(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043303
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E05D 13/00 20060101AFI20240322BHJP
E05F 7/04 20060101ALI20240322BHJP
E06B 7/16 20060101ALI20240322BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
E05D13/00 A
E05F7/04
E06B7/16 C
E06B3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148418
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 亘児
【テーマコード(参考)】
2E014
2E032
2E036
2E050
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014FA01
2E014FA06
2E014FB01
2E032FA04
2E032FB01
2E032FC01
2E032FD01
2E036AA02
2E036BA01
2E036DA09
2E036EB07
2E036GA02
2E036HA01
2E036HB02
2E036HC03
2E036HC07
2E050NA01
2E050PA02
2E050PA03
2E050PB03
2E050PC01
2E050PD01
(57)【要約】
【課題】障子の開閉操作性を損なうことなく枠体に対する障子の位置ずれやガタ付きを防止する。
【解決手段】枠体10の下枠14と障子20A,20Bの下框25との間には、下部開閉支持機構30が設けられ、障子20A,20Bの戸先となる縦框22には、枠体10に対して障子20A,20Bを閉じ位置に配置した際に縦枠11,12に当接することにより、枠体10及び障子20A,20Bを相対的に見込み方向に押圧する下部引き寄せ部材70及び上部引き寄せ部材80が設けられた建具であって、下部引き寄せ部材70及び上部引き寄せ部材80は、縦框22の長手に沿って設けられ、上枠13に近接した上部引き寄せ部材80の当接高さd1が、上枠13から離隔した下部引き寄せ部材70の当接高さd2よりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠及び左右の縦枠を有する枠体と、上框、下框及び左右の縦框を有する障子とを備え、
前記下枠と前記下框との間には、前記障子を前記下枠の長手に沿ってスライド可能に支持する下部開閉支持機構が設けられ、
前記障子の戸先となる縦框及び縦枠の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記障子を閉じ位置に配置した際に他方に当接することにより、前記枠体及び前記障子を相対的に見込み方向に押圧する押圧部材が設けられた建具であって、
前記押圧部材は、前記縦框もしくは前記縦枠の長手に沿って複数設けられ、
前記複数の押圧部材は、前記縦框及び前記縦枠の他方に対する当接高さが互いに異なるように構成され、かつ前記上枠に近接したものの前記当接高さが、前記上枠から離隔したものの前記当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように配置されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記縦框の上端部には、前記上枠に設けられた上部ガイドレールが移動可能に収容される上部ガイド溝が設けられ、
前記押圧部材は、前記上部ガイドレールの両側に位置するように前記上部ガイド溝に配置されて前記障子の移動に伴って前記上部ガイドレールに摺動される上端押圧部材を備え、
前記上端押圧部材には、前記当接高さが最も大きく設定された上部位置規定部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
上枠、下枠及び左右の縦枠を有する枠体と、上框、下框及び左右の縦框を有する障子とを備え、
前記上枠と前記上框との間には、前記障子を前記上枠の長手に沿ってスライド可能に支持する上部開閉支持機構が設けられ、
前記障子の戸先となる縦框及び縦枠の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記障子を閉じ位置に配置した際に他方に当接することにより、前記枠体及び前記障子を相対的に見込み方向に押圧する押圧部材が設けられた建具であって、
前記押圧部材は、前記縦框もしくは前記縦枠の長手に沿って複数設けられ、
前記複数の押圧部材は、前記縦框及び前記縦枠の他方に対する当接高さが互いに異なるように構成され、かつ前記下枠に近接したものの前記当接高さが、前記下枠から離隔したものの前記当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように配置されていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
枠体に対して障子が開閉可能に配設された建具には、障子の戸先となる縦框に戸当りピースと称される押圧部品を設ける一方、縦枠に当接板部を設けるようにしたものがある。押圧部材は、弾性を有した樹脂によって成形されたもので、縦框の長手に沿った複数箇所に設けてある。当接板部は、縦枠と一体に成形されている。この建具では、枠体に対して障子を閉じ位置に配置すると、縦枠の当接板部に押圧部材が当接し、その反力により枠体に対して障子が見込み方向に押圧された状態となり、例えば、障子の脱落を防止したり、枠体と障子との間の水密性や気密性を確保することができる等の利点がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した押圧部材の縦枠への当接高さを大きく設定した場合には、枠体に対する障子の位置ずれやガタ付きをより確実に防止できるものの、障子を開閉する際の操作力が大きくなるという操作性の問題を招来する懸念がある。逆に、障子を開閉する際の操作力を考慮して当接高さを小さく設定すると、枠体に対する障子の押圧力が不十分となり、枠体に対して障子の位置ずれやガタ付きを防止することが困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、障子の開閉操作性を損なうことなく枠体に対する障子の位置ずれやガタ付きを防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、上枠、下枠及び左右の縦枠を有する枠体と、上框、下框及び左右の縦框を有する障子とを備え、前記下枠と前記下框との間には、前記障子を前記下枠の長手に沿ってスライド可能に支持する下部開閉支持機構が設けられ、前記障子の戸先となる縦框及び縦枠の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記障子を閉じ位置に配置した際に他方に当接することにより、前記枠体及び前記障子を相対的に見込み方向に押圧する押圧部材が設けられた建具であって、前記押圧部材は、前記縦框もしくは前記縦枠の長手に沿って複数設けられ、前記複数の押圧部材は、前記縦框及び前記縦枠の他方に対する当接高さが互いに異なるように構成され、かつ前記上枠に近接したものの前記当接高さが、前記上枠から離隔したものの前記当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように配置されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る建具は、上枠、下枠及び左右の縦枠を有する枠体と、上框、下框及び左右の縦框を有する障子とを備え、前記上枠と前記上框との間には、前記障子を前記上枠の長手に沿ってスライド可能に支持する上部開閉支持機構が設けられ、前記障子の戸先となる縦框及び縦枠の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記障子を閉じ位置に配置した際に他方に当接することにより、前記枠体及び前記障子を相対的に見込み方向に押圧する押圧部材が設けられた建具であって、前記押圧部材は、前記縦框もしくは前記縦枠の長手に沿って複数設けられ、前記複数の押圧部材は、前記縦框及び前記縦枠の他方に対する当接高さが互いに異なるように構成され、かつ前記下枠に近接したものの前記当接高さが、前記下枠から離隔したものの前記当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、戸車等の下部開閉支持機構が設けられた建具において、上枠に近接したものの当接高さが、上枠から離隔したものの当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように押圧部材が配置されているため、障子を開閉する際の操作力への影響を抑えた上で、枠体に対する障子の位置ずれやガタ付きを抑えることが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、上吊り等の上部開閉支持機構が設けられた建具において、下枠に近接したものの当接高さが、下枠から離隔したものの当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように押圧部材が配置されているため、障子を開閉する際の操作力への影響を抑えた上で、枠体に対する障子の位置ずれやガタ付きを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た姿図である。
【
図4】
図1に示した建具の障子を示す要部拡大斜視図である。
【
図5】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は要部平面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【
図6】
図1に示した建具に適用する上部摺動部材を示すもので、(a)は障子が閉じ位置に配置される以前の状態の要部平面図、(b)は障子が閉じ位置に配置された状態の要部平面図である。
【
図7】
図6に示した上部摺動部材を示すもので、(a)は室内側から見た側面図、(b)は平面図、(c)は内周側から見た背面図、(d)は外周側から見た正面図、(e)は室外側から見た側面図、(f)は斜視図である。
【
図8】
図1に示した建具に適用する下部摺動部材を示すもので、(a)は障子が閉じ位置に配置される以前の状態の要部横断面図、(b)は障子が閉じ位置に配置された状態の要部横断面図である。
【
図9】
図8に示した下部摺動部材を示すもので、(a)は室内側から見た側面図、(b)は平面図、(c)は内周側から見た背面図、(d)は外周側から見た正面図、(e)は室外側から見た側面図、(f)は斜視図である。
【
図10】
図1に示した建具に適用する押圧部材を示すもので、(a)は障子が閉じ位置に配置される以前の状態の要部横断面図、(b)は障子が閉じ位置に配置された状態の要部横断面図である。
【
図11】
図10に示した第1の押圧部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は外周側から見た正面図である。
【
図12】
図1に示した建具に適用する押圧部材を示すもので、(a)は障子が閉じ位置に配置される以前の状態の要部横断面図、(b)は障子が閉じ位置に配置された状態の要部横断面図である。
【
図13】
図12に示した第2の押圧部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は外周側から見た正面図である。
【
図14】本発明の変形例である建具を室内側から見た姿図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0012】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と、枠体10の室外側となる部分に配設した外障子20Aと、枠体10の室内側となる部分に配設した内障子20Bとを備えた引き違い窓と称されるものである。枠体10は、左右の縦枠11,12、上枠13、下枠14を四周組することによって四角形状に構成したものである。外障子20Aは、四角形状を成す複層ガラス等の面材21と、面材21の四周に配設した左右の縦框22,23、上框24、下框25とを備えて構成したものである。内障子20Bも同様に、四角形状を成す面材21と、面材21の四周に配設した縦框22,23、上框24、下框25とを備えて構成したものである。図示の例では、枠体10の開口を閉じるべく外障子20A及び内障子20Bをそれぞれの閉じ位置(
図1に示す位置)に配置した場合、室内側から見て枠体10の左側に外障子20Aが配置され、かつ右側に内障子20Bが配置されるように枠体10、外障子20A及び内障子20Bが構成してある。
【0013】
外障子20A及び内障子20Bは、枠体10との間に設けた下部開閉支持機構30及び開閉ガイド機構40により、枠体10に対して上枠13及び下枠14の長手に沿って移動可能に配設してある。下部開閉支持機構30は、枠体10に対して障子20A,20Bを移動可能に支持するものであり、開閉ガイド機構40は、枠体10に対する障子20A,20Bの移動をガイドするものである。本実施の形態では、下枠14の上面に外障子用支持レール14a及び内障子用支持レール14bを設ける一方、外障子20Aの下框25及び内障子20Bの下框25にそれぞれ戸車26を設け、それぞれの支持レール14a,14bに戸車26を転動可能に搭載することによって下部開閉支持機構30が構成してある。戸車26は、外障子20Aの下框25から左右の縦框22,23の下部にわたる部分及び内障子20Bの下框25から左右の縦框22,23の下部にわたる部分のそれぞれに形成したレール収容溝27の延長上となる状態で下框25に取り付けてある。開閉ガイド機構40は、上枠13の下面に外障子用上部ガイドレール13a及び内障子用上部ガイドレール13bを設ける一方、外障子20Aの上框24から左右の縦框22,23の上部にわたる部分及び内障子20Bの上框24から左右の縦框22,23の上部にわたる部分にそれぞれレールガイド溝28を設け、それぞれの上部ガイドレール13a,13bをレールガイド溝28にスライド可能に配置することにより構成してある。
【0014】
枠体10を構成する縦枠11,12、上枠13、下枠14、障子20A,20Bを構成する縦框22,23、上框24、下框25は、いずれもアルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。以下、縦枠11,12及びそれぞれの障子20A,20Bにおいて戸先となる縦框(以下、区別する場合に戸先框22という)の構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。なお、戸先框22については外障子20Aと内障子20Bとで互いに回転対称(2回対称)となるように構成してあるため、一方についてのみ説明する。
【0015】
室内側から見て左側に配置される縦枠11、すなわち閉じ位置に配置した外障子20Aの戸先框22に隣接して配置される縦枠(以下、区別する場合に左縦枠11という)は、左基板部11a、左外方見付け壁部11b、左内方見付け壁部11c、左当接部11d、左タイト材支持部11eを有している。左基板部11aは、見込み方向に沿って延在する平板状を成すものである。左外方見付け壁部11bは、左基板部11aの室外側となる縁部において見付け方向に延在するものであり、左内方見付け壁部11cは、左基板部11aの室内側となる縁部において見付け方向に延在するものである。左外方見付け壁部11b及び左内方見付け壁部11cは、左基板部11aからの内周側への延在寸法が互いにほぼ等しい。左外方見付け壁部11b及び左内方見付け壁部11cにおいて外周側に延在する部分は、延在寸法が互いにほぼ等しく、延在縁部が互いに近接する方向に向けてほぼ直角に屈曲している。左当接部11dは、左基板部11aの内周側となる見込み面から内周側に向けて突出した板状を成すもので、外障子用支持レール14aの延長上となる位置に設けてある。左当接部11dの突出寸法は、左外方見付け壁部11bの内周側への延在寸法よりもわずかに小さい。左タイト材支持部11eは、左基板部11aの内周側となる見込み面から内周側に向けて突出した板状を成すものである。左タイト材支持部11eには、突出縁部において室外側となる部分にタイト材11fが装着してある。この左タイト材支持部11eは、戸車26を介して外障子20Aを外障子用支持レール14aに配置した場合に、外障子20Aの室内に臨む見付け面よりも室内側となる位置に設けてある。左タイト材支持部11eの延在寸法は、左当接部11dとほぼ等しい。
【0016】
室内側から見て右側に配置され、閉じ位置に配置した内障子20Bの戸先框22に隣接して配置される縦枠(以下、区別する場合に右縦枠12という)は、右基板部12a、右外方見付け壁部12b、右内方見付け壁部12c、右当接部12dを有している。右基板部12aは、見込み方向に沿って延在する平板状を成すもので、見込み方向に沿った寸法が左基板部11aとほぼ同じとなるように構成してある。右外方見付け壁部12bは、右基板部12aの室外側となる縁部において見付け方向に延在するものであり、右内方見付け壁部12cは、右基板部12aの室内側となる縁部において見付け方向に延在するものである。右外方見付け壁部12b及び右内方見付け壁部12cは、右基板部12aからの内周側への延在寸法が互いにほぼ等しい。右外方見付け壁部12b及び右内方見付け壁部12cにおいて外周側に延在する部分は、延在寸法が互いにほぼ等しく、延在縁部が互いに近接する方向に向けてほぼ直角に屈曲している。右内方見付け壁部12cには、内周側への突出縁部において室外側となる部分にタイト材12fが装着してある。右当接部12dは、右基板部12aの内周側となる見込み面から内周側に向けて突出した板状を成すもので、内障子用支持レール14bの延長上となる位置に設けてある。右当接部12dの突出寸法は、右外方見付け壁部12bの内周側への延在寸法よりもわずかに小さい。
【0017】
障子20A,20Bの戸先框22は、框基板部22a、2つのガラス保持用板部22b、中空部22c、2つの押圧係合部22dを有している。框基板部22aは、見込み方向に沿って延在する平板状を成すものである。2つのガラス保持用板部22bは、框基板部22aの両側縁部からそれぞれ内周側に向けて互いにほぼ平行に延在したもので、框基板部22aとの間に面材収容部22eを構成している。面材収容部22eは、シール材22fを介して互いの間に面材21の縁部を収容して支持するものである。中空部22cは、框基板部22aから外周側に向けて延在したもので、異形の中空状を成している。中空部22cの外周側となる部分は、見込み方向に沿った平板状に構成してある。この中空部22cは、見込み方向に沿った寸法が框基板部22aよりも小さく、框基板部22aの見込み面から逸脱しない範囲に設けてある。2つの押圧係合部22dは、中空部22cの外周側となる両側縁部から外周側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したもので、互いの間に収容係合溝22gを構成している。収容係合溝22gは、障子20A,20Bが閉じ位置に配置された場合に左縦枠11の左当接部11d及び右縦枠12の右当接部12d(以下、総称して縦枠11,12の当接部11d,12dという)を収容する空間である。この収容係合溝22gには、
図4及び
図5に示すように、上部摺動部材(押圧部材)50、下部摺動部材(押圧部材)60、下部引き寄せ部材(押圧部材)70、上部引き寄せ部材(押圧部材)80が設けてある。上部摺動部材50、下部摺動部材60、下部引き寄せ部材70、上部引き寄せ部材80は、それぞれ樹脂によって成形したピース部材であり、収容係合溝22gの特定位置に配置してある。
【0018】
上部摺動部材50は、
図6及び
図7に示すように、上摺動本体部51、上摺動引き寄せ部52を一体に成形したもので、上摺動引き寄せ部52を収容係合溝22gに配置した状態で上摺動本体部51を介して戸先框22の上端部に装着してある。上摺動本体部51は、ブロック状を成すもので、その上部にガイドレール溝部51aを有している。ガイドレール溝部51aは、上述した開閉ガイド機構40のレールガイド溝28の一部を構成するものである。上摺動引き寄せ部52は、障子20A,20Bが閉じ位置に配置された場合に縦枠11,12の当接部11d,12dに当接することにより、枠体10に対して障子20A,20Bを見込み方向に押圧するように作用するもので、室内側に位置する部分に上方押圧部53を有している。上方押圧部53は、縦枠11,12の当接部11d,12dに当接した場合に障子20A,20Bを室内側に押圧するもので、上方ガイド当接面53a及び上方押圧当接面53bを有している。上方ガイド当接面53aは、外周に向けて室内側となるように傾斜したもので、上方押圧部53の外周側となる端部に形成してある。上方ガイド当接面53aの寸法は、少なくとももっとも内周側に位置する部分が縦枠11,12の当接部11d,12dに当接可能となるように設定してある。上方押圧当接面53bは、上方ガイド当接面53aにおいてもっとも室外側に突出した部分から見付け方向に沿って延在する平面であり、上方押圧部53の内周側となる部分に形成してある。本実施の形態では、上方押圧部53の見付け方向に沿った寸法に対してほぼ1/3が上方ガイド当接面53aとなり、2/3が上方押圧当接面53bとなるように構成してある。
【0019】
下部摺動部材60は、
図8及び
図9に示すように、下摺動本体部61、下摺動引き寄せ部62を一体に成形したもので、下摺動引き寄せ部62を収容係合溝22gに配置した状態で下摺動本体部61を介して戸先框22の下端部に装着してある。下摺動本体部61は、ブロック状を成すもので、その下部に支持レール溝部61aを有している。支持レール溝部61aは、上述した下部開閉支持機構30のレール収容溝27の一部を構成するものである。下摺動引き寄せ部62は、障子20A,20Bが閉じ位置に配置された場合に縦枠11,12の当接部11d,12dに当接することにより、枠体10に対して障子20A,20Bを見込み方向に押圧するように作用するもので、室内側に位置する部分に下方押圧部63を有している。下方押圧部63は、縦枠11,12の当接部11d,12dに当接した場合に障子20A,20Bを室内側に押圧するもので、下方ガイド当接面63a及び下方押圧当接面63bを有している。下方ガイド当接面63aは、外周に向けて室内側となるように傾斜したもので、下方押圧部63の外周側となる端部に形成してある。下方ガイド当接面63aの寸法は、少なくとももっとも内周側に位置する部分が縦枠11,12の当接部11d,12dに当接可能となるように設定してある。下方押圧当接面63bは、下方ガイド当接面63aにおいてもっとも室外側に突出した部分から見付け方向に沿って延在する平面であり、下方押圧部63の内周側となる部分に形成してある。下方ガイド当接面63a及び下方押圧当接面63bは、上部摺動部材50に設けた上方ガイド当接面53a及び上方押圧当接面53bとほぼ同じ形状、ほぼ同じ寸法となるように形成してある。
【0020】
下部引き寄せ部材70及び上部引き寄せ部材80は、
図10~
図13に示すように、それぞれ障子20A,20Bが閉じ位置に配置された場合に縦枠11,12の当接部11d,12dに当接することにより、枠体10に対して障子20A,20Bを見込み方向に押圧するものである。
【0021】
下部引き寄せ部材70は、
図10及び
図11に示すように、見込み方向に延在する下部引き寄せ本体部71と、見付け方向に延在する下部押圧部72とを一体に成形したもので、下部押圧部72が室内側、かつ外周側となる状態で戸先框22の高さ方向においてほぼ中間となる位置に装着してある。下部押圧部72には、下部ガイド当接面72a及び下部押圧当接面72bが設けてある。下部ガイド当接面72aは、外周に向けて室内側となるように傾斜したもので、下部押圧部72の外周側となる端部に形成してある。下部ガイド当接面72aの寸法は、少なくとももっとも内周側に位置する部分が縦枠11,12の当接部11d,12dに当接可能となるように設定してある。下部押圧当接面72bは、下部ガイド当接面72aにおいてもっとも室外側に突出した部分から見付け方向に沿って延在する平面であり、下部押圧部72の内周側となる部分に形成してある。下部ガイド当接面72a及び下部押圧当接面72bは、上部摺動部材50に設けた上方ガイド当接面53a及び上方押圧当接面53bとほぼ同じ形状、ほぼ同じ寸法となるように形成してある。
【0022】
上部引き寄せ部材80には、
図12及び
図13に示すように、見込み方向に延在する上部引き寄せ本体部81と、見付け方向に延在する上部押圧部82とを一体に成形したもので、上部押圧部82が室内側、かつ外周側となる状態で下部引き寄せ部材70よりも上方となる位置に装着してある。上部引き寄せ部材80を配設する位置は、戸先框22において下部引き寄せ部材70よりも上方となる部分である。上部押圧部82には、上部ガイド当接面82aが設けてある。上部ガイド当接面82aは、外周に向けて室内側となるように傾斜したもので、上部押圧部82の全長に形成してある。図からも明らかなように、上部ガイド当接面82aは、下部引き寄せ部材70の下部ガイド当接面72aよりも傾斜角度が緩やかで、かつ内周側となる部分が下部押圧当接面72bよりも室外側に突出している。
【0023】
図11、
図13からも明らかなように、下部引き寄せ部材70の下部ガイド当接面72a及び下部押圧当接面72bと、上部引き寄せ部材80の上部ガイド当接面82aとには、それぞれリブ73,83が設けてある。リブ73,83は、水平方向に沿って延在するもので、互いに形状及び大きさが同一となる複数のものが等間隔となる状態で上下に並設してある。
【0024】
上記のように構成した建具では、
図6、
図8、
図10、
図12に示すように、開き位置に配置された障子20A,20Bを閉じ位置へ移動させると、それぞれの縦枠11,12に設けた当接部11d,12dが、上部摺動部材50の上方ガイド当接面53a及び上方押圧当接面53b、下部摺動部材60の下方ガイド当接面63a及び下方押圧当接面63b、下部引き寄せ部材70の下部ガイド当接面72a及び下部押圧当接面72b、上部引き寄せ部材80の上部ガイド当接面82aに当接して押圧された状態となる。これにより、枠体10に対して障子20A,20Bがそれぞれ室内側に押圧されるため、縦枠11,12に設けたタイト材11f,12fが戸先框22の室内に臨む見付け面に圧接された状態となり、枠体10と障子20A,20Bとの間の水密性や気密性を確保することが可能となる。
【0025】
ここで、枠体10と障子20A,20Bとの間の隙間は、上下方向において不均一となる場合が多い。すなわち、実施の形態のように、戸車26を介して下枠14の支持レール14a,14bに搭載された障子20A,20Bを備える建具では、下方側よりも上方側の隙間がより大きくなる傾向がある。この点、上述した建具では、
図5に示すように、上部引き寄せ部材80に設けた上部ガイド当接面82aの収容係合溝22gへの突出寸法(当接高さ)d1が、下部引き寄せ部材70に設けた下部押圧当接面72bの収容係合溝22gへの突出寸法(当接高さ)d2よりも大きくなるように構成してあるため、換言すれば、隙間が大となる上方側に収容係合溝22gへの突出寸法の大きな上部引き寄せ部材80を配設するようにしている。従って、下部引き寄せ部材70による押圧力が過大となることなく枠体10と障子20A,20Bとの間の隙間を上方部及び下方部において無くすことが可能となる。これにより、障子20A,20Bを開閉する際の操作力への影響を抑えた上で、枠体10に対する障子20A,20Bの位置ずれやガタ付きを抑えることが可能となる。
【0026】
さらに、上述の建具によれば、下部引き寄せ部材70の下部ガイド当接面72a及び下部押圧当接面72b、上部引き寄せ部材80の上部ガイド当接面82aにそれぞれリブ73,83が設けてある。従って、下部引き寄せ部材70及び上部引き寄せ部材80は、リブ73,83を介してのみ縦枠11,12の当接部11d,12dに当接するようになり、リブ73,83を設けていない場合に比べて縦枠11,12の当接部11d,12dに対する接触面積が減少する。これにより、仮に下部引き寄せ部材70の下部ガイド当接面72a及び下部押圧当接面72b、上部引き寄せ部材80の上部ガイド当接面82aに砂やゴミ等の異物が付着していた場合にも、異物の摺接により生じる擦り傷等の損傷を低減することが可能となる。特に実施の形態では、水平方向に沿ってリブ73,83を設けるようにしているため、換言すれば、障子20A,20Bの開閉方向に沿ってリブ73,83が延在しているため、障子20A,20Bを開閉した場合にも、当接部11d,12dにおいてリブ73,83に当接する部分が増大することはなく、上述の利点がより顕著となる。
【0027】
なお、上述した実施の形態では、枠体10に対して障子20A,20Bが上枠13及び下枠14の長手に沿って移動する建具として、下部開閉支持機構30を有した引き違い窓を例示しているが、本発明はこれに限定されず、
図14、
図15に示す変形例のように、上部開閉支持機構130を備えた上吊り式の建具にも適用することが可能である。すなわち、変形例の建具では、障子120A,120Bを構成する上框124の上方部に戸車126が回転可能に支持してあるとともに、枠体110を構成する上枠113に長手に沿って支持レール113a,113bが設けてあり、それぞれの支持レール113a,113bに戸車126を転動可能に搭載することによって上部開閉支持機構130が構成してある。一方、下枠114には、長手に沿ってガイド溝128が設けてあり、それぞれの障子120A,120Bの下縁部がガイド溝128にスライド可能に配置してある。
【0028】
この建具では、実施の形態の建具とは逆に、上方側よりも下方側の隙間がより大きくなる傾向がある。従って、図には明示していないが、それぞれの障子120A,120Bには、下部引き寄せ部材よりも上部引き寄せ部材が下方となるように配置すれば良い。これにより、下部引き寄せ部材による押圧力が過大となることなく枠体110と障子120A,120Bとの間の隙間を上方部及び下方部において無くすことが可能となり、障子120A,120Bを開閉する際の操作力への影響を抑えた上で、枠体110に対する障子120A,120Bの位置ずれやガタ付きを抑えることが可能となる。
【0029】
また、上述した実施の形態では、障子20A,20Bの戸先框22に押圧部材を設けるようにしているが、枠体10に押圧部材を設けても良い。
【0030】
さらに、下部開閉支持機構30を有した実施の形態の建具では、下部引き寄せ部材70及び上部引き寄せ部材80との間において、上部引き寄せ部材80の当接高さが下部引き寄せ部材70の当接高さよりも大きくなるように設定しているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、下部引き寄せ部材70と上部摺動部材50との間において上部摺動部材50の当接高さが下部引き寄せ部材70の当接高さより大きくなるように設定したり、下部摺動部材60と下部引き寄せ部材70との間において下部引き寄せ部材70の当接高さが下部摺動部材60の当接高さよりも大きくなるように設定しても良い。つまり、当接高さがもっとも大きく設定された押圧部材が最下方に配置されていなければ良い。因に、上部開閉支持機構130を有した建具では、上下が逆となる状態で押圧部材を配設することになるのはいうまでもない。
【0031】
またさらに、上述した実施の形態では、押圧部材にリブ73,83を設けるようにしているが、必ずしもリブを設ける必要はない。
【0032】
以上のように、本発明に係る建具は、上枠、下枠及び左右の縦枠を有する枠体と、上框、下框及び左右の縦框を有する障子とを備え、前記下枠と前記下框との間には、前記障子を前記下枠の長手に沿ってスライド可能に支持する下部開閉支持機構が設けられ、前記障子の戸先となる縦框及び縦枠の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記障子を閉じ位置に配置した際に他方に当接することにより、前記枠体及び前記障子を相対的に見込み方向に押圧する押圧部材が設けられた建具であって、前記押圧部材は、前記縦框もしくは前記縦枠の長手に沿って複数設けられ、前記複数の押圧部材は、前記縦框及び前記縦枠の他方に対する当接高さが互いに異なるように構成され、かつ前記上枠に近接したものの前記当接高さが、前記上枠から離隔したものの前記当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように配置されていることを特徴としている。
この発明によれば、戸車等の下部開閉支持機構が設けられた建具において、上枠に近接したものの当接高さが、上枠から離隔したものの当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように押圧部材が配置されているため、障子を開閉する際の操作力への影響を抑えた上で、枠体に対する障子の位置ずれやガタ付きを抑えることが可能となる。
【0033】
また本発明は、上述した建具において、前記縦框の上端部には、前記上枠に設けられた上部ガイドレールが移動可能に収容される上部ガイド溝が設けられ、前記押圧部材は、前記上部ガイドレールの両側に位置するように前記上部ガイド溝に配置されて前記障子の移動に伴って前記上部ガイドレールに摺動される上端押圧部材を備え、前記上端押圧部材には、前記当接高さが最も大きく設定された上部位置規定部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、上端押圧部材に設けられた上部位置規定部によって障子の上方側の位置ずれやガタ付きが防止される。
【0034】
また、本発明に係る建具は、上枠、下枠及び左右の縦枠を有する枠体と、上框、下框及び左右の縦框を有する障子とを備え、前記上枠と前記上框との間には、前記障子を前記上枠の長手に沿ってスライド可能に支持する上部開閉支持機構が設けられ、前記障子の戸先となる縦框及び縦枠の少なくとも一方には、前記枠体に対して前記障子を閉じ位置に配置した際に他方に当接することにより、前記枠体及び前記障子を相対的に見込み方向に押圧する押圧部材が設けられた建具であって、前記押圧部材は、前記縦框もしくは前記縦枠の長手に沿って複数設けられ、前記複数の押圧部材は、前記縦框及び前記縦枠の他方に対する当接高さが互いに異なるように構成され、かつ前記下枠に近接したものの前記当接高さが、前記下枠から離隔したものの前記当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように配置されていることを特徴としている。
この発明によれば、上吊り等の上部開閉支持機構が設けられた建具において、下枠に近接したものの当接高さが、下枠から離隔したものの当接高さよりも大きくなる組み合わせを含むように押圧部材が配置されているため、障子を開閉する際の操作力への影響を抑えた上で、枠体に対する障子の位置ずれやガタ付きを抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
10,110 枠体、11,12 右縦枠、13,113 上枠、13a 外障子用上部ガイドレール、13b 内障子用上部ガイドレール、14,114 下枠、14a 外障子用支持レール、14b 内障子用支持レール、20A,20B,120A,120B 障子、22,23 縦框、24,124 上框、25 下框、26,126 戸車、27 レール収容溝、28 レールガイド溝、30 下部開閉支持機構、40 開閉ガイド機構、50 上部摺動部材、60 下部摺動部材、63 下方押圧部、70 下部引き寄せ部材、80 上部引き寄せ部材、113a,113b 支持レール、128 ガイド溝、130 上部開閉支持機構、d1,d2 当接高さ