IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2024-43254生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体
<>
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図1
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図2
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図3
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図4
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図5
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図6
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図7
  • -生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043254
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】生体情報処理方法、生体情報処理装置、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/372 20210101AFI20240322BHJP
【FI】
A61B5/372
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148335
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 善明
(72)【発明者】
【氏名】田浦 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】矢野 峻平
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127CC01
4C127CC02
4C127GG09
(57)【要約】
【課題】信号品質の高い脳波信号を記録することを支援する生体情報処理方法及び生体情報処理装置を提供する。
【解決手段】生体情報処理方法は、被検者の頭部に装着された複数の電極を用いて、各々が前記複数の電極のうちの一つに関連付けられると共に、前記被検者の脳波を示す複数の脳波信号を取得するステップS1と、前記複数の脳波信号の各々を、それぞれが互いに異なる種類のアーチファクトを示す複数のアーチファクト成分信号と、脳波成分信号とに分離するステップS2と、各脳波信号の前記複数のアーチファクト成分信号の実効値を演算するステップS3と、各脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかを判定するステップS7と、実効値が前記所定の条件を満たすアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報を視覚的に提示するステップS8と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の頭部に装着された複数の電極を用いて、各々が前記複数の電極のうちの一つに関連付けられると共に、前記被検者の脳波を示す複数の脳波信号を取得するステップと、
前記複数の脳波信号の各々からそれぞれが互いに異なる種類のアーチファクトを示す複数のアーチファクト成分信号を取得するステップと、
各脳波信号の前記複数のアーチファクト成分信号の実効値を演算するステップと、
各脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかを判定するステップと、
実効値が前記所定の条件を満たすアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報を視覚的に提示するステップと、
を含む、コンピュータによって実行される生体情報処理方法。
【請求項2】
前記アーチファクトに関連する情報は、
前記アーチファクトの種類を示す情報と、
前記アーチファクトを除去するための対策を示す情報と、
を含む、請求項1に記載の生体情報処理方法。
【請求項3】
各脳波信号において前記複数のアーチファクト成分信号の実効値のうちの少なくとも一つが前記所定の条件を満たす場合に、各脳波信号に混入したアーチファクトの種類を示す情報が前記複数の電極の各々と関連付けられた状態で視覚的に提示される、請求項1又は2に記載の生体情報処理方法。
【請求項4】
前記複数の電極は、第1電極を含み、
前記複数の脳波信号は、前記第1電極に関連付けられた第1脳波信号を含み、
前記複数のアーチファクト成分信号は、第1アーチファクトを示す第1アーチファクト成分信号を含み、
前記第1脳波信号に関連する前記第1アーチファクト成分信号の実効値が当該実効値に関連する所定の閾値よりも大きい場合に、前記第1脳波信号に混入した前記第1アーチファクトに関連する情報が視覚的に提示される、
請求項1に記載の生体情報処理方法。
【請求項5】
前記第1脳波信号に混入した前記第1アーチファクトに関連する情報は、
前記第1アーチファクトの種類を示す情報と、
前記第1アーチファクトを取り除くための対策を示す情報と、
を含む、請求項4に記載の生体情報処理方法。
【請求項6】
前記複数の電極は、第1電極を含み、
前記複数の脳波信号は、前記第1電極に関連付けられた第1脳波信号を含み、
前記複数のアーチファクト成分信号は、
生体に起因する第1アーチファクトを示す第1アーチファクト成分信号と、
生体以外の要因に起因する第2アーチファクトを示す第2アーチファクト成分信号と、
を含み、
前記第1脳波信号に関連する前記第1アーチファクト成分信号の第1実効値が当該第1実効値に関連する第1閾値よりも大きく、且つ前記第1脳波信号に関連する前記第2アーチファクト成分信号の第2実効値が当該第2実効値に関連する第2閾値よりも大きい場合に、前記第1脳波信号に混入した前記第2アーチファクトに関連する情報が前記第1脳波信号に混入した前記第1アーチファクトに関連する情報よりも優先される、
請求項1に記載の生体情報処理方法。
【請求項7】
各脳波信号の前記複数のアーチファクト成分信号のうちの少なくとも幾つかの実効値に基づいて、各々が前記複数の脳波信号のうちの一つの信号品質を示す複数の信号品質指標を演算するステップをさらに含む、
請求項1又は2に記載の生体情報処理方法。
【請求項8】
前記複数の信号品質指標に基づいて、前記複数の脳波信号の総合的な信号品質を示す総合信号品質指標を決定するステップをさらに含み、
前記総合信号品質指標が所定の閾値以下である場合に、各脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかを判定するステップが実行される、
請求項7に記載の生体情報処理方法。
【請求項9】
前記複数のアーチファクト成分信号は、
生体に起因する第1アーチファクトを示す第1アーチファクト成分信号と、
生体以外の要因に起因する第2アーチファクトを示す第2アーチファクト成分信号と、
を含み、
前記第2アーチファクトは、
前記被検者に装着された電極の装着不良に起因するアーチファクトと、
前記電極に接続されたリード線に起因するアーチファクトと、を含む、
請求項1又は2に記載の生体情報処理方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の生体情報処理方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載されたプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【請求項12】
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備えた生体情報処理装置であって、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサによって実行されると、前記生体情報処理装置は、
被検者の頭部に装着された複数の電極を用いて、各々が前記複数の電極のうちの一つに関連付けられると共に、前記被検者の脳波を示す複数の脳波信号を取得し、
前記複数の脳波信号の各々から、それぞれが互いに異なる種類のアーチファクトを示す複数のアーチファクト成分信号を取得し、
各脳波信号の前記複数のアーチファクト成分信号の実効値を演算し、
各脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかを判定し、
実効値が前記所定の条件を満たすアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報を視覚的に提示する、
生体情報処理装置。
【請求項13】
前記アーチファクトに関連する情報は、
前記アーチファクトの種類を示す情報と、
前記アーチファクトを除去するための対策を示す情報と、
を含む、請求項12に記載の生体情報処理装置。
【請求項14】
前記生体情報処理装置は、各脳波信号において前記複数のアーチファクト成分信号の実効値のうちの少なくとも一つが前記所定の条件を満たす場合に、各脳波信号に混入したアーチファクトの種類を示す情報を視覚的に提示する、
請求項12又は13に記載の生体情報処理装置。
【請求項15】
前記生体情報処理装置は、
各脳波信号の前記複数のアーチファクト成分信号のうちの少なくとも幾つかの実効値に基づいて、各々が前記複数の脳波信号のうちの一つの信号品質を示す複数の信号品質指標を演算し、
前記複数の信号品質指標に基づいて、前記複数の脳波信号の総合的な信号品質を示す総合信号品質指標を決定し、
前記総合信号品質指標が所定の閾値以下である場合に、各脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかを判定する、
請求項12又は13に記載の生体情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報処理方法及び生体情報処理装置に関する。特に、本開示は、脳波信号に混入したアーチファクトに関連する情報を視覚的に提示する生体情報処理方法及び生体情報処理方法に関する。さらに、本開示は、当該情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の脳神経細胞の電気的活動を示す脳波を非侵襲的に測定するように構成された脳波計が知られている。脳波計では、患者の頭部に装着された複数の電極を通じて脳波信号が取得される。一方で、脳波信号は、脳神経細胞の電気的活動を示す微弱な生体電気信号であるため、脳波信号にはアーチファクト(脳波以外の雑音)が混入しやすい。特許文献1では、各チャンネルの脳波信号に混入した各種アーチファクトを検出、分離、除去する技術が開示されている。また、特許文献1では、アーチファクトの種類を示すことや、再構成するアーチファクトの種類に応じた脳波成分信号の再抽出を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9055927号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アーチファクトを除去する信号処理を通じて各種アーチファクトがソフトウェア的に除去された脳波信号では、アーチファクト除去前の原脳波信号と比較して波形歪みが生じてしまうことがある。このように、信号処理を通じてアーチファクトが除去された脳波信号の信頼性は、アーチファクトがそもそも混入していない脳波信号の信頼性よりも低いものとなってしまう。このため、信号品質の高い脳波信号を記録するためには、脳波測定を開始する際にアーチファクトの要因を排除することが肝要となる。
【0005】
その一方で、脳波に混入するアーチファクトには、生体に起因するアーチファクト(心電図や眼球運動等)や生体以外の要因に起因するアーチファクト(電極の接触不良等)等の様々な種類のアーチファクトが存在する。また、各種アーチファクトの除去対策は互いに異なる。このため、アーチファクトの除去対策に不慣れな経験が浅い医療従事者は、アーチファクトがあまり混入していない信号品質の高い脳波信号を記録することが難しい場合がある。上記観点より、アーチファクトがあまり混入していない信号品質が高い脳波信号を記録することを支援するためのユーザインターフェースについて検討する余地がある。
【0006】
本開示は、信号品質の高い脳波信号を記録することを支援する生体情報処理方法及び生体情報処理装置を提供することを目的とする。また、本開示は、当該情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る生体情報処理方法は、コンピュータによって実行され、
被検者の頭部に装着された複数の電極を用いて、各々が前記複数の電極のうちの一つに関連付けられると共に、前記被検者の脳波を示す複数の脳波信号を取得するステップと、
前記複数の脳波信号の各々から、それぞれが互いに異なる種類のアーチファクトを示す複数のアーチファクト成分信号を取得するステップと、
各脳波信号の前記複数のアーチファクト成分信号の実効値を演算するステップと、
各脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかを判定するステップと、
実効値が前記所定の条件を満たすアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報を視覚的に提示するステップと、
を含む。
【0008】
上記方法によれば、脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかが判定された上で、実効値が前記所定の条件を満たすアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報が医療従事者に視覚的に提示される。このように、アーチファクトに関連する情報(例えば、アーチファクトを除去するための対策等)を通じて、脳波測定の経験が浅い医療従事者であっても脳波信号からアーチファクトを除去するための対策を講じることができる。この結果、医療従事者はアーチファクトがあまり混入していない信号品質の高い脳波信号を記録することができる。
【0009】
前記生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。また、当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能媒体が提供される。
【0010】
本開示の一態様に係る生体情報処理装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備える。
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサによって実行されると、前記生体情報処理装置は、
被検者の頭部に装着された複数の電極を用いて、各々が前記複数の電極のうちの一つに関連付けられると共に、前記被検者の脳波を示す複数の脳波信号を取得し、
前記複数の脳波信号の各々から、それぞれが互いに異なる種類のアーチファクトを示す複数のアーチファクト成分信号を取得し、
各脳波信号の前記複数のアーチファクト成分信号の実効値を演算し、
各脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかを判定し、
実効値が前記所定の条件を満たすアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報を視覚的に提示する。
【0011】
上記構成によれば、脳波信号の各アーチファクト成分信号の実効値が所定の条件を満たすかどうかが判定された上で、実効値が所定の条件を満たすアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報が医療従事者に視覚的に提示される。このように、アーチファクトに関連する情報(例えば、アーチファクトを除去するための対策等)を通じて、脳波測定の経験が浅い医療従事者であっても脳波信号からアーチファクトを除去するための対策を講じることができる。この結果、医療従事者は、アーチファクトがあまり混入していない信号品質の高い脳波信号を記録することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、信号品質の高い脳波信号を記録することを支援する生体情報処理方法及び生体情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る生体情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図2】患者の頭部に装着された複数の電極を示す模式図である。
図3】本実施形態に係る生体情報処理方法を説明するためのフローチャートである。
図4】患者に装着された各電極から取得される脳波信号と、ブラインド信号源分離を通じて取得されたソース波形の一例を示す図である。
図5】電極Fp1の脳波信号XFp1が脳波成分信号Bと複数のアーチファクト成分信号C1~C5によって構成されることを説明するための図である。
図6】各チャンネルの脳波が表示される脳波表示画面の一例を示す図である。
図7】アーチファクトの種類毎のアーチファクト関連情報の一例を示す図である。
図8】各電極の脳波信号に混入したアーチファクトの種類を示す電極画像が表示される電極表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る生体情報処理装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、生体情報処理装置1(以下、単に処理装置1という。)は、制御部2と、記憶装置3と、表示部4と、通信部5と、入力操作部6と、音声出力部7と、センサインターフェース8とを備える。処理装置1に設けられたこれらの構成要素は、バス14を介して互いに通信可能に接続されている。
【0015】
処理装置1は、被検者P(患者)の生体情報を表示するための医療機器(例えば、生体情報モニタや脳波計)であってもよいし、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、スマートフォン、タブレット、医療従事者の身体(例えば、腕や頭等)に装着されるウェアラブルデバイス(例えば、ARグラス等)であってもよい。処理装置1は、被検者Pの脳波を示す情報を出力するように構成されている。
【0016】
制御部2は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、コンピュータ可読命令(プログラム)を記憶するように構成されている。例えば、メモリは、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数のワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)のうちの少なくとも一つにより構成される。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。プロセッサは、記憶装置3又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。特に、プロセッサは、図2に示す一連の処理を実行する生体情報処理プログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で当該プログラムを実行する。生体情報処理プログラムの詳細については後述する。
【0017】
記憶装置3は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置(ストレージ)であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。記憶装置3には、生体情報処理プログラムが組み込まれてもよい。また、記憶装置3には、被検者Pの脳波データが保存されてもよい。例えば、脳波センサ10から取得された脳波データ(各脳波信号)は、センサインターフェース8を介して記憶装置3に保存されてもよい。
【0018】
通信部5は、処理装置1を院内ネットワークに接続するように構成されている。具体的には、通信部5は、院内ネットワークに配置されたセントラルモニタやサーバと通信するための各種有線接続端子を含んでもよい。また、通信部5は、セントラルモニタやサーバと無線通信するための無線通信モジュールを含んでもよい。通信部5は、例えば、医用テレメータシステムに対応した無線通信モジュールを含んでもよい。また、通信部5は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に対応した無線通信モジュールおよび/又はSIMを用いた移動体通信システムに対応する無線通信モジュールを含んでもよい。院内ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)により構成されてもよい。処理装置1は、院内ネットワークを介してインターネットに接続されてもよい。
【0019】
表示部4は、被検者Pの生体情報(脳波に関連する情報)を表示するように構成されており、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルによって構成されている。入力操作部6は、例えば、表示部4上に重ねて配置されたタッチパネル、マウス、及び/又はキーボード等である。入力操作部6は、医療従事者の入力操作を受け付けると共に、医療従事者の入力操作に対応した操作信号を生成するように構成されている。入力操作部6によって生成された操作信号がバス14を介して制御部2に送信された後、制御部2は、当該操作信号に応じて所定の動作を実行する。音声出力部7は、一以上のスピーカにより構成されている。
【0020】
センサインターフェース8は、脳波センサ10を処理装置1に接続するためのインターフェースである。センサインターフェース8は、脳波センサ10から出力される脳波信号が入力される入力端子を含んでもよい。脳波センサ10は、被検者Pの脳神経細胞の電気的活動を示す脳波信号を非侵襲的に測定するように構成されており、被検者Pの頭部に装着される複数の電極を有する。
【0021】
図2に示すように、例えば、脳波センサ10は、被検者Pの頭部若しくは頭部付近に装着された21個の電極を有する。具体的には、電極A1は、左耳朶に装着される。電極A2は、右耳朶に装着される。電極Fzは鼻根部と後頭結節とを結ぶ正中線の前頭部に装着され、電極Czは正中線の中央に装着され、電極Pzは正中線の頭頂部に装着される。電極Fp1,Fp2は前局部に装着される。電極F3,F4は前頭部に装着される。電極C3,C4は中心部に装着される。電極P3,P4は頭頂部に装着される。電極O1,O2は後頭部に装着される。電極F7は左側頭部の前側に装着され、電極T3は左側頭部の中央に装着され、電極T5は左側頭部の後側に装着される。電極F8は右側頭部の前側に装着され、電極T4は右側頭部の中央に装着され、電極T6は右側頭部の後側に装着される。
【0022】
脳波の導出方法としては、頭部の電位と耳朶の電位との間の電位差を記録する単極誘導法、2点間の頭部の電位差を記録する双極誘導法、若しくは平均基準電極法が適用される。
【0023】
センサインターフェース8は、複数の増幅回路と、AD変換器とを少なくとも有する。複数の増幅回路の各々は、対応する電極から出力された脳波信号を増幅するように構成されている。AD変換器は、脳波信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するように構成されている。デジタル信号に変換された脳波信号は、センサインターフェース8から制御部2に送信される。
【0024】
次に、図3を参照して本実施形態に係る生体情報処理方法について以下に説明する。図3は、本実施形態に係る生体情報処理方法を説明するためのフローチャートである。尚、図3に示す各処理は、所定の周期(例えば、2秒)毎に繰り返し実行されるものとする。
【0025】
図3に示すように、ステップS1において、制御部2は、被検者Pの頭部に装着された複数の電極を備えた脳波センサ10からセンサインターフェース8を介して被検者Pの脳波を示す複数の脳波信号(デジタル信号)を取得する。本実施形態では、被検者Pの頭部に装着された21個の電極から21種類の脳波信号が取得される。即ち、各脳波信号は、21個の電極のうちの一つと関連付けられている。図4に示すように、21種類の脳波信号のうち上から一番目の脳波信号は、電極Fp1から取得された脳波信号を示す。上から二番目の脳波信号は、電極Fp2から取得された脳波信号を示す。尚、ステップS1では、所定の時間長(例えば、2秒エポック)の脳波信号が取得されるものとする。
【0026】
次に、制御部2は、複数の脳波信号の各々を複数のアーチファクト成分信号と脳波成分信号とに分離する(図3のステップS2)。本実施形態では、各電極の脳波信号には異なる複数の種類のアーチファクトが混入している蓋然性が高い。このため、各脳波信号は、脳波の成分を示す脳波成分信号と、それぞれが互いに異なる種類のアーチファクトを示す複数のアーチファクトを示す複数のアーチファクト成分信号とから構成される。制御部2は、独立成分分析(ICA)等のブラインド信号源分離(BSS)処理を通じて、各脳波信号を脳波成分信号とアーチファクト成分信号とに分離する。
【0027】
独立成分分析は、多変量の信号を複数の加法的な成分に分離するための計算手法である。本実施形態では、21個の電極によって21種類の脳波信号が同時に取得されるため、独立成分分析によって21種類の脳波信号の各々を21種類のソース波形S~S21の成分に分解することが可能となる(図4参照)。
【0028】
21種類の脳波信号X(t)をX(t)=(XFp1(t),...XA2(t))とし、21種類のソース波形S(t)を(S(t),...S21(t))とした場合に、独立成分分析においてX(t)とS(t)との間の関係は、X(t)=H・S(t)として表現される。ここで、Hは21行×21列からなる混合行列となる。具体的には、X(t)とS(t)との間の関係は以下式(1)により表される。
【数1】
・・・(1)
【0029】
このように、制御部2は、独立成分分析を通じて脳波信号X(t)をH・S(t)として表現することが可能となる。即ち、各脳波信号XFp1~XA2を21種類のソース信号S~S21によって表現することが可能となる。ここで、電極Fp1の脳波信号XFp1は、XFp1=h11+h12+…h12121として表現可能となる。同様に、電極A2の脳波信号XA2は、XA2=h211+h212+…h212121として表現可能となる。以降の説明では、脳波信号を単に脳波信号Xとして総称する場合がある。
【0030】
次に、制御部2は、21種類のソース波形S~S21を分類する。本実施形態では、ソース波形は、脳波を示すソース波形と、アーチファクトを示すソース波形とを含む。アーチファクトを示すソース波形は、被検者Pの生体に起因するアーチファクトを示すソース波形と、生体以外の要因に起因するアーチファクトを示すソース波形とを含む。生体に起因するアーチファクトを示すソース波形は、被検者Pの心電図に起因するアーチファクトを示すソース波形と、被検者Pの眼球運動に起因するアーチファクトを示すソース波形と、被検者Pの筋電図に起因するアーチファクトを示すソース波形とを含む。一方で、生体以外の要因に起因するアーチファクトを示すソース波形は、電極の装着不良に起因するアーチファクトを示すソース波形と、電極リード線に起因するアーチファクトを示すソース波形とを含む。
【0031】
このように、ソース波形S~S21は、i)脳波を示すソース波形、ii)心電図に起因するアーチファクトを示すソース波形、iii)眼球運動に起因するアーチファクトを示すソース波形、iv)筋電図に起因するアーチファクトを示すソース波形、v)電極の装着不良に起因するアーチファクトを示すソース波形、vi)電極リード線に起因するアーチファクトを示すソース波形のうちのいずれか一つに分類される。ソース波形の分類手法の一例としては、ソース波形と各種アーチファクトに関する基準波形との間の相関係数に基づいて当該ソース波形の種類が決定されてもよい。例えば、ソース波形S10と電極リード線に起因するアーチファクトを示す基準波形との間の相関係数が高い場合に、ソース波形S10は電極リード線に起因するアーチファクトを示すソース波形として分類されてもよい。このように、各ソース波形と各種アーチファクトに関する基準波形との間の相関係数に基づいて各ソース波形が示すアーチファクトの種類が特定される。また、所定のソース波形がいずれの種類のアーチファクトに関連する基準波形とも相関しない場合であっては、当該所定のソース波形は脳波を示すソース波形として分類されてもよい。
【0032】
また、各ソース波形の分類手法の詳細については、上記した特許文献1及び以下の非特許文献を参考とされたい。当該非特許文献では各ソース波形の分類手法の一例について詳細に記載されている。
[非特許文献]Wallstrom GL, Kass RE, Miller A, Cohn JF, Fox NA (2004). Automatic correction of ocular artifacts in the EEG: a comparison of regression-based and component-based methods. Int J Psychophysiol 53: 105-119.
【0033】
このように、各ソース波形S~S21の波形種類が特定された後に、制御部2は、各脳波信号Xを脳波の成分を示す脳波成分信号Bとアーチファクト成分信号C1~C5に分離する。図5に示すように、アーチファクト成分信号C1は、電極の装着不良に起因するアーチファクトを示すアーチファクト成分信号である。アーチファクト成分信号C2は、電極リード線に起因するアーチファクトを示すアーチファクト成分信号である。アーチファクト成分信号C3は、被検者Pの心電図に起因するアーチファクトを示すアーチファクト成分信号である。アーチファクト成分信号C4は、被検者Pの眼球運動に起因するアーチファクトを示すアーチファクト成分信号である。アーチファクト成分信号C5は、被検者Pの筋電図に起因するアーチファクトを示すアーチファクト成分信号である。
【0034】
図5に示すように、電極Fp1に関連付けられた脳波信号XFp1は、脳波成分信号Bと、アーチファクト成分信号C1~C5に分離される。脳波信号XFp1以外の各脳波信号Xも同様に脳波成分信号Bと、アーチファクト成分信号C1~C5に分離される。
【0035】
例えば、図4に示すように、ソース波形S2,S5,S9,S11,S21が筋電図に起因するアーチファクトを示すソース波形である場合、脳波信号XFp1のアーチファクト成分信号C5は、C5Fp1=h12+h15+h19+h11111+h12121として演算される。また、ソース波形S10が電極リード線に起因するアーチファクトを示すソース波形である場合、脳波信号XFp1の脳波成分信号C2は、C2Fp1=h11010として演算される。さらに、脳波信号XA2のアーチファク成分信号C5は、C5A2=h212+h215+h219+h211111+h212121として演算される。このように、独立成分分析を通じて各脳波信号Xが脳波成分信号Bとアーチファクト成分信号C1~C5に分離される。
【0036】
次に、図2に戻って、制御部2は、各脳波信号X(より具体的には、脳波信号XFp1~XA2の各々)のRMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)と、各脳波信号Xの脳波成分信号BのRMSと、各脳波信号Xのアーチファクト成分信号C1~C5のRMSとを演算する(ステップS3)。本実施形態では、ステップS1において所定の時間長(例えば、2秒エポック)の脳波信号Xが電極Fp1~A2から取得されるため、所定の時間長における各脳波信号XのRMSと、各脳波信号Xの脳波成分信号BのRMSと、各脳波信号Xのアーチファクト成分信号C1~C5のRMSが演算される。また、本実施形態では、実効値の一例として各成分信号のRMSが演算されるが、RMS以外の他の実効値(指標値)が演算されてもよい。
【0037】
ステップS4において、制御部2は、脳波信号XFp1~XA2の各々のSQI(Signal Quality Index:信号品質指標)を決定する。SQIは、脳波信号の信号品質を示す指標である。この点において、制御部2は、各脳波信号XのRMS及び各脳波信号Xのアーチファクト成分信号C1~C5のRMSの幾つかに基づいて、各脳波信号XのSQIを決定する。より具体的には、以下式(2)に基づいて各脳波信号XのSQIが算出される。SQIは百分率(%)で示される。脳波信号XのSQIの値が高い程、脳波信号Xの信号品質は高くなる。このように、SQIの値を通じて各脳波信号の信号品質を客観的に評価することが可能となる。
【数2】
・・・(2)
【0038】
ここで、RMSは、脳波信号XのRMSを示す。RMSC5は、筋電図に起因するアーチファクト成分信号C5のRMSを示す。RMS-C2は、電極リード線に起因するアーチファクト成分信号C2のRMSを示す。RMSc1は、電極の装着不良に起因するアーチファクト成分信号C1のRMSを示す。このように、各脳波信号XのSQIは、各脳波信号XのRMSと、各脳波信号Xのアーチファクト成分信号C1,C2,C5のRMS(RMSC1,RMSC2,RMSC5)とに基づいて算出される。例えば、電極Fp1の脳波信号XFp1のSQIは、脳波信号XFp1のRMSと、脳波信号XFp1のアーチファクト成分信号C1,C2,C5のRMSとに基づいて算出される。尚、本実施形態では、SQIの演算においてアーチファクト成分信号C3,C4のRMSが用いられていないが、これらのRMSがSQIの演算において使用されてもよい。
【0039】
次に、ステップS5において、制御部2は、各脳波信号XのSQIに基づいて、複数の脳波信号Xの総合的なSQIを決定する。ここで、総合的なSQIは、複数の脳波信号Xの総合的な信号品質を示す。この点において、本実施形態では、制御部2は、各脳波信号XのSQIの最低値を総合的なSQIとして決定する。尚、各脳波信号Xの平均値、中央値等の代表値が総合的なSQIとして決定されてもよい。
【0040】
制御部2は、総合的なSQIを決定した後に、図6に示す脳波表示画面30上にSQIの値を示すSQIインジケータ32の表示内容を変更してもよい。制御部2は、所定の周期毎に総合的なSQIの値を更新する度に、SQIインジケータ32の表示内容を更新してもよい。また、制御部2は、表示部4に脳波表示画面30を表示する。図6に示すように、脳波表示画面30は、各チャンネル(本例では16チャンネル)の脳波が表示される脳波表示領域31を含む。脳波表示領域31に示されたチャンネル1の脳波信号は、電極Fp1の脳波信号XFp1と電極A1の脳波信号XA1との間の差分に相当する脳波信号となる。チャンネル2の脳波信号は、電極Fp2の脳波信号XFp2と電極A2の脳波信号XA2との間の差分に相当する脳波信号となる。
【0041】
次に、ステップS6において、制御部2は、総合的なSQIが50%以下であるかどうかを判定する。ステップS6の判定結果がNOである場合に、本処理はステップS1に戻る。一方、総合的なSQIが50%以下である場合に(ステップS6の判定結果がYES)、制御部2は、各脳波信号X(脳波信号XFp1~XA2)の各アーチファクト成分信号C1~C5のRMSが閾値よりも大きいかどうかを判定する(ステップS7)。尚、本例では、総合的なSQIが50%以下であるかどうかが判定されているが、ステップS6では総合的なSQIがX%(Xは50以外の任意の値)以下であるかどうかが判定されてもよい。
【0042】
ステップS7では、制御部2は、脳波信号Xのアーチファクト成分信号C1のRMSC1がRMSC1に関連付けられた閾値RMSth1よりも大きいかどうかを判定する。また、制御部2は、脳波信号Xのアーチファクト成分信号C2のRMSC2がRMSC2に関連付けられた閾値RMSth2よりも大きいかどうかを判定する。制御部2は、脳波信号Xのアーチファクト成分信号C3のRMSC3がRMSC3に関連付けられた閾値RMSth3よりも大きいかどうかを判定する。さらに、制御部2は、脳波信号Xのアーチファクト成分信号C4のRMSC4がRMSC4に関連付けられた閾値RMSth4よりも大きいかどうかを判定する。制御部2は、脳波信号Xのアーチファクト成分信号C5のRMSC5がRMSC5に関連付けられた閾値RMSth5よりも大きいかどうかを判定する。
【0043】
また、各アーチファクト成分信号C1~C5のRMSがそれぞれ閾値RMSth1~RMSth5よりも大きいかどうかを判定する処理は各脳波信号XFp1~XA2に対して実行される。このため、21種類の脳波信号XFp1~XA2の各々に対してアーチファクト成分信号C1~C5のRMSに係る閾値判定処理が実行される。すなわち、21×5=105回の閾値判定処理がステップS6において実行される。
【0044】
例えば、制御部2は、脳波信号XFp1のアーチファクト成分信号C1のRMSC1が閾値RMSth1よりも大きい場合、電極の装着不良に起因するアーチファクトが脳波信号XFp1に混入していると決定する。制御部2は、脳波信号XFp1のアーチファクト成分信号C2のRMSC2が閾値RMSth2よりも大きい場合、電極リード線に起因するアーチファクト(交流ノイズ)が脳波信号XFp1に混入していると決定する。制御部2は、脳波信号XFp1のアーチファクト成分信号C3のRMSC3が閾値RMSth3よりも大きい場合、心電図に起因するアーチファクト(心電図ノイズ)が脳波信号XFp1に混入していると決定する。制御部2は、脳波信号XFp1のアーチファクト成分信号C4のRMSC4が閾値RMSth4よりも大きい場合、眼球運動に起因するアーチファクト(眼球運動ノイズ)が脳波信号XFp1に混入していると決定する。制御部2は、脳波信号XFp1のアーチファクト成分信号C5のRMSC5が閾値RMSth5よりも大きい場合、筋電図に起因するアーチファクト(筋電図ノイズ)が脳波信号XFp1に混入していると決定する。
【0045】
ステップS8において、制御部2は、RMSが閾値よりも大きいアーチファクト成分信号に関連付けられたアーチファクトに関連する情報を視覚的に表示する。この点において、制御部2は、脳波表示画面30の脳波表示領域31内にアーチファクトに関連する情報を示すアーチファクト関連情報33を表示してもよい。
【0046】
アーチファクト関連情報33は、アーチファクトの種類を示す情報と、アーチファクトが混入した脳波信号に関連付けられた電極を示す情報と、アーチファクトを除去するための対策を示す情報とを含む。例えば、ステップS7の判定結果において、電極F3,O1,P3,Cz,F4,Pzのそれぞれに関連する脳波信号Xのアーチファクト成分信号C5のRMSC5がRMSth5よりも大きいものとする。かかる場合では、図6に示すように、アーチファクト成分信号C5に関連付けられたアーチファクト(即ち、筋電図ノイズ)を示す情報がアーチファクト関連情報33に表示される。また、アーチファクトが混入した脳波信号に関連付けられた電極F3,O1,P3,Cz,F4,Pzを示す情報がアーチファクト関連情報33に表示される。さらに、筋電図ノイズを除去するための対策を示す情報がアーチファクト関連情報33に表示される。
【0047】
また、図7に示すように、アーチファクトの種類に応じてアーチファクト関連情報33-1~33-4が脳波表示画面30の脳波表示領域31内に表示されてもよい。所定の電極に関連する脳波信号Xのアーチファクト成分信号C3のRMSC3がRMSth3よりも大きい場合、心電図ノイズを示す情報と、心電図ノイズが混入した脳波信号に関連付けられた電極を示す情報と、心電図ノイズを除去するための対策を示す情報とがアーチファクト関連情報33-1に表示される。また、所定の電極に関連する脳波信号Xのアーチファクト成分信号C4のRMSC4がRMSth4よりも大きい場合、眼球運動ノイズを示す情報と、眼球運動ノイズが混入した脳波信号に関連付けられた電極を示す情報と、眼球運動ノイズを除去するための対策を示す情報とがアーチファクト関連情報33-2に表示される。
【0048】
所定の電極に関連する脳波信号Xのアーチファクト成分信号C2のRMSC2がRMSth2よりも大きい場合、交流ノイズを示す情報と、交流ノイズが混入した脳波信号に関連付けられた電極を示す情報と、交流ノイズを除去するための対策を示す情報とがアーチファクト関連情報33-3に表示される。所定の電極に関連する脳波信号Xのアーチファクト成分信号C1のRMSC1がRMSth1よりも大きい場合、電極装着不良に起因するノイズ(電極装着不良ノイズ)を示す情報と、電極装着不良ノイズが混入した脳波信号に関連付けられた電極を示す情報と、電極装着不良ノイズを除去するための対策を示す情報とがアーチファクト関連情報33-4に表示される。
【0049】
図6に示す例では、5種類のアーチファクトのうちの一つのアーチファクトに関連する情報がアーチファクト関連情報として脳波表示領域31内に表示されている。この点において、ステップS7の判定結果において、複数の種類のアーチファクトが脳波信号Xに混入していると決定された場合には、脳波信号Xに混入された複数種類のアーチファクトのうちの一つに関連する情報がアーチファクト関連情報として表示されてもよい。本実施形態では、生体以外の要因に起因するアーチファクトは、生体に起因するアーチファクトよりも優先される。即ち、生体以外の要因に起因するアーチファクトと生体に起因するアーチファクトとが同時に脳波信号XFp1~XA2のうちの少なくとも一つの混入されている場合であっては、生体以外の要因に起因するアーチファクトの除去の方が生体に起因するアーチファクトの除去よりも比較的容易であることから、生体以外の要因に起因するアーチファクトに関連する情報が最初に脳波表示領域31内に表示される。このように、医療従事者は、最初に生体以外の要因に起因するアーチファクトを脳波信号から除去するように誘導される。この場合、医療従事者によるアーチファクト除去対策の結果、生体以外の要因に起因するアーチファクトが除去された後に、生体に起因するアーチファクトに関連する情報が脳波表示領域31内に順次表示される。
【0050】
特に、生体以外の要因に起因するアーチファクトの中では、電極の装着不良に起因するアーチファクト(電極装着不良ノイズ)が電極リード線に起因するアーチファクト(交流ノイズ)よりも優先されてもよい。また、生体に起因するアーチファクトの中では、筋電図に起因するアーチファクト(筋電図ノイズ)が最も優先され、心電図に起因するアーチファクト(心電図ノイズ)が眼球運動に起因するアーチファクト(眼球運動ノイズ)よりも優先されてもよい(即ち、各アーチファクトに関する情報表示の優先順位は次のとおりとなる。電極装着不良ノイズ>交流ノイズ>筋電図ノイズ>心電図ノイズ>眼球運動ノイズ)。例えば、脳波信号XFp1~XA2において5つのノイズが同時に混入されている場合には、電極装着不良ノイズに関する情報が最初に表示され、当該ノイズがアーチファクトの対策を通じて医療従事者により除去された後に、交流ノイズに関する情報が次に表示される。
【0051】
各アーチファクトに関する情報表示の優先順位は、アーチファクトの除去の難易度や脳波波形への影響が大きいアーチファクトを考慮して決定されるものである。例えば、生体以外の要因に起因するアーチファクトの除去の難易度は、生体に起因するアーチファクトの除去の難易度よりも低いため、生体以外の要因に起因するアーチファクトに関する情報が優先して表示される。さらに、電極装着不良ノイズが脳波波形に与える影響は、交流ノイズが脳波波形に与える影響よりも大きいため、電極装着不良ノイズに関する情報の表示が交流ノイズに関する情報の表示よりも優先される。尚、上記した各アーチファクトに関する情報表示の優先順位は特に限定されるものではない。これらの優先順位は、医療従事者側にて適宜設定されてもよい。
【0052】
また、図8に示すように、電極表示画面40上に表示される電極画像41に各脳波信号に混入したアーチファクトの種類を示す情報が視覚的に提示されてもよい。図8は、各電極Fp1~A2の脳波信号に混入したアーチファクトの種類を示す電極画像41が表示された電極表示画面40の一例を示す図である。図8に示すように、電極画像41では、被検者Pに装着される21種類の電極Fp1~A2のイラストが模式的に表示されている。さらに、各脳波信号に混入したアーチファクトの種類を示す情報が電極Fp1~A2のうちの対応する一つと関連付けられている。
【0053】
具体的には、図8に示す例では、電極O1,O2に関連する脳波信号XO1,XO2に生体以外の要因に起因するアーチファクト(電極装着不良ノイズ、交流ノイズ)が混入している場合には、生体以外の要因に起因するアーチファクトが電極O1,O2の脳波信号XO1,XO2に混入していることを示す情報が電極画像41上に表示される。より具体的には、生体以外の要因に起因するアーチファクトが第一色に関連付けられている状態で、電極O1,O2のイラストが第一色で着色される。
【0054】
さらに、電極Fp1,Fp2,F7,F3,Fz,F4,F8,A1,A2に関連する脳波信号Xに生体に起因するアーチファクト(筋電図ノイズ、心電図ノイズ、眼球運動ノイズ)が混入している場合には、生体に起因するアーチファクトが電極Fp1,Fp2,F7,F3,Fz,F4,F8,A1,A2の脳波信号Xに混入していることを示す情報が電極画像41上に表示される。より具体的には、生体に起因するアーチファクトが第一色とは異なる第二色に関連付けられている状態で、電極Fp1,Fp2,F7,F3,Fz,F4,F8,A1,A2のイラストが第二色で着色される。
【0055】
また、電極T3,C3,Cz,C4,T4,T5,P3,Pz,P4,T6に関連する脳波信号Xにアーチファクトが混入していない場合には、電極T3,C3,Cz,C4,T4,T5,P3,Pz,P4,T6のイラストは着色されない。このように、医療従事者は、電極画像41上に表示された各電極のイラストを視認することで、各電極の脳波信号に混入されたアーチファクトの種類を直感的に把握することができる。
【0056】
尚、図8に示す例でも同様に、所定の電極の脳波信号に複数のアーチファクトが混入されている場合では、各種アーチファクトの優先順位に従って当該所定の電極のイラストの着色が決定される。例えば、電極F7の脳波信号Xに生体に起因するアーチファクトと生体以外の要因に起因するアーチファクトの両方が混入されている場合であっては、生体以外の要因に起因するアーチファクトが生体に起因するアーチファクトよりも優先されるため、電極F7のイラストは第一色で着色される。
【0057】
また、図8に示す電極表示画面40と図6に示す脳波表示画面30は、表示部4の表示画面上に同時に表示されてもよい。この場合、医療従事者は、表示部4上に同時に表示された脳波表示画面30と電極表示画面40とを同時に視認することで、各脳波信号に混入されたアーチファクトを除去するための対策を適切に講じることが可能となる。
【0058】
このように、制御部2は、図3に示すステップS1~S8の一連の処理を繰り返し実行する。上記したように、ステップS1において所定の時間長(例えば、2秒エポック)の脳波信号が各電極Fp1~A2から取得される度にステップS2からS8の処理が繰り返し実行されてもよい。
【0059】
本実施形態によれば、各脳波信号Xの各アーチファクト成分信号C1~C5のRMSが閾値を満たすかどうかが判定された上で、各脳波信号Xに混入されたアーチファクトの種類が特定される。その後、各脳波信号Xに混入されたアーチファクトに関連するアーチファクト関連情報(特に、アーチファクトの種類を示す情報とアーチファクトを除去するための対策を示す情報)が医療従事者に視覚的に提示される。このように、アーチファクト関連情報を通じて、脳波測定の経験が浅い医療従事者であっても脳波信号からアーチファクトを除去するための対策を講じることができる。この結果、医療従事者はアーチファクトがあまり混入していない信号品質の高い脳波信号を記録することができる。
【0060】
また、図7に示す電極画像41では、各脳波信号Xに混入したアーチファクトの種類を示す情報が複数の電極Fp1~A2のうちの一つと関連付けられた状態で視覚的に表示される。特に、各電極Fp1~A2のイラストの表示色がアーチファクトの種類に応じて設定される。このように、脳波測定の経験が浅い医療従事者であっても、電極画像41(特に、各電極のイラストの表示色)を視認することで、各脳波信号からアーチファクトを除去するための対策を適切に講じることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態によれば、総合的なSQIが50%(所定の閾値の一例)以下である場合に、各脳波信号Xの各アーチファクト成分信号C1~C5のRMS(実効値の一例)が所定の閾値を満たすかどうかが判定される。このように、総合的なSQIが低く、脳波信号Xにアーチファクトが混入されている蓋然性が極めて高い場合においてのみ、アーチファクト成分信号のC1~C5のRMSに関する判定処理が実行される。したがって、当該判定処理を実行するコンピュータの演算負荷や消費電力を低減することが可能となる。
【0062】
尚、本実施形態では、ステップS6において各脳波信号Xの総合的なSQIが50%以下である場合において、各脳波信号の各アーチファクト成分信号のRMSが閾値よりも大きいかどうかが判定されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図2の一連の処理においてステップS4~S6の各処理は実行されなくてもよい。この場合、ステップS3の処理が実行された後に、ステップS7の処理が実行されてもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る処理装置1をソフトウェアによって実現するためには、生体情報処理プログラムが記憶装置3又はROMに予め組み込まれていてもよい。または、生体情報処理プログラムは、磁気ディスク(例えば、HDD、フロッピーディスク)、光ディスク(例えば、CD-ROM,DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)ディスク)、光磁気ディスク(例えば、MO)、フラッシュメモリ(例えば、SDカード、USBメモリ、SSD)等のコンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、記憶媒体に格納された生体情報処理プログラムが記憶装置3に組み込まれてもよい。さらに、記憶装置3に組み込まれた当該プログラムがRAM上にロードされた上で、プロセッサがRAM上にロードされた当該プログラムを実行してもよい。このように、本実施形態に係る生体情報処理方法が処理装置1によって実行される。
【0064】
また、生体情報処理プログラムは、通信ネットワーク上のコンピュータから通信部5を介してダウンロードされてもよい。この場合も同様に、ダウンロードされた当該プログラムが記憶装置3に組み込まれてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0066】
1:生体情報処理装置(処理装置)
2:制御部
3:記憶装置
4:表示部
5:通信部
6:入力操作部
7:音声出力部
8:センサインターフェース
10:脳波センサ
30:脳波表示画面
31:脳波表示領域
32:SQIインジケータ
33,33-1,33-2,33-3,33-4:アーチファクト関連情報
40:電極表示画面
41:電極画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8