(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043261
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】電動工具、および電動工具におけるモータの制御方法
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20240322BHJP
B25B 21/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B25B23/14 640L
B25B21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148350
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊坂 脩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慈
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038BC04
3C038CA05
3C038CB02
3C038CC04
3C038CC05
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】締結具を緩める方向へ回転させているモータを、締結具が適正に緩められた状態で自動で停止できることが望ましい。
【解決手段】電動工具は、モータと、回転方向設定部と、制御回路とを備える。モータは、第1方向と第2方向とに回転可能である。第1方向は締結具を被締結材に締め付ける方向であり、第2方向は締結具を被締結材から緩める方向である。制御回路は、モータの回転方向が第2方向に設定されている場合に、モータを第2方向へ回転させる。制御回路は、第2方向への回転開始以後の所定のタイミングから時間経過に従って所定の判定値を増加させる。
制御回路は、判定値が閾値に達したことに応じてモータを減速または停止させる。制御回路は、判定値の増加率を、モータの回転速度情報に応じて変化させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
第1方向へ回転されると締結具を前記第1方向へ回転させて被締結材に締め付けて前記第1方向とは逆の第2方向へ回転されると前記締結具を前記第2方向へ回転させて前記被締結材から緩めるように構成された工具ビットが、装着されるように構成された装着部と、
前記モータの回転力を前記装着部に伝達することにより前記装着部を前記第1方向または前記第2方向へ回転するように構成された駆動機構と、
前記モータへ電力を供給して前記モータを回転させるように構成された駆動回路と、
前記装着部を前記第2方向へ回転させるべき条件である緩め条件が成立したことに応じて、前記装着部が前記第2方向へ回転するように、前記モータを前記駆動回路を介して回転させるように構成された回転制御部と、
前記緩め条件の成立以後の所定のタイミングから時間経過に従って判定値を増加させるように構成され、前記判定値の増加率を、前記モータの回転速度を示す又は決定付ける回転速度情報に応じて変化させるように構成された、演算部と、
前記判定値が閾値に達したことに応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止するように構成された減速制御部と、
を備える電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具であって、
前記演算部は、前記回転速度情報により示された又は決定付けられた前記回転速度が低くなるに従って前記増加率を低くするように構成されている、電動工具。
【請求項3】
請求項1に記載の電動工具であって、
前記演算部は、
前記時間経過に従って繰り返し到来する積算タイミング毎に、前記積算タイミングにおける前記回転速度情報に基づいてカウント値を決定するように構成されたカウント値決定部と、
前記積算タイミング毎に、前記カウント値決定部により決定された前記カウント値を積算して前記判定値を算出するように構成された積算部と、
を備える、電動工具。
【請求項4】
請求項3に記載の電動工具であって、
前記カウント値決定部は、前記回転速度情報により示された又は決定付けられた前記回転速度が低くなるに従って前記カウント値を小さくするように構成されている、電動工具。
【請求項5】
請求項4に記載の電動工具であって、
さらに、指定回転速度を設定するように構成された速度設定部を備え、
前記回転制御部は、前記速度設定部により設定されている前記指定回転速度で前記モータが回転するように前記モータを前記駆動回路を介して回転させるように構成されており、
前記カウント値決定部は、前記速度設定部により設定されている前記指定回転速度が低くなるに従って前記カウント値を小さくするように構成されている、
電動工具。
【請求項6】
請求項5に記載の電動工具であって、
前記駆動機構は、前記装着部の回転方向とは逆方向の予め決められた大きさ以上のトルクを前記装着部から受けると、前記装着部へ前記回転方向の打撃を与えるように構成されており、
前記電動工具は、さらに、前記駆動機構による前記打撃を検出するように構成された打撃検出部を備え、
前記減速制御部は、前記打撃検出部により前記打撃が検出されておらず且つ前記判定値が前記閾値に達したことに応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止させるように構成されている、
電動工具。
【請求項7】
請求項5に記載の電動工具であって、
さらに、前記所定のタイミングからの経過時間を計測するように構成された計時部と、
前記回転速度情報により示された又は決定付けられた前記回転速度が高くなるに従って短くなるように閾時間を算出するように構成された閾時間算出部と、
を備え、
前記減速制御部は、前記経過時間が前記閾時間に達し且つ前記判定値が前記閾値に達したことに応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止させるように構成されている、
電動工具。
【請求項8】
請求項5に記載の電動工具であって、
前記駆動機構は、前記装着部の回転方向とは逆方向の予め決められた大きさ以上のトルクを前記装着部から受けると、前記装着部へ前記回転方向の打撃を与えるように構成されており、
前記電動工具は、さらに、
前記駆動機構による前記打撃を検出するように構成された打撃検出部と、
前記所定のタイミングからの経過時間を計測するように構成された計時部と、
前記回転速度情報により示された又は決定付けられた前記回転速度が高くなるに従って短くなるように閾時間を算出するように構成された閾時間算出部と、
を備え、
前記減速制御部は、前記打撃検出部により前記打撃が検出されておらず、前記経過時間が前記閾時間に達し、且つ前記判定値が前記閾値に達したことに応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止させるように構成されている、
電動工具。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の電動工具であって、
前記カウント値決定部は、前記閾時間が短くなるに従って前記カウント値が大きくなるように、前記閾時間に基づいて前記カウント値を決定するように構成されている、電動工具。
【請求項10】
請求項9に記載の電動工具であって、
前記カウント値決定部は、前記カウント値が前記閾時間に反比例する成分を含むように前記カウント値を決定するように構成されている、電動工具。
【請求項11】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の電動工具であって、
さらに、前記電動工具の使用者の手動により移動されるように構成された第1のスイッチを備え、
前記緩め条件は、前記第1のスイッチが移動されたことに応じて成立する、
電動工具。
【請求項12】
請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の電動工具であって、
さらに、前記電動工具の使用者の手動により移動されるように構成された第1のスイッチを備え、
前記速度設定部は、前記第1のスイッチの移動量に応じて前記指定回転速度を設定するように構成されている、
電動工具。
【請求項13】
請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の電動工具であって、
さらに、
2以上の動作モードから1つの動作モードを選択するために前記電動工具の使用者により操作されるように構成された第2のスイッチと、
前記電動工具を前記第2のスイッチにより選択された前記1つの動作モードに設定するように構成されたモード設定部と、
を備え、
前記2以上の動作モードはそれぞれ、互いに異なる前記指定回転速度が対応付けられており、
前記速度設定部は、前記モード設定部により設定されている前記動作モードに対応付けられている前記指定回転速度を設定するように構成されている、
電動工具。
【請求項14】
締結具を被締結材に締め付ける第1方向と、前記締結具を前記被締結材から緩める第2方向と、に回転するように構成されたモータと、
前記モータの回転方向を前記第1方向または前記第2方向に設定するように構成された回転方向設定部と、
前記モータの回転速度を制御するように構成された制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記回転方向設定部によって前記モータの回転方向が前記第2方向に設定されている場合に、前記モータを前記第2方向へ回転させ、
前記第2方向への回転開始以後の所定のタイミングから時間経過に従って所定の判定値を増加させ、
前記判定値が閾値に達したことに応じて前記モータを減速または停止させ、
前記判定値の増加率を、前記モータの回転速度情報に応じて変化させる、
ように構成されている、電動工具。
【請求項15】
請求項14に記載の電動工具であって、
前記判定値を増加させることはカウント値を積算することを含み、前記カウント値が積算された値が前記判定値に対応し、
前記増加率を変化させることは、前記カウント値を変化させることを含む、
電動工具。
【請求項16】
電動工具におけるモータの制御方法であって、
前記電動工具に装着された工具ビットを、当該工具ビットによって締結具が被螺合部材から緩められる方向へ、前記モータによって回転させることと、
所定のタイミングから時間経過に従って判定値を増加させることと、
前記判定値を増加させる際の増加率を、前記モータの回転速度を示す又は決定付ける回転速度情報に応じて変化させることと、
前記判定値が閾値に達したことに応じて前記モータを減速または停止することと、
を備える、電動工具におけるモータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動工具におけるモータを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、逆方向へ回転しているモータを自動で停止させる機能を備えた回転打撃工具を開示している。この回転打撃工具は、モータの逆方向への駆動開始後、打撃が検出されることなく規定時間が経過すると、モータを停止させる。逆方向は、対象物(例えばナット)が緩められる方向に対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この回転打撃工具では、被締結材に締結されている締結具が被締結材から十分に(例えば回転打撃工具の使用者が望む位置まで)緩められていない状態で、モータが停止される可能性がある。この場合、使用者は、モータ停止後、締結具を自ら回して緩める、あるいは回転打撃工具を再度作動させて締結具を緩めるなどの、意図しない手間が発生し得る。
【0005】
本開示の一局面は、締結具を緩める方向へ回転させているモータを、締結具が適正に緩められた状態で自動で停止できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面は、モータと、装着部と、駆動機構と、駆動回路と、回転制御部と、演算部と、減速制御部とを備えた電動工具を提供する。
装着部は、工具ビットが装着される。工具ビットは、装着部と共に第1方向へ回転されると、締結具を第1方向へ回転させて被締結材に締め付ける。工具ビットは、装着部と共に第1方向とは逆の第2方向へ回転されると、締結具を第2方向へ回転させて被締結材から緩める。駆動機構は、モータの回転力を装着部に伝達することにより、装着部を第1方向または第2方向へ回転する。締結具は、ねじ山が設けられていてもよい。
【0007】
駆動回路は、モータへ電力を供給してモータを回転させる。
回転制御部は、緩め条件が成立したことに応じて、装着部が第2方向へ回転するように、モータを駆動回路を介して回転させる。緩め条件は、装着部を第2方向へ回転させるべき条件である。演算部は、所定のタイミングから時間経過に従って判定値を増加させる。演算部は、判定値の増加率を、回転速度情報に応じて変化させる。回転速度情報は、モータの回転速度を示す、又は決定付ける。所定のタイミングは、緩め条件が成立したことに応じて到来する。減速制御部は、判定値が閾値に達したことに応じて、駆動回路を介してモータを減速または停止する。なお、モータを減速する、とは、詳しくはモータの回転速度を低下させることを意味する。また、モータを停止する、とは、詳しくはモータの回転を停止させることを意味する。
【0008】
このような電動工具では、判定値の増加率が、回転速度情報に応じて変化する。これにより、判定値が閾値に達するまでの時間が、回転速度情報に応じて変化し得る。したがって、このような電動工具は、締結具が適正に緩められた状態でモータを停止することができる。
【0009】
本開示の別の一局面は、モータと、回転方向設定部と、制御回路と、を備えた電動工具を提供する。モータは、第1方向と第2方向とに回転するように構成されている。第1方向は、締結具を被締付材に締め付ける方向である。第2方向は、締結具を被締結材から緩める方向である。回転方向設定部は、モータの回転方向を、第1方向または第2方向に設定する。制御回路は、回転方向設定部によってモータの回転方向が第2方向に設定されている場合に、モータを第2方向へ回転させ、第2方向への回転開始以後の所定のタイミングから時間経過に従って所定の判定値を増加させ、判定値が閾値に達したことに応じてモータを減速または停止させ、判定値の増加率を、モータの回転速度情報に応じて変化させる。
【0010】
このような電動工具も、締結具が適正に緩められた状態でモータを停止することができる。
前記判定値を増加させることは、カウント値を積算することを含んでいてもよい。そのカウント値が積算された値が、判定値に対応していてもよい。つまりその積算された値が判定値として用いられてもよい。増加率を変化させることは、カウント値を変化させることを含んでいてもよい。
【0011】
本開示の別の一局面は、電動工具におけるモータの制御方法であって、
電動工具に装着された工具ビットを、当該工具ビットによって締結具が被螺合部材から緩められる方向へ、モータによって回転させることと、
所定のタイミングから時間経過に従って判定値を増加させることと、
判定値を増加させる際の増加率を、モータの回転速度を示す又は決定付ける回転速度情報に応じて変化させることと、
判定値が閾値に達したことに応じてモータを減速または停止することと、
を備えている。
【0012】
このような方法は、締結具が適正に緩められた状態でモータを停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】例示的な実施形態における電動工具の側断面図である。
【
図3】電動工具の電気的構成を示す電気回路図である。
【
図5】モータ逆転時の電動工具の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【
図6】モータ逆転時の電動工具の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施形態の総括
ある実施形態は、以下の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つを備えている電動工具を提供してもよい。
・特徴1:モータ。
・特徴2:工具ビットが装着されるように構成された装着部。前記工具ビットは、前記装着部と共に第1方向へ回転されると、締結具を前記第1方向へ回転させて被締結材に締め付け、前記装着部と共に前記第1方向とは逆の第2方向へ回転されると、前記締結具を前記第2方向へ回転させて前記被締結材から緩める。
・特徴3:前記モータの回転力を前記装着部に伝達することにより前記装着部を前記第1方向または前記第2方向へ回転するように構成された駆動機構。
・特徴4:前記モータへ電力を供給して前記モータを回転させるように構成された駆動回路。
・特徴5:緩め条件が成立したことに応じて、前記装着部が前記第2方向へ回転するように、前記モータを前記駆動回路を介して回転させるように構成された回転制御部。前記緩め条件は、前記装着部を前記第2方向へ回転させるべき条件である。
・特徴6:所定のタイミングから時間経過に従って判定値を増加させるように構成された演算部。前記演算部は、前記判定値の増加率を、前記モータの回転速度を示す又は決定付ける回転速度情報に応じて変化させるように構成されている。前記所定のタイミングは、前記緩め条件が成立したことに応じて到来する。
・特徴7:前記判定値が閾値に達したことに応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止するように構成された減速制御部。
モータを減速する、とは、詳しくはモータの回転速度を低下させることを意味する。減速制御部は、例えば、モータの回転速度が低下するように駆動回路を制御してもよい。また、モータを停止する、とは、詳しくはモータの回転を停止させることを意味する。減速制御部は、例えば、モータの回転が停止するように駆動回路を制御してもよい。
【0015】
少なくとも特徴1~7を備えている電動工具は、締結具が適正に緩められた状態でモータを減速または停止することができる。なお、締結具は、ねじ山が設けられていてもよい。
判定値は、初期値から累積的に増加されてもよい。その初期値は、どのように決められてもよい。初期値は例えばゼロであってもよい。
【0016】
回転速度情報は、モータの回転速度を示す、若しくはモータの回転速度を決定づける、どのような情報であってもよい。例えば、目標回転速度が算出されるように構成されている場合は、回転速度情報として目標回転速度が用いられてもよい。また例えば、実際に駆動回路を介してモータに指令する指令回転速度を、目標回転速度に向けて徐々に増加させていくように構成されている場合は、回転速度情報として指令回転速度が用いられてもよい。また例えば、モータの実回転速度が回転速度情報として用いられてもよい。
【0017】
ある実施形態は、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴8を備えていてもよい。
閾値は、どのように決められてもよい。閾値は予め決められていてもよい。閾値は、締結具及び被締結材の種類、材質などに応じて決定されていてもよい。必要十分に緩んだと判断できる状態でモータが減速または停止するような閾値を実験的に取得して、その取得した閾値が用いられてもよい。あるいは、閾値は、例えば電動工具の使用者などによって変更可能であってもよい。
【0018】
締結具は、どのような形態であってもよい。締結具は、例えば、ねじ山が設けられていてもよい。具体的には、締結具は、例えば木ねじやドリルねじなどの各種のねじ、ボルト、ナットなどの形態であってもよい。
・特徴8:前記演算部は、前記回転速度情報により示された又は決定付けられた前記回転速度が低くなるに従って前記増加率を低くするように構成されている。
少なくとも特徴1~8を備えている電動工具は、モータの回転速度にかかわらず、締結具が適正に緩められた状態でモータを減速または停止することができる。
【0019】
ある実施形態は、上述の特徴1~8のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴9、または、以下の特徴9,10を備えていてもよい。
・特徴9:前記演算部は、前記時間経過に従って繰り返し到来する積算タイミング毎に、前記積算タイミングにおける前記回転速度情報に基づいてカウント値を決定するように構成されたカウント値決定部を備える。
・特徴10:前記演算部は、前記積算タイミング毎に、前記カウント値決定部により決定された前記カウント値を積算して前記判定値を算出するように構成された積算部を備える。
カウント値は具体的にどのような値(または大きさ)であってもよい。特徴10においては、前記カウント値が積算された値である積算値が、前記判定値に対応する。つまり、前記積算値が前記判定値として算出される。前記積算値の初期値はゼロであってもよいし、ゼロより大きい所定値であってもよい。つまり、前記積算値は、前記初期値に前記カウント値が順次積算されて算出されてもよい。
【0020】
少なくとも特徴1~7,9,10を備えている電動工具は、モータを減速または停止させるタイミング(換言すれば締結具が適正に緩められたと判定されるタイミング)を、適正かつ容易に決定することができる。
【0021】
ある実施形態は、上述の特徴1~10のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴11を備えていてもよい。
・特徴11:前記カウント値決定部は、前記回転速度情報により示された又は決定付けられた前記回転速度が低くなるに従って前記カウント値を小さくするように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~11を備えている電動工具は、モータの回転速度にかかわらず、モータを減速または停止させるタイミング(換言すれば締結具が適正に緩められたと判定されるタイミング)を、適正かつ容易に決定することができる。
【0022】
ある実施形態は、上述の特徴1~11のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴12、または以下の特徴12,13、または以下の特徴12,14、または以下の特徴12~14を備えていてもよい。
・特徴12:指定回転速度を設定するように構成された速度設定部。
・特徴13:前記回転制御部は、前記速度設定部により設定されている前記指定回転速度で前記モータが回転するように、前記モータを前記駆動回路を介して回転させるように構成されている。
・特徴14:前記カウント値決定部は、前記速度設定部により設定されている前記指定回転速度が低くなるに従って前記カウント値を小さくするように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~14を備えている電動工具は、モータの回転速度にかかわらず、モータを減速または停止させるタイミング(換言すれば締結具が適正に緩められたと判定されるタイミング)を、適正かつより容易に決定することができる。
【0023】
なお、電動工具が特徴6,12を備えている場合、前記演算部は、前記指定回転速度が低くなるに従って前記増加率を低くするように構成されていてもよい。
ある実施形態は、上述の特徴1~14のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴15、または以下の特徴15,16、または以下の特徴15~17を備えていてもよい。
・特徴15:前記駆動機構は、前記装着部の回転方向とは逆方向の予め決められた大きさ以上のトルクを前記装着部から受けると、前記装着部へ前記回転方向の打撃を与えるように構成されている。
・特徴16:前記駆動機構による前記打撃を検出するように構成された打撃検出部。
・特徴17:前記減速制御部は、前記打撃検出部により前記打撃が検出されていない非打撃状態であって、且つ前記判定値が前記閾値に達したことに応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止させるように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~17を備えている電動工具は、モータを減速または停止させるタイミング(換言すれば締結具が適正に緩められたと判定されるタイミング)を、より適正に決定することができる。
【0024】
減速制御部は、電動工具が非打撃状態であるか否かを、打撃検出部による検出結果に基づいてどのように判断してもよい。例えば、打撃検出部によって打撃が検出されていない期間を非打撃状態と判断してもよい。また例えば、打撃検出部によって打撃が検出されていない期間が所定時間以上継続している場合に非打撃状態と判断してもよい。
【0025】
ある実施形態は、上述の特徴1~17のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴18、または以下の特徴19、または以下の特徴18,19、または以下の特徴18~20を備えていてもよい。
・特徴18:前記所定のタイミングからの経過時間を計測するように構成された計時部。
・特徴19:前記回転速度情報により示された又は決定付けられた前記回転速度が高くなるに従って短くなるように閾時間を算出するように構成された閾時間算出部。
・特徴20:前記減速制御部は、前記経過時間が前記閾時間に達し、且つ前記判定値が前記閾値に達したこと、に応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止させるように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~14,18~20を備えている電動工具によっても、モータを減速または停止させるタイミング(換言すれば締結具が適正に緩められたと判定されるタイミング)を、より適正に決定することができる。
【0026】
計時部による経過時間の計測が開始されるタイミングは、演算部による判定値の演算が開始される前記所定のタイミングと完全に一致していてもよいしずれていてもよい。
ある実施形態は、上述の特徴1~20のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴21を備えていてもよい。
・特徴21:前記減速制御部は、前記打撃検出部により前記打撃が検出されていない非打撃状態であって、前記経過時間が前記閾時間に達し、且つ前記判定値が前記閾値に達したこと、に応じて、前記駆動回路を介して前記モータを減速または停止させるように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~16,18,19,21を備えている電動工具によっても、モータを減速または停止させるタイミング(換言すれば締結具が適正に緩められたと判定されるタイミング)を、より適正に決定することができる。
【0027】
ある実施形態は、上述の特徴1~21のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴22を備えていてもよい。
・特徴22:前記カウント値決定部は、前記閾時間が短くなるに従って前記カウント値が大きくなるように、前記閾時間に基づいて前記カウント値を決定するように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~14,18~20,22を備えている電動工具、及び、少なくとも特徴1~7,9~16,18,19,21,22を備えている電動工具は、カウント値を適正かつ容易に決定できる。
【0028】
ある実施形態は、上述の特徴1~22のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴23を備えていてもよい。
・特徴23:前記カウント値決定部は、前記カウント値が前記閾時間に反比例する成分を含むように前記カウント値を決定するように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~14,18~20,22,23を備えている電動工具、及び、少なくとも特徴1~7,9~16,18,19,21~23を備えている電動工具は、カウント値をより容易に決定できる。
【0029】
ある実施形態は、上述の特徴1~23のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴24、または以下の特徴24,25を備えていてもよい。
・特徴24:前記電動工具の使用者の手動により移動されるように構成された第1のスイッチ。
・特徴25:前記緩め条件は、前記第1のスイッチが移動されたことに応じて成立する。
・特徴26:前記速度設定部は、前記第1のスイッチの移動量に応じて前記指定回転速度を設定するように構成されている。
・特徴27:2以上の動作モードから1つの動作モードを選択するために、前記電動工具の使用者により操作されるように構成された第2のスイッチ。
・特徴28:前記電動工具を、前記第2のスイッチにより選択された前記1つの動作モードに設定するように構成された、モード設定部。
・特徴29:前記2以上の動作モードはそれぞれ、互いに異なる前記指定回転速度が対応付けられている。
・特徴30:前記速度設定部は、前記モード設定部により設定されている前記動作モードに対応付けられている前記指定回転速度を設定するように構成されている。
少なくとも特徴1~7,9~14,27~30を備えている電動工具では、上述の各効果に加えて、使用者は、モータを所望の回転速度で回転させることができる。
【0030】
ある実施形態は、以下の特徴31~37のうちの少なくともいずれか1つを備えている電動工具を提供してもよい。
・特徴31:締結具を被締結材に締め付ける第1方向と、前記締結具を前記被締結材から緩める第2方向と、に回転するように構成されたモータ。
・特徴32:前記モータの回転方向を前記第1方向または前記第2方向に設定するように構成された回転方向設定部。
・特徴33:前記モータの回転速度を制御するように構成された制御回路。
・特徴34:前記制御回路は、前記回転方向設定部によって前記モータの回転方向が前記第2方向に設定されている場合に、前記モータを前記第2方向へ回転させる。
・特徴35:前記制御回路は、前記第2方向への回転開始以後の所定のタイミングから時間経過に従って所定の判定値を増加させる。
・特徴36:前記制御回路は、前記判定値が閾値に達したことに応じて前記モータを減速または停止させる。
・特徴37:前記制御回路は、前記判定値の増加率を、前記モータの回転速度情報に応じて変化させる。
少なくとも特徴31~37を備えている電動工具は、締結具が適正に緩められた状態でモータを減速または停止することができる。
【0031】
ある実施形態は、上述の特徴35~37に代えて、以下の特徴38~40を備えていてもよい。
・特徴38:前記制御回路は、前記第2方向への回転開始以後の所定のタイミングから時間経過に従ってカウント値を積算する。
・特徴39:前記制御回路は、前記カウント値が積算された積算値が閾値に達したことに応じて前記モータを減速または停止させる。
・特徴40:前記制御回路は、前記カウント値を、前記モータの回転速度情報に応じて変化させる。
ある実施形態は、電動工具におけるモータの制御方法であって、以下の特徴41~44のうちの少なくともいずれか1つを備えている方法を提供してもよい。
・特徴41:前記電動工具に装着された工具ビットを、当該工具ビットによって締結具が被螺合部材から緩められる方向へ、前記モータによって回転させること。
・特徴42:所定のタイミングから時間経過に従って判定値を増加させること。
・特徴43:前記判定値を増加させる際の増加率を、前記モータの回転速度を示す又は決定付ける回転速度情報に応じて変化させること。
・特徴44:前記判定値が閾値に達したことに応じて前記モータを減速または停止すること。
少なくとも特徴41~44を備えている方法は、締結具が適正に緩められた状態でモータを停止することができる。
【0032】
ある実施形態では、上述の特徴1~44はどのように組み合わされてもよい。
ある実施形態では、上述の特徴1~44のいずれかは、除外されてもよい。
2.特定の例示的な実施形態
以下に特定の例示的な実施形態を説明する。この特定の例示的な実施形態は、単なる一例に過ぎず、本開示は、この実施形態に限定されず、あらゆる形態で実施され得る。
【0033】
2-1.第1実施形態
2-1-1.電動工具の構成
図1に示す本第1実施形態の電動工具1は、例えばインパクトドライバの形態である。インパクトドライバは、ねじ山が設けられた各種の締結具を回転させる。各種の締結具は、例えば、各種のねじ、ボルト、ナットなどを含む。各種のねじは、例えば、木ねじ、ドリルねじなどを含む。インパクトドライバは、締結具を回転させながら、その回転方向へ打撃力を付与することができる。本第1実施形態の電動工具1は、後述するバッテリ3a(
図3参照)の電力によって駆動される。
【0034】
図1に示すように、電動工具1は、本体2を備える。電動工具1は、バッテリパック3を備える。本第1実施形態のバッテリパック3は、本体2に離脱可能に装着される。バッテリパック3は、本体2に電力を供給する。
【0035】
本体2は、ハウジング4を備える。本体2は、グリップ5を備える。グリップ5は、ハウジング4の下端に設けられている。グリップ5は、本第1実施形態では、ハウジング4から下方へ延設されている。グリップ5は、電動工具1の使用者に把持される。
【0036】
本体2は、バッテリ装着部6を備える。バッテリ装着部6は、グリップ5の下端に設けられている。バッテリ装着部6は、バッテリパック3が離脱可能に装着される。
本体2は、チャックスリーブ7を備える。チャックスリーブ7は、ハウジング4の前端に設けられている。チャックスリーブ7は、各種の工具ビットが離脱可能に装着される。各種の工具ビットは、例えば、ドライバビットおよびソケットビットなどを含む。
図1は、ドライバビット7aを模式的に示している。チャックスリーブ7が回転すると、チャックスリーブ7に装着されている工具ビットが、チャックスリーブ7と共に(即ち一体的に)回転する。チャックスリーブ7は、後述するモータ21により回転される。
【0037】
本体2は、トリガ8を備える。トリガ8は、グリップ5における上部前方に設けられている。トリガ8は、使用者により手動操作される。具体的には、本第1実施形態のトリガ8は、使用者によって引かれる。換言すれば、トリガ8は、後方へ移動されて本体2の内部に押し込まれる。電動工具1は、トリガ8が引かれることにより作動する。
【0038】
本体2は、方向設定スイッチ10を備える。方向設定スイッチ10は、後述するモータ21の回転方向(ひいてはチャックスリーブ7の回転方向)を指定する。具体的には、方向設定スイッチ10は、チャックスリーブ7の回転方向を、第1方向または第2方向に択一的に指定する。
【0039】
方向設定スイッチ10は、ハウジング4とグリップ5との境界近傍に設けられている。本第1実施形態の方向設定スイッチ10は、使用者により右方向または左方向へ手動操作される。具体的には、方向設定スイッチ10は、使用者の手動操作により、第1の位置または第2の位置に移動される。
【0040】
方向設定スイッチ10が第1位置に移動されると、チャックスリーブ7の回転方向が第1方向に設定される。換言すれば、モータ21の回転方向が、チャックスリーブ7を第1方向へ回転させる方向(以下、「第1モータ回転方向」と称する)に設定される。即ち、方向設定スイッチ10が第1の位置に移動されて、トリガ8が引かれると、モータ21が第1モータ回転方向へ回転される。モータ21が第1モータ回転方向へ回転すると、チャックスリーブ7が第1方向へ回転する。第1方向は、第1モータ回転方向と一致していてもよいし、第1モータ回転方向とは逆であってもよい。本第1実施形態では、第1方向は第1モータ回転方向と一致する。第1方向は例えば時計回り(または右回り)であってもよい。
【0041】
第1方向は、締結具を被締結材に締め付ける方向に対応する。即ち、第1方向へ回転している工具ビットは、締結具を第1方向へ回転させる。締結具が第1方向へ回転されると、締結具は、被締結材へ締め付けられていく。
【0042】
被締結材はどのようなものであってもよい。被締結材は、例えば、木材、金属、コンクリート、石膏ボードなどを含む。ボルトとナットの組み合わせにおいては、ボルト及びナットが互いに締結材と被締結材とになり得る。例えば、ナットを工具ビットで回転させてボルトに締め付けていくケースにおいては、ナットが締結具に対応してボルトが被締結材に対応する。逆に、ボルトを工具ビットで回転させてナットに締め付けていくケースにおいては、ボルトが締結具に対応してナットが被締結材に対応する。
【0043】
方向設定スイッチ10が第2位置に移動されると、チャックスリーブ7の回転方向が第2方向に設定される。換言すれば、モータ21の回転方向が、チャックスリーブ7を第2方向へ回転させる方向(以下、「第2モータ回転方向」と称する)に設定される。即ち、方向設定スイッチ10が第2の位置に移動されて、トリガ8が引かれると、モータ21が第2モータ回転方向へ回転される。モータ21が第2モータ回転方向へ回転すると、チャックスリーブ7が第2方向へ回転する。第2方向は、第2モータ回転方向と一致していてもよいし、第2モータ回転方向とは逆であってもよい。本第1実施形態では、第2方向は第2モータ回転方向と一致する。第2方向は例えば反時計回り(または左回り)であってもよい。
【0044】
第2方向は、締結具を被締結材から緩める(または開放する、または外す)方向に対応する。即ち、第2方向へ回転している工具ビットは、締結具を第2方向へ回転させる。締結具が第2方向へ回転されると、締結具は、被締結材から緩められていく。
【0045】
なお、以下の説明では、第2方向へのチャックスリーブ7の回転、及び第2モータ回転方向へのモータ21の回転を、「逆転」と称する。つまり、モータ21が逆転する、とは、モータ21が第2モータ回転方向へ回転することを意味し、チャックスリーブ7あるいは工具ビット7aが逆転する、とは、チャックスリーブ7あるいは工具ビット7aが第2方向へ回転することを意味する。
【0046】
方向設定スイッチ10は、さらに第3の位置に移動可能であってもよい。第3の位置は、例えば第1の位置と第2の位置の中間であってもよい。方向設定スイッチ10が第3の位置に移動された場合、例えばモータ21の回転が禁止されてもよい。具体的には、トリガ8が引かれてもモータ21が回転されないように構成されてもよいし、トリガ8の引き操作自体が機械的に規制されもよい。
【0047】
本体2は、操作パネル11を備える。本第1実施形態では、操作パネル11はバッテリ装着部6に設けられている。操作パネル11は、例えば、1以上のボタン及び/または1以上の表示デバイスを備える。本第1実施形態では、操作パネル11は、
図2に例示するように、第1設定スイッチ12と、第2設定スイッチ13と、表示部14とを備える。
【0048】
第1設定スイッチ12及び第2設定スイッチ13は、使用者により手動操作(例えば押下)される。第1設定スイッチ12または第2設定スイッチ13が手動操作されることに応じて、電動工具1の動作モードが切り替わる。
【0049】
具体的には、第1設定スイッチ12が手動操作されることに応じて、電動工具1の動作モードが2以上の速度モードのうちの1つに択一的に設定される。本第1実施形態では、例えば、低速モード、中速モード及び高速モードのうちの1つに設定される。各速度モードは、モータ21の最大回転速度を規定する。換言すれば、各速度モードは、単位時間(例えば1分)あたりの最大打撃回数を規定する。低速モードにおける最大回転速度(または最大打撃回数)が最も低く、高速モードにおける最大回転速度が最も高い。
図2における「1」,「2」,「3」の表示のそれぞれは動作モードを示している。
【0050】
第2設定スイッチ13が手動操作されることに応じて、電動工具1の動作モードが、2以上の作業モードのうちの1つに択一的に設定される。本第1実施形態では、2以上の作業モードは、例えば、木材モード及びボルトモードを含む。各作業モードは、モータ21の最大回転速度及び/または打撃開始後の動作を規定する。木材モードは、木材に対する締結具の締め付け又は緩め作業を好適に行えるように、最大回転速度及び/または打撃開始後の動作が設定されている。ボルトモードは、ボルトまたはナットの締め付け又は緩め作業、及び/または金属製の被締結材への締結具の締め付け及び緩め作業を好適に行えるように、最大回転速度、打撃開始後の動作、及び/または打撃終了後の動作、が設定されている。ボルトモードにおいては、モータ21の正転時と逆転時とで設定内容の少なくとも一部が異なっていてもよい。例えば、正転時には打撃開始後の動作が設定され、逆転時には打撃終了後の動作が設定されてもよい。
図2における「A」,「B」,「C」の表示のそれぞれは作業モードを示している。
【0051】
表示部14は、現在設定されている動作モードを示す情報が表示される。本第1実施形態の表示部14は、複数のLEDを備える。複数のLEDのそれぞれは、設定されている動作モードに応じた態様で点灯または消灯する。なお、表示部14は、複数のLEDとは異なる形態であってもよい。
【0052】
電動工具1は、モータ21を備える。モータ21は、ハウジング4に収容されている。モータ21は、シャフト21aを備える。モータ21が回転する、とは、詳しくは、シャフト21aが回転することを意味する。
【0053】
電動工具1は、駆動機構22を備える。駆動機構22は、ハウジング4に収容されている。駆動機構22は、モータ21の前方且つチャックスリーブ7の後方に配置されている。駆動機構22は、モータ21の回転(即ちシャフト21aの回転)をチャックスリーブ7に伝達する。モータ21が回転すると駆動機構22によってチャックスリーブ7が回転する。
【0054】
駆動機構22は、打撃機構23を備える。打撃機構23は、スピンドル24を備える。スピンドル24は、回転可能に支持されている。駆動機構22は、遊星歯車機構26を備える。モータ21のシャフト21aは、遊星歯車機構26に連結されている。遊星歯車機構26は、モータ21の回転をスピンドル24に伝達する。よって、モータ21が回転するとスピンドル24が回転する。
【0055】
打撃機構23は、ハンマ28と、アンビル29と、コイルバネ30とを備えている。ハンマ28は、スピンドル24に連結されている。ハンマ28は、スピンドル24と一体に回転可能である。ハンマ28は、さらに、スピンドル24の回転軸に沿って(即ち前後方向へ)移動可能である。ハンマ28は、コイルバネ30により前方へ付勢されている。アンビル29は、ハンマ28から回転力及び/または打撃力を受けて回転する。アンビル29の前端部には、チャックスリーブ7が取り付けられる。
【0056】
本第1実施形態では、モータ21の回転軸、スピンドル24の回転軸、ハンマ28の回転軸、アンビル29の回転軸及びチャックスリーブ7の回転軸は、互いに一致している。
ハンマ28は、例えば第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bを備えている。第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bは、アンビル29に回転力及び/または打撃力を与える。第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bは、ハンマ28の回転方向に沿って互いに例えば180°の間隔を隔てて設けられている。第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bは、ハンマ28の前端面から前方へ突出するように設けられている。
【0057】
アンビル29の後端は、第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bが設けられている。第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bは、ハンマ28の回転向に沿って互いに例えば180°の間隔を隔てて設けられている。
【0058】
ハンマ28が、コイルバネ30によって前方へ付勢されると、第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bがそれぞれ、その回転方向において、第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bに接触し得る状態となる。第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bのそれぞれにおける、第1打撃アーム29aまたは第2打撃アーム29bと接触する面は、例えば、ハンマ28の回転方向に垂直または略垂直であってもよい。第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bのそれぞれにおける、第1打撃突部28aまたは第2打撃突部28bと接触する面は、例えば、アンビル29の回転方向に垂直または略垂直であってもよい。
【0059】
モータ21によりスピンドル24が回転されると、ハンマ28が、スピンドル24と一体的に回転する。第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bが第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bにそれぞれ回転方向において接触している状態で、ハンマ28が回転すると、ハンマ28の回転力は、第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bから、第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bを介して、アンビル29へ伝達される。これによりアンビル29が回転する。アンビル29が回転すると、チャックスリーブ7がアンビル29と一体的に回転する。これにより、チャックスリーブ7に装着されている工具ビットが回転する。
【0060】
モータ21の回転中、ハンマ28は、締結具からチャックスリーブ7及びアンビル29を介して、ハンマ28の回転方向とは逆方向のトルク(以下、「負荷トルク」と称する)を受け得る。ハンマ28は、回転中に所定の大きさ以上の負荷トルクを受けると、アンビル29へ回転力を与えつつ、コイルバネ30の付勢力に抗して後方へ変位していく。具体的には、第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bが、第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bのそれぞれに接触しながら後方へ変位する。ハンマ28の後方への変位が進むと、第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bが、接触している第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bをそれぞれ回転方向に乗り越える。つまり、第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bが、接触している第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bからそれぞれ回転方向へ離れる。これにより、ハンマ28は、空転し、且つ、コイルバネ30の付勢力によって前方へ変位する。その結果、第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bが、第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bに衝突する。つまり、第1打撃突部28a及び第2打撃突部28bが、第1打撃アーム29a及び第2打撃アーム29bを、回転方向へ打撃する。
【0061】
このような打撃は、ハンマ28が所定の大きさ以上の負荷トルクを受けている間に繰り返し行われる。つまり、ハンマ28が所定の大きさ以上の負荷トルクを受けている間、アンビル29は、ハンマ28から間欠的に打撃を受ける。
【0062】
モータ21が第1方向へ回転しているときに打撃が発生すると、締結具が被締結材に高トルクで締め付けられる。モータ21が逆転しているときに打撃が発生すると、被締結材に締め付けられている締結具が、高トルクで緩められる。
【0063】
本体2は、コントローラ16を備える。コントローラ16は、モータ21の駆動を含む、電動工具1の各種機能を制御する。コントローラ16の詳細構成は
図3及び
図4を用いて後述する。
【0064】
本体2は、スイッチボックス15を備える。スイッチボックス15は、トリガ8に連結されている。スイッチボックス15は、後述するように、トリガ8の状態(具体的には移動長)に応じた各種信号をコントローラ16へ出力する。
【0065】
2-1-2.電動工具の電気的構成
電動工具1の電気的構成について、
図3を参照して補足的に説明する。
図3は、バッテリパック3が本体2に装着された状態の電動工具1を示している。
【0066】
バッテリパック3は、バッテリ3aを備える。バッテリ3aは、例えば2次電池であってもよい。バッテリ3aは、例えば、リチウムイオン電池であってもよい。バッテリ3aは、リチウムイオン電池とは異なる2次電池であってもよい。
【0067】
電動工具1は、前述のモータ21、コントローラ16、スイッチボックス15、方向設定スイッチ10及び操作パネル11を備える。
バッテリパック3が本体2に装着されると、コントローラ16がバッテリ3aと電気的に接続される。これによりバッテリ3aの電力(以下、「バッテリ電力」と称する)がコントローラ16に供給される。
【0068】
モータ21は、本第1実施形態では例えばブラシレスDCモータの形態である。モータ21は、永久磁石型のロータ(不図示)を備える。前述のシャフト21aは、ロータに固定されており、ロータと共に回転する。
【0069】
モータ21は、バッテリ電力を受けて駆動される。モータ21は、バッテリ電力を、バッテリ3aから、後述する駆動回路32を介して受ける。駆動回路32は、バッテリ電力を三相電力に変換する。モータ21はその三相電力を受ける。本第1実施形態のモータ21は、3つの巻線を備えている。三相電力は、3つの巻線に供給される。3つの巻線に三相電力が供給されることにより、モータ21が回転する。なお、
図3は、3つの巻線が互いにデルタ結線されている例を示している。ただし、3つの巻線はデルタ結線とは異なる方法で結線されていてもよい。
【0070】
電動工具1は、回転センサ36を備える。回転センサ36は、回転位置情報を出力する。回転位置情報は、モータ21が回転しているか否かを示していてもよい。回転位置情報は、モータ21の回転位置および/または回転速度に応じて変化してもよい。回転位置情報は、モータ21の回転位置、詳しくはロータ19の回転位置を示していてもよい。本実施形態の回転位置情報は、第1位置信号Hu、第2位置信号Hv及び第3位置信号Hwを含む。回転位置情報は、制御回路31に入力される。
【0071】
本第1実施形態の回転センサ36は、3つのホールセンサ(不図示)を備えている。3つのホールセンサは、モータ21のロータの近傍において、シャフト21aの回転方向に沿って互いに電気角120度に相当する角度を隔てて配置されている。第1~第3位置信号Hu、Hv、Hwは、3つのホールセンサからそれぞれ出力される。
【0072】
本第1実施形態の回転センサ36は、コントローラ16から電力を受けて作動する。具体的には、回転センサ36は、コントローラ16から電源電圧Vccを受ける。この電源電圧Vccを受けるために、回転センサ36は、コントローラ16における後述する制御電源ライン及びグランドラインに接続されている。
【0073】
スイッチボックス15は、トリガスイッチ15aと、抵抗器15bと、可変抵抗器15cとを備える。トリガスイッチ15a及び可変抵抗器15cは、トリガ8の移動に連動する。
【0074】
具体的には、トリガ8が引かれると、トリガスイッチ15aがオンする。トリガ8が引かれていないときはトリガスイッチ15aはオフする。トリガスイッチ15aは、トリガ8が引かれているか否かを検出するために設けられている。トリガスイッチ15aの第1端及び第2端はコントローラ16に接続されている。
【0075】
抵抗器15bと可変抵抗器15cは直列接続されている。抵抗器15bの第1端はコントローラ16に接続され、抵抗器15bの第2端は可変抵抗器15cの第1端に接続されている。可変抵抗器15cの第2端および可動接点はコントローラ16に接続されている。可動接点は、可変抵抗器15cの抵抗体上を摺動される。可動接点の位置は、トリガ8の移動長に応じて変化する。可変抵抗器15cは、トリガ8の移動量を検出するために設けられている。
【0076】
コントローラ16は、制御回路31と、駆動回路32とを備える。制御回路31は、モータ21の回転を制御する。
駆動回路32は、バッテリ3aからバッテリ電力を受ける。具体的には、駆動回路32は、バッテリ3aの正極に接続されている。駆動回路32はさらに、コントローラ16内のグラインドラインに接続されている。グランドラインは、バッテリ3aの負極に接続されている。
【0077】
駆動回路32は、モータ21に接続されている。駆動回路32は、前述の通り、バッテリ電力を三相電力に変換してモータ21へ供給する。本第1実施形態の駆動回路32は、三相フルブリッジ回路の形態である。三相フルブリッジ回路は、6個のスイッチを備える。各スイッチはどのような形態であってもよい。本第1実施形態では、各スイッチは、例えばnチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
【0078】
コントローラ16は、電流検出回路33を備える。電流検出回路33は、バッテリ3aからモータ21へ供給される電流の値(以下、「モータ電流値」と称する)を検出するために設けられている。電流検出回路33は、電力経路上に設けられている。電力経路は、バッテリ3aの正極から駆動回路32及びモータ21を経てバッテリ3aの負極に至る。本第1実施形態では、電流検出回路33は、より具体的には、電力経路のうちの、駆動回路32とグランドラインとの間の負極側経路に設けられ、この負極側経路に流れている電流の大きさに応じた電流検出信号Siを出力する。より具体的には、本第1実施形態の電流検出回路33は、負極側経路上の抵抗器を備え、その抵抗器の両端間の電圧の大きさに応じた(即ち負極側経路に流れている電流の大きさに応じた)電流検出信号Siを出力する。電流検出信号Siは、制御回路31に入力される。
【0079】
コントローラ16は、電源回路34を備える。電源回路34は、バッテリ3aからバッテリ電力を受ける。電源回路34は、バッテリ電力から電源電力を生成して制御電源ラインに出力する。電源電力は前述の制御電圧Vccを有する。制御電圧Vccは例えば一定の電圧値を有する。電源電力は、制御電源ラインを通じて、制御回路31を含む、コントローラ16内の各部へ供給される。制御回路31はその電源電力によって動作する。
【0080】
電源電力は、スイッチボックス15にも供給される。具体的には、電源電圧Vccは、抵抗器15dを介して、トリガスイッチ15aの第1端に印加される。トリガスイッチ15aの第2端はグランドラインに接続されている。電源電圧Vccは、さらに、抵抗器15bの第1端に印加される。可変抵抗器15cの第2端はグランドラインに接続されている。
【0081】
トリガスイッチ15aの第1端は、制御回路31に接続されている。トリガスイッチ15aの第1端の電圧は、第1トリガ信号Swaとして、制御回路31に入力される。第1トリガ信号Swaは、トリガスイッチ15aがオンされているか否か、換言すればトリガ8が引かれているか否かを示す。
【0082】
可変抵抗器15cの可動接点は、制御回路31に接続されている。可動接点の電圧は、第2トリガ信号Swbとして、制御回路31に入力される。第2トリガ信号Swbは、トリガ8の移動量(即ち引き量、または位置)を示す。
【0083】
本第1実施形態の制御回路31は、CPU31a及びメモリ31bを備えた、マイクロコンピュータまたはマイクロコントロールユニット(MCU)の形態である。メモリ31bは、例えばROM、RAM、NVRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリを有していてもよい。
【0084】
制御回路31は、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。本実施形態では、メモリ31bが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。本実施形態では、メモリ31bは、後述する逆転制御処理(
図7参照)のプログラムを格納している。
【0085】
制御回路31により実現される各種機能の一部または全部は、プログラムの実行によって(即ち、ソフトウェア処理によって)達成されてもよいし、一つあるいは複数のハードウェアによって達成されてもよい。例えば、制御回路31は、マイクロコンピュータに代えて、またはマイクロコンピュータに加えて、複数の電子部品を含むロジック回路を備えていてもよい。制御回路31は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)及び/または特定用途向け標準製品(ASSP)などを備えていてもよい。制御回路31は、任意の論理回路を構築可能なプログラマブルロジックデバイス、例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を備えていてもよい。あるいは、制御回路31は、ハードワイヤード回路の形態であってもよい。
【0086】
制御回路31は、回転位置情報(即ち第1~第3位置信号Hu,Hv,Hw)、電流検出信号Si、第1トリガ信号Swa及び第2トリガ信号swbを受ける。制御回路31は、さらに、方向設定スイッチ10から方向設定信号Sdを受ける。方向設定信号Sdは、方向設定スイッチ10の位置を示す。制御回路31は、さらに、操作パネル11からモード設定信号Smを受ける。モード設定信号Smは、操作パネル11に対する使用者の手動操作、即ち第1設定スイッチ12及び第2設定スイッチ13に対する使用者の手動操作を示す。第1設定スイッチ12が手動操作されると、操作パネル11は、第1設定スイッチ12が手動操作されたことを示すモード設定信号Smを出力する。第2設定スイッチ13が手動操作されると、操作パネル11は、第2設定スイッチ13が手動操作されたことを示すモード設定信号Smを出力する。
【0087】
制御回路31は、回転位置情報に基づいて、モータ21の回転位置(即ちロータの回転位置)及び回転速度を検出する。制御回路31は、電流検出信号Siに基づいて、モータ電流値を検出する。制御回路31は、第1トリガ信号Swaに基づいて、トリガ8が引かれているか否かを検出する。制御回路31は、第2トリガ信号Swbに基づいて、トリガ8の引き量を検出する。
【0088】
制御回路31は、方向設定信号Sdに基づいて、第1モータ方向及び第2モータ方向のどちらが指定されているかを検出する。制御回路31は、モータ21の回転方向を、その検出した方向に設定する。
【0089】
制御回路31は、モード設定信号Smに基づいて、第1設定スイッチ12または第2設定スイッチ13が手動操作されたことを検出する。制御回路31は、第1設定スイッチ12または第2設定スイッチ13の手動操作が検出される度に、電動工具1の動作モードを切り替える。具体的には、第1設定スイッチ12が手動操作される度に、動作モードを、前述の2以上の速度モードのうちの1つに順次切り替える。また、第2設定スイッチ13が手動操作される度に、動作モードを、前述の2以上の作業モードのうちの1つに順次切り替える。
【0090】
制御回路31は、駆動回路32へ駆動指令を出力して、駆動回路32からモータ21へ三相電力を供給させる。駆動指令は、駆動回路32における6つのスイッチそれぞれに対する6つの駆動信号を含む。制御回路31は、例えば、6つのスイッチのうち1つをオン保持スイッチに設定し、別の1つをPWMスイッチに設定する。バッテリ3aの正極とモータ21との間の3つのスイッチのうちの1つがオン保持スイッチに設定される場合は、バッテリ3aの負極とモータ21との間の3つのスイッチのうちの1つがPWMスイッチに設定される。ただし、PWMスイッチは、オン保持スイッチに直列接続されていないスイッチに設定される。
【0091】
オン保持スイッチは、オン状態に保持される。即ち、制御回路31は、オン保持スイッチに対し、当該オン保持スイッチをオン状態に保持させるための駆動指令を出力する。一方、PWMスイッチは、PWM駆動される。PWM駆動とは、当該PWM駆動の対象のスイッチをパルス幅変調信号に従って周期的にオン及びオフすることを意味する。パルス幅変調信号のデューティ比(以下、「出力デューティ比」と称する)は、後述する指令回転速度に応じて決定される。したがって、PWMスイッチへ出力される駆動信号は、当該出力デューティ比を有するパルス幅変調信号の形態である。
【0092】
2-1-3.モータ制御
制御回路31は、トリガ8が引かれると、モータ21を、方向設定スイッチ10により設定されている回転方向へ回転させる。本第1実施形態では、制御回路31は、例えば速度フィードバック制御を行う。
【0093】
具体的には、制御回路31は、第2トリガ信号Swbに応じて、目標回転速度を決定する。制御回路31は、その目標回転速度に応じて、指令回転速度を算出する。目標回転速度は、モータ21の、最終的に到達させるべき回転速度を示す。指令回転速度は、駆動回路32を介して実際にモータ21へ指令する回転速度を示す。
【0094】
指令回転速度は、目標回転速度と同じであってもよいし、目標回転速度とは異なっていてもよい。例えば、モータ21の駆動状況に応じて、あるいは動作モードに応じて、あるいはトリガ8の引き量に応じて、指令回転速度を、目標回転速度に一致させる或いは目標回転速度よりも低い回転速度に設定してもよい。本第1実施形態の電動工具1は、いわゆるソフトスタート機能を搭載している。即ち、モータ21の起動時、指令回転速度は、トリガ8の引き量に応じた目標回転速度にすぐには設定されず、目標回転速度に向けて時間経過に従って徐々に上昇していく。
【0095】
制御回路31は、モータ21が指令回転速度で回転するように駆動回路32を制御(ひいてはモータ21への三相電力を制御)する。具体的には、制御回路31は、回転位置情報に基づいて検出された回転速度(以下、「検出回転速度」と称する)と指令回転速度とを比較する。そして、制御回路31は、モータ21の実回転速度が指令回転速度に一致するように、駆動回路32を制御する。例えば、制御回路31は、検出回転速度が指令回転速度よりも低いほど出力デューティ比が大きくなるように、出力デューティ比を算出する。
【0096】
制御回路31は、出力デューティ比を、所定の制御周期で周期的に繰り返し算出する。制御回路31は、制御周期毎に、出力デューティ比を算出してその出力デューティ比に基づいてPWMスイッチを駆動する。
【0097】
制御回路31は、モータ21を逆転させているときは、緩み判定要件が満たされたか否か判断する。緩み判定要件は、締結具が被締結材から緩められたことを判定するために要求される要件である。そして、緩み判定要件が満たされている場合は、モータ21を減速または停止させる。
【0098】
上記のようなモータ21の制御について、
図4を参照してより具体的に説明する。制御回路31によるモータ21の制御は、本第1実施形態では、CPU31aがコンピュータプログラムを実行することによって、つまりソフトウェア処理によって、実現される。コンピュータプログラムは、モータ制御処理のプログラムを含む。モータ制御処理は、モータ21の回転を制御する。モータ制御処理のプログラムは、
図7の逆転制御処理のプログラムを含む。逆転制御処理は、モータ21の逆転を制御する。制御回路31(詳しくはCPU31a)は、モータ制御処理のプログラムを実行することにより、
図4に示すように機能する。
【0099】
図4に示すように、制御回路31は、トリガ検出部41を備える。トリガ検出部41は、スイッチボックス15から、第1トリガ信号Swa及び第2トリガ信号Swbを受ける。トリガ検出部41は、第1トリガ信号Swaに基づいて、トリガ8が引かれているか否かを検出する。トリガ検出部41は、第2トリガ信号Swbに基づいて、トリガ8の引き量を検出する。
【0100】
制御回路31は、モード設定部42を備える。モード設定部42は、操作パネル11からモード設定信号Smを受ける。モード設定部42は、モード設定信号Smに基づいて、電動工具1の動作モードを、前述の2以上の速度モード及び前述の2以上の作業モードのうちの1つに設定する。
【0101】
制御回路31は、目標回転速度算出部43を備える。目標回転速度算出部43は、目標回転速度を算出する。目標回転速度算出部43は、トリガ検出部41から、トリガ8が引かれているか否かを示す情報、及びトリガ8の引き量を取得する。目標回転速度算出部43は、モード設定部42から、モード設定部42にて設定されている動作モードを取得する。目標回転速度算出部43は、例えばトリガ8が引かれている間、設定されている動作モード及びトリガ8の引き量に応じて、目標回転速度を算出する。例えば、トリガ8が所定の引き量が大きくなるに従って目標回転速度が増加していくように目標回転速度が算出されてもよい。目標回転速度の最大値は、動作モードに応じて異なっていてもよい。
【0102】
制御回路31は、指令回転速度算出部44を備える。指令回転速度算出部44は、目標回転速度算出部43から、算出されている目標回転速度を取得する。指令回転速度算出部44は、取得された目標回転速度に基づいて、指令回転速度を算出する。
【0103】
制御回路31は、回転速度算出部45を備える。回転速度算出部45は、回転センサ36から回転位置情報を受ける。回転速度算出部45は、回転位置情報に基づいてモータ21の回転速度を検出(即ち算出)する。
【0104】
制御回路31は、回転制御部46を備える。回転制御部46は、駆動指令を生成して駆動回路32へ出力する。回転制御部46は、出力デューティ比算出部47と、PWM生成部48とを備える。
【0105】
出力デューティ比算出部47は、指令回転速度算出部44から、算出されている指令回転速度を取得する。出力デューティ比算出部47はさらに、回転速度算出部45から、算出されている検出回転速度を取得する。出力デューティ比算出部47は、取得された指令回転速度及び検出回転速度に基づいて、前述の速度フィードバック制御を用いて、出力デューティ比を算出する。
【0106】
PWM生成部48は、出力デューティ比算出部47で算出された出力デューティ比を取得する。PWM生成部48は、さらに、回転位置情報を取得する。PWM生成部48はさらに、方向設定スイッチ10から方向設定信号Sdを受ける。PWM生成部48は、出力デューティ比、回転位置情報及び方向設定信号Sdに基づいて、駆動指令を生成し、駆動回路32へ出力する。具体的に、PWM生成部48は、回転位置情報に基づいて、モータ21の回転位置(詳しくはロータの回転角度)を検出する。そして、その検出した回転位置に基づき、方向設定信号Sdが示す回転方向へモータ21が回転するように、駆動指令を生成する。このときに生成される駆動指令は、例えば、オン保持スイッチへの駆動信号と、PWMスイッチへの駆動信号とが含まれ得る。PWMスイッチへの駆動信号のデューティ比は、出力デューティ比算出部47で算出された出力デューティ比に設定される。
【0107】
制御回路31は、電流検出部49を備える。電流検出部49は、電流検出信号Siを受ける。電流検出部49は、電流検出信号Siに基づいてモータ電流値を検出する。
制御回路31は、打撃検出部50を備える。打撃検出部50は、打撃機構23において打撃が行われたか否かを検出する。打撃検出部50は、電流検出部49からモータ電流値を取得する。打撃検出部50は、回転速度算出部45から検出回転速度を取得する。
【0108】
打撃検出部50は、どのような方法で打撃を検出してもよい。打撃検出部50は、例えば、検出回転速度に基づいて打撃を検出してもよい。前述の通り、ハンマ28が所定の大きさ以上のトルクを受けている間、打撃が間欠的に発生する。そのため、打撃が発生している間は、打撃の発生間隔に従って検出回転速度が変動する。具体的には、検出回転速度が、極大値と極小値を交互にとるようになる。打撃が発生する直前、即ちハンマ28がアンビル29に衝突する直前に、回転速度が最大になり、このとき、検出回転速度が極大値をとる。一方、ハンマ28がアンビル29を乗り越える際に、回転速度が最も遅くなり、このとき、検出回転速度が極小値をとる。そこで、打撃検出部50は、検出回転速度の極大値及び極小値を検出する。そして、極大値又は極小値が検出される毎に、極値差を算出する。極値差は、検出された極大値または極小値と、その直前に検出された極大値または極小値との差の絶対値である。極大値が検出された場合における極値差は、その極大値と、直前に検出された極小値との差の絶対値である。極小値が検出された場合における極値差は、その極小値と、直前に検出された極大値との差の絶対値である。打撃検出部50は、極値差が所定の閾値以上である場合に、打撃が行われたと判定してもよい。打撃検出部50は、所定時間以内の間隔で打撃の発生が検出されている間は、打撃が行われていると判定してもよい。打撃検出部50は、打撃が検出されない状態(所定の閾値以上の極値差が検出されない状態)が所定時間以上継続した場合、打撃が行われていない非打撃状態である判定してもよい。
【0109】
また例えば、打撃検出部50は、モータ電流値に基づいて打撃を検出してもよい。打撃が発生している間は、モータ電流値も、回転速度と同様に変動し、極大値及び極小値をとり得る。そのため、打撃検出部50は、モータ電流値に基づき、上述の検出回転速度に基づく方法と同じ要領で、打撃を検出してもよい。
【0110】
制御回路31は、閾時間算出部51を備える。閾時間算出部51は、モータ21が逆転される際に、閾時間を算出する。閾時間は、締結具の緩みを判定するための判定基準の1つである。
【0111】
後述するように、締結具が緩まれたと判定されるためには、駆動時間が閾時間に達したことが要求される。駆動時間は、モータ21が逆転し続けている時間である。駆動時間の起点はどのように決められてもよい。駆動時間の起点は、例えば、緩め条件(換言すれば逆転の駆動条件)が成立した時であってもよいし、逆転させるための駆動指令を駆動回路32へ出力した時であってもよいし、モータ21が逆転を開始したことが回転位置情報から実際に検出された時であってもよい。本第1実施形態では、例えば、緩め条件が成立したことに応じて、駆動時間の計測が開始される。緩め条件は、例えば、方向設定信号Sdが逆転を示していて、且つ、トリガ8が引かれたことを第1トリガ信号Swaに基づいて検出したことに応じて、成立してもよい。
【0112】
閾時間算出部51は、指令回転速度算出部44で算出されている指令回転速度に基づいて閾時間を算出する。具体的には、本第1実施形態では、指令回転速度が高くなるに従って閾時間が短くなるように、閾時間が設定される。閾時間は、指令回転速度に応じて連続的に変化してもよいし段階的に変化してもよい。
【0113】
図5は、閾時間の一例を示している。
図5は、時刻t0でトリガ8が引かれ、時刻t1でトリガ8がさらに引かれた例を示している。この例では、時刻t1を境に、指令回転速度が上昇する。時刻t0~t1の、指令回転速度が低い間は、閾時間TthがTth1に設定される。時刻t1以降の、指令回転速度が高い間は、閾時間Tthが、Tth1よりも短いTth2に設定される。
【0114】
本第1実施形態では、指令回転速度算出部44は、指令回転速度を周期的に繰り返し算出する。閾時間算出部51は、指令回転速度が算出される度に、その算出された指令回転速度に基づいて閾時間を算出する。
【0115】
制御回路31は、演算部52を備える。演算部52は、積算値を算出する。積算値は、締結具の緩みを判定するための判定基準の1つである。演算部52は、モータ21が逆転されている間、積算値を定期的に繰り返し算出する。本第1実施形態では、演算部52は、逆転時における制御周期で繰り返し積算値を算出する。逆転時における制御周期は、逆転時に指令回転速度が算出される周期に対応する。つまり、積算値は、指令回転速度が算出される度に、その指令回転速度に基づいて算出される。或いは、積算値は、指令回転速度が算出される度に、その指令回転速度に基づいて算出された閾時間に基づいて、算出されてもよい。逆転時における制御周期は、後述する
図7の逆転制御処理においてS140~190の処理が繰り返される場合におけるその繰り返しの周期に対応する。
【0116】
積算値は、当該積算値の算出タイミング毎に(即ち前述の制御周期で繰り返し)、カウント値を積算することにより、算出される。換言すれば、積算値は、当該積算値の算出タイミング毎に、カウント値を累積的に加算することによって、算出される。
【0117】
演算部52は、より具体的には、カウント値決定部53と、積算部54とを備える。カウント値決定部53は、前述のカウント値を決定する。積算部54は、カウント値決定部53で決定されたカウント値を積算(即ち累積的に加算)する。
【0118】
カウント値決定部53は、モータ21の回転速度に応じてカウント値を算出する。つまり、カウント値は、モータ21の回転速度が反映された値である。カウント値は、モータ21の回転速度がどのように反映されてもよい。本第1実施形態では、カウント値は、指令回転速度算出部44で指令回転速度が算出される度に、その算出された指令回転速度に基づいて、カウント値が決定される。具体的には、カウント値決定部53は、指令回転速度が低くなるに従ってカウント値が小さくなるように、カウント値を決定する。カウント値決定部53は、カウント値を、指令回転速度に応じて連続的に変化させてもよいし段階的に変化させてもよい。
【0119】
なお、閾時間算出部51で算出される閾時間は、指令回転速度に応じて算出される。そのため、カウント値決定部53は、閾時間に基づいてカウント値を決定してもよい。具体的には、カウント値決定部53は、閾時間が長くなるに従って(換言すれば指令回転速度が低くなるに従って)カウント値が小さくなるように、カウント値を決定してもよい。より具体的には、閾時間に反比例するようにカウント値が決定されてもよい。或いは、閾時間に反比例する成分をカウント値が含むように、カウント値が決定されてもよい。
【0120】
積算部54は、カウント値決定部53でカウント値が決定される度に(つまり指令回転速度が算出される度に、換言すれば前述の制御周期で繰り返し)、その決定されたカウント値を積算して、積算値を算出する。
【0121】
そのため、積算値は、時間経過に従って増加していく。ただし、積算値の増加率は、カウント値に応じて変化する。即ち、カウント値が小さいほど積算値の増加率は小さくなる。逆に、カウント値が大きいほど積算値の増加率は大きくなる。前述の通り、カウント値は、指令回転速度または閾時間に基づいて算出される。そのため、指令回転速度が高いほど、積算値の増加率は大きくなる。逆に、指令回転速度が低いほど、積算値の増加率は小さくなる。
【0122】
制御回路31は、計時部55を備える。計時部55は、逆転時の駆動時間を計測する。計時部55は、緩め条件が成立した場合に駆動時間の計測を開始する。より具体的には、計時部55は、方向設定信号Sdが逆転を示していて、且つトリガ検出部41でトリガ8が引かれたことが検出された場合に、駆動時間の計測を開始する。
【0123】
制御回路31は、緩み判定部56を備える。緩み判定部56は、モータ21が逆転されている場合に、緩み判定要件が満たされたか否か、即ち締結具が被締結材から緩められた状態(以下、「緩め完了状態」と称する)か否かを判断する。
【0124】
本第1実施形態では、緩み判定部56は、下記の第1要件~第3要件のそれぞれについて、満たされているか否か判断する。そして、第1要件と第2要件が共に満たされているか、または、第1要件と第3要件が共に満たされている場合に、緩み判定要件が満たされている、即ち締結具が緩め完了状態であると判断する。
【0125】
(1)第1要件:打撃が発生していない非打撃状態であること
(2)第2要件:駆動時間が閾時間に達し、且つ積算値が積算閾値に達していること
(3)第3要件:検出回転速度が速度閾値以上であること
第1要件は、詳しくは、打撃検出部50によって打撃が検出されていない期間が所定時間以上継続している場合に満たされる。つまり、直近に打撃が検出された後、所定時間以上継続して打撃が検出されていない状態が、非打撃状態に対応する。モータ21の駆動開始から初めて打撃が検出されるまでの間も、非打撃状態に含まれ、第1要件を満たす。
【0126】
第2要件は、詳しくは、計時部55により計測されている駆動時間が、閾時間算出部51で算出されている閾時間に達し、且つ演算部52により算出されている積算値が積算閾値に達したこと、に応じて満たされる。積算閾値はどのように決定されてもよい。積算閾値は、予め一定の値に設定されていてもよい。
【0127】
第3要件は、詳しくは、回転速度算出部45で算出されている検出回転速度が速度閾値以上である場合に満たされる。
緩み判定部56は、緩み判定要件が満たされた場合、緩み通知を出力する。緩み通知は、緩み判定要件が満たされたこと、即ち締結具が緩め完了状態になったことを示す。
【0128】
制御回路31は、停止/減速指令部57を備える。停止/減速指令部57は、緩み判定部56から緩み通知を受けると、停止/減速指令を回転制御部46へ出力する。停止/減速指令は、モータ21を減速または停止するように回転制御部46に指令する。
【0129】
回転制御部46は、モータ21が逆転されている間に停止/減速指令を受けると、指令回転速度にかかわらず、モータ21を減速または停止させる。具体的には、例えば、出力デューティ比算出部47が、出力デューティ比を、現在算出されている値(即ち指令回転速度に基づく値)よりも低減させるかまたはゼロに設定する。この場合、出力デューティ比算出部47は、現在算出されている出力デューティ比に基づいて、出力デューティ比の低減量を決めてもよいし、現在算出されている出力デューティ比とは無関係に出力デューティ比を予め決められた値に変更してもよい。また例えば、出力デューティ比算出部47により算出されている出力デューティ比にかかわらず、PWM生成部48が、モータ21を停止させるための駆動指令を駆動回路32へ出力してもよい。
【0130】
2-1-4.逆転時の動作例
図5及び
図6を参照して、モータ21を逆転させて締結具を被締結材から緩める作業が行われた場合の、電動工具1の動作例を、説明する。なお、
図5及び
図6では、説明の簡素化のため、第3要件は考慮せず、第1要件及び第2要件が満たされた場合に緩み判定要件が満たされるものとして説明する。
【0131】
図5は、前述の通り、時刻t0で逆転が開始された後、時刻t1でトリガ8の引き量が増えて指令回転速度が上昇した例を示している。この例では、時刻t1まで、モータ21が低速で回転する。そのため、締結具も比較的ゆっくりと緩んでいく。よって、時刻t1ではまだ締結具は緩んでいない。また、時刻t1までは、指令回転速度が低いため、閾時間Tthは、大きめのTth1が算出される。そのため、経過時間は閾時間Tth1にまだ到達していない。
【0132】
時刻t1で指令回転速度が上昇すると、これに応じて、閾時間Tthが、Tth1よりも短いTth2に変化する。これにより、駆動時間は閾時間Tth2を超える。つまり、第2要件の一部のみ満たされる。
【0133】
時刻t1までは低速で回転されていたため、時刻t1では締結具はまだ十分に緩められていない。そのため、仮に時刻t1でモータ21が停止されると、使用者に、締結具をさらに緩めるための不要の負担を強いる可能性がある。
【0134】
しかし、本第1実施形態では、駆動時間が閾時間Tthに達しただけでは第2要件は満たされない。第2要件が満たされるためには、さらに、積算値が積算閾値に達する必要がある。
図5では、時刻t1までの間は、低い指令回転速度が算出されるため、カウント値が小さい値に決定される。これにより、積算値は、時刻t1まで、低い増加率で増加していく。そのため、時刻t1では、積算値は、積算閾値Cthにまだ到達していない。つまり、時刻t1では第2要件はまだ満たされていない。
【0135】
時刻t1からさらにモータ21の逆転が進んで、時刻t2になると、積算値が積算閾値Cthに到達する。つまり、時刻t2で、第2要件が満たされる。そのため、時刻t2においてさらに第1要件が満たされていれば、緩み判定要件が満たされて、モータ21が減速または停止される。
【0136】
なお、時刻t2までの間に、打撃が行われる場合もあれば、打撃が行われない場合もあり得る。
図7は、指令回転速度が一定の場合、即ちトリガ8の引き量が一定に維持された場合の、逆転時の動作例を示す。
図7の例では、指令回転速度が一定であるため、カウント値は一定である。そのため、積算値も一定の増加率で増加していく。そして、時刻t11で、積算値が積算閾値Cthに達する。つまり、時刻t11で、第2要件の一部が満たされる。時刻t11では、駆動時間はまだ閾時間Tthに達していないため、第2要件はまだ完全には満たされていない。駆動時間は、時刻t11の後の時刻t12で、閾時間Tthに達する。そのため、時刻t12で第2要件が満たされる。そのため、時刻t12においてさらに第1要件が満たされていれば、締結具が緩められたと判定されて、モータ21が減速または停止される。
【0137】
2-1-5.逆転制御処理
図7を参照して、制御回路31(詳しくはCPU31a)により実行される逆転制御処理を説明する。逆転制御処理は、モータ21を逆転させるための制御であり、前述の通り、モータ制御処理の一部である。制御回路31は、起動すると、逆転制御処理を実行する。なお、制御回路31は、逆転制御処理と並行して、モータ21を第1モータ回転方向へ回転させる正転制御処理も実行する。逆転制御処理は正転制御処理に含まれていてもよい。つまり、逆転制御処理は、モータ制御処理全体においてどこにどのような形態で実装されてもよい。
【0138】
制御回路31は、逆転制御処理を開始すると、S110で、緩め条件が成立しているか否か判断する。緩め条件が成立していない場合は、制御回路31は、S110の判断を繰り返す。緩め条件が成立している場合は、制御回路31は、S120で、駆動開始処理を実行する。駆動開始処理は、モータ21を逆転させるために必要な情報を取得することを含む。具体的には、S120では、第2トリガ信号Swbに基づいて、トリガ8の引き量を取得する。この処理は
図4におけるトリガ検出部41の処理に対応する。S120ではさらに、モード設定信号Smに基づいて、動作モードを設定する。この処理は
図4におけるモード設定部42の処理に対応する。
【0139】
S130では、制御回路31は、駆動時間の計測を開始する。この処理は
図4における計時部55の処理に対応する。
S140では、制御回路31は、S120で取得されたトリガ8の引き量に基づいて、あるいは引き量及び動作モードに基づいて、目標回転速度を算出する。この処理は
図4における目標回転速度算出部43の処理に対応する。
【0140】
S150では、制御回路31は、S140で算出された目標回転速度に基づいて、指令回転速度を算出する。この処理は
図4における指令回転速度算出部44の処理に対応する。
S160では、制御回路31は、S150で算出された指令回転速度と、回転速度算出部45で算出されている検出回転速度とに基づいて、出力デューティ比を算出する。この処理は
図4における出力デューティ比算出部47の処理に対応する。
【0141】
S170では、制御回路31は、PWM駆動処理を実行する。具体的には、制御回路31は、回転位置情報に基づいてモータ21の回転位置を検出する。そして、その回転位置と、S160で算出された出力デューティ比と、方向設定信号Sdが示す回転方向に基づいて、駆動指令を生成する。そして、生成した駆動指令を駆動回路32へ出力する。これにより、モータ21が逆転される。このS170処理は
図4におけるPWM生成部48の処理に対応する。
【0142】
S180では、制御回路31は、打撃検出処理を実行する。具体的に、制御回路31は、回転速度算出部45で算出されている検出回転速度、または電流検出部49で検出されているモータ電流値に基づいて、前述の方法で、打撃が行われたか否かを判断する。この処理は
図4における打撃検出部50の処理に対応する。
【0143】
S190では、制御回路31は、判定要件確認処理を実行する。具体的には、前述の第1~第3要件それぞれについて、満たされているか否かを判断する。この判定要件確認処理の詳細については、
図8を用いて後述する。
【0144】
S200では、制御回路31は、S190の処理結果に基づいて、緩み判定要件が満たされているか否かを判断する。制御回路31は、第1要件及び第2要件が満たされているか否か、または、第1要件及び第3要件が満たされている場合に、緩み判定要件が満たされていると判断する。この処理は
図4における緩み判定部56の処理に対応する。
【0145】
S200で、緩み判定要件がみたされていないと判断された場合は、本処理はS140に移行する。この場合、モータ21の逆転が継続される。S200で、緩み判定要件が満たされていると判断された場合は、本処理はS210に移行する。
【0146】
S210では、制御回路31は、待機処理を実行する。即ち、制御回路31は、次のS220の処理に移行する前に、所定時間待機する。つまり、所定時間の間は引き続きモータ21を逆転させる。この処理は
図4における停止/減速指令部57の処理に対応する。なお、S210で所定時間待機する理由は、締結具をより多く緩めて、それによって、モータ停止後の使用者によるさらなる緩め作業(例えば締結具を被締結材から完全に取り外す作業)を軽減するためである。
【0147】
S210で所定時間待機した後、制御回路31は、S220で、モータ21を停止または減速させる。この処理は
図4における停止/減速指令部57及び回転制御部46の処理に対応する。
【0148】
S190の判定要件確認処理の詳細について、
図8を参照して説明する。制御回路は、判定要件確認処理を開始すると、S310で、指令回転速度算出部44で算出されている指令回転速度が第1速度より大きいか否か判断する。第1速度はどのような速度であってもよい。第1速度は予め決められていてもよい。第1速度は例えばゼロであってもよいし、ゼロより大きい速度であってもよい。本第1実施形態では、第1速度は例えばゼロである。つまり、本第1実施形態では、S310の処理は、モータ21が回転しているか否かを判断する処理である。
【0149】
S310で、指令回転速度が第1閾値以下である場合は、本処理はS390に進む。S390では、制御回路31は、積算値を初期化、即ち初期値に設定する。初期値はどのように決められていてもよい。本第1実施形態では、初期値は例えばゼロである。S390の処理は
図4における演算部52の処理に対応する。S390の処理後、本処理はS200(
図7参照)に移行する。
【0150】
S310で、指令回転速度が第1閾値より大きい場合は、本処理はS320に進む。S320では、制御回路31は、指令回転速度に基づいて閾時間を算出する。この処理は
図4における閾時間算出部51の処理に対応する。
【0151】
S330では、制御回路31は、指令回転速度または閾時間に基づいて、カウント値を算出する。この処理は
図4におけるカウント値決定部53の処理に対応する。
S340では、制御回路31は、積算値を算出する。即ち、制御回路31は、S330で算出されたカウント値を、現在の積算値に加算することで、積算値を更新する。S340の処理が実行される度に、積算値の初期値に対してカウント値が累積的に加算されていくことで、積算値が更新される。このS340処理は
図4における積算部54の処理に対応する。
【0152】
S350では、制御回路31は、目標回転速度算出部43で算出されている目標回転速度が第2速度以上であるか否かを判断する。このS350の処理は、モータ21が高速回転しているか否かを判断する処理である。第2速度はどのように決められてもよい。第2速度は例えば10000rpm以上の所定の速度に決められてもよい。
【0153】
S350で、目標回転速度が第2速度未満である場合、本処理はS380に進む。S380では、制御回路31は、速度閾値を通常範囲外に設定する。この処理の目的は、第3要件を無効にすること、即ち第3要件が成立しないようにすることにある。緩み状態を適正に判断するためには、モータ21の回転速度が低い場合は第3要件よりも第2要件を優先的に判断した方が好ましい。そのため、モータ21の回転速度が低い場合は、第2要件が満たされることによって緩み判定要件が満たされるように、速度閾値を、通常は達する可能性が無いかもしくは極めて低い、高い速度(例えば100万rpm)に設定する。S380の処理後は、本処理はS370に進む。
【0154】
S350で、目標回転速度が第2閾値以上である場合は、本処理はS360に進む。S360では、制御回路31は、算出されている目標回転速度に基づいて、速度閾値を設定する。
【0155】
S370では、制御回路31は、緩み判定要件を確認する。具体的には、制御回路31は、第1要件~第3要件それぞれについて、満たされているか否かを判断する。S370の処理後は、本処理はS200(
図7参照)に移行する。なお、S350~S380の処理は、
図4における緩み判定部56の処理に対応する。
【0156】
2-1-6.用語の対応
チャックスリーブ7は、実施形態の総括における装着部の一例に相当する。トリガ8は、実施形態の総括における第1のスイッチの一例に相当する。第1設定スイッチ12及び第2設定スイッチ13の各々は、実施形態の総括における第2のスイッチの一例に相当する。制御回路31は、実施形態の総括における減速制御部及び速度設定部の一例に相当する。具体的には、緩み判定部56及び停止/減速指令部57が、実施形態の総括における減速制御部の一例に相当する。目標回転速度算出部43または指令回転速度算出部44が、実施形態の総括における速度設定部の一例に相当する。計時部55により計測される駆動時間は、実施形態の総括における経過時間の一例に相当する。
【0157】
S110で緩め条件が成立したと判断されるタイミング、S120の処理が実行されるタイミング、またはS130の処理が実行されるタイミングは、実施形態の総括における、計時部による経過時間の演算が開始されるタイミングの一例に相当する。S110で緩め条件が成立したと判断されるタイミング、S120の処理が実行されるタイミング、S130の処理が実行されるタイミング、または、S110で緩め条件が成立してから初めてS190の処理またはS340の処理が実行されるタイミングは、実施形態の総括における、演算部による判定値の演算が開始される所定のタイミングの一例に相当する。S340の処理が実行されるタイミングは、実施形態の総括における積算タイミングの一例に相当する。
【0158】
指令回転速度または目標回転速度は、実施形態の総括における回転速度情報及び指定回転速度の一例に相当する。カウント値は、実施形態の総括における増加率の一例に相当する。積算値は、実施形態の総括における判定値の一例に相当する。積算閾値は、実施形態の総括における閾値の一例に相当する。
【0159】
2-2.第2実施形態
第1実施形態の電動工具1を部分的に改変した例を説明する。上記第1実施形態では、閾時間が、指令回転速度に基づいて算出された。また、上記第1実施形態では、カウント値が、指令回転速度または閾時間に基づいて算出された。これに対し、本第2実施形態では、閾時間が、作業モードに応じて算出される。
【0160】
打撃が行われる時間間隔(以下、「打撃間隔」と称する)は、基本的には、モータ21の回転速度に依存する。即ち、一般には、モータ21の回転速度が高いほど打撃間隔が短くなる。しかし実際には、打撃間隔は、モータ21の回転速度のみに依存せず、他の要因によっても変化する。具体的には、例えば被締結材の形態(締結方向の厚さ、材質、硬さなど)によっても、打撃間隔は変化する。
【0161】
そこで、本第2実施形態では、被締結材の形態によらず適正に緩み判定を行うために、被締結材の形態に応じて、時間閾値及び/またはカウント値を算出する。より具体的には、設定されている作業モードに応じて、時間閾値及び/またはカウント値を算出する。
【0162】
木材モードは、被締結材が木材などの柔らかい材料であることを想定して、目標回転速度、指令回転速度あるいは駆動パターンなどが設定されている。具体的には、例えば、目標回転速度が、他の作業モードよりも低く設定されていてもよい。木材モードを用いて木材などの軟らかい被締結材から締結具を緩める作業においては、打撃によって回転速度が比較的長い周期で脈動し、且つ打撃が行われる期間が長くなり得る。
【0163】
一方、ボルトモードは、被締結材が金属などの固い材料であることを想定して、目標回転速度、指令回転速度あるいは駆動パターンなどが設定されている。具体的には、例えば、目標回転速度が、木材モードよりも高く設定されていてもよい。また例えば、逆転中に打撃が検出された場合に、その打撃検出時あるいは打撃検出時から所定時間経過後にモータ21が自動で停止されるように設定されていてもよい。ボルトモードを用いて金属などの固い被締結材から締結具を緩める作業においては、打撃によって回転速度が比較的短い周期で脈動し、且つ打撃が行われる期間が短くなり得る。
【0164】
そこで、本第2実施形態では、閾時間算出部51は、モード設定部42から、現在設定されている動作モードを取得する。そして、何れかの作業モードに設定されている場合、その設定されている作業モードに応じて閾時間を算出する。
【0165】
例えば、動作モードが木材モードに設定されている場合は、閾時間算出部51は、木材モードに対応して予め決められた第1時間を閾時間に設定する。一方、動作モードがボルトモードに設定されている場合は、閾時間算出部51は、ボルトモードに対応して予め決められた第2時間を閾時間に設定する。第2時間は、第1時間よりも短い。
【0166】
本第2実施形態では、
図8の判定要件確認処理のS320において、上記のような閾時間の算出が行われる。
また、本第2実施形態では、目標回転速度算出部43は、動作モードが何れかの作業モードに設定されている場合、その作業モードに応じて目標回転速度を設定する。なお、指令回転速度算出部44も、設定されている作業モードを考慮して指令回転速度を算出してもよい。本第2実施形態では、
図7のS140,S150において、上記のような目標回転速度及び指令回転速度の算出がそれぞれ行われる。
【0167】
カウント値決定部53は、モード設定部42から、現在設定されている動作モードを取得してもよい。そして、何れかの作業モードに設定されている場合、その設定されている作業モードに応じてカウント値を算出してもよい。
【0168】
例えば、動作モードが木材モードに設定されている場合は、カウント値決定部53は、木材モードに対応して予め決められた第1値をカウント値に設定してもよい。一方、動作モードがボルトモードに設定されている場合は、カウント値決定部53は、ボルトモードに対応して予め決められた第2値をカウント値に設定してもよい。第2値は、第1値よりも大きい。
【0169】
あるいは、カウント値決定部53は、閾時間算出部51により算出された閾時間に基づいて、カウント値を算出してもよい。例えば、閾時間が長くなるに従ってカウント値が小さくなるようにカウント値を算出してもよい。
【0170】
本第2実施形態では、
図8の判定要件確認処理のS330において、上記のようなカウント値の算出が行われる。
なお、
図4は、閾時間算出部51及びカウント値決定部53がモード設定部42から動作モードを取得することが、破線によって模式的に示されている。
【0171】
また、本第2実施形態では、
図7のS210で待機する所定時間が、作業モードに応じて可変設定されてもよい。例えば、やわらかい被締結材から締結具を緩める場合、早い段階で打撃が終了して回転速度が上昇し、これにより早い段階で緩み判定要件が満たされてモータ21が停止され得る。この場合、締結具がまだ十分に緩められていない状態でモータ21が停止され得る。そこで、例えば、木材モードにおける待機所定時間が、ボルトモードにおける待機所定時間よりも長く設定されてもよい。
【0172】
2-3.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0173】
(1)上記実施形態では、カウント値は、指令回転速度または閾時間に基づいて算出された。しかし、カウント値は、モータ21の回転速度が反映されたあらゆるパラメータに基づいて算出されてもよい。
【0174】
例えば、目標回転速度に基づいてカウント値が算出されてもよい。その場合、カウント値決定部53は、目標回転速度が低くなるに従ってカウント値が小さくなるように、カウント値を決定してもよい。
【0175】
また例えば、カウント値決定部53は、モータ21の実回転速度に基づいてカウント値を決定してもよい。具体的には、カウント値決定部53は、カウント値を決定するタイミング毎に、そのとき回転速度算出部45で算出されている検出回転速度に基づいて、カウント値を決定してもよい。この場合、カウント値決定部53は、検出回転速度が低くなるに従ってカウント値が小さくなるように、カウント値を決定してもよい。
【0176】
(2)閾時間は、どのように算出されてもよい。閾時間は、例えば目標回転速度に基づいて算出されてもよい。具体的には、目標回転速度が高くなるに従って閾時間が短くなるように、閾時間が算出されてもよい。あるいは、閾時間は一定の時間であってもよい。
【0177】
(3)目標回転速度及び/または指令回転速度は、トリガ8の引き量によらず一定の速度であってもよい。その一定の速度は、動作モード毎に個別に決められていてもよい。
(4)
図7のS210における、待機所定時間は、所定の条件に応じて或いは任意に変更可能であってもよい。例えば、使用者の入力操作によって待機所定時間が設定されてもよい。待機所定時間を可変設定できることは、次のような効果を奏し得る。
【0178】
即ち、締結具の長さは、必ずしも一定ではなく、様々な長さがあり得る。そのため、仮に待機所定時間が一定である場合、締結材の長さによっては、必要以上に緩められたり、逆に緩みが不十分な状態でモータ21が停止されたりする可能性がある。具体的には、例えば締結具の長さが長い場合、使用者が望む緩み位置まで締結具が緩められる前にモータ21が停止される可能性がある。
【0179】
また、前述の通り、被締結材の堅さによっても、緩み判定されるタイミングが異なり得る。そのため、例えばやわらかい被締結材から締結具を緩める場合、使用者が望む緩み位置まで締結具が緩められる前にモータ21が停止される可能性がある。
【0180】
これに対し、待機所定時間を可変設定可能とすることで、締結具の長さ或いは被締結材の堅さによらず、使用者が望む緩み位置でモータ21を停止させることが可能となる。例えば、長いボルトを緩める作業を行う場合、待機所定時間を長めに設定することで、モータ21の停止タイミングを遅らせて、所望の緩み位置まで緩めることが可能となる。逆に、短いボルトを緩める作業を行う場合、待機所定時間を短めに設定することで、モータ21の停止タイミングを早めて、緩められすぎることを抑制することが可能となる。また例えば、柔らかい被締結材から締結具を緩める作業を行う場合、待機所定時間を長めに設定することで、モータ21の停止タイミングを遅らせて、所望の緩み位置まで緩めることが可能となる。
【0181】
(5)上記実施形態では、本開示の第1のスイッチの一例としてトリガ8を示したが、第1のスイッチは、トリガ8とは異なる形態であってもよい。第1のスイッチは、例えば、スライド式のスイッチ、押しボタン、レバーなどの形態であってもよい。本開示の第2のスイッチの具体的形態についても、上記実施形態の第1設定スイッチ12及び第2設定スイッチ13のような押しボタンの形態とは異なる形態であってもよい。
【0182】
(6)本開示は、打撃の機能を備えたあらゆる電動工具に適用可能である。例えば、インパクトレンチに対して本開示を適用可能である。
また、本開示は、打撃機構23を備えない(つまり打撃の機能を備えない)電動工具に対しても適用可能である。即ち、本開示は、締結具を回転させることが可能なあらゆる形態の電動工具に対して適用可能である。具体的には、本開示は、例えば、石工用、金工用、木工用の電動工具も適用可能である。
【0183】
また、本開示の電動工具は、締結具の回転に加えて、締結具の回転とは異なる作業を実行可能であってもよい。例えば電動工具は、ドリルビットを装着可能であって、ドリルビットによって被材に穴を開けることができてもよい。
【符号の説明】
【0184】
1…電動工具、7…チャックスリーブ、8…トリガ、10…方向設定スイッチ、12…第1設定スイッチ、13…第2設定スイッチ、16…コントローラ、21…モータ、22…駆動機構、23…打撃機構、31…制御回路、31a…CPU、31b…メモリ、32…駆動回路、33…電流検出回路、41…トリガ検出部、42…モード設定部、43…目標回転速度算出部、44…指令回転速度算出部、45…回転速度算出部、46…回転制御部、47…出力デューティ比算出部、48…PWM生成部、49…電流検出部、50…打撃検出部、51…閾時間算出部、52…演算部、53…カウント値決定部、54…積算部、55…計時部、56…緩み判定部、57…停止/減速指令部。