(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043251
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】印刷装置、プログラム、印刷制御方法及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
A45D 29/00 20060101AFI20240322BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20240322BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240322BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240322BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240322BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240322BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240322BHJP
G06V 40/12 20220101ALI20240322BHJP
【FI】
A45D29/00
B41J3/407
B41J29/00 Z
B41J29/38 203
B41J2/01 109
G06T7/70 Z
G06T7/00 530
G06V40/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148332
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 利彦
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
5B043
5L096
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB29
2C056EC79
2C056FB01
2C056FB09
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS11
2C061CL08
2C061CL10
2C061HJ08
2C061HN04
2C061HP00
5B043AA09
5B043BA02
5B043CA09
5B043FA02
5L096CA02
5L096DA02
5L096DA03
5L096FA64
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】爪に印刷を行う印刷装置において、その印刷装置内では取得できない爪情報があっても、安定した高品質な仕上がりを提供できるようにする。
【解決手段】印刷装置1Bの制御部11Bは、ユーザの認証情報を取得し、取得した認証情報と対応付けられた爪情報が外部の記憶装置であるサーバ7に存在する場合に、その認証情報と対応付けられた爪情報をサーバ7から取得する。そして、取得された爪情報に基づいて、印刷機構4による爪の印刷を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
ユーザの認証情報を取得し、
取得した前記認証情報と対応付けられた爪情報が外部の記憶装置に存在する場合に、前記認証情報と対応付けられた爪情報を取得し、
取得した前記爪情報に基づいて、前記印刷部による前記爪の印刷を制御する、
印刷装置。
【請求項2】
前記ユーザの認証情報は、前記ユーザの指紋情報又はユーザIDである、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記爪情報は、前記爪の複数点における傾斜角度を示す爪角度情報を含み、
前記制御部は、前記印刷部が前記爪に印刷を行う際に、前記爪角度情報に基づいて、前記爪の傾斜角度が大きい箇所ほどインクの吐出量を多くするように制御する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記爪情報は、前記爪の縦幅及び横幅の情報を含み、
前記爪を上方から撮影する撮影部を備え、
前記制御部は、
前記撮影部により取得された画像から算出される前記爪の縦横比と、取得された前記爪情報から算出される前記爪の縦横比とに基づいて、前記爪が印刷に適した姿勢であるか否かを判断する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記爪が、前記印刷に適した姿勢として、前記爪が載置される指載置部の底部に対して水平であると判断した場合に、前記印刷部が前記爪に印刷を行うよう制御する、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記爪が前記印刷に適した姿勢ではないと判断した場合に、前記ユーザに前記爪を印刷に適した姿勢にするように促す情報を出力部に出力させる、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記爪の状態を維持する状態維持部を備え、
前記制御部は、
前記爪が印刷に適した姿勢であると判断した場合に、前記状態維持部により前記爪の状態を維持させる、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記爪が印刷に適した姿勢であると判断した場合に、前記撮影部により前記爪の画像を取得させ、
取得された前記画像から爪領域を認識し、
認識した前記爪領域に基づいて印刷領域を決定し、
前記印刷部に、決定した前記印刷領域に対して印刷を行わせる、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項9】
爪に印刷を行う印刷部を備える印刷装置を制御するコンピュータに、
ユーザの認証情報を取得し、
取得した前記認証情報と対応付けられた爪情報が外部の記憶装置に存在する場合に、前記認証情報と対応付けられた爪情報を取得し、
取得した前記爪情報に基づいて、前記印刷部による前記爪の印刷を制御する、
処理を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
爪に印刷を行う印刷部を備える印刷装置を制御するコンピュータが、
ユーザの認証情報を取得し、
取得した前記認証情報と対応付けられた爪情報が外部の記憶装置に存在する場合に、前記認証情報と対応付けられた爪情報を取得し、
取得した前記爪情報に基づいて、前記印刷部による前記爪の印刷を制御する、
印刷制御方法。
【請求項11】
爪情報を取得する爪情報取得部と、前記爪情報取得部により取得された前記爪情報と、前記爪を有するユーザの認証情報と、を対応付けて外部の記憶装置に記憶させる第1制御部と、を有する情報取得装置と、
爪に印刷を行う印刷部と、前記印刷部を制御する第2制御部と、を有する印刷装置であって、前記第2制御部は、ユーザの認証情報を取得し、取得したユーザの認証情報と対応付けられた爪情報であって、前記情報取得装置の前記爪情報取得部により取得された爪情報が前記外部の記憶装置に存在する場合に、前記認証情報と対応付けられた前記爪情報を取得し、取得した前記爪情報に基づいて、前記印刷部による前記爪の印刷を制御する、印刷装置と、
を備え、
前記情報取得装置と前記印刷装置とが別個に設けられている、
印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、プログラム、印刷制御方法及び印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、人の爪等の印刷対象に各種デザイン等を印刷する印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。
このような印刷装置では、爪を撮影する撮影部により撮影された画像から爪の輪郭を認識し、認識された爪の輪郭に基づいて爪に印刷を行っている。
【0003】
また、例えば特許文献1には、爪の輪郭の情報及び爪の断面の凹凸の情報を取得し、爪の断面の凹凸の情報に基づいて爪の中央部と周辺部でインク吐出量を調節することで、爪の低く湾曲した部分であってもムラのない、安定した高品質な仕上がりを提供できるようにしたネイルアート装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、印刷装置に爪の断面の情報を取得する撮影部を備えている必要があった。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、爪に印刷を行う印刷装置において、その印刷装置内では取得できない爪情報があっても、安定した高品質な仕上がりを提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、
爪に印刷を行う印刷部と、
前記印刷部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
ユーザの認証情報を取得し、
取得した前記認証情報と対応付けられた爪情報が外部の記憶装置に存在する場合に、前記認証情報と対応付けられた爪情報を取得し、
取得した前記爪情報に基づいて、前記印刷部による前記爪の印刷を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、爪に印刷を行う印刷装置において、その印刷装置内では取得できない爪情報があっても、安定した高品質な仕上がりを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る印刷システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1の印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1の印刷装置1Aの機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図2の印刷装置1A内部の基台上の要部構成を示す模式的な斜視図である。
【
図5】指配置部に指が固定された状態を示す斜視図である。
【
図6】
図1の印刷装置1Bの機能的構成を示すブロック図である。
【
図7】
図1の爪情報DBのデータ格納例を示す図である。
【
図8】
図1の印刷装置1Aにより実行される印刷制御処理Aの流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図1の印刷装置1Aにより実行される印刷制御処理Aの流れを示すフローチャートである。
【
図10】(a)は、爪が傾いている状態の前方画像の例を示す図であり、(b)は、爪が傾いていない状態の前方画像の例を示す図である。
【
図11】(a)及び(b)は、傾き調整画面の一例を示す図である。
【
図12】(a)は、爪が傾いている場合の前方画像の一例を示す説明図であり、(b)は、爪が傾いていない場合の前方画像の一例を示す説明図であり、(c)は、傾いている場合の爪と傾いていない場合の爪とを模式的に重ね合わせ、爪の上方画像を合わせて示した説明図である。
【
図13】爪が傾いている場合と傾いていない場合とにおける、印刷ヘッドまでの距離の違いを模式的に示した説明図である。
【
図15】
図1の印刷装置1Bにより実行される印刷制御処理Bの流れを示すフローチャートである。
【
図16】
図1の印刷装置1Bにより実行される印刷制御処理Bの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図16を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、プログラム及び印刷制御方法の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪等を印刷対象とするネイルプリント装置である場合を例に説明する。なお、本発明における印刷装置は、手の指の爪を印刷対象とする印刷装置に限定されるものではない。
【0011】
<印刷システム100の構成>
図1は、本発明に係る印刷装置1Bを備える印刷システム100の全体構成例を示す図である。
図1に示すように、印刷システム100は、印刷装置1Aと、印刷装置1Bと、サーバ7と、を備えて構成されている。印刷装置1A及び印刷装置1Bは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、又はインターネット等の通信ネットワークNを介してサーバ7に接続し、サーバ7とデータ送受信を行うことが可能である。なお、各装置の数は、特に限定されない。
【0012】
<印刷装置1Aの構成>
図2は、本実施形態における印刷装置1Aの要部外観構成を示す斜視図である。
図3は、本実施形態の印刷装置1Aの機能的構成を示す要部ブロック図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図2等に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、
図2等に示した方向をいうものとする。
【0013】
図2に示すように、印刷装置1Aは、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の前面側(印刷装置1Aの正面側、
図2において前側)には、左右方向(印刷装置1Aの横方向、
図2において左右方向、X方向)のほぼ中央部に開口部21が形成されている。開口部21は、少なくとも装置内に印刷対象の爪Tに対応する指Uを出し入れできる程度の幅を有している。開口部21は、装置内に片手全体や両手全体を出し入れできる程度の幅を有していてもよい。
【0014】
筐体2の上面(天板)や側面等には、操作部22が設けられている。操作部22は、ユーザが各種入力を行う機能部である。本実施形態では、筐体2の上面に操作部22が設けられている例を図示している。
操作部22は、例えば印刷装置1Aの電源をONする電源スイッチボタン、動作を停止させる停止スイッチボタン等であり、操作部22が操作されると操作に応じた指示信号が後述の制御部11に出力される。なお、図示例では、操作部22が1つのボタンで構成されている場合を示しているが、操作部22は筐体2の上面等に設けられた複数のボタン等で構成されていてもよい。
また、本実施形態において、後述の表示部23の表面には、タッチパネルが一体的に構成されており、タッチパネルも操作部22として機能する。
【0015】
また、筐体2には、表示部23が設けられている。図示例では筐体2の上面(天板)に表示部23が配置されている。
表示部23は、後述する制御部11から出力された画像データ等に基づいて各種の表示画面を表示させる。表示部23の大きさや設けられる具体的な位置等は図示例に限定されない。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。また、本実施形態では、表示部23の表面に、タッチパネルが一体的に構成されている。
【0016】
筐体2の内部には、基台15を含む印刷装置1Aの装置本体が収容されている。
図2に示すように、基台15上であって開口部21に対応する位置には、開口部21から挿入された指U(
図5等参照)が配置される指配置部3が設けられている。
図4は、基台の表面の要部構成を示す斜視図である。
図2及び
図4に示すように、指配置部3は、指Uが載置される部分である配置部本体31を有している。配置部本体31の幅方向の中央部は長手方向に沿って多少窪んでおり、指Uが安定して配置されるようになっている。なお、配置部本体31には、例えば樹脂等の柔軟性を有する材料で形成されたクッション部材が設けられていてもよい。
【0017】
図5は、指がセットされた状態の指配置部3を示す斜視図である。なお、
図5において指Uや爪Tの配置状態を分かりやすく図示するため、一部を破線として内部を透過させて示している。
図4及び
図5に示すように、指配置部3の手前側(
図2におけるY方向の手前側)は枠状部32で囲われている。また指配置部3において枠状部32が設けられている部分よりもY方向の奥側(
図2における装置奥側)は、配置部本体31の両側(X方向の両側)に側壁33が設けられるとともに、上方が開放されている。これにより開口部21から挿入され指配置部3内に配置された指Uの爪Tの表面が、露出するようになっている。なお、側壁33が設けられていることは必須ではなく、側壁33のない構成としてもよい。
【0018】
枠状部32の内側には、後述する指固定機構35の膨縮部351が配置されている。
膨縮部351は、内圧を変化させることにより膨縮可能に構成されており、収縮状態では
図2又は
図4に示すように、枠状部32の内側に薄く貼り付いた状態となっており、枠状部32内への指Uの挿入を阻害しない。これに対して、膨張状態では、
図5に示すように枠状部32内に挿通された指Uを周囲から締め付けて指U(爪T)の傾き状態を維持・固定させる。
【0019】
配置部本体31には、指紋センサ36が組み込まれている。指紋センサ36は、「静電容量式」、「光学式」、「感圧式」等により、配置部本体31に載置された指Uの指紋情報を取得する。
【0020】
図3及び
図4に示すように、筐体2内には、指配置部3に配置された指U(爪Tを含む指U)を撮影する上方撮影部5及び前方撮影部6等が設けられている。
上方撮影部5は、印刷対象である爪Tの上面(表面)を撮影して上方からの爪画像である上方画像を取得する撮影部である。また前方撮影部6は、印刷対象である爪Tに対応する指Uの指先側からの爪画像である前方画像を取得する。
【0021】
上方撮影部5、前方撮影部6の位置は特に限定されないが、例えば
図4に示すように、上方撮影部5は、指配置部3の枠状部32よりも奥側であって上方が開放されて爪Tが露出する辺りに対応する上方位置に配置される。また、前方撮影部6は、指配置部3よりも装置奥側(Y方向の後方側)の基台15上等に配置される。なお、後述するように本実施形態ではインクジェット方式で爪Tへの印刷が行われるため、爪Tの近傍ではインクミスト等が浮遊する可能性があり、基台15上等にもインクが付着するおそれがある。このため、前方撮影部6は指配置部3からある程度離れた位置に配置されることが好ましい。
【0022】
上方撮影部5及び前方撮影部6は、それぞれ、カメラ51,61と、光源52,62とを含んでいる。
カメラ51,61は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型の撮影装置であり、印刷装置1A内に配置された爪Tを含む指Uを撮影して爪Tの画像を取得する。また、光源52,62は、例えば白色LED等の照明灯である。
上方撮影部5及び前方撮影部6は、指配置部3に載置された指Uや爪T等の撮影対象を光源52,62によって照明する。そして、カメラ51,61によって爪Tを含む指Uを撮影して爪画像(爪Tを含む指Uの画像)である上方画像、前方画像を得る。
上方撮影部5及び前方撮影部6は、制御部11によって動作を制御され、取得された画像は制御部11に送られる。
【0023】
また
図3に示すように、本実施形態の印刷装置1Aは、前述の膨縮部351を含む指固定機構35を備えている。指固定機構35は爪Tの状態(爪Tがほぼ水平に保たれた状態)を維持させる状態維持部である。
状態維持部の構成は特に限定されないが、本実施形態では、膨縮部351及び膨縮部351に接続され膨縮部351の内圧を変化させて膨張・収縮させる図示しないポンプ及びバルブ等を備えている。
【0024】
ポンプは、例えば空気等の気体や水等の液体である流体を膨縮部351に送り込むものである。バルブは、例えば通電することで開状態(開放状態)と閉状態とを切り替えることのできる電磁弁であり、開状態において膨縮部351から流体を排出させる。ポンプ及びバルブは、後述する制御部11によって、適宜動作が制御される。なお、指固定機構35はポンプ及びバルブの他、膨縮部351内の圧力値を取得する圧力センサ等を備えていてもよい。また、状態維持部としての指固定機構35は爪Tの状態(爪Tがほぼ水平に保たれた状態)を維持させることができるものであればよく、具体的な構成はここに例示したものに限定されない。
【0025】
また、印刷装置1Aは印刷部としての印刷機構4を備えている。印刷機構4は装置本体の基台15上に設けられている。
印刷機構4は、
図3に示すように、印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41を移動させるヘッド移動手段としてのX方向移動モータ45、Y方向移動モータ47等を備えている。
本実施形態の印刷ヘッド41は、爪表面に対向する面(下側の面)が、インクを吐出させる複数のノズル口(図示せず)を備えたインク吐出面411(
図13参照)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面411から爪表面に直接にインクを吹き付けて(吐出させて)印刷を行うインクジェット方式の印刷部である。なお、具体的なインクの吐出方式等は特に限定されない。また印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面411等の吐出機構部とインクを貯留するインクカートリッジとが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の色インクを吐出可能となっている。なお、印刷ヘッド41の種類や数は特に限定はされない。例えば上記のような色インクを吐出する印刷ヘッドの他に、デザインを印刷する前に下地となる液剤(例えば白色のインク等)を印刷する下地用の印刷ヘッド等を備えていてもよい。
【0026】
印刷ヘッド41は、X方向に亘って設けられている図示しないX方向ガイド軸に支持されており、X方向移動モータ45が動作することでX方向ガイド軸にガイドされて、装置の左右方向(X方向)に移動可能となっている。
また、基台15上のX方向両端側には、装置のY方向に亘って図示しないY方向ガイド軸が設けられている。X方向ガイド軸は一対のY方向ガイド軸にかけ渡されており、Y方向移動モータ47が動作することでX方向ガイド軸に支持された印刷ヘッド41はY方向ガイド軸にガイドされて、装置の前後方向(Y方向)に移動可能となっている。
X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、例えばステッピングモータであり、制御部11によって動作が制御される。
【0027】
印刷機構4は、制御部11の制御に従って印刷処理を行うことにより、爪領域に応じて決定された印刷領域に印刷を行う。
【0028】
さらに
図3に示すように、印刷装置1Aは前述の操作部22、表示部23、指固定機構35、指紋センサ36と、印刷機構4、上方撮影部5、前方撮影部6を備える他、通信部25、制御装置10等を備えている。
通信部25は、サーバ7等の外部装置との間で通信を行うための無線ユニットや有線ユニットを備え、外部装置とデータ送受信を行う。
【0029】
また、印刷装置1Aに搭載される制御装置10は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備えるコンピュータである。
記憶部12のROM等には、印刷装置1Aを動作させるための各種プログラム等が格納されているプログラム記憶領域121が設けられている。
制御部11は、プログラム記憶領域121等に格納された各種プログラムをRAMの作業領域に展開し、展開したプログラムとの協働により後述する印刷制御処理Aを始めとする各種処理を実行することによって、印刷装置1Aの各部の動作を統合的に制御する。
【0030】
<印刷装置1Bの構成>
図2は、本実施形態における印刷装置1Bの要部外観構成を示す図である。
図6は、印刷装置1Bの機能的構成を示す要部ブロック図である。
図6に示すように、印刷装置1Bは、前方撮影部6を備えていない点が印刷装置1Aとは異なる。
また、印刷装置1Bの制御部11は、プログラム記憶領域121等に格納された各種プログラムをRAMの作業領域に展開し、展開したプログラムとの協働により後述する印刷制御処理Bを始めとする各種処理を実行することによって、印刷装置1Bの各部の動作を統合的に制御する。
印刷装置1Bのその他の構成(制御装置10の構成を含む)は印刷装置1Aと同様であるので説明を援用する。
【0031】
<サーバ7の構成>
サーバ7は、ユーザDB(Data Base)70、爪情報DB71、デザインDB72を有する記憶装置である。
【0032】
ユーザDB70は、登録されたユーザのユーザ情報(ユーザ認証情報(本実施形態では、ユーザID及びパスワード)、ユーザ名等)が記憶されている。なお、ユーザ認証情報は、ユーザID及びパスワードに限定されず、例えば、指紋情報等の生体情報等、個人を特定できるものであれば特に限定されない。
【0033】
爪情報DB71は、ユーザ認証情報としてのユーザID、指種別、及び指紋情報(指種別に対応する指の指紋情報)に対応付けて、その指種の指Uに対応する爪情報(爪角度、長さ(縦幅(L))、幅(横幅(W))を含む。
図14参照。)を記憶する。
図7に爪情報DB71のデータ格納例を示す。
デザインDB72は、爪に印刷するデザイン(デザイン画像)のデータ(デザインデータ)を、デザインの識別情報であるデザインIDに対応付けて記憶する。
【0034】
サーバ7は、印刷装置1A又は1Bから送信されたユーザIDに対応する爪情報が爪情報DB71に存在するか否かの問い合わせを受信すると、爪情報DB71において受信したユーザIDに対応する爪情報の検索を行い、ユーザIDに対応する爪情報が存在するか否かを送信元の印刷装置に通知する。
【0035】
また、サーバ7は、ユーザIDに対応する爪情報が存在する場合に、印刷装置1A又は1Bから送信された指紋情報の指紋照合が要求されると、受信した指紋情報と爪情報DB71に登録されている指紋情報とを照合し、指紋情報が一致したか否かを送信元の印刷装置に通知する。
【0036】
また、サーバ7は、印刷装置1AからユーザID、指種別、指紋情報、及び爪情報を受信すると、受信した情報を対応付けて爪情報DB71に記憶する。
【0037】
また、サーバ7は、印刷装置1A又は1Bから爪情報の取得要求があると、印刷装置1A又は1Bから受信した指紋情報に対応する爪情報を爪情報DB71から読み出して送信元の印刷装置に送信する。
【0038】
また、サーバ7は、印刷装置1A又は1Bからデザインデータの取得要求があると、印刷装置1A又は1Bから要求されたデザインデータをデザインDB72から読み出して送信元の印刷装置に送信する。
【0039】
<印刷装置1Aの動作>
次に、印刷装置1Aの動作について説明する。
図8~9は、印刷装置1Aの電源がONの間、印刷装置1Aの制御部11により実行される印刷制御処理Aの流れを示すフローチャートである。印刷制御処理Aは、印刷装置1Aの制御部11と、記憶部12のプログラム記憶領域121に記憶されているプログラムとの協働により実行される。なお、以下の説明において、印刷装置1Aと印刷装置1Bの制御部11を区別するため、印刷装置1Aの制御部11を制御部11A、印刷装置1Bの制御部11を制御部11Bとして説明する。
【0040】
まず、制御部11Aは、通信部25によりサーバ7との接続を確立する(ステップS1)。
次いで、制御部11Aは、表示部23にユーザ認証情報(本実施形態では、ユーザID及びパスワード)を入力するためのログイン画面を表示させ、ユーザ認証情報を取得する(ステップS2)。
なお、上述のように、ユーザ認証情報は、ユーザID及びパスワードに限定されない。例えば、指紋センサ36から入力される指紋情報等、個人を特定できるものであれば特に限定されない。
【0041】
ユーザ認証情報を取得すると、制御部11Aは、ユーザ認証がOKであるか否かを判断する(ステップS3)。
例えば制御部11Aは、通信部25によりサーバ7にユーザ認証情報を送信し、サーバ7にユーザ認証を依頼する。サーバ7は、受信したユーザ認証情報をユーザDB70に記憶されているユーザ認証情報と照合し、一致した場合に、認証OKを印刷装置1Aに通知する。一致しない場合は、認証NGを印刷装置1Aに通知する。制御部11Aは、サーバ7からの通知に基づいて、ユーザ認証がOKであるか否かを判断する。
【0042】
ユーザ認証がOKではないと判断した場合(ステップS3;NO)、制御部11Aは、ユーザ新規登録又はパスワード変更をするか否かを問い合わせるメッセージを表示部23に表示させる(ステップS4)。
操作部22によりユーザ新規登録又はパスワード変更が指示されると(ステップS4;YES)、制御部11Aは、ユーザ操作に応じてユーザの新規登録の処理またはパスワード変更の処理を行って、サーバ7のユーザDB70に新規のユーザ情報を登録するか又は変更したパスワードを登録し(ステップS5)、ステップS2に戻る。ユーザ新規登録又はパスワード変更が指示されない場合(ステップS4;NO)、制御部11Aは、ステップS2に戻り、再度ユーザ認証情報の入力を受け付ける。
【0043】
一方、ステップS3において、ユーザ認証がOKであると判断した場合(ステップS3;YES)、制御部11Aは、爪Tに印刷を施したいデザインの選択を受け付ける(ステップS6)。
例えば、制御部11Aは、表示部23に爪Tに印刷したいデザインを選択するためのデザイン選択画面を表示し、操作部22の操作に応じてデザインの選択を受け付ける。あるいは、例えば専用のデザインカード等にデザインを特定するQRコード(登録商標)等を付しておき、これを印刷装置1Aの図示しないカメラ等で読み取ることで、デザインの選択を受け付けてもよい。
デザインが選択されると、制御部11Aは、選択されたデザインのデザインデータをサーバ7から取得する(ステップS7)。
なお、デザインデータは記憶部12に記憶しておき、記憶部12からデザインデータを取得することとしてもよい。
【0044】
次いで、制御部11Aは、操作部22により爪Tに印刷を施したい指Uの指種の選択を受け付ける(ステップS8)。
例えば、制御部11Aは、表示部23に、指種(例えば、右手人差し指、右手中指、・・・等)を選択肢として表示するとともに選択した指種の指Uを印刷装置1A内の指配置部3にセットするよう促す画面を表示する。
操作部22によりいずれかの指種が選択されると、制御部11Aは、サーバ7から取得されたデザインデータのうち、選択された指種のデザインデータを印刷対象のデザインデータとして設定し(ステップS9)、選択された指種を印刷対象の指種として設定する(ステップS10)。
【0045】
次いで、制御部11Aは、指紋センサ36に指紋の読み取りを開始させる(ステップS11)。指紋センサ36により指紋情報が取得されると(ステップS12;YES)、制御部11Aは、ログイン画面から入力されたユーザIDを通信部25によりサーバ7に送信し、当該ユーザIDに対応する爪情報がサーバ7に存在するか否かを問い合わせる(ステップS13)。
【0046】
サーバ7からユーザIDに対応する爪情報が存在すると通知された場合(ステップS14;NO)、制御部11Aは、指紋センサ36により取得された指紋情報及び印刷対象の指種の指種別を通信部25によりサーバ7に送信し、爪情報DB71に登録されている指紋情報との照合を依頼する(ステップS15)。
すなわち、制御部11Aは、指紋センサ36により取得された指紋情報と、爪情報DB71に記憶されている、送信したユーザIDに対応する印刷対象の指種の指紋情報と、の照合をサーバ7に依頼する。
【0047】
指紋照合の結果、指紋情報が一致していることがサーバ7から通知された場合(ステップS16;YES)、制御部11Aは、送信した指紋情報と一致する指紋情報に対応付けて爪情報DB71に記憶されている爪情報をサーバ7から取得し(ステップS17)、ステップS30に移行する。
【0048】
指紋照合の結果、指紋情報が一致していないことがサーバ7から通知された場合(ステップS16;NO)、制御部11Aは、サーバ7に指紋情報(及び爪情報)を再登録するか否かをユーザに選択させる(ステップS18)。
例えば、指配置部3にセットする指を間違えた場合、ユーザは再登録しないを選択し、印刷対象の指Uを指配置部3にセットし直す。指配置部3にセットする指が合っている場合は、印刷を進めるには指紋情報の登録し直しが必要となるため、再登録を選択する。
【0049】
サーバ7に指紋情報(及び爪情報)を再登録しないことが選択されると(ステップS18;NO)、制御部11Aは、ステップS11に戻り、再度指紋センサ36による指紋の読み取りを行う。
サーバ7に指紋情報(及び爪情報)を再登録することが選択されると(ステップS18;YES)、制御部11Aは、ステップS19に移行する。
【0050】
一方、ステップS14において、サーバ7からユーザIDに対応する爪情報が存在しないと通知された場合(ステップS14;YES)、制御部11Aは、ステップS19に移行する。
【0051】
ステップS19において、制御部11Aは、前方撮影部6のカメラ61及び光源62をONとして、指配置部3に配置された指Uを指先側から見た場合の爪T(及び指U)を撮影させ、爪画像(前方画像)を取得する(ステップS19)。
【0052】
次いで、制御部11Aは、取得した爪画像(前方画像)を画像処理(画像解析)し、画像中に指Uを認識することができたか否かを判断する(ステップS20)。
指Uが配置されているか否かの判定は、例えば画像解析、画像処理により、指Uの形状や色を判定すること等で行われる。
【0053】
爪画像(前方画像)から指Uが認識できないと判断した場合(ステップS20;NO)には、制御部11Aは、表示部23に指配置部3に指Uを配置するように促す画面を表示させ(ステップS21)、ステップS19に戻る。
なお、指配置部3に指Uを配置するように促す手法は表示に限定されず、音声案内等によってもユーザに促してもよい。
【0054】
他方、爪画像から指Uが認識できたと判断した場合(ステップS20;YES)、制御部11Aは、爪画像(前方画像)から爪Tの形状(指先側から見た爪Tの爪輪郭)を検出する(ステップS22)。検出された爪Tの爪輪郭は記憶部12に記憶される。
次いで、制御部11Aは、この爪輪郭から爪Tの幅方向(爪幅方向)の両端位置を検出し(ステップS23)、さらに、爪幅方向の両端の位置座標の差分から爪Tの水平方向に対する傾きを検出(算出)する(ステップS24)。このとき、爪Tが傾いているか否かの判断の基準となる「水平」のラインは、基台15や指配置部3の底部とする。なお、カメラ61に予めキャリブレーションされた「水平」のラインを持たせておき、この「水平」のラインをもとに爪Tの傾きを検出してもよい。なお、爪Tが水平であるか判断する際に、X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47によって印刷ヘッド41が移動される所定の平面を基準として判断するようにしてもよい。
【0055】
図10(a)は、爪Tが傾いている場合の爪Tの幅方向の両端位置の一例を示した図であり、
図10(b)は、爪Tが傾いていない(水平である)場合の爪Tの幅方向の両端位置の一例を示した図である。
図10(a)に示すように、爪Tが傾いている場合には、爪Tの幅方向の両端の高さ位置がずれているが、爪Tが傾いていない場合(水平である場合、すなわち「爪の傾き≒0」、「0±数%以内」の場合)には、
図10(b)に示すように、爪Tの幅方向の両端位置がほぼ同じ高さとなっている。そこで、制御部11Aは、爪Tの幅方向の位置座標の差分に基づいて爪Tの水平方向に対する傾き(傾き具合)を検出する。
【0056】
爪Tの傾きが検出されると、制御部11Aは、検出結果に基づき、表示部23に爪の傾き情報を表示させる(ステップS25)。
ステップS25における表示のさせ方、表示させる情報の内容等は特に限定されないが、例えば
図10(a)や
図10(b)に示すような画像を表示部23に表示させ、爪Tが現状どのような状態で配置されているかをユーザに示す。
【0057】
次いで、制御部11Aは、爪Tが水平であるか否かを判断する(ステップS26)。言い換えると、制御部11Aは、爪Tが印刷に適した姿勢であるか否かを判断する。
制御部11Aは、例えば、爪Tの幅方向の両端のそれぞれの位置座標の差分が予め定められた閾値内か否かに基づいて、または、上記差分から算出される傾き角度が予め定められた閾値以内であるか否かに基づいて、爪Tが水平であるか否かを判断する。水平であるか否かを判断するための基準となる閾値は適宜設定されるが、傾きはほぼ0度(「0±数%以内」程度)であることが好ましい。
【0058】
判断の結果、爪Tが水平ではないと判断した場合(ステップS26;NO)、制御部11Aは、爪Tを水平にするよう(すなわち、爪Tが印刷に適した姿勢にするよう)ユーザに促す情報を通知するための通知画面(傾き調整画面231)を表示部23に表示させ(ステップS27)、ステップS19に戻る。
例えば
図11(a)に示すように、傾き調整画面231には、爪Tの前方画像と、爪が水平になるよう促すメッセージが表示される。爪画像(前方画像)には、爪幅方向の端部の高さ位置を示す線(
図11(a)において左側端部の高さ位置を破線で示し、右側端部の高さ位置を実線で示す)が、爪画像に重畳されて示される。さらに、傾き調整画面231内には、爪幅方向の両端部の位置を示す線(
図11(a)では、破線と実線)が重なるように指Uを傾けるよう指示するメッセージが表示される。なお、傾き調整画面231に表示される内容はこれに限定されず、例えば爪Tを水平に近付けるために指Uをどの方向に傾ければよいかを矢印等で示してもよい。
【0059】
傾き調整画面231に表示される指U及び爪Tの画像は印刷装置1Aの前方撮影部6のカメラ61によりリアルタイムに撮影されるライブビュー画像であり、ユーザが指示にしたがって指Uを傾けると、指Uが傾いていく様子がカメラ61で撮影され、傾き調整画面231の画像が変化していくことが好ましい。この場合、爪幅方向の端部の高さ位置を示す線の位置も爪の傾きに連動して変化することが好ましい。制御部11Aは、爪Tが水平となったか否かを随時判断する。
【0060】
爪Tが水平であると判断した場合(ステップS26;YES)、制御部11Aは、この状態で爪T(指U)を維持するようユーザに指示するメッセージを表示部23に表示させる。または、制御部11Aは、指固定機構35を動作させて指Uを固定させ、爪T(指U)の状態を維持させる(ステップS28)。
例えば、
図11(b)に示すように、爪幅方向の両端部の位置を示す線(
図11(a)及び
図11(b)において、破線と実線)が重なって爪Tの傾き角度がほぼ0度(≒0)となると、制御部11Aは、画面上に、「爪が水平になりましたので印刷を開始します。」「このままの状態を維持してください。」といったメッセージを表示させる。
【0061】
ここで、爪Tが傾いている場合には、爪Tが水平である場合と比較して、カメラ51,61によって撮影された爪画像における爪幅方向の長さが短くなる。
図12(a)は、爪Tが傾いている場合の爪画像(前方画像)の例であり、この場合の、爪幅方向の左右端部の間の距離(幅W)を「幅W1」とする。また、
図12(b)は、爪Tが傾いていない(水平の)場合の爪画像(前方画像)の例であり、この場合の、爪幅方向の左右端部の間の距離(幅W)を「幅W2」とする。
図12(c)は、
図12(a)で示す「傾いている場合の爪」と
図12(b)で示す「傾いていない場合の爪」とを模式的に重ね合わせ、さらに図面下側に各場合の爪の上方画像を配置した説明図である。
図12(c)に示すように、カメラ51,61で取得される画像における爪Tの幅方向の大きさ(距離)は、「幅W1」<「幅W2」となり、爪Tが傾いた状態では傾いていない状態よりも印刷範囲である爪領域として認識される面積が狭くなってしまう。
【0062】
また、
図13は、爪Tが傾いている場合と爪Tが水平である場合とにおける、印刷ヘッド41のインク吐出面までの距離を模式的に示した説明図である。
図13に示すように、爪Tが傾いている場合には、傾いて高さが高くなっている側の端部ではインク吐出面411までの距離D1αが短くなり、逆に高さが低くなっている側の端部ではインク吐出面411までの距離D1βが長くなっている。
これに対して爪Tが水平である場合には、爪幅方向の両端部において、インク吐出面411までの距離D2α,D2βがほぼ等しくなっている。
【0063】
インクジェット方式で印刷を行う場合、インクが吐出されるインク吐出面411までの距離から爪Tまでの距離が近いとインクが正しく着弾するのに対して、インク吐出面411までの距離から爪Tまでの距離が遠くなるにしたがってインクの着弾が乱れてしまい、着弾位置ずれや着弾しないインク滴が増加し、インクが正しく着弾しなかった部分の濃度が低く(薄く)なってしまう。
このため、インク吐出面411までの距離にばらつきがあると、特に爪Tの端部で色ムラ(濃度ムラ)や滲みを生じやすくなり、印刷結果の品質が低下するおそれがある。この点、印刷対象面である爪Tをできるだけ水平に近い状態として印刷を行うことで、爪Tの幅方向の各端部からインク吐出面411までの距離のばらつきが小さくなり、色ムラの発生等を低減して安定した高品質な印刷を行うことができる。
【0064】
次いで、制御部11Aは、爪画像(前方画像)から爪Tの爪角度を計測し、爪角度情報を取得する(ステップS29)。
爪角度は、爪Tの幅方向における複数点の傾斜角度を示す情報である。
図14は、爪角度情報を含む爪情報を説明するための図である。
例えば、制御部11Aは、
図14に示すように、爪画像(前方画像)から爪Tの幅方向(左右方向)の中心位置Cを検出し、中心位置Cから爪幅方向の左右それぞれの端部までの50%、75%、100%の距離にある爪Tの輪郭上の点と中心位置Cとを結んだ線(
図14に点線で示す)と、水平線Hのなす角度(それぞれ、L50、L75、L100、R50、R75、R100とする)を計測し、爪角度情報として取得する。
【0065】
次いで、制御部11Aは、取得した爪角度情報を印刷に用いる制御パラメータとして設定する(ステップS30)。
【0066】
次いで、制御部11Aは、上方撮影部5のカメラ51を動作させて、爪画像(上方画像)を撮影させ、当該爪画像(上方画像)を取得する(ステップS31)。
【0067】
次いで、制御部11Aは、爪画像(上方画像)について画像処理(画像解析)等を行うことで、爪画像(上方画像)から爪輪郭を検出する(ステップS32)。
検出された爪輪郭の内側領域は、印刷が行われる爪領域(印刷領域)となる。爪輪郭の検出の仕方はどのような手法を用いたものでも構わない。例えば、ネイルデザインの印刷前に、爪Tに白色等の下地を塗布する場合には、下地が塗布されている範囲を爪領域として認識する。
【0068】
爪輪郭が検出(すなわち、爪領域が認識)されると、制御部11Aは、表示部23に、爪領域として認識された範囲を確認するための爪領域確認画面を表示させ(ステップS33)、爪領域が適切か否かを判断する(ステップS34)。
爪領域確認画面には、爪領域として認識された範囲を示す画像と、ユーザに印刷領域となる爪領域が適切か否かの確認を求めるメッセージと、爪領域が適切であるとの入力を行う「OK」ボタンと、修正が必要である場合に操作する「修正する」ボタンが設けられている。
【0069】
「修正する」ボタンが操作されると、制御部11Aは、認識された爪領域が適切でないと判断し(ステップS34;NO)、印刷領域となる爪領域を手動設定するようユーザに促す画面を表示部23等に表示させ、手動設定が実施されると(ステップS35)、ステップS33に戻って以降の処理を繰り返す。
【0070】
他方、「OK」ボタンが操作されると、制御部11Aは、認識された爪領域が適切と判断し(ステップS34;YES)、認識された爪領域を印刷領域に決定し、
図14に示すように、爪画像(上方画像)から爪輪郭の内側領域(爪領域)の幅W(爪領域の最大の横幅)・長さL(爪領域の最大の縦幅)を計測し、中心位置Cを検出する(ステップS36)。
【0071】
次いで、制御部11Aは、サーバ7に爪情報を登録するか否かを判断する(ステップS37)。
例えば、制御部11Aは、ステップS30においてサーバ7から取得した爪角度情報を制御パラメータとして設定した場合は、すでにサーバ7に爪情報が登録されているため、サーバ7に爪情報を登録しないと判断する。ステップS30において爪画像(前方画像)から取得した爪角度情報を制御パラメータとして設定した場合は、サーバ7に爪情報が登録されていないため、サーバ7に爪情報を登録すると判断する。
【0072】
サーバ7に爪情報を登録すると判断した場合(ステップS37;YES)、制御部11Aは、ユーザID、指種別、指紋情報、爪情報(爪角度情報、爪の長さ(縦幅(L))、爪の幅W(横幅(W)))を対応付けて通信部25によりサーバ7に送信し、サーバ7の爪情報DB71に爪情報を登録(記憶)させる(ステップS38)。なお、制御部11Aは、選択されたデザインデータのデザインIDを併せて送信し、爪情報DB71に保存することとしてもよい。
サーバ7に爪情報を登録しないと判断した場合(ステップS37;NO)、制御部11Aは、ステップS39に移行する。
【0073】
ステップS39において、制御部11Aは、認識された爪領域の中心位置Cから、設定されたデザインデータのデザイン画像を配置し、爪領域内にデザインが最大に収まるようにデザイン画像の拡縮等を自動調整しながらデザインの爪領域への合わせ込みを行う(ステップS39)。
このように、デザインの合わせ込みは爪領域の中心位置Cから行われるところ、爪Tが傾いている場合には、爪幅(横幅)が正しく認識されないため、爪幅方向の中心位置Cも、実際の爪Tの中心からずれてしまう。
【0074】
例えば、
図12(c)では、爪Tが傾いている場合の爪幅方向の中心位置C(C1とする)を細一点鎖線で示し、爪Tが傾いていない場合の爪幅(横幅)方向の中心位置C(C2とする)を太一点鎖線で示している。
図12(c)に示すように、爪Tが傾いている場合の爪幅方向の距離(幅W)である幅W1は、爪Tが傾いていない場合の爪幅(横幅)方向の距離(幅W)である幅W2よりも短く、幅W1の中心位置C1も幅W2の中心位置C2からずれた位置となる。このため、中心位置C1を爪幅方向の中心としてデザインの合わせ込みを行うと、爪Tの端部のデザインに色ムラが発生したり、デザインが印刷されない箇所が生じたりしてしまうことがある。
この点、爪Tを傾きのない状態に維持して爪Tの幅方向の中心位置C2を取得すれば、実際の爪Tの中心位置C2から印刷範囲一杯まで大きくデザインを配置して爪領域に合わせ込むことができる。また、爪幅方向の中心位置もずれないため、正しい爪Tの中心位置からデザインを配置することができ、また、爪Tの左右端部からインク吐出面411までの距離が同じ距離になるためデザインに色ムラが発生することがない。
【0075】
爪領域へのデザインの合わせ込みを行うと、制御部11Aは、表示部23に、爪領域へのデザインの合わせ込み結果を示すプレビュー画面を表示させ(ステップS40)、プレビュー表示されたデザイン配置状態で印刷を実行するか否かを判断する(ステップS41)。
プレビュー画面には、爪領域へのデザインの合わせ込み結果と、デザイン配置状態が適切か否かの確認を求めるメッセージと、デザイン配置状態が適切であるとの入力を行う「OK」ボタンと、変更が必要である場合に操作する「変更する」ボタンが設けられている。
【0076】
「変更する」ボタンが操作されると、制御部11Aは、このままのデザイン配置状態での印刷は実行しないと判断し(ステップS41;NO)、ユーザに手動による変更を促す画面を表示部23等に表示させる(ステップS42)。
ユーザが手動による変更を行う場合とは、例えばプレビュー画面においてプレビュー表示されたデザインの印刷位置がずれていた場合や、爪Tの中心位置Cにデザインが配置されているが、ユーザは中心位置Cではなく、それ以外の任意の位置にデザインの中心を配置したい場合等である。この場合には、ユーザが手動によりデザインの位置を変更したり、デザイン画像の拡縮等を行う。ユーザがデザインを任意の配置等に変更した場合には、ステップS40に戻って再度プレビュー表示を行わせ、イメージ通りの配置となったか否かを確認することができる。
【0077】
他方、「OK」ボタンが操作されると、制御部11Aは、プレビュー表示された状態で印刷を実行すると判断し(ステップS41;YES)、印刷を行う印刷領域やデザインの配置の仕方等に関するデータを含んだ印刷データを生成し、印刷データに基づいて印刷機構4の各部を制御して、決定された印刷領域(爪領域)に対して選択されたデザインを印刷する印刷処理を行わせる(ステップS43)。
このとき、制御部11Aは、印刷に用いる制御パラメータとして設定された爪角度情報に基づいて、印刷ヘッド41のインク吐出量を制御する。具体的には、爪Tにおける傾斜角度が大きい箇所ほどインクの吐出量が多くなるように印刷ヘッド41を制御する。これにより、印刷ヘッド41は、爪Tにおける傾斜角度が大きい箇所ほどインクの吐出量を多くして印刷を行う。
このように、印刷装置1Aでは、爪角度情報に基づいて、すなわち、爪Tの複数点の傾斜角度に基づいてインクの吐出量を調整するので、爪の端の傾斜が大きい部分の色ムラを低減することができ、安定した高品質な仕上がりを提供することができる。
【0078】
そして印刷処理が完了すると、制御部11Aは、他に印刷する指Uの爪Tがあるか否かを判断する(ステップS44)。
他に印刷すべき爪Tがある場合(ステップS44;YES)、制御部11Aは、ステップS6に戻って以降の処理を繰り返す。
なお、全指の爪Tに共通のデザインを印刷することを一連の印刷処理の開始前等に設定した場合には、2本目以降はデザイン選択(ステップS6)及びデザインデータの取得(ステップS7)を省略してもよい。
他方、印刷すべき爪Tが他にない場合(ステップS44;NO)、制御部11Aは、ステップS2に戻り、ユーザ認証情報が取得されると、ステップS3以降の処理を繰り返す。制御部11Aは、印刷装置1Aの電源がONの間、印刷制御処理Aを実行し、電源がOFFが検出されると、印刷制御処理Aを終了する。
【0079】
<印刷装置1Bの動作>
次に、印刷装置1Bの動作について説明する。
上述のように、印刷装置1Bは、印刷装置1Aが有する前方撮影部6を有していない。そのため、印刷装置1B内では、爪画像(前方画像)を取得して爪角度情報を取得したり、爪が水平か否かを判断したりすることができない。
一方、サーバ7には、前方撮影部6を有する印刷装置1Aによって登録された爪角度情報を含む爪情報が記憶されている。
そこで、本実施形態では、印刷装置1Bは、サーバ7に記憶されている爪情報を取得して、取得した爪情報に基づいて印刷を行うことで、前方撮影部6を有していなくても、安定した高品質な仕上がりを提供することを可能とする。
【0080】
図15~16は、印刷装置1Bの電源がONの間、印刷装置1Bの制御部11により実行される印刷制御処理Bの流れを示すフローチャートである。印刷制御処理Bは、印刷装置1Bの制御部11(11B)と、記憶部12のプログラム記憶領域121に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0081】
まず、制御部11Bは、ステップS51~S63の処理を実行し、印刷対象のデザインデータ及び指種の設定並びに指紋情報の取得を行い、ログインユーザのユーザIDに対応する爪情報がサーバ7に記憶されているか否かを問い合わせる。ステップS51~S63の処理は、
図8のステップS1~S13と同様の処理であるので説明を援用する。
【0082】
ステップS64において、制御部11Bは、サーバ7にユーザIDに対応する爪情報が存在するか否かを判断する(ステップS64)。
制御部11Bは、サーバ7からユーザIDに対応する爪情報が存在することが通知されたか否かに基づいて、サーバ7にユーザIDに対応する爪情報が存在するか否かを判断する。
サーバ7にユーザIDに対応する爪情報が存在しないと判断した場合(ステップS64;NO)、制御部11Bは、ステップS77に移行する。
ここで、制御部11Bは、サーバ7に爪情報が存在しないことをユーザに通知するメッセージを表示部23に表示したり音声出力したりしてもよい。この場合は、爪角度情報を取得することはできないため、爪角度情報を用いずに印刷が行われる。
【0083】
サーバ7にユーザIDに対応する爪情報が存在すると判断した場合(ステップS64;YES)、制御部11Bは、指紋センサ36により取得された指紋情報及び印刷対象の指種の指種別を通信部25によりサーバ7に送信し、爪情報DB71に登録されている指紋情報との照合を依頼する(ステップS65)。
すなわち、制御部11Bは、指紋センサ36により取得された指紋情報と、爪情報DB71に記憶されている、送信したユーザIDに対応する印刷対象の指種の指紋情報と、の照合をサーバ7に依頼する。
【0084】
指紋照合の結果、指紋情報が一致していないことがサーバ7から通知された場合(ステップS66;NO)、制御部11Bは、指紋を再読み込みするか否かをユーザに選択させる(ステップS67)。
例えば、指紋を再読み込みするか否かを問い合わせるメッセージと、再読み込みすることを指示するボタン、再読み込みせず印刷を進めることを指示するボタンとが表示された画面を表示部23に表示させる。
【0085】
指紋を再読み込みすることが指示された場合(ステップS67;YES)、制御部11Bは、ステップS61に戻り、ステップS61~S66の処理を繰り返し実行する。
指紋を再読み込みしないことが指示された場合(ステップS67;NO)、制御部11Bは、ステップS77に移行する。この場合は、爪角度情報を取得することはできないため、爪角度情報を用いずに印刷が行われる。
【0086】
指紋照合の結果、指紋情報が一致していることがサーバ7から通知された場合(ステップS66;YES)、制御部11Bは、送信した指紋情報と一致する指紋情報に対応付けて爪情報DB71に記憶されている爪情報を通信部25を介してサーバ7から取得し(ステップS68)、取得した爪情報の爪角度情報を印刷に用いる制御パラメータとして設定する(ステップS69)。
【0087】
次いで、制御部11Bは、上方撮影部5のカメラ51を動作させて、爪画像(上方画像)を撮影させ、当該爪画像(上方画像)を取得する(ステップS70)。
【0088】
次いで、制御部11Bは、爪画像(上方画像)について画像処理(画像解析)等を行うことで、爪画像(上方画像)から爪輪郭を検出する(ステップS71)。
次いで、制御部11Bは、
図14に示すように、爪画像(上方画像)から爪輪郭の内側領域(爪領域)の幅W(爪領域の最大の横幅)及び長さL(爪領域の最大の縦幅)を計測し、計測した幅Wと長さLから爪Tの縦横比を算出する(ステップS72)。
次いで、制御部11Bは、爪画像(上方画像)から算出した縦横比と、サーバ7から取得した爪情報に含まれる幅Wと長さLから算出される縦横比とを比較し(ステップS73)、比較結果に基づいて、爪Tが水平であるか否かを判断する(ステップS74)。言い換えると、制御部11Aは、爪Tが印刷に適した姿勢であるか否かを判断する。
【0089】
ここで、上述のように、指配置部3にセットされた指Uの爪Tの幅方向が水平方向に対して傾いている場合、カメラ51によって撮影された爪画像(上方画像)における幅Wが短くなる。すなわち、爪Tが傾いている場合、爪Tが傾いていない(水平である)場合に比べて爪領域の縦幅(L)に対する横幅(W)の比率は小さくなる。サーバ7から取得した爪情報の幅W及び長さLは、上述のように、爪Tが水平な状態で計測した値であるため、爪画像(上方画像)から計測した幅Wと長さLから算出された縦横比が、サーバ7から取得した爪情報の幅W及び長さLから算出された縦横比と一致すれば、指配置部3にセットされた指Uの爪Tが水平であると判断することができる。
そこで、ステップS74では、爪画像(上方画像)から計測した幅Wと長さLから算出された縦横比が、サーバ7から取得した爪情報の幅W及び長さLから算出された縦横比と一致した場合に、爪Tが水平であると判断する。ここでいう一致とは、完全に一致する場合だけでなく、縦横比の差異が許容範囲内である場合も含む。
【0090】
爪Tが水平ではないと判断した場合(ステップS74;NO)、制御部11Bは、爪Tの角度を水平にするよう(すなわち、爪Tが印刷に適した姿勢にするよう)ユーザに促す情報を通知するための画面を出力部としての表示部23に表示させ(ステップS75)、ステップS70に戻り、ステップS70~74の処理を繰り返す。
ステップS75で表示される通知画面は、例えば、「爪が水平になるように指を傾けてください」等のメッセージが表示された画面である。なお、印刷装置1Bが音声出力部を備える場合は、音声によりメッセージを出力(通知)してもよい。
【0091】
爪Tが水平であると判断した場合(ステップS74;YES)、制御部11Bは、この状態で爪T(指U)を維持するようユーザに指示するメッセージを表示部23に表示させる。また、制御部11Bは、指固定機構35を動作させて指Uを固定させ、爪T(指U)の状態を維持させる(ステップS76)。
ステップS76では、例えば、制御部11Bは、画面上に、「爪が水平になりましたので印刷を開始します。」「このままの状態を維持してください。」といったメッセージを表示部23に表示する。なお、印刷装置1Bが音声出力部を備える場合は、音声によりメッセージを出力(通知)してもよい。
【0092】
印刷装置1Bは、前方撮影部6を持たないため、印刷装置1Aのように、爪画像(前方画像)を取得して爪Tが傾いているか否かを判断することはできない。これに対し、本実施形態では、サーバ7から爪情報を取得し、爪Tの爪画像(上方画像)から算出した縦横比と、サーバ7から取得した爪情報に含まれる幅W(最大の横幅)と長さL(最大の縦幅)から算出した縦横比との比較に基づいて、爪Tが水平であるか否かを判断し、水平ではない場合、爪Tが水平となるようにユーザに促す情報を表示部23に表示させることにより、ユーザに通知する。したがって、前方撮影部6を持たず爪画像(前方画像)を取得できない印刷装置1Bにおいても、爪Tが水平であるか(言い換えると、爪Tが印刷に適した姿勢であるか)否かをチェックして、傾いている場合は水平にするようにユーザに促すことができるため、印刷時の色ムラを低減することができ、安定した高品質な仕上がりを提供することが可能となる。
【0093】
爪Tが水平となると、制御部11Bは、ステップS77~S87の処理を実行し、爪領域(印刷領域)の決定、爪領域へのデザインの合わせ込み等を行って印刷を行う。ステップS77~82の処理は、
図9のステップS31~S36と同様であるので説明を援用する。また、ステップS83~S87の処理は、
図9のステップS39~S43と同様であるので説明を援用する。なお、ステップS87においては、印刷に用いる制御パラメータとして爪角度情報が設定されている場合、制御部11Bは、設定された爪角度情報に基づいて、印刷ヘッド41のインク吐出量を制御する。具体的には、爪Tにおける傾斜角度が大きい箇所ほどインクの吐出量が多くなるように印刷ヘッド41を制御する。これにより、印刷ヘッド41は、爪Tにおける傾斜角度が大きい箇所ほどインクの吐出量を多くして印刷を行う。
このように、印刷装置1Bにおいても、サーバ7から取得した爪角度情報に基づいて、すなわち、爪Tの複数点の傾斜角度に基づいて、インクの吐出量を調整することができるので、爪の端の傾斜が大きい部分の色ムラを低減することができ、安定した品質の仕上がりを提供することができる。
【0094】
また、このような前方撮影部6の設置が省略されている印刷装置1Bは、前方撮影部6を有する印刷装置1Aと比較して部品点数が少ないため、製造コストを低減することが可能となる。一方、印刷装置1Bにおいてサーバ7から取得した爪角度情報を利用することにより、印刷装置1Aにおいて前方撮影部6を利用して爪角度情報を取得して印刷処理を行う場合と同等の水準、すなわち爪角度情報を利用しないで印刷する場合と比較してより品質の高い印刷処理を行うことができる。例えば、このような印刷装置1Aおよび印刷装置1Bからなる印刷システムとして、ネイルサロン等の店舗に印刷装置1Aを設置するとともに、ユーザの自宅に印刷装置1Bを設置するものが考えられる。
【0095】
印刷処理が完了すると、制御部11Bは、他に印刷する指Uの爪Tがあるか否かを判断し(ステップS88)、他に印刷すべき爪Tがある場合(ステップS88;YES)、ステップS56に戻って以降の処理を繰り返す。
他方、印刷すべき爪Tは他にない場合(ステップS88;NO)、制御部11Bは、ステップS52に戻り、ユーザ認証情報が取得されると、ステップS53以降の処理を繰り返す。制御部11Bは、印刷装置1Bの電源がONの間、印刷制御処理Bを実行し、電源がOFFが検出されると、印刷制御処理Bを終了する。
【0096】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1Bによれば、制御部11Bは、ユーザの認証情報を取得し、取得した認証情報と対応付けられた爪情報が外部の記憶装置であるサーバ7に存在する場合に、その認証情報と対応付けられた爪情報をサーバ7から取得する。そして、取得された爪情報に基づいて、印刷機構4による爪の印刷を制御する。
したがって、印刷装置1B内では取得できない爪情報があっても、外部の記憶装置に存在する爪情報を取得して、取得した爪情報に基づいて爪に印刷を行うことができるため、安定した高品質な仕上がりを提供することが可能となる。
ユーザの認証情報としては、ユーザを特定できるものであれば特に限定されない。例えば、ユーザIDであってもよいし、指紋センサ36により取得される指紋情報(所定の指の指紋情報)であってもよいし、その他の生体情報であってもよい。
【0097】
また、例えば、制御部11Bは、印刷機構4により爪に印刷を行う際に、サーバ7から取得した爪角度情報に基づいて、爪の傾斜角度が大きい箇所ほどインクの吐出量を多くするように制御する。
したがって、前方撮影部6を持たず爪画像(前方画像)を取得できない(すなわち、爪角度情報が取得できない)印刷装置1Bにおいても、爪角度情報に基づいて、爪の傾斜角度が大きい箇所ほどインクの吐出量が多くすることが可能となるので、印刷時の色ムラを低減することができ、安定した高品質な仕上がりを提供することが可能となる。
【0098】
また、制御部11Bは、上方撮影部5により取得された画像から算出される爪の縦横比と、サーバ7から取得された爪情報から算出される爪の縦横比とに基づいて、爪が水平であるか否かを判断し、爪が水平であると判断した場合に、印刷機構4が爪の印刷を行うよう制御する。
したがって、前方撮影部6を持たず爪画像(前方画像)を取得できない印刷装置1Bにおいても、爪Tが水平であるか否かをチェックして、水平である場合に印刷を行うことができるため、印刷時の色ムラを低減することができ、安定した高品質な仕上がりを提供することが可能となる。
【0099】
また、制御部11Bは、爪が水平ではないと判断した場合に、ユーザに爪を水平にするように促す情報を出力部に出力させる。したがって、爪が傾いている場合は水平にするようにユーザに促すことができるため、印刷時の色ムラを低減することができ、安定した高品質な仕上がりを提供することが可能となる。
【0100】
また、制御部11Bは、爪が水平であると判断した場合に、指固定機構35に爪の状態を維持させる。
したがって、ユーザが爪を水平に維持するために力を入れ続けていなくても爪が水平になった状態を維持することができる。このため、ユーザの負担を軽減することができる。
【0101】
また、制御部11Bは、爪が水平であると判断した場合に、上方撮影部5により爪の画像を取得させ、取得された画像から爪領域を認識し、認識した爪領域に基づいて印刷領域を決定し、印刷機構4に、決定した印刷領域に対して印刷を行わせる、
したがって、爪が水平となった後に、爪領域の認識から印刷までが行われるため、印刷領域に適切にデザインを配置することができ、印刷時の色ムラを低減することができ、安定した高品質な仕上がりを提供することが可能となる。
【0102】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0103】
例えば本実施形態では、爪Tの傾き状態を維持させる状態維持部が、印刷装置1A、1Bの制御部11A、11Bによって自動で動作制御される指固定機構35である場合を例示したが、例えば、ユーザが操作する機械的なスイッチを備えて、手動によりON/OFFを切り替えて動作させる機構となっていてもよい。
また、状態維持部は、指固定機構35のように膨縮するものによって指Uを周りから圧迫して固定するものに限定されない。例えば指Uを載置する部分である指固定本体が下方からばね等の弾性部材によって付勢され、指Uを指固定本体と枠状部32の天面との間で挟み込んで固定する構成となっていてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、爪Tが印刷に適した姿勢であるか否かを、基台15や指配置部3の底部のラインに対して爪が水平であるか否かに基づいて判断したが、爪Tが基台15や指配置部3の底部のラインに対して所定の角度だけ傾いている状態を、爪Tが印刷に適している姿勢であると判断するようにしてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、爪情報を取得してサーバ7に記憶させるための装置として、印刷装置1Aを用いる例を説明したが、爪情報の取得に他の装置を利用してもよい。例えば、印刷部等を有していないが、ユーザ認証情報を取得する機能とそのユーザの爪情報とを取得する爪情報取得部としての機能を有している情報取得装置が、取得したユーザ認証情報及び爪情報を対応付けてサーバ7に記憶させる機能(第1の制御部としての機能)を有していてもよい。そして、印刷装置1Bの制御部11B(第2の制御部)が、ユーザ認証情報を取得し、取得したユーザ認証情報に対応する爪情報がサーバ7に存在する場合に、サーバ7からユーザ認証情報に対応する爪情報を取得して印刷を行うようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、印刷装置1Bの制御部11Bとプログラム記憶領域121に記憶されているプログラムとの協働により本発明の制御部としての機能を実現する場合を例にとり説明したが、例えば、印刷装置1Bが通信部25を介してスマートフォン、タブレット、PC等の端末装置と接続され、端末装置の制御部と記憶部に記憶されているアプリケーションプログラムとの協働により、本発明の制御部の機能の一部又は全部を実現することとしてもよい。このように、本発明の印刷装置は、通信部を介して接続される端末装置を含んで構成されることとしてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、印刷装置1A、1Bでユーザがネイルデザインを選択することとして説明したが、印刷装置1A、1Bと通信部25を介して接続される端末装置にてネイルデザインを選択し、選択されたネイルデザインのデザインデータを端末装置がサーバ7又は端末装置の記憶部から取得して印刷装置1A、1Bに送信することとしてもよい。
【0108】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0109】
100 印刷システム
1A 印刷装置
11、11A 制御部
1B 印刷装置
11、11B 制御部
12 記憶部
15 基台
2 筐体
3 指配置部
35 指固定機構
351 膨縮部
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
5 上方撮影部
6 前方撮影部
7 サーバ
70 ユーザDB
71 爪情報DB
72 デザインDB