(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043299
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】移動コスト計算装置、輸送計画生成装置、移動コスト計算方法、輸送計画生成方法、移動コスト計算プログラム、および輸送計画生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20240101AFI20240322BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148413
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】小熊 祐司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】拠点間を移動する際に発生する遅延リスクを適切に考慮して、当該拠点間の移動コストを算出する、移動コスト計算装置を提供する。
【解決手段】移動コスト計算装置は、入力情報取得部31と、移動コスト算出部32とを備える。入力情報取得部31は、入力された、所定の拠点間に関し、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータを取得する。移動コスト算出部32は、前記拠点間に関し、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記拠点間の移動コストを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の拠点間に関し、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重要度を示す遅延重みパラメータを入力する入力部と、
前記拠点間に関し、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延による遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記拠点間の移動コストを算出する移動コスト算出部と、を備えた移動コスト計算装置。
【請求項2】
前記入力部は、前記拠点間に関し、移動手段による移動時間が前記基準時間よりも所定時間短縮する早着発生確率に関する情報と、移動時間の短縮の発生に対する重要度を示す早着重みパラメータとをさらに入力し、
前記移動コスト算出部は、前記拠点間に関し、前記早着発生確率と前記早着重みパラメータとに基づいて早着による対価を示す早着リワード値をさらに算出し、前記遅延ペナルティ値と算出した早着リワード値とに基づいて前記拠点間の移動コストを算出する、請求項1に記載の移動コスト計算装置。
【請求項3】
複数の拠点間を移動する複数の輸送手段それぞれに関する出発拠点、帰着拠点、および移動速度の情報と、前記複数の拠点間を前記輸送手段のいずれかにより輸送される複数の輸送物それぞれに関する輸送元の拠点の情報、輸送先の拠点の情報、および輸送期限の情報と、前記複数の拠点間ごとに、前記複数の輸送手段の移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータとを入力する入力部と、
前記複数の拠点間ごとに、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記複数の拠点間ごとの移動コストを算出する移動コスト算出部と、
前記入力部から入力された情報および前記移動コスト算出部で算出された情報に基づいて、前記複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の輸送物、および輸送対象の輸送物ごとの輸送区間を決定することで輸送計画情報を生成する輸送計画生成部と、
前記輸送計画生成部で生成された輸送計画情報を出力する出力部と、を備えた輸送計画生成装置。
【請求項4】
前記入力部から入力された情報および前記移動コスト算出部で算出された情報に基づいて、前記輸送手段ごとの該当する出発拠点から該当する帰着拠点まで移動する際の評価指標の総計が最良となるように、前記複数の輸送手段それぞれの移動経路を決定するとともに、前記輸送物ごとの該当する輸送元の拠点から該当する輸送先の拠点まで移動する際の評価指標の総計が最良となるように、前記複数の輸送物それぞれの移動経路を決定する最適経路決定部をさらに備え、
前記輸送計画生成部は、前記最適経路決定部で決定した前記複数の輸送手段それぞれの移動経路および前記複数の輸送物それぞれの移動経路のもと前記輸送計画情報を生成する、請求項3に記載の輸送計画生成装置。
【請求項5】
前記最適経路決定部が決定した前記複数の輸送手段それぞれの移動経路および前記複数の輸送物それぞれの移動経路のもと、各輸送物が該当する輸送元の拠点から該当する輸送先の拠点まで輸送される際に用いられる輸送手段の数の総計が最小となるように、前記輸送計画情報を生成する、請求項4に記載の輸送計画生成装置。
【請求項6】
所定の拠点間に関し、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータを入力し、
前記拠点間に関し、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記拠点間の移動コストを算出する、移動コスト計算方法。
【請求項7】
複数の拠点間を移動する複数の輸送手段それぞれに関する出発拠点、帰着拠点、および移動速度の情報と、前記複数の拠点間を前記輸送手段のいずれかにより輸送される複数の輸送物それぞれに関する輸送元の拠点の情報、輸送先の拠点の情報、および輸送期限の情報と、前記複数の拠点間ごとに、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータとを入力し、
前記複数の拠点間ごとに、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記複数の拠点間ごとの移動コストを算出し、
入力された情報および算出された移動コストの情報に基づいて、前記複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の輸送物、および輸送対象の輸送物ごとの輸送区間を決定することで輸送計画情報を生成する、輸送計画生成方法。
【請求項8】
コンピュータに、
所定の拠点間に関する、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータを入力する機能と、
前記拠点間に関し、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記拠点間の移動コストを算出する機能と、を実現させるための移動コスト計算プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
複数の拠点間を移動する複数の輸送手段それぞれに関する出発拠点、帰着拠点、および移動速度の情報と、前記複数の拠点間を前記輸送手段のいずれかにより輸送される複数の輸送物それぞれに関する輸送元の拠点の情報、輸送先の拠点の情報、および輸送期限の情報と、前記複数の拠点間ごとに、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータとを入力する機能と、
前記複数の拠点間ごとに、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記複数の拠点間ごとの移動コストを算出する機能と、
入力された情報および算出された移動コストの情報に基づいて、前記複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の輸送物、および輸送対象の輸送物ごとの輸送区間を決定することで輸送計画情報を生成する機能と、を実現させるための輸送計画生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動コスト計算装置、輸送計画生成装置、移動コスト計算方法、輸送計画生成方法、移動コスト計算プログラム、および輸送計画生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野で、複数の拠点間を効率的に移動するための経路を決定する技術が開発されている。例えば、物流システムにおいては、倉庫等の複数の拠点間で、複数の荷物を複数台のトラックが輸送するための輸送計画情報を生成する際に、荷物や輸送手段の輸送経路を決定する処理が行われる。
【0003】
拠点間を移動する際には何らかの遅延リスクが発生する場合があり、これを考慮して効率的に輸送経路を決定する技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術では、遅延リスクの対象として道路の規制情報を予め入力し、この情報を考慮して拠点間ごとの移動コストを算出し、算出した移動コストに基づいて輸送経路を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の技術を用いる場合、道路の規制情報を所与としているが、遅延リスクの対象として渋滞を考慮する場合には、事前に発生の有無や度合いを予測することは困難であるという問題があった。
【0006】
また、渋滞を考慮して拠点間の移動コストを算出する場合、多少の遅延リスクを無視して最短経路で生成する楽観的な移動コストや、遅延リスクを最重要視し渋滞を避けた経路で生成する悲観的な移動コスト等が考えられる。これらの移動コストのいずれが好ましいかは状況次第であるため、状況に応じて遅延リスクの重要度を適宜変更して移動コストを算出するための技術が求められていた。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、拠点間を移動する際に発生する遅延リスクを適切に考慮して、当該拠点間の移動コストを算出することが可能な、移動コスト計算装置、輸送計画生成装置、移動コスト計算方法、輸送計画生成方法、移動コスト計算プログラム、および輸送計画生成プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る移動コスト計算装置は、所定の拠点間に関し、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータを入力する入力部と、前記拠点間に関し、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延による遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記拠点間の移動コストを算出する移動コスト算出部と、を備える。
【0009】
前記入力部は、前記拠点間に関し、移動手段による移動時間が前記基準時間よりも所定時間短縮する早着発生確率に関する情報と、移動時間の短縮の発生に対する重みを示す早着重みパラメータとをさらに入力し、前記移動コスト算出部は、前記拠点間に関し、前記早着発生確率と前記早着重みパラメータとに基づいて早着による対価を示す早着リワード値をさらに算出し、前記遅延ペナルティ値と算出した早着リワード値とに基づいて前記拠点間の移動コストを算出してもよい。
【0010】
また、本開示に係る輸送計画生成装置は、前複数の拠点間を移動する複数の輸送手段それぞれに関する出発拠点、帰着拠点、および移動速度の情報と、前記複数の拠点間を前記輸送手段のいずれかにより輸送される複数の輸送物それぞれに関する輸送元の拠点の情報、輸送先の拠点の情報、および輸送期限の情報と、前記複数の拠点間ごとに、前記複数の輸送手段の移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータとを入力する入力部と、前記複数の拠点間ごとに、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記複数の拠点間ごとの移動コストを算出する移動コスト算出部と、前記入力部から入力された情報および前記移動コスト算出部で算出された情報に基づいて、前記複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の輸送物、および輸送対象の輸送物ごとの輸送区間を決定することで輸送計画情報を生成する輸送計画生成部と、前記輸送計画生成部で生成された輸送計画情報を出力する出力部と、を備える。
【0011】
前記入力部から入力された情報および前記移動コスト算出部で算出された情報に基づいて、前記輸送手段ごとの該当する出発拠点から該当する帰着拠点まで移動する際の評価指標の総計が最良となるように、前記複数の輸送手段それぞれの移動経路を決定するとともに、前記輸送物ごとの該当する輸送元の拠点から該当する輸送先の拠点まで移動する際の評価指標の総計が最良となるように、前記複数の輸送物それぞれの移動経路を決定する最適経路決定部をさらに備え、前記輸送計画生成部は、前記最適経路決定部で決定した前記複数の輸送手段それぞれの移動経路および前記複数の輸送物それぞれの移動経路のもと前記輸送計画情報を生成してもよい。
【0012】
前記輸送計画生成部は、前記最適経路決定部が決定した前記複数の輸送手段それぞれの移動経路および前記複数の輸送物それぞれの移動経路のもと、各輸送物が該当する輸送元の拠点から該当する輸送先の拠点まで輸送される際に用いられる輸送手段の数の総計が最小となるように、前記輸送計画情報を生成してもよい。
【0013】
また本開示に係る移動コスト計算方法は、所定の拠点間に関し、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータを入力し、前記拠点間に関し、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記拠点間の移動コストを算出する。
【0014】
また本開示に係る輸送計画生成方法は、複数の拠点間を移動する複数の輸送手段それぞれに関する出発拠点、帰着拠点、および移動速度の情報と、前記複数の拠点間を前記輸送手段のいずれかにより輸送される複数の輸送物それぞれに関する輸送元の拠点の情報、輸送先の拠点の情報、および輸送期限の情報と、前記複数の拠点間ごとに、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータとを入力し、前記複数の拠点間ごとに、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記複数の拠点間ごとの移動コストを算出し、入力された情報および算出された移動コストの情報に基づいて、前記複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の輸送物、および輸送対象の輸送物ごとの輸送区間を決定することで輸送計画情報を生成する。
【0015】
また本開示に係る移動コスト計算プログラムは、コンピュータに、所定の拠点間に関する、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータを入力する機能と、前記拠点間に関し、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記拠点間の移動コストを算出する機能と、を実現させる。
【0016】
また本開示に係る輸送計画生成プログラムは、コンピュータに、複数の拠点間を移動する複数の輸送手段それぞれに関する出発拠点、帰着拠点、および移動速度の情報と、前記複数の拠点間を前記輸送手段のいずれかにより輸送される複数の輸送物それぞれに関する輸送元の拠点の情報、輸送先の拠点の情報、および輸送期限の情報と、前記複数の拠点間ごとに、移動手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する遅延発生確率の情報と、移動時間の遅延発生に対する重みを示す遅延重みパラメータとを入力する機能と、前記複数の拠点間ごとに、前記遅延発生確率の情報と前記遅延重みパラメータとに基づいて遅延ペナルティ値を算出し、算出した遅延ペナルティ値に基づいて前記複数の拠点間ごとの移動コストを算出する機能と、入力された情報および算出された移動コストの情報に基づいて、前記複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の輸送物、および輸送対象の輸送物ごとの輸送区間を決定することで輸送計画情報を生成する機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の移動コスト計算装置、輸送計画生成装置、移動コスト計算方法、輸送計画生成方法、移動コスト計算プログラム、および輸送計画生成プログラムによれば、拠点間を移動する際に発生する遅延リスクを適切に考慮して、当該拠点間の移動コストを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る輸送計画生成装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る輸送計画生成装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態に係る輸送計画生成装置に入力された渋滞発生確率と移動時間変動の関係を示す確率分布内における、基準時間と、基準時間から移動コストを得るために算出された各種値と、移動コストに対応する時間とを示す説明図である。
【
図4】一実施形態に係る輸送計画生成装置が輸送計画情報を生成する際に用いる空間ネットワークの構成を示す説明図である。
【
図5】一実施形態に係る輸送計画生成装置が輸送計画情報を生成する際に用いる時空間ネットワークの構成を示す説明図である。
【
図6】一実施形態に係る輸送計画生成装置に入力した輸送計画問題の設定条件の一例を示す説明図である。
【
図7】一実施形態に係る輸送計画生成装置が生成した第1の輸送計画情報を示す説明図である。
【
図8】一実施形態に係る輸送計画生成装置が生成した第2の輸送計画情報を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の本実施形態では、物流システムの管理対象である複数の拠点間を移動する際に発生する遅延リスクを考慮して、各拠点間の移動コストを算出し、算出した移動コストを用いて荷物の輸送計画情報を生成する場合について説明する。
【0020】
〈一実施形態による輸送計画生成装置の構成〉
一実施形態による輸送計画生成装置の構成について、
図1を参照して説明する。本実施形態による輸送計画生成装置は、入力部10と、記憶部20と、CPU30と、出力部40とを有する。
【0021】
入力部10は、例えば利用者が操作するマウス、キーボード、または、物流システム全体を統括する上位システムとの通信を行う通信手段で構成される。入力部10は、輸送計画情報を生成するための問題(以下、「輸送計画問題」と記載する)の設定条件として、輸送対象とする地域の地理情報、輸送物である荷物の情報、利用する輸送手段情報、および計算設定情報等を入力する。これらの情報の詳細については、後述する。
【0022】
記憶部20は、入力部10から入力された設定条件の情報を記憶する設定条件記憶部21を有する。
【0023】
CPU30は、予め搭載されたプログラムを実行することで動作し、入力情報取得部31と、移動コスト算出部32と、最適経路決定部33と、輸送計画生成部34とを有する。
【0024】
入力情報取得部31は、入力部10から入力された輸送計画問題の設定条件の情報を、設定条件記憶部21に記憶させる。
【0025】
移動コスト算出部32は、設定条件記憶部21に記憶された情報を用いて、拠点間ごとの移動に要する移動コストを算出する。
【0026】
最適経路決定部33は、設定条件記憶部21に記憶された情報および移動コスト算出部32で算出された拠点間ごとの移動コストを用いて、荷物の種類ごと、および輸送手段ごとの最適経路を算出する。
【0027】
輸送計画生成部34は、最適経路決定部33が決定した情報に基づいて、複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の荷物、および輸送対象の荷物ごとの輸送区間を決定することで、輸送計画情報を生成する。
【0028】
出力部40は、輸送計画生成部34で生成された輸送計画情報を出力する。出力手段としては、プリンタによる印字、画面への表示、AR(Augmented Reality)ディスプレイへの表示、上位システムへのデータ送信など様々な形態が考えられ、本実施形態ではこれを特に限定しない。
【0029】
上述した輸送計画生成装置1内の入力部10と、記憶部20内の設定条件記憶部21と、CPU30内の入力情報取得部31および移動コスト算出部32とにより、移動コスト計算装置50が構成される。
【0030】
〈一実施形態による輸送計画生成装置の動作〉
次に、本実施形態による移動コスト計算装置50が拠点間ごとの移動コストを算出し、算出した情報に基づいて輸送計画生成装置1が輸送計画情報を生成する際の動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
まず、入力部10から輸送計画問題の設定条件が入力されると、入力情報取得部31がこれらの情報を取得して設定条件記憶部21に記憶させる(S1)。輸送計画問題の設定条件は、具体的には、輸送対象とする地域の地理情報、輸送対象の荷物情報、利用する輸送手段情報、および計算設定情報等である。
【0032】
地理情報は、輸送手段が訪れうる拠点、例えば倉庫の位置、それを繋ぐ道路の情報、倉庫の保管容量の情報、道路の渋滞情報等を含む。渋滞情報は、渋滞発生場所、渋滞発生時間帯、早着または渋滞発生確率と移動時間変動の関係を示す確率分布の情報等を含む。これらの渋滞情報は、利用者が恣意的に入力してもよいし、過去の統計データから作成してもよい。渋滞発生確率は、輸送手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間遅延する確率である。早着発生確率は、輸送手段による移動時間が予め設定された基準時間よりも所定時間短縮する確率である。「予め設定された基準時間よりも所定時間短縮する」場合とは、例えば、信号で一度も停止しない場合等を想定することができる。
【0033】
荷物情報は、荷物の種類ごとの輸送元および輸送先の拠点、輸送期限、容量等の情報を含む。輸送手段情報は、各輸送手段の出発拠点および帰着拠点、積載容量、移動速度、燃料費や排出する二酸化炭素(CO2)量等の稼働コストの情報を含む。
【0034】
計算設定情報は、最適な輸送計画情報を生成するための演算に用いる時間解像度、厳密解法または近似解法の選択情報、移動時間の遅延発生に対する重要度を示す遅延重みパラメータ、移動時間の短縮の発生に対する重要度を示す早着重みパラメータ等を含む。
【0035】
次に、移動コスト算出部32が、設定条件記憶部21に記憶された情報を用いて、拠点間ごとの移動コストを算出する(S2)。移動コスト算出部32が拠点間ごとの移動コストを算出する際に用いる記号の定義を、表1に示す。これらの各記号に対応する情報(変数fの情報を除く)は入力部10から入力され、設定条件記憶部21に記憶されている。
【0036】
【0037】
移動コスト算出部32は、設定条件記憶部21に記憶された渋滞発生確率と移動時間変動の関係を示す確率分布の情報と、遅延重みパラメータおよび早着重みパラメータとに基づいて、各拠点間の移動コストを算出する。
【0038】
移動コスト算出部32は、各拠点間の移動コストを下記式(1)または式(2)のように定義する。式(1)は、拠点間の移動時間を表す確率分布が連続的な場合、つまり確率変数Tが連続変数の場合の移動コストfを示す式である。式(2)は、拠点間の移動時間を表す確率分布が離散的な場合、つまり確率変数Tが離散変数の場合の移動コストfを示す式である。式(1)と式(2)とは、形式的な違いはあるものの、意図するところは同じである。
【0039】
【0040】
上記式(1)および(2)において、右辺の初項t0が移動時間の基準時間を示し、第2項が遅延による代償を示すペナルティ値(以下、「遅延ペナルティ値」と記載する)を示し、第3項が早着による対価を示すリワード値(以下、「早着リワード値」と記載する)を示す。遅延ペナルティ値は、基準時間t0に対する遅延時間t-t0に遅延発生確率を乗算して和を取ることによって遅延量の期待値を計算し、その遅延量の期待値に遅延重みパラメータαを乗じて算出する。早着リワード値は、基準時間t0に対する早着時間t0-tに早着発生確率を乗算して和を取ることによって早着量の期待値を計算し、その早着量の期待値に早着重みパラメータβを乗じて算出する。
【0041】
図3は、渋滞発生確率と移動時間変動の関係を示す確率分布P(t)内における、基準時間t
0、基準時間t
0に遅延時間t-t
0を加算した時間t
1、基準時間t
0に遅延ペナルティ値を加算した時間t
2、基準時間t
0から早着時間t
0-t分を差し引いた時間t
3、基準時間t
0から早着リワード値分を差し引いた時間t
4、および、遅延ペナルティ値および早着リワード値に基づいて算出された移動コストfに対応する時間t
5の位置を示す。
【0042】
ここで、遅延ペナルティ値に用いる重みパラメータαと早着リワード値の算出に用いる重みパラメータβを別個に用意しているのは、時間変動に対する嗜好の非対称性、例えば遅延は避けたいが、早着してもそれほど嬉しくない場合等を考慮するためである。利用者はこのパラメータを調節することで異なる計画を得ることができる。具体的には、αを小さく設定すれば、算出される移動コストから生成される輸送計画が楽観的になり、大きく設定すれば悲観的になる。
【0043】
次に、最適経路決定部33が、設定条件記憶部21に記憶された情報および算出された拠点間ごとの移動コストを用いて、荷物ごとの輸送元の拠点から輸送先の拠点まで移動する際の評価指標の総計が最良となるように、複数の荷物それぞれの輸送経路を決定する。ここで決定した各荷物の輸送経路を、各荷物の最適経路とする。
【0044】
また最適経路決定部33は、輸送手段ごとの該当する出発拠点から該当する帰着拠点まで移動する際の評価指標の総計が最良となるように、複数の輸送手段それぞれの移動経路を決定する(S3)。ここで決定した各輸送手段の移動経路を、各輸送手段の最適経路とする。その際、最適経路決定部33は、輸送計画問題を時空間ネットワーク上の経路決定問題として定式化し、分枝カット法などの厳密解法や適当な近似解法により、荷物の種類ごと、および輸送手段ごとの最適経路を算出する。
【0045】
最適経路決定部33が荷物および輸送手段の最適経路を計算する際に用いる時空間ネットワークについて、以下に説明する。輸送計画問題における輸送元、輸送先、中継地点等の輸送手段が訪れうる拠点(ハブともいう)の群は、例えば
図4のような空間ネットワークを形成する。このネットワークは、頂点(ノードともいう。ハブに対応する。)V1、V2、V3と、辺(エッジともいう。ハブを結ぶ道路に対応する。)E1、E2、E3から成るグラフ構造で示される。
【0046】
時空間ネットワークとは、空間ネットワークに時間軸を加えたものである。
図5は、
図4の空間ネットワークに、時刻t=0~t=4まで経過する時間の情報を加えた時空間ネットワークを示す。時空間ネットワーク上の各ノードは、ある時刻における所定のハブを示している。すなわち、
図5中の一点鎖線のエッジは、空間上の移動はなく、同一ハブにおける滞在を表し、時刻tの経過(t=0~t=4)のみが示されている。また、
図5中の破線のエッジは、空間上の移動に伴い、時刻も経過することによるハブ間の移動を表している。移動を表す破線のエッジがどのノード間で繋がるかは、ハブ間の物理距離と輸送手段の速度の比から算出される移動時間によって決まる。
【0047】
例えば、
図5のエッジE4は、ノードV2に対応するハブ(ハブH2とする)を時刻t=0に出発してノードV1に対応するハブ(ハブH1とする)に時刻t=1に到着する移動を示す。またエッジE5は、ハブH2を時刻t=0に出発してノードV3に対応するハブ(ハブH3とする)に時刻t=2に到着する移動を示す。
【0048】
時空間ネットワーク内の時刻t=0、1、2、3、および4は、離散時間である。
図4では、時刻tを適当な時間幅、例えば1時間で無次元化しており、時間解像度はそれに依存する。時空間ネットワークの時間解像度をより細かく、例えば30分で設定すれば、より詳細な輸送計画を得ることができる代わりに、グラフ構造が大規模化するため計算時間も増加する。そのため、入力部10から設定条件を入力する際に、計算設定情報として、計算リソースや最適化に使える計算時間に応じて決定した時間解像度を入力すればよい。
【0049】
最適経路決定部33は、上述した時空間ネットワークを用いて、例えば「ノードV1(t=0)とノードV3(t=4)とを繋ぐ経路を求める問題」を解くことで、時刻t=0~4の間にハブH1からハブH3に移動する経路を求めることができる。
【0050】
最適経路決定部33が荷物および輸送手段の最適経路を計算する際に用いる記号の定義を、表2に示す。これらの各記号に対応する集合およびパラメータの情報(決定変数xe
u、ye
cを除く)は入力部10から入力され、設定条件記憶部21に記憶されている。
【0051】
【0052】
最適経路決定部33は、設定条件記憶部21に記憶されたこれらの情報に基づき、時空間上ネットワーク上の荷物および輸送手段の経路最適化問題(P)を下記式(3)のように定義する。
【0053】
【0054】
この最適化問題(P)の決定変数xe
uは、時空間ネットワーク上の各エッジを移動する荷物量を示し、決定変数ye
cは、各エッジを通る輸送手段の有無を示す。ゆえに決定変数xe
u、ye
cの最適値が、荷物および輸送手段それぞれの最適経路に相当する。目的関数(評価指標)はここでは輸送コストとするが、これには限定されず、決定変数の線形結合で表現できる要素であれば任意に設定しても良い。
【0055】
上記式(3)には、下記式(4)、(5)、(6)、および(7)でそれぞれ示される制約条件(i)、(ii)、(iii)、および(iv)が付されている。
【0056】
[制約条件(i)]
各ノードにおいて、荷物の流れは保存される。すなわち、下記式(4)に示すように、ノードから出ていくフローから入ってくるフローの差は、そのノードにおける供給量b
v
uに一致する。
【数3】
【0057】
[制約条件(ii)]
各ノードにおいて、輸送手段の流れは保存される。すなわち、下記式(5)に示すように、各輸送手段は、出発拠点から帰着拠点に到着するまで、時空間ネットワーク上で消えたり増えたりしない。
【数4】
【0058】
[制約条件(iii)]
ハブでの滞在を表すエッジe∈E
sに関しては、下記式(6)に示すように、輸送先のハブの保管容量、つまり当該ハブに設置された倉庫の保管容量を超える荷物の移動はできない。なお、ここで言う「荷物の移動」は、該当する倉庫への荷物の保管に相当する。
【数5】
【0059】
[制約条件(iv)]
ハブ間の移動を表すエッジe∈E
sに関しては、実際に輸送手段が通るエッジでのみ荷物の移動が可能である。所定エッジにおける移動量の上限は、下記式(7)に示すように、当該エッジを通る輸送手段の積載容量の総和以下である。
【数6】
【0060】
最適化問題(P)は、整数計画問題と呼ばれる形式であり、汎用の厳密解法(分枝限定法、分枝カット法)を用いて理論的な保証のある大域的最適解を得ることが可能である。大規模な問題の場合は厳密解の計算に時間がかかるが、その場合、最適経路決定部33は、適当な近似解法(分枝カット法の解探索を一定時間で打ち切る打ち切り分枝カット法など)を適用しても良い。
【0061】
最適経路決定部33は、設定条件記憶部21に記憶された情報に関し、上述した経路最適化問題(P)を解くことで、荷物の種類の種類ごとおよび輸送手段ごとの最適経路を決定する。
【0062】
次に、輸送計画生成部34が、最適経路決定部33で決定された情報を用いて、複数の輸送手段それぞれに関する、時間ごとの輸送対象の荷物、および輸送する荷物の種類ごとの輸送区間を決定することで、輸送計画情報を生成する(S4)。
【0063】
ここで、最適経路決定部33により荷物の種類ごとおよび輸送手段ごとの最適経路が決定される際に、上述した制約条件(iv)が課されているため、各荷物の移動経路上にはそれを運ぶのに十分な積載容量を持つ輸送手段が必ず用意されている。
【0064】
一方で、同一経路上に複数の荷物の最適経路および複数の輸送手段の最適経路が存在する場合は、どの荷物をどの輸送手段が輸送するか、つまり各輸送手段への荷物の割り当てについては自由度が存在する。輸送計画生成部34は、同一経路上に複数の荷物の最適経路および複数の輸送手段の最適経路が存在する場合に、各輸送手段に対する最適な荷物の割り当てを決定し、輸送計画情報を生成する。
【0065】
輸送計画生成部34が輸送計画情報を生成する際に用いる記号の定義を、表3に示す。これらの各記号に対応する集合およびパラメータの情報(決定変数ξe,c,u、ηc,uを除く)は入力部10から入力され、設定条件記憶部21に記憶されている。
【0066】
【0067】
ここで輸送計画生成部34は、輸送計画情報を生成する際に、輸送中に冗長な荷物の交換が生じないように注意する必要がある。例えば、荷物u1、u2の最適経路と輸送手段c1、c2の最適経路とが同一であった場合は、輸送手段c1、c2それぞれがいずれかの荷物を輸送元から輸送先まで運びきるように輸送計画情報を生成する。
【0068】
これに鑑み、輸送計画生成部34は、設定条件記憶部21に記憶されたこれらの情報に基づき、各荷物をいずれかの輸送手段に割り当てる最適化問題(Q)を下記式(8)のように定義する。
【0069】
【0070】
この最適化問題(Q)の決定変数のうちξe,c,uは、時空間ネットワーク上の各エッジ上で輸送手段が運ぶ荷物種とその量を示す。したがってξe,c,uの最適解が、各輸送手段に対する荷物の最適な割り当てに相当する。もう一つの決定変数であるηc,uは、所定の輸送手段cと所定の荷物uとの組み合わせに関し、当該輸送手段cが当該荷物uを一度でも輸送するとき1、それ以外のとき0をとる。冗長な交換を防ぐには、輸送計画生成部34は、輸送手段が輸送する荷物種類をできるだけ少なくすればよく、ゆえにηc,uをできるだけ小さく、好ましくは0とすることを企図した目的関数を設定する。
【0071】
言い換えれば、輸送計画生成部34は、各荷物が該当する輸送元の拠点から該当する輸送先の拠点まで該当する最適経路で輸送される際に、用いられる輸送手段の数が最小となるように、輸送計画情報を生成する。
【0072】
上記式(8)には、下記式(9)、(10)、および(11)でそれぞれ示される制約条件(v)、(vi)、および(vii)が付されている。
【0073】
[制約条件(v)]
輸送手段cが輸送する荷物量の総和は、各エッジで該当する輸送手段cの積載容量l
c以下である。
【数8】
【0074】
[制約条件(vi)]
各エッジ上で該当するすべての輸送手段cにより輸送される荷物量の総和は、該当するエッジを通る荷物量の総和に一致する。
【数9】
【0075】
[制約条件(vii)]
所定の輸送手段cと所定の荷物uとの組み合わせに関し、当該輸送手段cが当該荷物uを一度でも輸送するとき、η=1、それ以外のときη=0をとる。
【数10】
【0076】
最適化問題(Q)も前述の最適化問題(P)と同様に整数計画問題であるため、汎用の厳密解法(分枝限定法、分枝カット法)を用いて理論的な保証のある大域的最適解を得ることが可能である。輸送計画の大部分は最適化問題(P)で実施され、最適化問題(Q)は最終的な微調整程度の役割であるため、基本的には最適化問題(Q)の求解は厳密解法を用いても計算時間はごく短時間である。
【0077】
次に、出力部40が、輸送計画生成部34により生成された輸送計画情報を出力する(S5)。
【0078】
以上の実施形態によれば、輸送計画生成装置1は、拠点間を移動する際に発生する遅延リスクを適切に考慮して、当該拠点間の移動コストを算出することができる。また、輸送計画生成装置1は算出した拠点間の移動コストを用いて、複数の拠点間で、複数種類の荷物を、複数台の輸送手段が効率良く輸送するための輸送計画を生成することができる。
【0079】
[本実施形態による輸送計画生成装置1が生成する輸送計画情報の一例]
以下に、本実施形態による輸送計画生成装置1が生成する輸送計画情報の一例について、説明する。
【0080】
本例では、入力部10から輸送計画問題の設定条件として、以下の情報を入力する。
図6は、以下の情報に関する説明図である。
(ア)輸送手段が訪れうる拠点は、H0、H1、およびH2の3つである。
(イ)拠点H0-H1間、拠点H1-H2間、および拠点H2-H0間は道路で接続されており、輸送手段であるトラックがこれらの拠点間を移動するにはそれぞれ1時間かかる。ただし、拠点H2-H0間は50%の確率で渋滞が発生し、渋滞時は移動に3時間かかる。
(ウ)輸送対象の荷物の種類は、u1およびu2の2種類である。荷物u1は、輸送元が拠点H2、輸送先が拠点H1、数量が1個である。荷物u2は、輸送元が拠点H0、輸送先が拠点H1、数量が1個である。
(エ)輸送手段は、2台のトラックc1およびc2である。トラックc1は、出発拠点がH2、帰着拠点がH2、積載数量制限が2個である。トラックc2は、出発拠点が拠点H0、帰着拠点が拠点H0、積載数量制限が2個である。
【0081】
これらの入力された輸送計画問題の設定条件の情報は、入力情報取得部31により設定条件記憶部21に記憶される。
【0082】
次に、移動コスト算出部32が、設定条件記憶部21に記憶された情報に基づいて、上述した式(1)または式(2)を用いて拠点間ごとの移動コストを算出する。ここでは、基準時間t
0=1時間とし、拠点H2-H0間の移動コストは、下記式(12)のように算出される。
【数11】
本例では、基準時間より早着する可能性はないため、重みパラメータβは存在しない。
【0083】
次に、最適経路決定部33が、設定条件記憶部21に記憶された情報および移動コスト算出部32で算出された拠点間ごとの移動コストに基づいて、荷物の種類ごとおよび輸送手段ごとに最適経路を決定する。そして、輸送計画生成部34が、最適経路決定部33で決定された情報を用いて輸送計画情報を生成する。
【0084】
ここでは、パラメータαの値に応じて2通りの輸送計画情報が生成される。第1の輸送計画情報は、
図7に示すように、トラックc1が荷物u1、u2を両方輸送する計画の情報である。第2の輸送計画情報は、
図8に示すように、トラックc1が荷物u1を輸送し、トラックc2が荷物u2を輸送する計画の情報である。
【0085】
第1の輸送計画の経路には、渋滞が起こり得る拠点H2-H0間が含まれており、移動コストの総計は3+α時間である。第2の輸送計画は、渋滞を完全に避けた計画であり、移動コストの総計はαによらず4時間である。従って、0≦α≦1に場合には楽観的な第1の輸送計画が採用され、α≧1の場合には悲観的な第2の輸送計画が採用される。
【0086】
実際に渋滞が発生した場合は第2の輸送計画が第1の輸送計画に優越し、渋滞が発生しなかった場合は第1の輸送計画が優越するため、どちらの計画がより好ましいかは状況と利用者の判断による。多少のリスクをとって高効率な輸送計画を採用するか、それとも保守的な輸送計画を採用するかを、入力するαの値を調整することによって利用者が選択できる。
【0087】
入力するαの値は、遅延を無視する場合はα=0、遅延を必ず避ける場合はα=∞、遅延を期待値で考慮する場合はα=1を用いることができる。ここで、「∞」は、「100」などの十分大きな値で代用可能である。上記の3パターンのα値で輸送計画を生成してみて、使用ルートや期待する移動コストを比較しながら納得感のある輸送計画が得られるα値を選択する方法が一例として考えられる。他にも、必要に応じてα値およびβ値を微調整したり、より細かくグリッドサーチを実施したりしてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 輸送計画生成装置
10 入力部
20 記憶部
21 設定条件記憶部
31 入力情報取得部
32 移動コスト算出部
33 最適経路決定部
34 輸送計画生成部
40 出力部