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  • 特開-人工芝 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043334
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】人工芝
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
E01C13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148461
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】390019264
【氏名又は名称】ダイヤテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓
(72)【発明者】
【氏名】柳原 孝広
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AG15
2D051HA05
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性、回復率、起立性の全てに優れる人工芝を提供すること。
【解決手段】本発明の人工芝は、石油由来のポリエチレンと、植物由来のポリエチレンとを含むパイル糸2を植設している人工芝1であって、前記パイル糸2のバイオマス度が10~90%であることを特徴とし、好ましくは、前記パイル糸2のブレンド密度が、0.93~0.95g/cmであることを特徴とし、より好ましくは、前記植物由来のポリエチレンが、高密度ポリエチレンであることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油由来のポリエチレンと、植物由来のポリエチレンとを含むパイル糸を植設している人工芝であって、
前記パイル糸のバイオマス度が10~90%であることを特徴とする人工芝。
【請求項2】
前記パイル糸のブレンド密度が、0.93~0.95g/cmであることを特徴とする請求項1記載の人工芝。
【請求項3】
前記石油由来のポリエチレンが、直鎖状低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の人工芝。
【請求項4】
前記植物由来のポリエチレンが、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2記載の人工芝。
【請求項5】
前記植物由来のポリエチレンが、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項3記載の人工芝。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝に関し、詳しくは、石油由来のポリエチレンと、植物由来のポリエチレンを含むパイル糸を植設した人工芝に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、長期に亘りパイル糸の自立性と耐摩耗性が共に優れ、しかも砂入れ作業性に優れた人工芝が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の人工芝は、密度が0.918~0.940g/cmの線状ポリエチレン95~20重量パーセントに対して、高密度ポリエチレン5~80重量パーセントを含有する混合樹脂組成物より成る一軸延伸条からパイル糸を構成し、植設した砂入り人工芝である。
【0004】
特許文献1の人工芝は化石燃料を原料とする石油由来のポリエチレンを用いて製造されている。
【0005】
しかしながら、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。
【0006】
バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。
昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0007】
例えば、ポリエチレンは、フィルム、シート等の材料用途に広く使用されており、世界中での使用量も多いため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを、バイオマスを原料とした植物由来のポリエチレンに代替することが検討されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-269811号公報
【特許文献2】特表2011-506628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、石油由来のポリエチレンの使用量を削減する試みの過程で、石油由来のポリエチレンと植物由来のポリエチレンとの混合樹脂からなるパイル糸のバイオマス度(ブレンド比)が所定の範囲にある場合には、人工芝の耐摩耗性、回復率、起立性の全てに優れることを見出した。
【0010】
そこで、本発明の課題は、耐摩耗性、回復率、起立性の全てに優れる人工芝を提供することにある。
【0011】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0013】
(請求項1)
石油由来のポリエチレンと、植物由来のポリエチレンとを含むパイル糸を植設している人工芝であって、
前記パイル糸のバイオマス度が10~90%であることを特徴とする人工芝。
(請求項2)
前記パイル糸のブレンド密度が、0.93~0.95g/cmであることを特徴とする請求項1記載の人工芝。
(請求項3)
前記石油由来のポリエチレンが、直鎖状低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の人工芝。
(請求項4)
前記植物由来のポリエチレンが、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2記載の人工芝。
(請求項5)
前記植物由来のポリエチレンが、高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項3記載の人工芝。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石油由来のポリエチレンと植物由来のポリエチレンとの混合樹脂からなるパイル糸のバイオマス度が所定の範囲にある場合には、耐摩耗性、回復率、起立性の全てに優れる人工芝を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る人工芝の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
植物由来のポリエチレンは、バイオポリオレフィンに属する。
バイオポリオレフィンとしては、例えば、バイオポリエチレン又はバイオポリプロピレンが挙げられ、バイオポリエチレン又はバイオポリプロピレンは、植物由来のエチレン又はプロピレンを重合することにより得られる。
このようなバイオポリオレフィンは、化石燃料由来の従来のポリオレフィンと近似する物性を有する。
【0018】
植物由来のポリオレフィンとは、ポリオレフィンを構成するオレフィンモノマーの少なくとも一部が植物由来のオレフィンからなるものをいい、化石燃料由来のポリオレフィンとは、ポリオレフィンを構成するオレフィンモノマーの全部が石油等の化石燃料由来のオレフィンからなるものをいう。
【0019】
植物由来のオレフィンモノマーとしては、植物由来のエチレン又はプロピレンが挙げられる。
【0020】
植物由来のエチレンは、例えばサトウキビやトウモロコシ等の植物に由来するバイオマスの発酵により生成したエタノールの脱水により製造することができる。
【0021】
また植物由来のプロピレンは、例えばバイオマスの発酵により生成したプロパノールの脱水により製造することができる。バイオマスが澱粉等の炭水化物である場合は、炭水化物を加水分解して得られた糖類を発酵させてもよい。
【0022】
バイオポリオレフィンは、公知の方法で製造されたものを使用してもよく、市販されているものを使用してもよい。
【0023】
バイオポリオレフィンの具体例としては、例えば、植物由来のエチレンの重合体であるポリエチレン、植物由来のプロピレンの重合体であるポリプロピレンが挙げられる。
【0024】
バイオポリオレフィンが、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンをコモノマーとして含む場合、これらのα-オレフィンは、植物等のバイオマスに由来する方法で製造されたα-オレフィンでもよく、化石燃料由来のα-オレフィンでもよい。
【0025】
化石燃料由来のオレフィン及びポリオレフィンは、質量数14の放射性炭素(14C)を含まないのに対し、植物由来のオレフィン及びポリオレフィンは、質量数14の放射性炭素(14C)を含むことから、両者の区別が可能である。
植物由来の炭素の割合(以下、「バイオマス度」ともいう)は、14Cの含有量に基づき測定することができる。
【0026】
なお、本発明において用いるバイオポリオレフィンは、バイオマス度が高い方が環境負荷低減に貢献できるため好ましいといえるが、必ずしもバイオマス度が100%である必要はなく、モノマー単位で化石燃料由来のオレフィンが含まれていてもよい。
【0027】
バイオポリオレフィンの好ましいバイオマス度は10~100%である。なお、本明細書においてバイオマス度は、ASTM D6866-21に準拠した14C(放射性炭素)分析に基づくバイオベース炭素含有率の測定により算出することができる。
大気中では一定の割合で放射性炭素14Cが存在し、植物由来樹脂の炭素にも一定割合で放射性炭素14Cが含まれている。
これに対し、化石燃料由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cはほとんど含まれない。
この性質を利用して加速器質量分析器等を用いて樹脂中の放射性炭素14Cの濃度を測定することにより、バイオマス度を測定することができる。
【0028】
<パイル糸>
パイル糸は基布に植設されて用いられ、好ましくは連続してループ状に植設される。植設後に、そのループ部分をカットすることが好ましく、かかるカットによって、いわゆるカットパイルとなる。
基布表面からパイル先端までのパイル長さ(パイル糸を伸ばした状態)が5~50mmであることが好ましく、10~30mmであることがより好ましい。
【0029】
本発明において、パイル糸を構成する熱可塑性樹脂としては、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE);石油由来の高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を例示できる。
【0030】
各原料の密度は、石油由来、又は植物由来を問わず、LLDPEの場合は、0.90~0.935g/cmの範囲であり、0.910~0.930g/cmの範囲であることが好ましく、HDPEの場合は、0.940~0.970g/cmの範囲であり、0.940~0.960g/cmの範囲であることが好ましい。
【0031】
本発明において、パイル糸を構成する樹脂組成物としては、植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のブレンドであることが好ましく、パイル糸のブレンド密度は、0.93~0.95g/cmの範囲であることが好ましい。
【0032】
本発明において、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる場合、石油由来のポリエチレンを用いることができるが、植物由来のポリエチレンであってもよい。
【0033】
本発明において、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いる場合、石油由来のHDPEを用いること、植物由来のHDPEのみを用いること、石油由来のHDPEと植物由来のHDPEをブレンドして用いることもできるが、耐摩耗性が良好となる点で、植物由来のHDPEが50質量%以上が好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
本発明において、耐摩耗性、回復率、起立性の全てにより優れる人工芝を提供できる点で、植物由来のHDPEと、石油由来のLLDPEをブレンドしたものを用いることが好ましい。
【0035】
パイル糸の形状は、テープ、ヤーン、スプリットヤーン、モノフィラメント、マルチフィラメント、長繊維、スパン糸等のいずれでもよく、好ましくはフラットヤーン又はスプリットヤーンである。
【0036】
スプリットヤーンは、フラットヤーンの縦方向に多数の小さな切れ目を入れることによって形成することができる。
【0037】
パイル糸の繊度は、目的に応じて任意に定め得るが、例えば、100~20,000デシテックス、好ましくは4,000~15,000デシテックス、さらに好ましくは6000~11,500、糸幅が1~100mm、好ましくは5~50mmの範囲が好ましい。
【0038】
更に本実施形態においては、パイル糸として主パイルと副パイルを用いてもよい。主パイルは、例えば、人工芝の外観を左右し、摩耗劣化、紫外線劣化等の外的な要因の影響を受けやすい。副パイルは、例えば、クッション性、砂入り人工芝での砂の補助や酸素遮断等の役割に用いられる。したがって、主パイルや副パイルは、上記の特性、役割に適合するように、主パイルと副パイルとの繊度を異なる組み合わせにしてもよいし、また、ストレート状の主パイルにウェーブ状の副パイルを組み合わせてもよい。更に、主パイルと副パイルで異なる素材を用いてもよい。
【0039】
パイル糸には、目的に応じて各種の添加剤を加えても良い。具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイト等の有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;含臭素有機系、メラミン系、リン酸系、リン酸エステル系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;金属イオン系等の無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0040】
パイル糸を製造する第1の方法としては、前記植物由来のポリエチレンと石油由来の線状低密度ポリエチレンの混合樹脂を、200~250℃の範囲で溶融押出し、冷却固化して、肉厚が50~300μmのフィルムと成し、該フィルムを1~70mm幅のテープ状に切断し、オーブン、ロール、熱板等公知の方法で、90~150℃で引き取り方向に2.0~10.0倍に延伸し、例えばオーブンを用い、100~160℃で3~20%の弛緩処理を行うことによって製造することができる。
これらの工程を経て、繊度:100~20000デシテックス、糸巾:1~100mm、糸厚み:30~200μmのパイル用原糸を得る。
【0041】
また、パイル糸を製造する第2の方法としては、前記植物由来のポリエチレンと石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂を溶融押出するとともに、冷却固化して、100~20000デシテックスのモノフィラメントと成し、該モノフィラメントを90~150℃で引き取り方向に3.0~10.0倍に延伸し、例えば熱水槽、オーブン等を用い、90~150℃で3~15%の弛緩処理を行う。
【0042】
これらの工程を経て、繊度100~20000デシテックス、糸断面の直径:0.1~0.5mmのパイル用原糸を得ることができる。
該モノフィラメントの断面形状は、長径と短径の比が50:1~2:1である楕円形状のもの、中空断面のもの、連糸状のもの、その他異形状の物でも良い。
【0043】
これらのパイル糸は、前記第1の方法で一軸延伸された細い幅のテープや第2の方法で得られたモノフィラメントを数本撚り加工したもの、あるいはこれをさらに嵩高加工した物などでもよい。
【0044】
<基布>
基布は、熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られた基布用線条体を布状体とすることによって形成される。
【0045】
布状体とは、線条体によって形成された可撓性のシート状体を総称するものとし、熱可塑性樹脂が一軸延伸されて形成された線条体を主体とした織布、編布、不織布あるいは交差結合布(ソフ)として用いられ、これらを組み合わせたものでも良い。
【0046】
基布用の線条体としては、テープ、ヤーン、スプリットヤーン、モノフィラメント、長繊維、短繊維(ステープルファイバー)、スパン糸等を含み、これらの線条体は必要に応じて撚糸される。
【0047】
線条体を構成する熱可塑性樹脂としては、延伸効果の大きい樹脂、一般には結晶性樹脂が使用され、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、変性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等が用いられる。
中でも加工性と経済性からポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体が望ましい。
これら基布用線条体を構成する熱可塑性樹脂には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。
【0048】
具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤、有機充填剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0049】
これら添加剤は、適宜組み合わせて基布の材料組成物を製造するいずれかの工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0050】
基布用線条体の繊度は、目的に応じて任意に定め得るが、一般には、1~10,000デシテックス、好ましくは50~5,000デシテックス、糸幅が好ましくは0.3~200mm、より好ましくは0.5~100mmの範囲が適する。
【0051】
こうして得られた基布用線条体は、織物を用いる場合は平織とし、あるいは、綾織、斜文織、畦織、二重織、模紗織等の方法で織製することによって、人工芝用基布とされる。
【0052】
<タフト・バッキング>
パイル糸の抜け止め防止処理剤として、バッキング材が用いられる。バッキング材としては、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、PU、PVC、PO(ホットメルト)などであってよく、これらを用いて樹脂層を形成することができる。
【0053】
1インチ当たりのパイルの植設本数(ステッチ)は、1~10本/吋の範囲が好ましく、1インチ当たりのパイルの植設の配列本数(ゲージ)は、1~10本/吋の範囲が好ましい。
【0054】
<人工芝>
上記のパイル糸、基布及びバッキング材を用いて形成された人工芝を図1に示す。図1に示す人工芝1は、基布3にパイル糸2を植設し、基布3からパイル糸2が抜けるのをバッキング材4により防止するように構成されている。
図1に示すように、基布3の表面からパイル糸2の人工芝表面の垂直長さがパイル長である。
【0055】
本発明の人工芝はJIS L-1021-11に準じて下記の条件で測定されたテーバー摩耗試験において、その摩耗量が100mg以下であることが好ましく、より好ましくは80mg以下、更に好ましくは70mg以下、特には60mg以下であることが好ましい。
・摩耗輪 H-38
・荷重 片腕1kg×2個
・実験台回転回数 10,000回
【実施例0056】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されない。
【0057】
実施例1
1.人工芝の製造
<1>パイル糸用フラットヤーンの製造
植物由来の高密度ポリエチレン(HDPE)(密度0.948g/cm、MFR1.0g/10分(190℃、2.16g荷重)、融点132℃)と、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(密度0.93g/cm、MFR1.0g/10分(190℃、2.16g荷重)、融点123℃)とを、質量対比で、植物由来のHDPE:石油由来のLLDPE=20:80の割合で配合した樹脂をインフレーション成形法によって成膜し、得られたフィルムをレザーカットによってスリットした。
【0058】
次いで、温度90~120℃の熱板上で、6倍に延伸した後、温度150℃の熱風循環式オーブン内で、13%の弛緩熱処理を実施し、丸刃2等配の針刃ロールによる加工(スプリット処理)を施して、パイル糸用のフラットヤーンのスプリットヤーンを得て、パイル糸とした。
その繊度は8200dt、フラットヤーン幅は11mm、及び厚さは80μmであった。
【0059】
<2>人工芝の作製
このパイル糸を、タフティング機を用いて、ポリプロピレン製一軸延伸フラットヤーンを、経糸20本/吋、緯糸13本/吋の平織の基布に、ステッチが4.1本/吋(流れ方向のパイルの植設数:本/吋)、ゲージが3.2本/吋(幅方向のゲージの本数)で、パイル長が19mmになるようにタフティングし、裏側にバッキング材としてSBR(スチレンブタジエンゴム)を塗布し、110℃下の乾燥処理を経て人工芝を作製した。
【0060】
2.樹脂組成:表1に示した。
<1>バイオマス度
パイル糸のバイオマス度の算出方法は以下のようにして求めた。
(パイル糸におけるバイオマスHDPEの配合割合(%)×94
(94…バイオマスHDPE(原料)のバイオマス度)
【0061】
<2>パイル糸の樹脂組成物の配合割合(質量比)
石油由来のポリエチレン(LLDPE)80%
植物由来のポリエチレン(HDPE) 20%
【0062】
<3>パイル糸のブレンド密度:表1に示した。
【0063】
3.測定及び評価:結果を表1に示した。
ア 耐摩耗性
テーバー摩耗試験(JIS L-1021-11参考)
・摩耗輪 H-38
・荷重 片腕1kg×2個
・試験台回転回数 10,000回
・N*6
・試験前後の質量を測定し、その差から摩耗量を算出した。
【0064】
イ パイル回復率(回復率)
直径13cm、5kgの重りを用いて、作製した人工芝サンプル上に荷重をかけた状態で14時間保持した後、荷重を解除した5時間後の人工芝のパイル長を測定し、回復率を下記計算式で算出した。
回復率(%)=(試験後のパイル長)/(試験前のパイル長)×100
回復率を測定する意義:保管時の巻き癖によるパイルつぶれが展張後に速やかに回復し、砂入れ時にパイルがしっかり起きている必要があるため。
【0065】
ウ 起立性(パイル倒伏性)
長さ100mm幅10mmのパイル糸用フラットヤーン(スプリット処理前)を半分に折り曲げ、折り曲げ部に2kgの荷重を加えて、10分間折り曲げた状態を維持した後、荷重を解除して2分後の折り曲げ部の角度を測定した。(測定環境:23℃)
測定する意義:人工芝上を靴で踏み込んだ際に、パイル糸が倒伏する。起立性が低く倒伏した状態のままだと倒伏方向に滑り易いので、パイル糸が復元する必要があるため。
【0066】
上記評価の結果、実施例1の人工芝は、耐摩耗性、回復率、起立性の全てが優れることがわかった。
【0067】
(実施例2)
実施例1において、樹脂の配合割合を質量比で、石油由来のポリエチレン(LLDPE)を60%、植物由来のポリエチレン(HDPE)を40%とし、バイオマス度を変更した以外は、実施例1と同様にして人工芝を作成し、実施例1と同様に評価した。
その結果を表1に示す。
実施例2の人工芝は、耐摩耗性、回復率、起立性の全てが優れていた。
【0068】
(実施例3)
実施例1において、樹脂の配合割合を質量比で、石油由来のポリエチレン(LLDPE)を40%、植物由来のポリエチレン(HDPE)を60%とし、バイオマス度を変更した以外は、実施例1と同様にして人工芝を作成し、実施例1と同様に評価した。
その結果を表1に示す。
実施例3の人工芝は、耐摩耗性、回復率、起立性の全てが優れていた。
【0069】
(実施例4)
実施例1において、樹脂の配合割合を質量比で、石油由来のポリエチレン(LLDPE)を20%、植物由来のポリエチレン(HDPE)を80%とし、バイオマス度を変更した以外は、実施例1と同様にして人工芝を作成し、実施例1と同様に評価した。
その結果を表1に示す。
実施例4の人工芝は、耐摩耗性、回復率、起立性の全てが優れていた。
【0070】
(比較例1)
石油由来のポリエチレン(LLDPE)のみを用いて、人工芝を作成し、実施例1と同様に評価した。
その結果を表1に示す。
比較例1の人工芝は、回復率が劣り、起立性が劣っていた。
【0071】
(比較例2)
表1のように、石油由来のポリエチレン(LLDPE)(密度0.93g/cm、MFR1.0g/10分(190℃、2.16g荷重)、融点123℃)と、石油由来のポリエチレン(HDPE)(密度0.96g/cm、MFR1.0g/10分(190℃、2.16g荷重)、融点135℃)を用いて、人工芝を作成し、実施例1と同様に評価した。
その結果を表1に示す。
比較例2の人工芝は、耐摩耗性が劣っていた。
【0072】
(比較例3~5)
比較例2において、石油由来のポリエチレン(LLDPE)と石油由来のポリエチレン(HDPE)の配合割合を、表1のように変更した以外は同様にして実験を行って評価した。
その結果を表1に示す。
比較例3~5の人工芝は、耐摩耗性が劣っていた。
【0073】
【表1】
【符号の説明】
【0074】
1 :人工芝
2 :パイル糸
3 :基布
4 :バッキング材
図1