(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043289
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】レスベラトロール型エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板、および電子装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/06 20060101AFI20240322BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240322BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20240322BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240322BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240322BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20240322BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240322BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C08G59/06 ZAB
C09K5/14 E
B32B15/092
B32B27/38
H05K1/03 610L
H01L23/14 R
H01L23/12 J
H01L23/36 C
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148394
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】樫野 智將
(72)【発明者】
【氏名】大葉 昭良
【テーマコード(参考)】
4F100
4J036
5F136
【Fターム(参考)】
4F100AA07B
4F100AA12B
4F100AA13B
4F100AA14B
4F100AA18B
4F100AA19A
4F100AA20B
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AK53
4F100AK53B
4F100AL06
4F100AL06B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA23B
4F100GB41
4F100GB48D
4F100JA02
4F100JA05
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4F100JA07
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4F100JA13
4F100JB13B
4F100JG04B
4F100JJ01
4F100JJ01B
4F100YY00B
4J036AC01
4J036AC02
4J036AC05
4J036AC07
4J036AD01
4J036AD07
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4J036DC40
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4J036JA15
5F136BB05
5F136BC07
5F136DA27
5F136FA15
5F136FA52
5F136FA63
(57)【要約】
【課題】熱伝導性および耐熱性のバランスが向上した熱伝導性部材を実現できるレスベラトロール型エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂組成物および樹脂シート、並びに、熱伝導性および耐熱性のバランスが向上した熱伝導性部材、金属ベース基板、および電子装置を提供する。
【解決手段】レスベラトロール化合物、芳香族ジオール化合物およびエポキシ化合物から誘導されたレスベラトロール型エポキシ樹脂、または、レスベラトロール化合物由来の構造単位Aおよび芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bを有するレスベラトロール型エポキシ樹脂である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レスベラトロール化合物、芳香族ジオール化合物およびエポキシ化合物から誘導されたレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項2】
前記レスベラトロール化合物および前記芳香族ジオール化合物の合計量を100モル%としたとき、前記レスベラトロール化合物の量が25モル%以上99モル%以下である、請求項1に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項3】
前記エポキシ化合物がエピハロヒドリンを含む、請求項1または2に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項4】
レスベラトロール化合物由来の構造単位Aおよび芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bを有するレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項5】
前記構造単位Aおよび前記構造単位Bの合計モル数を100モル%としたとき、前記構造単位Aの含有量が25モル%以上99モル%以下である、請求項4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項6】
前記レスベラトロール化合物が下記式(3)で示される化合物を含む、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【化1】
(前記式(3)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、aは0以上3以下の整数であり、bは0以上4以下の整数である。)
【請求項7】
前記芳香族ジオール化合物が下記式(4A)で示される化合物および下記式(4B)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【化2】
(前記式(4A)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数であり、nは0以上4以下の整数であり、X
1は酸素原子、硫黄原子、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-または-C=CO-を示し、mは0または1である。)
【化3】
(前記式(4B)において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、eは0以上6以下の整数であり、fは0以上4以下の整数であり、nは0以上4以下の整数であり、X
2は酸素原子、硫黄原子または-SO
2-を示し、mは0または1である。)
【請求項8】
重量平均分子量が350以上5,000以下である、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項9】
熱伝導性部材に用いられる、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項10】
下記方法1により測定されるガラス転移温度が170℃以上である、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法1)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製し、熱機械分析(TMA)を昇温速度5℃/minで測定した際の60℃と200℃における接線の交点から読み取れる温度を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂のガラス転移温度とする。
【請求項11】
下記方法2により測定される熱拡散率が0.190mm2/s以上である、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法2)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、10mm×10mm×1mmの硬化物を作製し、次いで、得られた前記硬化物の熱拡散率を、Xeフラッシュ法により大気雰囲気下、25℃の条件下で測定し、得られた値を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂の熱拡散率とする。
【請求項12】
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂は単量体および二量体以上の成分を含み、前記単量体の含有量が10質量%以上である、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【請求項13】
下記方法3により測定される線膨張係数が60ppm/℃以下である、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法3)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製し、次いで、得られた前記硬化物の50℃~70℃の範囲における厚み方向の線膨張係数を、熱機械分析により測定し、得られた値を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂の線膨張係数とする。
【請求項14】
下記方法4により測定される5%重量減少温度(Td5)が260℃以上である、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法4)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより作製した硬化物を乳鉢で粉砕して硬化物粉末を調製し、次いで、示差熱熱重量同時測定装置を用いて、得られた前記硬化物を、乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により、30℃から600℃まで昇温させることにより、前記硬化物が5%重量減少する温度(Td5)を測定し、得られた値を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂の5%重量減少温度(Td5)とする。
【請求項15】
エポキシ樹脂(A)と、熱伝導性フィラー(C)とを含み、前記エポキシ樹脂(A)が、請求項1または4に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)を含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記熱伝導性フィラー(C)がシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、および硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項15に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
前記熱伝導性フィラー(C)が窒化ホウ素を含む、請求項15に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項15に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を含む樹脂シート。
【請求項19】
前記樹脂組成物層はBステージ状態である、請求項18に記載の樹脂シート。
【請求項20】
請求項15に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化物層を含む熱伝導性部材。
【請求項21】
熱伝導性シートである、請求項20に記載の熱伝導性部材。
【請求項22】
昇温速度5℃/min、周波数10Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、前記樹脂硬化物層のガラス転移温度が180℃以上である、請求項20に記載の熱伝導性部材。
【請求項23】
JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により大気雰囲気下、25℃の条件下で測定される、前記樹脂硬化物層の厚み方向の熱伝導率が18.0W/(m・K)以上である、請求項20に記載の熱伝導性部材。
【請求項24】
金属基板と、
前記金属基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた金属層と、を備え、
前記絶縁層が、請求項15に記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および請求項20に記載の熱伝導性部材からなる群から選択される一種を含む、金属ベース基板。
【請求項25】
請求項24に記載の金属ベース基板と、
前記金属ベース基板上に設けられた電子部品と、
を備える電子装置。
【請求項26】
パワーモジュールである、請求項25に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レスベラトロール型エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板、および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の処理能力の向上に伴い、電子部品から発生する熱量は増加傾向にある。そのため電子部品から熱を効果的に外部へ放散させる放熱対策が重要となっている。このような放熱対策として、金属、セラミックス、または樹脂組成物等の放熱材料からなる熱伝導性部材が適用されている。
【0003】
これらの熱伝導性部材の中でも、エポキシ樹脂組成物により形成される熱伝導性エポキシ樹脂成形体は、電気絶縁性、機械的性質、耐熱性、耐薬品性、接着性等が良好であるため、注型品、積層板、封止材、熱伝導性シート、接着剤等として電気電子分野を中心に広く使用されている。
【0004】
このような熱伝導性エポキシ樹脂成形体に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2015-193504号公報)および特許文献2(特開2004-331811号公報)に記載のものが挙げられる。
【0005】
特許文献1には、樹脂成分と、前記樹脂成分中に分散した熱伝導性充填剤と、を含み、前記熱伝導性充填剤は、(1)ゆるめ嵩密度が0.52g/mL以上であり、(2)平均の円形度が0.65以上である窒化ホウ素粒子を含む樹脂組成物によれば、放熱性に優れた材料が得られると記載されている。
【0006】
特許文献2には、アゾメチン基を有するエポキシ樹脂を主成分とする熱伝導性エポキシ樹脂成形体であって、熱伝導率が0.5~30W/(m・K)であることを特徴とする熱伝導性エポキシ樹脂成形体が、優れた熱伝導性を発揮させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-193504号公報
【特許文献2】特開2004-331811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子部品の処理能力のさらなる向上に伴い、熱伝導性部材には、熱伝導性および耐熱性のバランスのさらなる向上が求められている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、熱伝導性および耐熱性のバランスが向上した熱伝導性部材を実現できるレスベラトロール型エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂組成物および樹脂シート、並びに、熱伝導性および耐熱性のバランスが向上した熱伝導性部材、金属ベース基板、および電子装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、レスベラトロール化合物および芳香族ジオール化合物から誘導されるレスベラトロール型エポキシ樹脂を用いることにより、得られる熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上できることを見出して、本発明を完成させた。
【0011】
本発明によれば、以下に示すレスベラトロール型エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、熱伝導性部材、金属ベース基板、および電子装置が提供される。
【0012】
[1]
レスベラトロール化合物、芳香族ジオール化合物およびエポキシ化合物から誘導されたレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[2]
前記レスベラトロール化合物および前記芳香族ジオール化合物の合計量を100モル%としたとき、前記レスベラトロール化合物の量が25モル%以上99モル%以下である、前記[1]に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[3]
前記エポキシ化合物がエピハロヒドリンを含む、前記[1]または[2]に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[4]
レスベラトロール化合物由来の構造単位Aおよび芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bを有するレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[5]
前記構造単位Aおよび前記構造単位Bの合計モル数を100モル%としたとき、前記構造単位Aの含有量が25モル%以上99モル%以下である、前記[4]に記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[6]
前記レスベラトロール化合物が下記式(3)で示される化合物を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【化1】
(前記式(3)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、aは0以上3以下の整数であり、bは0以上4以下の整数である。)
[7]
前記芳香族ジオール化合物が下記式(4A)で示される化合物および下記式(4B)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
【化2】
(前記式(4A)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数であり、nは0以上4以下の整数であり、X
1は酸素原子、硫黄原子、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-または-C=CO-を示し、mは0または1である。)
【化3】
(前記式(4B)において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、eは0以上6以下の整数であり、fは0以上4以下の整数であり、nは0以上4以下の整数であり、X
2は酸素原子、硫黄原子または-SO
2-を示し、mは0または1である。)
[8]
重量平均分子量が350以上5,000以下である、前記[1]~[7]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[9]
熱伝導性部材に用いられる、前記[1]~[8]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[10]
下記方法1により測定されるガラス転移温度が170℃以上である、前記[1]~[9]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法1)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製し、熱機械分析(TMA)を昇温速度5℃/minで測定した際の60℃と200℃における接線の交点から読み取れる温度を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂のガラス転移温度とする。
[11]
下記方法2により測定される熱拡散率が0.190mm
2/s以上である、前記[1]~[10]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法2)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、10mm×10mm×1mmの硬化物を作製し、次いで、得られた前記硬化物の熱拡散率を、Xeフラッシュ法により大気雰囲気下、25℃の条件下で測定し、得られた値を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂の熱拡散率とする。
[12]
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂は単量体および二量体以上の成分を含み、前記単量体の含有量が10質量%以上である、前記[1]~[11]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
[13]
下記方法3により測定される線膨張係数が60ppm/℃以下である、前記[1]~[12]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法3)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製し、次いで、得られた前記硬化物の50℃~70℃の範囲における厚み方向の線膨張係数を、熱機械分析により測定し、得られた値を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂の線膨張係数とする。
[14]
下記方法4により測定される5%重量減少温度(Td5)が260℃以上である、前記[1]~[13]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂。
(方法4)
前記レスベラトロール型エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより作製した硬化物を乳鉢で粉砕して硬化物粉末を調製し、次いで、示差熱熱重量同時測定装置を用いて、得られた前記硬化物を、乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により、30℃から600℃まで昇温させることにより、前記硬化物が5%重量減少する温度(Td5)を測定し、得られた値を前記レスベラトロール型エポキシ樹脂の5%重量減少温度(Td5)とする。
[15]
エポキシ樹脂(A)と、熱伝導性フィラー(C)とを含み、前記エポキシ樹脂(A)が、前記[1]~[14]のいずれかに記載のレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)を含む熱硬化性樹脂組成物。
[16]
前記熱伝導性フィラー(C)がシリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、および硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[15]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[17]
前記熱伝導性フィラー(C)が窒化ホウ素を含む、前記[15]または[16]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[18]
前記[15]~[17]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を含む樹脂シート。
[19]
前記樹脂組成物層はBステージ状態である、前記[18]に記載の樹脂シート。
[20]
前記[15]~[17]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化物層を含む熱伝導性部材。
[21]
熱伝導性シートである、前記[20]に記載の熱伝導性部材。
[22]
昇温速度5℃/min、周波数10Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、前記樹脂硬化物層のガラス転移温度が180℃以上である、前記[20]または[21]に記載の熱伝導性部材。
[23]
JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により大気雰囲気下、25℃の条件下で測定される、前記樹脂硬化物層の厚み方向の熱伝導率が18.0W/(m・K)以上である、前記[20]~[22]のいずれかに記載の熱伝導性部材。
[24]
金属基板と、
前記金属基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた金属層と、を備え、
前記絶縁層が、前記[15]~[17]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および前記[20]~[23]のいずれかに記載の熱伝導性部材からなる群から選択される一種を含む、金属ベース基板。
[25]
前記[24]に記載の金属ベース基板と、
前記金属ベース基板上に設けられた電子部品と、
を備える電子装置。
[26]
パワーモジュールである、前記[25]に記載の電子装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱伝導性および耐熱性のバランスが向上した熱伝導性部材を実現できるレスベラトロール型エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂組成物および樹脂シート、並びに、熱伝導性および耐熱性のバランスが向上した熱伝導性部材、金属ベース基板、および電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る金属ベース基板の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電子装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図3】実施例7で得られたエポキシ樹脂、比較例1で得られたレスベラトロール型エポキシ樹脂、および比較例2で得られたビフェニル型エポキシ樹脂のGPC曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲を示す「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0016】
[レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)]
本発明のレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)は、レスベラトロール化合物、芳香族ジオール化合物およびエポキシ化合物から誘導されたエポキシ樹脂である。
前記エポキシ化合物はレスベラトロール化合物および芳香族ジオール化合物のフェノール性水酸基と反応することによりエポキシ基を導入できる化合物であれば、特に限定されないが、好ましくはエピハロヒドリンを含み、より好ましくはエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびエピヨードヒドリンからなる群から選択される一種または二種以上を含み、更に好ましくはエピクロロヒドリンを含む。
【0017】
また、本発明のレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)は、分子内にレスベラトロール化合物由来の構造単位Aおよび芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bを有するエポキシ樹脂である。
ここで、レスベラトロール化合物由来の構造単位Aとは、好ましくは下記式(1)で示される構造であり、芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bとは、好ましくは下記式(2A)で示される構造および下記式(2B)で示される構造からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0018】
【化4】
(前記式(1)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子またはメチル基、更に好ましくは水素原子を示し、aは0以上3以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、bは0以上4以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、*は結合手を示す。)
【0019】
【化5】
(前記式(2A)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子またはメチル基、更に好ましくは水素原子を示し、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、nは、好ましくは0以上4以下の整数、より好ましく0以上3以下の整数、更に好ましくは0以上2以下の整数、更に好ましくは0または1であり、X
1は酸素原子、硫黄原子、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-または-C=CO-を示し、好ましくは酸素原子を示し、mは、好ましくは0または1であり、*は結合手を示す。)
【0020】
【化6】
(前記式(2B)において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子またはメチル基、更に好ましくは水素原子を示し、eは0以上6以下の整数、好ましくは0以上4以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数、更に好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、fは0以上4以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、nは、好ましくは0以上4以下の整数、より好ましく0以上3以下の整数、更に好ましくは0以上2以下の整数、更に好ましくは0または1であり、X
2は酸素原子、硫黄原子または-SO
2-を示し、好ましくは酸素原子を示し、mは、好ましくは0または1であり、*は結合手を示す。)
【0021】
本実施形態に係るレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)によれば、得られる熱硬化性樹脂組成物、樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させることができる。また、本発明に係るレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)、熱硬化性樹脂組成物および樹脂シートによれば、熱伝導性および耐熱性のバランスが向上した金属ベース基板、および電子装置を実現することができる。
このような効果が得られる理由は、以下の通りであると推察される。
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)は、分子内にレスベラトロール化合物由来の構造単位Aおよび芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bを有する。
レスベラトロール化合物由来の構造単位Aは多官能性、剛直性および電子共役を有するため、硬化時に、構造単位Aにより架橋密度および結晶性を向上させることができる。
芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bは、対称性の高い直線構造を有するため、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の直線性を向上させ、フォノンをより効率よく伝達させることが可能となる。
すなわち、本発明に係るレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)によれば、レスベラトロール化合物由来の構造単位Aおよび芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bの相乗効果により、得られる熱硬化性樹脂組成物、樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させることができると考えられる。
【0022】
レスベラトロール化合物は、好ましくは下記(3)で示される化合物を含む。芳香族ジオール化合物は、好ましくは下記(4A)で示される化合物および下記式(4B)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含む。
【0023】
【化7】
(前記式(3)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子またはメチル基、更に好ましくは水素原子を示し、aは0以上3以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、bは0以上4以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0である。)
【0024】
【化8】
(前記式(4A)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子またはメチル基、更に好ましくは水素原子を示し、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上4以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、nは、好ましくは0以上4以下の整数、より好ましく0以上3以下の整数、更に好ましくは0以上2以下の整数、更に好ましくは0または1であり、X
1は酸素原子、硫黄原子、-SO
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-CH=N-または-C=CO-を示し、好ましくは酸素原子を示し、mは、好ましくは0または1である。)
【0025】
【化9】
(前記式(4B)において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、または炭素数1以上6以下の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基を示し、好ましくは水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、より好ましくは水素原子またはメチル基、更に好ましくは水素原子を示し、eは0以上6以下の整数、好ましくは0以上4以下の整数、より好ましくは0以上2以下の整数、更に好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、fは0以上4以下の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1、更に好ましくは0であり、nは、好ましくは0以上4以下の整数、より好ましく0以上3以下の整数、更に好ましくは0以上2以下の整数、更に好ましくは0または1であり、X
2は酸素原子、硫黄原子または-SO
2-を示し、好ましくは酸素原子を示し、mは、好ましくは0または1である。)
【0026】
本実施形態のレスベラトロール化合物は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくはレスベラトロールを含む。
本実施形態の芳香族ジオール化合物は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは4、4’-ビフェノール、ヒドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、および4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルからなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは4、4’-ビフェノールおよびヒドロキノンからなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0027】
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)がレスベラトロール化合物、芳香族ジオール化合物およびエポキシ化合物から誘導されたエポキシ樹脂である場合、レスベラトロール化合物および芳香族ジオール化合物の合計量を100モル%としたとき、レスベラトロール化合物の量は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点、並びに、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の溶剤溶解性を向上させる観点から、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは35モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは92モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
【0028】
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)が、分子内にレスベラトロール化合物由来の構造単位Aおよび芳香族ジオール化合物由来の構造単位Bを有するエポキシ樹脂である場合、前記構造単位Aおよび前記構造単位Bの合計モル数を100モル%としたとき、前記構造単位Aの含有量は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点、並びに、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の溶剤溶解性を向上させる観点から、好ましくは25モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは35モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは92モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
【0029】
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは130g/eq以上、より好ましくは150g/eq以上、より好ましくは160g/eq以上、そして、好ましくは400g/eq以下、より好ましくは350g/eq以下、より好ましくは300g/eq以下、更に好ましくは280g/eq以下、更に好ましくは250g/eq以下である。
【0030】
本明細書におけるエポキシ当量の測定手法を以下に記載する。
エポキシ樹脂をクロロホルムやシクロヘキサノン等の適切な溶媒20mLに溶解する。得られた溶解液に酢酸20mL、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mL(臭化テトラエチルアンモニウム100gに対して酢酸400mLを添加して溶解した溶液)を加え、0.1Nに調整した過塩素酸溶液を用いて電位差自動滴定装置(メトローム社製916 Ti-Touch)により滴定する。ブランクテストを行い、下記式よりエポキシ当量を算出する。
エポキシ当量(g/eq)=(1000×W)/{(S-B)×N}
W:試料質量
B:ブランクテストに使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
S:サンプルの滴定に使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
N:過塩素酸溶液の規定度(0.1N)
【0031】
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは350以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは700以上であり、そして、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下である。
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0032】
本明細書において、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて分子量分布曲線を得ることにより測定できる。レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めたポリスチレン換算値を用いて、算出する。
GPCの測定条件は、たとえば以下の通りである。
東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)社製TSK-GEL GMH、G2000H、SuperHM-M
検出器:液体クロマトグラム用UV検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0033】
下記方法1により測定される、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)のガラス転移温度は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは170℃以上、より好ましくは175℃以上、更に好ましくは178℃以上、更に好ましくは180℃以上、更に好ましくは185℃以上である。前記ガラス転移温度の上限値は特に限定されないが、例えば300℃以下であり、250℃以下であってもよく、220℃以下であってもよく、210℃以下であってもよい。
(方法1)
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製し、熱機械分析(TMA)を昇温速度5℃/minで測定した際の60℃と200℃における接線の交点から読み取れる温度をレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)のガラス転移温度とする。
【0034】
下記方法2により測定される、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の熱拡散率は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは0.190mm2/s以上、より好ましくは0.195mm2/s以上、更に好ましくは0.200mm2/s以上、更に好ましくは0.210mm2/s以上、更に好ましくは0.220mm2/s以上である。前記熱拡散率の上限値は特に限定されないが、例えば0.500mm2/s以下であり、0.400mm2/s以下であってもよく、0.300mm2/s以下であってもよい。
(方法2)
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、10mm×10mm×1mmの硬化物を作製し、次いで、得られた前記硬化物の熱拡散率を、Xeフラッシュ法により大気雰囲気下、25℃の条件下で測定し、得られた値をレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の熱拡散率とする。
【0035】
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)は、好ましくは単量体および二量体以上の成分(多量体ともいう。)を含む。
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)中の前記単量体の含有量は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
ここで、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)中の前記単量体とは、レスベラトロール化合物とエポキシ化合物から誘導されたエポキシ樹脂の単量体や、芳香族ジオール化合物とエポキシ化合物から誘導されたエポキシ樹脂の単量体を意味する。
【0036】
下記方法3により測定される、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の線膨張係数は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは60ppm/℃以下、より好ましくは55ppm/℃以下、更に好ましくは50ppm/℃以下である。前記線膨張係数の下限値は特に限定されないが、例えば5ppm/℃以上であり、10ppm/℃以上であってもよく、15ppm/℃以上であってもよく、20ppm/℃以上であってもよい。
(方法3)
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製し、次いで、得られた前記硬化物の50℃~70℃の範囲における厚み方向の線膨張係数を、熱機械分析により測定し、得られた値をレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の線膨張係数とする。
【0037】
下記方法4により測定される、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の5%重量減少温度(Td5)は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスを向上させる観点から、好ましくは260℃以上、より好ましくは280℃以上、更に好ましくは290℃以上である。前記重量減少温度(Td5)の上限値は特に限定されないが、例えば500℃以下であり、400℃以下であってもよく、350℃以下であってもよく、340℃以下であってもよい。
(方法4)
レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)100質量部と、2-メチルイミダゾール0.1質量部とからなる組成物を測定サンプルとして準備し、前記測定サンプルを180℃、90分加熱処理することにより作製した硬化物を乳鉢で粉砕して硬化物粉末を調製し、次いで、示差熱熱重量同時測定装置を用いて、得られた前記硬化物を、乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により、30℃から600℃まで昇温させることにより、前記硬化物が5%重量減少する温度(Td5)を測定し、得られた値をレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)の5%重量減少温度(Td5)とする。
【0038】
[熱硬化性樹脂組成物]
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、熱伝導性フィラー(C)とを含み、前記エポキシ樹脂(A)が、前述したレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)を含む。
【0039】
以下に、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0040】
<エポキシ樹脂(A)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を含む。
エポキシ樹脂(A)が、前述したレスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)を含む。
【0041】
(その他のエポキシ樹脂(A2))
エポキシ樹脂(A)は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより向上させる観点から、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)以外のエポキシ樹脂(A2)を含むことができる。
【0042】
エポキシ樹脂(A2)は特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フルオレノン構造を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;ナフタレンジオール型エポキシ樹脂;1,6-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,7-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、1,5―ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、1、4-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,6―ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;ナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含み、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂、およびナフタレンアラルキル骨格を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0043】
エポキシ樹脂(A2)は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより向上させる観点から、好ましくは、23℃で液状または半固形のエポキシ樹脂を含む。
本実施形態において、エポキシ樹脂(A)は、得られる熱硬化性樹脂組成物の成形性をより向上させる観点から、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)と、23℃で液状または半固形のエポキシ樹脂(A2)とを組み合わせて含むことが好ましい。
【0044】
エポキシ樹脂(A)は、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスをより向上させる観点から、レスベラトロール型エポキシ樹脂(A1)を好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含み、そして、好ましくは100質量%以下含むことができる。
【0045】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の熱伝導性フィラー(C)を除く成分の合計量すなわちエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(D)および硬化促進剤(E)の合計量(以下、本明細書において、「樹脂成分の合計量」と呼ぶ。)を100質量部としたとき、得られる樹脂シートおよび熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、更に好ましくは27質量部以上であり、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0046】
<硬化剤(B)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより向上させる観点から、好ましくは硬化剤(B)を更に含む。
硬化剤(B)は、好ましくは、酸無水物、シアネートエステル樹脂およびジシアンジアミド化合物からなる群から選択される一種または二種以上を含み、より好ましくはシアネートエステル樹脂を含む。
ここで、本明細書において、シアネートエステル樹脂には、イソシアネート化合物は含まれない。
シアネートエステル樹脂は、例えば、ノボラック型シアネートエステル樹脂;ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等のビスフェノール型シアネートエステル樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂;およびビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含み、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスをより向上させる観点から、好ましくはノボラック型シアネートエステル樹脂およびナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはノボラック型シアネートエステル樹脂を含む。
【0047】
ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、例えば、下記式(I)で示されるものが挙げられる。
【0048】
【0049】
前記式(I)で示されるノボラック型シアネートエステル樹脂の平均繰り返し単位nは任意の整数である。平均繰り返し単位nは、特に限定されないが、ノボラック型シアネートエステル樹脂の耐熱性がより向上し、加熱時に低量体が脱離および揮発することをより一層抑制できる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、溶融粘度が高くなるのを抑制でき、成形性をより向上できる観点から、好ましくは10以下、より好ましくは7以下である。
【0050】
ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂としては、例えば、下記式(II)で示されるものが挙げられる。
下記式(II)で表わされるナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂は、例えば、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを縮合させて得られるものである。
下記式(II)の繰り返し単位nは、より均一な樹脂シートを得る観点、および、収量の低下を防止できる観点から、好ましくは10以下の整数である。
【0051】
【0052】
前記式(II)中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、nは1以上10以下の整数を示す。
【0053】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物中の硬化剤(B)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより向上させる観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。
【0054】
<熱伝導性フィラー(C)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性を向上させる観点から、熱伝導性フィラー(C)を含む。
熱伝導性フィラー(C)は、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、および硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種を含み、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは窒化ホウ素、窒化アルミニウムおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくは窒化ホウ素を含む。
【0055】
前記窒化ホウ素は、好ましくは鱗片状窒化ホウ素を含み、より好ましくは鱗片状窒化ホウ素の単分散粒子および鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含み、更に好ましくは鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子を含む。
鱗片状窒化ホウ素は顆粒状に造粒されていてもよい。鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子は、焼結粒子であっても、非焼結粒子であってもよい。
【0056】
熱伝導性フィラー(C)の平均粒径は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等を向上させる観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
ここで、熱伝導性フィラー(C)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により、粒子の粒度分布を体積基準で測定したときのメディアン径(D50)である。
【0057】
熱伝導性フィラー(C)は、前記窒化ホウ素を好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上含み、そして、好ましくは100質量%以下含むことができる。
【0058】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物中の熱伝導性フィラー(C)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上、更に好ましくは250質量部以上、更に好ましくは280質量部以上であり、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等を向上させる観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは480質量部以下、更に好ましくは450質量部以下、更に好ましくは420質量部以下、更に好ましくは400質量部以下である。
【0059】
<フェノキシ樹脂(D)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより向上させる観点から、好ましくはフェノキシ樹脂(D)を更に含む。
【0060】
フェノキシ樹脂(D)は、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン骨格を有するフェノキシ樹脂、フェニルベンゾエート骨格を有するフェノキシ樹脂およびこれらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂を含み、更に好ましくはビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂およびビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格を両方有するフェノキシ樹脂から選択される少なくとも一種を含み、更に好ましくはビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂を含む。
【0061】
フェノキシ樹脂(D)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上、更に好ましくは3,500以上、更に好ましくは4,000以上であり、そして、好ましくは80,000以下である。フェノキシ樹脂(D)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0062】
本実施形態において、フェノキシ樹脂(D)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて分子量分布曲線を得ることにより測定できる。フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めたポリスチレン換算値を用いて、算出する。
GPCの測定条件は、たとえば以下の通りである。
東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)社製TSK-GEL GMH、G2000H、SuperHM-M
検出器:液体クロマトグラム用UV検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0063】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物中のフェノキシ樹脂(D)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の成形性、外観、柔軟性、可撓性、耐屈曲性、応力緩和性、他部材との密着性等をより向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、得られる樹脂シートや熱伝導性部材の熱伝導性および耐熱性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは65質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
【0064】
<硬化促進剤(E)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性、反応性および耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは硬化促進剤(E)を更に含む。
硬化促進剤(E)は特に限定されないが、例えば、窒素原子含有化合物、有機リン化合物、フェノール化合物、有機酸、有機金属塩およびフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
硬化促進剤(E)の種類や配合量は特に限定されないが、反応速度や反応温度、保管性等の観点から、適切なものを選択することができる。
【0065】
硬化促進剤(E)は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは、イミダゾール類、3級アミン類等の窒素原子含有化合物;フェノール化合物;フェノール樹脂;およびベンゾオキサジン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0066】
イミダゾール類は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、および1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテートからなる群から選択される少なくとも一種を含む。
3級アミン類は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
フェノール化合物は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノニルフェノール、アリルフェノール、および2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンからなる群から選択される少なくとも一種を含む。
フェノール樹脂は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック樹脂、トリスフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;およびレゾール型フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
ベンゾオキサジン樹脂は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは、o-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、m-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、p-クレゾールアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-メチルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-シクロヘキシルアミン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-m-トルイジン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-3,5-ジメチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-アミン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールS-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルスルホン-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ジヒドロキシジフェニルエーテル-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾフェノン型ベンゾオキサジン樹脂、ビフェニル型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールAF-アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、ビスフェノールA-メチルアニリン型ベンゾオキサジン樹脂、フェノール-ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、トリフェニルメタン型ベンゾオキサジン樹脂、およびフェノールフタレイン型ベンゾオキサジン樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0067】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物中の硬化促進剤(E)の含有量は、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、熱硬化性、反応性および耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、更に好ましくは0.20質量部以上、更に好ましくは0.50質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0068】
<その他の成分>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外の成分を含むことができる。その他の成分としては、例えば、カップリング剤、酸化防止剤、レベリング剤、分散安定剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0069】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物中の、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、熱伝導性フィラー(C)、フェノキシ樹脂(D)および硬化促進剤(E)の合計含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、得られる熱伝導性部材、金属ベース基板、および電子装置の熱伝導性および耐熱性のバランスをより向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0070】
[熱硬化性樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法として、例えば、次のような方法がある。
【0071】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、熱伝導性フィラー(C)、フェノキシ樹脂(D)および硬化促進剤(E)を溶媒中で混合することにより、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を調製する。この混合は、特に限定されないが超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、自転公転式分散方式、3本ロール等の各種混合機を用いて行うことができる。
上記溶媒は特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一種を含む。
上記方法により、熱硬化性樹脂組成物中に熱伝導性フィラー(C)をより均一に分散させることが可能である。
【0072】
[樹脂シート]
本実施形態に係る樹脂シートは、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層を含む。前記樹脂組成物層は、好ましくはBステージ状態である。
本実施形態に係る樹脂シートの具体的な形態は、例えば、基材と、基材上に設けられた、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層と、を備えるものである。
【0073】
本実施形態に係る樹脂シートは、例えば、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物を基材上に塗布して得られた塗布膜に対して、溶媒除去処理を行うことにより得ることができる。上記樹脂シート中の溶媒含有率が、熱硬化性樹脂組成物全体に対して10質量%以下とすることが好ましい。例えば、80℃~200℃、1分間~30分間の条件で、前記溶媒除去処理を行うことができる。
【0074】
本実施形態に係る樹脂シートの平面形状は、特に限定されず、放熱体や発熱体等の形状に合わせて適宜選択することが可能であるが、例えば矩形とすることができる。
本実施形態に係る樹脂シートの樹脂組成物層の膜厚は、例えば、機械的強度、耐熱性、絶縁性および放熱性のバランスをより向上させる観点から、50μm以上500μm以下である。
【0075】
上記基材は、例えば、樹脂フィルムおよび金属箔からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
樹脂フィルムは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素系樹脂フィルム;およびポリイミド樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも一種を含む。
金属箔は、特に限定されないが、例えば、銅箔、銅系合金箔、アルミ箔、アルミ系合金箔、鉄箔、鉄系合金箔、銀箔、銀系合金箔、金箔、金系合金箔、亜鉛箔、亜鉛系合金箔、ニッケル箔、ニッケル系合金箔、錫箔および錫系合金箔からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
上記基材の厚みは、例えば、10μm以上500μm以下である。
【0076】
本実施形態に係る樹脂シートは、各種の基板用途に用いることが可能であり、熱伝導性および耐熱性のバランスの観点から、パワーモジュールに用いるパワーモジュール用基板の材料として好適に用いることができる。
【0077】
[熱伝導性部材]
本実施形態に係る熱伝導性部材は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化物層を含む。前記樹脂硬化物層は、好ましくはCステージ状態である。
本実施形態に係る熱伝導性部材は、例えば、前述した本実施形態に係る樹脂シートを硬化し、必要に応じて基材を剥離することによって得ることができる。
また、本実施形態に係る熱伝導性部材は、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは熱伝導性シートである。
【0078】
本実施形態に係る熱伝導性部材は、例えば、発熱体と、放熱体との間に介在する熱伝導材として使用される。
発熱体としては、半導体素子、LED素子、半導体素子やLED素子等が搭載された基板、Central Processing Unit(CPU)、パワー半導体、リチウムイオン電池、燃料電池等を挙げることができる。
放熱体としては、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、放熱(冷却)フィン等を挙げることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る熱伝導性部材は、例えば、電子装置内の高熱伝導性が要求される接合界面に設けられ、発熱体から放熱体への熱伝導を促進することができる。これにより、半導体チップ等における特性変動に起因した故障を抑え、電子装置の安定性の向上が図られている。
【0080】
本実施形態に係る熱伝導性部材の平面形状は、特に限定されず、放熱体や発熱体等の形状に合わせて適宜選択することが可能であるが、例えば矩形とすることができる。
本実施形態に係る熱伝導性部材における樹脂硬化物層の厚みは、機械的強度、耐熱性および絶縁性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上であり、放熱性をより向上させる観点から、好ましくは400μm以下、より好ましくは350μm以下、更に好ましくは250μm以下である。
【0081】
本実施形態に係る熱伝導性部材において、昇温速度5℃/min、周波数10Hzの条件で動的粘弾性測定により測定される、前記樹脂硬化物層のガラス転移温度は、耐熱性および絶縁性をより向上させる観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは220℃以上である。前記ガラス転移温度の上限値は特に限定されないが、例えば350℃以下であり、330℃以下であってもよく、300℃以下であってもよく、280℃以下であってもよく、270℃以下であってもよい。
前記ガラス転移温度は熱伝導性部材を構成する各成分の種類や配合割合を適切に調節することにより制御することができる。
【0082】
本実施形態に係る熱伝導性部材において、JIS R 1611:2010に準拠したフラッシュ法により大気雰囲気下、25℃の条件下で測定される、前記樹脂硬化物層の厚み方向の熱伝導率は、得られる金属ベース基板や電子装置の放熱性をより向上させる観点から、好ましくは18.0W/(m・K)以上、より好ましくは19.0W/(m・K)以上、更に好ましくは20.0W/(m・K)以上である。
前記熱伝導率は、具体的には、フラッシュ法にて測定した熱拡散係数(α)、DSC法により測定した比熱(Cp)、JIS-K-6911に準拠して測定した密度(ρ)より次式を用いて算出することができる。測定温度は25℃である。
熱伝導率[W/(m・K)]=α[m2/s]×Cp[J/(kg・K)]×ρ[kg/m3]
【0083】
本実施形態に係る熱伝導性部材は、各種の基板用途に用いることが可能であり、熱伝導性および耐熱性のバランスの観点から、パワーモジュールに用いるパワーモジュール用基板の材料として好適に用いることができる。
【0084】
[金属ベース基板]
図1は、本実施形態に係る金属ベース基板100の構成の一例を示す概略断面図である。
本実施形態に係る金属ベース基板100は、金属基板101と、金属基板101上に設けられた絶縁層102と、絶縁層102上に設けられた金属層103と、を備え、絶縁層102が、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および前述した本実施形態に係る熱伝導性部材からなる群から選択される一種を含む。
【0085】
絶縁層102は、金属層103の回路加工の前では、Bステージ状態の樹脂組成物層で構成されていてもよく、回路加工の後では、それを硬化処理されてなる樹脂硬化物層であってもよい。
【0086】
絶縁層102の厚みは、機械的強度、耐熱性および絶縁性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上であり、金属ベース基板100全体における放熱性をより向上させる観点から、好ましくは400μm以下、より好ましくは350μm以下、更に好ましくは250μm以下である。
【0087】
金属層103は絶縁層102上に設けられ、回路加工されるものである。この金属層103を構成する金属は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、鉄および錫等からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
金属層103は、回路加工性をより向上させる観点から、好ましくは銅層およびアルミニウム層からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくは銅層を含む。金属層103は、板状で入手できる金属箔を用いてもよいし、ロール状で入手できる金属箔を用いてもよい。
【0088】
金属層103の厚みは、高電流を要する用途であっても、回路パターンの発熱をより抑制する観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上、更に好ましくは0.10mm以上、更に好ましくは0.25mm以上であり、回路加工性をより向上できるとともに、基板全体をより薄型化できる観点から、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは7.0mm以下、更に好ましくは4.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.5mm以下である。
【0089】
金属基板101は、金属ベース基板100に蓄積された熱を放熱する役割を有する。金属基板101は、放熱性の金属基板であれば特に限定されないが、好ましくは銅基板、銅合金基板、アルミニウム基板およびアルミニウム合金基板からなる群から選択される少なくとも一種を含み、放熱性をより向上させる観点から、より好ましくは銅基板およびアルミニウム基板からなる群から選択される少なくとも一種を含み、更に好ましくは銅基板を含む。
【0090】
金属基板101の厚みは特に限定されないが、外形加工や切り出し加工等における加工性を向上できるとともに、基板全体をより薄型化できる観点から、好ましくは20.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下であり、放熱性をより向上させる観点から、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは2.0mm以上である。
【0091】
金属ベース基板100は、パターンにエッチング等することによって回路加工された金属層103を有することができる。この金属ベース基板100において、最外層に不図示のソルダーレジストを形成し、露光・現像により電子部品が実装できるよう接続用電極部が露出されていてもよい。
【0092】
本実施形態に係る金属ベース基板100は、各種の基板用途に用いることが可能であり、熱伝導性および耐熱性のバランスの観点から、パワーモジュールに用いるパワーモジュール用基板として好適に用いることができる。
【0093】
[電子装置]
本実施形態に係る金属ベース基板100は、放熱絶縁性が要求される各種用途に用いることができ、例えば半導体装置等の電子装置に用いることができる。
図2は、本実施形態に係る電子装置200の構成の一例を示す概略断面図である。
本実施形態に係る電子装置200は、前述した本実施形態に係る金属ベース基板100と、金属ベース基板100上に設けられた電子部品201と、を備える。
動作により発熱する電子部品201(各種の発熱素子)からの熱に対して、金属ベース基板100はヒートスプレッターとして機能することができる。
【0094】
図2に示す電子装置200は、金属ベース基板100の金属層103上に、ダイアタッチ材等の接着層202を介して半導体素子等の電子部品201が搭載されている。電子部品201は、ボンディングワイヤ203を介して金属ベース基板100に形成された接続用電極部に接続されており、金属ベース基板100に実装されている。そして、電子部品子201は、金属ベース基板100上に封止樹脂層205により一括封止されている。
金属ベース基板100の金属基板101側には、熱伝導層209(サーマル・インターフェース材(TIM))を介してヒートシンク207が設けられている。ヒートシンク207は熱伝導性に優れた材料から構成されており、アルミニウム、鉄、銅などの金属が挙げられる。
【0095】
電子部品201としては、パワー半導体素子を用いることができる。これにより、本実施形態に係る電子装置200をパワーモジュールとすることが可能である。パワーモジュールにおいては、パワー半導体素子以外にも、他の電子部品が金属ベース基板100上に搭載されていてもよい。
パワー半導体素子は、例えば、SiC、GaN、Ga2O3、またはダイヤモンドのようなワイドバンドギャップ材料を使用したものであり、高電圧・大電流で使用されるように設計されているため、通常のシリコンチップ(半導体素子)よりも発熱量が大きくなるので、さらに高温の環境下で動作することになる。パワー半導体素子には、例えば、200℃以上や250℃以上等の高温の動作環境下で、長時間の使用が要求される。パワー半導体素子としては、例えば、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアック等が挙げられる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【0097】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0098】
以下、本発明について実施例および比較例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例および比較例の記載に何ら限定されるものではない。
【0099】
[エポキシ樹脂の製造]
実施例および比較例について、以下のようにエポキシ樹脂をそれぞれ製造した。
【0100】
(実施例1)
反応容器にエピクロロヒドリン70.3質量部、レスベラトロール6.9質量部、ヒドロキノン3.3質量部、テトラブチルアンモニウムクロライド0.14質量部、ジメチルスルホキシド2.5質量部を量り取り、60℃にて溶解・撹拌し、次いで、60℃にて2時間反応させた。次いで、50質量%水酸化ナトリウム水溶液4.5質量部をゆっくりと滴下後、60℃で1時間撹拌して反応させた。次いで、50質量%水酸化ナトリウム水溶液12.0質量部をゆっくりと滴下後、80℃に昇温して6時間撹拌して反応させた。得られた反応液を濃縮後、反応混合液に対して10倍量純水を用いた再沈殿法により、レスベラトロール型エポキシ樹脂を得た。
【0101】
(実施例2~10および比較例1)
芳香族ジオール化合物の種類;レスベラトロール化合物と芳香族ジオール化合物との比率(レスベラトロール化合物のモル数と芳香族ジオール化合物のモル数の合計を100モル%とした);エピクロロヒドリンのモル数(以下、「Ep-Cl」ともいう。)とレスベラトロール化合物の水酸基のモル数および芳香族ジオール化合物の水酸基のモル数の合計モル数(以下、「OH」ともいう。)との比率(表中は「Ep-Cl/OH」と表記);テトラブチルアンモニウムクロライドのモル数(以下、「TBAC」ともいう。)とレスベラトロール化合物の水酸基のモル数および芳香族ジオール化合物の水酸基のモル数の合計モル数(OH)との比率(表中は「TBAC/OH」と表記)、50質量%水酸化ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウムのモル数(以下、「NAOH」ともいう。)とレスベラトロール化合物の水酸基のモル数および芳香族ジオール化合物の水酸基のモル数の合計モル数(OH)との比率(表中は「NAOH/OH」と表記)がそれぞれ表1に記載の数値になるように、各成分の使用量を変更した以外は、実施例1と同様にしてレスベラトロール型エポキシ樹脂をそれぞれ得た。
ここで、表1において、レスベラトロールを「RES」と表記し、ヒドロキノンを「HQ」と表記し、4,4’-ビフェノールを「BP」と表記し、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルを「DDE」と表記し、2,6-ジヒドロキシナフタレンを「26DHN」と表記した。
【0102】
(比較例2)
比較例1で得られたレスベラトロール型エポキシ樹脂50質量部と、4,4’-ビフェノールとエピクロロヒドリンから得られたビフェニル型エポキシ樹脂50質量部とを140℃で溶融混合することにより、エポキシ樹脂を得た。
【0103】
【0104】
[エポキシ樹脂の評価]
実施例1~10および比較例1で得られたレスベラトロール型エポキシ樹脂、並びに、比較例2で得られたエポキシ樹脂について、次のような評価項目に基づいて評価を実施した。評価結果は表2に示す。
【0105】
(エポキシ当量)
エポキシ樹脂をシクロヘキサノン20mLに溶解した。得られた溶解液に酢酸20mL、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mL(臭化テトラエチルアンモニウム100gに対して酢酸400mLを添加して溶解した溶液)を加え、0.1Nに調整した過塩素酸溶液を用いて電位差自動滴定装置(メトローム社製916 Ti-Touch)により滴定した。ブランクテストを行い、下記式よりエポキシ当量を算出した。
エポキシ当量(g/eq)=(1000×W)/{(S-B)×N}
W:試料質量
B:ブランクテストに使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
S:サンプルの滴定に使用した0.1N過塩素酸溶液の量(mL)
N:過塩素酸溶液の規定度(0.1N)
【0106】
(重量平均分子量(Mw)、レスベラトロール型エポキシ樹脂中の単量体の含有量)
エポキシ樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めたポリスチレン換算値を用いて、算出した。またこの時の溶出時間19.5~23分のときのピークをモノマーピークとして、ピークの積分値を全体積分値で除した値に100を掛けたものをレスベラトロール型エポキシ樹脂中の単量体の含有量とした。
GPCの測定条件は、以下の通りである。
東ソー(株)社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー(株)社製TSK-GEL GMH、G2000H、SuperHM-M
検出器:液体クロマトグラム用UV検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
【0107】
(ガラス転移温度(Tg))
エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール(2MZ、四国化成工業社製)0.1質量部とを熱板上にて120℃、1分間溶融混合し、次いで、室温まで冷却し、測定サンプルを得た。
得られた測定サンプルを用いて、あらかじめ180℃に加熱しておいた成形金型を用いて180℃、90分加熱硬化することで、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製した。TMA(Thermal Mechanical Analyzer)試験装置(セイコーインスツメルツ社製TMA/SS6100)を用いて、昇温速度5℃/min、荷重50N、引張モード、測定温度範囲30~300℃の条件で、得られた硬化物に対して熱機械分析(TMA)をおこなった。得られた60℃と200℃における接線の交点から読み取れる温度をエポキシ樹脂のガラス転移温度とした。
【0108】
(熱拡散率)
エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール(2MZ、四国化成工業社製)0.1質量部とを熱板上にて120℃、1分間溶融混合し、次いで、室温まで冷却し、測定サンプルを得た。
得られた測定サンプルを用いて、あらかじめ180℃に加熱しておいた成形金型を用いて180℃、90分加熱硬化することで、10mm×10mm×1mmの硬化物を作製した。
次いで、ULVAC社製のXeフラッシュアナライザーTD-1RTVを用いて非定常法により板状の硬化物の厚み方向の熱拡散率の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
【0109】
(線膨張係数)
エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール(2MZ、四国化成工業社製)0.1質量部とを熱板上にて120℃、1分間溶融混合し、次いで、室温まで冷却し、測定サンプルを得た。
得られた測定サンプルを用いて、あらかじめ180℃に加熱しておいた成形金型を用いて180℃、90分加熱硬化することで、3mm×3mm×3mmの硬化物を作製した。得られた硬化物について、線膨張係数を測定した。TMA(Thermal Mechanical Analyzer)試験装置(セイコーインスツメルツ社製TMA/SS6100)を用いて、昇温速度5℃/分、荷重0.05N、引張モード、測定温度範囲30~320℃の条件で、熱機械分析(TMA)を2サイクル測定した。得られた結果から、50℃~70℃の範囲における厚み方向の線膨張係数(CTE)の平均値を算出した。なお、それぞれの線膨脹係数(ppm/℃)は、2サイクル目の値を採用した。
【0110】
(5%重量減少温度(Td5))
エポキシ樹脂100質量部と、2-メチルイミダゾール(2MZ、四国化成工業社製)0.1質量部とを熱板上にて120℃、1分間溶融混合し、次いで、室温まで冷却し、測定サンプルを得た。
得られた測定サンプルを用いて、180℃、90分加熱処理することにより、硬化物を作製した。作製した硬化物を乳鉢で粉砕して硬化物粉末を調製した。次いで、示差熱熱重量同時測定装置(セイコ-インスツルメンツ社製、TG/DTA6200型)を用いて、乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により、サンプルを、30℃から600℃まで昇温させることにより、前記硬化物が5%重量減少する温度(Td5)を測定し、得られた値を前記エポキシ樹脂の5%重量減少温度(Td5)とした。
【0111】
【0112】
(実施例11~16および比較例3~4)
[ワニス状の熱硬化性樹脂組成物の作製]
実施例及び比較例について、以下のように熱硬化性樹脂組成物を作製した。
表3に示す熱硬化性樹脂組成物の組成に従い、樹脂成分、フィラー成分を溶媒中に均一に溶解・分散させたワニス状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
表3中の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表3中の各成分の量の単位は質量部である。
【0113】
(エポキシ樹脂(A))
・エポキシ樹脂1:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、XD-1000)
・エポキシ樹脂2:比較例1で得られたレスベラトロール型エポキシ樹脂
・エポキシ樹脂3:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON 830、23℃で液状)
・エポキシ樹脂4:実施例7で得られたエポキシ樹脂
・エポキシ樹脂5:実施例9で得られたエポキシ樹脂
・エポキシ樹脂6:実施例10で得られたエポキシ樹脂
【0114】
(硬化剤(B))
・硬化剤1:ノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製、PT-30)
【0115】
(熱伝導性フィラー(C))
・熱伝導性フィラー1:鱗片状窒化ホウ素の凝集粒子(JFEミネラル社製、窒化ホウ素粉末HP-40)
【0116】
(フェノキシ樹脂(D))
・フェノキシ樹脂1:ビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製、YP-55)
【0117】
(硬化促進剤(E))
・硬化促進剤1:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、製品名:PR-55617)
・硬化促進剤2:2-メチルイミダゾール(2MZ、四国化成工業社製)
【0118】
[樹脂シート(Bステージ状態)および熱伝導性部材の評価]
得られた樹脂シートおよび熱伝導性部材について、次のような評価項目に基づいて評価を実施した。評価結果は表3に示す。
【0119】
(熱伝導率)
・熱伝導性部材の作製
得られたワニス状の熱硬化性樹脂組成物を用いて、Bステージ状態の樹脂シートを作製し、0.018mmの銅箔で挟みセットし、コンプレッション成形を10MPaで180℃、90minを行い、樹脂成形体(熱伝導性部材)を得た。得られた樹脂成形体から10mm□の熱拡散率測定用サンプルを切り出し、熱拡散率測定に用いた。
【0120】
・樹脂成形体の密度(比重)
密度(比重)測定は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)に準拠して行った。試験片は、上記の樹脂成形体から、縦2cm×横2cmに切り出したものを用いた。密度(比重)(ρ)の単位をkg/m3とする。
【0121】
・樹脂成形体の比熱
得られた上記の樹脂成形体について、DSC法により比熱(Cp)を測定した。
【0122】
・樹脂成形体の熱伝導率の測定
得られた樹脂成形体から、厚み方向測定用として、10mm□に切り出したものを試験片とした。次に、ULVAC社製のXeフラッシュアナライザーTD-1RTVを用いて非定常法により板状の試験片の厚み方向の熱拡散係数(α)の測定を行った。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。
樹脂成形体について、得られた熱拡散係数(α)、比熱(Cp)、密度(ρ)の測定値から、下記式に基づいて熱伝導率を算出した。結果を表3に示す。
熱伝導率[W/(m・K)]=α[m2/s]×Cp[J/(kg・K)]×ρ[kg/m3]
表3中、樹脂成形体の熱伝導率を「熱伝導率」とした。
【0123】
(ガラス転移温度(Tg))
動的粘弾性装置(日立ハイテク社製、製品名:DMA-6100)を用いて、樹脂成形体のガラス転移温度(Tg)を、DMA(動的粘弾性測定)により昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件で測定した。
【0124】
【0125】
ここで、
図3は、実施例7で得られたエポキシ樹脂、比較例1で得られたレスベラトロール型エポキシ樹脂、および比較例2で得られたビフェニル型エポキシ樹脂のGPC曲線を示す図である。
図3から分かるように、実施例7で得られたエポキシ樹脂は、レスベラトロール型エポキシ樹脂およびビフェニル型エポキシ樹脂では観察されないピークを有していることから、レスベラトロール由来の構造単位Aおよび4,4’-ビフェノール由来の構造単位Bを有する構造を有していることが理解できる。