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特開2024-43250低アルコールビールテイスト飲料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043250
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】低アルコールビールテイスト飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20240322BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20240322BHJP
   C12C 12/04 20060101ALI20240322BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A23L2/00 H
C12C5/02
C12C12/04
A23L2/52
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148330
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】山野 環
(72)【発明者】
【氏名】黒川 哲平
【テーマコード(参考)】
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG24
4B117LK06
4B117LK27
4B128AC14
4B128AG09
4B128AP14
4B128CP16
(57)【要約】
【課題】クラフトビール特有の柑橘様の苦味を有する、低アルコールビールテイスト飲料を提供すること。
【解決手段】クワシン及び脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含む、低アルコールビールテイスト飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クワシン及び脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含む、低アルコールビールテイスト飲料。
【請求項2】
10~50BUの苦味価を有する、請求項1に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【請求項3】
1~10w/w%の外観エキス濃度を有する、請求項1又は2に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【請求項4】
前記麦汁発酵液は、麦汁下面発酵液である、請求項1又は2に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【請求項5】
前記麦汁発酵液は、50w/w%以上の麦芽使用比率を有する請求項1又は2に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【請求項6】
脱アルコール麦汁発酵液を含む、請求項1又は2に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【請求項7】
0.5~5ppmのクワシン濃度を有する、請求項1又は2に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【請求項8】
低アルコールビールテイスト飲料に脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含有させること;及び
クワシンを含有させること;
を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項9】
低アルコールビールテイスト飲料に脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含有させること;及び
クワシンを含有させること;
を包含する、低アルコールビールテイスト飲料に柑橘様の苦味を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低アルコールビールテイスト飲料に関し、特に、アルコール濃度が1v/v%未満である低アルコールビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発泡酒や新ジャンルの展開によりビール市場に登場する製品の種類が多様化している。その結果、従来からビール市場の主流を占めてきたピルスナータイプのビールに加え、クラフトビール、ベルギービール等の多種多様な香味を提供するビールに対する人気が高まっている。中でも、インディアペールエールビール(一般に、「IPA」と呼ばれることがある。)等の高温発酵ビールが提供する苦味及びホップの香りを強調した香味は、クラフトビールの定番になっている。
【0003】
特許文献1には、ビールのホップ香気の強弱はホップの使用方法によって制御できることが記載されている。例えば、「ドライホッピング」と言われる発酵中の低温の若ビールにホップを添加する方法(非特許文献1)を使用することで、ビールのホップ香を強調することができる。また、「ドライホッピング」と同等のホップ香気の強さを維持しながら、香味の荒々しさを抑制することができるホップの添加方法が知られている(特許文献1~4)。
【0004】
IPA等のクラフトビールの香味は、例えば、前記ホップの使用方法を使用してビールのホップ香気を強調することで、提供することができる。
【0005】
低アルコールビールテイスト飲料に関しても、いわゆるクラフトビールを想起させるような、ボディ感、苦味及びホップの香りが強調された香味に対する需要が存在する。
【0006】
特許文献5には、麦汁の発酵液を脱アルコールすることで、アルコール濃度を1%未満に低減したビールテイスト発酵麦芽飲料が記載されている。特許文献5のビールテイスト発酵麦芽飲料はビールらしい香味を有することが記載されている。一方で、特許文献5には、クラフトビールに対する需要やクラフトビールを想起させる香味を実現する手段に関しては、記載されていない
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-107078号公報
【特許文献2】特開2013-132272号公報
【特許文献3】特開2015-132274号公報
【特許文献4】特開2015-132275号公報
【特許文献5】国際公開第2021/070930号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.259~261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発酵後脱アルコール処理ビールテイスト飲料は、アルコール及び揮発性成分が除去されている。そのため、クラフトビール様の強調された苦味及び香気を実現することが困難である。ビールの原料のなかでビールらしい苦味及び香気を提供するものとしてはホップが考えられる。しかしながら、発酵後脱アルコール処理ビールテイスト飲料にホップ又はホップ成分を添加したとしても、クラフトビール特有の柑橘様の苦味が得られない問題が明らかになった。
【0010】
本発明は上問題を解決するものであり、その目的とするところは、クラフトビール特有の柑橘様の苦味を有する、低アルコールビールテイスト飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明には以下の形態が含まれる。
【0012】
[形態1]
クワシン及び脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含む、低アルコールビールテイスト飲料。
【0013】
[形態2]
10~50BUの苦味価を有する、形態1に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【0014】
[形態3]
1~10w/w%の外観エキス濃度を有する、形態1又は2に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【0015】
[形態4]
前記麦汁発酵液は、麦汁下面発酵液である、形態1~3のいずれか一項に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【0016】
[形態5]
前記麦汁発酵液は、50w/w%以上の麦芽使用比率を有する形態1~4のいずれか一項に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【0017】
[形態6]
脱アルコール麦汁発酵液を含む、形態1~5のいずれか一項に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【0018】
[形態7]
0.5~5ppmのクワシン濃度を有する、形態1~6のいずれか一項に記載の低アルコールビールテイスト飲料。
【0019】
[形態8]
低アルコールビールテイスト飲料に脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含有させること;及び
クワシンを含有させること;
を包含する、低アルコールビールテイスト飲料の製造方法。
【0020】
[形態9]
低アルコールビールテイスト飲料に脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含有させること;及び
クワシンを含有させること;
を包含する、低アルコールビールテイスト飲料に柑橘様の苦味を付与する方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クラフトビール特有の柑橘様の苦味を有する、低アルコールビールテイスト飲料を提供することができる。クラフトビール特有の柑橘様の苦味の具体例としては、IPAのグレープフルーツ様苦味が挙げられる。その結果、低アルコールビールテイスト飲料において、IPA等のクラフトビールを想起させる香味を実現することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書の数値範囲の上限、及び下限は当該数値を任意に選択して、組み合わせることが可能である。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、低アルコールビールテイスト飲料及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、以下に示す低アルコールビールテイスト飲料及びその製造方法に限定されない。
【0023】
<低アルコールビールテイスト飲料>
「低アルコールビールテイスト飲料」とは、アルコール濃度が通常のビールテイスト飲料よりも低いビールテイスト飲料をいう。「ビールテイスト」とは、ビールを想起させる味及び香気をいう。「ビール」とは麦芽、ホップ及び水などを原料として、これらを酵母で発酵させて得られる飲料をいう。
【0024】
低アルコールビールテイスト飲料は、3v/v%以下、好ましくは2v/v%以下、より好ましくは1v/v%未満のアルコール濃度を有する。「低アルコールビールテイスト飲料」の意味には、実質的にアルコールを含有しない、ノンアルコールビールテイスト飲料(例えば、アルコール濃度0.00v/v%)も含まれる。また、「アルコール」という文言はエタノールを意味する。
【0025】
<脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分>
本発明の低アルコールビールテイスト飲料は、脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含む。脱アルコール麦汁発酵液とは、麦汁をビール酵母を使用して発酵させて得られる発酵液、即ち麦汁発酵液から、アルコールを除去して得られる液体である。本発明でいう麦汁は、通常のビールを製造する際に使用される麦汁を意味し、これには麦芽に由来する成分、及び必要に応じてホップに由来する成分が含まれる。麦芽に由来する成分とは、麦芽に含まれる成分をいう。ホップに由来する成分とは、イソα酸等のホップに含まれる成分をいう。
【0026】
脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分とは、脱アルコール麦汁発酵液に含まれる成分をいう。本発明の低アルコールビールテイスト飲料は、脱アルコール麦汁発酵液を含むものであってもよい。
【0027】
麦汁発酵液は、例えば、以下の方法によって製造することができる。まず、麦芽の破砕物、大麦等の副原料、及び温水を仕込槽に加えて混合してマイシェを調製する。マイシェの調製は、常法により行うことができ、例えば、はじめに35~60℃で20~90分間保持することにより原料に由来するタンパク質をアミノ酸などへ分解し、糖化工程へ移行する。その際、必要に応じて、主原料と副原料以外に、トランスグルコシダーゼ等の酵素、並びにスパイス及びハーブ類等の香味成分等が添加される。
【0028】
その後、該マイシェを徐々に昇温して所定の温度で一定期間保持することにより、麦芽由来の酵素やマイシェに添加した酵素を利用して、澱粉質を糖化させる。糖化処理時の温度や時間は、用いる酵素の種類やマイシェの量、目的とする麦汁発酵液の品質等を考慮して、適宜決定することができ、例えば、60~72℃にて30~90分間保持することにより行うことができる。糖化処理後、76~78℃で10分間程度保持した後、マイシェを麦汁濾過槽にて濾過することにより、透明な糖液を得る。また、糖化処理を行う際に、酵素を必要な範囲で適当量添加してもよい。
【0029】
糖化に供される原料、即ち澱粉質原料は麦芽を含む。糖化に供される原料中の麦芽の含有量は、特に限定されないが、25%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは67%以上である。糖化に供される原料は麦芽使用比率100%であってもよい。麦芽使用比率とは、澱粉質原料の重量に対する麦芽の重量の比率である。一般に、麦芽使用比率が高いほど、得られる麦汁の麦芽由来の香味が強くなる。
【0030】
副原料とは、麦芽とホップ以外の原料を意味する。該副原料として、例えば、大麦、小麦、コーンスターチ、コーングリッツ、米、こうりゃん等の澱粉質原料や、液糖や砂糖等の糖質原料がある。ここで、液糖とは、澱粉質を酸又は糖化酵素により分解、糖化して製造されたものであり、主にグルコース、マルトース、マルトトリオース等が含まれている。その他、香味を付与又は改善することを目的として用いられるスパイス類、ハーブ類、及び果物等も、副原料に含まれる。
【0031】
糖化酵素とは、澱粉質を分解して糖を生成する酵素を意味する。該糖化酵素として、例えば、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルナラーゼ等がある。
【0032】
麦汁煮沸の操作は、ビールを製造する際に通常行われる方法及び条件に従って行えばよい。例えば、pHを調整した糖液を煮沸釜に移し、煮沸する。糖液の煮沸開始時から、ワールプール静置の間に、ホップを添加する。ホップとして、ホップエキス又はホップから抽出した成分を使用してもよい。糖液は次いでワールプールと呼ばれる沈殿槽に移し、煮沸により生じたホップ粕や凝固したタンパク質等を除去した後、プレートクーラーにより適切な温度まで冷却する。
【0033】
上記麦汁煮沸までの操作により、麦汁が得られる。得られた麦汁を酵母により発酵させて、麦汁発酵液が得られる。麦汁の発酵は常法に従って行えばよい。例えば、冷却した麦汁にビール酵母を接種して、発酵タンクに移し、アルコール発酵を行うことができる。
【0034】
麦汁発酵液からアルコールを除去する方法としては、麦汁発酵液を加熱するか、減圧下加熱して、アルコールを気化させる方法、逆浸透膜などによりアルコールを除去する方法等が挙げられる。脱アルコール麦汁発酵液は、最終生成物中の低アルコールビールテイスト飲料のアルコール含有量が所望の濃度になる程度までアルコールが除去されていればよい。
【0035】
低アルコールビールテイスト飲料が脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含むことで、低アルコールビールテイスト飲料にビールらしい複雑味、飲みごたえ感及びボディ感が付与される。
【0036】
一方で、脱アルコール麦汁発酵液は、アルコール、及び揮発性香気成分が除去されているものである。そのため、その飲用時に感じられる苦味等のビールらしい香味は、麦汁発酵液と比較して弱くなっている。
【0037】
低アルコールビールテイスト飲料に含まれる脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分の量及び濃度は特に限定されず、所望の香味に応じて適宜設定することができる。
【0038】
麦汁発酵液は、麦汁上面発酵液であってよく、麦汁下面発酵液であってもよいが、後味をすっきりさせる観点から麦汁下面発酵液であることが好ましい。麦汁上面発酵液とは、麦汁に上面発酵酵母を接種し、通常の発酵条件、例えば15~25℃で数日間発酵させた麦汁発酵液をいう。麦汁下面発酵液とは、麦汁に下面発酵酵母を接種し、通常の発酵条件、例えば10℃前後でおよそ一週間発酵させた麦汁発酵液をいう。
【0039】
低アルコールビールテイスト飲料の外観エキス濃度は1~10w/w%に調節される。低アルコールビールテイスト飲料の外観エキス濃度が1w/w%未満であると、低アルコールビールテイスト飲料のビールらしい複雑味及び麦らしい甘味が不十分になる場合がある。また、低アルコールビールテイスト飲料の外観エキス濃度が10w/w%を超えると、低アルコールビールテイスト飲料の後味が重くなる場合がある。低アルコールビールテイスト飲料の外観エキス濃度は、好ましくは3~9.5w/w%であり、より好ましくは5~9w/w%であり、さらに好ましくは6~8.5w/w%である。
【0040】
低アルコールビールテイスト飲料の外観エキス濃度は、例えば、ビール酒造組合編集:BCOJビール分析法(2004)に記載の方法により測定することができる。低アルコールビールテイスト飲料は、例えば後述する低アルコールビールテイスト飲料の製造方法により製造することができる。
【0041】
<クワシン>
低アルコールビールテイスト飲料はクワシン(quassin:C2228)を含有する。クワシンは、2,12-ジメトキシピクレイサ-2,12-ジエン-1,11,16-トリオンとも称され、ニガキ(苦木:Picrasma quassioides)などから抽出される苦味を呈する化合物である。また、このクワシンとしては、市販の製剤及び食品添加物、例えば、クワシン含有香料を使用してよい。製品としてのクワシンは、一般に、類似物質であるネオクワシンも含有する。
【0042】
クワシンを、脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を含む低アルコールビールテイスト飲料に含有させることで、低アルコールビールテイスト飲料の苦味が柑橘様に感じられるようになる。クワシンは、クワシン単独、ネオクワシンを含む形態、又はクワシンを含む香料又は調味料の形態で、低アルコールビールテイスト飲料に含有させることができる。
【0043】
ある一形態において、クワシンは、低アルコールビールテイスト飲料のクワシンの濃度が0.5~5ppmになる量で、低アルコールビールテイスト飲料に含有させる。低アルコールビールテイスト飲料のクワシンの濃度が0.5ppm未満であると、苦味の柑橘感が不足し、5ppmを超えると、刺激が強くなり、香味のバランスが悪くなることがある。低アルコールビールテイスト飲料のクワシン濃度は、好ましくは0.75~4ppmであり、より好ましくは1.0~3.0ppmであり、更に好ましくは1.25~2.5ppmである。
【0044】
<苦味価>
低アルコールビールテイスト飲料は、所定の苦味価(単位:BU)を有することが好ましい。低アルコールビールテイスト飲料が所定の苦味価を有することで、低アルコールビールテイスト飲料の香味がよりクラフトビール様に感じられる。ここで、苦味価とは、イソフムロンを主成分とするホップ由来物質群により与えられる苦味の指標である。
【0045】
低アルコールビールテイスト飲料の苦味価は、10~50BUであることが好ましい。低アルコールビールテイスト飲料の苦味価が10BU未満であると、低アルコールビールテイスト飲料のクラフトビール様の苦味が不十分になる場合がある。また、低アルコールビールテイスト飲料の苦味価が50BUを超えると、低アルコールビールテイスト飲料の苦みが際立ち、嗜好性が低くなる場合がある。低アルコールビールテイスト飲料の苦味価は、20~40BUであることがより好ましく、25~35BUであることがさらに好ましい。
【0046】
苦味価は、例えばビール酒造組合編集:BCOJビール分析法、8.15(2004)に記載の方法により測定することができる。
【0047】
低アルコールビールテイスト飲料の苦味価は、苦味物質を含む原材料(例えばホップ等)の品種やその使用量、及び当該原材料の添加のタイミング等を調整すること、又は苦味物質を適宜添加することによって調節することができる。苦味物質としては、単離したイソα酸を用いることができる。また、イソα酸はホップに含有されており、ホップ又はホップエキスとして用いることもできる。ホップ又はホップエキスとは、ホップの葉、その磨砕物、これらを水や熱湯で抽出した抽出液、抽出液の濃縮物及び乾燥物を指す。
【0048】
<低アルコールビールテイスト飲料の製造方法>
低アルコールビールテイスト飲料の製造方法は、脱アルコール麦汁発酵液に由来する成分を低アルコールビールテイスト飲料に含有させること、及びクワシンを低アルコールビールテイスト飲料に含有させることを、包含していればよく、これらの工程以外は、従来の低アルコールビールテイスト飲料の製造方法を利用することができる。
【0049】
低アルコールビールテイスト飲料の製造方法において、クワシンを含有させる工程は、例えば、麦汁煮沸後の冷却工程、発酵工程又は熟成工程等任意の工程にクワシン含有香料を添加して行うことができる。この場合、クワシン含有香料を添加する工程が前工程であればあるほど、香料中の成分の濃度の消長が考えられるため、後発酵工程の終了後に行うことが望ましい。
【0050】
また、低アルコールビールテイスト飲料の製造方法は、クワシン濃度調節工程、苦味価調節工程、又は外観エキス濃度調節工程を含んでよい。
【0051】
低アルコールビールテイスト飲料の製造方法は、公知の装置等を用いた、カラメル色素等を添加する工程、煮沸工程、pH調節工程、ろ過工程、香味調節工程、炭酸ガスを溶解させる工程等をさらに含んでもよい。
【0052】
低アルコールビールテイスト飲料の製造方法は、必要に応じて、食物繊維、大豆ペプチド、炭酸、エキス類、香料、酸味料、甘味料、苦味料、着色料、酸化防止剤、pH調節剤、各種栄養成分等を添加する工程をさらに含んでもよい。
【0053】
以下の実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例0054】
<実施例1~3>
仕込釜に粉砕麦芽、水及びコーンスターチを投入し、70℃で糊化、100℃で液化を行った。次に仕込槽に粉砕麦芽及び温水を投入し、55℃付近でタンパク休止を行った後、仕込釜から仕込槽へ液を移送し、トランスグルコシダーゼを投入し、60℃から76℃の範囲の温度で糖化を行った。この糖化液を濾過槽であるロイターにて濾過し、その後煮沸釜に移して、ホップを添加し、60分間煮沸した。煮沸後、蒸発分の温水を追加し、ワールプール槽にて熱トルーブを除去した後、プレートクーラーを用いて10℃まで冷却し、冷麦汁を得た。この麦汁にビール酵母を加え、7日間10℃前後で発酵させた後、ビール酵母を除去した。タンクを移し替えて7日間熟成させた後、-1℃付近まで冷却し14日間安定化させた。その後脱気水を加えて希釈後、珪藻土を用いて濾過し、麦汁発酵液(麦汁下面発酵液)を得た。
【0055】
得られた麦汁発酵液(液温0℃)を90mbar付近の減圧下で脱ガスタンク内にスプレーして、炭酸ガス及び香気成分を気化させた。
【0056】
香気成分を気化させた麦汁発酵液を、プレートクーラーを用いて50℃付近まで加熱した。その後、90mbar付近の減圧カラム内で50℃付近に加熱した水蒸気と接触させ、揮発成分を水蒸気に吸着させ、アルコール及び揮発成分を取り除いた。得られた脱アルコール麦汁発酵液のアルコール度数は1v/v%未満、外観エキスは8w/v%であった。
【0057】
クワシン含有香料(「ビターフレーバー」(商品名)、日本フィルメニッヒ株式会社製)及びイソα酸含有苦味料(「ホップエキストラクト」(商品名)、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を準備した。そして、これらを脱アルコール麦汁発酵液に所定量添加した。クワシン含有香料の添加量、クワシン濃度及び苦味価を表1に示す。次いで、0.21MPa~0.23MPaになるように炭酸ガスを添加して、低アルコールビールテイスト飲料を製造した。
【0058】
<参考例>
市販されているIPAを準備した。
【0059】
<比較例1>
クワシン含有香料及びイソα酸含有苦味料を使用しないこと以外は実施例1と同様にして、低アルコールビールテイスト飲料を製造した。
【0060】
<比較例2>
クワシン含有香料を使用しないこと以外は実施例1と同様にして、低アルコールビールテイスト飲料を製造した。
【0061】
<比較例3~5>
市販されているラガービール(「アサヒスーパードライ」(商品名)、アサヒビール社製)を準備し、前記クワシン含有香料をラガービールに所定量添加して、苦味を強化したビールを製造した。
【0062】
<比較例6>
前記ラガービールを準備した。
【0063】
<比較例7>
前記イソα酸含有苦味料を前記ラガービールに所定量添加して、苦味を強化したビールを製造した。
【0064】
<比較例8~10>
市販されているノンアルコールビール(「アサヒドライゼロ」(商品名)、アサヒビール社製)を準備し、前記クワシン含有香料をノンアルコールビールに所定量添加して、苦味を強化したノンアルコールビールを製造した。
【0065】
<比較例11>
前記ノンアルコールビールを準備した。
【0066】
<比較例12>
前記イソα酸含有苦味料を前記ノンアルコールビールに所定量添加して、苦味を強化したノンアルコールビールを製造した。
【0067】
[官能評価]
実施例、参考例及び比較例のビールテイスト飲料を8℃に調温し、訓練されたパネリスト3名による官能評価に供した。評価指標として、その苦味にIPAに特徴的な「グレープフルーツ様の苦味」が感じられるかどうかを設定した。評価は、「アサヒスーパードライ」(商品名)、アサヒビール社製(比較例6)を1点とし、市販されているIPA(参考例)を5点として、5段階の水準を設けて採点して行った。3名の平均値を評点とした。評点が3以上の場合に、良いと判断される。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】