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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043287
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ボルト接合用治具及びボルト接合構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20240322BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240322BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20240322BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20240322BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F16B41/00 K
E04B1/58 507S
E04B1/58 507F
E04B1/58 600A
E04G21/16
F16B37/04 H
F16B43/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148390
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 恵
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 克典
【テーマコード(参考)】
2E125
2E174
3J034
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA57
2E125AB01
2E125AB15
2E125AC15
2E125AC16
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA13
2E174DA31
2E174DA63
3J034AA07
3J034BA08
3J034CA03
3J034EA05
(57)【要約】
【課題】溶接ナット等を適用しないで、予めナットの移動を拘束してボルト接合を行うことが可能なボルト接合用治具を提供する。
【解決手段】ボルト接合用治具10は、第1対象物20と第2対象物30のボルト孔21,31に対して、頭付きボルト40を挿通してボルト接合する際に適用される、ボルト接合用治具10であって、ナット部51とナット部51から張り出す張り出し部52とを備えたナット50と、ナット部51が挿通されてナット50の回転が拘束される開口61を備え、張り出し部52が係止される、第1板材60と、ナット50に螺合する頭付きボルト40とを有し、第1対象物20との間で、張り出し部52を挟むようにして第1板材60が配設され、頭付きボルト40を第1対象物20と第2対象物30のそれぞれのボルト孔21,31に挿通させ、ナット50に螺合して、第1対象物20と第2対象物30をボルト接合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に接触している第1対象物と第2対象物の双方のボルト孔に対して、頭付きボルトを挿通してボルト接合する際に適用される、ボルト接合用治具であって、
ナット部と、前記ナット部から径方向外側に張り出す張り出し部と、を備えたナットと、
前記ナット部が挿通されて前記ナットの回転が拘束される開口を備え、前記張り出し部が係止される、第1板材と、
前記ナットに螺合する頭付きボルトとを有し、
前記第1対象物のうち、前記第2対象物とは反対側の面との間で、前記張り出し部を挟むようにして前記第1板材が配設され、
前記第2対象物のうち、前記第1対象物と反対側の面に前記頭付きボルトの頭部を係止させながら、該頭付きボルトを前記第1対象物と前記第2対象物のそれぞれの前記ボルト孔に挿通させ、前記ナットに螺合して、該第1対象物と該第2対象物をボルト接合することを特徴とする、ボルト接合用治具。
【請求項2】
第1対象物と第2対象物の双方のボルト孔に対して、頭付きボルトを挿通してボルト接合する際に適用される、ボルト接合用治具であって、
ナット部と、前記ナット部から径方向外側に張り出す張り出し部と、を備えたナットと、
前記ナット部が挿通されて前記ナットの回転が拘束される開口を備え、前記張り出し部が係止される、第1板材と、
前記第1板材とともに前記第1対象物を挟み、前記ボルトが挿通されるボルト孔を備え、該第1板材に対して曲げ部を介して繋がっている、第2板材と、
前記ナットに螺合する頭付きボルトとを有し、
前記第1板材と前記第2板材とにより前記第1対象物を挟み、該第2板材のうち、該第1対象物と反対側の面に前記第2対象物が配設され、
前記第2対象物のうち、前記第2板材と反対側の面に前記頭付きボルトの頭部を係止させながら、該頭付きボルトを前記第2対象物と前記第2板材と前記第1対象物のそれぞれの前記ボルト孔に挿通させ、前記ナットに螺合して、該第1対象物と該第2対象物をボルト接合することを特徴とする、ボルト接合用治具。
【請求項3】
前記張り出し部が皿バネにより形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のボルト接合用治具。
【請求項4】
請求項1に記載のボルト接合用治具により、前記第1対象物と前記第2対象物がボルト接合されていることを特徴とする、ボルト接合構造。
【請求項5】
前記第1対象物が、H形鋼からなる第1鉄骨梁の上下のフランジに接合されている第1エンドプレートであり、
前記第2対象物が、H形鋼からなる第2鉄骨梁の端部に接合されている第2エンドプレートであることを特徴とする、請求項4に記載のボルト接合構造。
【請求項6】
請求項2に記載のボルト接合用治具により、前記第1対象物と前記第2対象物がボルト接合されていることを特徴とする、ボルト接合構造。
【請求項7】
前記第1対象物が、H形鋼からなる第1鉄骨梁の上フランジであり、
前記第2対象物が、床材、もしくは、柱の柱脚であることを特徴とする、請求項6に記載のボルト接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト接合用治具及びボルト接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の部材に開設されたボルト孔にボルトを挿通して、ボルトの頭部とは反対側に突き出した先端部にナットを螺合することにより、複数の部材同士がボルト接合されるボルト接合構造が適用されている(例えば、特許文献1参照)。従来のボルト接合構造には、ボルト接合を行う際に、ボルト接合される部材に対して、溶接ナットやカシメナットを適用して、予めナットを固定する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-281082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら溶接ナットやカシメナットを適用して、予めナットを固定する場合において、例えば、ナットが固定される部材の板厚が厚い場合には、溶接ナットやカシメナットを適用できない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束してボルト接合を行うボルト接合用治具、及びボルト用治具を適用したボルト接合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明によるボルト接合用治具の一態様は、
相互に接触している第1対象物と第2対象物の双方のボルト孔に対して、頭付きボルトを挿通してボルト接合する際に適用される、ボルト接合用治具であって、
ナット部と、前記ナット部から径方向外側に張り出す張り出し部と、を備えたナットと、
前記ナット部が挿通されて前記ナットの回転が拘束される開口を備え、前記張り出し部が係止される、第1板材と、
前記ナットに螺合する頭付きボルトとを有し、
前記第1対象物のうち、前記第2対象物とは反対側の面との間で、前記張り出し部を挟むようにして前記第1板材が配設され、
前記第2対象物のうち、前記第1対象物と反対側の面に前記頭付きボルトの頭部を係止させながら、該頭付きボルトを前記第1対象物と前記第2対象物のそれぞれの前記ボルト孔に挿通させ、前記ナットに螺合して、該第1対象物と該第2対象物をボルト接合することを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、ナット部が第1板材の開口に挿通されて、ナットの回転が拘束されると共に、ナットの張り出し部が第1対象物と第1板材とによって挟まれて、ナットが拘束される。これにより、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束して、2つの接合対象物をボルト接合することができる。
【0008】
また、前記目的を達成すべく、本発明によるボルト接合用治具の一態様は、
第1対象物と第2対象物の双方のボルト孔に対して、頭付きボルトを挿通してボルト接合する際に適用される、ボルト接合用治具であって、
ナット部と、前記ナット部から径方向外側に張り出す張り出し部と、を備えたナットと、
前記ナット部が挿通されて前記ナットの回転が拘束される開口を備え、前記張り出し部が係止される、第1板材と、
前記第1板材とともに前記第1対象物を挟み、前記ボルトが挿通されるボルト孔を備え、該第1板材に対して曲げ部を介して繋がっている、第2板材と、
前記ナットに螺合する頭付きボルトとを有し、
前記第1板材と前記第2板材とにより前記第1対象物を挟み、該第2板材のうち、該第1対象物と反対側の面に前記第2対象物が配設され、
前記第2対象物のうち、前記第2板と反対側の面に前記頭付きボルトの頭部を係止させながら、該頭付きボルトを前記第2対象物と前記第2板材と前記第1対象物のそれぞれの前記ボルト孔に挿通させ、前記ナットに螺合して、該第1対象物と該第2対象物をボルト接合することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、ナット部が第1板材の開口に挿通されて、ナットの回転が拘束されると共に、ナットの張り出し部が第1対象物と第1板材とによって挟まれて、ナットが拘束される。これにより、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束して、2つの接合対象物をボルト接合することができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、
前記張り出し部が皿バネにより形成されることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1板材と第1対象物との間に皿バネが配置されることにより、ナットとは別部材であるばね座金を第1板材と第1対象物との間に挿入する必要がない。また、第1板材と第1対象物との間に皿バネが配置されることにより、ナットの緩みを防止することができる。
【0012】
また、本発明によるボルト接合構造の一態様は、
ボルト接合用治具により、前記第1対象物と前記第2対象物がボルト接合されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、ボルト接合用治具により、ナットを第1対象物に対して拘束して、ナットに頭付きボルトを螺合して、第1対象物と第2対象物とをボルト接合することができる。これにより、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束した後に、2つの接合対象物をボルト接合することができる。
【0014】
また、本発明の他の態様において、
前記第1対象物が、H形鋼からなる第1鉄骨梁の上下のフランジに接合されている第1エンドプレートであり、
前記第2対象物が、H形鋼からなる第2鉄骨梁の端部に接合されている第2エンドプレートであることを特徴とする。
【0015】
本態様では、ボルト接合用治具を適用して、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束して、第1鉄骨梁と第2鉄骨梁とをボルト接合することができる。
【0016】
また、本発明によるボルト接合構造の一態様は、
ボルト接合用治具により、前記第1対象物と前記第2対象物がボルト接合されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、ボルト接合用治具により、ナットを第1対象物に対して拘束して、ナットに頭付きボルトを螺合して、第1対象物と第2対象物とをボルト接合することができる。これにより、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束した後に、2つの接合対象物をボルト接合することができる。
【0018】
また、本発明の他の態様において、
前記第1対象物が、H形鋼からなる第1鉄骨梁の上フランジであり、
前記第2対象物が、床材、もしくは、柱の柱脚であることを特徴とする。
【0019】
本態様では、ボルト接合用治具を適用して、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束して、第1鉄骨梁に対して、床材、もしくは、柱の柱脚をボルト接合することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束して2つの接合対象物をボルト接合する、ボルト接合用治具、及びボルト用治具を適用したボルト接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例の部分断面図である。
図2】第1実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例の平面図である。
図3図3(a)は、皿バネナットを上方から示す斜視図であり、図3(b)は、皿バネナットを下方から示す斜視図である。
図4】第2実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例を示す平面図である。
図5】第3実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例を示す側面図である。
図6】第4実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例を示す部分断面図である。
図7】第4実施形態に係るボルト接合用治具が取り付けられた状態のH形鋼を上方から示す斜視図である。
図8】第4実施形態に係るボルト接合用治具が取り付けられた状態のH形鋼を下方から示す斜視図である。
図9】ナットクリップを上方から示す斜視図である。
図10】ナットクリップを下方から示す斜視図である。
図11】第5実施形態に係るボルト接合構造の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、各実施形態に係るボルト接合用治具及びボルト接合構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[第1実施形態]
はじめに、図1乃至図3を参照して、第1実施形態に係るボルト接合用治具及びボルト接合構造の一例について説明する。ここで、図1は、第1実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例の部分断面図である。図2は、第1実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例の平面図である。図3(a)は、皿バネナットを上方から示す斜視図であり、図3(b)は、皿バネナットを下方から示す斜視図である。
【0024】
図1及び図2では、互いに直交する3方向として、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を図示する。Z軸方向は、例えば頭付きボルト40の軸線方向に沿う。なお、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、任意の方向でよい。
【0025】
図1及び図2に示されるボルト接合用治具10は、第1対象物20と第2対象物30をボルト接合する際に適用することができる。ボルト接合構造11は、ボルト接合用治具10が適用されて第1対象物20と第2対象物とがボルト接合されている構造を含む。
【0026】
第1対象物20及び第2対象物30は、例えば鋼板である。第1対象物20及び第2対象物30は、金属製の板状の部材でもよい。第1対象物20及び第2対象物30は、例えば住宅等の建物の躯体の一部でもよく、躯体に接合された取付金物でもよい。第1対象物20及び第2対象物30には、板厚方向(Z軸方向)に貫通するボルト孔21,31が開設されている。ボルト孔21,31には、頭付きボルト40の軸であるネジ部42が挿通される。頭付きボルト40は、頭部41及びネジ部42を有する。
【0027】
第1対象物20は、板厚方向に対向する第1面22及び第2面23を有する。第2対象物30は、板厚方向に対向する第1面32及び第2面33を有する。第1対象物20及び第2対象物30は、板厚方向に重なるように配置されている。第1対象物20の第1面22は、第2対象物30とは反対側の面である。第1対象物20の第2面23は、第2対象物30に近い方の面である。第2対象物30の第1面32は、第1対象物20に近い方の面である。第2対象物30の第2面33は、第1対象物20とは反対側の面である。第1対象物20の第2面23と第2対象物30の第1面32は、板厚方向に対向する。第1対象物20の第2面23と第2対象物30の第1面32は、相互に接触している。なお、ボルト接合用治具10は、例えば3枚以上の板状の部材同士をボルト接合する場合に適用してもよい。
【0028】
頭付きボルト40の頭部41は、第2対象物30の第2面33に接するように配置される。ナット50は、第1対象物20の第1面22に接するように配置される。
【0029】
図3(a)及び図3(b)に示されるように、ナット50は、例えば皿バネナットである。ナット50は、ナット部51及び皿バネ52を備える。皿バネ52は、ナット部51から径方向外側に張り出すように形成されている。皿バネ52は、ナット部51から径方向外側に張り出す張り出し部の一例である。径方向は、図1及び図2に示されるZ軸方向に直交する方向であり、X軸方向及びY軸方向に沿う方向を含む。皿バネ52は、例えばカシメによりナット部51に接合されている。皿バネ52は、その他の方法によりナット部51に接合されていてもよく、ナット部51と一体成型されていてもよい。また、ナット50は、皿バネナットに限定されない。ナット50は、皿バネ52ではない張り出し部を有するものでもよい。
【0030】
図1及び図2に示されるように、ボルト接合用治具10は、頭付きボルト40と、ナット50と、第1板材60とを備える。第1板材60は、金属板から形成されている。第1板材60の板厚は、例えば第1対象物20及び第2対象物30の板厚よりも薄い。第1対象物20及び第2対象物30の板厚は、例えば45mm以上でもよい。
【0031】
第1板材60には、ナット部51が挿通される開口61が開設されている。開口61は、第1板材60の板厚方向に貫通する六角形の穴である。開口61の形状は、六角形に限定されず、その他の多角形でもよく、曲線形状を含んでもよい。開口61に挿通されたナット部51は、開口61の周縁と接触することにより、Z軸回りの回転が拘束される。開口61の周縁とナット部51との間には、クリアランス(隙間)が設けられている。クリアランスは、例えば0.1mm以上1.0mm以下でもよい。
【0032】
開口61の内径は、皿バネ52の外径よりも小さい。開口61の内径は、開口61の最大の内径でもよい。開口61の内径は、例えばX軸方向に沿う内径でもよい。開口61の内径が、皿バネ52の外径よりも小さいので、皿バネ52は、開口61を通り抜けることができない。
【0033】
第1板材60は、板厚方向において、第1対象物20の第1面22と対向するように配置される。第1板材60は、Z軸方向に見て、第1対象物20及び第2対象物30と重なるように配置される。第1板材60開口61は、Z軸方向に見て、第1対象物20及び第2対象物30のボルト孔21,31と重なるように配置される。
【0034】
第1板材60は、第1対象物20に対して接合される。第1板材60は、第1対象物20に対して溶接されてもよく、カシメにより接合されてもよく、ねじ止めされてもよい。第1板材60は、第1対象物20に対する相対的な移動が拘束されている。
【0035】
第1板材60は、第1対象物20の第1面22との間で、皿バネ52を挟むように配置される。皿バネ52は、第1板材60に係止される。皿バネ52は、第1板材60と第1対象物20とによって挟まれることにより、Z軸方向におけるナット50の移動が拘束される。ナット50は、第1板材60の開口61に挿通されることにより、ナット50の回転が拘束される。ナット50は、第1対象物20に対して相対的な移動が拘束される。第1板材60の板厚は、頭付きボルト40を締め付ける際に、第1板材60が変形せずナット50が回転しない板厚に設計されている。
【0036】
頭付きボルト40の頭部41は、第2対象物30の第2面33に配置され、ネジ部42が第1対象物20及び第2対象物30のボルト孔21,31に挿通されている。頭付きボルト40のネジ部42は、ナット50に螺合されている。頭付きボルト40を締め付けることにより、第1対象物20と第2対象物30がボルト接合されている。
【0037】
[第1実施形態に係るボルト接合構造の形成方法]
次に、ボルト接合用治具10を用いたボルト接合構造11の形成方法について説明する。まず、第1対象物20と第2対象物30とを配置する。互いのボルト孔21,31が板厚方向に重なるように、第1対象物20と第2対象物30を配置する。次に、第1板材60の開口61にナット50のナット部51を挿通させる。次に、ナット50及び第1板材60を第1対象物20に対して配置する。このとき、ボルト孔21に対応する位置に、ナット50を配置する。第1対象物20と第1板材60とによって、皿バネ52を挟むようにする。これにより、第1対象物20に対してナット50の位置が拘束される。この状態において、頭付きボルト40の頭部41を第2対象物の第2面33に係止させながら、頭付きボルト40をボルト孔21,31に挿通して、ナット50に螺合する。これにより、第1対象物20と第2対象物30がボルト接合される。
【0038】
なお、ボルト接合用治具10を用いたボルト接合構造11の形成方法では、上記の工程の順番を適宜入れ替えて実施可能である。例えば、第1対象物20に対して、ナット50を配置した後に、開口61にナット部を挿通させながら第1対象物20に対して第1板材60を配置してもよい。また、第1対象物20に対して、ナット50及び第1板材60を配置して、これらを一体化した後に、第2対象物30に対して第1対象物20を配置してもよい。例えば、予め工場において、第1対象物20に対して、ナット50及び第1板材60を接合してもよい。
【0039】
[従来技術の課題]
従来技術に係るボルト接合構造では、例えば板厚が4.5mm以上の鋼板に対して溶接ナットやカシメナットを固定することが難しかった。また、高強度ナットを鋼板に対して溶接すると、脆性破壊するおそれがあり、強度部材同士をボルト接合する際に高強度ナットを使用することは難しかった。
【0040】
また、従来技術にボルト接合構造において、溶接ナットやカシメナットを適用する場合には、ナット側に緩み防止機構がないため、ボルト挿入時に皿バネ(ばね座金)を挿入する必要があった。また、溶接ナットやカシメナットを適用する場合には、ボルト孔に対してナットの位置が固定されるので、ナットの位置ずれを許容できなかった。
【0041】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態に係るボルト接合用治具10によれば、ナット部51が第1板材60の開口61に挿通されて、ナット50の回転が拘束されると共に、ナット50の皿バネ52が第1対象物20と第1板材60とによって挟まれて、ナット50が拘束される。これにより、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナット50の移動を拘束して、第1対象物20と第2対象物30をボルト接合することができる。
【0042】
また、ボルト接合用治具10では、第1板材60と第1対象物20との間に皿バネ52が配置されることにより、ナットとは別部材であるばね座金を第1板材60と第1対象物20との間に挿入する必要がない。また、第1板材60と第1対象物20との間に皿バネ52が配置されることにより、ナット50の緩みを防止することができる。
【0043】
また、ボルト接合構造11では、ボルト接合用治具10を適用して第1対象物20と第2対象物30がボルト接合されている。第1対象物20に対して、予めナット50を配置して、ナット50の移動が拘束された状態で、頭付きボルト40がナット50に螺合されている。そのため、信頼性の高いボルト接合が実現される。
【0044】
また、ボルト接合用治具10では、溶接ナット(スポット溶接)やカシメナットを適用できない厚板の鋼板に対して、ナット50を予め配置した後に、ボルト接合を施工することができる。また、ボルト接合用治具10では、ナット50を溶接することなく、ナット50の移動を拘束できるので、ナット50として高強度ナットを使用することができる。
【0045】
また、ボルト接合用治具10では、第1対象物20及び第2対象物30の板厚によらず、第1板材60を適用して、ナット50を配置できる。ボルト接合用治具10では、例えば板厚4.5mm以上の第1対象物20に対して、ナット50を予め設置できる。また、板厚が異なる第1対象物20に対しても同じ仕様の第1板材60を使用することができる。第1対象物20の厚さごとに、仕様が異なる第1板材60を準備する必要がない。
【0046】
また、ボルト接合用治具10では、第1板材60の開口61に遊びを設けてもよい。この場合には、ナット50の位置ずれを許容できるので、頭付きボルト40をナット50に対して螺合させやすい。
【0047】
[第2実施形態]
次に、図4を参照して、第2実施形態に係るボルト接合用治具及びボルト接合構造について説明する。図4は、第2実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例を示す平面図である。図4に示される第2実施形態のボルト接合構造11Bが、上記の第1実施形態に係るボルト接合構造11と違う点は、複数の開口61が形成された第1板材60Bを備える点、及び第1対象物20に、リブ24が形成されている点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する場合がある。
【0048】
ボルト接合構造11Bでは、ボルト接合用治具10Bが適用されて第1対象物20と第2対象物30がボルト接合されている。図4では、第1対象物20の第1面22側から図示されているので、第2対象物30を図示していない。第1対象物20及び第2対象物30には、複数のボルト孔21,31が開設されている。
【0049】
ボルト接合用治具10Bは、複数の頭付きボルト40と、複数のナット50と、第1板材60Bとを備える。第1板材60Bは、平面視において矩形状を成す板状の本体62と、本体62からZ軸方向に張り出す一対のリブ65とを備える。本体62は、一対の長辺63と、一対の短辺64とを有する。一対の長辺63は、X軸方向に対向し、Y軸方向に延在する。一対の短辺64は、Y軸方向に対向し、X軸方向に延在する。
【0050】
本体62には、本体62の板厚方向に貫通する複数の開口61が開設されている。複数の開口61は、Y軸方向に並ぶように形成されている。例えば、5つの開口61がY軸方向に並ぶように形成されている。Y軸方向に並ぶ複数の開口61の列は、X軸方向に複数(例えば2列)設けられている。本体62には、合計10個の開口61が形成されている。本体62に形成される開口61の数量は、9個以下でもよく、11個以上でもよい。
【0051】
リブ65は、本体62の長辺63に沿って形成されている。リブ65は、Z軸方向において、第1対象物20とは反対側に突出するように形成されている。リブ65は、例えば、本体62から折り曲げられて形成されている。第1板材60は、一対のリブ65を有し、本体62の剛性が高められている。なお、リブ65は、長辺63に沿って形成されたものに限定されず、短辺64に沿って形成されていてもよく、本体62の幅方向(X軸方向)における中央部に形成されていてもよい。また、リブ65は、第1対象物20とは反対側に突出するものに限定されず、第1対象物20に向かって突出するように形成されているものでもよい。また、第1板材60は、リブ65が形成されていないものでもよい。
【0052】
第1対象物20には、一対のリブ65に接合される一対のリブ24が形成されている。リブ65は、Z軸方向において、第1板材60に近い方へ突出する。リブ24は、X軸方向において、第1板材60Bのリブ65の外側に配置されている。リブ24は、リブ65に沿って、Y軸方向に延在する。リブ65は、第1対象物20の第1面22に接合されている。リブ65は、例えば第1対象物20に溶接されている。
【0053】
第1対象物20のリブ24と第1板材60のリブ65は、例えばねじ止めにより接合されている。リブ24リブ65は、X軸方向に重なるように配置されて、互いに接合されている。リブ24とリブ65の接合はねじ止めによるものに限定されず、溶接でもよく、カシメでもよく、その他の方法により接合されていてもよい。
【0054】
[第2実施形態の作用効果]
このような第2実施形態に係るボルト接合用治具10B及びボルト接合構造11Bは、上記の第1実施形態のボルト接合用治具10及びボルト接合構造11と同様の作用効果を奏する。第2実施形態に係るボルト接合用治具10Bでは、第2対象物30に対して、複数のナット50を同時に配置できる。そのため、複数のナット50を1つ1つ配置する場合と比較して、作業効率の向上を図ることができる。
【0055】
また、ボルト接合用治具10Bでは、第1板材60Bと第1対象物20とが接合されているので、第1対象物20、第1板材60B、及び複数のナット50を同時に、第2対象物30に対して配置することができる。
【0056】
また、ボルト接合用治具10Bでは、第1板材60Bの幅方向の両側に一対のリブ24が配置されているので、一対のリブ24によって、第1対象物20に対する第1板材60Bに対する相対的な移動を拘束できる。
【0057】
また、第1板材60Bには、リブ65が形成されているので、複数の開口61が形成された本体62の剛性を高めることができる。例えば、薄板である本体62に対して複数の開口61を開設しても、所定の剛性を確保できる。
【0058】
[第3実施形態]
次に、図5を参照して、第3実施形態に係るボルト接合用治具及びボルト接合構造について説明する。図5は、第3実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例を示す側面図である。第3実施形態では、ボルト接合用治具10Cを用いて、第1鉄骨梁70と第2鉄骨梁80をボルト接合する場合について説明する。第3実施形態のボルト接合構造11Cは、ボルト接合用治具10Bを用いてボルト接合された構造を含む。第3実施形態の説明において、上記の第1及び第2実施形態と同様の説明は省略する場合がある。
【0059】
図5では、互いに直交する3方向として、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を図示する。図5に示すZ軸方向は、例えば上下方向に沿う。頭付きボルト40の軸は、例えばX軸方向に沿うように配置されている。
【0060】
第1鉄骨梁70及び第2鉄骨梁80は、例えば住宅(建物)の躯体として適用することができる。第1鉄骨梁70は、例えばY軸方向に延在する。第2鉄骨梁80は、例えばX軸方向に延在する。第1鉄骨梁70及び第2鉄骨梁80は、例えばH形鋼である。第1鉄骨梁70は例えば大梁でもよく、第2鉄骨梁80は大梁に接合される小梁でもよい。
【0061】
第1鉄骨梁70は、ウェブ71、上フランジ72及び下フランジ73を有する。ウェブ71の板厚方向は、X軸方向に沿う。上フランジ72及び下フランジ73の板厚方向は、Z軸方向に沿う。
【0062】
第2鉄骨梁80は、ウェブ81、上フランジ82及び下フランジ83を有する。ウェブ81の板厚方向は、Y軸方向に沿う。上フランジ72及び下フランジ73の板厚方向は、Z軸方向に沿う。
【0063】
第1鉄骨梁70には、エンドプレート75が接合されている。エンドプレート75は、上フランジ72及び下フランジ73に溶接されている。エンドプレート75は、上下のフランジに接合された第1エンドプレート(第1対象物)の一例である。エンドプレート75の板厚方向は、X軸方向に沿う。エンドプレート75は、第1鉄骨梁70に対して溶接されているもの限定されず、例えばボルト接合されているものでもよい。また、エンドプレート75は、例えば、ウェブ71に接合されていてもよく、その他の取付金物を介して、第1鉄骨梁70に接合されていてもよい。
【0064】
第2鉄骨梁80には、エンドプレート85が接合されている。エンドプレート85は、第2鉄骨梁80の長手方向における端部に溶接されている。エンドプレート85は、第2鉄骨梁80の端部に接合された第2エンドプレート(第2対象物)の一例である。エンドプレート85は、第2鉄骨梁80の長手方向において、ウェブ81の端部、上フランジ82の端部、及び下フランジ83の端部に溶接されている。エンドプレート85の板厚方向は、X軸方向に沿う。エンドプレート75は、第1鉄骨梁70に対して溶接されているもの限定されず、例えばボルト接合されているものでもよい。また、エンドプレート85は、例えば、その他の取付金物を介して、第2鉄骨梁80に接合されていてもよい。
【0065】
エンドプレート75には複数のボルト孔21が開設されている。エンドプレート85には複数のボルト孔31が開設されている。
【0066】
ボルト接合用治具10Cは、複数の頭付きボルト40と、複数のナット50と、第1板材60Bとを備える。第1板材60Bは、上記の第2実施形態に係るボルト接合用治具10Bの第1板材60Bと同様の構成である。
【0067】
エンドプレート75は、板厚方向に対向する第1面75a及び第2面75bを有する。エンドプレート85は、板厚方向に対向する第1面85a及び第2面85bを有する。エンドプレート75,85は、板厚方向に重なるように配置されている。エンドプレート75の第1面75aは、エンドプレート85とは反対側の面である。エンドプレート75の第2面75bは、エンドプレート85に近い方の面である。エンドプレート85の第1面85aは、エンドプレート75に近い方の面である。エンドプレート85の第2面85bは、エンドプレート75とは反対側の面である。エンドプレート75の第2面75bとエンドプレート85の第1面85aは、板厚方向に対向する。エンドプレート75の第2面75bとエンドプレート85の第1面85aは、相互に接触している。
【0068】
第1板材60Bは、エンドプレート75の第1面75aに対向して配置されている。第1板材60Bの板厚方向は、X軸方向に沿う。第1板材60Bは、エンドプレート75の第1面75aとの間に、皿バネ52を挟むように配置されている。頭付きボルト40の頭部41は、エンドプレート85の第2面85bに配置されている。頭付きボルト40のネジ部42は、エンドプレート75,85の双方のボルト孔に挿通され、ナット50に螺合されている。これにより、エンドプレート75,85がボルト接合され、第1鉄骨梁70に対して第2鉄骨梁80が接合される。
【0069】
[第3実施形態の作用効果]
このような第3実施形態に係るボルト接合用治具10C及びボルト接合構造11Cにおいても、上記の実施形態に係るボルト接合用治具10,10B及びボルト接合構造11,11Bと同様の作用効果を奏する。
【0070】
ボルト接合用治具10Cでは、複数のナット50を同時に予め配置した後に、エンドプレート75,85をボルト接合することができる。また、ボルト接合用治具10Cでは、エンドプレート75に対して、複数のナット50及び第1板材60Bを配設した状態で、エンドプレート75を第1鉄骨梁70に溶接することができる。これにより、エンドプレート75とウェブ71との間の狭い領域に、予め複数のナット50を配設した後に、エンドプレート75,85をボルト接合することができる。なお、複数のナット50及び第1板材60Bは、Y軸方向の両側から鋼板によって覆われていてもよい。
【0071】
[第4実施形態]
次に、図6図10を参照して、第4実施形態に係る接合用治具及びボルト接合構造について説明する。図6は、第4実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例を示す部分断面図である。図7は、第4実施形態に係るボルト接合用治具が取り付けられた状態のH形鋼を上方から示す斜視図である。図8は、第4実施形態に係るボルト接合用治具が取り付けられた状態のH形鋼を下方から示す斜視図である。図9は、ナットクリップを上方から示す斜視図である。図10は、ナットクリップを下方から示す斜視図である。なお、第4実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明については省略する場合がある。
【0072】
図6図10では、互いに直交する3方向として、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を図示する。Z軸方向は、例えば上下方向に沿う。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、任意の方向でよい。
【0073】
図6に示されるボルト接合用治具110は、例えば、第1鉄骨梁70の上フランジ72と、床材150とをボルト接合する際に適用することができる。第1鉄骨梁70の上フランジ72は、第1対象物の一例であり、床材150は、第2対象物の一例である。ボルト接合構造111は、ボルト接合用治具110が適用されて上フランジ72と床材150とがボルト接合されている構造を含む。
【0074】
図7及び図8に示されるように、第1鉄骨梁70は、H形鋼からなり、ウェブ71、上フランジ72及び下フランジ73を有する。ウェブ71の板厚方向は、X軸方向に沿う。上フランジ72及び下フランジ73の板厚方向は、Z軸方向に沿う。第1鉄骨梁70は、例えば住宅(建物)の躯体として適用することができる。
【0075】
床材150は、第1鉄骨梁70に対して固定される板状の部材である。床材150は、住宅の床を構成することができる。床材150は、例えばALC(軽量気泡コンクリート、Autoclaved Light weight Concrete)床板(ALCパネル)でもよい。
【0076】
図6に示されるように、上フランジ72は、その板厚方向に対向する第1面72a及び第2面72bを有する。第1面72aは上面であり、第2面72bは下面である。床材150は、その板厚方向に対向する第1面150a及び第2面150bを有する。第1面150aは上面であり、第2面150bは下面である。
【0077】
上フランジ72及び床材150は板厚方向に重なるように配置されている。上フランジ72の第1面72aは、床材150に近い方の面である。床材150の第1面150aは、上フランジ72とは反対側の面である。床材150の第2面150bは、上フランジ72に近い方の面である。上フランジ72の第1面72aと床材150の第2面150bは、板厚方向に対向する。上フランジ72の第1面72aと床材150の第2面150bとの間には、後述するナットクリップ115の第2板材130が挟まれている。上フランジ72の第1面72aと床材150の第2面150bとは接触していない。
【0078】
上フランジ72には、板厚方向に貫通するボルト孔72cが開設されている。床材150には、板厚方向に貫通するボルト孔150cが開設されている。ボルト孔72c,150cが重なるように、上フランジ72に対して床材150が配置されている。
【0079】
ボルト接合用治具110は、頭付きボルト40と、ナット50と、ナットクリップ115とを備える。図6図10に示されるように、ナットクリップ115は、第1板材120と、第2板材130と、連結部140とを有する。ナットクリップ115は、例えば金属板が折り曲げられて形成されている。ナットクリップ115は、バネ性を有する。
【0080】
図10及び図11に示されるように、第1板材120には、板厚方向に貫通する開口121が開設されている。開口121は、平面視において例えば六角形を成している。図6に示されるように、開口121にはナット部51が挿通される。開口121に挿通されたナット部51は、開口121の周縁に当たり、Z軸回りの回転が拘束される。
【0081】
開口121の内径は、皿バネ52の外径よりも小さい。開口121の内径は、開口121の最大の内径でもよい。開口121の内径は、例えばX軸方向に沿う内径でもよい。開口61の内径が、皿バネ52の外径よりも小さいので、皿バネ52は、開口61を通り抜けることができない。
【0082】
第2板材130は、その板厚方向において、第1板材120と対向して配置されている。第1板材120と第2板材130との間には、上フランジ72及び皿バネ52を挿入可能な隙間が形成されている。図9に示されるように、第2板材130には、板厚方向に貫通する開口131が開設されている。開口131は、頭付きボルト40のネジ部42を挿通可能な大きさを有する。開口131は、例えばX軸方向に延びる切り欠きでもよい。
【0083】
連結部140は、第1部分141及び第2部分142を有する。第1部分141は、板状を成し、第1板材120に繋がっている。第1部分141は、第1板材120に対して折り曲げられ、傾斜している。第1部分141の第1板材120から遠い方の端部は、第1部分141の第1板材120に近い方の端部よりも、Z軸方向において、第2板材130から離れている。
【0084】
第2部分142は、板状を成し、第1部分141及び第2板材130に繋がっている。第2板材130は、連結部140を介して、第1板材120と繋がっている。第2部分142は、第1部分141及び第2板材130に対して折り曲げられている。第2部分142は、Z軸方向に延びる。第2部分142の板厚方向は、X軸方向に沿う。
【0085】
第2部分142の上端部は、第2板材130に接続され、第2部分142の下端部は、第1部分141に接続されている。第2部分142の下端部は、第1板材120よりも下方に配置されている。
【0086】
X軸方向において、第2板材130の長さは、第1板材120の長さよりも長くてもよい。X軸方向は、例えば、上フランジ72の幅方向に沿う。第2板材130の先端部は、X軸方向において、第1板材120よりも張り出している。第2板材130の先端部は、連結部140の第2部分142から離れた方の端部である。
【0087】
ナットクリップ115が、上フランジ72に装着された状態において、第2板材130は、上フランジ72の第1面72a上に配置される。連結部140の第2部分142は、X軸方向において、上フランジ72の外側に配置される。連結部140の第2部分142の下端部は、上フランジ72の第2面72bよりも下方に配置されている。連結部140の第1部分141は、上フランジ72の第2面72bよりも下方に配置されている。
【0088】
第1板材120は、上フランジ72の第2面72bよりも下方に配置されている。Z軸方向において、第1板材120と上フランジ72の第2面72bとの間のすき間には、ナット50の皿バネ52が配置されている。皿バネ52は、第1板材120によって、上フランジ72の第2面72bに押し当てられている。皿バネ52は、上フランジ72と第1板材120によってZ軸方向に挟まれている。ナット50及びナットクリップ115が、上フランジ72に対して配置された状態において、ナット50は、上フランジ72のボルト孔72cに対応する位置に配置されている。
【0089】
床材150は、ナットクリップ115の第2板材130の上に配置される。第2板材130は、上述したように、上フランジ72と床材150とによってZ軸方向に挟まれている。
【0090】
[第4実施形態に係るボルト接合構造の形成方法]
次に、ボルト接合用治具110を用いたボルト接合構造111の形成方法について説明する。ここでは、床材150を第1鉄骨梁70に対してボルト接合してボルト接合構造111を形成する方法について説明する。まず、ナットクリップ115に対して、ナット50を組み付ける。ナット50を第1板材120と第2板材130との間に挿入して、ナット部51を第1板材120の開口121に挿通する。ナット部51を開口121に挿通させて、皿バネ52を第1板材120上に配置する。これにより、ナット50をナットクリップ115に組み付ける。
【0091】
次に、ナット50が組付けられたナットクリップ115を図7及び図8に示されるように、上フランジ72に取り付ける。第1板材120と第2板材130との間のすき間に、上フランジ72を挿入するように、ナットクリップ115を上フランジ72に取り付ける。このとき、皿バネ52は、上フランジ72の第2面72bに接触するよう配置される。ナット50を、上フランジ72のボルト孔72cに対応する位置に配置する。この状態において、第2板材130は、上フランジ72の第1面72a上に配置されている。
【0092】
例えば、連結部140の第2部分142を上フランジ72の幅方向の端面に当てるまで、ナットクリップ115を移動させることができる。このときに、X軸方向において、ナット50が、上フランジ72のボルト孔72cに重なる位置に配置されるようすることができる。
【0093】
次に、図6に示されるように、ナットクリップ115の第2板材130の上に、床材150を配置する。床材150のボルト孔150cが、上フランジ72のボルト孔72cと重なるように、床材150を配置する。
【0094】
次に、頭付きボルト40のネジ部42をボルト孔72c,150cに挿通させ、ネジ部42をナット50に螺合する。頭付きボルト40の頭部41は、床材150の第1面150a上に配置される。頭付きボルト40をナット50に螺合する際に、ナット50は、ナットクリップ115によって、回転が拘束されると共に、Z軸方向への移動が拘束されている。ナットクリップ115の第2板材130が、上フランジ72と床材150とによって挟まれていることにより、ナットクリップ115のY軸方向における移動も抑制されている。ナットクリップ115によって、ナット50の回転及び移動を拘束しながら、頭付きボルト40を螺合することができる。これにより、第1鉄骨梁70に対して床材150をボルト接合することができる。
【0095】
[第4実施形態の作用効果]
このような第4実施形態に係るボルト接合用治具110では、上記の第1実施形態に係るボルト接合用治具10と同様の作用効果を奏する。
【0096】
第4実施形態に係るボルト接合用治具110によれば、ナット部51が第1板材120の開口121に挿通されて、ナット50の回転が拘束されると共に、ナット50の皿バネ52が上フランジ72と第1板材60とによって挟まれて、ナット50が拘束される。これにより、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、予めナットの移動を拘束して、上フランジ72に床材150をボルト接合することができる。
【0097】
また、ボルト接合用治具110では、第1板材120と上フランジ72との間に皿バネ52が配置されることにより、ナットとは別部材であるばね座金を上フランジ72と第1板材120との間に挿入する必要がない。また、第1板材120と上フランジ72との間に皿バネ52が配置されることにより、ナット50の緩みを防止することができる。
【0098】
[第5実施形態]
次に、図11を参照して、第5実施形態に係る接合用治具及びボルト接合構造について説明する。図11は、第5実施形態に係るボルト接合用治具とボルト接合構造の一例を示す部分断面図である。第5実施形態に係るボルト接合構造111Bが、第4実施形態に係るボルト接合構造111と違う点は、第1鉄骨梁70の上フランジ72に対してボルト接合される対象物が異なる点である。第5実施形態では、ボルト接合用治具110を用いて、上フランジ72に対して柱の柱脚160をボルト接合する場合について説明する。第5実施形態のボルト接合用治具110は、第4実施形態のボルト接合用治具110と同様の構成である。なお、第4実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明については省略する場合がある。
【0099】
柱の柱脚160は、例えば住宅(建物)の躯体である柱の柱脚である。柱は鉄骨柱であり、H形鋼から形成される。柱は、H形鋼に限定されず、角形鋼管でもよく、その他のものでもよい。柱の柱脚160は、柱の下端部に接合されたベースプレート170を含む。ベースプレート170は、第2対象物の一例である。
【0100】
ベースプレート170は、その板厚方向に対向する第1面170a及び第2面170bを有する。第1面170aは上面であり、第2面170bは下面である。上フランジ72の第1面72aとベースプレート170の第2面170bは、板厚方向に対向する。上フランジ72の第1面72aとベースプレート170の第2面170bとの間には、ナットクリップ115の第2板材130が挟まれている。上フランジ72の第1面72aとベースプレート170の第2面170bとは接触していない。
【0101】
ベースプレート170には、板厚方向に貫通するボルト孔170cが開設されている。ボルト孔72c,170cが重なるように、上フランジ72に対してベースプレート170が配置されている。ベースプレート170は、ナットクリップ115の第2板材130の上に配置されている。
【0102】
頭付きボルト40は、ボルト孔72c,170cに挿通されて、ナット50に螺合されている。頭付きボルト40の頭部41は、ベースプレート170の第1面170a上に配置されている。
【0103】
[第5実施形態の作用効果]
このような第5実施形態に係るボルト接合用治具110では、上記の第4実施形態に係るボルト接合用治具110と同様の作用効果を奏する。このようなボルト接合用治具110を適用して、第1鉄骨梁70に対して柱の柱脚160をボルト接合することができる。ボルト接合用治具110を適用することにより、溶接ナットやカシメナットを適用しないで、ナット50の回転及び移動を拘束することができる。
【0104】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0105】
上記の実施形態では、例えば、第1対象物として、第1鉄骨梁70の上フランジ72を例示しているが、第1対象物は上フランジ72に限定されず、ウェブ71でもよく、下フランジ73でもよく、第1鉄骨梁70に接合された取付金物でもよく、その他の物でもよい。同様に、第2対象物は、エンドプレート85、床材150、ベースプレート170に限定されず、その他の物でもよい。また、第1対象物及び第2対象物は、住宅に適用されるものに限定されず、その他の建物や構造物に適用されるものでもよい。
【符号の説明】
【0106】
10,10B,10C:ボルト接合用治具
11,11B,11C:ボルト接合構造
20:第1対象物
21:ボルト孔
22:第1面
23:第2面
24:リブ
30:第2対象物
31:ボルト孔
32:第1面
33:第2面
40:頭付きボルト
41:頭部
42:ネジ部
50:ナット
51:ナット部
52:皿バネ(張り出し部)
60,60B:第1板材
61,121:開口
62:本体
63:長辺
64:短辺
65:リブ
70:第1鉄骨梁
71:ウェブ
72:上フランジ(第1対象物)
72a:第1面
72b:第2面
72c:ボルト孔
75:エンドプレート(第1対象物)
80:第2鉄骨梁
81:ウェブ
82:上フランジ
83:下フランジ
85:エンドプレート(第2対象物)
110:ボルト接合用治具
111,111B:ボルト接合構造
115:ナットクリップ
120:第1板材
121:開口
130:第2板材
131:開口
140:連結部
141:第1部分
142:第2部分
150:床材(第2対象物)
150a:第1面
150b:第2面
150c:ボルト孔
160:柱の柱脚
170:ベースプレート(第2対象物)
170a:第1面
170b:第2面
170c:ボルト孔
X:X軸方向
Y:Y軸方向
Z:Z軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11