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特開2024-43302位置評価装置、位置評価方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043302
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】位置評価装置、位置評価方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240322BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G01H9/00 E
H02G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148417
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河野 航
(72)【発明者】
【氏名】樋野 智之
(72)【発明者】
【氏名】美島 咲子
(72)【発明者】
【氏名】松下 崇
【テーマコード(参考)】
2G064
5G367
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB03
2G064BA02
2G064BC02
2G064BC12
2G064BC22
2G064BC33
2G064CC02
2G064CC17
2G064CC35
2G064CC43
2G064DD08
2G064DD14
5G367AA02
5G367AC01
5G367BB13
(57)【要約】
【課題】光ファイバを懸架する柱の位置の推定精度の向上を図ること。
【解決手段】本開示に係る位置評価装置(30)は、光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された信号に基づいて、柱を架空する光ファイバが存在する架空区間を推定する架空区間評価部(31)と、信号をセンサから入力し、入力された信号に基づいて、架空区間に存在する光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、光ファイバの隣接する2点間のセンシングデータの相違度を算出する相違度算出部(32)と、相違度を時間的に集計し、相違度の時間平均を算出し、相違度の時間平均値に基づいて、柱の位置及び光ファイバの余長区間の位置を推定し、柱及び余長区間の位置の推定結果を出力する位置推定部(33)と、を備える。
【選択図】図38
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された前記信号に基づいて、柱を架空する前記光ファイバが存在する架空区間を推定する架空区間評価部と、
前記信号を前記センサから入力し、入力された前記信号に基づいて、前記架空区間に存在する前記光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、前記光ファイバの隣接する2点間の前記センシングデータの相違度を算出する相違度算出部と、
前記相違度を時間的に集計し、前記相違度の時間平均を算出し、前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置及び前記光ファイバの余長区間の位置を推定し、前記柱及び前記余長区間の位置の推定結果を出力する位置推定部と、を備える、位置評価装置。
【請求項2】
前記相違度算出部は、
前記センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、
前記光ファイバの隣接する2点間の前記パワースペクトルの相違度を算出し、
前記位置推定部は、
前記相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、前記柱の位置と推定する、
請求項1に記載の位置評価装置。
【請求項3】
前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置の推定結果の信頼区間を算出し、前記信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出部をさらに備える、
請求項2に記載の位置評価装置。
【請求項4】
前記位置推定部は、
時間的に集計した前記相違度を時空間データとして表示した相違度マップを生成し、
前記相違度マップを出力する、
請求項2に記載の位置評価装置。
【請求項5】
前記相違度算出部は、
前記センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、
前記光ファイバの隣接する2点間の前記パワースペクトルの相違度を算出し、
前記相違度を前記パワースペクトルの周波数平均値で重み付けした重み付き相違度を算出し、
前記位置推定部は、
前記重み付き相違度を時間的に集計し、
前記重み付き相違度の時間平均を算出し、
前記パワースペクトルの周波数平均値が閾値を下回る範囲を、前記余長区間の範囲に設定し、
前記余長区間の範囲のうち、前記重み付き相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、前記余長区間の左端及び右端の位置と推定する、
請求項1に記載の位置評価装置。
【請求項6】
前記重み付き相違度の時間平均値に基づいて、前記余長区間の左端及び右端の位置の推定結果の信頼区間を算出し、前記信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出部をさらに備える、
請求項5に記載の位置評価装置。
【請求項7】
前記位置推定部は、
時間的に集計した前記重み付き相違度を時空間データとして表示した重み付き相違度マップを生成し、
前記重み付き相違度マップを出力する、
請求項5に記載の位置評価装置。
【請求項8】
位置評価装置により実行される位置評価方法であって、
光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された前記信号に基づいて、柱を架空する前記光ファイバが存在する架空区間を推定する架空区間評価部ステップと、
前記信号を前記センサから入力し、入力された前記信号に基づいて、前記架空区間に存在する前記光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、前記光ファイバの隣接する2点間の前記センシングデータの相違度を算出する相違度算出ステップと、
前記相違度を時間的に集計し、前記相違度の時間平均を算出し、前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置及び前記光ファイバの余長区間の位置を推定し、前記柱及び前記余長区間の位置の推定結果を出力する位置推定ステップと、を含む、位置評価方法。
【請求項9】
前記相違度算出ステップでは、
前記センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、
前記光ファイバの隣接する2点間の前記パワースペクトルの相違度を算出し、
前記位置推定ステップでは、
前記相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、前記柱の位置と推定する、
請求項8に記載の位置評価方法。
【請求項10】
前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置の推定結果の信頼区間を算出し、前記信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出ステップをさらに含む、
請求項9に記載の位置評価方法。
【請求項11】
前記位置推定ステップでは、
時間的に集計した前記相違度を時空間データとして表示した相違度マップを生成し、
前記相違度マップを出力する、
請求項9に記載の位置評価方法。
【請求項12】
前記相違度算出ステップでは、
前記センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、
前記光ファイバの隣接する2点間の前記パワースペクトルの相違度を算出し、
前記相違度を前記パワースペクトルの周波数平均値で重み付けした重み付き相違度を算出し、
前記位置推定ステップでは、
前記重み付き相違度を時間的に集計し、
前記重み付き相違度の時間平均を算出し、
前記パワースペクトルの周波数平均値が閾値を下回る範囲を、前記余長区間の範囲に設定し、
前記余長区間の範囲のうち、前記重み付き相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、前記余長区間の左端及び右端の位置と推定する、
請求項8に記載の位置評価方法。
【請求項13】
前記重み付き相違度の時間平均値に基づいて、前記余長区間の左端及び右端の位置の推定結果の信頼区間を算出し、前記信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出ステップをさらに含む、
請求項12に記載の位置評価方法。
【請求項14】
前記位置推定ステップでは、
時間的に集計した前記重み付き相違度を時空間データとして表示した重み付き相違度マップを生成し、
前記重み付き相違度マップを出力する、
請求項12に記載の位置評価方法。
【請求項15】
コンピュータに、
光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された前記信号に基づいて、柱を架空する前記光ファイバが存在する架空区間を推定する架空区間評価部手順と、
前記信号を前記センサから入力し、入力された前記信号に基づいて、前記架空区間に存在する前記光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、前記光ファイバの隣接する2点間の前記センシングデータの相違度を算出する相違度算出手順と、
前記相違度を時間的に集計し、前記相違度の時間平均を算出し、前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置及び前記光ファイバの余長区間の位置を推定し、前記柱及び前記余長区間の位置の推定結果を出力する位置推定手順と、を実行させるプログラム。
【請求項16】
前記相違度算出手順では、
前記センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、
前記光ファイバの隣接する2点間の前記パワースペクトルの相違度を算出し、
前記位置推定手順では、
前記相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、前記柱の位置と推定する、
請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記コンピュータに、
前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置の推定結果の信頼区間を算出し、前記信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出手順をさらに実行させる、
請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記位置推定手順では、
時間的に集計した前記相違度を時空間データとして表示した相違度マップを生成し、
前記相違度マップを出力する、
請求項16に記載のプログラム。
【請求項19】
前記相違度算出手順では、
前記センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、
前記光ファイバの隣接する2点間の前記パワースペクトルの相違度を算出し、
前記相違度を前記パワースペクトルの周波数平均値で重み付けした重み付き相違度を算出し、
前記位置推定手順では、
前記重み付き相違度を時間的に集計し、
前記重み付き相違度の時間平均を算出し、
前記パワースペクトルの周波数平均値が閾値を下回る範囲を、前記余長区間の範囲に設定し、
前記余長区間の範囲のうち、前記重み付き相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、前記余長区間の左端及び右端の位置と推定する、
請求項15に記載のプログラム。
【請求項20】
前記コンピュータに、
前記重み付き相違度の時間平均値に基づいて、前記余長区間の左端及び右端の位置の推定結果の信頼区間を算出し、前記信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出手順をさらに実行させる、
請求項19に記載のプログラム。
【請求項21】
前記位置推定手順では、
時間的に集計した前記重み付き相違度を時空間データとして表示した重み付き相違度マップを生成し、
前記重み付き相違度マップを出力する、
請求項19に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置評価装置、位置評価方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバセンシングと呼ばれる技術により、光ファイバ上の任意の区間で生じる振動/音を検知することが可能である。具体的には、光ファイバセンシングでは、光ファイバセンサは、コヒーレントなパルス光を光ファイバに入力し、そのパルス光の後方散乱光を光ファイバから受信する。このとき、光ファイバセンサは、光ファイバ上の2点でそれぞれ発生した後方散乱光の位相差を検知することで、その2点間の区間である位相差評価区間(ゲージ長区間)において光ファイバに加わる振動/音を検知する。このような光ファイバセンサは、位相感知OTDR(Phase-Sensitive Optical Time Domain Reflectometer)又はDAS(Distributed Acoustic Sensor)等によって実現されるが、以下では、光ファイバセンサがDASであるものとして説明する。
【0003】
ところで、既設の光ファイバを含む既設の通信用光ファイバケーブルは、地表から離れた部分に敷設されている場合がある。そのような通信用光ファイバケーブルの例としては、電柱や鉄塔等の柱を架空する光ファイバケーブル等が挙げられる。
【0004】
図1に、1次元方向に並んだ柱を架空する既設の光ファイバを用いたセンシングシステムの構成例を示す。
図1に示されるセンシングシステムでは、電柱や鉄塔等である柱1~柱3に既設の光ファイバが懸架されている。また、光ファイバの一端には、DASが接続されている。
【0005】
DASは、光ファイバに加わる振動を示す振動情報に基づいて、光ファイバ周辺の環境を検知することが可能である。例えば、光ファイバ周辺の環境の例としては、光ファイバに当たる風や雨、落雷の有無等が挙げられる。
【0006】
そのため、DASは、振動点の位置情報を測定することにより、上述した環境となっている位置を特定することが可能である。
しかし、DASで測定可能な振動点の位置情報は、“DASから振動点までの光ファイバの長さ”(以下では、「DAS座標」と定義)である。例えば、DASは、パルス光を入力した時刻と、そのパルス光の後方散乱光を受信した時刻と、の時間差に基づいて、DAS座標上の振動発生箇所である振動点を測定できる。
【0007】
図1の例では、柱2に光ファイバの余長区間が含まれている。そのため、DASから見て、柱2よりも遠い位置にて振動が発生した場合、DASから柱方向の距離(以下では、「実世界座標」と定義)上の振動発生箇所と、DAS座標上の振動発生箇所と、が一致しなくなってしまう。
【0008】
そのため、柱を架空する光ファイバを用いたセンシングシステムを構築する場合、DAS座標として、以下の情報を正確に知る必要がある。
・DAS座標上の各柱の位置
・DAS座標上の余長区間
【0009】
実世界座標とDAS座標とを合わせる方法の例としては、実世界座標が既知である位置にて事象を発生させ、その実世界座標上の位置と、その事象により発生した振動についてDASで測定された振動発生箇所と、を対応させる方法が挙げられる。
【0010】
例えば、実世界座標が既知である特定の柱の位置を打音し、その実世界座標上の打音位置と、打音により発生した振動についてDASで測定された振動発生箇所と、を対応させることが考えられる。
【0011】
しかし、柱の位置を打音する方法には、以下のような問題がある。
・柱1つ1つに対して調査を行うため、大きな工数がかかってしまう
・柱を加振すると、その柱の両側で架空する光ファイバに振動が伝搬するため、振動する区間が瞬時に広がってしまう
・人為的に振動を発生させることが難しい柱(例えば、鉄塔等の大きな柱)には、この方法を適用できない
【0012】
そのため、最近は、柱の位置を打音する方法とは別の方法で、光ファイバを懸架する柱のDAS座標上の位置を知る方法も提案されている。
例えば、特許文献1には、光ファイバセンシングで検知した振動の強度が閾値以上である区間を電柱の固有パターンが生じている区間と判断し、その区間で最大強度の振動が発生する点を電柱の位置と推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2020/044648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、特許文献1に記載の技術は、振動の強度の閾値(すなわち、振動の大きさ)に着目しており、最大強度の振動が発生する点を電柱の位置と推定する。そのため、特許文献1に記載の技術は、最大強度の振動が発生する点以外の点については、電柱の位置とは推定することができない。
そのため、光ファイバを懸架する柱の位置の推定精度の向上には、未だ改善の余地があると考えられる。
【0015】
そこで本開示の目的は、上述した課題に鑑み、光ファイバを懸架する柱の位置の推定精度の向上を図ることが可能な位置評価装置、位置評価方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様による位置評価装置は、
光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された前記信号に基づいて、柱を架空する前記光ファイバが存在する架空区間を推定する架空区間評価部と、
前記信号を前記センサから入力し、入力された前記信号に基づいて、前記架空区間に存在する前記光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、前記光ファイバの隣接する2点間の前記センシングデータの相違度を算出する相違度算出部と、
前記相違度を時間的に集計し、前記相違度の時間平均を算出し、前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置及び前記光ファイバの余長区間の位置を推定し、前記柱及び前記余長区間の位置の推定結果を出力する位置推定部と、を備える。
【0017】
一態様による位置評価方法は、
位置評価装置により実行される位置評価方法であって、
光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された前記信号に基づいて、柱を架空する前記光ファイバが存在する架空区間を推定する架空区間評価部ステップと、
前記信号を前記センサから入力し、入力された前記信号に基づいて、前記架空区間に存在する前記光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、前記光ファイバの隣接する2点間の前記センシングデータの相違度を算出する相違度算出ステップと、
前記相違度を時間的に集計し、前記相違度の時間平均を算出し、前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置及び前記光ファイバの余長区間の位置を推定し、前記柱及び前記余長区間の位置の推定結果を出力する位置推定ステップと、を含む。
【0018】
一態様によるプログラムは、
コンピュータに、
光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された前記信号に基づいて、柱を架空する前記光ファイバが存在する架空区間を推定する架空区間評価部手順と、
前記信号を前記センサから入力し、入力された前記信号に基づいて、前記架空区間に存在する前記光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、前記光ファイバの隣接する2点間の前記センシングデータの相違度を算出する相違度算出手順と、
前記相違度を時間的に集計し、前記相違度の時間平均を算出し、前記相違度の時間平均値に基づいて、前記柱の位置及び前記光ファイバの余長区間の位置を推定し、前記柱及び前記余長区間の位置の推定結果を出力する位置推定手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0019】
上述した態様によれば、光ファイバを懸架する柱の位置の推定精度の向上を図ることが可能な位置評価装置、位置評価方法、及びプログラムを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】1次元方向に並んだ柱を架空する既設の光ファイバを用いたセンシングシステムの構成例を示す図である。
図2】光ファイバの敷設環境の例を示す図である。
図3】光ファイバの敷設環境の例を示す図である。
図4】架空区間における光ファイバのたるみの例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る位置評価装置の適用例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る位置評価装置の構成例を示す図である。
図7】実施の形態1に係る架空区間評価部の構成例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る柱位置評価部の構成例を示す図である。
図9】実施の形態1に係る位置評価装置に入力信号として入力される位相差信号の例を示す図である。
図10】実施の形態1に係る柱位置評価部による相違度の分析方法の例を示す図である。
図11】実施の形態1に係る背景信号分類部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態1に係る架空区間推定部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図13】実施の形態1に係る相違度算出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態1に係る相違度マップ算出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図15】実施の形態1に係る相違度ピーク抽出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図16】実施の形態1に係る信頼区間算出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図17】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で想定する架空区間及びその周囲の敷設環境の例を示す図である。
図18】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で想定する架空区間及びその周囲の敷設環境の例を示す図である。
図19】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られるヒストグラムの例を示す図である。
図20】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる信号レベル特性の例を示す図である。
図21】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる、背景信号の分類結果を時間的に集積した集積結果の例を示す図である。
図22】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる、背景信号の分類結果の時間平均値の例を示す図である。
図23】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られるパワースペクトルの例を示す図である。
図24】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる、平滑化前の相違度マップの例を示す図である。
図25】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる、平滑化後の相違度マップの例を示す図である。
図26】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる、相違度マップの時間平均値のピークの例を示す図である。
図27】実施の形態1に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる、柱の位置の推定結果の信頼区間の例を示す図である。
図28】実施の形態1に係る位置評価装置で得られる、風が強い時間帯を含む時間帯に算出された相違度マップの例を示す図である。
図29】実施の形態2に係る位置評価装置の適用例を示す図である。
図30】実施の形態2に係る位置評価装置の構成例を示す図である。
図31】実施の形態2に係る柱位置評価部の構成例を示す図である。
図32】実施の形態2に係る重み付き相違度算出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図33】実施の形態2に係る重み付き相違度マップ算出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図34】実施の形態2に係る重み付き相違度ピーク抽出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図35】実施の形態2に係る信頼区間算出部の動作の流れの例を示すフローチャートである。
図36】実施の形態2に係る位置評価装置の動作の具体例で得られる、パワースペクトルの周波数平均値、相違度、及び重み付き相違度の時間平均値の例を示す図である。
図37図36に示されるX領域の拡大図である。
図38】実施の形態3に係る位置評価装置の構成例を示す図である。
図39】各実施の形態に係る位置評価装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、以下で示す具体的な数値等は、本開示の理解を容易とするための例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0022】
本開示の各実施の形態を説明する前に、各実施の形態の前提事項について説明する。
まず、図2及び図3を参照して、光ファイバの敷設環境について説明する。
図2及び図3に示されるように、光ファイバの敷設環境は、大別して、柱を架空する光ファイバが存在する架空区間と、架空区間以外の区間である非架空区間と、に分けられる。
【0023】
非架空区間では、光ファイバは、代表的には、地中管路に設置される。また、非架空区間では、光ファイバへの張力は小さく、そのため、背景信号も小さい。また、非架空区間では、DASは、代表的には、突発的に発生する地面の振動を検知する。
【0024】
一方、架空区間では、光ファイバは、代表的には、電柱や鉄塔等の柱に懸架される。また、架空区間では、光ファイバへの張力は大きく、そのため、背景信号も大きい。また、架空区間では、DASは、代表的には、定常的に発生する風による揺れを検知する。
【0025】
このように、DASでは、光ファイバが架空区間又は非架空区間のどちらに敷設されているかに応じて、光ファイバから取得される信号の質が大きく異なることになる。
本開示の各実施の形態では、後述するように、柱の位置の推定には、柱を架空する光ファイバの1スパン(柱間の距離)内の定常的な背景信号の類似性を用いる。そのため、柱の位置を推定するに際して、分析対象区間を架空区間に限定する必要がある。
【0026】
次に、図4を参照して、架空区間における光ファイバのたるみについて説明する。
図4に示されるように、柱間距離をS、たわみをDとする。柱を架空する光ファイバの高さは同一とすると、架空区間における光ファイバの長さLは、カテナリー曲線の長さとして、以下のように表せることが知られている。
【0027】
すなわち、光ファイバの長さLは、柱間距離Sに対して、
を用いて、長さ補正をすることで求められる。
【0028】
例えば、S=250m、D=6mとすると、長さ補正の値は0.38mとなる。すなわち、長さ補正の値は、Sに対して、約0.15%となり、Sと比較して極小の値となる。
そのため、0次近似として、
という関係が比較的高い精度で成立する。
そのため、柱の位置を推定するに際して、分析対象区間を架空区間に限定できれば、自然と柱の位置の推定精度は向上すると考えられる。
【0029】
そこで、以下で説明する本開示の各実施の形態では、柱を架空する光ファイバが存在する架空区間を推定し、分析対象区間を架空区間に限定した上で、光ファイバを懸架する柱の位置を推定する。
以下、本開示の各実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
<実施の形態1>
本実施の形態1は、図5に示されるように、柱の位置をDAS座標値として推定及び出力するものである。DAS座標を改めて定義すると、DAS座標とは、DASによって測定される、ある点を基準とした光ファイバの長さである。
【0031】
まず、図6を参照して、本実施の形態1に係る位置評価装置10の構成例について説明する。
図6に示されるように、本実施の形態1に係る位置評価装置10は、架空区間評価部11と、柱位置評価部12と、を備えている。
【0032】
架空区間評価部11は、不図示のDASに接続され、DASから得られる後方散乱光の位相差信号を、入力信号として入力する。また、架空区間評価部11は、入力信号に基づいて、柱を架空する光ファイバが存在する架空区間を推定して出力する。
【0033】
柱位置評価部12は、不図示のDASに接続され、DASから得られる後方散乱光の位相差信号を、入力信号として入力すると共に、架空区間評価部11から架空区間の推定結果を入力する。また、柱位置評価部12は、架空区間における入力信号に基づいて、相違度マップを算出し、相違度マップを用いて柱の位置を推定し、相違度マップを用いた柱の位置の推定結果の信頼区間を算出する。相違度マップとは、相違度を時間的に集積し、相違度を時空間データとして表示したものを指す。また、柱位置評価部12は、相違度マップ、相違度マップを用いた柱の位置の推定結果、及び相違度マップを用いた柱の位置の推定結果の信頼区間を出力する。
【0034】
次に、図7を参照して、本実施の形態1に係る架空区間評価部11の構成例について説明する。
図7に示されるように、本実施の形態1に係る架空区間評価部11は、背景信号分類部111と、架空区間推定部112と、を備えている。
【0035】
背景信号分類部111は、DASから、後方散乱光の位相差信号を入力信号として入力する。そして、背景信号分類部111は、入力信号に基づいて、背景信号を分類して出力する。
【0036】
架空区間推定部112は、背景信号分類部111により分類された背景信号の分類結果を時間的に集積し、集積時間で分類結果を時間平均し、分類結果の時間平均値に対して閾値処理を行うことで、架空区間と非架空区間とを分類する。そして、架空区間推定部112は、架空区間と非架空区間との分類結果を、架空区間の推定結果として出力する。
【0037】
次に、図8を参照して、本実施の形態1に係る柱位置評価部12の構成例について説明する。
図8に示されるように、本実施の形態1に係る柱位置評価部12は、相違度算出部121と、相違度マップ算出部122と、相違度ピーク抽出部123と、信頼区間算出部124と、を備えている。
【0038】
相違度算出部121は、DASから、後方散乱光の位相差信号を入力信号として入力すると共に、架空区間評価部11から、架空区間の推定結果を入力する。そして、相違度算出部121は、架空区間における入力信号に対するパワースペクトルを算出し、算出されたパワースペクトルのうち、架空区間における支配的な周波数帯域におけるパワースペクトルを抽出する。さらに、相違度算出部121は、抽出されたパワースペクトルに基づいて、評価間隔間の2つのパワースペクトルの相違度を全DAS座標点で算出して出力する。
【0039】
相違度マップ算出部122は、相違度算出部121により算出された相違度の算出結果を時間的に集積し、集積した相違度を時間方向に平滑化することで、相違度マップを算出して出力する。
【0040】
相違度ピーク抽出部123は、相違度マップ算出部122により算出された相違度マップを時間平均し、時間平均値がピーク値を取る位置を柱の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を、柱の位置の推定結果として出力する。
【0041】
信頼区間算出部124は、相違度ピーク抽出部123により算出された相違度マップの時間平均値に基づいて、相違度ピーク抽出部123により推定された柱の位置の推定結果の信頼区間を算出して出力する。
【0042】
以下、本実施の形態1に係る位置評価装置10について、より詳細に説明する。
まず、入力信号について説明する。
DASは、光ファイバにパルス光を入力し、入力されたパルス光に対する後方散乱光(レイリー散乱光)を光ファイバから受信する。また、DASは、光ファイバ上の2点でそれぞれ発生した後方散乱光の位相差を検出することにより、検出された位相差を示す位相差信号
を得ることができる。この位相差信号は、その2点間の区間である位相差評価区間(ゲージ長区間)における光ファイバの動的な歪みに比例する。架空区間評価部11及び柱位置評価部12は、この位相差信号を入力信号として入力する。
【0043】
図9を参照して、位相差信号について説明する。
位相差信号におけるdは、DASから測定点までの光ファイバの長手方向の距離を示しており、以下で表される。
ここで、pは、DAS座標ラベル(整数)である。fADCは、DASに設けられたADC(アナログデジタルコンバータ)の周波数である。cは、光ファイバ内の光速であり、c=c0/nで表される。c0は、真空中の光速であり、nは、光ファイバコアの屈折率(石英ガラス製のコアであれば、およそ1.46)である。dunitは、空間方向の離散点の間隔である。例えば、fADCが125MHzである場合、dunitは、約0.82mである。
【0044】
また、位相差信号におけるtは、測定時間を示しており、以下で表される。
ここで、qは、時間間隔のラベル(整数)である。fPulseは、DASが光ファイバにパルス光を打ち出す周波数である。
【0045】
ゲージ長は、DASの設定に応じて、以下のように与えられる。
ここで、gは整数値である。
【0046】
以上より、位相差信号は、以下のように表される。
ここで、
は、あるDAS座標における時系列データを表すベクトルとなる。
【0047】
続いて、図10を参照して、柱位置評価部12による相違度の分析方法の例について説明する。
柱位置評価部12は、パワースペクトル
と、パワースペクトル
と、の相違度D(p)を、以下のように算出する。
ここで、aは、相違度の評価間隔である。
【0048】
例えば、
と、
と、が共に架空部分のパワースペクトルであり、かつ、柱をまたがない場合は、両者のパワースペクトルが類似するため、D(p)は0に近い値を取る。
【0049】
一方、
と、
と、が、架空部分及び柱をまたぐ場合は、両者のパワースペクトルの類似度が小さくなるため、D(p)は1に近い値を取る。
【0050】
そこで、柱位置評価部12は、以上の観点で相違度を分析する。
図10は、評価間隔aが1の場合の例である。
図10の例では、柱位置評価部12は、D(p)が最も1に近いp=Nの位置、すなわち、相違度がピーク値を取るp=Nの位置を、柱の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を出力する。
【0051】
続いて、図11を参照して、背景信号分類部111の動作の流れの例について説明する。
図11に示されるように、まず、背景信号分類部111は、各DAS座標ラベル及び各時間ラベルにおける入力信号の振幅を算出する(ステップS11)。このとき、背景信号分類部111は、入力信号の振幅を算出する前に、架空区間において支配的な周波数の帯域に限定し、限定された帯域の入力信号の振幅を算出しても良い。
【0052】
次に、背景信号分類部111は、ステップS11で算出された振動の振動情報に基づいて、各DAS座標ラベル及び各時間ラベルにおける背景信号を分類する(ステップS12)。このとき、背景信号分類部111は、例えば、振幅情報のヒストグラムを作成し、そのヒストグラムの分布情報の相違に基づいて、背景信号を分類しても良い。例えば、背景信号分類部111は、ヒストグラムを混合ガウス分布でフィッティングし、各分布の平均値又は標準偏差に基づいて背景信号を架空区間又は非架空区間に分類しても良い。
【0053】
その後、背景信号分類部111は、背景信号の分類結果として、架空区間については1を出力し、非架空区間については0を出力する(ステップS13)。
【0054】
続いて、図12を参照して、架空区間推定部112の動作の流れの例について説明する。
図12に示されるように、まず、架空区間推定部112は、背景信号分類部111により分類された背景信号の分類結果を時間的に集積する(ステップS21)。
【0055】
次に、架空区間推定部112は、背景信号の分類結果を集積時間で時間平均する(ステップS22)。
その後、架空区間推定部112は、背景信号の分類結果の時間平均値に対して閾値処理を行うことで、架空区間と非架空区間とを分類し、架空区間の推定結果を出力する(ステップS23)。なお、閾値処理で用いる閾値は、任意の値で良い。
【0056】
続いて、図13を参照して、相違度算出部121の動作の流れの例について説明する。
図13に示されるように、まず、相違度算出部121は、架空区間における入力信号のうち、ある時間区間における入力信号を抽出する。ある時間区間における入力信号とは、DASから得られる上述した位相差信号
のうち、所望の時間区間分を切り出したデータを指す。切り出されたデータが時間方向にN個の成分を持つ場合、位相差信号は、N次元のベクトルとして、以下のように表すことができる。
さらに、相違度算出部121は、上記で抽出された入力信号に対するパワースペクトルを算出する。具体的には、相違度算出部121は、
のフーリエ変換を行い、得られたフーリエ成分の絶対値(パワースペクトル)
を算出する(ステップS31)。
【0057】
次に、相違度算出部121は、ステップS31で算出されたパワースペクトルのうち、支配的な周波数帯域におけるパワースペクトルを抽出する(ステップS32)。支配的な周波数帯域とは、光ファイバの架空区間における基本振動モードを含む周波数帯域である。例えば、40Hz付近にパワースペクトルのピーク値が観測される場合には、相違度算出部121は、30-50Hzの周波数帯域のパワースペクトルを抽出する。
【0058】
その後、相違度算出部121は、ステップS32で抽出されたパワースペクトルに基づいて、評価間隔間の2つのパワースペクトルの相違度を全DAS座標点で算出して出力する(ステップS33)。
【0059】
続いて、図14を参照して、相違度マップ算出部122の動作の流れの例について説明する。
図14に示されるように、まず、相違度マップ算出部122は、相違度算出部121により算出された相違度の算出結果を時間的に集積する(ステップS41)。
【0060】
その後、相違度マップ算出部122は、ステップS41で集積された相違度を時間方向に平滑化することで、相違度マップを算出して出力する(ステップS42)。例えば、相違度マップ算出部122は、移動平均フィルタ又はメディアンフィルタを用いて、相違度を平滑化する。
【0061】
続いて、図15を参照して、相違度ピーク抽出部123の動作の流れの例について説明する。
図15に示されるように、まず、相違度ピーク抽出部123は、相違度マップ算出部122により算出された相違度マップを時間平均する(ステップS51)。
【0062】
その後、相違度ピーク抽出部123は、ステップS51で算出された時間平均値がピーク値を取る位置を柱の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を、柱の位置の推定結果として出力する(ステップS52)。例えば、相違度ピーク抽出部123は、ピーク値の検出に際しては、柱を架空する光ファイバの1スパンの最低長(例えば、約10m以下)を分析窓として用いる。また、相違度ピーク抽出部123は、位置を推定すべき柱の本数がわかっている場合は、ピーク検出個数を柱の本数に限定するのが良い。
【0063】
続いて、図16を参照して、信頼区間算出部124の動作の流れの例について説明する。
図16に示されるように、信頼区間算出部124は、相違度ピーク抽出部123により算出された相違度マップの時間平均値に基づいて、相違度ピーク抽出部123により推定された柱の位置の推定結果の信頼区間を算出して出力する(ステップS61)。例えば、信頼区間算出部124は、各柱位置の推定結果を用いて、相違度マップの時間平均値を複数の正規分布でフィッティングし、正規分布の空間的な広がりに基づいて、信頼区間を算出する。
【0064】
続いて、本実施の形態1に係る位置評価装置10の動作の具体例について説明する。
本具体例では、図17及び図18に示されるように、DASを用いて、5本の電柱の位置を推定するものとする。また、光ファイバは、DASから見て、最後の5番目の柱で終端しているものとする。
また、架空区間の周囲には、異なる敷設環境が2つ存在するものとする。具体的には、DASと架空区間との間には、非架空区間である敷設環境X,Yが存在するものとする。
【0065】
最初に、図19及び図20を参照して、背景信号分類部111の動作の具体例について説明する。
まず、背景信号分類部111は、10秒間の入力信号に対して、各DAS座標ラベル及び各時間ラベル毎に振幅を算出し、算出された振幅の大きさをヒストグラム化し、図19に示されるようなヒストグラムを得る。図19において、横軸は、振幅の大きさを示す信号レベル、縦軸は頻度である。具体的には、図19に示される信号レベルは、DAS座標方向に16m幅の移動平均フィルタを適用することで、得られた値である。また、図20は、ある時間ラベルにおける信号レベル特性の例である。図20において、横軸はDAS座標ラベル、縦軸は信号レベルである。
【0066】
次に、背景信号分類部111は、混合ガウスモデルを用いて、各DAS座標ラベル毎かつ各時間ラベル毎に、クラスタリングを実施する。ここでは、背景信号分類部111は、μ2+3σ2を超える区間を架空区間と分類する。
その後、背景信号分類部111は、各DAS座標ラベル毎かつ各時間ラベル毎に、背景信号の分類結果として、架空区間については1を出力し、非架空区間については0を出力する。
【0067】
次に、図21及び図22を参照して、架空区間推定部112の動作の具体例について説明する。
図21は、各DAS座標ラベル毎かつ各時間ラベル毎の背景信号の分類結果を示している。図21において、横軸は、DAS座標ラベル、縦軸は時間ラベルである。
【0068】
まず、架空区間推定部112は、図21に示されるような背景信号の分類結果に対し、各DAS座標ラベル毎に、分類結果を時間的に集積する。さらに、架空区間推定部112は、分類結果を集積時間で時間平均する。これにより、図22に示されるようなグラフを得る。図22において、横軸は、DAS座標ラベル、縦軸は分類結果の時間平均値である。
【0069】
次に、架空区間推定部112は、図22に示されるような背景信号の分類結果の時間平均値に対し、各DAS座標ラベル毎に、閾値処理を実施し、閾値以上であれば、架空区間と判定する。ここでは、閾値を0.5に設定している。
【0070】
その後、架空区間推定部112は、架空区間と判定された左端と右端との間を架空区間として推定する。ここでは、DAS座標ラベルが317m~402mの区間を架空区間として推定している。
このように、時間平均処理を実施して、架空区間を推定するため、非架空区間における突発的なノイズレベル変動に対して強固になるという利点がある。
【0071】
次に、図23を参照して、相違度算出部121の動作の具体例について説明する。
相違度算出部121は、架空区間における10秒間の入力信号に対するパワースペクトルを算出し、さらに、算出されたパワースペクトルから、1-15Hzまでの周波数帯域のパワースペクトルを抽出する。ここでは、dunit=0.82m、g=1と設定する。
次に、相違度算出部121は、これらのパワースペクトルを用いて相違度を算出する。ここでは、a=2と設定する。
【0072】
図23は、架空区間における10秒間の入力信号から得られたパワースペクトルの例である。図23において、横軸は周波数、縦軸はDAS座標ラベルである。
図23に示されるように、柱を架空する光ファイバの1スパン内では、隣接する地点間でパワースペクトルの振動パターン(狭帯域信号)が類似している。この特徴は、柱を架空する光ファイバの1スパン内の特徴である。本実施の形態1では、この特徴を利用して、各柱の位置を推定する。
【0073】
次に、図24及び図25を参照して、相違度マップ算出部122の動作の具体例について説明する。
相違度マップ算出部122は、相違度の算出結果を時間的に集積する。これにより、図24に示されるような、相違度が可視化された、平滑化前の相違度マップを得る。図24において、横軸はDAS座標ラベル、縦軸は時間ラベルである(後述する図25において同じ)。
【0074】
さらに、相違度マップ算出部122は、平滑化前の相違度マップに対し、例えば、メディアンフィルタを用いて、相違度を時間方向に平滑化する。これにより、図25に示されるような、平滑化後の相違度マップを得る。
【0075】
次に、図26を参照して、相違度ピーク抽出部123の動作の具体例について説明する。
相違度ピーク抽出部123は、相違度マップを時間平均する。これにより、図26の右図に示されるような相違度特性を得る。図26の右図において、横軸はDAS座標ラベル、縦軸は相違度の時間平均値である(後述する図27において同じ)。
【0076】
さらに、相違度ピーク抽出部123は、時間平均値のピークを検出する。このとき、柱を架空する光ファイバの1スパンの最低長(例えば、約10m以下)を分析窓として用いれば、ピークの検出精度の向上を図れる。また、ここでは、位置を推定すべき柱の本数が5本であることがわかっているため、ピーク検出個数を5個とする。
そして、相違度ピーク抽出部123は、5個のピークの各々の位置を、5本の柱の各々の位置と推定する。
【0077】
次に、図27を参照して、信頼区間算出部124の動作の具体例について説明する。
図27に示されるように、信頼区間算出部124は、相違度マップの時間平均値のピーク周りに対して、柱の位置の推定結果の信頼区間を算出する。
【0078】
例えば、信頼区間算出部124は、相違度マップの空間微分値と、正規分布の空間微分値と、がフィットするように、各正規分布のσを最適化する。そして、信頼区間算出部124は、フィットした正規分布に基づいて、信頼できる区間を定義し、定義された区間を信頼区間とする。なお、信頼区間として設定する範囲は任意で良い。
【0079】
上述したように本実施の形態1によれば、架空区間評価部11は、後方散乱光の位相差信号である入力信号に基づいて、柱を架空する光ファイバが存在する架空区間を推定する。柱位置評価部12は、架空区間における入力信号に基づいて、その入力信号に対するパワースペクトルを算出し、評価間隔間の2つのパワースペクトルの相違度を算出する。さらに、柱位置評価部12は、相違度の算出結果を時間的に集積し、集積した相違度を時間方向に平滑化することで、相違度マップを算出し、相違度マップを時間平均し、時間平均値がピーク値を取る位置を柱の位置と推定し、その推定結果を出力する。
【0080】
そのため、最大強度の振動が発生する点でなくても、評価間隔間のパワースペクトルの相違度が極大となる点であれば、その点を柱の位置として推定できる。また、分析対象区間を架空区間に限定した上で、柱の位置を推定する。これにより、柱の位置の推定精度の向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、本実施の形態1によれば、柱位置評価部12は、相違度マップの時間平均値に基づいて、柱の位置の推定結果の信頼区間を算出して出力する。そのため、柱の位置の推定結果のうち信頼できる区間を確認できる。
また、本実施の形態1によれば、柱位置評価部12は、相違度マップを出力する。そのため、相違度を視覚的に確認できる。
【0082】
なお、柱を架空する光ファイバは、風の影響を受け易い。
図28は、風が強い時間帯(例えば、最大風速が2m/secを超える時間帯)を含む時間帯に算出された、平滑後の相違度マップの例を示している。
【0083】
図28に示されるように、風が強い時間帯では、相違度マップは、相違度の時間平均値が不安定な状態となるため、柱の位置推定の精度の低下が懸念される。そのため、柱位置評価部12による柱の位置推定は、風の弱い日及び時間帯に実施することが好適である。
【0084】
一方、風が強い時間帯では、架空区間の入力信号と非架空区間の入力信号との違いが明確になるため、架空区間の推定精度は向上すると考えられる。そのため、架空区間評価部11による架空区間の推定は、風の強い日及び時間帯に実施することが好適である。
【0085】
<実施の形態2>
本実施の形態2は、図29に示されるように、光ファイバの余長区間の位置をDAS座標値として推定及び出力するものである。具体的には、光ファイバの余長の左端及び右端を、それぞれ、余長左及び余長右と表現し、余長左及び余長右の位置をDAS座標値として推定及び出力する。
【0086】
まず、図30を参照して、本実施の形態2に係る位置評価装置20の構成例について説明する。
図30に示されるように、本実施の形態2に係る位置評価装置20は、架空区間評価部21と、柱位置評価部22と、を備えている。
【0087】
架空区間評価部21及び柱位置評価部22に入力される入力信号は、上述した実施の形態1に係る入力信号と同様である。
架空区間評価部21は、上述した実施の形態1に係る架空区間評価部11と同様である。
【0088】
柱位置評価部22は、不図示のDASに接続され、DASから得られる後方散乱光の位相差信号を、入力信号として入力すると共に、架空区間評価部21から架空区間の推定結果を入力する。また、柱位置評価部22は、架空区間における入力信号に基づいて、重み付き相違度マップを算出し、重み付き相違度マップを用いて柱、余長左及び余長右の位置を推定し、重み付き相違度マップを用いた柱、余長左及び余長右の位置の推定結果の信頼区間を算出する。重み付き相違度マップとは、重み付き相違度を時間的に集積し、重み付き相違度を時空間データとして表示したものを指す。また、柱位置評価部22は、重み付き相違度マップ、重み付き相違度マップを用いた柱、余長左及び余長右の位置の推定結果、及び重み付き相違度マップを用いた柱、余長左及び余長右の位置の推定結果の信頼区間を出力する。
【0089】
次に、図31を参照して、本実施の形態2に係る柱位置評価部22の構成例について説明する。
図31に示されるように、本実施の形態2に係る柱位置評価部22は、重み付き相違度算出部221と、重み付き相違度マップ算出部222と、重み付き相違度ピーク抽出部223と、信頼区間算出部224と、を備えている。
【0090】
重み付き相違度算出部221は、DASから、後方散乱光の位相差信号を入力信号として入力すると共に、架空区間評価部21から、架空区間の推定結果を入力する。また、重み付き相違度算出部221は、架空区間における入力信号に対するパワースペクトルを算出し、算出されたパワースペクトルのうち、架空区間における支配的な周波数帯域におけるパワースペクトルを抽出する。また、重み付き相違度算出部221は、抽出されたパワースペクトルに基づいて、評価間隔間の2つのパワースペクトルの相違度を全DAS座標点で算出して出力する。また、重み付き相違度算出部221は、抽出されたパワースペクトルの周波数平均値を、全DAS座標点で算出する。また、重み付き相違度算出部221は、相違度をパワースペクトルの周波数平均値で重み付けした重み付き相違度を全DAS座標点で算出して出力する。
【0091】
重み付き相違度マップ算出部222は、重み付き相違度算出部221により算出された重み付き相違度の算出結果を時間的に集積し、集積した重み付き相違度を時間方向に平滑化することで、重み付き相違度マップを算出して出力する。
【0092】
重み付き相違度ピーク抽出部223は、重み付き相違度マップ算出部222により算出された重み付き相違度マップを時間平均し、時間平均値がピーク値を取る位置を柱の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を、柱の位置の推定結果として出力する。
【0093】
また、重み付き相違度ピーク抽出部223は、重み付き相違度算出部221で得られた全DAS座標点でのパワースペクトルの周波数平均値に基づいて、DAS座標上での余長区間範囲を設定する。また、重み付き相違度ピーク抽出部223は、余長区間範囲のうち、時間平均値がピーク値を取る位置を余長左及び余長右の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を、余長左及び余長右の位置の推定結果として出力する。
【0094】
信頼区間算出部224は、重み付き相違度ピーク抽出部により算出された重み付き相違度マップの時間平均値に基づいて、重み付き相違度ピーク抽出部223により推定された柱、余長左及び余長右の位置の推定結果の信頼区間を算出して出力する。
【0095】
以下、本実施の形態2に係る位置評価装置20について、より詳細に説明する。
まず、図32を参照して、重み付き相違度算出部221の動作の流れの例について説明する。
図32に示されるように、まず、重み付き相違度算出部221は、架空区間における入力信号のうち、ある時間区間における入力信号を抽出し、抽出された入力信号に対するパワースペクトルを算出する(ステップS71)。
【0096】
次に、重み付き相違度算出部221は、ステップS71で算出されたパワースペクトルのうち、支配的な周波数帯域におけるパワースペクトルを抽出する(ステップS72)。支配的な周波数帯域とは、光ファイバの架空区間における基本振動モードを含む周波数帯域である。
【0097】
次に、重み付き相違度算出部221は、ステップS72で抽出されたパワースペクトルに基づいて、評価間隔間の2つのパワースペクトルの相違度を全DAS座標点で算出する(ステップS73)。
【0098】
その後、重み付き相違度算出部221は、ステップS72で抽出されたパワースペクトルの周波数平均値を、全DAS座標点で算出する。また、重み付き相違度算出部221は、全DAS座標点での相違度及びパワースペクトルの周波数平均値に基づいて、重み付き相違度を全DAS座標点で算出して出力する(ステップS74)。重み付き相違度は、相違度をパワースペクトルの周波数平均値で重み付けしたものであり、パワースペクトルの周波数平均値と相違度との乗算により得られる。重み付き相違度によって、相違度が高く、かつ、振動強度が小さい点の状態を特徴づけることができる。
【0099】
続いて、図33を参照して、重み付き相違度マップ算出部222の動作の流れの例について説明する。
図33に示されるように、まず、重み付き相違度マップ算出部222は、重み付き相違度算出部221により算出された重み付き相違度の算出結果を時間的に集積する(ステップS81)。
【0100】
その後、重み付き相違度マップ算出部222は、ステップS81で集積された重み付き相違度を時間方向に平滑化することで、重み付き相違度マップを算出して出力する(ステップS82)。例えば、重み付き相違度マップ算出部222は、移動平均フィルタ又はメディアンフィルタを用いて、重み付き相違度を平滑化する。
【0101】
続いて、図34を参照して、重み付き相違度ピーク抽出部223の動作の流れの例について説明する。
図34に示されるように、まず、重み付き相違度ピーク抽出部223は、重み付き相違度マップ算出部222により算出された重み付き相違度マップを時間平均する(ステップS91)。
【0102】
次に、重み付き相違度ピーク抽出部223は、ステップS91で算出された時間平均値がピーク値を取る位置を柱の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を、柱の位置の推定結果として出力する(ステップS92)。例えば、重み付き相違度ピーク抽出部223は、ピーク値の検出に際しては、柱を架空する光ファイバの1スパンの最低長(例えば、約10m以下)を分析窓として用いる。また、重み付き相違度ピーク抽出部223は、位置を推定すべき柱の本数がわかっている場合は、ピーク検出個数を柱の本数に限定するのが良い。
【0103】
その後、重み付き相違度ピーク抽出部223は、重み付き相違度算出部221で得られた全DAS座標点でのパワースペクトルの周波数平均値に基づいて、DAS座標上での余長区間範囲を設定する。具体的には、重み付き相違度ピーク抽出部223は、パワースペクトルの周波数平均値が閾値を下回る、DAS座標上の範囲を、余長区間範囲に設定する。これにより、光ファイバの余長区間と考えられる大まかな範囲が設定される。なお、閾値は、パワースペクトルの周波数平均値に対するパーセンタイル値である。また、重み付き相違度ピーク抽出部223は、余長区間範囲のうち、時間平均値がピーク値を取る位置を余長左及び余長右の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を、余長左及び余長右の位置の推定結果として出力する(ステップS93)。
【0104】
続いて、図35を参照して、信頼区間算出部224の動作の流れの例について説明する。
図35に示されるように、信頼区間算出部224は、重み付き相違度ピーク抽出部223により算出された重み付き相違度マップの時間平均値に基づいて、重み付き相違度ピーク抽出部223により推定された柱、余長右及び余長左の位置の推定結果の信頼区間を算出して出力する(ステップS101)。例えば、信頼区間算出部224は、各柱の位置の推定結果については、重み付き相違度マップの時間平均値を複数の正規分布でフィッティングし、正規分布の空間的な広がりに基づいて、信頼区間を算出する。
【0105】
続いて、本実施の形態2に係る位置評価装置20の動作のうち、余長左及び余長右の位置を推定する動作の具体例について説明する。
重み付き相違度算出部221は、全DAS座標点で、パワースペクトルの周波数平均値、相違度、及び重み付き相違度を算出する。また、重み付き相違度マップ算出部222は、重み付き相違度マップを算出する。また、重み付き相違度ピーク抽出部223は、重み付き相違度マップを時間平均する。
【0106】
その結果、図36及び図37に示されるようなパワースペクトルの周波数平均値、相違度、及び重み付き相違度の時間平均値が得られたとする。なお、図37は、図36に示されるX領域の拡大図である。また、図36及び図37において、横軸はDAS座標ラベルである。
【0107】
ここで、光ファイバの余長区間は、多くの場合、柱に固定されており、風による影響をほとんど受けないため、余長区間のパワースペクトルの周波数平均値は小さくなる。
そのため、まず、重み付き相違度ピーク抽出部223は、パワースペクトルの周波数平均値が閾値を下回る、DAS座標上の範囲を、光ファイバの余長区間と考えられる大まかな範囲である余長区間範囲に設定する。
【0108】
一方、光ファイバが余長区間から架空区間に変化する位置では、光ファイバに加わる振動が変化し、後方散乱光の特徴が変化するため、相違度が大きくなる。このとき、相違度をパワースペクトルの周波数平均値で重み付けした重み付け相違度は、光ファイバの余長左及び余長右の部分において、ピークを示す。
【0109】
そのため、次に、重み付き相違度ピーク抽出部223は、余長区間範囲のうち、重み付き相違度がピーク値を取る位置を光ファイバの余長左及び余長右の位置と推定し、推定された位置に相当するDAS座標値を出力する。
【0110】
上述したように本実施の形態2によれば、柱位置評価部22は、架空区間における後方散乱光の位相差信号を入力信号として入力し、入力信号に対するパワースペクトルを算出し、評価間隔間の2つのパワースペクトルの相違度を算出し、その相違度をパワースペクトルの周波数平均値で重み付けした重み付き相違度を算出する。また、柱位置評価部22は、重み付き相違度の算出結果を時間的に集積し、集積した重み付き相違度を時間方向に平滑化することで、重み付き相違度マップを算出し、重み付き相違度マップを時間平均し、時間平均値がピーク値を取る位置を柱の位置と推定し、その推定結果を出力する。また、柱位置評価部22は、余長区間範囲を設定し、設定された余長区間範囲のうち、重み付き相違度マップの時間平均値がピーク値を取る位置を光ファイバの余長左及び余長右の位置と推定し、その推定結果を出力する。
【0111】
そのため、最大強度の振動が発生する点でなくても、評価間隔間のパワースペクトルの重み付き相違度が極大となる点であれば、その点を光ファイバの柱、余長左及び余長右の位置として推定できる。また、分析対象区間を架空区間に限定した上で、柱、余長左及び余長右の位置を推定する。これにより、柱、余長左及び余長右の位置の推定精度の向上を図ることが可能となる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0112】
<実施の形態3>
本実施の形態3は、上述した実施の形態1,2を上位概念化した実施の形態に相当する。
図38を参照して、本実施の形態3に係る位置評価装置30の構成例について説明する。
図38に示されるように、本実施の形態3に係る位置評価装置30は、架空区間評価部31と、相違度算出部32と、位置推定部33と、を備えている。
【0113】
架空区間評価部31は、光ファイバの各位置で生じた固有振動を示す信号をセンサから入力し、入力された信号に基づいて、柱を架空する光ファイバが存在する架空区間を推定する。架空区間評価部31は、上述した実施の形態1,2に係る架空区間評価部11,21に相当する。また、センサは、位相感知OTDR又はDASに相当する。
【0114】
相違度算出部32は、上述した信号を上述したセンサから入力し、入力された信号に基づいて、架空区間に存在する光ファイバの各位置の振動特性を示すセンシングデータを算出し、光ファイバの隣接する2点間のセンシングデータの相違度を算出する。相違度算出部32は、上述した実施の形態1に係る相違度算出部121及び上述した実施の形態2に係る重み付き相違度算出部221に相当する。
【0115】
位置推定部33は、相違度を時間的に集計し、相違度の時間平均を算出し、相違度の時間平均値に基づいて、光ファイバを懸架する柱の位置及び光ファイバの余長区間の位置を推定し、柱及び余長区間の位置の推定結果を出力する。位置推定部33は、上述した実施の形態1に係る相違度マップ算出部122と相違度ピーク抽出部123との組み合わせ、及び、上述した実施の形態2に係る重み付き相違度マップ算出部222と重み付き相違度ピーク抽出部223との組み合わせに相当する。
【0116】
本実施の形態3は、上述のように構成されているため、最大強度の振動が発生する点でない点も、柱及び余長区間の位置として推定できる。また、分析対象区間を架空区間に限定した上で、柱及び余長区間の位置を推定する。これにより、柱及び余長区間の位置の推定精度の向上を図ることが可能となる。
【0117】
なお、相違度算出部32は、センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、光ファイバの隣接する2点間のパワースペクトルの相違度を算出しても良い。また、位置推定部33は、相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、柱の位置と推定しても良い。
【0118】
また、本実施の形態3に係る位置評価装置30は、相違度の時間平均値に基づいて、柱の位置の推定結果の信頼区間を算出し、信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出部をさらに備えていても良い。この信頼区間算出部は、上述した実施の形態1に係る信頼区間算出部124に相当する。
また、位置推定部33は、時間的に集計した相違度を時空間データとして表示した相違度マップを生成し、相違度マップを出力しても良い。
【0119】
また、相違度算出部32は、センシングデータとして、所定の周波数帯域におけるパワースペクトルを算出し、光ファイバの隣接する2点間のパワースペクトルの相違度を算出し、相違度をパワースペクトルの周波数平均値で重み付けした重み付き相違度を算出しても良い。また、位置推定部33は、重み付き相違度を時間的に集計し、重み付き相違度の時間平均を算出し、パワースペクトルの周波数平均値が閾値を下回る範囲を、余長区間の範囲に設定し、余長区間の範囲のうち、重み付き相違度の時間平均値がピーク値を取る位置を、余長区間の左端及び右端の位置と推定しても良い。
【0120】
また、本実施の形態3に係る位置評価装置30は、重み付き相違度の時間平均値に基づいて、余長区間の左端及び右端の位置の推定結果の信頼区間を算出し、信頼区間の算出結果を出力する信頼区間算出部をさらに備えていても良い。この信頼区間算出部は、上述した実施の形態2に係る信頼区間算出部224に相当する。
また、位置推定部33は、時間的に集計した重み付き相違度を時空間データとして表示した重み付き相違度マップを生成し、重み付き相違度マップを出力しても良い。
【0121】
<実施の形態に係る位置評価装置のハードウェア構成>
図39を参照して、上述した各実施の形態1,2,3に係る位置評価装置10,20,30を実現するコンピュータ90のハードウェア構成例について説明する。
【0122】
図39に示されるように、コンピュータ90は、プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、入出力インタフェース(入出力I/F)94、及び通信インタフェース(通信I/F)95等を備えている。プロセッサ91、メモリ92、ストレージ93、入出力インタフェース94、及び通信インタフェース95は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0123】
プロセッサ91は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ92は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリである。ストレージ93は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はメモリカード等の記憶装置である。また、ストレージ93は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0124】
ストレージ93には、プログラムが記憶される。このプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、上述した位置評価装置10,20,30における1又はそれ以上の機能をコンピュータ90に行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。上述した位置評価装置10,20,30における構成要素は、プロセッサ91がストレージ93に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現されても良い。また、上述した位置評価装置10,20,30における記憶機能は、メモリ92又はストレージ93により実現されても良い。
【0125】
また、上述したプログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されても良い。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、SSD又はその他のメモリ技術、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されても良い。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0126】
入出力インタフェース94は、表示装置941、入力装置942、音出力装置943等と接続される。表示装置941は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニタのような、プロセッサ91により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置942は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサ等である。表示装置941及び入力装置942は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置943は、スピーカのような、プロセッサ91により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0127】
通信インタフェース95は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース95は、有線通信路又は無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0128】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、上述した実施の形態は、一部又は全部を相互に組み合わせて用いても良い。
【符号の説明】
【0129】
10 位置評価装置
11 架空区間評価部
111 背景信号分類部
112 架空区間推定部
12 柱位置評価部
121 相違度算出部
122 相違度マップ算出部
123 相違度ピーク抽出部
124 信頼区間算出部
20 位置評価装置
21 架空区間評価部
22 柱位置評価部
221 重み付き相違度算出部
222 重み付き相違度マップ算出部
223 重み付き相違度ピーク抽出部
224 信頼区間算出部
30 位置評価装置
31 架空区間評価部
32 相違度算出部
33 位置推定部
90 コンピュータ
91 プロセッサ
92 メモリ
93 ストレージ
94 入出力インタフェース
941 表示装置
942 入力装置
943 音出力装置
95 通信インタフェース
図1
図2
図3
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図6
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