(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043312
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】積層電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240322BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/12 450
H01G4/30 201K
H01G4/30 201M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148430
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 弾
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓
(72)【発明者】
【氏名】森ケ▲崎▼ 信人
(72)【発明者】
【氏名】兼子 俊彦
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC38
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】クラックの発生を抑制することができる積層電子部品を提供すること。
【解決手段】積層電子部品は、内側誘電体層と内側電極層とを有する内装領域と、外側誘電体層を有し、内装領域の積層方向に沿って外側に位置する外装領域とを有する。内側誘電体層は、A
m BO
3 と元素Mとを有し、外側誘電体層は、A
m'BO
3 と元素M’とを有し、元素Mが、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上であり、元素M’が、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上であり、0.69<m/m’<0.92の関係を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層してある内側誘電体層と内側電極層とを有する内装領域と、
外側誘電体層を有し、前記内装領域の積層方向に沿って外側に位置する外装領域とを有する積層電子部品であって、
前記内側誘電体層は、Am' BO3 と元素Mとを有し、
前記外側誘電体層は、Am'BO3 と元素M’とを有し、
前記元素Mが、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上であり、
前記元素M’が、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上であり、
0.69<m/m’<0.92
の関係を満足する積層電子部品。
【請求項2】
前記内側誘電体層中の前記元素Mの濃度をMc原子%とし、
前記外側誘電体層中の前記元素M’の濃度をM’c原子%とした場合に、
0.24<Mc/M’c<0.83の関係を満足する請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項3】
0.7<m/m’<0.9の関係を満足する請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項4】
0.7<m/m’<0.8の関係を満足する請求項3に記載の積層電子部品。
【請求項5】
0.3<Mc/M’c<0.8の関係を満足する請求項2に記載の積層電子部品。
【請求項6】
0.4<Mc/M’c<0.6の関係を満足する請求項5に記載の積層電子部品。
【請求項7】
0.89≦m<1.41の関係を満足し、0.89<m’≦1.41の関係を満足する請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項8】
0.90≦m≦1.27の関係を満足し、1.29≦m’≦1.40の関係を満足する請求項7に記載の積層電子部品。
【請求項9】
0.8≦Mc≦5.0の関係を満足する請求項2に記載の積層電子部品。
【請求項10】
1.0≦Mc≦3.0の関係を満足する請求項9に記載の積層電子部品。
【請求項11】
前記内側誘電体層のAm BO3 が、(Ba1-x-y Srx Cay )m (Ti1-Z ZrZ )O3 で表され、
前記外側誘電体層のAm`BO3 が、(Ba1-x'-y' Srx'Cay')m'(Ti1-Z'ZrZ')O3で表される請求項1~10のいずれかに記載の積層電子部品。
【請求項12】
0≦x≦1.00、
0≦y≦1.00、
0.90≦x+y≦1.00、
0.90≦z≦1.00、
0≦x'≦1.00、
0≦y'≦1.00、
0.90≦x'+y'≦1.00、および
0.90≦z'≦1.00である請求項11に記載の積層電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの積層電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体層の薄層化および小型化と共に、たとえば積層セラミックコンデンサなどの積層電子部品にクラックが発生する割合が高くなってきている。そこで、たとえば下記の特許文献1では、電子部品に含まれる誘電体層の焼結助剤成分として特定の成分を用いることにより、クラックの発生を防止することができる技術が開発されている。
【0003】
しかしながら、積層電子部品のさらなる高性能化に伴う積層数の増大などにより、従来とは異なるアプローチによりクラックを防止する手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、クラックの発生を抑制することができる積層電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来とは異なるアプローチによりクラックを防止することができる積層電子部品について鋭意検討した結果、本発明者等は、積層電子部品の素子本体における積層方向の外装領域と内装領域とを各々構成する組成のA/Bに着目し、これらの関係を特定することで、クラックの発生を抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一態様に係る積層電子部品は、
交互に積層してある内側誘電体層と内側電極層とを有する内装領域と、
外側誘電体層を有し、前記内装領域の積層方向に沿って外側に位置する外装領域とを有する積層電子部品であって、
前記内側誘電体層は、Am BO3 と元素Mとを有し、
前記外側誘電体層は、Am'BO3 と元素M’とを有し、
前記元素Mが、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上であり、
前記元素M’が、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上であり、
0.69<m/m’<0.92
の関係を満足する。
【0008】
上記の構成を満足する積層電子部品では、内側誘電体層の積層数の多少にかかわらずに、クラックの発生率を低減することができ、特に内側誘電体層の積層数が多くなったとしても、クラックの発生率を低減することができる。その理由としては、必ずしも明らかではないが、上記の構成を満足する積層電子部品では、内装領域での熱収縮挙動(熱収縮率)と、外装領域での熱収縮挙動(熱収縮率)とを合わせることができるためではないかと考えられる。
【0009】
前記内側誘電体層中の前記元素Mの濃度をMc原子%とし、
前記外側誘電体層中の前記元素M’の濃度をM’c原子%とした場合に、
好ましくは0.24<Mc/M’c<0.83、さらに好ましくは0.3<Mc/M’c<0.8、特に好ましくは0.4<Mc/M’c<0.6の関係を満足する。
【0010】
Mc/M’cを特定の範囲に設定することで、クラックの発生率を低減することができると共に、高温負荷寿命の性能が向上する。内側誘電体層中の元素Mの濃度Mcを、外側誘電体層中の元素M’の濃度M’cに比較して小さくすることで、高温負荷寿命の性能が向上すると考えられる。
【0011】
好ましくは、0.7<m/m’<0.9、さらに好ましくは0.7<m/m’<0.8の関係を満足する。このような範囲に設定することで、さらにクラック発生率を抑制することができると共に、高温負荷寿命の性能がさらに向上する。
【0012】
好ましくは、0.89≦m<1.41の関係を満足し、0.89<m’≦1.41の関係を満足する。さらに好ましくは、0.90≦m≦1.27の関係を満足し、1.29≦m’≦1.40の関係を満足する。
【0013】
好ましくは、0.8≦Mc≦5.0、さらに好ましくは1.0≦Mc≦3.0の関係を満足する。このような関係にあるときに、さらにクラック発生率を抑制することができると共に、高温負荷寿命の性能がさらに向上する。
【0014】
内側誘電体層のAm BO3 の種類と、外側誘電体層のAm'BO3 の種類とは、相互に同じでも異なっていてもよいが、相互拡散による組成ずれなどを防止する観点からは、同じような種類であることが好ましい。また、ABO3 におけるA元素の種類と、B元素の種類とは、特に限定されないが、たとえば以下のような態様が考えられる。
【0015】
たとえば、前記内側誘電体層のAm BO3 が、(Ba1-x-y Srx Cay )m (Ti1-Z ZrZ )O3 で表され、
たとえば、前記外側誘電体層のAm'BO3 が、(Ba1-x'-y' Srx'Cay')m'(Ti1-Z'ZrZ')O3で表される。
【0016】
また、以下のような関係にあることも好ましい。たとえば、
0≦x≦1.00、
0≦y≦1.00、
0.90≦x+y≦1.00、
0.90≦z≦1.00、
0≦x'≦1.00、
0≦y'≦1.00、
0.90≦x'+y'≦1.00、および
0.90≦z'≦1.00である。
【0017】
このような関係にある場合に、積層電子部品の温度特性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すII-II線に沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、略直方体形状(略六面体)からなる素子本体4と、素子本体4のX軸に略垂直な両端面4a,4aに各々形成してある外部電極6,6と、を有する。
【0021】
素子本体4の寸法は、特に限定されず、用途に応じて適切な寸法を採用すればよい。たとえば、X軸方向の長さを0.6mm~5.7mm、Y軸方向の幅を0.3mm~5.0mm、Z軸方向の高さを0.3mm~3.0mmとすることができる。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直である。
【0022】
図2に示すように、素子本体4は、内装領域41を有する。内装領域41は、Z軸に沿って交互に積層してある内側誘電体層12と内側電極層14とを有する。複数の内側電極層14は、各層の一方の端部が、素子本体4の2つの端面4aに対して交互に露出するように、積層してある。
【0023】
本実施形態では、端面4aに引き出されている内側電極層14の端部を、引出部14aと称する。この引出部14aの露出端は、端面4aを覆っている外部電極6に対して電気的に接続してあり、複数の内側電極層14は、積層方向に沿って交互に異なる極性を有するように積層してある。このような構成により、内側電極層14と外部電極6とで、コンデンサ回路が形成される。
【0024】
内側誘電体層12は、コンデンサ回路の容量に寄与する中央側部分12aと、コンデンサ回路の容量には寄与しない端側部分12bとを有する。中央側部分12aは、極性が異なる内側電極層14により挟み込まれており、端側部分12bは、極性が同じ内側電極層14の引出部14aにより挟まれている。
【0025】
内側誘電体層12のZ軸に沿う積層数は、特に限定されず、たとえば、20以上、50以上、100以上、あるいは200以上としてもよい。積層数が増えるほど、コンデンサ回路の容量が増大する。なお、内側電極層14の積層数は、内側誘電体層12の積層数に応じて決定される。
【0026】
内側誘電体層12の平均厚みは、特に限定されないが、たとえば100μm以下、10μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下とすることができる。内側誘電体層12の平均厚みを薄くするほど、コンデンサ回路の容量を増大させることができると共に、コンデンサ2の小型化に寄与する。内側電極層14の平均厚みについても、特に限定されず、内側誘電体層12の平均厚みに応じて決定される。
【0027】
外部電極6は、それぞれ、一方の端面4aを覆い、当該端面4aから側面の一部に跨って形成してあり、一対の外部電極6は、互いに電気的に絶縁してある。この外部電極6は、電気伝導性を有していればよく、その材質や厚みは特に限定されない。また、外部電極6は、単一層で構成してあってもよく、複数層で構成してあってもよい。たとえば、外部電極6は、焼付電極(焼結電極)と樹脂電極とメッキ層とからなる3層構造の電極でもよい。
【0028】
図2に示すように、素子本体4は、内装領域41の積層方向(Z軸)に沿って少なくとも一方の外側に、内装領域41と一体化するように積層してある外装領域43を、さらに有する。本実施形態では、内装領域41のZ軸に沿って両側に外装領域43がそれぞれ一体化して積層してある。本実施形態では、外装領域43は、内側電極層14を有さず、外側誘電体層43aのみで構成してあるが、外側誘電体層以外の層、たとえばガラス成分層、ダミー電極層などを有していてもよい。
【0029】
外側誘電体層43aの厚みは、内側誘電体層12の厚みと同等以上、好ましくは内側誘電体層12の厚みよりも大きく、たとえば5倍以上、あるいは10倍以上であり、一般的には、15~100倍程度である。
【0030】
本実施形態では、内側誘電体層12は、Am BO3 から成る内側主成分と、少なくとも元素Mを含む内側副成分とを有する。また、外側誘電体層43aは、Am'BO3 から成る外側主成分と、少なくとも元素M’を含む外側副成分とを有する。
【0031】
内側主成分のAm BO3 と外側主成分のAm'BO3 とは、いずれもペロブスカイト型の誘電体組成物の組成式を意味し、組成式中のmおよびm’は、それぞれ、Bサイト元素に対するAサイト元素の比率(A/B)を意味する。本実施形態では、組成式中のmおよびm’は、以下の関係にある。
【0032】
すなわち、0.69<m/m’<0.92、好ましくは0.7<m/m’<0.9、さらに好ましくは0.7<m/m’<0.8の関係を満足する。また、好ましくは、0.89≦m<1.41、さらに好ましくは0.90≦m≦1.27の関係を満足する。また、好ましくは、0.89<m’≦1.41、さらに好ましくは1.29≦m’≦1.40の関係を満足する。
【0033】
本実施形態では、内側誘電体層の積層数の多少にかかわらずに、クラックの発生率を低減することができ、特に内側誘電体層の積層数が多く(たとえば200以上)なったとしても、クラックの発生率を低減することができる。その理由としては、必ずしも明らかではないが、上記の関係式を満足する場合には、内装領域41での熱収縮挙動(熱収縮率)と、外装領域43での熱収縮挙動(熱収縮率)とを合わせることができるためではないかと考えられる。
【0034】
なお、mまたはm’の測定は、たとえば次に示すようにして行うことができる。たとえば
図2に示す内側誘電体層12または外側誘電体層43aの断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)、または、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)等により成分分析することで、mまたはm’を同定することができる。また、EPMAで成分分析等を行う場合、X線分光器として、EDS(エネルギー分散型分光器)、もしくはWDS(波長分散型分光器)を使用することができる。
【0035】
本実施形態では、内側主成分と外側主成分とは、同じでも異なっていてもよいが、相互拡散による組成ズレを防止できる程度に同様な主成分組成であることが好ましい。また、内側副成分に含まれる元素Mと、外側副成分に含まれる元素M’とは、同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0036】
元素Mは、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上であり、同様に、元素M’も、Mg、Ni、Mn、Al、Crのうちの少なくとも1つ以上である。
【0037】
内側誘電体層12中の元素Mの濃度をMc原子%とし、外側誘電体層中の元素M’の濃度をM’c原子%とした場合に、下記の関係にあることが好ましい。すなわち、好ましくは、0.24<Mc/M’c<0.83、さらに好ましくは、0.3<Mc/M’c<0.8、特に好ましくは0.4<Mc/M’c<0.6の関係を満足する。また、好ましくは、0.8≦Mc≦5.0、さらに好ましくは1.0≦Mc≦3.0の関係を満足する。
【0038】
Mc/M’c、を特定の範囲に設定することで、クラックの発生率を低減することができると共に、高温負荷寿命の性能が向上する。内側誘電体層12中の元素Mの濃度Mcを外側誘電体層43a中の元素M’の濃度M’cに比較して小さくすることで、高温負荷寿命の性能が向上すると考えられる。
【0039】
なお、元素Mまたは元素M’の濃度の測定は、たとえば次に示すようにして行う。たとえば
図2に示す内側誘電体層12または外側誘電体層43aの断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)などで観察すると、誘電体粒子21と粒界23と偏析25などが観察される。そこで、偏析25を除く20個の誘電体粒子21の断面の中心を、STEMに付属のEDSを用いて各元素の定量分析を実施し、たとえばZrの100原子%に対する元素MまたはM’の濃度をそれぞれ求めて平均を算出して、McまたはMc’を求めることができる。
【0040】
本実施形態では、好ましくは、内側誘電体層12のAm BO3 が、(Ba1-x-y Srx Cay )m (Ti1-Z ZrZ )O3 で表され、外側誘電体層43aのAm'BO3 が、好ましくは、(Ba1-x'-y' Srx'Cay')m'(Ti1-Z'ZrZ')O3で表される。
【0041】
上記の組成式において、酸素(O)の量は、上記の化学量論組成から若干偏倚してもよい。また、組成式の記号m,x,y,m’,x’,y’,zおよびz’は、いずれも、組成モル比を表しており、好ましくは、以下の条件を満たす。
【0042】
すなわち、好ましくは、0≦x≦1.00、
0≦y≦1.00、
0.90≦x+y≦1.00、
0.90≦z≦1.00、
0≦x'≦1.00、
0≦y'≦1.00、
0.90≦x'+y'≦1.00、および
0.90≦z'≦1.00である。
【0043】
このような関係にある場合に、積層セラミックコンデンサ2の温度特性(たとえばC0G特性)も向上する。
【0044】
なお、
図3に示す誘電体粒子21は、焼結粒子であって、その平均粒径は、円相当径換算で、0.05μm~2.0μmであることが好ましく、0.1μm~1.0μmであることが好ましい。誘電体粒子21の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは走査透過型電子顕微鏡(STEM)などで、内側誘電体層12または外側誘電体層43aの断面を少なくとも3視野以上観察し、その際に得られる断面写真の画像解析することで測定できる。
【0045】
誘電体粒子21は、内側誘電体層12または外側誘電体層43aの主成分で主として構成され、元素MまたはM’を含む副成分の一部が一部固溶してあってもよく、コアシェル構造の粒子あるいは全固溶粒子であってもよい。内側誘電体層12または外側誘電体層43aの副成分は、粒界23に存在してもよく、偏析25として粒界23の一部に部分的に濃縮して存在している場合もある。本実施形態において、副成分の存在形態は、特に限定されない。また、偏析25については、上記の複数の副成分が複合化したり、主成分を構成する一部の元素と副成分とが複合化したりすることで、複合酸化物の相として存在する場合がある。
【0046】
元素MまたはM’を含む副成分には、MまたはM’以外のその他の副成分元素が含まれていてもよい。その他の副成分元素としては、たとえばV、Nb、Mo、Ta、W、希土類元素、Si、Znなどが例示される。
【0047】
内側誘電体層12および外側誘電体層43の組成は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、蛍光X線分析(XRF)、または、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)などの分析手法により成分分析することで、同定することができる。また、本実施形態において、EPMAで成分分析等を行う場合、X線分光器として、EDS(エネルギー分散型分光器)、もしくはWDS(波長分散型分光器)を使用することができる。
【0048】
次に、
図1および
図2に示す積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、ペーストを用いた印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、得られた素子本体4に一対の外部電極6を形成することで製造できる。
【0049】
まず、内側誘電体層12および外側誘電体層43を構成する主成分の出発原料を準備し、焼成後に所望の組成比となるように、出発原料を秤量する。この際に使用する出発原料は、主成分を構成する元素を含む酸化物の粉末、もしくは、焼成後に酸化物となる化合物粉末(たとえば炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、有機金属化合物など)を用いることができる。
【0050】
たとえば、主成分を構成する各元素の出発原料として、BaCO3 粉末、SrCO3 粉末、CaCO3 粉末、TiO2 粉末、ZrO2粉末を用いることができる。また、主成分の出発原料は、いずれも、微粒子であることが好ましく、その平均粒径は、0.01~1.0μmであることが好ましい。
【0051】
次に、上記で秤量した出発原料を、ボールミルなどの混合器を用いて湿式混合し、得られた混合粉末を、乾燥後、所定の条件で仮焼きする。なお、仮焼きの熱処理条件は、保持温度を1100℃~1300℃とすることが好ましく、保持時間を1~4時間とすることが好ましい。
【0052】
また、仮焼き処理中の雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気であってもよく、窒素などの不活性ガス雰囲気や、減圧もしくは真空状態の雰囲気としてもよい。上記の条件で加熱処理することで、主成分の仮焼き粉末が得られる。なお、仮焼き粉末については、適宜、解砕、粉砕、分級などの処理を行い、仮焼き粉末の平均粒径を、0.1μm~1.0μm程度に調製しておくことが好ましい。
【0053】
次に、上記で得られた仮焼き粉末に、副成分の出発原料を加え、混合することで、誘電体原料粉末を得る。なお、副成分の出発原料としては、主成分の出発原料と同様に、酸化物粉末や、焼成後に酸化物となる化合物粉末を用いればよい。
【0054】
そして、上記の誘電体原料粉末を、有機ビヒクル、もしくは、水性ビヒクルに加えて混錬することで塗料化し、焼成後に内側誘電体層12の組成となるように調整された内側誘電体ペーストと、焼成後に外側誘電体層43aの組成となるように調整された外側誘電体ペーストを得る。ここで、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解した塗料である。
【0055】
有機ビヒクルに用いられるバインダは、特に限定されず、たとえば、エチルセルロース、ポリビニルブチラールなどの各種バインダを用いることができる。また、有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も、特に限定されず、たとえば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどの各種有機溶媒を用いることができる。
【0056】
一方、水性ビヒクルとは、水溶性のバインダを水に溶解させた塗料である。この場合、水溶性バインダとしては、特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いることができる。なお、誘電体ペーストには、上記のバインダや溶媒の他に、可塑剤や分散剤などのその他の添加物が含まれていてもよい。
【0057】
また、上記の誘電体ペーストの他に、焼成後に内側電極層14を構成する内側電極用ペーストも準備する。内側電極用ペーストは、上記したNiやNi合金からなる導電材、あるいは、焼成後に上記したNiやNi合金となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネートなどを、上述したような有機ビヒクルと共に混錬して調製すればよい。この際、内側電極用ペーストには、誘電体用ペーストに含まれるセラミック成分(好ましくは主成分と同じ組成)を共材として添加してもよい。
【0058】
なお、上記の各ペースト(誘電体ペーストおよび内側電極用ペースト)において、添加するビヒクルの配合比は、特に限定されず、公知の配合比を採用すればよい。たとえば、誘電体原料粉末100重量部に対して、バインダ成分の含有量は1~10重量部程度、溶媒の含有量は10~100重量部程度とすることができる。
【0059】
次に、上記の各ペーストを用いて、焼成後に素子本体4となるグリーンチップを製造する。グリーンチップは、各種印刷法や各種シート法により製造できる。
【0060】
たとえば、シート法でグリーンチップを製造する場合、まず、PETフィルムなどのキャリアフィルム上に、外側誘電体ペーストをドクターブレード法などで塗布してシート化し、適宜乾燥することで外側グリーンシートを得る。また、別のPETフィルムなどのキャリアフィルム上に、内側誘電体ペーストをドクターブレード法などで塗布してシート化し、適宜乾燥することで内側グリーンシートを得る。
【0061】
内側グリーンシートの上には、スクリーン印刷などの各種印刷法により、内側電極用ペーストを所定のパターンで塗布する。この内側電極用ペーストのパターンが形成してある内側グリーンシートを複数に積層した後、積層方向にプレスすることでマザー積層体を得る。なお、マザー積層体の積層方向の上面および下面には、
図2に示す外側誘電体層43aがそれぞれ形成されるように、内側電極用ペーストが印刷されていない外側グリーンシートを、単層または複層で積層してある。そして、上記工程により得られたマザー積層体を、ダイシングや押切りによりカッティングし、複数のグリーンチップを得る。
【0062】
次に、グリーンチップに対して、脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理の条件は、昇温速度を好ましくは5~300℃/時間とし、保持温度を好ましくは180℃~900℃とし、温度保持時間を好ましくは0.5~48時間とする。また、脱バインダ処理の雰囲気は、大気雰囲気、もしくは、還元性雰囲気とする。
【0063】
脱バインダ処理後、グリーンチップの焼成(本焼成)を行う。具体的に、焼成時の雰囲気は、還元雰囲気とし、雰囲気ガスとしては、たとえば、窒素(N2)と水素(H2)の混合ガスを加湿して用いることが好ましい。そして、焼成時の酸素分圧は、好ましくは、1.0×10-13 MPa以上とし、1.0×10-12 MPa以上、1.0×10-11 MPa以上とすることがさらに好ましい。
【0064】
また、焼成時の昇温速度は、100℃/時間以下と遅く設定することが好ましく、5℃/時間~50℃/時間の範囲内とすることがより好ましい。なお、焼成時の保持温度は、1100℃~1300℃とすることが好ましい。また、焼成時の保持時間は、0.2時間~3時間とすることが好ましく、0.5時間~2時間とすることがより好ましい。さらに、温度保持後の冷却過程では、冷却速度を50℃/時間~300℃/時間とすることが好ましい。
【0065】
上記のような条件で焼成することで素子本体4が得られる。なお、本実施形態では、焼成後の素子本体4に対してアニール処理(誘電体層の再酸化処理)を施すことが好ましい。再酸化処理では、保持温度を1150℃以下とすることが好ましく500℃~1100℃とすることがより好ましい。再酸化処理における温度保持時間は、0~20時間とすることができ、6~10時間とすることが好ましい。また、再酸化処理時の雰囲気は、窒素雰囲気、もしくは、加湿した窒素雰囲気として、酸素分圧は、1.0×10-9~1.0×10-5MPaとすることが好ましい。
【0066】
なお、脱バインダ処理、焼成、および再酸化処理は、連続して行ってもよく、独立に行ってもよい。また、これらの熱処理工程(脱バインダ処理、焼成、および再酸化処理)は、切断前のマザー積層体に対して実施し、熱処理工程後にマザー積層体を切断して、複数の素子本体4を得てもよい。また、得られた素子本体4に対しては、適宜、研磨やブラスト処理などの端面処理を施してもよい。
【0067】
最後に、上記の製法で得られた素子本体4の端部に、一対の外部電極6を形成する。外部電極6の形成方法は、特に限定されない。たとえば、ガラスフリットなどを含む導電性ペーストを焼き付けることで形成してもよい。もしくは、熱硬化性樹脂をふくむ導電性ペーストを塗布して、加熱により樹脂を硬化させることで、樹脂電極として外部電極6を形成してもよい。その他、メッキやスパッタリングなどの成膜法によっても外部電極6を形成することができる。
【0068】
なお、外部電極6は、焼結電極もしくは樹脂電極の表面に、単数または複数のメッキ層を形成し、積層電極としてもよい。たとえば、外部電極6は、Cuの焼結電極/Ag-Pdの樹脂電極/Niメッキ/Snメッキの積層構造とすることができ、この場合、素子本体4と接している下地電極はCuの焼結電極である。
【0069】
上記の方法で製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ2は、ハンダや導電性接着剤により回路基板などの基板上に実装され、各種電子機器等に使用される。
【0070】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば、本発明に係る積層電子部品は、積層セラミックコンデンサに限らず、LC複合電子部品などであってもよい。
【実施例0071】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0072】
実施例および比較例
【0073】
まず、
図2に示す内側誘電体層12の原料となる仮焼き粉末を作製するために、出発原料として、BaCO
3 粉末、SrCO
3 粉末、CaCO
3 粉末、TiO
2 粉末、ZrO
2 粉末を準備し、所望の組成比(焼成後に表1Aに示す組成)となるように秤量した。この際、用意した出発原料の平均粒径は、0.03~1.0μmとした。
【0074】
次に、秤量した出発原料を、ボールミルで20時間、湿式混合し、適宜乾燥させることで、出発原料の混合物を得た。
【0075】
次に、上記で得られた出発原料の混合物を、1250℃で2時間、仮焼きして、出発原料の仮焼き粉末を得た。なお、仮焼き粉末は、上記の熱処理後に、ボールミルを用いて湿式粉砕し、その後乾燥させた。
【0076】
次いで、上記の仮焼き粉末に対して、副成分の出発原料を所望の組成比(焼成後に表1Aに示す組成)となるように加えて混合し、内側誘電体層12の誘電体原料粉末を得た。そして、乾燥した誘電体原料粉末を、所定の有機ビヒクルとともに混練し、塗料化することで内側誘電体ペーストを得た。
【0077】
また、
図2に示す外側誘電体層43aの形成に用いる外側誘電体ペーストも、内側誘電体ペーストと同様の手順で作製した。
【0078】
一方、内側電極用ペーストについては、Ni粉末100重量部と、所定の有機ビヒクル40重量部と、ブチルカルビトール10重量部とを3本ロールにより混錬して塗料化することで得た。
【0079】
次に、上記で調製した二種類の誘電体ペーストと電極用ペーストを用いて、シート法により、グリーン積層体を製造した。具体的には、PETフィルム上に、外側誘電体層43となる外側誘電体ペーストをドクターブレード法で塗布してシート化し、適宜乾燥することで外側グリーンシートを得る。また、別のPETフィルム上に、内側誘電体層12となる内側誘電体ペーストをドクターブレード法で塗布してシート化し、適宜乾燥することで内側グリーンシートを得る。
内側グリーンシートの上には、スクリーン印刷により、内側電極用ペーストを所定のパターンで塗布する。この内側電極用ペーストのパターンが形成してある内側グリーンシートを複数に積層した後、積層方向にプレスすることでマザー積層体を得る。なお、マザー積層体の積層方向の上面および下面には、
図2に示す外側誘電体層43aがそれぞれ形成されるように、内側電極用誘電体ペーストが印刷されていない外側グリーンシートを複層で積層する。
【0080】
次に、グリーン積層体を所定のサイズに切断し、グリーンチップを得て、このグリーンチップに対して、脱バインダ処理、焼成、および再酸化処理を施した。なお、これらの各熱処理工程での詳細な条件は、以下のとおりとした。
【0081】
脱バインダ処理の条件は、昇降温速度:30℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:大気中とした。
【0082】
焼成の条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1250℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間以上、雰囲気ガス:加湿したN2+H2混合ガス、酸素分圧:1.0×10-12MPa以上とした。
【0083】
アニール処理の条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000℃、保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間以上、雰囲気ガス:加湿したN2ガス、酸素分圧:1.0×10-8MPa以上とした。なお、焼成およびアニール処理において、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
【0084】
上記の条件で熱処理を行うことで、素子本体4を得た。次に、得られた素子本体4の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn-Ga共晶合金を塗布し、
図1に示す積層セラミックコンデンサ1と同様の形状のコンデンサ試料を得た。なお、得られたコンデンサ試料のサイズ(素子本体4のサイズ)は、3.2mm×1.6mm×1.6mmであり、内側誘電体層12の平均厚みが3.0μm、内側電極層14の平均厚みが1.0μm、内側電極層14に挟まれた内側誘電体層12の数が200であった。
【0085】
上記で得られた各コンデンサ試料1~30に対して、以下の特性評価を実施した。
【0086】
クラック発生率
作製した試料1~30の各々に関して、それぞれ10000個の外観について顕微鏡などを用いて観察し、クラックが検出された割合を求めた。クラック発生率は、500ppm以下を良好とし、100ppm以下を特に良好とした。結果を表1Bに示す。
【0087】
高温負荷寿命
コンデンサ試料1~30の各々に関し、200℃にて70V/μmの電界下で直流電圧の印加状態を保持し、コンデンサ試料の絶縁劣化時間を測定することにより、高温負荷寿命を評価した。本実施例においては、電圧印加開始から絶縁抵抗が1桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。
【0088】
また、本実施例では、上記の評価を20個のコンデンサ試料について行い、これをワイブル解析することにより算出した平均故障時間(MTTF)を、それぞれのコンデンサ試料1~30の平均寿命と定義した。高温負荷寿命は、平均寿命50時間以上を良好とし、100時間以上を特に良好とした。結果を表1Bに示す。
【0089】
容量温度係数τC
さらに、コンデンサ試料1~30の容量温度係数τC(単位:ppm/℃)を測定した。具体的には、25℃および125℃において、各コンデンサ試料に対して、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力し、各温度帯における静電容量を測定した。そして、25℃における静電容量C25と、125℃における静電容量C125とから、以下の式により容量温度係数を算出した。結果を表1Bに示す。
τC={(C125-C25)/C25}×(1/(125-25))
【0090】
なお、上記の測定を、各コンデンサ試料につき10個のサンプルに対して実施し、その平均値として各試料の容量温度係数を算出した。容量温度係数は、±40ppm/℃の範囲内を合格とし、±30ppm/℃の範囲内である場合を良好とし、±20ppm/℃の範囲内である場合を特に良好と判断した。結果を表1Bに示す。
【0091】
主成分(x、y、z、m、x’、y’、z’、m’)の測定
作製した各試料1~30に対して、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)を用いて、内側誘電体層および外側誘電体層を分析し、各層を構成する主成分のモル濃度割合を求めた。表1Aに示すように、原料段階での組成比と同様な結果が得られた。
【0092】
McおよびM’cの測定
作製した試料1~30に対して、STEMに付属のEDSを用いて、内側誘電体層および外側誘電体層に含まれるMおよびM’の濃度を分析した。具体的には、偏析していない粒子20個の断面について、それぞれの粒子断面の幾何中心にてZrの濃度を100at%としたときのMやM’の濃度を求め、20点の算術平均からMcおよびM’cを算出した。表1Aに示すように、原料段階での組成比と同様な結果が得られた。
【0093】
評価
表1Aおよび表1Bの試料13~22に示すように、内側誘電体層および外側誘電体層における主成分の組成において、0.69<m/m’<0.92、好ましくは0.7<m/m’<0.9、さらに好ましくは0.7<m/m’<0.8の関係を満足することで、クラック発生率を抑制することができると共に、高温負荷寿命の性能がさらに向上することが確認できた。また、この範囲では、容量温度係数も良好であることが確認できた。
【0094】
表1Aおよび表1Bの試料1~4および9~12に示すように、好ましくは、0.89≦m<1.41および0.89<m’≦1.41の関係を満足し、さらに好ましくは、0.90≦m≦1.27および1.29≦m’≦1.40の関係を満足する場合に、クラック発生率を抑制することができると共に、高温負荷寿命の性能がさらに向上することが確認できた。また、この範囲では、容量温度係数も良好であることが確認できた。
【0095】
表1Aおよび表1Bの試料13~22に示すように、好ましくは0.24<Mc/M’c<0.83、さらに好ましくは0.3<Mc/M’c<0.8、特に好ましくは0.4<Mc/M’c<0.6の関係を満足することで、クラックの発生率を低減することができると共に、高温負荷寿命の性能が向上することが確認できた。また、この範囲では、容量温度係数も良好であることが確認できた。
【0096】
内側誘電体層の誘電体粒子に比較して、外側誘電体層の誘電体粒子の元素M(Mnなど)の固溶濃度を大きくすることで、外側誘電体層の焼結性を向上させ、しかも、内側誘電体層と外側誘電体層の焼結挙動を合わせることが容易になり、クラックをさらに抑制することができるのではないかと考えられる。また、内側誘電体層中の元素Mの濃度Mcを、外側誘電体層中の元素M’の濃度M’cに比較して小さくすることで、高温負荷寿命の性能が向上すると考えられる。すなわち、内側誘電体層中に元素M(Mnなど)が多く固溶すると高温負荷寿命が低下するためではないかと考えられる。
【0097】
表1Aおよび表1Bの試料23~30に示すように、好ましくは、0.8≦Mc≦5.0、さらに好ましくは1.0≦Mc≦3.0の関係を満足するときに、さらにクラック発生率を抑制することができると共に、高温負荷寿命の性能がさらに向上することが確認できた。また、この範囲では、容量温度係数も良好であることが確認できた。
【0098】
表1Aおよび表1Bの試料1~12に示すように、以下のような関係にあることで、容量温度係数も良好であり、クラック発生率を抑制することができると共に、高温負荷寿命の性能が向上することが確認できた。
0≦x≦1.00、
0≦y≦1.00、
0.90≦x+y≦1.00、
0.90≦z≦1.00、
0≦x'≦1.00、
0≦y'≦1.00、
0.90≦x'+y'≦1.00、および
0.90≦z'≦1.00である。
【0099】
【0100】