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特開2024-43239インクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法。
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  • 特開-インクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043239
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】インクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法。
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/54 20140101AFI20240322BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240322BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20240322BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240322BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240322BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/30
C11D7/50
B41J2/01 501
B41J2/165 401
B41J2/165 301
B41J2/165 211
B41M5/00 120
B41M5/00 132
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148309
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】東山 俊一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H003
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC57
2C056FA10
2C056FA13
2C056FC02
2C056FD13
2C056HA42
2C056HA46
2C056JA01
2C056JA13
2C056JB02
2C056JB04
2C056JB09
2C056JB15
2C056KC02
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4H003AC03
4H003DA05
4H003DB03
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB06
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA16
4J039AD09
4J039BC09
4J039BC13
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE19
4J039BE28
4J039CA07
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水性インクの付着対象を洗浄するのに最適な、インクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法を提供する。
【解決手段】水性インク、及び水性メンテナンス液を含み、前記水性インクは、着色剤、及び溶剤群Aを含み、溶剤群Aは、含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含み、前記水性メンテナンス液は、溶剤群Bを含み、溶剤群Bは、含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含み、下記式(1)により算出される数値が1以上であることを特徴とする。
a-b(1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性インク、及び水性メンテナンス液を含み、
前記水性インクは、着色剤、及び1種類以上の溶剤からなる溶剤群Aを含み、
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含み、
前記水性メンテナンス液は、1種類以上の溶剤からなる溶剤群Bを含み、
前記溶剤群Bは、前記溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含み、
下記式(1)により算出される数値が1以上であること特徴とする、インクセット。

a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
【請求項2】
前記式(1)により算出される数値が2以上である、請求項1記載のインクセット。
【請求項3】
前記式(1)により算出される数値が3以上である、請求項1記載のインクセット。
【請求項4】
前記水性インクが、ポリマー粒子を含む、請求項1記載のインクセット。
【請求項5】
前記溶剤群Aが、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含む、請求項1記載のインクセット。
【請求項6】
さらに、凝集液を含み、
前記凝集液は、前記着色剤を凝集させる凝集剤を含む、請求項1記載のインクセット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水性インクを洗浄するための、
請求項1から6のいずれか一項に記載の水性メンテナンス液。
【請求項8】
水性メンテナンス液を付与して水性インクが付着した物体を洗浄する、洗浄工程を含み、
前記水性インクは、着色剤、及び1種類以上の溶剤からなる溶剤群Aを含み、
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含み、
前記水性メンテナンス液は、1種類以上の溶剤からなる溶剤群Bを含み、
前記溶剤群Bは、前記溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含み、
下記式(1)により算出される数値が1以上であること特徴とする、洗浄方法。

a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
【請求項9】
前記式(1)により算出される数値が2以上である、請求項8記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記式(1)により算出される数値が3以上である、請求項8記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄工程が、前記水性メンテナンス液を付与した後、前記水性インク及び前記水性メンテナンス液の混合物をワイパにより拭き取る工程である、請求項8記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄工程が、前記水性メンテナンス液を付与した後、前記水性インク及び前記水性メンテナンス液の混合物をポンプにより吸引する工程である、請求項8記載の洗浄方法。
【請求項13】
インク流路、インク付与手段、及び洗浄手段を含み、
前記インク流路に供給された請求項1から6のいずれか一項に記載の水性インクを、前記インク付与手段によって画像形成する対象物に付与し、
前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、請求項1から6のいずれか一項に記載の前記水性メンテナンス液を含む洗浄手段により洗浄することを特徴とする、画像形成システム。
【請求項14】
請求項1から6のいずれか一項に記載の前記水性インクを、インク付与手段によって画像形成する対象物に付与する画像形成工程と、
前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、請求項1から6のいずれか一項に記載の前記水性メンテナンス液により洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴とする、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置の吐出ノズル及びインク流路用の洗浄液として、様々なものが提案されている。例えば、特許文献1には、多価アルコール類と、一価アルコール類と、水と、からなる水性メンテナンス液が、特許文献2には、低級アルコールと、陰イオン性界面活性剤と、水と、からなる水性メンテナスンス液が、特許文献3には、水溶性キレート化剤と、水と、からなる水性メンテナンス液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-169876号公報
【特許文献2】特開昭62-169877号公報
【特許文献3】特開平01-148557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3においては、水性メンテナンス液がどのような物質によって構成されているかの開示はあるものの、水性インクがどのような物質によって構成されているか、開示がない。すなわち、水性インクを構成している物質と、水性メンテナンス液を構成する物質と、についてそれぞれどのような組み合わせであればより良好な洗浄性等を示すのか、つまり、水性インクと水性メンテナンス液の最適な組み合わせ(インクセット)に関する技術は開示されていない。
【0005】
そこで、本発明の発明者は、水性メンテナンス及び水性インクを構成する溶剤のそれぞれのSP値に着目したところ、最適な組み合わせを見出すことができた。本発明は、水性インクの付着対象を洗浄するのに最適なインクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のインクセットは、
水性インク、及び水性メンテナンス液を含み、
前記水性インクは、着色剤、及び1種類以上の溶剤からなる溶剤群Aを含み、
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含み、
前記水性メンテナンス液は、1種類以上の溶剤からなる溶剤群Bを含み、
前記溶剤群Bは、前記溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含み、
下記式(1)により算出される数値が1以上であること特徴とする。

a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
【0007】
本発明の水性メンテナンス液は、前記水性インクを洗浄するためのものである。
【0008】
本発明の洗浄方法は、
水性メンテナンス液を付与して水性インクが付着した物体を洗浄する、洗浄工程を含み、
前記水性インクは、着色剤、及び1種類以上の溶剤からなる溶剤群Aを含み、
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含み、
前記水性メンテナンス液は、1種類以上の溶剤からなる溶剤群Bを含み、
前記溶剤群Bは、前記溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含み、
下記式(1)により算出される数値が1以上であること特徴とする。

a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
【0009】
本発明の画像形成システムは、
インク流路、インク付与手段、及び洗浄手段を含み、
前記インク流路に供給された前記水性インクを、前記インク付与手段によって画像形成する対象物に付与し、
前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、前記水性メンテナンス液を含む洗浄手段により洗浄することを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成方法は、
前記水性インクを、インク付与手段によって画像形成する対象物に付与する画像形成工程と、
前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、前記水性メンテナンス液により洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法は、水性インクの付着対象を洗浄するのに最適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の画像形成システムで用いられるインクジェット記録装置の一例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「質量」という場合は、特に断らない限り「重量」と読み替えてもよいものとする。例えば、「質量比」は、特に断らない限り「重量比」と読み替えてもよく、「質量%」は、特に断らない限り「重量%」と読み替えてもよいものとする。
【0014】
また、本発明でいう「溶剤の溶解度パラメーター(SP値)」とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1967)に記載の方法で計算することができ、本発明においてはこの数値を採用する。SP値の単位は「(MPa)(1/2)」である。なお、以下の記載において、SP値の単位の記載は省略する場合がある。
【0015】
<インクセット>
まず、本発明のインクセットについて説明する。
【0016】
本発明のインクセットに含まれる、水性インクは、着色剤を含む。前記着色剤は、例えば、顔料、染料等を含んでもよい。
【0017】
前記顔料は、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用できる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、74、78、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、209、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;並びにこれらの顔料の固溶体等もあげられる。
【0018】
前記顔料は、樹脂分散剤によって溶媒中に分散されるものであってもよい(樹脂分散顔料ともいう)。前記樹脂分散剤としては、例えば、一般的な高分子分散剤(顔料分散用樹脂や樹脂分散剤等ともいう)等を用いてよく、自家調製してもよい。また、本発明の水性インクにおいて、前記顔料は、高分子によりカプセル化されたものであってもよい。前記樹脂分散剤としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むものを用いることができ、例えば、市販品を用いてもよい。前記樹脂分散剤は、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、又は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体からなる群から選ばれる2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等であってもよい。前記市販品としては、例えば、ジョンソンポリマー(株)製の「ジョンクリル(登録商標)611」、「ジョンクリル(登録商標)60」、「ジョンクリル(登録商標)586」、「ジョンクリル(登録商標)687」、「ジョンクリル(登録商標)63」及び「ジョンクリル(登録商標)HPD296」;ビックケミー社製の「Disperbyk190」及び「Disperbyk191」;ゼネカ社製の「ソルスパース20000」及び「ソルスパース27000」;等があげられる。
【0019】
前記顔料分散用樹脂を用いた前記顔料の分散方法としては、例えば、分散装置を使用して顔料を分散させることがあげられる。前記顔料の分散に使用する分散装置は、一般的な分散機であれば特に限定はされないが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル(例えば、高速型)等があげられる。
【0020】
前記顔料は、自己分散型顔料であってもよい。前記自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びこれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記自己分散型顔料は、例えば、特開平8-3498号公報、特表2000-513396号公報、特表2008-524400号公報、特表2009-515007号公報、特表2011-515535号公報等に記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。前記自己分散型顔料の原料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」及び「MA100」等のカーボンブラック等があげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション社製の「CAB-O-JET(登録商標)200」、「CAB-O-JET(登録商標)250C」、「CAB-O-JET(登録商標)260M」、「CAB-O-JET(登録商標)270Y」、「CAB-O-JET(登録商標)300」、「CAB-O-JET(登録商標)400」、「CAB-O-JET(登録商標)450C」、「CAB-O-JET(登録商標)465M」及び「CAB-O-JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW-2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW-3」;東洋インク製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」等があげられる。
【0021】
前記水性インク全量における前記顔料の固形分含有量(顔料固形分量)は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度及び彩度等により、適宜決定できる。前記顔料固形分量は、例えば、0.1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、2質量%~10質量%である。
【0022】
前記染料は、特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料等があげられる。前記染料の具体例としては、C.I.ダイレクトブラック、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.ダイレクトブラウン、C.I.ダイレクトグリーン、C.I.アシッドブラック、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドオレンジ、C.I.アシッドバイオレット、C.I.ベーシックブラック、C.I.ベーシックブルー、C.I.ベーシックレッド、C.I.ベーシックバイオレット、C.I.リィアクティブブルー、C.I.リィアクティブレッド、C.I.リィアクティブイエロー、C.I.フードブラック、C.I.フードレッド、C.I.フードイエロー等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラックとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、19、22、31、32、51、62、71、74、108、112、113、146、154、168及び195等があげられる。前記C.I.ダイレクトブルーとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー1、6、15、22、25、41、71、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199及び226等があげられる。前記C.I.ダイレクトレッドとしては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、17、20、23、24、28、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229及び230等があげられる。前記C.I.ダイレクトイエローとしては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、142及び173等があげられる。前記C.I.ダイレクトオレンジとしては、例えば、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46及び60等があげられる。前記C.I.ダイレクトバイオレットとしては、例えば、C.I.ダイレクトバイオレット47及び48等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラウンとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラウン109等があげられる。前記C.I.ダイレクトグリーンとしては、例えば、C.I.ダイレクトグリーン59等があげられる。前記C.I.アシッドブラックとしては、例えば、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、48、51、52、63、110、112、115、118及び156等があげられる。前記C.I.アシッドブルーとしては、例えば、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、93、100、102、104、117、120、127、138、158、161、167、220及び234等があげられる。前記C.I.アシッドレッドとしては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、37、42、51、52、80、83、85、87、89、92、94、106、114、115、133、134、145、158、180、198、249、256、265、289、315及び317等があげられる。前記C.I.アシッドイエローとしては、例えば、C.I.アシッドイエロー1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、61、71、76、98及び99等があげられる。前記C.I.アシッドオレンジとしては、例えば、C.I.アシッドオレンジ7及び19等があげられる。前記C.I.アシッドバイオレットとしては、例えば、C.I.アシッドバイオレット49等があげられる。前記C.I.ベーシックブラックとしては、例えば、C.I.ベーシックブラック2等があげられる。前記C.I.ベーシックブルーとしては、例えば、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28及び29等があげられる。前記C.I.ベーシックレッドとしては、例えば、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14及び37等があげられる。前記C.I.ベーシックバイオレットとしては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット7、14及び27等があげられる。前記C.I.リィアクティブブルーとしては、例えば、C.I.リィアクティブブルー4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44及び100等があげられる。前記C.I.リィアクティブレッドとしては、例えば、C.I.リィアクティブレッド7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46及び59等があげられる。前記C.I.リィアクティブイエローとしては、例えば、C.I.リィアクティブイエロー2、3、17、25、37及び42等があげられる。前記C.I.フードブラックとしては、例えば、C.I.フードブラック1及び2等があげられる。前記C.I.フードレッドとしては、例えば、C.I.フードレッド87、92及び94等があげられる。前記C.I.フードイエローとしては、例えば、C.I.フードイエロー3等があげられる。
【0023】
前記染料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記水性インク全量における前記染料の含有量は、例えば、0.1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、2質量%~10質量%である。
【0024】
前記水性インクは、前記着色剤を含む有色インクであってもよいし、前記着色剤を含まない無色のインクであってもよい。
【0025】
前記溶剤群Aは、1種類以上の溶剤からなり、例えば、2種類以上、3種類以上、4種類以上、5種類以上であってもよく、かつ、10種類以下、9種類以下、8種類以下、7種類以下、6種類以下であってもよい。
【0026】
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含むが、例えば、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上であってもよい。発明者は、実験を進めていくにあたって、水性インク液が、SP値が相対的に高い溶剤が多く含有するほど、後述するノズル面やヘッドキャップに対する濡れ性が低くなることを見出した。これは、水性インク液中の、SP値が相対的に高い溶剤の濃度が大きくなるほど、インク液のSP値が増加することにより、水性インク液と、ノズル面又はヘッドキャップと、の親和性が低下して、濡れ性が低くなる、と推測できるためである。具体的には、水性インク液が、前記溶剤群Aとして、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含むと、例えば、インクジェットヘッドにより水性インクを吐出した場合に、ヘッドのノズル面への水性インクの濡れ性が低下するため、ノズル面をワイプした際の水性インクの拭き取り性が良好になる。
【0027】
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または100質量%未満含んでもよい。70質量%以上であれば、前述のとおり、水性インク液中において、SP値が相対的に高い溶剤の濃度が大きくなるほど、インク液のSP値が増加し、水性インク液と、ノズル面又はヘッドキャップと、の親和性が低下して、濡れ性が低くなる。よって、70質量%以上であると、例えば、インクジェットヘッドにより水性インクを吐出した場合に、ヘッドのノズル面への水性インクの濡れ性が低下するため、ノズル面をワイプした際の水性インクの拭き取り性が良好になる。SP値が25.0の溶剤は、例えば、上記から選択可能であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
ここで、代表的な溶剤とそのSP値(カッコ内に記載の数値)を以下に示す。本発明に使用される溶剤は、例えば、下記から選択可能であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
1,2-ブタンジオール(30.3)、1,3-ブタンジオール(30.3)、1,4-ブタンジオール(30.7)、1,2-ペンタンジオール(29.0)、1,5-ペンタンジオール(29.0)、1,2-ヘキサンジオール(27.4)、1,6-ヘキサンジオール(27.7)、2-メチル-1,2-プロパンジオール(30.0)、2-メチル-2,3-ブタンジオール(28.1)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(28.4)、2-メチル-2,3-ペンタンジオール(26.8)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(27.4)、プロピレングリコール(32.6)、ジプロピレングリコール(27.2)、トリプロピレングリコール(25.4)、グリセリン(41.1)、ジグルセリン(37.6)、エチレングリコール(36.6)、ジエチレングリコール(30.7)、トリエチレングリコール(27.9)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(23.0)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.4)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(21.6)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(22.2)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(21.8)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(21.2)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)(21.4)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(20.5)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(DPnP)(20.7)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPM)(20.5)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(TPnB)(20.5)。これらの溶剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前記水性インク全量における前記溶剤群Aの含有量は、例えば、10質量%~90質量%、好ましくは、10質量%~50質量%、より好ましくは、20質量%~50質量%である。
【0031】
前記水性インクは、例えば、ポリマー粒子を含んでもよい。前記ポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-60℃~150℃、20℃~100℃、75℃以下である。前記ポリマー粒子は、例えば、ポリマーエマルションに含まれるものであってもよい。前記ポリマーエマルションは、例えば、前記ポリマー粒子と、分散媒(例えば、水等)とで構成されるものであり、前記ポリマー粒子は、前記分散媒に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径を持って分散している。
【0032】
前記ポリマー粒子としては、例えば、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系エステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート型樹脂、ポリカーボネート型樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等があげられる。前記ポリマー粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル酸系樹脂が好ましい。
【0033】
前記ポリマーエマルションとしては、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6969D」(Tg:71℃)、「モビニール(登録商標)5450」(Tg:53℃)、「モビニール(登録商標)DM772」(Tg:22℃);昭和電工(株)製の「ポリゾール(登録商標)AP-3770」;第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)150」(Tg:40℃)等があげられる。
【0034】
前記ポリマー粒子の平均粒子径は、例えば、5nm~500nm、20nm~300nm、30nm~200nmである。前記平均粒子径は、例えば、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-550」を用いて、算術平均径として測定可能である。
【0035】
前記水性インク全量における前記ポリマー粒子の含有量は、例えば、0.1質量%~30質量%、0.5質量%~20質量%、1質量%~10質量%である。前記ポリマー粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
前記水性インクは、例えば、さらに、水、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、定着剤、防腐剤、防カビ剤、架橋剤等の成分を含んでもよい。
【0037】
前記水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記水性インク全量における前記水の含有量は、例えば、10質量%~90質量%、好ましくは、20質量%~80質量%である。前記水の含有量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0038】
前記界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤があげられる。前記ノニオン性界面活性剤は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1004」、「オルフィン(登録商標)E1006」及び「オルフィン(登録商標)E1010」等があげられる。
【0039】
前記水性インク全量における前記ノニオン性界面活性剤の含有量は、例えば、0.1質量%~2質量%、好ましくは、0.3質量%~1.5質量%、より好ましくは、0.5質量%~1質量%である。
【0040】
前記界面活性剤は、さらに、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤(例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等)を含んでもよいが、ノニオン性界面活性剤のみを前記界面活性剤として用いてもよい。
【0041】
つぎに、本発明のインクセットに含まれる、水性メンテナンス液について説明する。
【0042】
前記水性メンテナンス液に含まれる、溶剤群Bは、1種類以上の溶剤からなり、例えば、2種類以上、3種類以上、4種類以上、5種類以上であってもよく、かつ、10種類以下、9種類以下、8種類以下、7種類以下、6種類以下であってもよい。
【0043】
前記溶剤群Bは、前記溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を、70質量%以上含むが、例えば、80質量%以上、90質量%以上、または100質量%未満含んでもよい。70質量%以上であれば、例えば、インクジェットヘッドにより水性インクを吐出した場合に、ノズル面等に付着した水性インクを除去することができ、かつ、水性メンテナンス液の小液滴がノズル面に残らない。SP値25.0以上の溶剤は、例えば、前記水性インクにおいて説明した溶剤から適宜選択可能である。
【0044】
前記水性メンテナンス液全量における前記溶剤群Bの含有量は、例えば、10質量%~90質量%、好ましくは、10質量%~50質量%、より好ましくは、20質量%~50質量%である。
【0045】
前記水性メンテナンス液は、例えば、さらに、水、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、定着剤、防腐剤、防カビ剤、架橋剤等の成分を含んでもよい。これらの成分は、例えば、前記水性インクで説明したものと同様であってもよい。
【0046】
本発明のインクセットは、下記式(1)により算出される数値が1以上である。
a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
【0047】
前記式(1)により算出される数値は、例えば、2以上、又は3以上であってもよく、かつ、20以下、15以下、12以下、11以下であってもよい。1以上であれば、後述する混合性、ワイプ性、洗浄性の総合的な評価結果が、良好となる。また、2以上であれば、混合性、ワイプ性、洗浄性の総合的な評価結果が、さらに良好となる。加えて、3以上であれば、混合性、ワイプ性、洗浄性の評価結果が、かなり良好となる。
【0048】
前記水性メンテナンス液は、コート紙、プラスチック、フィルム、OHPシート等の疎水性の記録媒体への濡れ性が良好なインクジェット記録用水性インク(以下、「水性インク」又は「インク」と言うことがある。)を用いたインクジェット記録装置のメンテナンスに最適に利用可能であるが、これに限定されるものではなく、例えば、普通紙、光沢紙、マット紙等の疎水性の記録媒体以外の記録媒体へのインクジェット記録に最適な水性インクを用いたインクジェット記録装置のメンテナンスにも利用可能である。本発明において、「コート紙」とは、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙等のパルプを主要な構成要素とした普通紙に、平滑性、白色度、光沢度等の向上を目的として、コート剤を塗布したものを言い、具体的には、上級コート紙、中級コート紙等があげられる。
【0049】
本発明のインクセットは、例えば、さらに、凝集液を含んでもよい。前記凝集液は、例えば、前記着色剤を凝集させる凝集剤を含む。前記凝集剤は、例えば、形成される画像品質の観点からカチオンポリマー、酸性化合物、および多価金属塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0050】
前記カチオンポリマーは、カチオン性基として、例えば、第1級~第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性モノマーの単独重合体や共重合体、及び前記カチオン性モノマーと非カチオン性モノマーとの共重合体であってもよく、前記カチオンポリマーは、水溶性ポリマー又は水分散性ポリマー粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0051】
前記カチオン性モノマーとしては、例えば、トリメチル-p-ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル-p-ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、N,N-ジメチル-N-エチル-N-p-ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N,N-トリエチル-N-2-(4-ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、メチルブロマイドによる4級化物等があげられる。具体的には、トリメチル-2-(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル-2-(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、N,N-ジメチル-N-エチル-2-(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド等があげられ、その他に共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル-2-メチルイミダゾール等もあげられる。また、アリルアミン塩酸塩、アリルアミン酢酸塩、アリルアミン硫酸塩などのアリルアミン誘導体、ジアリルエチルアミン誘導体なども利用できる。
【0052】
前記非カチオン性モノマーとしては、例えば、第1級~第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まないモノマーであり、例えば、アクリル酸エステル類、ビニルエステル類、オレフィン類などがあげられ、その中でもメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレートが好ましく、前記非カチオン性モノマーも、1種単独で又は2種以上を組合せて使用できる。
【0053】
凝集液のカチオンポリマーの含有量としては、例えば、凝集効果の観点から、凝集液の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
【0054】
前記酸性化合物を含む凝集液としては、例えば、凝集剤として、酸性化合物の少なくとも1種を用いて構成することができる。前記酸性化合物としては、例えば、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。これらの中でも、カルボキシル基を有する化合物が好ましく、例えば、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、ピロリドンカルボン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、例えば、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0055】
凝集液の酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、凝集液の全質量に対して、例えば、1~30質量%が好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。また、凝集液のpH(25℃)は、凝集速度の観点から、例えば、1~6であることが好ましく、3~5であることがより好ましい。この場合、インク液のpH(25℃)は、例えば、7.5以上が好ましく、8以上がより好ましい。
【0056】
前記多価金属塩を含む凝集液としては、例えば、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)及びランタニド類(例えば、ネオジム)の塩があげられる。前記塩としては、例えば、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。それらの中でも、例えば、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
【0057】
凝集液の多価金属塩の含有量としては、凝集効果の観点から、凝集液の全質量に対して例えば、0.5~20質量%が好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0058】
<洗浄方法>
つぎに、本発明の洗浄方法について説明する。
【0059】
本発明の洗浄方法は、水性メンテナンス液を付与して水性インクが付着した物体を洗浄する、洗浄工程を含む。前記水性メンテナンス液は、1種類以上の溶剤からなる溶剤群Bを含む。その他、前記水性メンテナンス液は、例えば、前述した本発明のインクセットにおける水性メンテナンス液と同様である。
【0060】
前記水性インクは、着色剤、及び1種類以上の溶剤からなる溶剤群Aを含む。その他、前記水性インクは、例えば、前述した本発明のインクセットにおける水性インクと同様である。
【0061】
本発明の洗浄方法は、下記式(1)により算出される数値が1以上である。
a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
その他、例えば、前述した本発明のインクセットにおける式(1)と同様である。
【0062】
前記水性インクが付着した物体は、例えば、ノズルプレート、又はキャップ等があげられる。なお、前記キャップは、ノズルプレートを覆うことで、当該ノズルプレートを外気から遮断するものであり、且つ前記ノズルプレートが外気に曝露され続けた結果、インクがノズルプレート上で乾燥してしまうのを防止するものを指す。
【0063】
前記洗浄工程は、例えば、前記水性メンテナンス液を付与した後、前記水性インク及び前記水性メンテナンス液の混合物をワイパにより拭き取る工程であってもよい。
【0064】
前記洗浄工程は、例えば、前記水性メンテナンス液を付与した後、前記水性インク及び前記水性メンテナンス液の混合物をポンプにより吸引する工程であってもよい。
【0065】
<画像形成システム、画像形成方法>
つぎに、本発明の画像形成システム、及び画像形成方法について説明する。
【0066】
本発明の画像形成システムは、インク流路、インク付与手段、及び洗浄手段を含み、前記インク流路に供給された前記水性インクを、前記インク付与手段によって画像形成する対象物に付与し、前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、前記水性メンテナンス液を含む洗浄手段により洗浄することを特徴とする。
【0067】
本発明の画像形成システムは、例えば、前記インク付与手段を備えるインクジェット記録装置と、前記洗浄手段を備える洗浄装置とを組み合わせてもよく、前記インク付与手段、及び前記洗浄手段を備える単独の装置からなるものであってもよい。
【0068】
図1に、前記インクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインク収容部(インクカートリッジ2)と、インク吐出部(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成要素として含む。
【0069】
4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。例えば、前記4色の水性インクのうちの少なくとも一つが、本発明の水性インクである。本例では、4つのインクカートリッジ2のセットを示したが、これに代えて、水性イエローインク収納部、水性マゼンタインク収納部、水性シアンインク収納部及び水性ブラックインク収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジを用いてもよい。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
【0070】
ヘッドユニット4に設置されたインクジェットヘッド3は、記録媒体(例えば、記録用紙)Pに記録を行う。キャリッジ5には、4つのインクカートリッジ2及びヘッドユニット4が搭載される。駆動ユニット6は、キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。駆動ユニット6としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。プラテンローラ7は、キャリッジ5の往復方向に延び、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
【0071】
インクジェットヘッド3は、例えば、金属製の薄板が複数層重ねて構成されている。それぞれの薄板には、貫通穴が形成されている。貫通穴が形成された薄板が複数層重なることで、前記水性インクを通すための流路が形成される。前記薄板は、例えば、それぞれ、接着剤により接着されている。
【0072】
パージ装置8は、インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。パージ装置8としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。
【0073】
パージ装置8のプラテンローラ7側には、パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。ワイパ部材20は、へら状に形成されており、キャリッジ5の移動に伴って、インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、水性インクの乾燥を防止するため、記録が終了するとリセット位置に戻されるインクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
【0074】
本例のインクジェット記録装置1においては、4つのインクカートリッジ2は、ヘッドユニット4と共に、1つのキャリッジ5に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。インクジェット記録装置1において、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、ヘッドユニット4とは別のキャリッジに搭載されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、キャリッジ5には搭載されず、インクジェット記録装置1内に配置、固定されていてもよい。これらの態様においては、例えば、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジと、キャリッジ5に搭載されたヘッドユニット4とが、チューブ等により連結され、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジからヘッドユニット4に前記水性インクが供給される。また、これらの態様においては、4つのインクカートリッジ2に代えて、ボトル形状の4つのインクボトルを用いてもよい。この場合、前記インクボトルには、外部から内部にインクを注入するための注入口が設けられていることが好ましい。
【0075】
このインクジェット記録装置1を用いたインクジェット記録は、例えば、つぎのようにして実施される。まず、記録用紙Pが、インクジェット記録装置1の側方又は下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。記録用紙Pは、インクジェットヘッド3と、プラテンローラ7との間に導入される。導入された記録用紙Pに、インクジェットヘッド3から吐出される水性インクにより所定の記録がされる。この吐出は、例えば、前述のように、第1の吐出量で行われてもよいし、特定の条件を満たした場合に第2の吐出量で行われてもよい。記録後の記録用紙Pは、インクジェット記録装置1から排紙される。図1においては、記録用紙Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
【0076】
図1に示す装置では、シリアル型インクジェットヘッドを採用するが、本発明は、これに限定されない。前記インクジェット記録装置は、ライン型インクジェットヘッドやロールトゥロールを採用する装置であってもよい。なお、前記シリアル型インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドを画像形成対象物の幅方向に往復させつつ印刷するインクジェットヘッドである。ライン型インクジェットヘッドは、画像形成対象物の幅方向全体をカバーするインクジェットヘッドである。ロールトゥロールは、ロール状の画像形成対象物を繰り出して印刷し、再びロール状に巻き取る方式である。
【0077】
前記洗浄手段は、インクジェットヘッド3、前記ワイパ、及び前記チューブ等に前記水性メンテナンス液を供給し、洗浄する(図示せず)。前記洗浄液供給手段は、インクジェットヘッド3、前記ワイパ、及び前記チューブ等に前記洗浄液を供給可能であればいかなるものであってもよい。
【0078】
前記洗浄手段について、具体的に説明する。前記洗浄手段は、例えば、ヘッドのノズル面からインク液由来の固着物を除去するために、メンテナンス液をヘッド周辺及びインク流路等(以下、ヘッド等ともいう。)に付与する。付与された前記メンテナンス液により、ノズル面のインク液由来のインク固着物は溶解、又は膨潤等して除去しやすくなる。
【0079】
また、例えば、メンテナンス液を付与する前又は後に、ブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭により、インク液由来の固着を除去してもよい。好ましくは、メンテナンス液を付与後にワイパブレードを用いてノズル面を擦り(ワイピング)、インク液由来の固着物やノズル面に付着した空気中に漂う浮遊微物由来の固形物を掻き落とす方法、風圧やメンテナンス液等の液圧等により取り除く方法、及び布・紙類で払拭する方法が好ましく、それらの中でも、ブレードによる掻き取りが好ましい。
【0080】
前記ワイパブレードの材質は、例えば、弾性を有するゴムが好ましく、具体的な材質としては、ブチルゴム、クロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、二トリルゴム等があげられる。ワイパブレードに撥インク性を付与するためにフッ素樹脂等によりコーティングしてあるワイパブレードを用いても構わない。
【0081】
本発明によれば、ノズル面の前記水性インク由来のインク固着物を容易に掻き取ることができる。
【0082】
本発明の画像形成方法は、前述した前記水性インクを、インク付与手段によって画像形成する対象物に付与する画像形成工程と、前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、前述した前記水性メンテナンス液により洗浄する洗浄工程を含む、本発明のインクセットを用いることを特徴とする。
【0083】
前記画像形成工程、例えば、図1に示すインクジェット記録装置を用いて実施できる。前記洗浄工程は、例えば、前記洗浄手段により実施できる。
【0084】
なお、本発明の画像形成方法において、凝集液を用いる場合は、例えば、凝集液を付与した後に水性インクを付与する形態が好ましい。すなわち、記録媒体上に、水性インクを付与する前に、予め水性インクに含まれる着色剤等を凝集させるための凝集液を付与しておき、記録媒体上に付与された凝集液と接触するように水性インクを付与して画像を形成する形態が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
【0085】
また、本発明の画像形成方法においては、例えば、最初に画像記録する記録媒体として中間転写体を用い、中間転写体上に凝集液付与工程と水性インク付与工程を設け、中間転写体上に画像を形成した後に中間転写体に形成された画像を所望とする最終の記録媒体に転写する転写工程を設けた方法であってもよい。この場合でも、凝集液付与工程で凝集液を付与した後に水性インク付与工程を設ける態様が好ましい。
【0086】
さらに、本発明の画像形成方法においては、例えば、凝集液付与工程後及びインク付与工程後の記録媒体上又は中間転写体上を加熱して画像を定着させる乾燥工程を有してもよい。前記乾燥工程としては、記録媒体又は中間転写体に付与された凝集液及び水性インク中に含まれる溶媒(水及び溶剤)を蒸発除去する以外は特に制限はなく、温風、ヒートプラテン、ヒートプレス等、目的に応じて適宜選択することができる。また、中間転写体を用いた画像形成方法では、例えば、中間転写体に形成された画像を所望とする最終の記録媒体に転写する転写工程の後に、乾燥工程を設けてもよい。
【0087】
さらに、水性インク中にポリマー粒子を含む場合、画像の耐水性、耐候性、耐擦過性などを強靭にするために、例えば、前記ポリマー粒子を軟化させて被膜化させることを目的とした乾燥工程を選択することもできる。
【実施例0088】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。また、以下の説明において、「部」および「%」は、特に言及のない限り、質量基準である。さらに、各種物性は、後述する測定方法に準じて測定した。
【0089】
〔樹脂分散剤の調製〕
滴下漏斗、冷却器及び攪拌機を備えたフラスコに、窒素雰囲気下にて、Terathane(登録商標)650(Invista(Wichita,KS)製のポリエーテルジオール)135g、2,2’-ジメチロールプロパン酸(DMPA)54g、スルホラン132g及びジブチルスズジラウレート(DBTDL)0.06gを加え、混合しながら60℃に加熱し、更に十分に混合した。この混合物に、m-テトラメチレンキシリレンジ
イソシアネート(TMXDI)164gを滴下漏斗によって加え、滴下漏斗中の残存TMXDIをスルホラン15gでフラスコ中にリンスした。温度を100℃に上げ、イソシアネート含有率が1.3質量%以下に達するまで100℃に維持した。つぎに、温度を60℃まで下げ、ジエタノールアミン(DEA)12.9gを5分に亘って滴下漏斗によって加え、滴下漏斗中の残存DEAをスルホラン5gでフラスコ中にリンスするまでの間、60℃に維持した。さらに、温度を60℃に1時間保持した後、3質量%水酸化カリウム水溶液376gを滴下漏斗によって10分に亘って加え、さらに、脱イオン水570gを加えた。その後、60℃に1時間維持し、室温に冷却して、固形分が24質量%の樹脂分散剤を得た。
【0090】
〔ブラック顔料分散液の調製〕
前記樹脂分散剤を、水への溶解度を高め、水への溶解を容易にするために、水酸化カリウム又はアミンのいずれかで中和した。つぎに、高圧圧縮空気式Microfluidizer(Model M-110Y、Microfluidics of Newton(Massachusetts)製)を用いて、カーボンブラックの含有量が約27質量%であり、カーボンブラックの含有量(P)と樹脂分散剤の含有量(D)との質量比がP:D=120:39の混合物を製造した。その後、最適媒体ミル粉砕条件のために、脱イオン水の添加によって、カーボンブラックの含有量を約24質量%とし、4時間かけて粉砕した。粉砕後、脱イオン水を加え、十分に混合した。つぎに、不純物をろ過して取り除いた後、脱イオン水での希釈によって、カーボンブラックの含有量を15質量%とすることにより、ブラック顔料分散液を得た。
【0091】
〔マゼンタ顔料分散液の調製〕
高圧圧縮空気式Microfluidizerに代えて、Eiger Minimill(Model M250,VSE EXP、Eiger Machinery Inc.(Chicago,Illinois)製)を用いたこと、カーボンブラックに代えてキナクリドン顔料を用いたこと、キナクリドン顔料の含有量(P)と樹脂分散剤の含有量(D)との質量比をP:D=120:28とした以外は、ブラック顔料分散液の調製と同様にして、マゼンタ顔料分散液を得た。
【0092】
〔シアン顔料分散液の調製〕
高圧圧縮空気式Microfluidizerに代えて、Eiger Minimill(Model M250,VSE EXP、Eiger Machinery Inc.(Chicago,Illinois)製)を用いたこと、カーボンブラックに代えてフタロシアニン顔料を用いたこと、フタロシアニン顔料の含有量(P)と樹脂分散剤の含有量(D)との質量比をP:D=120:32とした以外は、ブラック顔料分散液の調製と同様にして、シアン顔料分散液を得た。
【0093】
〔水性インク1~3の調製〕
表1におけるアクリル樹脂エマルション並びにブラック顔料分散液を除く成分を、均一に混合してインク溶媒を得た。尚、界面活性剤として日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」 と、防腐剤水溶液としてアークサーダジャパン(株)販売の「Proxel(登録商標)GXL」(防腐剤濃度20wt%)を使用した。 次に、アクリル樹脂エマルションとしてジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6969D」を前記インク溶媒に加え、均一に混合した後、前記ブラック顔料分散液を前記樹アクリル樹脂エマルションが混合されたインク溶媒に加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表1に示す水性インク1~3を得た。
【0094】
〔水性インク4、6の調製〕
ブラック顔料分散液に代えて、前記シアン顔料分散液を用いたこと以外は、水性インク1の調整と同様にして、水性インク4、6を得た。
【0095】
〔水性インク5の調製〕
ブラック顔料分散液に代えて、前記マゼンタ顔料分散液を用いたこと以外は、水性インク1の調整と同様にして、水性インク5を得た。
【0096】
〔水性メンテナンス液1~9の調製〕
表2における全成分を、均一に混合して水性メンテナンス液を得た。なお、界面活性剤として日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」 と、防腐剤水溶液としてアークサーダジャパン(株)販売の「Proxel(登録商標)GXL」 (防腐剤濃度20wt%)を使用した。その後、得られた混合物を東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表2に示す水性メンテナンス液1~9を得た。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
[実施例1~11及び比較例1~3]
調整した水性インク1~6を水性メンテナンス液1~9を用いて洗浄した場合の結果は、表3に示す実施例1~11及び比較例1~3のようになった。
【0100】
なお、実施例1~11及び比較例1~3の洗浄液について、(a)混合性評価、(b)ワイプ性評価、及び(c)洗浄性評価の結果を、下記方法により実施した。
【0101】
(a)混合性評価
シャーレに水性メンテナンス液を液深さ1mm程度になるように入れ、その中心にスポイトにより水性インク1滴を滴下し、インクの広がり具合を観察した。なお、下記評価基準において「速度」とは、水性メンテナンス液の拡散速度のことをいい、滴下してから拡散し始めるまでの時間ではない。
【0102】
混合性評価 評価基準
AA:滴下させた直後から、水性インクが水性メンテナンス液中へ広がり始めることが確認できた。
A:滴下させた直後から、AAよりもゆっくりした速度で水性インクが水性メンテナンス液中へ広がり始めることが確認できた。
B:滴下させた直後から、Aよりも更にゆっくりした速度で水性インクが水性メンテナンス液中へ広がり始めることが確認できた。
C:滴下させた直後は変化が確認できず、1分後には水性インクが水性メンテナンス液中へ少し広がっていることが確認できた。
【0103】
(b)ワイプ性評価
ヘッドから40分間インクを連続吐出させ、水性インクのサテライト等が付着したヘッドのノズルを、水性メンテナンス液を付着させたゴム製ワイパでノズル面をワイプし、水性インクの拭き取り具合を観察した。
【0104】
ワイプ性評価 評価基準
AA:ワイプ回数1回又は2回で、ノズル面の水性インクの付着を取り除くことができた。
A:ワイプ回数3回又は4回で、ノズル面の水性インクの付着を取り除くことができた。
B:ワイプ回数5回又は6回で、ノズル面の水性インクの付着を取り除くことができた。
C:ノズル面の水性インクの付着をきれいに取り除くには、ワイプ回数7回以上を要した。
【0105】
(c)洗浄性評価
パージ等によりヘッドキャップ内に入って乾燥した水性インクを水性メンテナンス液で洗浄することを考慮して、洗浄性を評価した。まず、水性インク1滴(約0.05ml)を、スポイトを用いてスライドガラス上に滴下した。その後、このスライドガラスを40℃のオープンに入れて30分放置した。これを常温に戻した後、スライドを水平から約10°傾けて置き、乾燥が進んだインク滴の上に水性メンテナンス液を滴下した。水性メンテナンス液は、スポイトを用いて1秒間隔で連続的に滴下(1滴辺り約0.05ml)し、この時の水性インクの流れ落ち具合を観察した。なお、水性メンテナンス液の滴下には水性インクの滴下に使用したスポイトと同じ種類のものを使用し、かつ、すべて未使用のスポイトを使用した。
【0106】
洗浄性評価 評価基準
AA:1滴目の滴下から水性インクが流れ落ち、20~30滴で水性インクが完全になくなった。
A:水性インクが流れ落ち具合はAAよりも劣るものの、1滴目の滴下から水性インクが流れ落ち、30~60滴で水性インクが完全になくなった。
B:水性インクが流れ落ち具合はAよりも劣るものの、2~3滴目の滴下から水性インクが流れ落ち、60~120滴で水性インクが完全になくなった。
C:水性インクが流れ落ち具合はBよりも劣り、3滴目まではほとんど変化が確認できず、その後の滴下で水性インクが流れ落ち、インクが完全になくなるまでには120滴以上を要した。
【0107】
なお、上記3つの評価結果(AA,A,B,C)の中で、最も悪い結果を総合評価結果とした。
【0108】
【表3】
【0109】
表3に示すとおり、実施例1~11では総合評価がB以上であり、良好であった。また、a-b≧2である実施例2、5、7、10、11は、総合評価がA以上であり、さらに良好であった。実施例1、4、8は、総合評価がAAであり、特に良好であった。
【0110】
一方、a-b<1である比較例1、2は、ワイプ性評価はB以上であったものの、混合性評価及び洗浄性評価がCで不良であった。また、比較例3は、a-b≧1を満たすものの、溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含まなかったため、混合性評価及び洗浄性評価はA以上であったものの、ワイプ性評価がCで不良であった。さらに、比較例4は、溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含まず、かつ、溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含まなかったため、混合性評価及び洗浄性評価はB以上であったものの、ワイプ性評価がCで不良であった。比較例5は、溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含まなかったため、混合性評価及び洗浄性評価はB以上であったものの、ワイプ性評価がCで不良であった。
【0111】
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
<付記>
(付記1)
水性インク、及び水性メンテナンス液を含み、
前記水性インクは、着色剤、及び1種類以上の溶剤からなる溶剤群Aを含み、
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含み、
前記水性メンテナンス液は、1種類以上の溶剤からなる溶剤群Bを含み、
前記溶剤群Bは、前記溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含み、
下記式(1)により算出される数値が1以上であること特徴とする、インクセット。

a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)

(付記2)
前記式(1)により算出される数値が2以上である、付記1記載のインクセット。
(付記3)
前記式(1)により算出される数値が3以上である、付記1記載のインクセット。
(付記4)
前記水性インクが、ポリマー粒子を含む、付記1から3のいずれかに記載のインクセット。
(付記5)
前記溶剤群Aが、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含む、付記1から4のいずれかに記載のインクセット。
(付記6)
さらに、凝集液を含み、
前記凝集液は、前記着色剤を凝集させる凝集剤を含む、付記1から5のいずれかに記載のインクセット。
(付記7)
付記1から6のいずれかに記載の水性インクを洗浄するための、
付記1から6のいずれかに記載の水性メンテナンス液。
(付記8)
水性メンテナンス液を付与して水性インクが付着した物体を洗浄する、洗浄工程を含み、
前記水性インクは、着色剤、及び1種類以上の溶剤からなる溶剤群Aを含み、
前記溶剤群Aは、前記溶剤群Aに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値27.5(MPa)(1/2)以上の溶剤を30質量%以上含み、
前記水性メンテナンス液は、1種類以上の溶剤からなる溶剤群Bを含み、
前記溶剤群Bは、前記溶剤群Bに含まれる溶剤の質量の合計に対して、SP値25.0(MPa)(1/2)以上の溶剤を70質量%以上含み、
下記式(1)により算出される数値が1以上であること特徴とする、洗浄方法。

a-b (1)
a:前記溶剤群Aに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)
b:前記溶剤群Bに含まれる溶剤のSP値(MPa)(1/2)の質量加重平均(MPa)(1/2)

(付記9)
前記式(1)により算出される数値が2以上である、付記8記載の洗浄方法。
(付記10)
前記式(1)により算出される数値が3以上である、付記8記載の洗浄方法。
(付記11)
前記洗浄工程が、前記水性メンテナンス液を付与した後、前記水性インク及び前記水性メンテナンス液の混合物をワイパにより拭き取る工程である、付記8から10のいずれかに記載の洗浄方法。
(付記12)
前記洗浄工程が、前記水性メンテナンス液を付与した後、前記水性インク及び前記水性メンテナンス液の混合物をポンプにより吸引する工程である、付記8から11のいずれかに記載の洗浄方法。
(付記13)
インク流路、インク付与手段、及び洗浄手段を含み、
前記インク流路に供給された付記1から6のいずれかに記載の水性インクを、前記インク付与手段によって画像形成する対象物に付与し、
前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、付記1から6のいずれかに記載の前記水性メンテナンス液を含む洗浄手段により洗浄することを特徴とする、画像形成システム。
(付記14)
付記1から6のいずれかに記載の前記水性インクを、インク付与手段によって画像形成する対象物に付与する画像形成工程と、
前記インク付与手段に付着した前記水性インクを、付記1から6のいずれかに記載の前記水性メンテナンス液により洗浄する洗浄工程と、を含むことを特徴とする、画像形成方法。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明のインクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法によれば、水性インクの付着対象を洗浄するのに最適である。本発明のインクセット、水性メンテナンス液、洗浄方法、画像形成システム、及び、画像形成方法は、各種画像形成する対象物への画像形成に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インク吐出部(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置

図1