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特開2024-43266魚種学習装置、魚種学習システム、魚種学習方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043266
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】魚種学習装置、魚種学習システム、魚種学習方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/96 20060101AFI20240322BHJP
   G01S 7/539 20060101ALI20240322BHJP
   G01S 7/62 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
G01S15/96
G01S7/539
G01S7/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148357
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】笠井 昭範
(72)【発明者】
【氏名】平林 祐太
(72)【発明者】
【氏名】村垣 政志
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB03
5J083AC40
5J083AD01
5J083AD06
5J083AD17
5J083AE04
5J083AF16
5J083BA01
5J083BE21
5J083BE60
5J083CA01
5J083EA37
(57)【要約】
【課題】機械学習のためのアノテーションデータをより簡便且つ効率的に取得可能な魚種学習装置、魚種学習システム、魚種学習方法およびプログラムを提供する
【解決手段】サーバ20(魚種学習装置)は、所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部202と、制御部201と、を備える。ここで、制御部201は、所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、算出した特徴量の類似度に基づいて魚群をグループ分けし、魚種判別の精度向上のために規定されたアノテーション処理の優先条件に基づいて、各々のグループに優先度を設定し、各々のグループの優先度に基づいて、魚群のエコーデータをアノテーション処理に供するグループを決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、
算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、
魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定し、
各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項2】
請求項1に記載の魚種学習装置において、
前記特徴量は、魚種判別のニューラルネットワークの所定の中間層において前記魚群のエコーデータから算出される特徴量を含む、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項3】
請求項1に記載の魚種学習装置において、
前記特徴量は、前記魚群のエコーデータ以外の情報に基づく特徴量を含む、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項4】
請求項3に記載の魚種学習装置において、
前記特徴量は、前記魚群の深度の代表値、および前記魚群のエコーデータの取得位置の海況に関する所定の値の少なくとも一方を含む、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項5】
請求項1に記載の魚種学習装置において、
前記記憶部は、魚種判別の誤りの発生度合いを魚種ごとに記憶し、
前記優先条件は、前記誤りの発生度合いが高い前記魚種に対応する前記グループほど前記優先度を高く設定することを含む、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項6】
請求項1に記載の魚種学習装置において、
前記記憶部は、魚種ごとのアノテーションデータの数を識別可能な情報を記憶し、
前記優先条件は、前記アノテーションデータの数が少ない前記魚種に対応する前記グループほど前記優先度を高く設定することを含む、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項7】
請求項1に記載の魚種学習装置において、
前記制御部は、前記アノテーション処理に供すると決定した前記グループ中の所定の前記魚群のエコーデータについてアノテーションデータを取得したことに基づいて、当該グループに含まれるその他の前記魚群に、取得した前記アノテーションデータの魚種を割り当てる、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項8】
所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、
算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、
1つの前記グループに含まれる所定の前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供し、
前記アノテーション処理に供した前記魚群のエコーデータに対するアノテーションデータを取得したことに基づいて、当該グループに含まれるその他の前記魚群に、取得した前記アノテーションデータの魚種を割り当てる、
ことを特徴とする魚種学習装置。
【請求項9】
所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、
算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、
魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定し、
各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する、
ことを特徴とする魚種学習システム。
【請求項10】
所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、
算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、
1つの前記グループに含まれる所定の前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供し、
前記アノテーション処理に供した前記魚群のエコーデータに対するアノテーションデータを取得したことに基づいて、当該グループに含まれるその他の前記魚群に、取得した前記アノテーションデータの魚種を割り当てる、
ことを特徴とする魚種学習システム。
【請求項11】
所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、
算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、
魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定し、
各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する、
ことを特徴とする魚種学習方法。
【請求項12】
コンピュータに、
所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出する機能と、
算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けする機能と、
魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定する機能と、
各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する機能と、を実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教師データ(アノテーションデータ)を用いて魚種判別のための機械学習を行う魚種学習装置、魚種学習システム、魚種学習方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の魚群を探知する魚群探知装置が知られている。この種の魚群探知装置では、水中に超音波が送波され、その反射波が受波される。受波された反射波の強度に応じたエコーデータが生成され、生成されたエコーデータに基づいてエコー画像が表示される。ユーザは、エコー画像から魚群を確認でき、魚群の捕獲を円滑に進めることができる。
【0003】
この場合、エコー画像上の魚群について、さらに魚種が判別されて表示されると好ましい。これにより、ユーザは、自身が望む魚種の魚を効率よく捕獲できる。
【0004】
このような魚種の判別は、たとえば、機械学習モデル(機械学習アルゴリズム)を用いて行われ得る。機械学習モデルに対して、多数の教師データ(アノテーションデータ)を用いた学習が行われる。それぞれのアノテーションデータは、魚群のエコーデータと、当該魚群の範囲(水深、時間)と、当該魚群の魚種とを含んでいる。
【0005】
以下の特許文献1には、ソナーの受信データに対して入力された魚群の魚種を、魚群探知機の受信データにおける魚群の魚種に適用する魚群学習システムが記載されている。このシステムでは、ソナーの受信データに含まれる魚群と魚群探知機の受信データに含まれる魚群とが自動で対応付けられる。そして、ソナー側の魚群に魚種が入力されると、入力された魚種が、この魚種に対応する魚群探知機側の魚群に適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-12193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、アノテーションデータの生成は、オペレータの端末装置にエコー画像が表示されて行われる。すなわち、オペレータは、端末装置に表示されたエコー画像上において、魚群の範囲(水深、時間)を指定し、指定した魚群の範囲に対して魚種のラベルを付する。これにより、魚群の範囲(水深、時間)と、当該魚群の範囲のエコーデータと、当該魚群の魚種とが対応付けられたアノテーションデータが生成される。生成されたアノテーションデータは、端末装置から、機械学習装置に送信され、魚種判別の機械学習モデルの学習に供される。
【0008】
このように、アノテーションデータの生成には、煩雑な作業を伴う。特に、アノテーションデータの生成のために所定時間分のエコーデータを処理する場合、オペレータは、当該時間分の膨大な数のエコー画像に対して、逐一、上記の作業を行わねばならない。
【0009】
かかる課題に鑑み、本発明は、機械学習のためのアノテーションデータをより簡便且つ効率的に取得可能な魚種学習装置、魚種学習システム、魚種学習方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、魚種学習装置に関する。この態様に係る魚種学習装置は、所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定し、各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する。
【0011】
本態様に係る魚種学習装置によれば、アノテーション処理に供される魚群のエコーデータが、優先度に基づいて決定されたグループの魚群のエコーデータに制限される。このため、アノテーション処理の対象とされる魚群の数が制限され、オペレータにおけるアノテーション処理の負荷を軽減できる。また、アノテーション処理の対象とされるグループが、魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて決定されるため、魚種判別の精度を向上させ得るグループのアノテーションデータを取得できる。よって、アノテーションデータを効率的に取得でき、魚種判別の精度を効率的に高めることができる。
【0012】
本態様に係る魚種学習装置において、前記特徴量は、魚種判別のニューラルネットワークの所定の中間層において前記魚群のエコーデータから算出される特徴量を含み得る。
【0013】
この構成によれば、各々のグループに同一魚種の魚群が含まれやすくなる。このため、処理に供すると決定されたグループから、同じ魚種のアノテーションデータを効率的に取得できる。
【0014】
また、前記特徴量は、前記魚群のエコーデータ以外の情報に基づく特徴量を含んでもよい。
【0015】
たとえば、前記特徴量は、前記魚群の深度の代表値、および前記魚群のエコーデータの取得位置の海況に関する所定の値の少なくとも一方を含んでよい。
【0016】
この構成によっても、各々のグループに同一魚種の魚群のエコーデータが含まれやすくなるため、処理に供すると決定されたグループから、同じ魚種のアノテーションデータを効率的に取得できる。
【0017】
本態様に係る魚種学習装置において、前記記憶部は、魚種判別の誤りの発生度合いを魚種ごとに記憶し、前記優先条件は、前記誤りの発生度合いが高い前記魚種に対応する前記グループほど前記優先度を高く設定することを含み得る。
【0018】
この構成によれば、魚種判別に誤りが発生しやすい魚種に対応するグループに、高い優先度が設定されやすくなる。このため、魚種判別に誤りが発生しやすい魚種について、アノテーションデータが優先的に取得されやすくなる。よって、取得されたアノテーションデータによる機械学習により、当該魚種に対する判別誤りを改善でき、魚種全体の判別精度を高めることができる。
【0019】
あるいは、前記記憶部は、魚種ごとのアノテーションデータの数を識別可能な情報を記憶し、前記優先条件は、前記アノテーションデータの数が少ない前記魚種に対応する前記グループほど前記優先度を高く設定することを含み得る。
【0020】
この構成によれば、アノテーションデータの数が少ない魚種に対応するグループに、高い優先度が設定されやすくなる。このため、アノテーションデータの数が十分でない魚種について、アノテーションデータが優先的に取得されやすくなる。よって、取得されたアノテーションデータによる機械学習により、当該魚種に対する判別精度を改善でき、魚種全体の判別精度を高めることができる。
【0021】
本態様に係る魚種学習装置において、前記制御部は、前記アノテーション処理に供すると決定した前記グループ中の所定の前記魚群のエコーデータについてアノテーションデータを取得したことに基づいて、当該グループに含まれるその他の前記魚群に、取得した前記アノテーションデータの魚種を割り当てるよう構成され得る。
【0022】
この構成によれば、グループ中の所定の魚群のエコーデータについてアノテーションデータが得られると、当該グループに含まれるその他の魚群に、取得したアノテーションデータの魚種が割り当てられるため、アノテーションデータの生成作業をさらに簡便化できる。また、各々のグループは、魚種に関する特徴量でグループ化されているため、1つのグループには同じ魚種の魚群が含まれる可能性が高い。このため、上記のように、グループ中の所定の魚群のエコーデータに対して得られた魚種をこのグループのその他の魚群に対して割り当てたとしても、アノテーションデータとしての精度は保たれ得る。よって、簡易且つ効率的に多数のアノテーションデータを生成できる。
【0023】
本発明の第2の態様は、魚種学習装置に関する。この態様に係る魚種学習装置は、所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、1つの前記グループに含まれる所定の前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供し、前記アノテーション処理に供した前記魚群のエコーデータに対するアノテーションデータを取得したことに基づいて、当該グループに含まれるその他の前記魚群に、取得した前記アノテーションデータの魚種を割り当てる。
【0024】
本態様に係る魚種学習装置によれば、グループ中の所定の魚群のエコーデータについてアノテーションデータが得られると、当該グループに含まれるその他の魚群に、取得したアノテーションデータの魚種が割り当てられるため、アノテーションデータの生成作業を簡便化できる。また、各々のグループは、魚種に関する特徴量でグループ化されているため、1つのグループには同じ魚種の魚群が含まれる可能性が高い。このため、上記のように、グループ中の所定の魚群のエコーデータに対して得られた魚種をこのグループのその他の魚群に対して割り当てたとしても、アノテーションデータとしての精度は保たれる。よって、簡便且つ効率的に多数のアノテーションデータを生成できる。
【0025】
本発明の第3の態様は、魚種学習システムに関する。この態様に係る魚種学習システムは、所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定し、各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する。
【0026】
第3の態様によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏される。
【0027】
本発明の第4の態様は、魚種学習システムに関する。この態様に係る魚種学習システムは、所定時間分のエコーデータを記憶する記憶部と、制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、1つの前記グループに含まれる所定の前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供し、前記アノテーション処理に供した前記魚群のエコーデータに対するアノテーションデータを取得したことに基づいて、当該グループに含まれるその他の前記魚群に、取得した前記アノテーションデータの魚種を割り当てる。
【0028】
第4の態様によれば、上記第2の態様と同様の効果が奏される。
【0029】
本発明の第5の態様は、魚種学習方法に関する。この態様に係る魚種学習方法は、所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出し、算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けし、魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定し、各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する。
【0030】
本発明の第6の態様は、コンピュータに所定の機能を実行させるプログラムに関する。本態様に係るプログラムは、所定時間分のエコーデータ中の魚群ごとに魚種に関する特徴量を算出する機能と、算出した特徴量の類似度に基づいて前記魚群をグループ分けする機能と、魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、各々の前記グループに優先度を設定する機能と、各々の前記グループの前記優先度に基づいて、前記魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する前記グループを決定する機能と、を含む。
【0031】
上記第5および第6の態様によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏される。
【発明の効果】
【0032】
以上のとおり、本発明によれば、機械学習のためのアノテーションデータをより簡便且つ効率的に取得可能な魚種学習装置、魚種学習システム、魚種学習方法およびプログラムを提供することができる。
【0033】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、実施形態に係る、魚種判別システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る、魚種学習システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る、ニューラルネットワークによる魚種判別処理を模式的に示す図である。
図4図4は、実施形態に係る、端末装置から受信したアノテーションデータを管理するデータベースの構成を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る、魚種判別の誤りの発生状況を管理する管理情報の構成を示す図である。
図6図6(a)~図6(f)は、それぞれ、実施形態に係る、アノテーションデータの生成工程を模式的に示す図である。
図7図7は、実施形態に係る、アノテーションデータの生成処理を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係る、アノテーション処理の際に端末装置に表示される画面の一例を示する図である。
図9図9は、変更例2に係る、アノテーションデータの生成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
以下の実施形態では、サーバ20が、特許請求の範囲に記載の「魚種学習装置」に対応する。但し、本発明に係る「魚種学習装置」は、必ずしも、サーバ20に限られるものではなく、たとえば、端末装置50等の他の装置が、本発明に係る「魚種学習装置」の機能を実行してもよい。
【0037】
図1は、魚種判別システム1の構成を示す図である。
【0038】
魚種判別システム1は、水中探知装置10と、サーバ20とを備える。水中探知装置10は、船2に設置される魚群探知機である。水中探知装置10は、外部通信網30(たとえば、インターネット)および基地局40を介して、サーバ20と通信可能である。水中探知装置10およびサーバ20は、それぞれ、相互に通信を行うためのアドレス情報を保持している。それぞれのアドレス情報は、初期設定時に、水中探知装置10およびサーバ20に設定される。
【0039】
水中探知装置10は、送受波器11と、制御ユニット12とを備える。送受波器11は、船2の船底に設置され、制御ユニット12は、船の操舵室等に設置される。送受波器11と制御ユニット12は、信号ケーブル(図示せず)で接続されている。送受波器11は、送受波用の超音波振動子を備える。送受波器11は、制御ユニット12からの制御に応じて、超音波振動子により、海底4に向かって所定周波数の超音波3(送信波)を送波し、その反射波を受波する。送受波器11は、受波した反射波に基づく受信信号を制御ユニット12に送信する。
【0040】
制御ユニット12は、受信信号を処理して、各深度のエコー強度を示すエコーデータを生成する。制御ユニット12は、送受波器11から入力される受信信号から、深度に応じた反射波の強度を示すエコーデータを生成する。送信波を送波したタイミングからの経過時間が深度に対応する。ここで、反射波の強度は、深度が大きくなるほど減衰する。したがって、制御ユニット12は、深度の差異に拘わらずエコーデータを定量的に扱えるようにするために、経過時間に応じて減衰する反射波の強度を補正し、強度を補正したエコーデータを生成する。
【0041】
制御ユニット12は、エコーデータに基づく各深度のエコー強度を時系列に並べて、1画面分のエコー画像を生成する。制御ユニット12は、生成したエコー画像を表示部に表示させる。制御ユニット12は、超音波の送受波ごとにエコー画像を更新する。ユーザは、エコー画像を参照することで、魚群5の存在および位置を把握できる。
【0042】
さらに、制御ユニット12は、生成したエコーデータを、随時、サーバ20に送信する。このとき、制御ユニット12は、船2に設置されたGPSにより検出された位置情報を、サーバ20に送信する。
【0043】
サーバ20は、受信したエコーデータを記憶するとともに、制御ユニット12と同様のエコー画像を生成する。サーバ20は、機械学習モデル(機械学習アルゴリズム)により、エコー画像に含まれる魚群に対し、魚種ごとに予測確率(その魚種である確率)を算出する。
【0044】
サーバ20は、機械学習モデルにより算出した魚種ごとの予測確率に基づき、当該魚群に対する魚種の判別結果を取得する。サーバ20は、こうして取得した当該魚種の判別結果を、判別対象の魚群の範囲(深度、時間)とともに、エコーデータの受信先の水中探知装置10に送信する。
【0045】
水中探知装置10は、受信した判別結果および魚群の範囲(深度、時間)に基づき、エコー画像上の対応する範囲に魚種の判別結果を重ねて表示する。これにより、ユーザは、エコー画像上の各魚群の魚種を確認でき、所望の魚の漁獲を円滑に進めることができる。
【0046】
ユーザは、エコー画像上に表示された魚群の魚種と、自身が実際に捕獲した魚群の魚種とが異なる場合、サーバ20の魚種判別結果を修正するためのフィードバック情報を、水中探知装置10または自身の端末装置を介してサーバ20に送信する。たとえば、ユーザは、自身の端末装置からサーバ20にアクセスして、所定日時における魚群の魚種判別結果を、当該日時のエコー画像とともに、サーバ20から取得する。ユーザは、これにより、自身の端末装置に表示されたエコー画像上の魚種判別結果を当該端末装置に対する操作により修正した後、確定操作を行う。これにより、修正された魚種と、修正対象の魚群の範囲(深度、時間)とを含むフィードバック情報が、当該端末装置からサーバ20に送信される。サーバ20は受信したフィードバック情報を適宜記憶する。
【0047】
さらに、サーバ20は、機械学習モデルに対する学習を行うためのアノテーションデータ(教師データ)を、外部通信網30を介して、複数の端末装置50から取得する。すなわち、サーバ20は、水中探知装置10から受信したエコーデータを、複数の端末装置50の何れかに分配する。端末装置50は、受信したエコーデータからアノテーションデータを生成するために用いられる。サーバ20および端末装置50は、アノテーションデータを用いた魚種判別の機械学習のための魚種学習システム6を構成する。
【0048】
端末装置50は、専門家等の、アノテーションデータの生成を行うオペレータが所持する。オペレータは、受信したエコーデータに基づくエコー画像を端末装置50に表示させ、これらエコー画像に含まれる魚群に魚種を設定する。設定された魚種は、当該魚群の範囲(深度、時間)と、当該範囲のエコーデータとに対応付けられる。こうして対応付けられた魚種、魚群の範囲およびエコーデータによって、当該魚群に対するアノテーションデータが構成される。アノテーションデータは、当該アノテーションデータが生成されたエコー画像の識別情報とともに、サーバ20に送信される。
【0049】
サーバ20は、受信したアノテーションデータを用いて、機械学習モデルに対する学習を行う。これにより、機械学習モデルの魚種判別精度が高められる。
【0050】
なお、ここでは、サーバ20が端末装置50に提供したエコーデータに対して、アノテーションデータが生成され、生成されたアノテーションデータがサーバ20に戻されたが、サーバ20に対するアノテーションデータの提供方法は、これに限られるものではない。たとえば、サーバ20以外の装置から端末装置50にエコーデータが提供されてアノテーションデータが生成され、生成されたアノテーションデータがサーバ20に提供されてもよい。
【0051】
また、図1には、水中探知装置10が1つだけ図示されているが、実際は、多数の水中探知装置10が外部通信網30および最寄りの基地局を介して、サーバ20と通信可能である。また、サーバ20と通信を行う水中探知装置10は、図1に示すように船2に設置されるものの他、定置網に設置される水中探知装置等、漁法が異なる数種の水中探知装置が含まれ得る。
【0052】
図2は、魚種学習システム6の構成を示すブロック図である。
【0053】
サーバ20は、制御部201と、記憶部202と、通信部203とを備える。制御部201は、CPU等により構成される。記憶部202は、ROM、RAM、ハードディスク等により構成される。記憶部202には、魚種判別のためのプログラムおよび機械学習のためのプログラムが記憶されている。制御部201は、記憶部202に記憶されたプログラムにより、各部を制御する。通信部203は、制御部201からの制御により、外部通信網30および基地局40を介して、水中探知装置10と通信を行う。また、サーバ20は、外部通信網30を介して、複数の端末装置50と通信を行う。サーバ20は、さらに、表示部および入力部を備えてよい。
【0054】
端末装置50は、パーソナルコンピュータやタブレット型コンピュータ等の、情報を入出力可能な装置である。端末装置50は、制御部501と、記憶部502と、表示部503と、入力部504と、通信部505とを備える。
【0055】
制御部501は、CPU等により構成される。記憶部502は、ROM、RAM、ハードディスク等により構成される。記憶部502には、アノテーションデータを生成するためのプログラムが記憶されている。制御部501は、記憶部502に記憶されたプログラムにより、各部を制御する。表示部503は、液晶モニタ等により構成され、制御部501からの制御により所定の画像を表示させる。入力部504は、マウスやキーボード等の入力手段を備える。通信部505は、制御部501からの制御により、サーバ20と通信を行う。
【0056】
図3は、ニューラルネットワークによる魚種判別処理を模式的に示す図である。
【0057】
本実施形態では、機械学習として、ニューラルネットワークを用いた機械学習が適用される。たとえば、ニューロンを多段に組み合わせたディープラーニングによるニューラルネットワークが適用される。但し、適用される機械学習はこれに限られるものではなく、サポートベクターマシーンや決定木等の他の機械学習が適用されてもよい。
【0058】
サーバ20の制御部201は、処理対象の1画面分のエコーデータから魚群の範囲(深度、時間)を抽出する。エコー画像上において、エコー強度が所定の閾値以上であり、且つ、エコー強度に繋がりがある領域が魚群として抽出され、さらにこの魚群の最大時間幅および最大深度幅により構成される矩形の範囲が魚群の範囲として抽出される。魚群の抽出方法については、出願人が先に出願した国際公開第2019/003759号の記載が、参照により取り込まれ得る。
【0059】
制御部201は、抽出した魚群の範囲のエコーデータを、図3の機械学習モデル(ニューラルネットワークによる機械学習アルゴリズム)301の入力301aに適用する。
【0060】
機械学習モデル301の出力301bには、イワシ、アジ、サバなどの魚種の項目が割り当てられている。機械学習モデル301の入力301aに魚群の範囲のエコーデータが適用されると、機械学習モデル301の出力301bの各項目から、当該魚群の魚種が各項目の魚種である確率(予測確率)が出力される。図3の例では、イワシの項目から75%の予測確率が出力され、サバの項目から15%の予測確率が出力され、アジの項目から10%の予測確率が出力されている。
【0061】
各項目の予測確率は、出力条件302と照合される。出力条件302には、たとえば、予測確率が所定の下限値以上で且つ一番順位(最高)である項目の魚種を判別結果303として出力する条件が適用される。下限値は、確度が低い魚種が判別結果として出力されることを防ぐために設定される。図3の例では、予測確率が75%であるイワシが、魚種の判別結果303として出力される。
【0062】
機械学習モデル301に対する機械学習は、一連のアノテーションデータ(教師データ)を機械学習モデル301の入力301aおよび出力301bに順番に適用することにより行われる。すなわち、機械学習モデル301の入力301aに、1つのアノテーションデータに含まれる魚群のエコーデータが入力され、機械学習モデル301の出力301bには、このアノテーションデータに含まれる魚種に対応する項目に100%が設定され、その他の項目には0%が設定されて、機械学習が行われる。
【0063】
機械学習モデル301の入力301aには、魚群のエコーデータの他に、当該エコーデータが得られた位置や、その位置の海況データ(その位置を含む海域の温度、流速、塩分濃度等)等の、魚種判別に用い得る他の情報が入力されてもよい。海況データは、海上の浮標等に設置された検出器によって検出され、各検出器から無線通信によりサーバ20に周期的に送信される。検出器は、GPSを備え、GPSで検出した位置情報を海況データとともにサーバ20に送信する。サーバ20は、浮標(検出器)の位置ごとに、海況データを記憶部202に記憶させる。水中探知装置10が海況データを取得するための検出器を備える場合、水中探知装置10からサーバ20に海況データが位置情報とともに送信されてもよい。
【0064】
ところで、アノテーションデータの生成は、通常、端末装置50にエコー画像が表示されて行われる。すなわち、専門家等のオペレータは、端末装置50に表示されたエコー画像上において、魚群の範囲(水深、時間)を指定し、指定した魚群の範囲に対して魚種のラベルを付する。これにより、魚群の範囲(水深、時間)と、当該魚群の範囲のエコーデータと、当該魚群の魚種とが対応付けられたアノテーションデータが生成される。生成されたアノテーションデータは、端末装置50からサーバ20に送信され、魚種判別の機械学習モデル301の学習に供される。
【0065】
このように、アノテーションデータの生成には、煩雑な作業を伴う。特に、アノテーションデータの生成のために所定時間分のエコーデータを処理する場合、オペレータは、当該時間分の膨大な数のエコー画像に対して、逐一、上記の作業を行わねばならない。このような作業には多大の労力が掛かり、オペレータにはかなりの負担となる。
【0066】
そこで、本実施形態では、機械学習のためのアノテーションデータをより簡便且つ効率的に取得可能な処理が、サーバ20において行われる。以下、この処理について説明する。
【0067】
図4は、端末装置50から受信したアノテーションデータを管理するデータベースの構成を示す図である。
【0068】
サーバ20の制御部201は、記憶部202に図4のデータベースを構築する。データベースには、魚群の範囲(時間幅、深度幅)と、その魚群の範囲に含まれるエコーデータと、その魚群の魚種とが対応付けられて保持される。魚群の範囲、エコーデータおよび魚種は、アノテーションデータを構成する。制御部201は、後述の処理によりアノテーションデータを取得して、データベースに記憶させる。
【0069】
さらに、このアノテーションデータに日時と位置が対応付けられる。日時は、当該魚群のエコーデータが取得された日時である。位置は、当該魚群のエコーデータが取得された位置である。位置は、上記のように、水中探知装置10からエコーデータとともに受信する位置情報から取得される。
【0070】
これらの日時および位置により、上述の海況データがさらにアノテーションデータに紐づけられ得る。すなわち、サーバ20の制御部201は、海上の浮標等に設置された検出器から位置情報とともに受信した海況データを、位置情報および受信日時に対応付けて、記憶部202に記憶させる。制御部201は、図4の各々のアノテーションデータに対応付けられた日時および位置に最も接近する受信日時および位置の海況データを、各々のアノテーションデータに紐づけることができる。
【0071】
図5は、魚種判別の誤りの発生状況を管理する管理情報の構成を示す図である。
【0072】
サーバ20の制御部201は、記憶部202に図5の管理情報を記憶させる。管理情報は、現在から一定期間前までに生じた魚種判別の誤りの発生度合いを魚種ごとに管理する情報である。管理情報は、各々の魚種と、判別数および判別誤り数とが対応付けて構成される。上述の一定期間は、たとえば、数週間または数カ月に設定される。判別数は、機械学習モデル301によって得られた各々の魚種の判別結果の数である。判別誤り数は、魚種ごとの判別結果のうち上述のフィードバック情報によって修正された判別結果の数である。各々の魚種において、判別誤り数を判別数で除することにより、判別の誤り率が算出され得る。
【0073】
図6(a)~(f)は、アノテーションデータの生成工程を模式的に示す図である。
【0074】
図6(a)に示すように、サーバ20の制御部201は、水中探知装置10から受信した所定時間分のエコーデータを、エコー画像1枚分の時間幅で区切って、単位エコーデータE1~Enを構成する。単位エコーデータE1~Enによって、処理対象のデータセット(所定時間分の単位エコーデータの集合)が構成される。
【0075】
これらの単位エコーデータE1~Enの各々に対して、魚群の範囲Rが設定される。魚群の範囲は、上述の手法により制御部201が自動で設定してよく、あるいは、サーバ20のオペレータが単位エコーデータE1~Enのエコー画像に対する操作により手動で設定してもよい。
【0076】
次に、制御部201は、設定した魚群の範囲Rの魚群ごとに、魚種に関する特徴量を算出する。特徴量は、図3の機械学習モデル301(魚種判別のニューラルネットワーク)の入力301aに魚群(魚群の範囲R)のエコーデータを入力した場合に所定の中間層(入力301aと出力301bとの間の所定のユニット)において算出される特徴量を含み得る。また、特徴量は、魚群(魚群の範囲R)のエコー強度の代表値(平均値、中央値またはモード等)やエコー強度の分布を示す値(分散等)を含んでよい。
【0077】
また、特徴量は、魚群(魚群の範囲R)のエコーデータ以外の情報に基づく特徴量を含んでもよい。たとえば、魚群(魚群の範囲R)の深度の代表値、および当該魚群のエコーデータの取得位置の海況に関する所定の値(水温、流速、塩分濃度、等)の少なくとも一方を含んでよい。魚群の深度の代表値には、たとえば、魚群の範囲Rの深度幅の中間値、魚群の範囲の幾何学的重心の深度、または魚群の範囲のエコー強度分布における重心の深度等が用いられ得る。海況に関する所定の値は、上記のように、魚群のエコーデータに紐づけられ得る海況データから取得される。
【0078】
この他、水中探知装置10が、魚群の範囲R0のエコーデータを取得した周波数とは異なる周波数でさらに送受波を行って、当該魚群の範囲R0について他のエコーデータを取得する場合、これら2つの周波数間における、魚群の範囲Rのエコー強度の代表値の差分値が、特徴量に含まれてもよい。この場合、この差分値は、図3の機械学習モデル301の入力301aに適用されてもよい。
【0079】
このように2種類の周波数のエコー強度の差分値を魚種判別に用いることで、機械学習モデル301による魚種判別精度を高めることができる。たとえば、鰾の有無によって、各周波数のエコー強度に差が生じる。このため、魚群からのエコーの強度の差分値を機械学習モデル301にさらに適用することによって、当該魚群の魚種を精度良く判別できる。また、この差分値は、魚種に関する特徴量としても有効なものとなる。
【0080】
制御部201は、算出した特徴量の類似度に基づいて魚群をグループ分け(クラスタリング)する。ここでは、図6(b)のように、特徴量空間における魚群の集散状態によりクラスタリングが行われる。クラスタリングの手法としては、既存の手法(たとえば、K-means等)が用いられ得る。図6(b)では、1つの円が1つの魚群を示している。こうして、データセットから抽出された魚群は、図6(c)の破線で示されるように、特徴量の類似度によってグループ化される。ここでは、3つのグループG1~G3に魚群がグループ分けされている。
【0081】
なお、図6(b)、(c)には、3つの特徴量の軸が示されているが、特徴量の種類は3つに限られるものではなく、1つ、2つまたは4つ以上の種類の特徴量が、魚群のグループ分けに用いられてもよい。また、図6(b)、(c)には、便宜上、18個の魚群が示されているが、特徴量空間に分布する魚群の数は、図6(a)のデータセットから抽出される魚群の数となる。また、グループの数も3つに限られるものではなく、これら魚群の特徴量に応じて変わり得る。
【0082】
次に、制御部201は、魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて、図6(d)に示すように、各々のグループG1~G3に優先度を設定する。優先条件は、各々のグループG1~G3に対応する魚種における魚種判別の誤りの発生度合い(機械学習モデル301による魚種判別について魚種ごとにどの程度の誤りが発生しているか)に基づいて、各々のグループG1~G3に優先度を設定することを含み得る。あるいは、優先条件は、各々のグループG1~G3に対応する魚種のアノテーションデータの数に基づいて、各々のグループに優先度を設定することを含んでよい。
【0083】
上述のように、特徴量は、魚種に関するものであるため、特徴量空間には、各々の魚種に概ね対応する領域(対応領域)を予め規定できる。制御部201は、特徴量空間において、各々のグループに最も近い対応領域の魚種を、当該グループに対応する魚種として、上記優先条件に基づく優先度を、各々のグループに設定する。
【0084】
たとえば、優先条件が魚種判別の誤りの発生度合いに基づくものである場合、制御部201は、各々のグループに対応する魚種における誤りの発生度合いを、図5の管理テーブルを参照して把握する。たとえば、制御部201は、各々のグループに対応する魚種の判別数および判別誤り数から判別誤り率(判別誤り数÷判別数)をグループごとに算出する。そして、制御部201は、判別誤り率が高いものから順に優先度が高くなるように、各々のグループに優先度を設定する。
【0085】
また、優先条件が、各々のグループに対応する魚種のアノテーションデータの数に基づくものである場合、制御部201は、各々のグループに対応する魚種におけるアノテーションデータの数を、図4のデータベースを参照して把握する。たとえば、制御部201は、各々のグループに対応する魚種に対応付けられたアノテーションデータを計数して、アノテーションデータの数をグループごとに算出する。そして、制御部201は、アノテーションデータの数が少ないものから順に優先度が高くなるように、各々のグループに優先度を設定する。
【0086】
なお、ここでは、優先条件が1つの場合の優先度の設定方法を示したが、複数の優先条件が複合されて優先度が設定されてもよい。この場合、たとえば、優先条件ごとに、各々のグループに中間優先度が設定される。そして、これら優先条件間に予め設定された重み付けでこれら中間優先度が積算され、その積算値が高いものから順に優先度が高くなるように、各々のグループに最終的な優先度が設定される。
【0087】
こうして、各々のグループに優先度が設定される。図6(d)では、グループG1の優先度が最高順位であり、グループG3の優先度が最低順位である。その後、制御部201は、各々のグループの優先度に基づいて、魚群のエコーデータをアノテーション処理に供するグループを決定する。たとえば、制御部201は、優先順位が最高であるグループのみを、アノテーション処理に供するグループとして決定する。あるいは、制御部201は、最高順位から所定番目(たとえば3番目)までのグループを、アノテーション処理に供するグループとして決定してもよい。どの順位までのグループをアノテーション処理に供するかを、サーバ20のオペレータが任意に設定可能であってもよい。
【0088】
次に、制御部201は、アノテーション処理に供すると決定したグループ中の魚群のうち、所定の魚群のエコーデータを、アノテーション処理に供する。たとえば、制御部201は、このグループ中の1つの魚群のエコーデータのみをアノテーション処理に供する。この場合、制御部201は、図6(a)のデータセットのうち、アノテーション処理に供するべき魚群を含む単位エコーデータを、当該魚群の範囲を特定する情報とともに、端末装置50に送信する。図6(d)の例では、グループG1に含まれる魚群のうちの1つの魚群を含む単位エコーデータが、当該魚群の範囲を特定する情報とともに、端末装置50に送信される。
【0089】
なお、アノテーション処理に供される魚群のエコーデータは、当該グループ中の複数(たとえば数個)の魚群のエコーデータであってもよい。また、アノテーション処理に供すると決定されたグループからアノテーション処理にエコーデータが供される魚群の数を、サーバ20のオペレータが任意に設定できてもよい。当該グループから複数の魚群のエコーデータがアノテーション処理に供される場合、制御部201は、当該グループから複数の魚群を選択し、選択した魚群のエコーデータを、上記と同様、端末装置50に送信する。
【0090】
グループからアノテーション処理に供される魚群を選択する方法は、種々の方法を用い得る。たとえば、時間が最も古い魚群(複数選択の場合は時間が古い順に所定数の魚群)が選択されてもよく、あるいは、時間が最も新しい魚群(複数選択の場合は時間が新しい順に所定数の魚群)が選択されてもよい。また、魚群の範囲の形状、時間幅または深度幅や、魚群の範囲におけるエコー強度の分布状態に基づいて、アノテーション処理に供される魚群がグループから選択されてもよい。たとえば、グループ中で最も広い魚群が、アノテーション処理に供される魚群として選択されてもよい。
【0091】
その後、制御部201は、アノテーション処理に供したエコーデータにアノテーション処理を行うことにより生成されたアノテーションデータを、端末装置50から受信する。これにより、制御部201は、当該グループに含まれるその他の魚群に、受信したアノテーションデータの魚種を割り当てる。
【0092】
図6(e)の例では、グループG1の1つの魚群に対して魚種がサバであることを含むアノテーションデータが取得されている。このため、図6(f)に示すように、グループG1のその他の魚群にも、サバの魚種が割り当てられる。これにより、グループG1に含まれる全ての魚群の魚種がサバに設定され、これら魚群ごとに、魚群の範囲、エコーデータおよび魚種からなるアノテーションデータが生成される。生成されたこれらのアノテーションデータは、図4のデータベースに記憶される。
【0093】
なお、1つのグループから複数の魚群のエコーデータがアノテーション処理に供される場合、複数の魚群に対するアノテーションデータが端末装置50から取得される。この場合、制御部201は、取得した複数のアノテーションデータの魚種を比較し、これらの魚種が完全に一致すれば、当該グループのその他の魚群に、これらアノテーションデータに含まれる魚種を割り当てる。また、取得した複数のアノテーションデータの魚種が複数に分かれる場合、制御部201は、そのうち最も多い魚種を当該グループのその他の魚群に割り当てる。
【0094】
図7は、アノテーションデータの生成処理を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、上述の図6(b)~(f)の工程をサーバ20の制御部201の処理として示したものである。
【0095】
制御部201は、所定時間分のデータセットに対して設定された複数の魚群ごとに特徴量を算出する(S101)。この工程は、図6(b)の工程に対応する。制御部201は、算出した特徴量間の類似度に基づき、複数の魚群をグループ化する(S102)。この工程は、図6(c)の工程に対応する。制御部201は、魚種判別の精度向上のために規定されたアノテーション処理の優先条件に基づいて、各々のグループに優先度を設定する(S103)。この工程は、図6(d)の工程に対応する。
【0096】
制御部201は、各々のグループの優先度に基づいて、魚群のエコーデータをアノテーション処理に供するグループを決定する(S104)。図6(d)の例では、この工程において、最高順位のグループG1が、当該グループに決定される。制御部201は、決定したグループ中の所定の魚群のエコーデータを端末装置50に送信してアノテーション処理に供する(S105)。この工程では、上記のように、当該魚群を含む単位エコーデータと魚群の範囲を示す情報とが、端末装置50に送信される。図6(d)の例では、グループG1中の1つの魚群のエコーデータが、アノテーション処理に供される。
【0097】
制御部201は、アノテーション処理に供したエコーデータに対して生成されたアノテーションデータを、端末装置50から受信する(S106:YES)。制御部201は、当該グループに含まれるその他の魚群に、受信したアノテーションデータの魚種を割り当てる(S107)。この工程は、図6(e)、(f)の工程に対応する。図6(e)、(f)の例では、グループG1に含まれる全ての魚群の魚種がサバに割り当てられる。
【0098】
図8は、アノテーション処理の際に端末装置50に表示される画面P2の一例を示する図である。
【0099】
図8の画面P2は、図7のステップS105において送信された情報に基づき端末装置50の表示部503に表示される。ステップS105では、上記のように、アノテーション対象のグループ中の所定の魚群を含む単位エコー画像と、当該魚群の範囲を示す情報とが、サーバ20から端末装置50に送信される。端末装置50の制御部501は、受信した単位エコー画像に基づくエコー画像を表示させ、さらに、受信した魚群の範囲を示す情報に基づき、このエコー画像上に魚群の範囲を示すマーカーM10を表示させる。
【0100】
図8の例では、魚群の範囲を示す情報に基づき、魚群F10を囲む範囲にマーカーM10が表示される。その他の魚群F11~F16は、アノテーション対象外のグループに含まれた魚群、または、アノテーション対象のグループ中のアノテーション処理に供されない魚群であるため、マーカーM10は表示されない。
【0101】
オペレータは、マーカーM0が表示された魚群F10に対して魚群を設定すればよい。オペレータがマーカーM10の範囲に対する操作を行うと、魚種の選択候補C10がスクロールバーとともに表示される。オペレータは、選択候補C10のスクロールバーを操作して所望の魚種を表示させ、その後、自身が設定しようとする魚種を選択する。図8の例では、魚群F10の魚種としてサバが選択されている。
【0102】
アノテーション処理を行うべき魚群がさらに存在する場合、画面P2に、画面を遷移させるための送りボタンが含まれる。たとえば、図7のステップS105において、1つのグループから複数の魚群のエコーデータがアノテーション処理に供された場合や、ステップS104において、優先度が最高順位から所定順位までの複数のグループがアノテーション対象として決定された場合、端末装置50において、アノテーション処理を行うべき魚群をそれぞれ含む複数のエコー画像が生成される。このような場合、これらのエコー画像を順番に表示させ得るように、画面P2に送りボタンが表示される。オペレータは、送りボタンを操作してエコー画像を遷移させ、それぞれのエコー画像上のマーカーM10により囲まれた魚群に対し、上記と同様の操作により魚種を設定する。
【0103】
こうして、魚種を設定するための操作を行った後、オペレータは、入力部504を介して、確定操作を行う。これにより、オペレータが設定した魚種を含むアノテーションデータが、端末装置50からサーバ20に送信される。これに応じて、サーバ20の制御部201は、図7のステップS107の処理を実行する。
【0104】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0105】
図7のステップS101~S105の処理により、アノテーション処理に供される魚群のエコーデータが、優先度に基づいて決定されたグループの魚群のエコーデータに制限される。このため、図8に示したように、アノテーション処理の対象とされる魚群の数が制限され、オペレータにおけるアノテーション処理の負荷を軽減できる。また、図7のステップS103、S104では、アノテーション処理の対象とされるグループが、魚種判別の精度向上のために規定された優先条件に基づいて決定されるため、魚種判別の精度を向上させ得るグループのアノテーションデータを取得できる。よって、アノテーションデータを効率的に取得でき、魚種判別の精度を効率的に高めることができる。
【0106】
図6(b)を参照して説明したとおり、特徴量は、図3に示した魚種判別のニューラルネットワーク(機械学習モデル301)の所定の中間層(ユニット)において魚群のエコーデータから算出される特徴量を含み得る。これにより、各々のグループに同一魚種の魚群のエコーデータが含まれやすくなる。このため、図7のステップS104において決定されたグループから、同じ魚種のアノテーションデータを効率的に取得できる。
【0107】
図6(b)を参照して説明したとおり、魚群のエコーデータ以外の情報に基づく特徴量を含んでもよい。たとえば、特徴量は、魚群の深度の代表値、および魚群のエコーデータの取得位置の海況に関する所定の値(水温、流速、塩分濃度等)の少なくとも一方を含んでよい。これにより、上記と同様、各々のグループに同一魚種の魚群のエコーデータが含まれやすくなるため、図7のステップS104において決定されたグループから、同じ魚種のアノテーションデータを効率的に取得できる。
【0108】
図5に示したように、記憶部202は、魚種判別の誤りの発生度合いを魚種ごとに記憶し、図7のステップS103に適用される優先条件は、各々のグループに対応する魚種の誤りの発生度合い(判別誤り率)に基づいて、各々のグループに優先度を設定することを含み得る。これにより、魚種判別に誤りが発生しやすい魚種に対応するグループに、高い優先度が設定されやすくなる。このため、魚種判別に誤りが発生しやすい魚種について、アノテーションデータが優先的に取得されやすくなる。よって、取得されたアノテーションデータによる機械学習により、当該魚種に対する判別誤りを改善でき、魚種全体の判別精度を高めることができる。
【0109】
また、図4に示したように、記憶部202は、魚種ごとのアノテーションデータの数を識別可能な情報(データベース)を記憶し、図7のステップS103に適用される優先条件は、各々のグループに対応する魚種のアノテーションデータの数に基づいて、各々のグループに優先度を設定することを含み得る。これにより、アノテーションデータの数が少ない魚種に対応するグループに、高い優先度が設定されやすくなる。このため、アノテーションデータの数が十分でない魚種について、アノテーションデータが優先的に取得されやすくなる。よって、取得されたアノテーションデータによる機械学習により、当該魚種に対する判別精度を改善でき、魚種全体の判別精度を高めることができる。
【0110】
図7のステップS107において、制御部201は、アノテーション処理に供すると決定したグループ中の所定の魚群のエコーデータについてアノテーションデータを取得したことに基づいて、当該グループに含まれるその他の魚群に、取得したアノテーションデータの魚種を割り当てる。これにより、端末装置50におけるアノテーションデータの生成作業をさらに簡便化できる。また、各々のグループは、魚種に関する特徴量でグループ化されているため、1つのグループには同じ魚種の魚群が含まれる可能性が高い。このため、上記のように、グループ中の所定の魚群のエコーデータに対して得られた魚種をこのグループのその他の魚群に対して割り当てたとしても、アノテーションデータとしての精度は保たれ得る。よって、簡易且つ効率的に多数のアノテーションデータを生成できる。
【0111】
<変更例1>
本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、また、本発明の実施形態は、上記構成の他に種々の変更が可能である。
【0112】
たとえば、上記実施形態では、図7のステップS105において、アノテーション対象のグループ中の所定の魚群のみについて、エコーデータがアノテーション処理に供されたが、アノテーション対象のグループ中の全ての魚群のエコーデータがアノテーション処理に供されてもよい。この場合、図7のステップS107は省略される。この構成によっても、アノテーション処理に供されるエコーデータが、ステップS104で決定されたグループの魚群のエコーデータに制限されるため、端末装置50におけるアノテーション処理を簡便かつ効率的に行うことができる。
【0113】
<変更例2>
上記実施形態では、図7のステップS107の処理が、ステップS104で決定されたグループに対してのみ行われたが、ステップS102でグループ化された他のグループも、図7のステップS107の処理対象とされてもよい。この場合、図7のフローチャートは、たとえば、図9のように変更され得る。
【0114】
図9のフローチャートでは、図7のフローチャートのステップS103、S104が省略され、ステップS105がステップS111に置き換えられる。ステップS111において、制御部201は、ステップS102で設定した各々のグループ中の所定の魚群のエコーデータを端末装置50に送信してアノテーション処理に供する。また、制御部201は、各々のグループに対するアノテーションデータを端末装置50から受信すると(S106:YES)、各々のグループのアノテーションデータに含まれている魚種を、各々のグループの他の魚群の魚種に割り当てる。こうして、制御部201は、全てのグループの全ての魚群に対するアノテーションデータを取得する。
【0115】
図9の処理においても、アノテーション処理の対象が、各々のグループ中の一部の魚群に制限されるため、端末装置50におけるアノテーション処理の作業が簡易化される。また、各々のグループは、魚種に関する特徴量でグループ化されているため、1つのグループには同じ魚種の魚群が含まれる可能性が高い。このため、ステップS107において、グループ中の所定の魚群のエコーデータに対して得られた魚種をこのグループのその他の魚群に割り当てたとしても、アノテーションデータとしての精度は保たれ得る。よって、簡易且つ効率的に多数のアノテーションデータを生成できる。
【0116】
なお、このように全てのグループがステップS107の対象とされなくてもよく、たとえば、優先度以外の基準で選択されたグループが、ステップS107の対象とされてもよい。
【0117】
<変更例3>
上記実施形態では、図7の処理が、サーバ20の制御部201において行われたが、これらの処理が、サーバ20以外の他の装置で行われてもよく、たとえば、端末装置50の制御部501が図7の処理を行ってもよい。
【0118】
この場合、サーバ20の制御部201は、図6(a)のデータセットおよび各々の魚群の範囲Rを示す情報を端末装置50に送信する。端末装置50の制御部501は、受信したこれらの情報に基づき、図7のステップS101~S105の処理を実行し、所定の魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する。ステップS105において、制御部501は、所定の魚群のエコーデータを、自身の表示部503に表示する。これにより、図8の画面P2が表示される。
【0119】
画面P2に対するオペレータの操作によりアノテーションデータが生成されると(S106:YES)、制御部501は、ステップS107の処理を実行する。これにより、ステップS104で決定されたグループの全ての魚群についてアノテーションデータが生成される。制御部501は、生成した全てのアノテーションデータをサーバ20に送信する。これにより、制御部501は、図7の処理を終了する。
【0120】
この構成によっても、上記実施形態1と同様の効果が奏される。同様に、図9の処理が、端末装置50の制御部501によって行われてもよい。これらの場合、端末装置50が、特許請求の範囲に記載の魚種学習装置に対応する。
【0121】
<変更例4>
また、図7の処理が、サーバ20と端末装置50とで分担されてもよい。たとえば、図7のステップS101~S103、S106、S107の処理がサーバ20の制御部201により行われ、ステップS104、S105の処理が端末装置50の制御部501により行われてもよい。
【0122】
この場合、サーバ20の制御部201は、図6(a)のデータセットおよび各々の魚群の範囲とともに、各魚群が属するグループを示す情報と、各グループの優先度とを、端末装置50に送信する。端末装置50の制御部501は、受信した優先度に基づきアノテーション対象のグループを決定し(S104)、さらに、決定したグループ中の所定の魚群のエコーデータをアノテーション処理に供する(S105)。ステップS105において、制御部501は、上記と同様、自身の表示部503に図8の画面P2を表示させる。
【0123】
ステップS105の処理に応じてアノテーションデータが生成されると、制御部501は、生成したアノテーションデータと、このアノテーションデータがどのグループのエコーデータに対応するものかを示す対応情報とを、サーバ50に送信する。サーバ20の制御部201は、対応情報により特定されるグループに対してステップS107の処理を実行する。
【0124】
この構成では、ステップS104におけるグループの決定基準が、個々の端末装置50ごとに相違していてもよい。たとえば、各々の端末装置50を所有するオペレータが、アノテーション処理の対象とする優先度の範囲を任意に設定可能であってもよい。また、最上位の優先度のグループに対してステップS105の処理によりアノテーション処理の作業が完了した後、制御部501が、次の優先度のグループに対して作業を行うかをオペレータに問い合わせ、オペレータがこれを受け入れた場合に次の優先度のグループをアノテーション処理の対象に決定して、再度、ステップS105の処理を実行してもよい。
【0125】
このように、図7の処理が、サーバ20と端末装置50とで分担される場合も、上記実施形態1と同様の効果が奏される。同様に、図9の処理が、サーバ20の制御部201と端末装置50の制御部501とで分担されてもよい。この場合、たとえば、図9のステップS101、S102がサーバ20側で行われ、ステップS111以降の処理が端末装置50側で行われる。ステップS111以降の処理は、図9の処理全体を端末装置50が行う場合の変更例3に係るステップS111以降の処理と同様である。これらの場合、サーバ20の制御部201および端末装置50の制御部501が、特許請求の範囲に記載の魚種学習システムの制御部に対応する。
【0126】
<その他の変更例>
上記実施形態では、魚種ごとのアノテーションデータの数を識別可能な情報として、図4のデータベースが記憶部202に記憶されたが、この情報はこれに限られるものではない。たとえば、この情報として、魚種ごとのアノテーションデータの数そのものを示す管理情報が、記憶部202に記憶されてもよい。この場合、サーバ20の制御部201は、機械学習に供されるアノテーションデータを新たに取得したことに応じて、当該管理情報を更新する。
【0127】
また、上記実施形態では、図6(d)の優先度を設定するための優先条件として、魚種判別の誤りの発生度合いに基づく優先条件と、アノテーションデータの数に基づく優先条件とが示されたが、優先度を設定するための優先条件は、これらに限られるものではない。魚種判別の精度向上のために規定されたものである限りにおいて、他の優先条件が用いられてもよい。たとえば、アノテーションデータの取得頻度や取得時期(元となるエコーデータの取得時期)に偏りがあることが、優先条件に加味されてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、図6(a)および図8に示したように、アノテーションデータを構成する魚群の範囲(時間範囲、深度範囲)が矩形であったが、アノテーションデータを構成する魚群の範囲は、矩形以外の他の形状であってもよく、たとえば、魚群の範囲が、魚群の外縁に沿った形状であってもよい。この場合、上記のように、エコー画像上において、エコー強度が所定の閾値以上であり、且つ、エコー強度に繋がりがある領域が魚群として抽出され、抽出された魚群の外縁に沿った範囲が、魚群の範囲として抽出される。
【0129】
また、上記実施形態では、機械学習モデル301を用いた魚種の判別処理がサーバ20側で行われたが、この判別処理が水中探知装置10側で行われてもよい。この場合、アノテーションデータにより更新された機械学習モデル301が、随時、水中探知装置10に送信され、水中探知装置10に記憶される。水中探知装置10の制御部ユニット12は、送受波器11の受波により取得したエコーデータに基づいて、上記サーバ20の制御部201と同様、機械学習モデル301を用いた魚種判別を実行し、判別結果をエコー画像に表示させる。
【0130】
また、上記実施形態では、水中探知装置10が魚群探知機であったが、水中探知装置10がソナー等、魚群探知機以外の装置であってもよい。
【0131】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0132】
6 魚種学習システム
20 サーバ(魚種学習装置)
201 制御部
202 記憶部
301 機械学習モデル
図1
図2
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図8
図9