(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004327
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 61/12 20060101AFI20240109BHJP
B60P 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B62D61/12
B60P5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103938
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉井 嘉一郎
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 悠平
(72)【発明者】
【氏名】仁木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 亮太
(57)【要約】
【課題】荷物の積載状態の違いにかかわらず車両本体の姿勢を良好に維持することが可能でありながら、エンジンの無駄な燃料消費を抑制することが要望されていた。
【解決手段】走行用油圧装置4により走行駆動され、かつ、車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、車両本体に支持されるとともに、姿勢変更用油圧装置6,7により駆動されて走行装置を車両本体に対して位置変更可能に支持する複数の支持機構と、油圧ポンプ9bを駆動するエンジン9aと、積載部に積載される荷物の積載状況を計測する積載状況検出手段SJと、積載状況検出手段SJにて検出される荷物の積載状況の違いに応じてエンジン9aの駆動状態を変更調整する変更調整手段HTと、が備えられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を積載可能な積載部を有する車両本体と、
走行用油圧装置により走行駆動され、かつ、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、
前記車両本体に支持されるとともに、姿勢変更用油圧装置により駆動されて前記走行装置を前記車両本体に対して位置変更可能に支持する複数の支持機構と、
前記走行用油圧装置及び前記姿勢変更用油圧装置に対して作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、
前記積載部に積載される前記荷物の積載状況を計測する積載状況検出手段と、
前記積載状況検出手段にて検出される前記荷物の積載状況の違いに応じて前記エンジンの駆動状態を変更調整する変更調整手段と、が備えられている作業車。
【請求項2】
前記積載状況検出手段は、前記積載状況として前記荷物の重量を計測する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記積載状況検出手段は、前記積載状況として前記積載部に対する前記荷物の積載箇所のバラつきを計測する請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記変更調整手段は、前記積載状況検出手段の検出結果に基づいて前記荷物に起因する荷重負荷の大きさを判別し、前記荷重負荷が大であれば前記エンジンの出力を大に調整し、前記荷重負荷が小さくなるほど前記エンジンの出力を小さくさせるように、前記エンジンの駆動状態としての前記エンジンの出力を調整する請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記変更調整手段は、前記積載状況検出手段の検出結果に基づいて前記荷物に起因する荷重負荷の大きさを判別し、前記荷重負荷が大であれば前記作動油の供給量を大に調整し、前記荷重負荷が小さくなるほど前記作動油の供給量が小さくなるように、前記エンジンの駆動状態としての前記作動油の供給量を調整する請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記走行用油圧装置として油圧モータが備えられ
前記姿勢変更用油圧装置として油圧シリンダが備えられ、
前記油圧ポンプから複数の前記油圧モータ及び複数の前記油圧シリンダに前記作動油を供給する圧油供給路と、
前記圧油供給路を遮断して前記油圧ポンプからの前記作動油を貯留部に戻す開放状態と、前記圧油供給路を通して前記作動油を複数の前記油圧モータ及び複数の前記油圧シリンダに供給する遮蔽状態と、に切り換え可能なアンロード弁と、が備えられ、
前記変更調整手段は、
前記アンロード弁を前記遮蔽状態と前記開放状態とに設定周期で交互に切り換えるインターバル操作が可能であり、かつ、前記荷重負荷が大であれば前記遮蔽状態となる間隔が長く、前記荷重負荷が小さくなるほど前記開放状態となる間隔が長くなる前記インターバル操作を行うことにより、前記作動油の供給量を調整する請求項5に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸のある不整地を移動するのに適した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車として、従来では、車両本体に対して、油圧シリンダの操作により伸縮操作可能な屈折リンク機構を介して、油圧モータにて駆動される4つの走行車輪が支持され、走行車輪の高さを変更させることにより、凹凸のある不整地であっても車両本体の姿勢を維持しながら走行可能に構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、この作業車では、油圧シリンダや油圧モータに作動油を供給する油圧供給源としてエンジンにて駆動される油圧ポンプを備えており、エンジンの出力は常に最大出力に近い高出力に設定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記作業車は、車両本体を水平姿勢に維持することを利用して、車両本体の上部に荷物を積載して走行する作業形態で用いられる。従来では、エンジンの出力は常に最大出力に近い高出力に設定されているので、不整地に位置している状態で荷物が積載されるような場合であっても良好に対応できる。
【0005】
しかし、上記従来構成では、車両本体の上部に常に荷物が積載されているとは限らず積載物が無い場合もある。このように積載物が無い場合であっても、エンジンが高出力にて作動するので、エンジンの単位時間当たりの燃料消費量が不必要に多くなり、貯留されている燃料を消費するまでの作業継続時間が短くなるおそれがあり、また、騒音が大きくなる等の不利な面がある。
【0006】
そこで、荷物の積載状態の違いにかかわらず車両本体の姿勢を良好に維持することが可能でありながら、エンジンによる無駄な燃料消費を抑制することが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車の特徴構成は、荷物を積載可能な積載部を有する車両本体と、走行用油圧装置より走行駆動され、かつ、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、前記車両本体に支持されるとともに、姿勢変更用油圧装置により駆動されて前記走行装置を前記車両本体に対して位置変更可能に支持する複数の支持機構と、前記走行用油圧装置及び前記姿勢変更用油圧装置に対して作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記積載部に積載される前記荷物の積載状況を計測する積載状況検出手段と、前記積載状況検出手段にて検出される前記荷物の積載状況の違いに応じて前記エンジンの駆動状態を変更調整する変更調整手段と、が備えられている点にある。
【0008】
本発明によれば、積載状況検出手段によって積載部に積載されている荷物の積載状況,例えば、荷物の重量、あるいは、積載部上における荷物の積載箇所のバラつきの状態など、荷物が積載されたことによりどのような荷重負担が掛かっているかについての状況を検出する。そして、変更調整手段が、荷物の積載状況の違いに応じてエンジンの駆動状態を調整する。
【0009】
例えば、荷物の荷重負荷が大であるときには、エンジンの出力を大にすることで、車両本体の姿勢保持等を良好に行える。一方、荷物の荷重負荷が小であるときには、例えば、エンジンの出力を低減させるなどエンジンに対する駆動負荷を軽減させることにより、エンジンによる無駄な燃料消費を抑制することが可能となる。尚、このとき、荷物の荷重負荷が小であることから、エンジンの出力を小にしても車両本体の姿勢保持を維持することは可能である。
【0010】
従って、荷物の積載状態の違いにかかわらず車両本体の姿勢を良好に維持することが可能でありながら、エンジンによる無駄な燃料消費を抑制することが可能となった。
【0011】
本発明においては、前記積載状況検出手段は、前記積載状況として前記荷物の重量を計測すると好適である。
【0012】
積載部に積載される荷物の重量が大であれば、荷物による荷重負荷が大きく、重量が小であれば荷重負荷が小さくなる。そこで本構成では、積載される荷物の重量を計測して、計測された荷物の重量に応じてエンジンの駆動負荷を変更調整する。その結果、荷物の重量が小であれば、エンジンによる無駄な燃料消費を抑制することが可能となる。
【0013】
本発明においては、前記積載状況検出手段は、前記積載状況として前記積載部に対する前記荷物の積載箇所のバラつきを計測すると好適である。
【0014】
積載部に対して荷物の偏った状態で積載されていれば、車両本体に対して偏荷重がかかり、車両本体の姿勢を保持する際における荷重負荷が大きくなり、エンジンに対する駆動負荷が大きくなる。そこで、本構成では、積載状況として荷物の積載箇所のバラつきを計測する。その結果、積載部に対して荷物が中央にバランスよく載置されていれば、偏荷重が掛かる場合に比べて、エンジンによる無駄な燃料消費を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記変更調整手段は、前記積載状況検出手段の検出結果に基づいて前記荷物に起因する荷重負荷の大きさを判別し、前記荷重負荷が大であれば前記エンジンの駆動状態として、前記エンジンの出力を大に調整し、前記荷重負荷が小さくなるほど前記エンジンの出力を小さくさせるように、前記エンジンの駆動状態としての前記エンジンの出力を調整すると好適である。
【0016】
本構成によれば、荷物の荷重負荷が大であるときには、エンジンの出力を大にすることで、車両本体の姿勢保持等を良好に行える。一方、荷物の荷重負荷が小であるときには、エンジンの出力を小にすることで駆動負荷を軽減させることができる。このようにエンジンの出力を変更することで、軽負荷のときのエンジンの燃料消費を的確に抑制することができる。
【0017】
本発明においては、前記変更調整手段は、前記積載状況検出手段の検出結果に基づいて前記荷物に起因する荷重負荷の大きさを判別し、前記荷重負荷が大であれば前記作動油の供給量を大に調整し、前記荷重負荷が小さくなるほど前記作動油の供給量が小さくなるように前記作動油の供給量を調整すると好適である。
【0018】
本構成によれば、荷物の荷重負荷が大であるときには、油圧ポンプからの作動油の供給量を大にすることで、車両本体の姿勢保持を良好に行える。一方、荷物の荷重負荷が小であるときには、油圧ポンプからの作動油の供給量を小さくすることで駆動負荷を軽減させることができる。このようにエンジンにて駆動される油圧ポンプによる作動油の供給量を変更することで、油圧ポンプを駆動するエンジンの駆動負荷が低減され、軽負荷のときのエンジンの燃料消費を抑制することができる。
【0019】
本発明においては、前記走行用油圧装置として油圧モータが備えられ、前記姿勢変更用油圧装置として油圧シリンダが備えられ、前記油圧ポンプから複数の前記油圧モータ及び複数の前記油圧シリンダに前記作動油を供給する圧油供給路と、前記圧油供給路を遮断して前記油圧ポンプからの前記作動油を貯留部に戻す開放状態と、前記圧油供給路を通して前記作動油を複数の前記油圧モータ及び複数の前記油圧シリンダに供給する遮蔽状態と、に切り換え可能なアンロード弁と、が備えられ、前記変更調整手段は、前記アンロード弁を前記遮蔽状態と前記開放状態とに設定周期で交互に切り換えるインターバル操作が可能であり、かつ、前記荷重負荷が大であれば前記遮蔽状態となる間隔が長く、前記荷重負荷が小さくなるほど前記開放状態となる間隔が長くなる前記インターバル操作を行うことにより、前記作動油の供給量を調整すると好適である。
【0020】
本構成によれば、変更調整手段は、アンロード弁を遮蔽状態と開放状態とに設定周期で交互に切り換えるインターバル操作を行う。
【0021】
設定周期内において遮断状態となる間隔が長くなると、開放状態となる間隔が短くなる。この場合には、圧油供給路を通して複数の油圧モータ及び複数の油圧シリンダに供給される作動油の供給量が多くなるので、エンジンの駆動負荷が大となる。
【0022】
一方、設定周期内において開放状態となる間隔が長くなると、遮断状態となる間隔が短くなる。この場合には、圧油供給路を通して複数の油圧モータ及び複数の油圧シリンダに供給される作動油の供給量が少なくなるので、エンジンの駆動負荷が小となる。
【0023】
制御装置は、荷重負荷が大であれば遮蔽状態となる間隔が長く、荷重負荷が小さくなるほど開放状態となる間隔が長くなるインターバル操作を行うので、荷重負荷が小さくなるほど、エンジンの駆動負荷が低減され、軽負荷のときのエンジンの燃料消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図10】別実施形態の作動油供給部の油圧回路図である。
【
図11】別実施形態の制御動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においては、図中に示される矢印FWの方向を「前」、矢印BKの方向を「後」、矢印RHの方向を「右」、矢印LHの方向を「左」、矢印UPの方向を「上」、矢印DWの方向を「下」とする。
【0026】
図1~
図3に示すように、作業車には、車両全体を支持する平面視で略矩形状の車両本体1と、車両本体1を支持する複数の走行装置としての走行車輪2と、複数の走行車輪2の夫々に対応して設けられた複数の補助車輪3と、複数の走行車輪2を車両本体1に対して位置変更可能に支持する支持機構Aと、複数の走行車輪2を各別に駆動する走行用油圧装置としての複数の油圧モータ4と、が備えられている。
【0027】
走行車輪2は、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの走行車輪2を備える。又、左前、右前、左後、及び右後の4つの支持機構Aを備える。支持機構Aは、屈折リンク機構5と、屈折リンク機構5の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更用油圧装置としての複数の油圧シリンダ6,7と、を備えている。
【0028】
車両本体1は、平面視で略矩形状であり、車両本体1の上面に、荷物を積載可能な平坦状の積載部8が備えられている。積載部8は、平面視で略矩形状の部位であって、車両本体1の右端から左端に亘って延びている。積載部8は、その上に荷物が載置可能なように構成されている。積載部8に載置される荷物としては、例えば、農機具や、肥料、薬剤等の農業資材、収穫物や収穫カゴ、及びこれらが載置されたパレット等である。
【0029】
車両本体1には、積載部8の下側において、油圧シリンダ6,7及び油圧モータ4に向けて作動油を送り出す油圧供給源9、油圧供給源9からの作動油の供給状態を調整する複数の油圧制御弁10、油圧制御弁10の作動を制御するECU11(Electronic Control Unit)、電源供給用のバッテリ12等が備えられている。油圧供給源9は、エンジン9aによって駆動される油圧ポンプ9bを備えている。油圧供給源9は、作動油タンク9c、ラジエータ9d等も備えられている。油圧供給源9は、アンダーフレーム24にて支持されている。燃料タンク9eは車両本体1の後側の高い位置に備えられている。また、エンジン9aに対する調速装置9fが備えられ、ECU11は、調速装置9fの動作を制御してエンジンの出力を変更調整することができるように構成されている。
【0030】
ECU11は、マイクロコンピュータを備えており、制御プログラムに従って種々の制御を実行可能である。複数の油圧制御弁10及びECU11により制御装置Cが構成されている。バッテリ12は、エンジン9aの動力によって駆動される発電機により充電される。図中の符号13は、作業者が握り操作可能な操作ハンドルである。
【0031】
〔支持機構〕
上述したように、支持機構Aは、屈折リンク機構5と複数の油圧シリンダ6,7と、を備えている。
図1に示すように、複数(具体的には4つ)の走行車輪2は、屈折リンク機構5を介して車両本体1に対して各別に昇降可能に支持されている。
【0032】
図4,
図5に示すように、屈折リンク機構5には、車両本体1に支持される基端部14と、上側端部が基端部14の下部に横軸芯X1周りで回動可能に支持された第一リンク15と、一端部が第一リンク15の下側端部に横軸芯X2周りで回動可能に支持され且つ他端部に走行車輪2が支持された第二リンク16と、が備えられている。
【0033】
走行車輪2を支持する支持ブラケット17が第二リンク16の揺動側端部に設けられたボス部18に縦軸芯Y周りで揺動可能に支持されている。第二リンク16の一端部側のブラケット19と、支持ブラケット17に設けられたアーム部17aとに亘って旋回操作用の油圧シリンダ20(以下、旋回シリンダという)が備えられている。
【0034】
複数の屈折リンク機構5の夫々に対応して、屈折リンク機構5の姿勢を各別に変更可能な複数の油圧シリンダ6,7が備えられている。すなわち、車両本体1に対する第一リンク15の揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダ6と、第一リンク15に対する第二リンク16の揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダ7と、が備えられている。
【0035】
第二油圧シリンダ7の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ6を伸縮操作すると、第一リンク15、第二リンク16及び走行車輪2の夫々が、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部14に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ6の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ7を伸縮操作すると、第一リンク15の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク16及び走行車輪2が、一体的に、第一リンク15と第二リンク16との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0036】
複数の屈折リンク機構5夫々の中間屈折部に回転可能に補助車輪3が支持されている。補助車輪3は走行車輪2と略同じ外径の車輪にて構成されている。第一リンク15と第二リンク16とを枢支連結する支軸が車体横幅方向外方側に突出するように延長形成され、支軸の延長突出箇所に補助車輪3が回動可能に支持されている。
【0037】
旋回シリンダ20の操作により、屈折リンク機構5に対して走行車輪2を縦軸芯Y周りで回動することにより旋回操作させることができる。
【0038】
油圧モータ4に対応する油圧制御弁10により作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ4の回転速度すなわち走行車輪2の回転速度を変更することができる。
【0039】
〔センサ〕
この作業車は種々のセンサを備える。
図6に示すように、4つの第二油圧シリンダ7の夫々について、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2を備える。ヘッド側圧力センサS1は、第二油圧シリンダ7のヘッド側室の油室の内部圧力を検出する。キャップ側圧力センサS2は、第二油圧シリンダ7のキャップ側室の油室の内部圧力を検出する。
【0040】
4つの第一油圧シリンダ6及び4つの第二油圧シリンダ7の夫々について、伸縮操作量を検出可能な複数のストロークセンサS3を備える。各油圧シリンダ6,7の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク15及び第二リンク16の揺動位置に対応する検出値である。
【0041】
車両本体1には車体の傾斜状態を検出する傾斜センサS4が備えられている。傾斜センサS4は、周知の構成である慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)(IMU)を用いて構成されている。IMUは、三軸加速度センサとジャイロセンサとを有し、車両本体1の姿勢変化状態、具体的には、前後方向並びに左右方向の傾きを検知することができる。
【0042】
走行車輪2の近傍には、油圧モータ4により駆動される走行車輪2の回転速度を検出する回転センサS5が備えられている。回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度に基づいて、走行車輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ4への作動油の供給が制御される。油圧モータ4に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサS6が備えられている。圧力センサS6にて検出された作動油の圧力に基づいて、走行車輪2の駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ4への作動油の供給(圧力)が制御される。4つの旋回シリンダ20の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS7を備える。
【0043】
〔ECU〕
ECU11(Electronic Control Unit)は、後述する機能部に対応するプログラムを記憶する不揮発性メモリ(図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。
【0044】
ECU11は、機能部として、姿勢制御部100、走行制御部101、重量算出部102、駆動負荷調整部103を備えている。走行制御部101は、4つの走行車輪2が接地する状態で走行するときは、4個の走行車輪2の夫々について、回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度が目標速度となり、かつ、圧力センサS6にて検出される駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ4の作動を制御する。具体的には、油圧モータに対して作動油を給排する油圧制御弁の切り換え操作を実行する。
【0045】
姿勢制御部100は、車体が移動走行するときは、傾斜センサS4の検出情報に基づいて車両本体1の積載部8が水平姿勢になるように支持機構Aの動作を制御する水平制御を実行する。水平制御において、姿勢制御部100は、傾斜センサS4の検出情報並びにストロークセンサS3の検出情報に基づいて、車両本体1の水平姿勢からの前後方向での傾斜角及び左右方向での傾斜角が水平姿勢に対応する値になるように、4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7の作動を制御する。
【0046】
説明を加えると、傾斜センサS4にて検出される積載部8の傾斜姿勢から積載部8を水平姿勢にするために必要となる4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7の目標作動量を算出し、ストロークセンサS3にて検出される実作動量が目標作動量になるように、4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7の作動を制御する。具体的には、4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7に対して作動油を給排する油圧制御弁10の切り換え操作を実行する。
【0047】
ストロークセンサS3にて検出される各油圧シリンダ6,7の実作動量は、操作対象となるリンクの車体側の部材に対する相対的な姿勢変化の状態を示すものである。すなわち、ストロークセンサS3の検出値に基づいて、車両本体1に対する第一リンク15の揺動姿勢、第一リンク15に対する第二リンク16の揺動姿勢等を判別することができる。その結果、走行車輪2の接地部から車両本体1までの高さを求めることが可能である。
【0048】
重量算出部102は、車両が走行を停止している状態で、各圧力センサS1,S2、及び、各ストロークセンサS3の検出結果に基づいて、積載部8に積載される荷物の積載状況として、荷物の重量並びに積載部8に対する荷物の積載箇所のバラつきを求める。従って、各圧力センサS1,S2、各ストロークセンサS3、重量算出部102により、積載部8に積載される荷物の積載状況を計測する積載状況検出手段SJが構成される。
【0049】
重量算出について説明する。
ストロークセンサS3の検出値に基づいて、車両本体1に対する第一リンク15の揺動姿勢、第一リンク15に対する第二リンク16の揺動姿勢等を判別することができるので、各支持機構Aにおける走行車輪2の接地部から車両本体1までの高さを求めることが可能である。
【0050】
また、圧力センサS1,S2の検出結果に基づいて、走行車輪2が地面に接地することによって支持機構Aの各リンク15,16を介して油圧シリンダ6,7に対して作用する圧力を検出することができる。走行車輪2が地面に接地する接地箇所において鉛直方向に沿って作用している力が、第一リンク15を介して第一油圧シリンダ6に作用し、かつ、第二リンク16を介して第二油圧シリンダ7に作用する。
【0051】
車両全体の重量は、各走行車輪2の接地箇所において鉛直方向に作用する。このとき走行車輪2に作用する鉛直方向の力(以下、接地圧力という)が、支持機構Aを介して上記各油圧シリンダ6,7の油室の内部圧力として作用する。そこで、圧力センサS1,S2及びストロークセンサS3の検出情報を用いることにより、演算によって各支持機構Aにおける接地圧力を求めることができる。
【0052】
駆動負荷調整部103は、荷物の積載状況の違いに応じてエンジン9aの駆動状態を変更調整する。すなわち、エンジン9aの出力回転速度が積載状況に応じた回転速度になるように調速装置の動作を制御する。従って、駆動負荷調整部103により変更調整手段HTが構成されている。
【0053】
次に、ECU11による重量算出部102及び駆動負荷調整部103の制御動作について、
図7~
図9のフローチャートに基づいて説明する。
【0054】
ECU11は、初期設定として、エンジン9aを定格回転で駆動するように調速装置9fを制御する(ステップ♯01)。荷物を積載した状態で車両が走行するときは、エンジン9aは定格回転にて駆動される。そして、車両が走行停止したのちにおいて(ステップ♯02)、積載重量計測処理を実行する(ステップ♯03)。
【0055】
図9に示すように、積載重量計測処理では、圧力センサS1,S2及びストロークセンサS3の検出情報を用いることにより、演算によって各支持機構Aにおける接地圧力を求める(ステップ♯31)。このとき、積載部8は水平制御によって水平姿勢になっていることを前提としているが、水平制御を実行しても水平姿勢にならない場合には、傾斜センサS4の情報も加味するようにしてもよい。
【0056】
複数の走行車輪2夫々の接地圧力を合計することで車両全体の重量を求める(ステップ♯32)。次に、車両全体の重量から予め計測して判明している車体の重量を減算することにより積載部8に積載されている荷物の重量を求める(ステップ♯33)。
【0057】
さらに、4個の走行車輪2の接地箇所において求められた接地圧力により、荷物の重心位置が積載部のどの位置にあるかを予測し、積載位置のバラツキを計測する(ステップ♯34)。説明を加えると、4つの走行車輪2における夫々の接地圧力のバラつきを比較することにより、車両全体の平面視における重心位置を求めることができ、積載位置が積載部の中央に位置する適正載置位置に対してどのようにバラついているかを判別するのである。
【0058】
例えば、積載部8が水平姿勢であっても、荷物が積載部8において偏った状態で積載されていると、偏った側の走行車輪2における接地圧力が、反対側に位置する走行車輪2における接地圧力に比べて大きくなる。
【0059】
次に、駆動負荷の調整処理を実行する(ステップ♯04)。
図9に示すように、駆動負荷の調整処理では、積載重量計測処理の計測結果に基づいて荷物に起因する荷重負荷の大きさを判別する(ステップ♯41)。荷重負荷は、荷物の重量と積載位置のバラツキとに応じて判別される。荷物の重量が大きいほど負荷が大きく、積載位置のバラツキが大きいほど負荷が大きくなる。
【0060】
そして、荷重負荷が大きく高負荷であると判別すると、エンジンを定格回転で駆動する状態を維持する(ステップ♯41,42)。主に荷物を積載していてもエンジンが定格回転にて大きな出力で駆動するので、良好な移動走行が可能である。
【0061】
荷重負荷が小さく低負荷であると判別すると、エンジン回転を中間的な値に低下させる(ステップ♯43)。中間的な値とは、定格回転とアイドリング回転との中間に位置する回転状態である。軽負荷であるときには、エンジンの出力を低下させることにより、燃料の無駄な消費をできるだけ抑制することができる。
【0062】
荷重負荷が無荷重である、すなわち、積載部8に荷物が積載されていない状態であると判別すると、エンジン回転を下限値(アイドリング回転又はそれに近い回転)に低下させる(ステップ♯44)。荷物が積載されていない状態であれば、エンジン9aの出力を最小又はそれに近い状態まで低下させることで、燃料消費を抑制するとともに、騒音を小さくすることができる。
【0063】
エンジン回転を中間的な値に低下させる場合、及び、エンジン回転を下限値に低下させる場合、車両が走行を開始すると(ステップ♯45)、走行車輪2の駆動による駆動負荷が掛かるので、エンジン9aを定格回転で駆動する状態に戻す(ステップ♯46)。
【0064】
このように荷重負荷の違いに応じてエンジン9aの駆動状態を変更調整することで、エンジン9aの無駄な燃料消費を抑制することができ、エンジン9aの騒音を抑制して作業環境の改善にも寄与できる。
【0065】
〔別実施形態〕
(1)積載状況検出手段として、次のように構成するものでもよい。
圧力センサS1,S2に代えて、支持機構Aの各リンク15,16に対して加わる駆動トルクを検出するトルクセンサやロードセル等を用いてもよく、走行車輪2の回転軸に対して加わる鉛直方向の接地圧力を直接検出するセンサを用いてもよい。また、ストロークセンサS3に代えて、支持機構Aの各リンク15,16における関節部分の回動角度を検出するポテンショメータ、あるいは、ロータリエンコーダ等を用いてもよい。
【0066】
(2)荷重負荷の大きさを判別する際に3段階に分けるものに限らず、2段階に分けてもよく、4段階以上に分けるもの、あるいは、無段階に分けるものでもよい。駆動負荷の調整処理としては、荷重負荷の判別の仕方に応じて、エンジン9aの出力を2段階に切り換える構成、4段階に切り換える構成、無段階に切り換える構成等であってもよい。
【0067】
(3)駆動負荷調整部(変更調整手段)として、エンジン9aの出力を変更調整する構成に代えて、次のように構成するものでもよい。
すなわち、
図10に示すように、油圧ポンプ9bから複数の油圧モータ4及び複数の油圧シリンダ6,7,20に作動油を供給する圧油供給路21に、圧油供給路21を遮断して油圧ポンプ9bからの作動油を貯留部(作動油タンク9c)に戻す開放状態と、圧油供給路21を通して作動油を複数の油圧装置に供給する遮蔽状態と、に切り換え可能なアンロード弁22が備えられている。図中、符号23は、リリーフ弁であり、9gはオイルフィルターである。
【0068】
そして、駆動負荷調整部103が、アンロード弁22を遮蔽状態と開放状態とに設定周期で交互に切り換えるインターバル操作が可能であり、かつ、荷重負荷が大であれば遮蔽状態となる間隔が長く、荷重負荷が小さくなるほど開放状態となる間隔が長くなるインターバル操作を行うことにより、作動油の供給量を調整するものでもよい。
【0069】
すなわち、上記実施形態におけるステップ♯04の駆動負荷の調整処理として、以下のような処理を実行する。
図11に示すように、駆動負荷の調整処理では、上記実施形態と同様に、積載重量計測処理の計測結果に基づいて荷物に起因する荷重負荷の大きさを判別する(ステップ♯401)。
【0070】
荷重負荷が大きく高負荷であると判別すると、アンロード弁22を遮蔽状態に維持する(ステップ♯402)。すなわち、この場合には、インターバル操作において、遮蔽状態となる時間が100%となり、解放状態となる時間が0%となる。主に荷物を積載していてもアンロード弁22を閉じているので油圧ポンプ9bからの圧油は全量が複数の油圧装置に供給されるので、良好な姿勢維持や移動走行が可能である。
【0071】
荷重負荷が小さく低負荷であると判別すると、アンロード弁22を遮蔽状態と開放状態とに一定周期で交互に切り換えるインターバル操作を実行する(ステップ♯403)。軽負荷であるときには、油圧ポンプからの圧油のうち一部を貯留部(作動油タンク9c)に戻すことにより、燃料の無駄な消費をできるだけ抑制することができる。
【0072】
荷重負荷が無荷重である、すなわち、積載部8に荷物が積載されていない状態であると判別すると、アンロード弁22を開放状態に維持する(ステップ♯404)。すなわち、この場合には、インターバル操作において、遮蔽状態となる時間が0%となり、解放状態となる時間が100%となる。荷物が積載されていない状態であれば、複数の油圧装置に対する作動油の供給を停止することで、エンジン9aの負荷が軽減され、燃料消費を抑制するとともに、騒音を小さくすることができる。
【0073】
アンロード弁22をインターバル操作する場合、及び、アンロード弁22を開放状態に維持する場合には、車両が走行を開始すると(ステップ♯405)、走行車輪2の駆動による駆動負荷が掛かるので、アンロード弁22を遮蔽状態に維持する状態に戻す(ステップ♯406)。
【0074】
この構成においても、荷重負荷の大きさを判別する際に3段階に分けるものに限らず、2段階に分けてもよく、4段階以上に分けるもの、あるいは、無段階に分けるものでもよい。無段階に分ける場合には、駆動負荷の調整処理として、インターバル操作において、遮蔽状態となる時間が100%でかつ解放状態となる時間が0%となる遮蔽維持状態から、遮蔽状態となる時間が0%でかつ解放状態となる時間が100%となる解放維持状態との間で、遮蔽状態となる時間と解放状態となる時間の比率を無段階に変更させる構成としてもよい。
【0075】
(4)重量算出処理として、例えば、走行車輪2の回転軸に対して加わる鉛直方向の接地圧力を合計して全体重量を求めるようにしてもよく、演算の仕方は種々変更して実施することができる。
【0076】
(5)傾斜センサS4として、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)(IMU)に代えて重錘式の傾斜センサや光ファイバージャイロ等の各種センサを用いてもよい。
【0077】
(6)支持機構Aとして、1つのリンク又は3つ以上のリンクを備える機構であってもよく、油圧シリンダに代えて、電動のアクチュエータを備えてもよい。
【0078】
(7)走行車輪2が、電動モータやエンジン等により駆動されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、凹凸のある不整地を走行するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 車両本体
2 走行装置
4 走行用油圧装置
5 油圧モータ
6,7 姿勢変更用油圧装置
9a エンジン
9b 油圧ポンプ
21 圧油供給路
22 アンロード弁
HT 変更調整手段
SJ 積載状況検出手段