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特開2024-43255法面の自動配置装置及び法面の自動配置プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043255
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】法面の自動配置装置及び法面の自動配置プログラム
(51)【国際特許分類】
   E01C 1/00 20060101AFI20240322BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20240322BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240322BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
E01C1/00 Z
G06F30/13
G06F30/10 100
E02D17/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148339
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】599143416
【氏名又は名称】株式会社 三英技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
【テーマコード(参考)】
2D051
5B146
【Fターム(参考)】
2D051BB07
5B146AA04
5B146EA17
(57)【要約】
【課題】法面を矛盾なく自動配置可能にする。
【解決手段】法面の自動配置装置1は、道路の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員の入力を受け付ける入力部10aと、中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員に基づいて3次元道路路面モデルを生成するモデル生成部10bと、中心線形に基づいて道路構造を判定する道路構造判定部10cと、道路構造判定部10cにより判定された道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置する法面配置部10dとを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元道路路面モデル上で法面を自動配置する法面の自動配置装置において、
道路の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員の入力を受け付ける入力部と、
前記入力部により入力された前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、前記3次元道路路面モデルを生成するモデル生成部と、
前記入力部により入力された前記中心線形に基づいて道路構造を判定する道路構造判定部と、
前記道路構造判定部により判定された道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置する法面配置部とを備えていることを特徴とする法面の自動配置装置。
【請求項2】
請求項1に記載の法面の自動配置装置において、
前記入力部は、複数の道路の各々の中心線形の入力を受け付けるように構成され、
前記モデル生成部は、前記入力部により入力された複数の前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、前記3次元道路路面モデルを生成するように構成され、
前記道路構造判定部は、前記入力部により入力された複数の前記中心線形に基づいて道路構造を判定するように構成されていることを特徴とする法面の自動配置装置。
【請求項3】
請求項2に記載の法面の自動配置装置において、
前記道路構造判定部は、前記道路構造が並走路線であるか否かを前記中心線形に基づいて判定するように構成されていることを特徴とする法面の自動配置装置。
【請求項4】
請求項2に記載の法面の自動配置装置において、
前記道路構造判定部は、前記道路構造が交差路線であるか否かを前記中心線形に基づいて判定するように構成されていることを特徴とする法面の自動配置装置。
【請求項5】
請求項1に記載の法面の自動配置装置において、
前記道路構造判定部は、前記道路構造が単独路線であるか否かを前記中心線形に基づいて判定するように構成されていることを特徴とする法面の自動配置装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の法面の自動配置装置において、
前記法面配置部により配置された複数の法面の3次元交差線を計算する計算部を備えていることを特徴とする法面の自動配置装置。
【請求項7】
3次元道路路面モデル上で法面を自動配置する法面の自動配置プログラムにおいて、
道路の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員の入力を受け付ける入力工程と、
前記入力工程で入力した前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、前記3次元道路路面モデルを生成するモデル生成工程と、
前記入力工程で入力した前記中心線形に基づいて道路構造を判定する道路構造判定工程と、
前記道路構造判定工程で判定した道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置する法面配置工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする法面の自動配置プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば道路設計などに用いられる法面の自動配置装置及び法面の自動配置プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で3次元CADシステムが導入されて設計業務が行われている。道路設計の分野でも3次元CADシステムが導入されており、例えば特許文献1には、3次元道路路面モデルに擁壁モデルを自動配置するための擁壁の自動配置装置が開示されており、また、特許文献2には、3次元道路路面モデル上で擁壁に対する安定性の照査のための処理を実行する擁壁の安定性照査装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の自動配置装置は、3次元道路路面モデル上のセンターラインと法面との距離に基づいて擁壁の配置区間を特定し、特定された配置区間を対象として、擁壁を配置するための基準線を設定し、配置候補とする擁壁形状を基準線に合わせて配置してから擁壁高の調整を自動で実行可能に構成されている。
【0004】
特許文献2の安定性照査装置は、3次元道路路面モデル上で安定性照査対象とする擁壁の選択を受け付けた後、対象の擁壁の安定性照査処理を実行し、安定性照査の結果に基づいて、3次元道路路面モデル上で擁壁の色を変更可能に構成されている。
【0005】
従来の2次元の道路設計で擁壁を計算する場合、擁壁の端部位置や高さの計算を、道路中心線形、縦断勾配、横断勾配、幅員構成によって求めた道路路肩の高さ、地盤高などの情報を元に2次元の平面、横断面から求めていた。よって擁壁の端部位置や高さに矛盾点が生じたりして正確に求める事が難しく、設計図面としての間違いもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6848038号公報
【特許文献2】特許第6848031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年の道路設計の3次元モデル化では既存技術である2次元図面をそのまま3次元モデル化するため整合が取れていない箇所が散見される。すなわち、2次元の横断面を指定ピッチ(例えば5mピッチや1mピッチ)で作成し、作成した各横断面を接続して3次元モデルを作成することが土木の業界では一般的であるが、作成される横断面は指定ピッチごとであるため、指定ピッチ間の横断面は生成されない。
【0008】
このことを前提として、3次元CADシステムで法面の3次元モデルを作成しようとした場合、既存の横断面がある測点のみで3次元モデルを生成すると、指定ピッチ以外の部分では法面の小段などを考慮した計算が不可能であるため、法面の形状に必ず矛盾が生じ、成果品として成り立たないと言う課題がある。
【0009】
特に、法面は道路設計での根幹構造であり、法面の配置は、擁壁の要否や排水構造物の設計など多方面に影響をおよぼすものである。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、法面を矛盾なく自動配置可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、3次元道路路面モデル上で法面を自動配置する法面の自動配置装置を前提とすることができる。法面の自動配置装置は、道路の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員の入力を受け付ける入力部と、前記入力部により入力された前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、前記3次元道路路面モデルを生成するモデル生成部と、前記入力部により入力された前記中心線形に基づいて道路構造を判定する道路構造判定部と、前記道路構造判定部により判定された道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置する法面配置部とを備えている。
【0012】
この構成によれば、入力部により道路の中心線形が入力されるので、中心線形に基づいた3次元道路路面モデルがモデル生成部によって生成される。この3次元道路路面モデルの道路構造は中心線形に基づいて判定され、判定された道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置することで、道路構造に適した3次元形状の法面を適切な位置に配置できる。
【0013】
本開示の他の態様に係る入力部は、複数の道路の各々の中心線形の入力を受け付けるように構成されている。この場合、モデル生成部は、前記入力部により入力された複数の前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、前記3次元道路路面モデルを生成するように構成されおり、また、前記道路構造判定部は、前記入力部により入力された複数の前記中心線形に基づいて道路構造を判定するように構成されている。これにより、複数線形の3次元道路路面モデルで3次元形状の法面を自動配置することができる。
【0014】
本開示の他の態様に係る道路構造判定部は、前記道路構造が並走路線であるか否かを前記中心線形に基づいて判定するように構成されていてもよい。また、本開示の他の態様に係る道路構造判定部は、前記道路構造が交差路線であるか否かを前記中心線形に基づいて判定するように構成されていてもよい。また、本開示の他の態様に係る道路構造判定部は、前記道路構造が単独路線であるか否かを前記中心線形に基づいて判定するように構成されていてもよい。これにより、道路構造をより具体的に判定することができ、並走路線に適した法面の自動配置、交差路線に適した法面の自動配置、単独路線に適した法面の自動配置が可能になる。
【0015】
本開示の他の態様では、法面配置部により配置された複数の法面の3次元交差線を計算する計算部を備えていてもよい。これにより、例えば法面の小段形状まで考慮した交差計算を行うことができる。
【0016】
また、法面の自動配置プログラムによれば、道路の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員の入力を受け付ける入力工程と、前記入力工程で入力した前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、前記3次元道路路面モデルを生成するモデル生成工程と、前記入力工程で入力した前記中心線形に基づいて道路構造を判定する道路構造判定工程と、前記道路構造判定工程で判定した道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置する法面配置工程とをコンピュータに実行させることができる。
【0017】
また、3次元道路路面モデル上で法面を自動配置する法面の自動配置方法を前提とすることもできる。この方法は、道路の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員の入力を受け付ける入力工程と、前記入力工程で入力した前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、前記3次元道路路面モデルを生成するモデル生成工程と、前記入力工程で入力した前記中心線形に基づいて道路構造を判定する道路構造判定工程と、前記道路構造判定工程で判定した道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置する法面配置工程とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、道路の中心線形に基づいて道路構造を判定し、判定した道路構造に応じて3次元形状の法面を配置するようにしたので、3次元道路路面モデル上に法面を矛盾なく自動配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る法面の自動配置装置の構成図である。
図2】法面の自動配置装置のブロック図である。
図3】3次元道路路面モデルの一例を示す図である。
図4図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】3次元道路路面モデルの生成手順を示すフローチャートである。
図6】道路中心線形の一例を示す図である。
図7】道路幅員の設定用ユーザインタフェース画面の一例を示す図である。
図8】法面を自動設置する手順を示すフローチャートである。
図9】並走路線の道路構造を模式的に示す平面図である。
図10】FIG.10Aは図9におけるA-A線断面図であり、FIG.10Bは図9におけるB-B線断面図であり、FIG.10Cは図9におけるC-C線断面図である。
図11】並走路線の別の例に係る道路構造を模式的に示す平面図である。
図12図11におけるD-D線断面図である。
図13】交差路線の道路構造を模式的に示す平面図である。
図14】第1の法面と第2の法面とが互いに交差する様子を示した図である。
図15】単独路線の道路構造を模式的に示す平面図である。
図16】ラウンドを適用する場合の図9相当図である。
図17】ラウンドを適用する場合の図10相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る法面の自動配置1の構成図であり、図2は、法面の自動配置1のブロック図である。法面の自動配置1は、パーソナルコンピュータで構成されており、本体部10と、表示部11と、操作部12と、記憶装置13とを備えている。本体部10は、制御部10Aと通信モジュール10Bを有している。制御部10Aは、例えばCPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAM(メモリ)等で構成されており、プログラムに従って動作する。メモリは、CPUが擁壁の3次元計算プログラムを実行する際に当該プログラムを展開するためのワークメモリや、データを一時的に記憶するためのバッファメモリである。また、通信モジュール10Bは、例えばインターネット等を介して外部の端末と通信する部分であり、データの送信、データの受信等が行えるように構成されている。
【0022】
制御部10Aにより、後述する入力部10a、モデル生成部10b、道路構造判定部10c、法面配置部10d及び計算部10e等が構成されている。入力部10a、モデル生成部10b、道路構造判定部10c、法面配置部10d及び計算部10eは、制御部10Aを構成しているハードウェアのみで構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成されていてもよい。例えば、CPUが3次元計算プログラムを実行することで、入力部10a、モデル生成部10b、道路構造判定部10c、法面配置部10d及び計算部10eの各機能を制御部10Aが実現可能になる。
【0023】
表示部11は、例えば液晶ディスプレイ装置や有機ELディスプレイ装置等で構成されている。表示部11は、制御部10Aに接続されており、制御部10Aによって制御され、各種設定画面、入力画面、設計画面、解析画面等の表示が可能になっている。
【0024】
操作部12は、ユーザが法面の自動配置装置1を操作するための機器で構成されている。操作部12には、例えばキーボード12a及びマウス12bが含まれているが、これら以外にも表示部11に組み込まれたタッチ操作パネルや、各種ポインティングデバイス等が含まれていてもよい。操作部12は、制御部10Aに接続されており、ユーザの操作部12による操作が制御部10Aで検出可能になっている。
【0025】
記憶装置13は、各種データやプログラム等を記憶可能なハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成されている。記憶装置13は制御部10Aに接続されており、制御部10Aからの指示に従い、送られてきたデータの記憶、及び記憶されているデータの読み出しを実行する。記憶装置13は、本体部10に内蔵されていてもよいし、本体部10の外部に設けられていてもよい。また、記憶装置13は、外部のサーバや、いわゆるクラウド型のストレージシステムであってもよい。また、記憶装置13の一部のみ本体部10に内蔵し、他を外部に設けてもよい。
【0026】
記憶装置13には、後述する各工程をコンピュータに実行させる法面の自動配置プログラムが記憶されている。この法面の自動配置プログラムのユーザへの提供形態は特に限定されるものではなく、例えば図1に示すようにCD-ROMやDVD-ROMなどのような記録媒体Aに記録された状態でユーザに提供されてもよいし、インターネット等を介して外部サーバからダウンロード可能な形態でユーザに提供されてもよい。提供された法面の自動配置プログラムを汎用のパーソナルコンピュータにインストールすることで、当該パーソナルコンピュータを法面の自動配置装置1として使用することが可能になる。
【0027】
尚、汎用のパーソナルコンピュータに法面の自動配置プログラムをインストールする際には記憶装置13にインストールすればよい。また、汎用のパーソナルコンピュータを、法面の自動配置プログラムがインストールされた外部サーバにアクセスさせることで、法面の自動配置装置1として使用することも可能であり、法面の自動配置プログラムのインストール場所は特に限定されるものではない。
【0028】
法面の自動配置装置1は、道路設計を支援するためのソフトウェアを使用し、図3に一例を示すような3次元道路路面モデル100を作成することができるとともに、作成した3次元道路路面モデル100上で法面を自動配置する処理を実行する装置である。3次元道路路面モデル100を構成するデータは、例えば記憶装置13に記憶されている。記憶装置13から読み出したデータを制御部10Aが図3に示すような3次元道路路面モデル100を表す画像に変換して表示部11に表示させる。これにより、ユーザは表示部11上で3次元道路路面モデル100を確認できる。尚、3次元道路路面モデルはカラー画像で表されている。
【0029】
図4にも示すように、3次元道路路面モデル100は、本線道路101と、ランプ(連結道)102と、側道103と、一般道104とを有している。本線道路101は、例えば高速道のように幅が広い道路である。ランプ102は、本線道路101と一般道104とを連結する道路であり、本線道路101よりも幅が狭く、図3に示している部分では、本線道路101よりも下に位置している。また、ランプ102は、本線道路101への合流部へ向かって登り勾配になるとともに、本線道路101に接近する。側道103はランプ102よりも下に位置している。
【0030】
ランプ102が本線道路101よりも下に位置しているので、本線道路101とランプ102との間には、盛土105が形成される。また、盛土105とランプ102との間には、平盛(平らな部分、平場ともいう)106が形成される。ランプ103と側道103との間には、盛土107と擁壁108が形成される。側道103の擁壁108と反対側には盛土109が形成される。
【0031】
図3に示す3次元道路路面モデル100は、従来から周知の道路設計用CAD(ソフトウェア)を用いて生成することができる。具体的には、道路設計用CADソフトウェアがインストールされた法面の自動配置装置1を使用し、図5に示すフローチャートの手順を経ることで、3次元道路路面モデル100を生成できる。
【0032】
スタート後のステップSA1では、道路の中心線形のユーザによる入力を受け付ける。道路の中心線形は、例えば図6に一例を示すように、直線、円弧、クロソイド曲線等の要素の組み合わせによって構成されるものであり、起点と終点が固定されていて、その間の必ず通過したい通過点も固定されている。固定された点の間が上記要素の組み合わせで構成される。
【0033】
道路の中心線形を入力する際にはユーザが操作部12を操作する。操作部12でどのような操作が行われたかは、制御部10Aの入力部10aで検出される。入力部10aは、操作部12の操作を検出することで、道路の中心線形の入力を受け付ける。図3に示す例では、本線道路101、ランプ102、側道103が存在しているので、入力部10aは、本線道路101、ランプ102、側道103のそれぞれの道路の中心線形の入力を受け付ける。つまり、入力部10aは、互いに異なる第1の道路の中心線形と第2の道路の中心線形の入力を受け付けるように構成されており、これにより、複数線形を前提とした3次元道路路面モデル100を生成できる。
【0034】
ステップSA2では、縦断勾配及び横断勾配のユーザによる入力を受け付ける。縦断勾配及び横断勾配の入力は、縦端面形状を示した図及び横断面形状を示した図から入力する画面入力方法であってもよいし、測定点ごとに勾配を数値で入力する数値入力方法であってもよい。いずれの方法であっても、入力部10aは、操作部12の操作を検出することで、縦断勾配及び横断勾配の入力を受け付ける。
【0035】
ステップSA3では、道路幅員のユーザによる設定を受け付ける。道路幅員の入力は、例えば図7に示す道路幅員の設定用ユーザインタフェース画面200を用いて行うことができる。制御部10Aは、道路幅員の設定用ユーザインタフェース画面200を生成して表示部11に表示させる。道路幅員の設定用ユーザインタフェース画面200には、道路区分、車線数、中央帯、分離帯、側帯、各車線の幅員、路肩幅等を個別に入力可能な複数の入力欄201が設けられている。各入力欄201には、操作部12を操作することにより、任意の数値を入力することができる。入力部10aは、操作部12の操作を検出することで、道路幅員の入力を受け付けるとともに、入力された道路幅員を設定する。ステップSA1、SA2、SA3は、道路の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員の入力を受け付ける入力工程である。
【0036】
ステップSA4では、モデル生成部10bが、入力部10aにより入力された複数の中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員に基づいて、3次元道路路面モデル100を生成する。3次元道路路面モデル100では、本線道路101、ランプ102、側道103の路面が3次元モデルとして表示されている。尚、道路の中心線形が1つしか入力されていない場合には、モデル生成部10bが、入力部10aにより入力された1つの中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員に基づいて、3次元道路路面モデル100を生成する。この工程は、入力工程で入力した前記中心線形、前記縦断勾配、前記横断勾配及び前記道路幅員に基づいて、3次元道路路面モデルを生成するモデル生成工程である。
【0037】
次に、図8に示すフローチャートに基づいて、法面を自動設置する具体的な手順の一例について説明する。スタート後のステップSB1では、図5に示すフローチャートのステップSA4で生成された3次元道路路面モデル100の道路構造を図2に示す道路構造判定部10cが判定する。道路構造判定部10cは、入力部10aにより入力された道路の中心線形に基づいて道路構造を判定する部分であり、複数の道路の各々の中心線形が入力されている場合には、入力部10aにより入力された複数の中心線形に基づいて道路構造を判定する。
【0038】
道路構造は、大きく分けて、複数の中心線形が互いに交差することなく並走している並走路線と、複数の中心線形が互いに交差する十字路、T字路、5差路などを含む交差路線と、中心線形が1つだけの単独路線とに分けることができ、道路構造判定部10cは、並走路線、交差路線、単独路線のいずれであるかを判定する。
【0039】
並走路線の例を図9図12に示す。図9及び図10では、第1の道路110の中心線形L11と、第2の道路120の中心線形L12とが互いに交差することなく延びている。第1の道路110と第2の道路120の間には、盛土や切土により、第1法面131と第2法面132と第3法面133と小段134とが設けられている。図9の上側へ行くほど、中心線形L11と中心線形L12とが互いに離れており、このような中心線形L11、L12の形状及び中心線形L11、L12の縦断計画の高低差により、法面133は小段134が発生して複数段の法面になる。
【0040】
また、図11及び図12では、第1の道路110の中心線形L11と、第2の道路120の中心線形L12とが互いに交差することなく延びている。第1の道路110と第2の道路120の間には、盛土や切土により、第1法面131と第2法面132と平場134とが設けられている。平場134は、第1法面131と第2法面132との間において中心線形L11に沿うように形成されている。
【0041】
図13は、交差路線の道路構造を示している。第1の道路110の中心線形L11と、第2の道路120の中心線形L12とが互いに交差している。第1の道路110に沿う第1の法面141と、第2の道路120に沿う第2の法面142とが設けられている。図14は、第1の法面141と、第2の法面142とが互いに交差する様子を示している。
【0042】
図15は、単独路線の道路構造を示している。単独路線では、第1の道路110だけが設けられている。第1の道路110のカーブした部分の内側に、法面150が設けられている。
【0043】
図8に示すフローチャートのステップSB1では、道路構造判定部10cが、並走路線であるか否か、交差路線であるか否か、及び単独路線であるか否かを中心線形に基づいて判定する。具体的には、道路構造判定部10cが、入力部10aにより入力された中心線形の数を判定し、中心線形の数が1つであれば、その道路構造は単独路線であると判定し、ステップSB12に進む。図9及び図11に示すように、複数の中心線形L11、L12が互いに交差していなければ、その道路構造は並走路線であると道路構造判定部10cが判定し、ステップSB2に進む。図13に示すように、複数の中心線形L11、L12が互いに交差していれば、その道路構造は交差路線であると道路構造判定部10cが判定し、ステップSB8に進む。なおこの判定は中心線形の起終点全体で判定しても良いし、測点などの区間で判定しても良い。ステップSB1は、入力工程で入力した前記中心線形に基づいて道路構造を判定する道路構造判定工程である。
【0044】
並走路線であると判定されて進んだステップSB2では、複数路線間、即ち第1の道路110と第2の道路120との間に切土、盛土法面を法面配置部10dが自動配置する。図9では、第1法面131と第2法面132と第3法面133を自動配置し、図11では、第1法面131と第2法面132を自動配置する。このとき、入力工程で入力した中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員等が考慮される。ステップSB2は、道路構造判定部10cにより判定された道路構造に応じた3次元形状の法面を自動配置する法面配置工程である。
【0045】
ステップSB3では、計算部10eが、互いに交差する法面が切土、盛土のどちらであるかを判定する。このとき、入力工程で入力した中心線形、縦断勾配、横断勾配及び道路幅員等が考慮される。
【0046】
ステップSB4では、計算部10eが法面と法面との交差線を計算する。図9に示す例では、第1法面131と第2法面132が互いに交差しており、第1法面131と第3法面133とが互い交差しているので、第1法面131と第2法面132の3次元交差線、第1法面131と第3法面133の3次元交差線を計算部10eが計算する。また、図11に示す例では、第1法面131と第2法面132が互いに交差しているので、第1法面131と第2法面132の3次元交差線を計算部10eが計算する。
【0047】
ステップSB5では、法面と法面の交差部分をラウンドさせるか否かを判定する。ラウンドとは、法面と法面の交差部分に丸みを付けることであり、この判定は、ユーザによる入力に基づいて行ってもよいし、法面と法面の交差状態に基づいて行ってもよい。
【0048】
ステップSB5でNOと判定されて法面と法面の交差部分をラウンドしない場合には、図10に示すように法面と法面の交差部分が尖った状態のまま、後のステップに進む。一方、ステップSB5でYESと判定されて法面と法面の交差部分をラウンドさせる場合には、ステップSB6に進み、ユーザが指定した幅(例:1m等)で法面と法面の交差部分をラウンドさせるように、法面の端部の形状を計算部10eが再計算し、ステップSB7に進む。図16では、ラウンドさせる範囲(平場にする範囲)を太線で示しており、また、図17では、ラウンドさせた場合の断面を示している。尚、ラウンドと小段とが重なる場合には、ラウンドを優先させる。
【0049】
ステップSB7では、計算部10eが、ステップSB4で計算した交差線を元に、法面の3次元サーフェスを生成する。例えば図3に示すような盛土105の法面が3次元形状で生成される。
【0050】
次に、ステップSB1で道路構造が交差路線であると判定された場合について説明する。ステップSB8では、ステップSB2と同様に、複数路線間、即ち第1の道路110と第2の道路120との間に切土、盛土法面を法面配置部10dが自動配置する(法面配置工程)。ステップSB9では、法面と法面の交差点の隅切りがある場合には、隅切り部の法面を作成する。
【0051】
ステップSB10では、ステップSB4と同様に計算部10eが交差線を計算する。図13に示す例では、第1の法面141と第2の法面142との交差線143(図14にも示す)を計算する。
【0052】
ステップSB11では、ステップSB7と同様に計算部10eが、ステップSB4で計算した交差線を元に、法面の3次元サーフェスを生成する。
【0053】
次に、ステップSB1で道路構造が単独路線であると判定された場合について説明する。ステップSB12では、法面を自動配置して法面配置工程を行い、配置した法面の自己交差部分を検出する。ステップSB13では、ステップSB12で法面の自己交差部分が検出された場合、自己交差計算用の法面を作成する。
【0054】
その後、ステップSB14では、ステップSB4と同様に計算部10eが交差線を計算する。図15では、法面の自己交差部分を交差線151として計算している。
【0055】
ステップSB15では、ステップSB7と同様に計算部10eが、ステップSB4で計算した交差線を元に、法面の3次元サーフェスを生成する。
【0056】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、入力部10aにより道路の中心線形が入力されるので、中心線形に基づいた3次元道路路面モデルをモデル生成部10bによって生成できる。この3次元道路路面モデルの道路構造は中心線形に基づいて、並走路線であるか否か、交差路線であるか否か、単独路線であるか否かを判定することができ、判定された道路構造に応じた3次元形状の法面を法面配置部10dが3次元道路路面モデル上に自動配置する。これにより、道路構造に適した3次元形状の法面を適切な位置に配置できる。
【0057】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明に係る法面の自動配置装置及び法面の自動配置プログラムは、例えば道路設計CADシステムで利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 法面の自動配置装置
10a 入力部
10b モデル生成部
10c 道路構造判定部
10d 法面配置部
10e 計算部
図1
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