(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043243
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】撹拌装置及び撹拌方法
(51)【国際特許分類】
B01F 29/62 20220101AFI20240322BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240322BHJP
B01F 35/42 20220101ALI20240322BHJP
【FI】
B01F29/62
B41J2/175 119
B01F35/42
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148322
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 栄一
【テーマコード(参考)】
2C056
4G036
4G037
【Fターム(参考)】
2C056EC46
2C056EE18
2C056KC02
2C056KD10
4G036AA07
4G037EA05
(57)【要約】
【課題】撹拌動作が終了した際に、カートリッジを保持に適した姿勢とすることができる。
【解決手段】撹拌装置1が、静置されることで溶媒L1中に溶質L2が沈降する液剤であるインクを収容するカートリッジ2を保持した状態で回転動作する回転保持部12と、回転保持部12を回転動作させる回転機構10と、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」とは異なる「第2姿勢」の状態で回転機構10の動作が停止した場合に、カートリッジ2が「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正する姿勢制御部(第2の姿勢制御部)としてのばね部材としての引っ張りコイルバネ133等と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静置されることで溶媒中に溶質が沈降する液剤を収容するカートリッジを保持した状態で回転動作する回転保持部と、
前記回転保持部を回転動作させる回転機構と、
前記カートリッジが正規の停止姿勢である第1姿勢とは異なる第2姿勢の状態で前記回転機構の動作が停止した場合に、前記カートリッジが前記第1姿勢となるように前記回転保持部の停止位置を矯正する姿勢制御部と、
を備えることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記姿勢制御部は、前記カートリッジが前記第1姿勢となる位置で前記回転保持部が停止するように負荷を付与するばね部材を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記姿勢制御部は、前記カートリッジが前記第1姿勢となる位置で前記回転保持部が停止するように前記回転保持部の重心を設定する錘を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記姿勢制御部は、前記カートリッジが前記第1姿勢となる位置で前記回転保持部を停止させる磁石を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記姿勢制御部は、前記回転保持部の停止位置を検出する検出手段と、検出手段による検出結果に基づいて前記カートリッジが前記第1姿勢となる位置で前記回転保持部が停止するように前記回転機構の動作を制御する動作制御部と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記カートリッジは液剤を吐出させる吐出口を備え、前記吐出口が設けられた面とは異なる面に通気口を備えており、前記第1姿勢は、前記吐出口が設けられた面を下にした状態の姿勢である、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の撹拌装置。
【請求項7】
静置されることで溶媒中に溶質が沈降する液剤を収容するカートリッジを保持した状態で回転保持部を回転動作させる回転工程と、
前記カートリッジが第1姿勢とは異なる第2姿勢の状態で前記回転工程における前記回転動作が停止した場合に、前記カートリッジが正規の停止姿勢である前記第1姿勢となるように前記回転保持部の停止位置を矯正する姿勢制御工程と、を含む、
ことを特徴とする撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌装置及び撹拌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネイルプリントを行う印刷装置(ネイルプリンタ)では、デザインを印刷する前の下地として白色等の下地用インクを塗布する。この下地用インクは白色成分として酸化チタン等を含んでいるが、酸化チタン等は比重の大きな溶質である。こうした比重の大きな溶質を含む液剤(インク)では、静置しておくと溶質の沈降が起こりやすい。
溶質の沈降が生じたインクを用いて印刷を行うと、印刷品位の低下を招く原因となる。
【0003】
この点、例えば特許文献1には、カートリッジ(印刷ヘッド)を収容するカートリッジホルダーを回動させることにより、撹拌を行う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にカートリッジには、インクを吐出させる吐出面(ヘッド面)と異なる面に開口する通気口が設けられている。このため、通気口が設けられている面が下に向いた状態で放置、保管(保持)されると外圧がかかった際等に通気口からインクが漏出するおそれがあり望ましくない。
また通気口が設けられている面が下に向いた状態では、酸化チタン等の溶質が通気口を目詰まりさせるおそれもある。通気口が塞がれてしまうとインクを良好に吐出させることができなくなってしまう。
しかしながら、特許文献1はこうした通気口に配慮した構成について言及がなく、撹拌動作終後にカートリッジにとって不適な姿勢のまま保持されてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、撹拌動作が終了した際に、カートリッジを保持に適した姿勢とすることができる撹拌装置及び撹拌方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の撹拌装置の一態様は、
静置されることで溶媒中に溶質が沈降する液剤を収容するカートリッジを保持した状態で回転動作する回転保持部と、
前記回転保持部を回転動作させる回転機構と、
前記カートリッジが正規の停止姿勢である第1姿勢とは異なる第2姿勢の状態で前記回転機構の動作が停止した場合に、前記カートリッジが前記第1姿勢となるように前記回転保持部の停止位置を矯正する姿勢制御部と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撹拌動作が終了した際に、カートリッジを保持に適した姿勢とすることができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る撹拌装置及び撹拌装置によって撹拌されるカートリッジの外観構成を示す要部斜視図である。
【
図2】カートリッジが搭載された状態の撹拌装置の外観構成を示す要部斜視図である。
【
図3】回転保持部及び回転機構を装置斜め前方から見た場合の要部構成を示す斜視図である。
【
図4】回転保持部及び回転機構を装置斜め後方から見た場合の要部構成を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態における撹拌装置にセットされるカートリッジの斜視図であり、(a)は、カートリッジを吐出面(ヘッド面)側から見た図であり、(b)は、カートリッジを天面側から見た図である。
【
図6】本実施形態におけるカートリッジの要部側断面図であり、(a)は、インクの分離が進んだ撹拌前の状態を模式的に示した図であり、(b)は、インクが十分に撹拌され再分散化された撹拌後の状態を模式的に示した図である。
【
図7】本実施形態の回転機構に姿勢制御部を構成する復帰ホイールを取り付ける様子を装置の前方から見た斜視図である。
【
図8】本実施形態の回転機構に姿勢制御部を構成する復帰ホイールを取り付ける様子を装置の後方から見た斜視図である。
【
図9】復帰ホイールと係止凸部とに引っ張りコイルバネを取り付けた状態を装置の後方から見た斜視図である。
【
図10】(a)は、カートリッジが第2姿勢のときに回転保持部が停止した状態を示す装置の正面側からの模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の背面側から見た模式的平面図であり、(c)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の後方から見た模式的斜視図である。
【
図11】(a)は、カートリッジが第1姿勢のときに回転保持部が停止した状態の回転保持部及び回転機構を装置の背面側から見た模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の後方から見た模式的斜視図であり、(c)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の正面側から見た模式的平面図である。
【
図12】(a)は、本実施形態の一変形例に係る撹拌装置においてカートリッジが第2姿勢のときに回転保持部が停止した場合の回転保持部及び回転機構を装置の背面側から見た模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の後方から見た模式的斜視図である。
【
図13】(a)は、本実施形態の一変形例に係る撹拌装置においてカートリッジが第1姿勢のときに回転保持部が停止した場合の回転保持部及び回転機構を装置の背面側から見た模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の後方から見た模式的斜視図である。
【
図14】(a)は、本実施形態の一変形例に係る撹拌装置においてカートリッジが第2姿勢のときに回転保持部が停止した場合の回転保持部及び回転機構を装置の背面側から見た模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の後方から見た模式的斜視図である。
【
図15】(a)は、本実施形態の一変形例に係る撹拌装置においてカートリッジが第1姿勢のときに回転保持部が停止した場合の回転保持部及び回転機構を装置の背面側から見た模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す状態の回転保持部及び回転機構を装置の後方から見た模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図11を参照しつつ、本発明に係る撹拌装置及び撹拌方法の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
[撹拌装置の構成]
本実施形態の撹拌装置1は、カートリッジ2を保持した状態で回転動作する回転保持部12と、この回転保持部12を回転動作させる回転機構とを有している。
図1は、撹拌装置とこれにセットされるカートリッジを示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す太矢印方向にカートリッジを押し込んで回転保持部にセットした状態を示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、回転保持部12は本体部11上に設置され、支持されている。本体部11は、回転保持部12が回転動作した際にも安定して回転保持部12を支持することができるようにある程度の重量を有することが好ましい。
【0012】
本実施形態において本体部11は、回転機構10等を収容する本体カバーとして筐体110を有している。なお、
図1及び
図2以外では筐体110内部の構成を示すために、筐体110を外した状態を示している。
筐体110の形状等は特に限定されないが、例えば装置の前側に回転保持部12を受ける受入れ部11aが形成されており、回転保持部12は受入れ部11a上に保持される。受入れ部11aは回転保持部12の回転動作を阻害しないように回転保持部12の外形形状に沿う形状に形成されている。
【0013】
例えば本実施形態では
図1及び
図2に示すように、回転保持部12はカートリッジ2をセットする収納凹部121を有する面の側から正面視した場合にほぼ円形状である円筒形状の部材である。受入れ部11aは円筒形状の回転保持部12の外側面を受ける。このため受入れ部11aは回転保持部12の側面外周に沿うように、ほぼ円弧状に形成された窪みである。
回転保持部12は、本体部11の受入れ部11aにセットされた状態で、
図2に矢印で示す回転方向Rに回転可能となっている。なお、本実施形態では、回転保持部12は、時計回り、反時計回りのどちらにも回転可能となっている。
図10(a)等では撹拌装置1を正面から見た場合の時計回り方向(正方向)をデフォルトの回転方向R(
図10(a)において回転方向R1と示す)とする。
【0014】
また、筐体110内であって受入れ部11aにおける円弧の最も深くなっている部分(
図1、
図2に示すように、本実施形態では装置幅方向のほぼ中央部)には、位置検出部として、フォトインタラプタ(以後PIとする)132が設けられている。PI132は、図示しない発光部と受光部とを対向する位置に備え、発光部からの光を受光部で受ける。そして発光部からの光が遮られると、検出信号を発生させる。PI132により発せられた検出信号は後述のモータ制御部50に出力される。
【0015】
本体部11の外側面(例えば本体部11の上面等)には、図示しない操作部が設けられている。操作部の構成は特に限定されず、操作ボタン等を備えるものであってもよいし、タッチ操作可能な操作パネル等であってもよい。
本実施形態では、ユーザが操作部を操作することで撹拌装置1の動作状態のON/OFFを切り替えたり、各種設定等を行うことが可能となっている。
【0016】
また、本実施形態において操作部は、後述の回転機構10による回転保持部12の回転速度や撹拌時間、回転方向等が設定可能であってもよい。ここで回転速度とは、回転保持部12を回転動作させる後述の駆動モータ112の回転速度であり、例えば1分間で回転する回転数(rpm)で示すことのできる値である。また、本実施形態において撹拌時間とは、回転保持部12が回転動作する時間(すなわち駆動モータ112の回転動作時間)である。また回転方向は、前述のように時計回り方向(正方向)をデフォルトの回転方向R1とするが、設定に応じて逆回転してもよいし、所定時間ごとに適宜反転するように設定できてもよい。
【0017】
なお、撹拌装置1の各種設定・操作は、例えばスマートフォン等の各種端末装置、その他の図示しない外部装置からの通信を受け付けることで行われてもよい。この場合には、例えば本体部11内等に外部機器との間で信号の送受信が可能な通信部が設けられる。
その他、本体部11の上面や側面には、動作状況等をモニタすることのできる表示部やインジケータ等が設けられていてもよい。
【0018】
本体部11の筐体110の内部には、シャーシ111に組み付けられた回転機構10が収容されている。
図3は、回転保持部及び回転機構を装置斜め前方から見た場合の要部構成を示す斜視図であり、
図4は、回転保持部及び回転機構を装置斜め後方から見た場合の要部構成を示す斜視図である。
【0019】
回転機構10は、回転保持部12を回転動作させるものである。
図3及び
図4に示すように、回転機構10は、駆動モータ112、駆動モータ112の回転を回転保持部12に伝えて回転保持部12を回転動作させる歯車機構等を含んでいる。
さらに回転機構10は、駆動モータ112の動作制御を行うモータ制御部50(駆動制御回路等、
図1及び
図2参照)、駆動モータ112等に電源を供給する電源部51(
図1及び
図2参照)等を含んでいる。なお電源部51は、例えば電源回路等である。電源部51は本体部11内部に収容された電池等から電源供給を受けるものであってもよいし、各種I/Fを介して外部から電源供給を受けるものでもよい。
駆動モータ112は、電源部51からの電源供給を受けるとともに、モータ制御部50(駆動制御回路等)によってその動作を制御されるようになっている。
【0020】
本実施形態の駆動モータ112は、出力等を調整可能であってもよく、この場合には例えば前述の操作部で受け付けられた設定内容にしたがって動作する。すなわちこの場合、駆動モータ112は、設定された任意の回転速度、任意の時間、任意の回転方向に回転動作するようにモータ制御部50によって制御される。
なお、前述のように回転方向は時計回りでも反時計回りでもよく、例えば時計回りの回転と反時計回りの回転とがランダムに切り替えられるようになっていてもよい。
【0021】
また回転機構10の歯車機構は、駆動モータ112と回転保持部12との間に介在する複数のギヤ等で構成される。
すなわち駆動モータ112のモータ軸113には、減速ギヤ115と噛み合うピニオンギヤ114が取り付けられている。減速ギヤ115には回転保持部12を回転させる回転駆動ギヤ117と噛み合うピニオンギヤ116が、減速ギヤ115と同軸に設けられている。
これにより、駆動モータ112の回転は、減速ギヤ115を介して回転体駆動ギヤ117に伝達され、回転体駆動ギヤ117が回転保持部12と連結されることで回転保持部12が駆動モータ112により回転する。
【0022】
駆動モータ112の出力回転数は、歯車機構を介することで適宜減速される。そして、回転駆動ギヤ117に伝達される段階で回転数10rpm付近となるように設定されることが好ましい。例えば駆動モータ112の回転数が200rpmである場合、減速比20の歯車機構(ギヤ列)を介して出力させることで回転数10rpmとすることができる。なお、駆動モータ112として10rpm付近を出力する低速モータを用いた場合には歯車機構を介して減速する必要がなく、減速ギヤ115及び回転駆動ギヤ117を設けずに駆動モータ112のモータ軸113に直接回転保持部12を連結させてもよい。減速ギヤ115、回転駆動ギヤ117といった歯車機構が不要となれば、その分部品点数を減らして装置構成を簡易化することができる。
【0023】
回転駆動ギヤ117の回転中心に設けられた軸(回転軸)は、
図3に示すように、回転保持部12と連結される側の端部が、十字形状に突出した十字凸部119となっている。他方で回転保持部12は、円筒の円の中心を通る回転中心(
図4において1点鎖線で示す)に設けられた軸122周りに回転するようになっており、軸122における回転駆動ギヤ117との連結側端部には、回転駆動ギヤ117の十字凸部119と嵌合し合う十字収納凹部123が形成されている。
回転保持部12は、軸122の十字収納凹部123に回転駆動ギヤ117の十字凸部119が嵌合されることで、回転駆動ギヤ117と連結され、連動して回転する。すなわち回転保持部12は、駆動モータ112が回転し回転駆動ギヤ117が回転すると、軸122を中心として、回転駆動ギヤ117の回転に応じて回転動作する。
【0024】
回転保持部12は、静置されることで溶媒中に溶質が沈降する液剤(インクL)を収容するカートリッジ2を保持した状態で回転動作するものである。回転保持部12における装置正面側に配置される面には、カートリッジ2が収納される収納凹部121が形成されている。
図1及び
図2に示すように、収納凹部121は、撹拌装置1による撹拌の対象となるカートリッジ2の外形形状に合った形状に形成されており、丁度カートリッジ2を嵌め込むことができるようになっている。収納凹部121はカートリッジ2の形状に合うものであればよく、カートリッジが矩形であれば矩形とし、円筒形等であれば円筒形の凹部とする。
【0025】
また収納凹部121の周囲には、脱落防止用の係止部として係止用フック125が設けられている。本実施形態では、
図1及び
図2等に示すように、収納凹部121において、カートリッジ2の長手方向に対応する両側に係止用フック125が一対設けられている。係止用フック125により、カートリッジ2は横方向(左右方向)から回転保持部12に係止される。
係止用フック125は、例えば可撓性(ばね性)を有するアーム125aの先端に係止爪125bを有するフック状の部材であり、手で押し広げることで撓み、カートリッジ2を着脱することが可能となる。また押し広げる手を離すとカートリッジ2を両側から抱え込むように押さえ、回転保持部12が回転動作した際に収納凹部121からカートリッジ2が抜け落ちないように係止する。
【0026】
なお、係止部はカートリッジ2の脱落を防止できるものであればよく、図示例に限定されない。例えばカートリッジ2を上下方向から係止するものであってもよい。また上下左右に係止部を設けて4方向からカートリッジ2を係止させてもよい。さらに係止部は回転保持部12に固定されているものであってもよいし、例えば収納凹部121にカートリッジ2を嵌め込んだ後に取り付けられる、カートリッジ2を外側から押さえるバンドやテープ等であってもよい。係止部が設けられていることで、回転保持部12が回転動作してもカートリッジ2が収納凹部121内でガタついたり、収納凹部121から抜け落ちたりしないようになっている。
【0027】
さらに回転保持部12の外周面等には、原点指標となる凸部131が設けられている。
凸部131は、カートリッジ2の下側面(
図1、
図2における下側の面、
図5(a)等において吐出面23)が下を向いた状態(後述するように、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」にある状態)となるように収納凹部121内にカートリッジ2をセットした場合に、回転保持部12の下側に配置される位置等に配置されている。
凸部131が筐体110内に設けられているPI132の位置に配置されると受光部からの光が遮られ、PI132からモータ制御部50に検出信号が出力される。本実施形態では、PI132が凸部131を検出すると、回転保持部12が、カートリッジ2を「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」にある状態で保持している、「原点復帰」した状態であるとされる。
【0028】
ここで本実施形態の撹拌装置1にセットされて撹拌処理が行われるカートリッジ2について説明する。
カートリッジ2は、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、外形形状がほぼL字状の箱型に形成された筐体21を備える。
筐体21内には液剤としてのインクL(
図6(a)及び
図6(b)参照)が貯留されている。本実施形態のカートリッジ2としては、インクLを貯留する図示しない貯留部と、印刷時に貯留部に貯留されたインクLを吐出させる図示しないインク吐出部(吐出口22等を含む)とを備えるカートリッジ一体型の印刷ヘッドが想定される。
なお、カートリッジ2は、貯留部とインク吐出部とが一体となった構成のものに限定されない。例えば、カートリッジはインクを吐出させるヘッド部分とは別に構成され、印刷の際には貯留部を有するカートリッジを、供給管等を介してヘッド部分と接続する構成のものであってもよい。この場合にはインクを貯留するカートリッジの部分のみを撹拌装置1にセットして撹拌を行う。
【0029】
図5(a)及び
図5(b)等に示すように、カートリッジ2の筐体21の下側面がインクを吐出させる吐出面23(ヘッド面)となっており、この吐出面23にはインク吐出部を構成する吐出口22が形成されている。インク吐出部は、例えばピエゾ素子等を用いてインクLを微細な液滴として吐出させることができるものであり、吐出口22にはインクLの液滴を吐出させる図示しないノズル(ノズルアレイ)が列状に形成されている。
なお、吐出口22が設けられた面(すなわち吐出面23)を下にした状態のカートリッジ2の姿勢(例えば
図1、
図2、
図6(a)及び
図6(b)等参照)を「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」とし、これ以外の面が下になっている状態のカートリッジ2の姿勢(例えば
図10(a)等参照)を「第2姿勢」とする。
【0030】
またカートリッジ2は、吐出口22が設けられた面(吐出面23)とは異なる面に通気口25を備えている。本実施形態では吐出口22が設けられた面(吐出面23)に対向する面(天面24)に通気口25が形成されている。カートリッジ2は通気口25から空気を取り込み内部で循環させることで印刷時において吐出口22から円滑にインクLを吐出させることができる。
【0031】
この点、本実施形態においてカートリッジ2に貯留されている液剤であるインクLは、例えば水等を溶媒L1とし、酸化チタン等を溶質L2(いずれも
図6(a)参照)として含む、白色若しくはこれに近い色(例えば白に近いピンクやブルー等)の下地用インクである。
例えば指の爪に印刷を行う場合には、カラーインク等を用いてデザイン(ネイルデザイン)を印刷する前に下地用インクを爪に塗布する。これにより、カラーインクの発色向上等を図ることができ、美しい仕上がりの印刷(ネイルプリント)を行うことができる。
【0032】
しかし、酸化チタン等を溶質L2として含む下地用インク等では、溶質L2の比重が大きく、静置されると溶媒L1と分離して沈降しやすい。
図6(a)は、溶質が沈降して、溶媒と溶質とが分離した状態を模式的に示すカートリッジの断面図であり、
図6(b)は、撹拌装置により撹拌処理により、溶媒と溶質とが再分散化した状態を模式的に示すカートリッジの断面図である。
【0033】
図6(a)に示すような状態のインクLで印刷を行うと、濃度むら、色むら等を生じやすく、適切な濃度で高品位の印刷を行うことができない。
これに対して、
図6(b)に示すような再分散化した後のインクLは全体的に均質化され、このようなインクLを用いれば濃度むら等のない、きれいな仕上がりの印刷を行うことができる。
なお、カートリッジ2は、下地用インク等のインクLを液剤として収容するものに限定されない。溶媒L1よりも比重の大きな溶質L2を含み、静置されることで溶質L2が沈降するような液剤を収容するカートリッジ2であれば広く含まれる。
【0034】
このように、溶媒L1よりも比重の大きな溶質L2を含み、静置されることで溶質L2が沈降するような液剤を収容するカートリッジ2の場合、通気口25が形成されている面(本実施形態では天面24、
図6(a)及び
図6(b)等参照)が下になった状態で放置されると、比重の大きな溶質L2が下に沈み通気口25を目詰まりさせてしまったり、塞いでしまったりする可能性がある。
通気口25が塞がれてしまうと適切にインクLを吐出させることができなくなる。またカートリッジ2内にはインクLの吐出量を調整する等のために図示しないスポンジが配置されている。このため通気口25が下になっても直ちに通気口25からインクが出ることは考えにくいが、外圧が加わった際等に通気口25からインクLが漏出するおそれがある。
【0035】
通気口25の位置はカートリッジ2の種類等によって異なる可能性があるが、通気口25は少なくとも吐出口22が設けられた面(吐出面23)とは異なる面に設けられている。このため、カートリッジ2が、吐出口22が設けられた面(吐出面23)を下にした状態の姿勢(すなわち「第1姿勢」)となっていれば、通気口25が下にならず、溶質L2の沈降による悪影響を受けることがない。
このため、撹拌装置1で撹拌を行った場合に、カートリッジ2が、吐出口22が設けられた面(吐出面23)を下にした状態の姿勢である「第1姿勢」を「正規の停止姿勢」とし、これ以外の姿勢(すなわち「第2姿勢」)で停止した場合にカートリッジ2が「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正する。なおカートリッジ2が「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正することを、この実施形態において回転保持部12を「原点復帰」させる、という。
【0036】
撹拌装置1では、装置が正常に停止した場合(例えばユーザが撹拌動作の終了を入力操作で指示した場合や、撹拌時間(回転時間)を設定した場合に設定した時間が経過したことで装置が自動的に停止する場合等)には、一旦駆動モータ112が動作を中断してもモータ制御部50による制御は可能な状態が維持されている。このためモータ制御部50は、筐体110内に設けられたPI132が原点指標となる凸部131を検出したとの検出信号を出力するまで駆動モータ112を動作させ、PI132から検出信号が出力されたタイミングでモータ制御部50が駆動モータ112を停止させる。
【0037】
これにより、凸部131が設けられている位置を下にした状態で回転保持部12を停止させることができる。前述のように凸部131は、回転保持部12の収納凹部121にカートリッジ2がセットされた際、吐出口22が設けられた面(吐出面23)が下になるように回転保持部12を配置させた場合に下側となる位置に設けられている(
図1及び
図2等参照)。
このため、PI132が凸部131を検出したときに駆動モータ112を停止させれば、カートリッジ2が、吐出口22が設けられた面(吐出面23)を下にした状態の「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となったとき、すなわち、回転保持部12が「原点復帰」した位置となったときに停止する。
【0038】
本実施形態の撹拌装置1は、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」とは異なる「第2姿勢」の状態で回転機構10の動作が停止した場合に、カートリッジ2が「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正する姿勢制御部を有している。
すなわち、装置が正常に停止した場合には、上記のように凸部131を検出するPI132が回転保持部12の停止位置を検出する検出手段として機能し、モータ制御部50が検出手段であるPI132による検出結果に基づいてカートリッジ2が「第1姿勢」となる位置で回転保持部12が停止するように駆動モータ112を含む回転機構10の動作を制御する動作制御部として機能する。そして、検出手段としてのPI132と動作制御部として機能するモータ制御部50とを含んで、姿勢制御部が構成される。
【0039】
また、本実施形態の撹拌装置1は、装置が正常に停止しなかった場合(例えば撹拌動作中に停電等のアクシデントにより撹拌装置1の電源が切れることで装置が止まってしまった場合やユーザがOFFスイッチによって強制的に電源を切って撹拌動作を終了させた場合等)であっても、カートリッジ2が「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正する姿勢制御部(第2の姿勢制御部とする)を有している。
【0040】
第2の姿勢制御部は、電源が断たれることで、PI132やモータ制御部50及び駆動モータ112等の電気的な構成を用いた「原点復帰」ができない場合に、機械的な構成によって回転保持部12(回転保持部12に保持されているカートリッジ2)を「原点復帰」させるものである。
本実施形態では、姿勢制御部(第2の姿勢制御部)として、回転保持部12を回転させる引っ張りコイルバネ137(ばね部材)を備える構成を有している(
図9参照)。
引っ張りコイルバネ137(ばね部材)を用いた具体的な構成について、
図7から
図9を参照して説明する。
【0041】
図4や
図8に示すように、例えば回転機構10を構成するシャーシ111に組み付けられている回転駆動ギヤ117の回転軸118の装置背面側には十字形状に凹んだ十字状凹部118aが形成されている。本実施形態ではシャーシ111の背面側には復帰ホイール134が取り付けられるようになっており、復帰ホイール134の取り付け側には、面方向の中心位置に十字形状に突出した十字凸部135が形成されている。十字凸部135は十字状凹部118aと嵌合し合うようになっており、十字凸部135が十字状凹部118aに嵌合することで、復帰ホイール134を回転させることで回転駆動ギヤ117も連動して回転させることができる。復帰ホイール134には十字凸部135が形成されている面の逆側であって面方向の中心位置からずれた位置に偏心凸部136が設けられている。
また、シャーシ111の背面側(すなわち復帰ホイール134が取り付けられている側)の下方位置には、係止用凸部133が設けられている。
【0042】
そして、
図9に示すように、ばね部材である引っ張りコイルバネ137の一端が係止用凸部133に係止され、他端が偏心凸部136に係止されている。
これによりカートリッジ2が「第1姿勢」となる位置で回転保持部12が停止するように負荷を付与するばね部材(引っ張りコイルバネ137)を含んで構成される。
カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」とは異なる「第2姿勢」の状態で回転機構10の動作が停止した場合には、カートリッジ2が「第1姿勢」となるように引っ張りコイルバネ137が復帰ホイール134を回転させる。これにより、復帰ホイール134と連動して回転駆動ギヤ117が回転し、回転駆動ギヤ117と連結された回転保持部12を回転動作させる。
【0043】
引っ張りコイルバネ137が最も短く縮むときにカートリッジ2が「第1姿勢」となるように引っ張りコイルバネ137が係止される係止用凸部133と偏心凸部136の位置を調整しておくことで、電気的に駆動モータ112で回転保持部12を回転させることができないときでも、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように、回転保持部12の停止位置を適正位置に矯正する(「原点復帰」させる)ことができる。
なお、駆動モータ112によって回転保持部12が回転動作する際に回転が阻害されないように、引っ張りコイルバネ137としては引っ張り力の弱いばねが用いられる。またばね部材は、ばね性を有し、偏心凸部136を係止用凸部133に向けて引き寄せることができるものであればよく、引っ張りコイルバネに限定されない。例えばばね部材は、ゴム等の弾性体であってもよい。
【0044】
[撹拌装置の作用、撹拌方法]
本実施形態の撹拌方法について、
図10(a)から
図10(c)及び
図11(a)から
図11(c)等を参照しつつ説明する。
本実施形態では、特に下地用インクのように溶質が分離、沈降しやすいインクLを有するカートリッジ2について、印刷に使用していないときには撹拌装置1の回転保持部12の収納凹部121にセットして駆動モータ112を動作させて回転保持部12ごとカートリッジ2を回転動作させる。このようにしてカートリッジ2内のインクLの撹拌を行うことで、インクLが溶媒L1と溶質L2とに分離して溶質L2が沈降するのを抑えて均質化させ、印刷時には使用に適した状態で印刷を行うことができるようにする。
【0045】
そして、撹拌装置1が正常に停止した場合には、PI132が凸部131を検出した場合にその旨の検出信号がモータ制御部50に出力される。モータ制御部50はPI132から検出信号を受けると、駆動モータ112を停止させ、PI132が凸部131を検出した位置(又はその近傍位置)で回転保持部12の回転動作を停止させる。
これにより、回転保持部12に保持されているカートリッジ2が、吐出口22が形成されている吐出面23が下を向いた状態(
図2等に示す状態、「第1姿勢」)で停止する。
【0046】
これに対して、停電等により撹拌装置1が異常停止した場合には、電源が落ちてしまうために、PI132による検出やモータ制御部50による駆動モータ112の動作制御等を行うことができない。
このような場合でも、本実施形態ではる引っ張りコイルバネ137(ばね部材)を備える姿勢制御部(第2の姿勢制御部)による機械的な構成によって回転保持部12(回転保持部12に保持されているカートリッジ2)を「原点復帰」させることができる。
【0047】
例えば、
図10(a)に示すように、回転保持部12に保持されているカートリッジ2が、吐出口22が形成されている吐出面23が斜め上を向いた状態(「第2姿勢」)のときに停電等により電源がOFFとなった場合、このままの状態で放置されてしまうと、インクLが溶媒L1と溶質L2とに分離した際、酸化チタン等の比重の大きな溶質L2がカートリッジ2の天面24側に沈降してしまう。本実施形態においてカートリッジ2の天面24側には通気口25が設けられているため、溶質L2が沈降すると通気口25を塞いでインクLを吐出しづらい状態となったり、外圧がかかった際等に通気口25からインクLが漏出して周囲を汚してしまうおそれもある。なお、一旦沈降が進んだ溶質L2を再分散化して通気口25等から取り除くには時間がかかり、すぐに印刷動作に移行することが難しい。このため、撹拌処理が終了した後、カートリッジ2が「第2姿勢」となっている場合には、この状態をできるだけ早く解消し、「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」とすることが望まれる。
【0048】
図10(b)は
図10(a)に示す状態を装置の背面側から見たものであり、
図10(c)は装置の斜め後方から見た斜視図である。
図10(a)に示す状態では、
図10(b)及び
図10(c)に示すように、係止用凸部133と偏心凸部136とに係止されている引っ張りコイルバネ137が斜めに引っ張られて伸びた状態となっている。
電源が切れた状態では、駆動モータ112による回転力は働かないが、引っ張りコイルバネ137がもとの状態まで縮もうとするばね力が働き、引っ張りコイルバネ137によって復帰ホイール134の偏心凸部136が下方向に引っ張られ、復帰ホイール134が回転方向R1に回転する。これに伴い、復帰ホイール134に連動する回転駆動ギヤ117も回転し、回転保持部12を回転させる。
【0049】
なお、引っ張りコイルバネ137によって復帰ホイール134が回転する回転方向は、駆動モータ112による回転が停止した位置によって異なる。吐出面23が真上を向く位置よりも時計回り方向に少し回転した状態で停止した場合(
図10(a)に示す場合)には、
図10(a)に示すように復帰ホイール134が回転方向R1(時計回り)に回転する。これに対して、吐出面23が真上を向く位置よりも反時計回り方向に少し回転した状態で停止した場合には、
図10(a)に示すのとは逆に、復帰ホイール134が反時計回りに回転方向Rに回転する。
【0050】
図11(a)及び
図11(b)に示すように引っ張りコイルバネ137は、最も短く縮むまで偏心凸部136を係止用凸部133側に向けて引っ張る。そして引っ張りコイルバネ137が縮み切った状態を装置の正面側から見ると、
図11(c)に示すように、回転保持部12に保持されているカートリッジ2が、吐出口22が形成されている吐出面23が下を向いた状態(「第1姿勢」)となり、「原点復帰」した状態で回転保持部12が停止する。
このように、電源が切れた状態であっても、カートリッジ2を、吐出口22が形成されている吐出面23が下を向いた「第1姿勢」となるように回転保持部12を「原点復帰」させることができる。このため、撹拌動作の終了後、すぐに印刷に使用できる状態でカートリッジ2が保持され、吐出不良等も生じにくく、高品質の印刷を行うことができる。
【0051】
[効果]
以上のように、本実施形態の撹拌装置1は、静置されることで溶媒中に溶質が沈降するインクL(液剤)を収容するカートリッジ2を保持した状態で回転動作する回転保持部12と、回転保持部12を回転動作させる回転機構10としての駆動モータ112、モータ制御部50、歯車機構等と、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」とは異なる「第2姿勢」の状態で回転機構10の動作が停止した場合に、カートリッジ2が「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正する姿勢制御部として、PI132及びモータ制御部50や、引っ張りコイルバネ137等を備えている。
【0052】
カートリッジ2内の液剤(インクL)の撹拌を手動ではなく、装置により自動で行うことで、撹拌動作にばらつきがなく、例えば下地用インク等の液剤(インクL)を安定した均質化、再分散化状態とすることができる。また撹拌処理を自動で行うことでユーザの手間や労力を省くことができ、負担なく液剤(インクL)を再分散化することができる。
これにより、撹拌装置1が正常に停止した際にはモータ制御部50等により電気的制御によってカートリッジ2が吐出面23を下にした「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように回転保持部12の姿勢を矯正することができる。また、撹拌装置1がアクシデントによって異常停止したような場合でも、機械的な構成によって、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように回転保持部12の姿勢を矯正することができる。
このため、撹拌動作後に、カートリッジ2が吐出面23とは異なる面に設けられた通気口25を下にして停止した状態で保持されるのを防ぐことができ、通気口25が沈降した溶質L2によって塞がれたり目詰まりして吐出口22からインクを吐出できない状態となるのを防ぐことができる。
【0053】
また本実施形態では、姿勢制御部(第2の姿勢制御部)が、カートリッジ2が「第1姿勢」となる位置で回転保持部12が停止するように負荷を付与するばね部材である引っ張りコイルバネ137等を含んでいる。
このため、簡易な構成でカートリッジ2が吐出面23を下にした「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正することができる。
【0054】
また本実施形態では、姿勢制御部は、回転保持部12の停止位置を検出する検出手段としてのPI132と、このPI132による検出結果に基づいてカートリッジ2が「第1姿勢」となる位置で回転保持部12が停止するように回転機構10の動作を制御する動作制御部としてのモータ制御部50、を含んでいる。
このため、電源が入った状態で正常に撹拌装置1が停止した場合には、電気的な制御部より、簡易かつ確実にカートリッジ2が吐出面23を下にした「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように回転保持部12の姿勢を矯正することができる。
【0055】
またカートリッジ2はインクL(液剤)を吐出させる吐出口22を備え、吐出口22が設けられた面(吐出面23)とは異なる面(本実施形態では天面24)に通気口25を備えており、「第1姿勢」は、吐出口22が設けられている吐出面23を下にした状態の姿勢である。
このため、撹拌装置1の停止時にはカートリッジ2が吐出面23を下にした「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように回転保持部12の停止位置を矯正することで、通気口25を備える面が下になったまま放置されるのを防ぐことができる。これにより、通気口25が溶媒L1から分離し、沈降した溶質L2によって塞がれたり、目詰まりを起こすのを回避して印刷に適した状態を維持することができる。
【0056】
[変形例]
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0057】
例えば本実施形態では、機械的な構成によって回転保持部12(回転保持部12に保持されているカートリッジ2)を「原点復帰」させる姿勢制御部(第2の姿勢制御部)として、ばね部材(引っ張りコイルバネ137)を備えることとしたが、姿勢制御部(第2の姿勢制御部)の構成は、これに限定されない。
【0058】
例えば姿勢制御部(第2の姿勢制御部)は、カートリッジ2が「第1姿勢」となる位置で回転保持部12が停止するように回転保持部12の重心を設定する錘を含んでいてもよい。
具体的には、
図12(a)及び
図12(b)、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、復帰ホイール141の一端に錘142を搭載する。なお、前述の実施形態で示したものと同様の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
図12(a)及び
図12(b)は、カートリッジ2の吐出面23が向いている側を示す原点指標となる凸部131が左斜め上に位置しており、カートリッジ2が「第1姿勢」と異なる「第2姿勢」となっている状態を示している。
これに対して、
図13(a)は、カートリッジ2の吐出面23が向いている側を示す原点指標となる凸部131が回転保持部12の下端位置に位置しており、
図13(a)及び
図13(b)は、カートリッジ2が「第1姿勢」となっている状態を示している。
【0059】
この場合、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、錘142は、復帰ホイール141の一端であって、凸部131が設けられていのと同じ側に設けられる。このような位置に錘142を設けることで、カートリッジ2が「第1姿勢」と異なる「第2姿勢」となる状態で回転保持部12が停止した場合に、錘142の重量によって錘142が下になるような向きに復帰ホイール141が回転し、これに連動して回転保持部12もカートリッジ2が「第1姿勢」となるような停止位置に「原点復帰」する。
【0060】
このような構成とすれば、撹拌装置1がアクシデントによって異常停止したような場合でも、簡易な構成によって、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように回転保持部12の姿勢を矯正することができる。これにより実施形態で示した構成と同様に、カートリッジ2が吐出面23とは異なる面に設けられた通気口25を下にして停止した状態で保持されるのを防ぐことができ、通気口25が沈降した溶質L2によって塞がれたり目詰まりして吐出口22からインクを吐出できない状態となるのを防ぐことができる。
なお、錘142に重量は特に限定されないが、駆動モータ112による回転動作を阻害しない程度に設定される。
【0061】
また例えば姿勢制御部(第2の姿勢制御部)は、カートリッジ2が「第1姿勢」となる位置で回転保持部12が停止するように回転保持部12を停止させる磁石を含んでいてもよい。
具体的には、
図14(a)及び
図14(b)、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、復帰ホイール151の一端に磁性体152を設置する。また、シャーシ111における復帰ホイール151の下側にマグネット153(磁石)を配置する。なお、前述の実施形態で示したものと同様の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図14(a)及び
図14(b)は、カートリッジ2の吐出面23が向いている側を示す原点指標となる凸部131が左斜め上に位置しており、カートリッジ2が「第1姿勢」と異なる「第2姿勢」となっている状態を示している。
これに対して、
図15(a)は、カートリッジ2の吐出面23が向いている側を示す原点指標となる凸部131が回転保持部12の下端位置に位置しており、
図15(a)及び
図15(b)は、カートリッジ2が「第1姿勢」となっている状態を示している。
【0063】
この場合、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、磁性体152は、復帰ホイール141の一端であって、凸部131が設けられていのと同じ側に設けられる。このような位置に磁性体152を設けるとともに、復帰ホイール151の下側にマグネット153を設置することで、カートリッジ2が「第1姿勢」と異なる「第2姿勢」となる状態で回転保持部12が停止した場合に、磁性体152がマグネット153の磁力(吸引力)で引き付けられることによって磁性体152が設けられている部分が下になるような向きに復帰ホイール141が回転し、これに連動して回転保持部12もカートリッジ2が「第1姿勢」となるような停止位置に「原点復帰」する。なおインクLは磁性体を含んでいないため、マグネット153の磁力がインクLの挙動に影響を及ぼすことはない。
【0064】
このような構成とすれば、撹拌装置1がアクシデントによって異常停止したような場合でも、簡易な構成によって、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となるように回転保持部12の姿勢を矯正することができる。この場合にも実施形態で示した構成と同様に、カートリッジ2が吐出面23とは異なる面に設けられた通気口25を下にして停止した状態で保持されるのを防ぐことができ、通気口25が沈降した溶質L2によって塞がれたり目詰まりして吐出口22からインクを吐出できない状態となるのを防ぐことができる。
なお、磁性体152はマグネット153と引き合う磁石であってもよいし、マグネットに引き付けられる金属部材等であってもよい。
マグネット153は電磁石以外であればどのようなものでも適用可能である。なお、マグネット153の磁力の強さの程度は特に限定されないが、駆動モータ112による回転動作を阻害しない程度のものが適用される。
【0065】
さらに、回転駆動ギヤ117の回転軸118自体を偏心した位置に設けることによって、引っ張りコイルバネ137のようなばね部材等を設けなくても、自然に回転保持部12が回転し、カートリッジ2が「正規の停止姿勢」である「第1姿勢」となる姿勢に「原点復帰」するように、回転保持部12の姿勢が矯正される構成としてもよい。
このような構成とすれば、撹拌装置1がアクシデントによって異常停止したような場合でも、簡易な構成によって、実施形態で示した構成と同様に、カートリッジ2が吐出面23とは異なる面に設けられた通気口25を下にして停止した状態で保持されるのを防ぐことができ、通気口25が沈降した溶質L2によって塞がれたり目詰まりして吐出口22からインクを吐出できない状態となるのを防ぐことができる。
【0066】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0067】
1 撹拌装置
10 回転機構
11 本体部
12 回転保持部
2 カートリッジ
22 吐出口
23 吐出面
25 通気口
50 モータ制御部
110 筐体
111 シャーシ
112 駆動モータ
137 引っ張りコイルバネ(ばね部材)
L インク
L1 溶媒
L2 溶質