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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043262
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】予測方法及び飲食品組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6837 20180101AFI20240322BHJP
   C12Q 1/683 20180101ALI20240322BHJP
   C12Q 1/6858 20180101ALI20240322BHJP
   A23L 33/19 20160101ALI20240322BHJP
【FI】
C12Q1/6837 Z
C12Q1/683 Z
C12Q1/6858 Z
A23L33/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148353
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】隈元 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松野 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳菜恵
(72)【発明者】
【氏名】西浦 大祐
(72)【発明者】
【氏名】満留 卓実
(72)【発明者】
【氏名】小野 知二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久典
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018MD20
4B018MD71
4B018ME04
4B063QA01
4B063QA12
4B063QA13
4B063QA17
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR14
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS16
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】ラクトフェリンの摂取効果を予測できる予測方法及びラクトフェリンを含有する飲食品組成物の提供。
【解決手段】被験者由来のDNA含有試料中の収縮期血圧低減効果に関与する1以上の一塩基多型のアレルを判定する工程と、前記判定する工程の結果に基づいて、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する工程とを含む、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果の予測方法。予測方法は、さらに、前記被験者の属性及び生活習慣の情報の少なくとも一つの情報に基づいて、前記収縮期血圧低減効果の程度を補正する工程を含む。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者由来のDNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs67762951、rs2433317、rs59616746、rs7806534、rs62098083、rs10791273、rs891637、rs4760790、rs17671833、rs339861、rs17739222、rs17758258、rs1035406、rs17422436、rs884475、rs16891864、rs76157002、rs78609829、rs12698090、rs709767、rs11866721、rs888804、rs6716981、rs2357353、rs1981820、rs7961581、rs28381665、rs2059520、rs10158426、rs1415175、rs55654641、rs6495218、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs4697070、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs78812590、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373、rs74442924、rs12436584、rs7777527、rs161803、rs161826、rs161811、rs161810、rs4073661及びrs6872379からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する工程と、前記判定する工程の結果に基づいて、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する工程とを含む、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法。
【請求項2】
前記判定する工程において、前記登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する、請求項1に記載のラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法。
【請求項3】
さらに、前記被験者の属性及び生活習慣の情報の少なくとも一つの情報に基づいて、前記収縮期血圧低減効果の程度を補正する工程を含む、請求項1又は2に記載のラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法。
【請求項4】
対象の収縮期血圧低減に使用するための、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物であって、NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有する前記対象に摂取される、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物。
【請求項5】
被験者由来のDNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2300238、rs4102411、rs7243006、rs28865089、rs141150739、rs10500796、rs565077、rs60428975、rs7998443、rs10241339、rs13431698、rs7152787、rs74134556、rs78800797、rs75246723、rs138934614、rs10742471、rs17491802、rs17141727、rs73545399、rs11756061、rs34552、rs17758258、rs236419、rs13164823、rs915590、rs1416812、rs117664886、rs28521602、rs4286915、rs28645096、rs12672026、rs7569387、rs1455800、rs3124952、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs1019531、rs10514401、rs7193285、rs16969774、rs75490002、rs10214302、rs12311397、rs2299766、rs12455665、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs10078789、rs6006488、rs112067135、rs10889849、rs11209536、rs243619、rs7850103、rs10889850、rs4838322、rs9448062、rs10451106、rs1587803、rs2910667、rs4698737及びrs2058370からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する工程と、
前記判定する工程の結果に基づいて、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる拡張期血圧低減効果を予測する工程とを含む、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法。
【請求項6】
前記判定する工程において、前記登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する、請求項5に記載のラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法。
【請求項7】
さらに、前記被験者の属性の情報に基づいて、前記拡張期血圧低減効果の程度を補正する工程を含む、請求項5又は6に記載のラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法。
【請求項8】
対象の拡張期血圧低減に使用するための、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物であって、NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有する前記対象に摂取される、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測方法及び飲食品組成物に関する。具体的には、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果の予測方法及びラクトフェリンを含有する飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリンは、鉄結合性の糖蛋白質であり、ヒトを含む哺乳動物の乳汁、唾液、汗、涙液及び血液等の体液、粘液及び好中球等に存在している。ラクトフェリンは、抗菌作用、抗ウイルス作用、免疫調節作用、ビフィズス菌増殖促進作用、鉄吸収調節作用、抗炎症作用及び脂質代謝改善作用等を有することが知られている。そのため、ラクトフェリンは、サプリメント等の健康食品等の原料(機能性関与成分)に用いられている。例えば、特許文献1は、ラクトフェリンの溶出性に優れる錠剤組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/020186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高血圧症は、喫煙と並んで日本人の生活習慣病に最も大きく影響する要因であり(厚生労働省e-ヘルスネット)、肥満との関連性も高い。また肥満者は、正常体重者と比べて約2~3倍高血圧症に罹患するリスクが高いといわれている(日本肥満症予防協会)。そこで、多機能タンパク質のラクトフェリン摂取により、高血圧症を予防若しくは改善出来れば、生活習慣病の患者を減らす一助となる。
【0005】
一方で、ラクトフェリンには高血圧症改善作用があるといわれているにもかかわらず、継続的にラクトフェリンを摂取しても血圧の値に改善効果がみられない人がいることを見出した。
【0006】
そこで、本発明者らは、ラクトフェリン摂取群及びラクトフェリン非摂取群を対象にゲノムワイド関連解析(以下、GWASともいう)を用いて一塩基多型(以下、SNP(複数形:SNPs)ともいう)を網羅的に解析したところ、ラクトフェリンの血圧指標、即ち、収縮期血圧及び拡張期血圧の低減効果に関連するSNPsを見出した。
【0007】
本発明の課題は、ラクトフェリンの摂取効果を予測できる予測方法及びラクトフェリンを含有する飲食品組成物を提供することにある。特に、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果をラクトフェリン摂取者の一塩基多型情報に基づいて予測する予測方法及びラクトフェリンを含有する飲食品組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]被験者由来のDNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs67762951、rs2433317、rs59616746、rs7806534、rs62098083、rs10791273、rs891637、rs4760790、rs17671833、rs339861、rs17739222、rs17758258、rs1035406、rs17422436、rs884475、rs16891864、rs76157002、rs78609829、rs12698090、rs709767、rs11866721、rs888804、rs6716981、rs2357353、rs1981820、rs7961581、rs28381665、rs2059520、rs10158426、rs1415175、rs55654641、rs6495218、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs4697070、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs78812590、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373、rs74442924、rs12436584、rs7777527、rs161803、rs161826、rs161811、rs161810、rs4073661及びrs6872379からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する工程と、前記判定する工程の結果に基づいて、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する工程とを含む、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法。
[2]前記判定する工程において、前記登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する、[1]に記載のラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法。
[3]さらに、前記被験者の属性及び生活習慣の情報の少なくとも一つの情報に基づいて、前記収縮期血圧低減効果の程度を補正する工程を含む、[1]又は[2]に記載のラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法。
[4]被験者の遺伝子検査結果を入力する入力部と、前記遺伝子検査結果と、データベースに保存されているNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs67762951、rs2433317、rs59616746、rs7806534、rs62098083、rs10791273、rs891637、rs4760790、rs17671833、rs339861、rs17739222、rs17758258、rs1035406、rs17422436、rs884475、rs16891864、rs76157002、rs78609829、rs12698090、rs709767、rs11866721、rs888804、rs6716981、rs2357353、rs1981820、rs7961581、rs28381665、rs2059520、rs10158426、rs1415175、rs55654641、rs6495218、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs4697070、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs78812590、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373、rs74442924、rs12436584、rs7777527、rs161803、rs161826、rs161811、rs161810、rs4073661及びrs6872379からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルの情報を照合する照合部と、前記遺伝子検査結果と前記一塩基多型のアレルの情報の照合結果に基づき、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する判定部と、前記判定部の結果を出力する出力部を含む、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測システム。
[5]前記一塩基多型が、前記登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型である、[4]に記載のラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測システム。
[6]前記入力部に、さらに前記被験者の属性及び生活習慣の情報の少なくとも一つの情報が入力され、前記予測システムが、前記被験者の属性及び生活習慣の情報の少なくとも一つの情報に基づいて、収縮期血圧低減効果の程度を補正する補正部をさらに含む、[4]又は[5]に記載のラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測システム。
[7]対象の収縮期血圧低減に使用するための、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物であって、NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有する前記対象に摂取される、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物。
[8]被験者由来のDNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2300238、rs4102411、rs7243006、rs28865089、rs141150739、rs10500796、rs565077、rs60428975、rs7998443、rs10241339、rs13431698、rs7152787、rs74134556、rs78800797、rs75246723、rs138934614、rs10742471、rs17491802、rs17141727、rs73545399、rs11756061、rs34552、rs17758258、rs236419、rs13164823、rs915590、rs1416812、rs117664886、rs28521602、rs4286915、rs28645096、rs12672026、rs7569387、rs1455800、rs3124952、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs1019531、rs10514401、rs7193285、rs16969774、rs75490002、rs10214302、rs12311397、rs2299766、rs12455665、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs10078789、rs6006488、rs112067135、rs10889849、rs11209536、rs243619、rs7850103、rs10889850、rs4838322、rs9448062、rs10451106、rs1587803、rs2910667、rs4698737及びrs2058370からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する工程と、前記判定する工程の結果に基づいて、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる拡張期血圧低減効果を予測する工程とを含む、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法。
[9]前記判定する工程において、前記登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する、[8]に記載のラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法。
[10]さらに、前記被験者の属性の情報に基づいて、前記拡張期血圧低減効果の程度を補正する工程を含む、[8]又は[9]に記載のラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法。
[11]被験者の遺伝子検査結果を入力する入力部と、前記遺伝子検査結果と、データベースに保存されているNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2300238、rs4102411、rs7243006、rs28865089、rs141150739、rs10500796、rs565077、rs60428975、rs7998443、rs10241339、rs13431698、rs7152787、rs74134556、rs78800797、rs75246723、rs138934614、rs10742471、rs17491802、rs17141727、rs73545399、rs11756061、rs34552、rs17758258、rs236419、rs13164823、rs915590、rs1416812、rs117664886、rs28521602、rs4286915、rs28645096、rs12672026、rs7569387、rs1455800、rs3124952、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs1019531、rs10514401、rs7193285、rs16969774、rs75490002、rs10214302、rs12311397、rs2299766、rs12455665、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs10078789、rs6006488、rs112067135、rs10889849、rs11209536、rs243619、rs7850103、rs10889850、rs4838322、rs9448062、rs10451106、rs1587803、rs2910667、rs4698737及びrs2058370からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルの情報を照合する照合部と、前記遺伝子検査結果と前記一塩基多型のアレルの情報の照合結果に基づき、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる拡張期血圧低減効果を予測する判定部と、前記判定部の結果を出力する出力部を含む、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測システム。
[12]前記一塩基多型が、前記登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型である、[11]に記載のラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測システム。
[13]前記入力部に、さらに前記被験者の属性の情報が入力され、前記予測システムが、前記被験者の属性の情報に基づいて、拡張期血圧低減効果の程度を補正する補正部をさらに含む、[11]又は[12]に記載のラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測システム。
[14]対象の拡張期血圧低減に使用するための、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物であって、NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有する前記対象に摂取される、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、ラクトフェリンの摂取効果を予測できる予測方法及びラクトフェリンを含有する飲食品組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様における予測システムを表すブロック図である。
図2】本発明の一態様におけるラクトフェリンの収縮期血圧低減効果を予測する手順の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の他の態様における予測システムを表すブロック図である。
図4】本発明の他の態様におけるラクトフェリンの収縮期血圧低減効果を予測する手順の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の他の態様におけるシステムにより出力される出力結果の表示の一例である。
図6】収縮期血圧の変化割合の実測値に対する本発明の実施形態に係る回帰モデルによって推定される収縮期血圧の変化割合の予測値を表す散布図である。
図7】収縮期血圧の変化割合の実測値に対する本発明の実施形態に係る回帰モデルによって推定される収縮期血圧の変化割合の予測値を表す散布図である。
図8】拡張期血圧の変化割合の実測値に対する本発明の実施形態に係る回帰モデルによって推定される拡張期血圧の変化割合の予測値を表す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
用語「被験者」及び「対象」は、ヒトである。
【0012】
<ラクトフェリン>
ラクトフェリンは、鉄結合性の糖蛋白質であり、ヒトを含む哺乳動物の乳汁、唾液、汗、涙液及び血液等の体液、粘液、好中球及び消化管粘膜の細胞表面等に存在する。ラクトフェリンの摂取を目的とする場合、ラクトフェリンは、市販のラクトフェリン、哺乳類(例えば人、牛、羊、山羊及び馬等)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等又はこれらの乳の処理物である脱脂乳又はホエ一等から、常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)により分離したラクトフェリン、植物(例えばトマト、イネ及びタバコ等)から生産されたラクトフェリン、遺伝子組み換えによって得られたラクトフェリンが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、ラクトフェリンとしては、牛由来のものが好ましい。ラクトフェリンは、通常の製法にて製造された物が挙げられるが、凍結乾燥品又はスプレードライ品であることが好ましい。
【0013】
(第1の実施形態)
<ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果の予測方法>
本実施形態の一態様は、被験者由来のDNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs67762951、rs2433317、rs59616746、rs7806534、rs62098083、rs10791273、rs891637、rs4760790、rs17671833、rs339861、rs17739222、rs17758258、rs1035406、rs17422436、rs884475、rs16891864、rs76157002、rs78609829、rs12698090、rs709767、rs11866721、rs888804、rs6716981、rs2357353、rs1981820、rs7961581、rs28381665、rs2059520、rs10158426、rs1415175、rs55654641、rs6495218、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs4697070、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs78812590、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373、rs74442924、rs12436584、rs7777527、rs161803、rs161826、rs161811、rs161810、rs4073661及びrs6872379からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する工程と、前記判定する工程の結果に基づいて、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する工程とを含む、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法である。
【0014】
本実施形態のもう一つの態様は、被験者由来のDNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2300238、rs4102411、rs7243006、rs28865089、rs141150739、rs10500796、rs565077、rs60428975、rs7998443、rs10241339、rs13431698、rs7152787、rs74134556、rs78800797、rs75246723、rs138934614、rs10742471、rs17491802、rs17141727、rs73545399、rs11756061、rs34552、rs17758258、rs236419、rs13164823、rs915590、rs1416812、rs117664886、rs28521602、rs4286915、rs28645096、rs12672026、rs7569387、rs1455800、rs3124952、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs1019531、rs10514401、rs7193285、rs16969774、rs75490002、rs10214302、rs12311397、rs2299766、rs12455665、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs10078789、rs6006488、rs112067135、rs10889849、rs11209536、rs243619、rs7850103、rs10889850、rs4838322、rs9448062、rs10451106、rs1587803、rs2910667、rs4698737及びrs2058370からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する工程と、前記判定する工程の結果に基づいて、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる拡張期血圧低減効果を予測する工程とを含む、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法である。
【0015】
<一塩基多型>
発明者らは、後述する実施例においてGWASを行い、表1及び3に示すラクトフェリンの収縮期血圧低減効果に関連する一塩基多型、表2及び4に示すラクトフェリンの拡張期血圧低減効果に関連する一塩基多型を同定した。なお、表1~4におけるA1アレル及びA2アレルは、使用した解析ソフトウェア(PLINK)によって選ばれ、各個人の遺伝子型をA2/A2=0、A1/A2=1、A1/A1=2と数値化し、回帰分析によるBETA値として示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
後述の実施例のGWAS結果に示すように、表1~2に示すSNPsについては、ラクトフェリン摂取群と対照食品群の比較結果であるInteraction-P値が10-4未満であり、表3~4に示すSNPsについては、ラクトフェリン摂取群でのP値(表3~4中におけるLF群-P値)が10-4未満である。即ち、表1及び3に示すSNPsは、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果と関連が示唆され、表2及び4に示すSNPsは、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果と関連が示唆されたものである。
【0021】
なお、各一塩基多型のBETA値(表1~4中のBETA(Interaction))は、後述する実施例1-1及び実施例1-2に記載の方法で得られた値であり、回帰係数を指す。具体的には、実施例1-1及び実施例1-2に記載の解析において、表1~2は対照食品群の摂取前後の差とラクトフェリン摂取群の摂取前後の差を比較した際に、性別、年齢を考慮した線形回帰分析により得られる係数で、SNPのA1アレルを1つ持つ場合に、全く持たない場合と比較して、BETA値×100%の効果があるということを示す。なお、表3~4におけるBETA(LF群)は、ラクトフェリン摂取群の摂取前後の差を比較した際に、性別、年齢を考慮した線形回帰分析により得られる係数で、ラクトフェリン摂取群においてSNPのA1アレルを1つ持つ場合に、全く持たない場合と比較して、BETA値×100%の効果があるということを示す。以下、単にBETA値と記載する場合は、BETA(Interaction)及びBETA(LF群)のいずれかの値を意味する。
【0022】
なお、表中のSNP IDとは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)のSNPデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/)における登録番号を示す。
【0023】
ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果と関連性が高いことから、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測方法においては、登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定することが好ましい。
【0024】
ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果と関連性が高いことから、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測方法においては、登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定することが好ましい。
【0025】
本実施形態の一塩基多型は、上記の一塩基多型そのものであってもよいが、前記一塩基多型と連鎖不平衡の関係にある一塩基多型も含む。連鎖不平衡とは、2つの対立遺伝子がそれぞれ独立に遺伝する場合よりも大きな頻度で互いに連鎖して遺伝することをいう。本実施形態の一塩基多型として、上記の一塩基多型との連鎖不平衡係数rが0.6以上、好ましくは0.85以上、より好ましくは0.9以上である一塩基多型を用いることができる。特定の一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型は、例えば、Ensembl Genome Browser(https://asia.Ensembl.org/index.html)や、LDlink(https://ldlink.nci.nih.gov/?tab=home)等を用いて同定することができる。あるいは、複数人から採取したDNAをシークエンサーにて配列解析し、連鎖不平衡にある一塩基多型を探索することにより同定することもできる。
【0026】
例えば、表5に示すように、収縮期血圧低減効果に関連するSNPsの座位のうちrs161811とrs161810及びrs161803は、連鎖不平衡の関係(r=1.000又は0.981)である。他の例では、表6に示すように、拡張期血圧低減効果に関連する座位のうちrs11209536とrs10889849及びrs10889850は、連鎖不平衡の関係(r=1.000又は0.873)である。
【0027】
一方、DNAチップ上の連鎖不平衡SNPsにおいて、表5のSNP IDに示すSNPsは、連鎖不平衡係数が0.6以上のSNPsについては実施例1-1又は実施例1-2において抽出されたが、連鎖不平衡係数が0.6未満のSNPsについては抽出されないものもあった。具体的には、収縮期血圧低減効果に関連するSNPsの座位のうちrs161811とrs1776354(r=0.494)は、rが0.6未満であり、この連鎖不平衡SNPは、実施例1-1又は実施例1-2で抽出されなかった。同様に、拡張期血圧低減効果に関連するSNPsの座位については、表6に示すSNP IDの内、例えば、rs11209536とrs77765381(r=0.239)は、rが0.6未満であり、この連鎖不平衡SNPは、実施例1-1又は実施例1-2で抽出されなかった。
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
本実施形態の予測方法において、「一塩基多型のアレルを判定する」とは、その一塩基多型のアレルの塩基の種類を同定することを意味し、「一塩基多型を検出する」の態様には、一塩基多型の一方のアレルを検出すること、一塩基多型の両方のアレルを検出すること、一塩基多型の遺伝子型を同定することを含む。
【0031】
本実施形態の予測方法において、判定されるアレルの塩基の少なくとも一つが、BETA値が負の値であるA1アレルである場合、1つもA1アレルではない場合と比較して被験者がラクトフェリンを摂取することにより収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果が得られやすいと予測する。また、判定されるアレルの塩基の少なくとも一つが、BETA値が正の値であるA2アレルである場合、1つもA2アレルではない場合と比較して被験者がラクトフェリンを摂取することにより収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果が得られやすいと予測する。
【0032】
具体的には、表1及び3の一塩基多型の内、少なくとも1つの一塩基多型のアレルを評価することにより、被験者がラクトフェリンを摂取した場合の収縮期血圧低減効果(ラクトフェリン摂取前後の収縮期血圧低減変化割合)を予測する。表2及び4の一塩基多型の内、少なくとも1か所の一塩基多型のアレルを評価することにより、被験者がラクトフェリンを摂取した場合の拡張期血圧低減効果(ラクトフェリン摂取前後の拡張期血圧低減変化割合)を予測する。
【0033】
好ましくは、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が負の値のA1アレルであると判定されると、A1アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られやすいと予測する。好ましくは、少なくとも一方のアレルが表2及び4の一塩基多型でBETA値が負の値のA1アレルであると判定されると、A1アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると拡張期血圧低減効果が得られやすいと予測する。
【0034】
また、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が正の値のA2アレルであると判定されると、A2アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られやすいと予測する。少なくとも一方のアレルが表2及び4の一塩基多型でBETA値が正の値のA2アレルであると判定されると、A2アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると拡張期血圧低減効果が得られやすいと予測する。
【0035】
本実施形態の予測方法は、さらに、被験者の属性及び生活習慣の情報の少なくとも一つの情報に基づいて、収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果の程度を補正する工程を含んでいてもよい。
【0036】
被験者の属性及び生活習慣の情報としては、後述する<ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果の予測システム>にて説明される生活習慣の情報を用いることができる。
【0037】
<DNA含有試料>
被験者由来のDNA含有試料としては、被験者の生体から採取されたものであれば特別な限定はないが、例えば、血液、血清、血漿、尿、バフィーコート、唾液、精液、胸部滲出液、脳脊髄液、涙液、痰、粘液、リンパ液、腹水、胸水、羊水、膀胱洗浄液、気管支肺胞洗浄液、毛髪、便、生体から直接採取された細胞又は組織等が挙げられ、これらに限定されない。DNA含有試料としては、容易性及び低侵襲性の点から唾液が好ましい。これら試料からDNAを抽出して、一塩基多型を検出する試料とすることが好ましい。
【0038】
DNAの抽出方法としては、特別な限定はなく、公知の方法を用いて抽出することができる。例えば、磁性ビーズ法、フェノール/クロロホルム法及びセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)法等が挙げられる。DNAの抽出には、市販のキット(例えば、Wizard Genomic DNA Purification Kit、Promega製)を用いてもよい。
【0039】
また、DNAは、mRNAを抽出し、このmRNAを鋳型として合成されたcDNAであってもよい。mRNAの抽出方法としては、特別な限定はなく、公知の方法を用いて抽出することができる。例えば、グアニジンイソチオシアネート法等が挙げられる。mRNAの抽出には、市販のキットを用いてもよい。当該キットとしては、例えば、NucleoTrap(登録商標) mRNA Kit(Clontech製)等が挙げられる。cDNAの合成方法についても、特別な限定はなく、公知の方法を用いて合成することができる。例えば、ランダムプライマー又はポリTプライマーを用いて、RNAから逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりcDNAを合成することができる。
【0040】
<一塩基多型のアレル判定方法>
ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果に関連する一塩基多型のアレルの判定は、公知の一塩基多型検出法を用いて行うことができる。例えば、DNAチップを用いる方法、直接配列決定法、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、制限酵素断片長多型(RFLP)法、ハイブリダイゼーション法、TaqMan(登録商標)PCR法及び質量分析法等を用いる方法が挙げられる。
【0041】
DNAチップを用いた方法では、基板上に多種類のDNAプローブを整列して固定したDNAチップを用い、標識したDNA試料をDNAチップ上でハイブリダイゼーションし、プローブによる蛍光シグナルを検出する。例えば、DNAチップとしてIllumina Global Screening Array+(イルミナ社製)を用いることができる。
【0042】
本実施形態の予測方法により得られた結果は、収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果を期待する者がラクトフェリンを摂取するか否かを選択する上で有用な指標となる。例えば、ラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られると予測された者は、ラクトフェリンを積極的に摂取することを選択できる。
【0043】
(第2の実施形態)
<収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果と関連する一塩基多型のアレルを判定するキット>
本実施形態の一態様は、DNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs67762951、rs2433317、rs59616746、rs7806534、rs62098083、rs10791273、rs891637、rs4760790、rs17671833、rs339861、rs17739222、rs17758258、rs1035406、rs17422436、rs884475、rs16891864、rs76157002、rs78609829、rs12698090、rs709767、rs11866721、rs888804、rs6716981、rs2357353、rs1981820、rs7961581、rs28381665、rs2059520、rs10158426、rs1415175、rs55654641、rs6495218、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs4697070、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs78812590、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373、rs74442924、rs12436584、rs7777527、rs161803、rs161826、rs161811、rs161810、rs4073661及びrs6872379からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する1以上の核酸プローブ又はプライマーを含む、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果を予測するためのキットである。
【0044】
ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果と関連性が高いことから、前記一塩基多型は、登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型であることが好ましい。
【0045】
本実施形態のもう一つの態様は、DNA含有試料中のNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2300238、rs4102411、rs7243006、rs28865089、rs141150739、rs10500796、rs565077、rs60428975、rs7998443、rs10241339、rs13431698、rs7152787、rs74134556、rs78800797、rs75246723、rs138934614、rs10742471、rs17491802、rs17141727、rs73545399、rs11756061、rs34552、rs17758258、rs236419、rs13164823、rs915590、rs1416812、rs117664886、rs28521602、rs4286915、rs28645096、rs12672026、rs7569387、rs1455800、rs3124952、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs1019531、rs10514401、rs7193285、rs16969774、rs75490002、rs10214302、rs12311397、rs2299766、rs12455665、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs10078789、rs6006488、rs112067135、rs10889849、rs11209536、rs243619、rs7850103、rs10889850、rs4838322、rs9448062、rs10451106、rs1587803、rs2910667、rs4698737及びrs2058370からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルを判定する1以上の核酸プローブ又はプライマーを含む、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果を予測するためのキットである。
【0046】
ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果と関連性が高いことから、前記一塩基多型は、登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型であることが好ましい。
【0047】
本実施形態のキットは、収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果と関連する一塩基多型のアレルを判定する核酸プローブ又はプライマーを含む。本実施形態のキットは、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果判定用キットとして有用である。ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果と関連する一塩基多型としては、上記<ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果の予測方法>において例示されたものと同じものが挙げられる。また、核酸プローブ又はプライマーについては、当業者であれば、上記<ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果の予測方法>において、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果と関連する一塩基多型のアレル判定方法に記載した方法に基づいて適宜作製することができる。
【0048】
例えば、核酸プローブとしては、上記の一塩基多型を含み、ハイブリダイズの有無によって一塩基多型部位の塩基の種類を判別できるプローブが挙げられる。具体的には、上記一塩基多型を含む連続する少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上の配列又はその相補配列を有するプローブが挙げられる。プローブの長さは、好ましくは15~40塩基、より好ましくは20~35塩基である。
【0049】
例えば、プライマーとしては、上記一塩基多型部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記一塩基多型部位を配列解析するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、表1~10の一塩基多型部位の塩基を含む領域の増幅や、配列解析のできるプライマーが挙げられる。上記一塩基多型部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマーは、前記一塩基多型部位を含む領域のDNAを鋳型として、前記一塩基多型部位に向かって相補鎖合成を開始することができるオリゴヌクレオチドであればよく、このようなプライマーの長さは、10~30塩基が好ましく、15~25塩基がより好ましい。プライマーは、前記一塩基多型部位の上流または下流の位置に設定することができる。
【0050】
上記核酸プローブ又はプライマーは、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果と関連する一塩基多型とは無関係な配列が含まれていてもよい。また、上記核酸プローブ又はプライマーは、DNAとRNAのキメラであってもよい。また、上記核酸プローブ又はプライマーは、蛍光物質や、ビオチン又はジゴキシンのような結合親和性物質、酵素、放射性同位元素又は発光物質等で標識されていてもよい。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン及びフルオレッセインイソチオシアネート等が挙げられる。酵素としては、例えば、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸脱水酵素、α-グルコシダーゼ及びα-ガラクトシダーゼ等が挙げられる。放射性同位元素としては、例えば、125I、131I、H及び14C等が挙げられる。発光物質としては、例えば、ルシフェリン、ルシゲニン、ルミノール及びルミノール誘導体等が挙げられる。
【0051】
本実施形態のキットは、上記核酸プローブ又はプライマーに加えて、SNPタイピングに通常用いられる試薬、陽性コントロール、溶媒及び溶質を更に含むことができる。当該試薬としては、例えば、デオキシヌクレオチド3リン酸(dNTPs)やDNAポリメラーゼ等が挙げられる。溶媒及び溶質としては、例えば、蒸留水、pH緩衝試薬、塩、タンパク質及び界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
本実施形態のキットは、上記核酸プローブ又はプライマーに加えて、比較基準とするためのあるいは検量線を作成するための照合サンプル及び検出器等も含んでもよい。検出器としては、例えば、分光器、放射線検出器及び光散乱検出器等の上記核酸プローブ又はプライマーの標識を検出可能なものが挙げられる。
【0053】
(第3の実施形態)
<バイオマーカー>
本実施形態の一態様は、 NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs67762951、rs2433317、rs59616746、rs7806534、rs62098083、rs10791273、rs891637、rs4760790、rs17671833、rs339861、rs17739222、rs17758258、rs1035406、rs17422436、rs884475、rs16891864、rs76157002、rs78609829、rs12698090、rs709767、rs11866721、rs888804、rs6716981、rs2357353、rs1981820、rs7961581、rs28381665、rs2059520、rs10158426、rs1415175、rs55654641、rs6495218、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs4697070、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs78812590、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373、rs74442924、rs12436584、rs7777527、rs161803、rs161826、rs161811、rs161810、rs4073661及びrs6872379からなる群から選択される1以上の一塩基多型である、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果を予測するためのバイオマーカーである。
【0054】
ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果と関連性が高いことから、前記一塩基多型は、登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型であることが好ましい。
【0055】
本実施形態のもう一つの態様は、NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2300238、rs4102411、rs7243006、rs28865089、rs141150739、rs10500796、rs565077、rs60428975、rs7998443、rs10241339、rs13431698、rs7152787、rs74134556、rs78800797、rs75246723、rs138934614、rs10742471、rs17491802、rs17141727、rs73545399、rs11756061、rs34552、rs17758258、rs236419、rs13164823、rs915590、rs1416812、rs117664886、rs28521602、rs4286915、rs28645096、rs12672026、rs7569387、rs1455800、rs3124952、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs1019531、rs10514401、rs7193285、rs16969774、rs75490002、rs10214302、rs12311397、rs2299766、rs12455665、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs10078789、rs6006488、rs112067135、rs10889849、rs11209536、rs243619、rs7850103、rs10889850、rs4838322、rs9448062、rs10451106、rs1587803、rs2910667、rs4698737及びrs2058370からなる群から選択される1以上の一塩基多型である、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果を判定するためのバイオマーカーである。
【0056】
ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果と関連性が高いことから、前記一塩基多型は、登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型であることが好ましい。
【0057】
本明細書において、「バイオマーカー」は、ヒトにおけるラクトフェリンの収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果を予測するための遺伝子マーカーであり、つまりラクトフェリンの収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果に特異的にそして有意的に関わる核酸配列である。上記の一塩基多型が収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果と関連することは、本発明によって初めて見出された知見である。
【0058】
本実施形態のバイオマーカーを被験者のDNA含有試料から検出することにより、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果を予測することができる。
【0059】
(第4の実施形態)
<ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果の予測システム>
本実施形態の一態様は、被験者の遺伝子検査結果を入力する入力部と、前記遺伝子検査結果と、データベースに保存されているNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs67762951、rs2433317、rs59616746、rs7806534、rs62098083、rs10791273、rs891637、rs4760790、rs17671833、rs339861、rs17739222、rs17758258、rs1035406、rs17422436、rs884475、rs16891864、rs76157002、rs78609829、rs12698090、rs709767、rs11866721、rs888804、rs6716981、rs2357353、rs1981820、rs7961581、rs28381665、rs2059520、rs10158426、rs1415175、rs55654641、rs6495218、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs4697070、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs78812590、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373、rs74442924、rs12436584、rs7777527、rs161803、rs161826、rs161811、rs161810、rs4073661及びrs6872379からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルの情報を照合する照合部と、前記遺伝子検査結果と前記一塩基多型のアレルの情報の照合結果に基づき、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する判定部と、前記判定部の結果を出力する出力部を含む、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測システムである。
【0060】
ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果と関連性が高いことから、前記一塩基多型は、登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型であることが好ましい。
【0061】
本実施形態のもう一つの態様は、被験者の遺伝子検査結果を入力する入力部と、前記遺伝子検査結果と、データベースに保存されているNCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2300238、rs4102411、rs7243006、rs28865089、rs141150739、rs10500796、rs565077、rs60428975、rs7998443、rs10241339、rs13431698、rs7152787、rs74134556、rs78800797、rs75246723、rs138934614、rs10742471、rs17491802、rs17141727、rs73545399、rs11756061、rs34552、rs17758258、rs236419、rs13164823、rs915590、rs1416812、rs117664886、rs28521602、rs4286915、rs28645096、rs12672026、rs7569387、rs1455800、rs3124952、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs1019531、rs10514401、rs7193285、rs16969774、rs75490002、rs10214302、rs12311397、rs2299766、rs12455665、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs10078789、rs6006488、rs112067135、rs10889849、rs11209536、rs243619、rs7850103、rs10889850、rs4838322、rs9448062、rs10451106、rs1587803、rs2910667、rs4698737及びrs2058370からなる群から選択される1以上の一塩基多型のアレルの情報を照合する照合部と、前記遺伝子検査結果と前記一塩基多型のアレルの情報の照合結果に基づき、前記被験者がラクトフェリンを摂取することによる拡張期血圧低減効果を予測する判定部と、前記判定部の結果を出力する出力部を含む、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測システムである。
【0062】
ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果と関連性が高いことから、前記一塩基多型は、登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型であることが好ましい。
【0063】
以下に、本実施形態の予測システムについて説明する。ここでは、一例としてラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測システムについて説明する。図1は、本実施形態の一態様における予測システムを表すブロック図である。図2は、本実施形態の一態様におけるラクトフェリンの収縮期血圧低減効果を予測する手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態のシステム1は、入力部10と、照合部11と、判定部12と、出力部13と、データベース14とを含む。
【0064】
システム1は、種々の情報処理及び情報の送受信が可能な情報処理装置であり、例えばサーバコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等のコンピュータである。
【0065】
入力部10は、被験者の遺伝子検査結果が入力される(S1)。被験者の遺伝子検査結果は、上述の<一塩基多型のアレル判定方法>で得られる結果である。被験者の遺伝子検査結果は、インターネット等のネットワークを介して入力部に入力されてもよく、被験者の遺伝子検査結果のデータが保存されたCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード等を含む可搬型記憶媒体をシステム1に接続することで入力されてもよい。
【0066】
照合部11では、入力部10に入力された被験者の遺伝子検査結果と、データベース14に保存されているラクトフェリンの収縮期血圧低減効果に関連する一塩基多型の情報とが照合される(S2)。データベース14に保存されている一塩基多型の情報とは、表1及び3に示す一塩基多型の情報である。データベース14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等を含む。なお、データベース14は、コンピュータに接続された他の記憶装置であってもよく、コンピュータが通信可能な他の記憶装置であってもよい。
【0067】
判定部12は、照合部11で照合された結果、被験者の遺伝子検査結果がデータベース14に保存されている一塩基多型のアレルにおいてA1アレル又はA2アレルを判定する(S3)。判定の結果、被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する(S41又はS42)。
【0068】
好ましくは、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が負の値のA1アレルであると判定されると、A1アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られやすいと予測する(S41)。
【0069】
また、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が正の値のA2アレルであると判定されると、A2アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られやすいと予測する(S41)。
【0070】
なお、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が負の値のA2アレルであると判定されると、A2アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られにくいと予測する。若しくは、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が正の値のA1アレルであると判定されると、A1アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られにくいと予測する(S42)。
【0071】
出力部13は、判定部12で予測されたラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果の予測結果を出力する(S5)。予測結果の出力形式は特に限定されず、別途接続されるプリンターにより印刷するためのデータであってもよく、被験者の所持する携帯端末に表示するためのデータであってもよい。
【0072】
上記システムによれば、被験者の遺伝子検査結果に基づいてラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測することができる。この予測結果は、収縮期血圧低減効果を期待する者がラクトフェリンを摂取するか否かを選択する上で有用な指標となる。例えば、ラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られると予測された者は、ラクトフェリンを積極的に摂取することを選択できる。あるいは、予測結果を知った者が被験者にラクトフェリンの摂取を推奨することが出来る。あるいは、予測結果に基づいてラクトフェリンを摂取した際の目標(例えば、収縮期血圧をどの程度低減させるのか)を設定することが出来る。あるいは、予測結果に基づいてラクトフェリンの臨床試験の被験者を選定することが出来る。また、例えば、ラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られにくいと予測された者は、ラクトフェリンを積極的に摂取する以外のことを選択できる。あるいは、予測結果を知った者が被験者にラクトフェリンの摂取以外のことを推奨することが出来る。あるいは、予測結果を知った者が被験者にラクトフェリンの摂取を推奨すると共に、ラクトフェリンの効果を増強出来る生活習慣を取り入れることを推奨することが出来る。あるいは、予測結果に基づいてラクトフェリンの臨床試験の被験者を選定することが出来る。
【0073】
本実施形態のもう一つの態様である予測システムについて以下に説明する。図3は、本実施形態の他の態様における予測システムを表すブロック図である。図4は、本実施形態の一態様におけるラクトフェリンの収縮期血圧低減効果を予測する手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態のシステム2は、入力部20と、照合部21と、判定部22と、出力部23と、データベース24と、補正部25と行動様式提案抽出部26とを含む。
【0074】
本態様では、システム2が補正部25と、行動様式提案抽出部26とをさらに有する点がシステム1と異なる。また、データベース24に保存される情報がラクトフェリンの収縮期血圧低減効果に関連する一塩基多型の情報に加え、被験者の属性や、生活習慣、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果に関連する情報とをさらに有する点がシステム1と異なる。
【0075】
入力部20は、被験者の遺伝子検査結果及び被験者の属性及び生活習慣等の情報が入力される(S11)。被験者の遺伝子検査結果は、上述の<一塩基多型の検出方法>で得られる結果である。被験者の属性の情報とは、例えば、性別、年齢、身長、体重、筋肉量、体脂肪量、臨床検査指標、健康状態、職業、居住地及び経済状況等が挙げられる。被験者の属性の情報は、上記の情報のうち少なくとも1つが入力されればよいが、好ましい属性の情報としては、年齢及び性別が挙げられる。被験者の生活習慣の情報とは、食習慣、睡眠習慣及び運動習慣等の情報が挙げられる。例えば、食習慣として、各食事(朝食、昼食及び夕食)の摂取量、食事の調理方法、飲食物の嗜好傾向、飲食物の選択傾向等が挙げられる。被験者の生活習慣の情報は、上記の情報のうち少なくとも1つが入力されればよい。
【0076】
被験者の生活習慣情報は、ラクトフェリンの摂取と、一塩基多型情報と、被験者の生活習慣情報との相互作用についてのモデル式に基づいて適宜選択される。例えば、説明変数を収縮期血圧低減効果に関するGWASで抽出した一塩基多型、被験者の属性及び生活習慣情報として食習慣を選択し、Step-wise法による変数選択、及び回帰分析を行ってモデル式を作成することができる。
【0077】
照合部21では、入力部20に入力された被験者の遺伝子検査結果と、データベース24に保存されているラクトフェリンの収縮期血圧低減効果に関連する一塩基多型の情報とが照合される(S12)。データベース24に保存されている一塩基多型の情報とは、表1及び3に示す一塩基多型の情報である。
【0078】
判定部22は、照合部21で照合された結果、被験者の遺伝子検査結果がデータベース24に保存されている一塩基多型のアレルにおいてA1アレル又はA2アレルを判定する(S13)。判定の結果、被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測する(S141又はS142)。
【0079】
好ましくは、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が負の値のA1アレルであると判定されると、A1アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られやすいと予測する(S141)。
【0080】
また、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が正の値のA2アレルであると判定されると、A2アレルを全く持たないと比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られやすいと予測する(S141)。
【0081】
なお、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が負の値のA2アレルであると判定される場合、A2アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られにくいと予測する。若しくは、少なくとも一方のアレルが表1及び3の一塩基多型でBETA値が正の値のA1アレルであると判定される場合は、A1アレルを全く持たない場合と比較して、被験者がラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られにくいと予測する(S142)。
【0082】
補正部25は、データベース24に保存されている被験者の属性に関する項目(例えば、性別、年齢、身長、体重、筋肉量、体脂肪量、臨床検査指標、健康状態、職業、居住地及び経済状況等)、生活習慣に関する項目(食習慣、睡眠習慣及び運動習慣等)を加えたラクトフェリンの収縮期血圧低減効果に関連するモデル式と、入力部20に入力された被験者の属性及び生活習慣の情報とを照合する(S15)。補正部25は、照合した結果に基づいて判定部22で得られた予測結果を補正する。つまり、前記回帰分析を使ったモデル式を適用して、ラクトフェリンを摂取することよる収縮期血圧低減変化割合の予測結果を補正することができる(S16)。
【0083】
行動様式提案抽出部26は、入力部20に入力された被験者の属性及び生活習慣の情報及び補正部25で補正された予測結果に基づいて、被験者への行動様式の提案を抽出する(S17)。行動様式としては、上述の生活習慣として挙げられたものが該当する。例えば、補正された予測結果が「ラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られやすい」という結果である場合、ラクトフェリンの摂取を推奨する提案を抽出する。また、補正部25で照合された被験者の生活習慣情報によって、収縮期血圧低減効果の程度が下方修正された場合、被験者に前記生活習慣を改善する提案を抽出する。さらに、被験者の収縮期血圧低減効果の程度を上方修正しうる行動様式がある場合には、その行動を提案する。
【0084】
出力部23は、補正部25で補正されたラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果の予測結果及び被験者への行動様式の提案を出力する(S18)。予測結果の出力形式は特に限定されず、別途接続されるプリンターにより印刷するためのデータであってもよく、被験者の所持する携帯端末に表示するためのデータであってもよい。
【0085】
なお、この実施形態において、行動様式提案抽出部26は含まれていなくてもよい。この場合、出力部23からは補正された予測結果のみが出力される。図5は、本実施形態の予測システムにより出力される出力結果の表示の一例である。
【0086】
上記予測システムによれば、被験者の遺伝子検査結果に基づいてラクトフェリンの収縮期血圧低減効果をより正確に予測することができる。この予測結果は、収縮期血圧低減効果を期待する者がラクトフェリンを摂取するか否かを選択する上で有用な指標となる。例えば、ラクトフェリンを摂取すると収縮期血圧低減効果が得られると予測された者は、ラクトフェリンを積極的に摂取することを選択できる。あるいは、予測結果を知った者が被験者にラクトフェリンの摂取を推奨することが出来る。あるいは、予測結果に基づいてラクトフェリンを摂取した際の目標(例えば、収縮期血圧をどの程度低減させるのか)を設定することが出来る。あるいは、予測結果に基づいてラクトフェリンの臨床試験の被験者を選定することが出来る。
【0087】
上記の例では、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測システムについて説明したが、本実施形態は、ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測システムを包含する。ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果予測システムにおいては、上記のデータベース14、24において表2及び4に示す一塩基多型の情報が保存され、照合部11,21においてこの一塩基多型情報と被験者の遺伝子検査結果が照合される。その他の工程については、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果予測システムと同じ工程が行われる。
【0088】
(第5の実施形態)
<ラクトフェリンを含有する飲食品組成物>
本実施形態の一態様は、対象の収縮期血圧低減に使用するための、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物であって、NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs7224972、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs28405322、rs16907751、rs7940114、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs11789451、rs35787608、rs7192373及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有する前記対象に摂取されるラクトフェリンを含有する飲食品組成物である。ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果と関連性が更に高いことから、前記対象者は、登録番号rs59616746、rs12677755、rs1877515、rs1512965、rs11214857、rs6048822、rs10958432、rs7940114、rs11789451及びrs12436584からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有し、選択された各一塩基多型の少なくとも1つがA2アレルであるか、登録番号rs2438140、rs7806534、rs4760790、rs7961581、rs7224972、rs28405322、rs16907751、rs2585769、rs2055713、rs12533403、rs35787608及びrs7192373からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有し、選択された各一塩基多型の少なくとも1つがA1アレルであることが好ましく、これらのA2アレル若しくはA1アレルを2つ有することがさらに好ましい。
【0089】
本実施形態のもう一つの態様は、対象の拡張期血圧低減に使用するための、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物であって、NCBI SNP Databaseにおける登録番号rs11756061、rs7569387、rs1455800、rs4890423、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6009184、rs6603884、rs243619及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有する前記対象に摂取されるラクトフェリンを含有する飲食品組成物である。ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果と関連性が更に高いことから、前記対象者は、登録番号rs11756061、rs7569387、rs11086837、rs4940576、rs12311397、rs6575815、rs9556959、rs6603884及びrs243619からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有し、選択された各一塩基多型の少なくとも1つがA2アレルであるか、登録番号rs1455800、rs4890423、rs6009184及びrs4838322からなる群から選択される1以上の一塩基多型を有し、選択された各一塩基多型の少なくとも1つがA1アレルであることが好ましく、これらのA2アレル若しくはA1アレルを2つ有することがさらに好ましい。
【0090】
上述の通り、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果又は拡張期血圧低減効果は、ラクトフェリンを摂取する対象が有する遺伝子型によって異なる。すなわち、表11に示すラクトフェリンの収縮期血圧低減効果に関する一塩基多型及び表12に示す拡張期血圧低減効果に関する一塩基多型を有する対象は、ラクトフェリンを含有する飲食品組成物を摂取すると、上記効果を十分に得ることができる。
【0091】
飲食品組成物としては、ラクトフェリンが腸内で分散されるような腸溶性の形態であることが好ましい。例えば、飲食品組成物は、錠剤(タブレット)、顆粒、細粒、粉及びカプセル等の固形であってもよく、液体、ゼリー及びシロップ等の流動物であってもよい。
【0092】
飲食品組成物に含まれるラクトフェリンの含有量は、1日あたり50mg以上1000mg以下が好ましく、100mg以上500mg以下がより好ましく、200mg以上400mg以下が特に好ましい。
【実施例0093】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0094】
<被験者>
Satoko Sato et al., Jpn Pharmacol Ther 2020; 48(7): 1179-1185(臨床データ取得試験)のPer Protocol Set(PPS:試験計画を遵守し、解析除外基準に該当する被験者を除いた集団を指す)解析対象者107名の内、試験の目的や内容について十分に理解したうえで、試験への参加について本人の自由意思による同意を文書にて得た者で、食事、運動及び睡眠等、生活習慣に影響する他の臨床試験に既に参加している者及び試験責任医師が不適当と判断した者を除く73名を対象とした。
【0095】
<臨床データ取得試験>
臨床データ取得試験は、プラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験であり、ラクトフェリンを250mg含有するタブレット若しくはラクトフェリンを含有していないタブレットを1日1回、12週間連続摂取し、摂取前及び12週間摂取後にそれぞれ検査施設(福原医院)において収縮期血圧及び拡張期血圧を測定した。以下、ラクトフェリンを250mg含有するタブレットを摂取した被験者群をラクトフェリン摂取群、ラクトフェリンを含有していないタブレットを摂取した被験者群を対照食品群と称する。
【0096】
臨床データ取得試験時の食習慣や運動習慣等の生活習慣に関して、アンケートにより回答を得た。生活習慣に関する項目については、後述する。
【0097】
<ゲノムワイド関連解析(GWAS)>
(1)試料と解析用アレイ
試料は、サンプリング用のGeneFix Saliva Collector(IsohelixTM)により唾液を採取した。DNAを抽出後、Illumina Global Screening Array+(イルミナ社製)を用いてゲノムワイドに遺伝子型タイピングを行い、SNPs情報を得た。
【0098】
(2)品質評価
解析には、下記の条件を満たす被験者及びSNPsデータを使用した。
(i)被験者
X染色体上SNPsの遺伝子型より性別を推定し、ゲノムから推定された性別が臨床データ取得試験時に取得した性別と一致することを確認した。被験者間のペアワイズidentify by descent(IBD)推定を行い、血縁関係又は同一人物由来と推定される被験者のデータが存在しないことを確認した。日本人集団で解析を行うため、アジア系集団(国際Hap Map計画のCHB及びJPTと同じ集団)に属していない被験者のデータ1名、日本人集団に属していない被験者のデータ1名を除外した。
【0099】
(ii)SNPs
以下の条件を満たすものを本試験における解析対象のSNPsとした。(以下の条件を満たさない1名を除外した)
-被験者ごとのcall rate>95%
-SNPsごとのcall rate>95%
-マイナーアレル頻度>5%
-ハーディーワインベルグ平衡の適合度検定 p値>0.000001
-常染色体上に位置するSNPs
【0100】
(i)及び(ii)により、70名を解析対象者として採用した。表7に品質評価後の被験者の属性を示す。
【0101】
【表7】
【0102】
(3)統計解析に用いたSNP数
(2)の品質評価により、286,204ヶ所のSNPsを解析対象とした。
【0103】
(4)統計解析
ラクトフェリン摂取による収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果への影響を確認するため、ラクトフェリン摂取群におけるラクトフェリンの摂取開始前と摂取12週後の値を測定し、摂取前後の変化割合を算出した。その結果を表8に示す。
【0104】
【表8】
【0105】
被験者のSNPsデータと臨床データ取得試験の収縮期血圧及び拡張期血圧の変化割合(摂取12週後の値/摂取開始前の値)を用いてGWASを実施した。ラクトフェリン摂取群又は対照食品群において、SNPと収縮期血圧又は拡張期血圧の変化割合について回帰分析を行った。また、ラクトフェリン摂取群で特異的に効果のあるSNPsを抽出するため、SNPとラクトフェリン摂取群と対照食品群の相互作用項を含めた回帰分析も行った。目的変数は、収縮期血圧及び拡張期血圧の変化割合とし、共変数は、性別及び年齢とした。遺伝モデルは、相加モデルを用いた。
【0106】
<実施例1-1>
ラクトフェリンの効果を予測可能なSNPsの水準をラクトフェリン摂取群と対照食品群の比較結果であるInteraction-P値<10-4と設定したところ、GWASにより収縮期血圧低減効果に関連するSNPs座位及び拡張期血圧低減効果に関連するSNPs座位が抽出された。収縮期血圧低減効果に関連するSNPs座位を表1、拡張期血圧低減効果に関連するSNPs座位を表2に示す。
【0107】
例えば、収縮期血圧低減に関連する座位として抽出したSNP ID:rs17739222の場合のBETA(Interaction)は、-0.1985である。具体的には、SNP ID:rs17739222の遺伝子型がCをもたない(TTである)場合の、ラクトフェリン摂取群と対照食品群の収縮期血圧変化割合の平均値の差と、SNP ID:rs17739222の遺伝子型がCTである場合の、ラクトフェリン摂取群と対照食品群の収縮期血圧変化割合の平均値の差とを比較して、遺伝子型がCをもたない場合の平均値の差に対して遺伝子型がCTである場合の平均値の差が19.85%低くなると予測できることを意味する。つまり、表1中のBETA(Interaction)の値が負の場合には、その値が低いほど、そのSNPのA1アレルを有するとラクトフェリン摂取による収縮期血圧低減効果が大きいことが示唆された。
【0108】
また、収縮期血圧低減に関連する座位として抽出したSNP ID:rs67762951の場合のBETA(Interaction)は、0.2214である。具体的には、SNP ID:rs67762951の遺伝子型がTをもたない(CCである)場合の、ラクトフェリン摂取群及び対照食品群の収縮期血圧変化割合の平均値の差と、SNP ID:rs67762951の遺伝子型がCTである場合の、ラクトフェリン摂取群及び対照食品群の収縮期血圧変化割合の平均値の差とを比較して、遺伝子型がTをもたない場合の平均値の差に対して遺伝子型がCTである場合の平均値の差が22.14%低くなると予測できることを意味する。つまり、表1中のBETA(Interaction)の値が正の場合には、その値が高いほど、そのSNPのA2アレルを有するとラクトフェリン摂取による収縮期血圧低減効果が大きいことが示唆された。
【0109】
以上の結果から、表1~2に示すSNPs座位を用いてラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果を予測できることが示唆された。
【0110】
<実施例1-2>
ラクトフェリンの効果を予測可能なSNPsの水準をラクトフェリン摂取群での摂取前後の比較結果であるLF群P値<10-4と設定したところ、GWASにより収縮期血圧低減に関連するSNPs座位及び拡張期血圧低減に関連するSNPs座位が抽出された。収縮期血圧低減に関連するSNPs座位を表3、拡張期血圧低減に関連するSNPs座位を表4に示す。なお、実施例1-1でも抽出した収縮期血圧低減に関連するSNPsは、rs2438140、rs59616746、rs7806534、rs4760790及びrs7961581、拡張期血圧低減に関連するSNPsは、rs11756061だった。
【0111】
例えば、収縮期血圧低減に関連する座位として抽出したSNP ID:rs78812590の場合のBETA(LF群)は、0.1472である。具体的には、ラクトフェリン摂取群におけるSNP ID:rs78812590の遺伝子型がAをもたない(GGである)場合の収縮期血圧変化割合の平均値に対し、SNP ID:rs78812590の遺伝子型がGAでありラクトフェリンを摂取した場合の収縮期血圧変化割合が、14.72%低くなると予測できることを意味する。つまり、表3中のBETA(LF群)の値が正の場合には、その値が高いほど、そのSNPのA2アレルを有するとラクトフェリン摂取による収縮期血圧低減効果が大きいことが示唆された。また、BETA(LF群)の値が負の場合には、その値が低いほど、そのSNPのA1アレルを有するとラクトフェリン摂取による収縮期血圧低減効果が大きいことが示唆された。
【0112】
以上の結果から、表3~4に示すSNPs座位を用いて収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果を予測できることが示唆された。
【0113】
<実施例2>
実施例1-2で抽出したSNPsについて、プラセボの影響を考慮し、ラクトフェリン摂取群と対照食品群の比較結果のInteraction-P値にて更に選別を実施した。Interaction-P値の水準は、有意傾向水準P<0.1とした。次に、ラクトフェリン摂取により収縮期血圧低減又は拡張期血圧低減に効果を持つアレルを含む遺伝子型(例:収縮期血圧低減、rs2438140、TT+TC)に層別して、収縮期血圧及び拡張期血圧のラクトフェリン摂取前後の測定値の平均値と変化割合を算出した。さらに、Interaction-P値<0.1のSNPsのうち、ラクトフェリン摂取により収縮期血圧低減及び拡張期血圧低減に効果を持つアレルを含む遺伝子型の変化割合が、表7に記載のラクトフェリン摂取群全体の平均よりも大きく低減したSNPsを抽出した。また、その確からしさを確認するため、ラクトフェリン摂取前と摂取後の測定値の平均値を対応のあるt検定により解析した。対応のあるt検定の有意水準は、P<0.05とした。また、各効果の変化割合がラクトフェリン摂取群全体の2倍以上低減しなかったSNPs座位に関しては、東北メディカル・メガバンク機構、全ゲノムリファレンスパネルに記載の日本人アレル頻度を参考に、日本人アレル頻度が10%以上のSNPs座位のみを選別した。以上の解析により、収縮期血圧低減に関与するとして抽出されたSNPs座位を表9、拡張期血圧低減に関与するとして抽出されたSNPs座位を表10に示す。なお、表9~10中のRef/Altは、Reference/Alternativeの塩基を示す。
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
例えば、収縮期血圧低減に関連する座位として抽出したSNP ID:rs2438140は、遺伝子型がTTとTCの場合、ラクトフェリン摂取前から摂取後の収縮期血圧変化割合の平均値は、92.6%であり、ラクトフェリンの摂取により高い収縮期血圧低減効果が得られることが示唆された。
【0117】
以上の結果から、表9~10に示すSNPs座位を用いて、より高い精度でラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果を予測できることが示唆された。
【0118】
<実施例3>
実施例2で抽出されたSNPs座位について、遺伝子型によってラクトフェリン摂取による収縮期血圧低減効果が得られるかについて検証した。
【0119】
ラクトフェリン摂取群を、各SNPsの遺伝子型3つに層別した(例:A1アレルがC、A2アレルがTである場合、CC、CT、TTの3型)。各遺伝子型におけるラクトフェリン摂取前後の平均変化率を確認し、平均変化率の減少量が10%以上である遺伝子型をa、平均変化率の減少量が1.5%以上10%未満の値となった遺伝子型をb、平均変化率の減少量が1.5%未満の値又は増加していた遺伝子型をcとした。結果を表11に示す。
【0120】
【表11】
【0121】
表1又は表3におけるBETA値が負のA1アレル又はBETA値が正のA2アレルを2つ有する遺伝子型では、結果がa又はbとなった。また、表1又は表3におけるBETA値が負のA1アレル又はBETA値が正のA2アレルを1つ有する遺伝子型ではa又はbの結果があった。つまり、実施例2で抽出されたSNPs座位において、表1又は表3におけるBETA値が負のA1アレル又はBETA値が正のA2アレル1つ又は2つ有する遺伝子型を有する対象がラクトフェリン、又はラクトフェリンを含有する飲食品組成物を摂取すると、収縮期血圧低減効果がより高いことが分かった。
【0122】
同様に拡張期血圧低減効果についても検証を行った。拡張期血圧低減効果の結果を表12に示す。
【0123】
【表12】
【0124】
表2又は表4におけるBETA値が負のA1アレル又はBETA値が正のA2アレルを2つ有する遺伝子型では、結果がa又はbとなった。また、表2又は表4におけるBETA値が負のA1アレル又はBETA値が正のA2アレルを1つ有する遺伝子型ではbの結果があった。つまり、実施例2で抽出されたSNPs座位において、表2又は表4におけるBETA値が負のA1アレル又はBETA値が正のA2アレルを1つ又は2つ有する遺伝子型を有する対象がラクトフェリン、又はラクトフェリンを含有する飲食品組成物を摂取すると、拡張期血圧低減効果がより高いことが分かった。
【0125】
<実施例4-1>
GWASで抽出されたSNPsと、ラクトフェリン摂取者の属性を組み合わせることで精度よく予測できると考えた。そこで、ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果を予測するモデル式の作成を行った。説明変数を収縮期血圧についてのGWASで抽出したSNPs、被験者の属性とし、Step-wise法による変数選択、および回帰分析を行い、ラクトフェリンの摂取による収縮期血圧低減効果を精度よく予測可能なモデル式を作成した。収縮期血圧についてのGWASで抽出したSNPsとしては、実施例2のSNPsとした。被験者の属性としては、年齢及び性別とした。
【0126】
Step-wise法による変数選択にて選択された項目とその効果量(回帰係数ともいう)を表13に示す。表13中、BETAは回帰係数を、SEは標準誤差を、Pは、p値を表す。回帰分析による決定係数は、表13のモデル式ではr=0.9751だった。
【0127】
【表13】
【0128】
図6は、収縮期血圧の変化割合の実測値に対する表13で作成したモデル式による収縮期血圧の変化割合の予測値を表す散布図である。
【0129】
また、GWASで抽出されたSNPsと、ラクトフェリン摂取者の属性及び生活習慣等を組み合わせることでさらに精度よく予測できると考えた。説明変数を収縮期血圧についてのGWASで抽出したSNPs、被験者の属性及び生活習慣情報とし、Step-wise法による変数選択、および回帰分析を行い、ラクトフェリンの摂取による収縮期血圧低減効果を精度よく予測可能なモデル式を作成した。被験者の属性としては、年齢及び性別とした。
【0130】
・お尻を覆う服が手に入らないとき自分は太っていると感じていた(0:全然違う、1:あまりそう思わない、2:どちらでもない、3:まあそう思う、4:その通り)
・菓子パンをよく食べた(0:あてはまらない、1:時々あてはまる、2:その傾向があった、3:その通り)
・間食が多かった(0:あてはまらない、1:時々あてはまる、2:その傾向があった、3:その通り)
・お付き合いで食べることが多かった(0:あてはまらない、1:時々あてはまる、2:その傾向があった、3:その通り)
・自分の体型のためにゲームや運動に加わることが出来なかった(0:全然違う、1:あまりそう思わない、2:どちらでもない、3:まあそう思う、4:その通り)
・人と比較して食べる速度が速かった(0:あてはまらない、1:時々あてはまる、2:その傾向があった、3:その通り)
【0131】
Step-wise法による変数選択にて選択された項目とその効果量を表14に示す。回帰分析による決定係数は、表14のモデル式ではr=0.9958だった。
【0132】
【表14】
【0133】
図7は、収縮期血圧の変化割合の実測値に対する表14で作成したモデル式による収縮期血圧の変化割合の予測値を表す散布図である。
【0134】
<実施例4-2>
ラクトフェリンの拡張期血圧低減効果を予測するモデル式の作成を行った。説明変数を拡張期血圧についてのGWASで抽出したSNPs、被験者の属性とし、Step-wise法による変数選択、および回帰分析を行い、ラクトフェリンの摂取による拡張期血圧低減効果を精度よく予測可能なモデル式を作成した。
【0135】
Step-wise法による変数選択にて選択された項目とその効果量を表15に示す。回帰分析による決定係数は、表15のモデル式ではr=0.9216だった。
【0136】
【表15】
【0137】
図8は、拡張期血圧の変化割合の実測値に対する表15で作成したモデル式による拡張期血圧の変化割合の予測値を表す散布図である。
【0138】
<実施例5>
ラクトフェリンの収縮期血圧低減効果及び拡張期血圧低減効果を予測できることを示す一例として、実施例4-1で得られたモデル式に基づいて、被験者がラクトフェリンを摂取することによる収縮期血圧低減効果を予測した。表13の結果から被験者の属性及び一塩基多型情報に基づき、収縮期血圧低減効果を下記の式により予測することができた。
収縮期血圧の変化割合=rs2438140のアレル数×(-0.0244)+rs7806534のアレル数×(-0.0497)+rs7961581のアレル数×(-0.0139)+rs1877515のアレル数×(0.0242)+rs7224972のアレル数×(0.0142)+rs11214857のアレル数×(0.0173)+rs6048822のアレル数×(0.0107)+rs10958432のアレル数×(0.0093)+rs16907751のアレル数×(0.0358)+rs7940114のアレル数×(0.0165)+rs2585769のアレル数×(-0.0084)+rs12533403のアレル数×(0.0250)+rs7192373のアレル数×(-0.0853)+rs12436584のアレル数×(0.0126)+0.9581
【0139】
また、表14の結果から被験者の属性、生活習慣情報及び一塩基多型情報に基づき、収縮期血圧低減効果を下記の式により予測することができた。
収縮期血圧の変化割合=性別×(0.0158)+rs2438140のアレル数×(-0.0125)+rs59616746のアレル数×(0.0048)+rs7806534のアレル数×(-0.0563)+rs7961581のアレル数×(-0.0147)+rs12677755のアレル数×(-0.0048)+rs1877515のアレル数×(0.0380)+rs7224972のアレル数×(0.0127)+rs11214857のアレル数×(0.0063)+rs6048822のアレル数×(0.0123)+rs10958432のアレル数×(0.0055)+rs28405322のアレル数×(-0.0116)+rs16907751のアレル数×(0.0314)+rs7940114のアレル数×(0.0183)+rs2585769のアレル数×(-0.0190)+rs12533403のアレル数×(0.0511)+rs11789451のアレル数×(0.0068)+rs7192373のアレル数×(-0.1017)+rs12436584のアレル数×(0.0086)+お尻をおおう服が手に入らないとき自分は太っていると感じていた×(0.0095)+菓子パンをよく食べた×(0.0128)+間食が多かった×(-0.0161)+お付き合いで食べることが多かった(-0.0265)+自分の体型のためにゲームや運動に加わることが出来なかった×(-0.0075)+人と比較して食べる速度が速かった×(0.0013)+0.9423
【0140】
上記式中、アレル数は、アレルが何れもA2アレルである場合は0、アレルの一方がA1アレルである場合は1、アレルが何れもA1アレルである場合は2とした。性別は、男性は1、女性は2とした。また生活習慣情報の数値は、上述の重み付けの値を使用した。
【0141】
さらに、遺伝子検査サービスでの提案(ラクトフェリンを摂取すること等)について、遺伝子検査前と比較して提案された行動に対する意欲がどのように変化したかを成人男女19名に対して7段階のアンケート調査を実施した。行動に対する意欲が低下したと回答した人は0名で、どちらともいえないと回答した人が2名、行動に対する意欲が高まった人は17名であり、約9割の人の行動になんらかの影響を与え、遺伝子検査サービスで行動変容法を提示することにより、行動変容を促したことが示された。
【符号の説明】
【0142】
1,2…システム、10,20…入力部、11,21…照合部、12,22…判定部、13,23…出力部、14,24…データベース、25…補正部、26…行動様式提案抽出部
図1
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