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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004328
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/12 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
B62D61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103939
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 悠平
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉井 嘉一郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】仁木 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山岸 亮太
(57)【要約】
【課題】車両のいずれかの箇所において動作異常が発生しても、その後において対策を取ることを可能にすることが要望されていた。
【解決手段】複数の走行装置を車両本体に対して各別に位置変更可能に支持する複数の車体支持部と、複数の走行用アクチュエータ4及び複数の姿勢変更用アクチュエータ6,7の作動を制御する制御装置Cとが備えられ、制御装置Cが、メイン制御部11と、複数の走行用アクチュエータ4の作動を管理する走行用サブ制御部21と、複数の姿勢変更用アクチュエータ6,7の作動を管理する車体支持用サブ制御部22と、を有し、メイン制御部11は、複数の走行用アクチュエータ4及び複数の姿勢変更用アクチュエータ6,7の夫々を作動させる通常運転状態と、いずれか一方について全てを作動停止させる非常時運転状態とに切り換え可能である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、
複数の前記走行装置を前記車両本体に対して各別に位置変更可能に支持する複数の車体支持部と、
前記走行装置を駆動する走行用アクチュエータと、
前記車体支持部を駆動する複数の姿勢変更用アクチュエータと、
複数の前記走行用アクチュエータ及び複数の前記姿勢変更用アクチュエータの作動を制御する制御装置と、が備えられ、
前記制御装置は、
車両全体の運転状態を管理するメイン制御部と、
前記メイン制御部からの制御情報に基づいて、複数の前記走行用アクチュエータの作動を管理する走行用サブ制御部と、
前記メイン制御部からの制御情報に基づいて、複数の前記姿勢変更用アクチュエータの作動を管理する車体支持用サブ制御部と、を有し、
前記メイン制御部は、複数の前記走行用アクチュエータ及び複数の前記姿勢変更用アクチュエータの夫々を作動させる通常運転状態と、複数の前記走行用アクチュエータ及び複数の前記姿勢変更用アクチュエータのうちのいずれか一方について全てを作動停止させる非常時運転状態とに切り換え可能に構成されている作業車。
【請求項2】
前記メイン制御部からの制御信号にて前記姿勢変更用アクチュエータを駆動する複数の姿勢変更駆動部が備えられ、
前記車体支持用サブ制御部は、前記通常運転状態では前記メイン制御部から複数の前記姿勢変更駆動部への制御信号の伝達を許容し、前記非常時運転状態では、複数の前記姿勢変更駆動部を作動停止させるように構成されている請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記車体支持部が複数のリンクを枢支連結した屈折リンク機構にて構成され、
前記姿勢変更用アクチュエータは、複数の前記リンクの姿勢を変更可能な油圧シリンダにて構成され、
前記姿勢変更駆動部は、前記油圧シリンダに対して作動油を給排させる油圧制御弁と、前記メイン制御部からの制御信号にて前記油圧制御弁を切り換え操作する駆動回路とを備えている請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記メイン制御部からの制御信号にて前記走行用アクチュエータを駆動する複数の走行駆動部が備えられ、
前記走行用サブ制御部は、前記通常運転状態では前記メイン制御部から複数の前記走行駆動部への制御信号の伝達を許容し、前記非常時運転状態では、複数の前記走行駆動部を作動停止させるように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記走行用アクチュエータは前記走行装置を回転駆動可能な油圧モータにて構成され、
前記走行駆動部は、前記油圧モータに対して作動油を給排させる油圧制御弁と、前記メイン制御部からの制御信号にて前記油圧制御弁を切り換え操作する駆動回路とを備えている請求項4に記載の作業車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸のある不整地を移動するのに適した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車として、従来では、車両本体に対して、姿勢変更用アクチュエータとしての油圧シリンダの操作により伸縮操作可能な屈折リンク機構を介して、走行用アクチュエータとしての油圧モータにて駆動される4つの走行車輪が支持され、走行車輪の高さを変更させることにより、凹凸のある不整地であっても車両本体の姿勢を維持しながら走行可能に構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、この作業車では、油圧シリンダ及び油圧モータの作動を制御する制御装置が備えられ、制御装置は、車両に動作異常が発生したような場合には、全ての油圧シリンダ及び油圧モータの作動を停止させる構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020―1440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記作業車は、車両本体を水平姿勢に維持することを利用して、車両本体の上部に荷物を積載して走行する作業形態で用いられる場合がある。しかし、上記従来構成では、傾斜している不整地を走行しているとき等において、動作異常が発生すると、油圧シリンダ及び油圧モータの全ての作動を停止させるものであるから、車両本体を水平姿勢に維持することができず荷物が転落したり、車両を移動させることができずに立ち往生してしまうなど、その後の対策を何ら取ることができないという問題があった。
【0005】
そこで、この種の作業車において、車両のいずれかの箇所において動作異常が発生しても、その後において対策を取ることを可能にすることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る特徴構成は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行装置と、複数の前記走行装置を前記車両本体に対して各別に位置変更可能に支持する複数の車体支持部と、前記走行装置を駆動する走行用アクチュエータと、前記車体支持部を駆動する複数の姿勢変更用アクチュエータと、複数の前記走行用アクチュエータ及び複数の前記姿勢変更用アクチュエータの作動を制御する制御装置と、が備えられ、前記制御装置は、車両全体の運転状態を管理するメイン制御部と、前記メイン制御部からの制御情報に基づいて、複数の前記走行用アクチュエータの作動を管理する走行用サブ制御部と、前記メイン制御部からの制御情報に基づいて、複数の前記姿勢変更用アクチュエータの作動を管理する車体支持用サブ制御部と、を有し、前記メイン制御部は、複数の前記走行用アクチュエータ及び複数の前記姿勢変更用アクチュエータの夫々を作動させる通常運転状態と、複数の前記走行用アクチュエータ及び複数の前記姿勢変更用アクチュエータのうちのいずれか一方について全てを作動停止させる非常時運転状態とに切り換え可能に構成されている点にある。
【0007】
本発明によれば、複数の走行用アクチュエータについていずれかに動作異常があったときには、メイン制御部を複数の走行用アクチュエータについて全てを作動停止させる非常時運転状態に切り換える。このとき、動作異常が発生していない姿勢変更用アクチュエータについては作動が継続される。
【0008】
その結果、例えば、車両本体を水平姿勢に維持することを利用して、車両本体の上部に荷物を積載して走行する作業形態で用いられる場合であれば、車両の姿勢維持を継続して実行することができる。走行用アクチュエータは駆動できないが、車両本体の姿勢を維持しながら別の台車にて移動させたり、補助車輪等を用いて修理作業が可能な場所にまで移動する等の対策を取ることができる。
【0009】
複数の姿勢変更用アクチュエータについてのいずれかに動作異常があったときには、メイン制御部を複数の姿勢変更用アクチュエータについて全てを作動停止させる非常時運転状態に切り換える。このとき、動作異常が発生していない走行用アクチュエータについては作動が継続される。
【0010】
その結果、車両の姿勢維持を継続することはできないが、走行用アクチュエータを用いて移動させることが可能であり、修理作業が可能な場所にまで移動する等の対策を取ることができる。
【0011】
従って、車両のいずれかの箇所において動作異常が発生しても、その後において対策を取ることが可能となった。
【0012】
本発明においては、前記メイン制御部からの制御信号にて前記姿勢変更用アクチュエータを駆動する複数の姿勢変更駆動部が備えられ、前記姿勢変更用サブ制御部は、前記通常運転状態では前記メイン制御部から複数の前記姿勢変更駆動部への制御信号の伝達を許容し、前記非常時運転状態では、複数の前記姿勢変更駆動部を作動停止させるように構成されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、通常運転状態ではメイン制御部から複数の姿勢変更駆動部に対して制御信号が伝達されて、複数の姿勢変更用アクチュエータは所望の姿勢変更用の動作を行うように各別に制御される。一方、動作異常が発生したときは、メイン制御部が非常時運転状態に切り換わると、姿勢変更用サブ制御部は複数の姿勢変更駆動部の全てを作動停止させる。
【0014】
このように動作異常時には姿勢変更用サブ制御部によって複数の姿勢変更駆動部を停止させるように、一つの信号によって一括管理するので、制御の煩わしさがなく、簡易な制御にて対応できる。
【0015】
本発明においては、前記車体支持部が複数のリンクを枢支連結した屈折リンク機構にて構成され、前記姿勢変更用アクチュエータは、複数の前記リンクの姿勢を変更可能な油圧シリンダにて構成され、前記姿勢変更駆動部は、前記油圧シリンダに対して作動油を給排させる油圧制御弁と、前記メイン制御部からの制御信号にて前記油圧制御弁を切り換え操作する駆動回路とを備えていると好適である。
【0016】
本構成によれば、メイン制御部からの制御信号にて駆動回路が作動して油圧制御弁を切り換える。それにより油圧シリンダが伸縮操作されてリンクの姿勢が変更され、屈折リンク機構によって走行装置が車両本体に対して各別に位置変更することができる。
【0017】
そして、非常時運転状態では、姿勢変更用サブ制御部は、複数の駆動回路を一括して作動停止させることにより、複数の前記姿勢変更駆動部を作動停止させることができる。
【0018】
本発明においては、前記メイン制御部からの制御信号にて前記走行用アクチュエータを駆動する複数の走行駆動部が備えられ、前記走行用サブ制御部は、前記通常運転状態では前記メイン制御部から複数の前記走行駆動部への制御信号の伝達を許容し、前記非常時運転状態では、複数の前記走行駆動部を作動停止させるように構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、通常運転状態ではメイン制御部から複数の走行駆動部に対して制御信号が伝達されて、複数の走行用アクチュエータは所望の動作を行うように各別に制御される。一方、動作異常が発生したときは、メイン制御部が非常時運転状態に切り換わると、走行用サブ制御部は複数の走行駆動部の全てを作動停止させる。
【0020】
このように動作異常時には、走行用サブ制御部によって複数の走行駆動部を停止させるように、一つの信号によって一括管理するので、制御の煩わしさがなく、簡易な制御にて対応できる。
【0021】
本発明においては、前記走行用アクチュエータは前記走行装置を回転駆動可能な油圧モータにて構成され、前記走行駆動部は、前記油圧モータに対して作動油を給排させる油圧制御弁と、前記メイン制御部からの制御信号にて前記油圧制御弁を切り換え操作する駆動回路とを備えていると好適である。
【0022】
本構成によれば、メイン制御部からの制御信号にて駆動回路が作動して油圧制御弁を切り換える。それにより油圧モータが操作されて走行装置を駆動することができる。
【0023】
そして、非常時運転状態では、走行用サブ制御部は、複数の駆動回路を一括して作動停止させることにより、複数の走行駆動部を作動停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】作業車の側面図である。
図2】作業車の背面図である。
図3】作業車の平面図である。
図4】支持機構の平面図である。
図5】支持機構の側面図である。
図6】制御ブロック図である。
図7】油圧装置を駆動する操作系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においては、図中に示される矢印FWの方向を「前」、矢印BKの方向を「後」、矢印RHの方向を「右」、矢印LHの方向を「左」、矢印UPの方向を「上」、矢印DWの方向を「下」とする。
【0026】
図1図3に示すように、作業車には、車両全体を支持する平面視で略矩形状の車両本体1と、車両本体1を支持する複数の走行装置としての走行車輪2と、複数の走行車輪2の夫々に対応して設けられた複数の補助車輪3と、複数の走行車輪2を車両本体1に対して位置変更可能に支持する支持機構Aと、複数の走行車輪2を各別に駆動する走行用アクチュエータとしての複数の油圧モータ4と、が備えられている。
【0027】
走行車輪2は、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの走行車輪2を備える。又、左前、右前、左後、及び右後の4つの支持機構Aを備える。支持機構Aは、車体支持部としての屈折リンク機構5と、屈折リンク機構5の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更用アクチュエータとしての複数の油圧シリンダ6,7と、を備えている。
【0028】
車両本体1は、平面視で略矩形状であり、車両本体1の上面に、荷物を積載可能な平坦状の積載部8が備えられている。積載部8は、平面視で略矩形状の部位であって、車両本体1の右端から左端に亘って延びている。積載部8は、その上に荷物が載置可能なように構成されている。積載部8に載置される荷物としては、例えば、農機具や、肥料、薬剤等の農業資材、収穫物や収穫カゴ、及びこれらが載置されたパレット等である。
【0029】
車両本体1には、積載部8の下側において、油圧シリンダ6,7及び油圧モータ4に向けて作動油を送り出す油圧供給源9、油圧供給源9からの作動油の供給状態を調整して油圧シリンダ6,7及び油圧モータ4の作動を制御する制御装置C、電源供給用のバッテリ12等が備えられている。油圧供給源9は、エンジン9aによって駆動される油圧ポンプ9bを備えている。油圧供給源9は、作動油タンク9c、ラジエータ9d等も備えられている。油圧供給源9は、アンダーフレーム10にて支持されている。燃料タンク9eは車両本体1の後側の高い位置に備えられている。バッテリ12は、エンジン9aの動力によって駆動される発電機により充電されるバッテリ12は、エンジン9aの動力によって駆動される発電機により充電される。図中の符号13は、作業者が握り操作可能な操作ハンドルである。
【0030】
〔支持機構〕
上述したように、支持機構Aは、屈折リンク機構5と複数の油圧シリンダ6,7と、を備えている。図1に示すように、複数(具体的には4つ)の走行車輪2は、屈折リンク機構5を介して車両本体1に対して各別に昇降可能に支持されている。
【0031】
図4図5に示すように、屈折リンク機構5には、車両本体1に支持される基端部14と、上側端部が基端部14の下部に横軸芯X1周りで回動可能に支持された第一リンク15と、一端部が第一リンク15の下側端部に横軸芯X2周りで回動可能に支持され且つ他端部に走行車輪2が支持された第二リンク16と、が備えられている。
【0032】
走行車輪2を支持する支持ブラケット17が第二リンク16の揺動側端部に設けられたボス部18に縦軸芯Y周りで揺動可能に支持されている。第二リンク16の一端部側のブラケット19と、支持ブラケット17に設けられたアーム部17aとに亘って旋回操作用の油圧シリンダ20(以下、旋回シリンダという)が備えられている。
【0033】
複数の屈折リンク機構5の夫々に対応して、屈折リンク機構5の姿勢を各別に変更可能な複数の油圧シリンダ6,7が備えられている。すなわち、車両本体1に対する第一リンク15の揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダ6と、第一リンク15に対する第二リンク16の揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダ7と、が備えられている。
【0034】
第二油圧シリンダ7の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ6を伸縮操作すると、第一リンク15、第二リンク16及び走行車輪2の夫々が、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部14に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ6の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ7を伸縮操作すると、第一リンク15の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク16及び走行車輪2が、一体的に、第一リンク15と第二リンク16との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0035】
複数の屈折リンク機構5夫々の中間屈折部に回転可能に補助車輪3が支持されている。補助車輪3は走行車輪2と略同じ外径の車輪にて構成されている。第一リンク15と第二リンク16とを枢支連結する支軸が車体横幅方向外方側に突出するように延長形成され、支軸の延長突出箇所に補助車輪3が回動可能に支持されている。
【0036】
旋回シリンダ20の操作により、屈折リンク機構5に対して走行車輪2を縦軸芯Y周りで回動することにより旋回操作させることができる。
【0037】
油圧モータ4に対応する油圧制御弁25により作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ4の回転速度すなわち走行車輪2の回転速度を変更することができる。
【0038】
〔センサ〕
この作業車は種々のセンサを備える。
図6に示すように、4つの第二油圧シリンダ7の夫々について、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2を備える。ヘッド側圧力センサS1は、第二油圧シリンダ7のヘッド側室の油室の内部圧力を検出する。キャップ側圧力センサS2は、第二油圧シリンダ7のキャップ側室の油室の内部圧力を検出する。
【0039】
4つの第一油圧シリンダ6及び4つの第二油圧シリンダ7の夫々について、伸縮操作量を検出可能な複数のストロークセンサS3を備える。各油圧シリンダ6,7の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク15及び第二リンク16の揺動位置に対応する検出値である。
【0040】
車両本体1には車体の傾斜状態を検出する傾斜センサS4が備えられている。傾斜センサS4は、周知の構成である慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)(IMU)を用いて構成されている。IMUは、三軸加速度センサとジャイロセンサとを有し、車両本体1の姿勢変化状態、具体的には、前後方向並びに左右方向の傾きを検知することができる。
【0041】
走行車輪2の近傍には、油圧モータ4により駆動される走行車輪2の回転速度を検出する回転センサS5が備えられている。回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度に基づいて、走行車輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ4への作動油の供給が制御される。油圧モータ4に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサS6が備えられている。圧力センサS6にて検出された作動油の圧力に基づいて、走行車輪2の駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ4への作動油の供給(圧力)が制御される。4つの旋回シリンダ20の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS7を備える。
【0042】
〔制御装置〕
図6に示すように、車両全体の運転状態を制御するメイン制御部としてのECU11(Electronic Control Unit)を備えている。ECU11は、マイクロコンピュータを備えており、制御プログラムに従って種々の制御を実行可能である。ECU11は、後述する機能部に対応するプログラムを記憶する不揮発性メモリ(図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。
【0043】
ECU11は、機能部として、姿勢制御部100及び走行制御部101を備えている。走行制御部101は、4つの走行車輪2が接地する状態で走行するときは、4個の走行車輪2の夫々について、回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度が目標速度となり、かつ、圧力センサS6にて検出される駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ4の作動を制御する。
【0044】
姿勢制御部100は、車体が移動走行するときは、傾斜センサS4の検出情報に基づいて車両本体1の積載部8が水平姿勢になるように支持機構Aの動作を制御する水平制御を実行する。水平制御において、姿勢制御部100は、傾斜センサS4の検出情報並びにストロークセンサS3の検出情報に基づいて、車両本体1の水平姿勢からの前後方向での傾斜角及び左右方向での傾斜角が水平姿勢に対応する値になるように、4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7の作動を制御する。
【0045】
説明を加えると、傾斜センサS4にて検出される積載部8の傾斜姿勢から積載部8を水平姿勢にするために必要となる4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7の目標作動量を算出し、ストロークセンサS3にて検出される実作動量が目標作動量になるように、4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7の作動を制御する。
【0046】
図7に示すように、制御装置には、ECU11の他に、ECU11からの制御情報に基づいて4個の油圧モータ4の作動を管理する走行用サブ制御部としての走行用管理部21と、ECU11からの制御情報に基づいて複数の油圧シリンダ6,7(4個の第一油圧シリンダ6及び4個の第二油圧シリンダ7)の作動を管理する車体支持用サブ制御部としての車体支持用管理部22と、ECU11からの制御信号にて複数の油圧シリンダ6,7を駆動する複数の姿勢変更駆動部23と、ECU11からの制御信号にて油圧モータを駆動する複数の走行駆動部24と、が備えられている。
【0047】
そして、ECU11は、通常運転状態と非常時運転状態とに切り換え可能に構成されている。ECU11は、通常運転状態では、4個の油圧モータ4、及び、複数の姿勢変更用油圧シリンダ(4個の第一油圧シリンダ6と4個の第二油圧シリンダ7)の夫々を作動させる。ECU11は、非常時運転状態では、4個の油圧モータ4、及び、複数の姿勢変更用油圧シリンダ6,7のうちのいずれか一方について全てを作動停止させる。
【0048】
姿勢変更駆動部23は、油圧制御弁25と駆動回路26とを備えている。油圧制御弁25は、姿勢変更用油圧シリンダ6,7に対して作動油を給排させる。駆動回路26は、ECU11からの制御信号に基づいて油圧制御弁25を切り換え操作する。姿勢変更駆動部23は、複数の姿勢変更用油圧シリンダ6,7に対して各別に備えられている。
【0049】
走行駆動部24も同様に、油圧制御弁25と駆動回路27とを備えている。油圧制御弁25は油圧モータ4に対して作動油を給排させる。駆動回路27は、ECU11からの制御信号に基づいて油圧制御弁25を切り換え操作する。走行駆動部24は、複数の油圧モータ4に対して各別に備えられている。
【0050】
図示はしないが、油圧制御弁25は、電磁力による操作あるいはパイロット油圧による操作により、スプールをシフト操作させて作動油の給排を制御する電磁操作式あるいは油圧パイロット式の油圧制御弁である。駆動回路26,27は、トランジスタ等のスイッチング素子等を含み、ECU11からの制御信号に基づいて油圧制御弁25を切り換え操作するよう構成されている。
【0051】
車体支持用管理部22は、通常運転状態ではECU11から複数の姿勢変更駆動部23への制御信号の伝達を許容し、非常時運転状態では、複数の姿勢変更駆動部23を作動停止させるように構成されている。又、走行用管理部21は、通常運転状態ではECU11から複数の走行駆動部24への制御信号の伝達を許容し、非常時運転状態では、複数の走行駆動部24を作動停止させるように構成されている。
【0052】
車体支持用管理部22は、図示はしないが、トランジスタ等のスイッチング素子等を含み、非常時運転状態におけるECU11からの制御信号に基づいて、複数の姿勢変更駆動部23の夫々を非作動状態に切り換えるように構成されている。
【0053】
走行用管理部21は、図示はしないが、トランジスタ等のスイッチング素子等を含み、非常時運転状態におけるECU11からの制御信号に基づいて、複数の走行駆動部24の夫々を非作動状態に切り換えるように構成されている。
【0054】
ECU11は、車両全体が正常な動作を行う場合には、常に、通常運転状態に設定されている。
しかし、運転動作中において、いずれかの箇所において異常が発生したとき、例えば、油圧シリンダ6,6や油圧モータ4の作動状態を検出するセンサが故障して適正な動作が行えない状態、あるいは、油圧シリンダ6,7や油圧モータ4が故障しているような場合などの異常状態であるときには、ECU11を非常時運転状態に切り換えることができる。
【0055】
ECU11を非常時運転状態に切り換える構成としては、例えば、手動操作式の切換操作具を操作することによって切り換える構成、あるいは、上述したような動作異常をECU11が自己診断によって判別して、その結果、自動で非常時運転状態に切り換える等の種々の構成を採用することができる。
【0056】
ECU11が非常運転状態に切り換わると、全ての姿勢変更用油圧シリンダ6,7の作動は停止させるが、全ての走行用油圧モータ4の作動を可能にする状態、あるいは、全ての走行用油圧モータ4の作動を停止させるが、全ての姿勢変更用油圧シリンダ6,7の作動を可能にする状態、のいずれかに切り換えることで、何らかの対応を取ることができる。
【0057】
複数の姿勢変更用油圧シリンダ6,7のいずれかが故障したり、複数のストロークセンサS3のいずれかが故障したような場合には、ECU11から車体支持用管理部22に非常用信号を送信する。車体支持用管理部22は、全ての姿勢変更駆動部23を作動停止させる。このとき、走行用管理部21は、ECU11から複数の走行駆動部24への制御信号の伝達を許容する状態を維持している。この状態では、車両本体の姿勢保持はできないものの、走行車輪2の駆動を可能であるから、車両を安全な場所まで移動させて、その後の対策を取ることが可能となる。
【0058】
複数の走行モータ4のいずれかが故障したり、複数の圧力センサS6のいずれかが故障したような場合には、ECU11から走行用管理部21に非常用信号を送信する。走行用管理部21は、全ての走行駆動部24を作動停止させる。このとき、車体支持用管理部22は、ECU11から複数の姿勢変更駆動部23への制御信号の伝達を許容する状態を維持している。この状態では、油圧モータ4による走行車輪2の駆動は行えないが、車両本体1を水平姿勢に維持することができ、積載した荷物が外方に散乱することが回避される。このとき、屈折リンク機構5の各リンク15,16を折り曲げ操作しながら尺取り虫のような動作で車両を移動させる等の対応を取ることも可能である。さらに、補助車輪3が接地するように屈折リンク機構5を折り曲げると、手動操作にて車両を移動させることもできる。
【0059】
〔別実施形態〕
(1)姿勢変更駆動部23が駆動回路26を備えずに油圧制御弁25だけを備えて、車体支持用管理部22が複数の油圧制御弁25の切換操作を行えるように管理するものでもよい。
【0060】
(2)走行駆動部24が駆動回路27を備えずに油圧制御弁25だけを備えて、走行用管理部21が複数の油圧制御弁25の切換操作を行えるように管理するものでもよい。
【0061】
(3)車体支持用管理部22が、車体支持専用のプログラムを記憶する不揮発性メモリと、当該プログラムを実行するCPUと、を備えて構成するものでもよい。
【0062】
(4)走行用管理部21が、走行駆動専用のプログラムを記憶する不揮発性メモリと、当該プログラムを実行するCPUと、を備えて構成するものでもよい。
【0063】
(5)走行用アクチュエータとして電動モータを用いてもよい。
【0064】
(6)姿勢変更用アクチュエータとして電動シリンダ、電動モータ等を用いてもよい。
【0065】
(7)屈折リンク機構5として、1つのリンク又は3つ以上のリンクを備える機構であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、凹凸のある不整地を移動するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両本体
2 走行装置
4 走行用アクチュエータ
5 車体支持部
6,7 油圧シリンダ
11 メイン制御部
15,16 リンク
21 走行用サブ制御部
22 車体支持用サブ制御部
23 姿勢変更駆動部
24 走行駆動部
25 油圧制御弁
26,27 駆動回路
C 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7