において説明した溶接方法と同様である。また通常の施工において複数の防水シートを敷設した場合、全てのシート片1の外周縁11の上面11aと、その上に重なる防水シート3の下面3aとを接合した後に、防水シート3と隣接する防水シート3を重ねた端部同士を溶着剤により溶着または熱風溶接機を用いた加熱圧着により接合する。
【0055】
また、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとを接合するだけでなく、さらに固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとを接合してもよい。固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとの接合方法としては、固定板2の少なくとも上面が熱可塑性樹脂で被覆され、防水シート3が熱可塑性樹脂製シートからなる場合には、溶剤などの溶着剤を用いて溶着する方法や、加熱圧着による方法を用いることができる。また、固定板2の上面2aと防水シート3の下面3bとを接合する場合には、シート片1の外周縁11の上面11aと防水シート3の下面3aとを接合する工程と同時に行うことにより作業性が良く好ましい。
【実施例0056】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
本発明の防水シート固定構造における防水シートの固定強度を確認するため、以下の検証試験を行った。
【0058】
1.試験材料
シート片I:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み2.0mm、外径105mmΦ、中間層にガラスクロス積層
上面中央に深さ1.0mm、60mmΦの凹部
中央部に13mmΦ貫通孔
シート片II:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み2.0mm、外径95mmΦ、中間層にガラスクロス積層
上面中央に深さ1.0mm、50mmΦの凹部
中央部に13mmΦ貫通孔
シート片III:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み2.0mm、外径85mmΦ、中間層にガラスクロス積層
上面中央に深さ1.0mm、40mmΦの凹部
中央部に13mmΦ貫通孔
固定板I:塩化ビニル樹脂被覆鋼板(平板状、リブなし、両面被覆)
総厚み1.6mm(上層0.4mm:塩化ビニル樹脂、中間1.0mm:鋼板、下層0.2mm:塩化ビニル樹脂)
外径60mmΦ、中央部に6.2mmΦ貫通孔
固定板II:塩化ビニル樹脂被覆鋼板(平板状、リブなし、両面被覆)
総厚み1.6mm(上層0.4mm:塩化ビニル樹脂、中間1.0mm:鋼板、下層0.2mm:塩化ビニル樹脂)
外径50mmΦ、中央部に6.2mmΦ貫通孔
固定板III:塩化ビニル樹脂被覆鋼板(平板状、リブなし、両面被覆)
総厚み1.6mm(上層0.4mm:塩化ビニル樹脂、中間1.0mm:鋼板、下層0.2mm:塩化ビニル樹脂)
外径40mmΦ、中央部に6.2mmΦ貫通孔
固定板IV:塩化ビニル樹脂被覆鋼板(外周および貫通孔周囲にリブあり、上面のみ被覆)
総厚み1.0mm(上層0.4mm:塩化ビニル樹脂、下層0.6mm:鋼板)
外径87mmΦ、中央部に6.4mmΦ貫通孔
防水シート:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み1.5mm、中間層にガラスクロス積層
固定具:ステンレスビス
長さ120mm、ビス径5.8mmΦ、頭部径11mmΦ
溶着剤:テトラヒドロフランとMEKの混合液(主成分:テトラヒドロフラン)
【0059】
2.試験体作成
実施例1:
シート片Iの凹部上に固定板Iを重ねて配置し、固定具を固定板Iの上から固定板Iとシート片Iの貫通孔に貫通させ、固定具の頭部を固定板Iに密着させる。150mmφの大きさにカットした防水シートをシート片Iおよび固定板Iの上に覆い重ねて、シート片Iの外周縁の上面と固定板Iの上面およびこれらに重なる防水シートの下面に刷毛を用いて溶着剤を塗布して溶着する。温度23℃、湿度50%の条件下で5日間養生する。
実施例2:
シート片Iの代わりにシート片IIを、固定板Iの代わりに固定板IIを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
実施例3:
シート片Iの代わりにシート片IIIを、固定板Iの代わりに固定板IIIを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
実施例4:
シート片Iの凹部上に固定板Iを重ねて配置し、固定具を固定板Iの上から固定板Iとシート片Iの貫通孔に貫通させ、固定具の頭部を固定板Iに密着させる。防水シートをシート片Iおよび固定板Iの上に覆い重ねて、シート片Iの外周縁の上面およびこれに重なる防水シートの下面に刷毛を用いて溶着剤を塗布して溶着する。温度23℃、湿度50%の条件下で5日間養生する。
比較例1:
固定具を固定板Iの貫通孔に貫通させ、固定具の頭部を固定板Iに密着させる。防水シートを固定板Iの上に覆い重ねて、固定板Iの上面およびこれに重なる防水シートの下面に刷毛を用いて溶着剤を塗布して溶着する。温度23℃、湿度50%の条件下で5日間養生する。
比較例2:
固定板Iの代わりに固定板IVを用い、固定具を固定板IVの上面から貫通孔に貫通させた以外は、比較例1と同様に行った。
【0060】
3.試験方法
図6に示す、ピンチ状の把持部を有する固定治具Fとリング状の把持部を有する引張治具Tからなる固定体力測定用治具に、実施例および比較例の試験体を
図6のように固定治具Fで固定具4を挟持し、引張治具Tで防水シート3の外周端部を挟持してセットし、インストロン社製の万能試験機を使用して引張治具Tを垂直方向に引張速度200mm/minで引張試験を行った際の、最大強度を測定した。測定はn=3で行い、最大強度の平均値を各試験体の固定強度とした。また試験体の破壊状態を目視にて観察した。なお、破壊状態は以下のA~Cで判断した。
A:シート片接合部分より外周の防水シート本体の材破
B:シート片外周縁を除くシート片の材破
(固定板の下のシート片が破れ固定板が抜けた状態)
C:固定板接合部分の防水シート(裏層)の材破
【0061】
4.試験結果
表1に各実施例および比較例の結果を示す。
固定板Iを使用した実施例1および4と比較例1とを比べると、シート片を使用してシート片外周縁と防水シートとを溶着することにより、固定板のみに防水シートを溶着する従来法に比べて固定強度が大きくなっている。これは防水シートとの溶着面積が増えたことに加えて、防水シートが引っ張られる時に固定端部に係る応力が柔軟性を有するシート片によって緩和されたためと考えられる。また、実施例1~3のように防水シートとシート片の外周縁および固定板との両方に溶着することにより、固定強度がさらに大きくなる効果があり、これによって固定板の外径を小さくすることが可能であり、固定板の製造コストおよび重量を削減することも可能となる。特に、実施例1,2においては従来の先付工法である比較例1,2に比べ固定強度が1000N以上向上している。実施例3,4は固定強度としては比較例1,2と大きくは変わらないが、破壊状態ではいずれもシート片の材破となっており、防水シートの材破や剥離を防ぐ効果がある。
【0062】
本発明の防水シート固定構造は、機械的固定工法の先付け工法における防水シートの剥離や亀裂の発生を抑制するとともに、十分な固定強度を得ることができるため、広い屋上や屋根への防水シートの固定に有効に利用することができる。