(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043344
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240322BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240322BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148474
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池澤 尚徳
(72)【発明者】
【氏名】山本 宇紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広直
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭平
(72)【発明者】
【氏名】福田 英士
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA01
5H125CD02
5H125DD07
5H125DD18
5H125EE42
5H125EE58
5H125EE62
(57)【要約】
【課題】電気自動車においてクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高くする。
【解決手段】アクセル装置と、疑似シフト装置と、疑似クラッチ装置と、検出装置と、挙動発生装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、1つまたは複数のプロセッサと、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、を有し、前記プロセッサは、前記検出装置による検出結果に基づいて、駆動源がエンジンであると仮定した場合のエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数を導出し、前記仮想エンジン回転数、ドライバによる前記アクセル装置への操作態様、ドライバによる前記疑似シフト装置への操作態様、および、ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作態様に少なくとも基づいて、前記疑似クラッチ装置に発生させる前記所定の挙動を決定する電気自動車。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのモータを備える電気自動車において、
加速要求を入力するためのアクセル装置と、
ドライバによって操作され、変速操作を模擬するための疑似シフト装置と、
ドライバによって操作され、クラッチ操作を模擬するための疑似クラッチ装置と、
ドライバによる前記アクセル装置、前記疑似シフト装置、および、前記疑似クラッチ装置への操作態様、駆動輪の回転数、および、車体の傾斜角度を検出する検出装置と、
ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作に対して、前記疑似クラッチ装置へ反力または振動の少なくともいずれかを含む所定の挙動を発生させる挙動発生装置と、
前記疑似クラッチ装置に発生させる前記所定の挙動を決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記検出装置による検出結果に基づいて、駆動源がエンジンであると仮定した場合のエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数を導出し、
前記仮想エンジン回転数、ドライバによる前記アクセル装置への操作態様、ドライバによる前記疑似シフト装置への操作態様、および、ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作態様に少なくとも基づいて、前記疑似クラッチ装置に発生させる前記所定の挙動を決定する電気自動車。
【請求項2】
駆動源としてのモータを備える電気自動車において、
加速要求を入力するためのアクセル装置と、
ドライバによって操作され、変速操作を模擬するための疑似シフト装置と、
ドライバによって操作され、クラッチ操作を模擬するための疑似クラッチ装置と、
ドライバによる前記アクセル装置、前記疑似シフト装置、および、前記疑似クラッチ装置への操作態様、駆動輪の回転数、および、車体の傾斜角度を検出する検出装置と、
ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作に対して、前記車体の振動または前記車体の姿勢変化の少なくともいずれかを含む所定の挙動を発生させる挙動発生装置と、
前記車体に発生させる前記所定の挙動を決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記検出装置による検出結果に基づいて、駆動源がエンジンであると仮定した場合のエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数を導出し、
前記仮想エンジン回転数、ドライバによる前記アクセル装置への操作態様、ドライバによる前記疑似シフト装置への操作態様、および、ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作態様に少なくとも基づいて、前記車体に前記所定の挙動を決定する電気自動車。
【請求項3】
制動力を車輪に付与するブレーキ装置を、
備え、
前記制御部は、
前記所定の挙動として、前記ブレーキ装置を動作させて所定の車輪に前記制動力を付与し、前記モータを動作させて前記所定の車輪と異なる前記車輪を後退方向に駆動することで、前記車体の姿勢変化を発生させる請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記所定の挙動の決定において、前記車体の傾斜角度の大きさに応じて、前記所定の挙動を変化させる請求項1から3のいずれか一項に記載の電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータによって駆動する電気自動車において、変速用のシフト装置とクラッチ装置を備えた、所謂マニュアルトランスミッション車両(以下、MT車両と呼ぶ)におけるドライバによるクラッチ装置に対する操作(以下、クラッチ操作という)を疑似的に再現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、電気自動車において、MT車両でのクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性が不十分であり、MT車両を操る楽しさを求めるドライバの感覚に違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたもので、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高くすることが可能な電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の電気自動車は、
駆動源としてのモータを備える電気自動車において、
加速要求を入力するためのアクセル装置と、
ドライバによって操作され、変速操作を模擬するための疑似シフト装置と、
ドライバによって操作され、クラッチ操作を模擬するための疑似クラッチ装置と、
ドライバによる前記アクセル装置、前記疑似シフト装置、および、前記疑似クラッチ装置への操作態様、駆動輪の回転数、および、車体の傾斜角度を検出する検出装置と、
ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作に対して、前記疑似クラッチ装置へ反力または振動の少なくともいずれかを含む所定の挙動を発生させる挙動発生装置と、
前記疑似クラッチ装置に発生させる前記所定の挙動を決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記検出装置による検出結果に基づいて、駆動源がエンジンであると仮定した場合のエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数を導出し、
前記仮想エンジン回転数、ドライバによる前記アクセル装置への操作態様、ドライバによる前記疑似シフト装置への操作態様、および、ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作態様に少なくとも基づいて、前記疑似クラッチ装置に発生させる前記所定の挙動を決定する。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の電気自動車は、
駆動源としてのモータを備える電気自動車において、
加速要求を入力するためのアクセル装置と、
ドライバによって操作され、変速操作を模擬するための疑似シフト装置と、
ドライバによって操作され、クラッチ操作を模擬するための疑似クラッチ装置と、
ドライバによる前記アクセル装置、前記疑似シフト装置、および、前記疑似クラッチ装置への操作態様、駆動輪の回転数、および、車体の傾斜角度を検出する検出装置と、
ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作に対して、前記車体の振動または前記車体の姿勢変化の少なくともいずれかを含む所定の挙動を発生させる挙動発生装置と、
前記車体に発生させる前記所定の挙動を決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記検出装置による検出結果に基づいて、駆動源がエンジンであると仮定した場合のエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数を導出し、
前記仮想エンジン回転数、ドライバによる前記アクセル装置への操作態様、ドライバによる前記疑似シフト装置への操作態様、および、ドライバによる前記疑似クラッチ装置への操作態様に少なくとも基づいて、前記車体に前記所定の挙動を決定する。
【0008】
また、制動力を車輪に付与するブレーキ装置を、
備え、
前記制御部は、
前記所定の挙動として、前記ブレーキ装置を動作させて所定の車輪に前記制動力を付与し、前記モータを動作させて前記所定の車輪と異なる前記車輪を後退方向に駆動することで、前記車体の姿勢変化を発生させてもよい。
【0009】
また、前記プロセッサは、
前記所定の挙動の決定において、前記車体の傾斜角度の大きさに応じて、前記所定の挙動を変化させてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気自動車において、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電気自動車の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る疑似シフトレバーの一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る疑似クラッチペダル挙動発生装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る車体の姿勢変化の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る制御部の構成を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る仮想クラッチ機構を説明するための概略図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る仮想クラッチフェーシング摩擦特性マップの一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る仮想クラッチフェーシング減衰特性マップの一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る仮想レリーズ特性マップの一例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る仮想ダイヤフラム特性マップの一例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係る駆動反力マップの一例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係る仮想クラッチダンパ固有値マップの一例を示す概略図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る制御部における割込み処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、本実施形態に係る制御部における情報取得処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、本実施形態に係る制御部における挙動関連処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、本実施形態に係る制御部における疑似クラッチペダル挙動関連処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、本実施形態に係る制御部における車体挙動関連処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電気自動車100の構成を示す概略構成図である。
図1に示すように、電気自動車100は、車体100a、モータ102、出力軸104、ギア機構106、プロペラシャフト108、デファレンシャルギア110、ドライブシャフト112、前輪114、ブレーキ機構114a、後輪116、ブレーキ機構116aを備えるものである。
【0014】
モータ102は、電気自動車100における駆動源である。すなわち、電気自動車100は、駆動源としてのエンジン、エンジンに接続される変速機、および、クラッチ機構を備えていないものである。
【0015】
モータ102の出力軸104は、ギア機構106を介してプロペラシャフト108の一端に接続されている。プロペラシャフト108の他端は、デファレンシャルギア110を介して、車体100aの後方のドライブシャフト112に接続されている。
【0016】
また、駆動輪としての後輪116は、電気自動車100の後方であって、ドライブシャフト112の両端にそれぞれ設けられる。また、従動輪としての前輪114は、電気自動車100の前方にそれぞれ設けられている。なお、本実施形態では、前輪114を従動輪、後輪116を駆動輪とした場合について示したが、これに限定されるものではない。例えば、前輪114および後輪116の両者を駆動輪としてもよい。また、車輪ごとにモータ102が設けられる、所謂インホイールモータとしてもよい。
【0017】
また、前輪114には、ブレーキ機構114aが備えられている。また、後輪116には、ブレーキ機構116aが備えられている。ブレーキ機構114a、116aは、前輪114や後輪116にブレーキ圧力(制動力)を与えるものである。ブレーキ機構114a、116aとしては、例えば、所謂ディスクブレーキ機構やドラムブレーキ機構を用いることができる。なお、ブレーキ機構114a、116aは、後述する制御部190によって制御される。
【0018】
また、電気自動車100は、バッテリ120と、インバータ122とを備えている。バッテリ120は、モータ102の駆動に利用する電力を蓄える。インバータ122は、バッテリ120に蓄えられている直流電流を三相交流電流に変換する。また、インバータ122は、後述する制御部190からの制御指令に基づいて、モータ102の駆動トルクを制御する機能を有している。
【0019】
また、
図1に示すように、電気自動車100は、車体100aの傾きを検出するための傾斜センサ100sが設けられている。傾斜センサ100sにより検出された信号は、後述する制御部190に出力される。
【0020】
また、
図1に示すように、電気自動車100は、アクセルペダル130、ブレーキペダル140、疑似クラッチペダル150、疑似シフトレバー160を備えるものである。
【0021】
アクセルペダル130は、ドライバが電気自動車100に対する加速要求を入力するために設けられるものである。また、アクセルペダル130には、ドライバによるアクセルペダル130への操作量(ペダル踏込量)を検出するためのアクセルペダルセンサ130sが設けられている。アクセルペダルセンサ130sにより検出された信号は、後述する制御部190に出力される。
【0022】
また、ブレーキペダル140は、ドライバが電気自動車100に対する制動要求を入力するために設けられるものである。また、ブレーキペダル140には、ドライバによるブレーキペダル140への操作量(ペダル踏込量)を検出するためのブレーキペダルセンサ140sが設けられている。ブレーキペダルセンサ140sにより検出された信号は、後述する制御部190に出力される。
【0023】
また、疑似クラッチペダル150および疑似シフトレバー160は、ドライバが電気自動車100に対する疑似的な変速要求を入力するために設けられるものである。ただし、本実施形態における電気自動車100は、モータ102により駆動される車両であり、実際には、駆動力としてのエンジンを備えていないため、MT車両が備えるクラッチ機構および変速機を備えていない。
【0024】
疑似クラッチペダル150は、MT車両が備えるクラッチペダルを模擬した構造を有している。疑似クラッチペダル150の配置および操作感は、実際のMT車両と同等である。疑似クラッチペダル150は、ドライバが疑似シフトレバー160を操作する際に踏み込まれる。疑似クラッチペダル150の配置および操作感は、実際のMT車両と同等である。
【0025】
疑似クラッチペダル150には、ドライバによる疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)を検出するための疑似クラッチペダルセンサ150sが設けられている。疑似クラッチペダルセンサ150sにより検出された信号は、後述する制御部190に出力される。
【0026】
疑似シフトレバー160は、MT車両が備えるシフトレバーを模擬した構造を有している。疑似シフトレバー160の配置および操作感は、実際のMT車両と同等である。
【0027】
疑似シフトレバー160は、ドライバが電気自動車100に対する疑似的な変速要求を入力する際に、手動にて操作される。疑似シフトレバー160の配置および操作感は、実際のMT車両と同等である。
【0028】
疑似シフトレバー160には、疑似シフトレバー160の位置(シフトポジション)を検出するための疑似シフトレバーセンサ160sが設けられている。疑似シフトレバーセンサ160sにより検出された信号は、後述する制御部190に出力される。
【0029】
図2は、疑似シフトレバー160の一例を示す概略図である。
図2に示すように、運転者によって操作される疑似シフトレバー160は、疑似シフトレバー160の可動範囲を規制するための規制機構162に挿入されている。そして、疑似シフトレバー160は、規制機構162に沿って、ドライバが操作可能に構成される。
【0030】
規制機構162は、シフト方向に並行に延びる複数のシフト通路162a(本実施形態では、3本)と、複数のシフト通路162aのそれぞれに直交するように連結され、セレクト方向に延びるセレクト通路162bと、を有する、いわゆるH型を呈している。
【0031】
各シフト通路162aの端部には、例えば1速、2速、3速、4速、5速、および、後退の各ギア段に対応するシフトパターンが対応付けられている。また、セレクト通路162bの全幅には、ニュートラルポジションが対応付けられている。
【0032】
図1に戻り、電気自動車100は、疑似クラッチペダル挙動発生装置170を備えている。疑似クラッチペダル挙動発生装置170は、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われた際に、疑似クラッチペダル150に対して所定の挙動を発生させることが可能となっている。疑似クラッチペダル150に発生させる所定の挙動としては、具体的には、ドライバによる疑似クラッチペダル150の操作に対する反力や、振動とすることができる。これにより、疑似クラッチペダル150の操作感をMT車両のクラッチペダルの操作感に近づけることが可能となる。疑似クラッチペダル挙動発生装置170の具体的な構造については特に限定はなく、例えば、後述する
図3に示すような構造とすることができる。
【0033】
図3は、本実施形態に係る疑似クラッチペダル挙動発生装置170の一例を示す概略図である。
図3に示すように、疑似クラッチペダル150は、ドライバの足Fによって踏み込まれる疑似踏込部150aを有する。また、疑似クラッチペダル150は、疑似クラッチペダル150がドライバによって操作される際に、疑似クラッチペダル150の揺動中心となる球状のボール部150bを有する。また、疑似クラッチペダル150は、疑似踏込部150aとボール部150bとを連結する棒状の連結部150cを有する。
【0034】
図3に示すように、疑似クラッチペダル挙動発生装置170は、アクチュエータ本体172aを備える。
図3に示すように、アクチュエータ本体172aは、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ、もしくはガスシリンダとすることができる。また、疑似クラッチペダル挙動発生装置170は、連結部150cを押圧可能な板状の当接部172bを有する。また、疑似クラッチペダル挙動発生装置170は、アクチュエータ本体172aと当接部172bとを連結する棒状のロッド部172cを有する。
【0035】
そして、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われた際に、電気自動車100では、アクチュエータ本体172aが駆動されて、当接部172bが連結部150cを押圧することとなる。これにより、電気自動車100では、疑似クラッチペダル150に対して所定の挙動である反力や振動を発生させることが可能となっている。疑似クラッチペダル150の操作感をMT車両のクラッチペダルの操作感に近づけることが可能となる。なお、本実施形態では、1の疑似クラッチペダル挙動発生装置170によって、疑似クラッチペダル150に対して所定の挙動である反力や振動を発生させる場合について示したが、これに限定されるものではない。すなわち、疑似クラッチペダル挙動発生装置170を複数設けることによって、疑似クラッチペダル150に対して振動と反力とを別々に発生させることとしてもよい。
【0036】
図1に戻り、電気自動車100は、車体振動発生装置180を備えている。車体振動発生装置180は、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われた際に、車体100aに対して所定の挙動として振動を発生させることが可能となっている。これにより、疑似クラッチペダル150の操作感をMT車両のクラッチペダルの操作感に近づけることが可能となる。車体振動発生装置180は、例えば、電気自動車100に設けられているサスペンションに取り付けられている。また、車体振動発生装置180の具体的な構造については特に限定はなく、例えば、電動シリンダ、油圧シリンダ、もしくはガスシリンダとすることができる。
【0037】
また、本実施形態では、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われた際に、車体100aに対して所定の挙動として姿勢変化を発生させることが可能となっている。
図4は、本実施形態に係る車体100aの姿勢変化の一例を示す概略図である。
図4では、電気自動車100が傾斜面において発進する場合について示している。
【0038】
具体的には、ドライバによるブレーキペダル140への操作量(ペダル踏込量)が所定値以下である場合であって、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われると、ブレーキ機構114aが動作させ、前輪114に対してブレーキ機構114aにより制動力を付与すると共に、後輪116が後退方向へ駆動させる制御が行われる。これにより、車体100aが
図4中の矢印Y方向へと沈み込む姿勢変化を発生させる。すなわち、所謂、坂道発進時の車体100aが斜面に沿って後方にずり下がる挙動を疑似的に再現している。これにより、疑似クラッチペダル150の操作感をMT車両のクラッチペダルの操作感に近づけることが可能となる。
【0039】
図1に戻り、制御部190は、1つまたは複数のプロセッサ192と、プロセッサ192に接続される1つまたは複数のメモリ194と、を有する。プロセッサ192は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ194は、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0040】
制御部190は、電気自動車100に設けられる各種センサ(傾斜センサ100s、回転数センサ112s、アクセルペダルセンサ130s、ブレーキペダルセンサ140s、疑似クラッチペダルセンサ150s、疑似シフトレバーセンサ160s)との通信が実行可能となっている。また、制御部190は、電気自動車100に設けられる各種装置(ブレーキ機構114a、ブレーキ機構116a、インバータ122、疑似クラッチペダル挙動発生装置170、車体振動発生装置180)との通信が実行可能となっている。制御部190と各種センサや各種装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0041】
図5は、本実施形態に係る制御部190の構成を示す概略図である。
図5に示すように、制御部190は、走行制御部196a、検出部196b、仮想エンジン回転数導出部196c、仮想差回転数導出部196d、仮想クラッチフェーシング摩擦特性導出部196e、仮想クラッチフェーシング減衰特性導出部196f、仮想レリーズ特性導出部196g、仮想ダイヤフラム特性導出部196h、駆動反力導出部196i、仮想クラッチダンパ固有値導出部196j、疑似クラッチペダル挙動導出部196k、疑似クラッチペダル挙動制御部196l、車体挙動導出部196m、車体挙動制御部196n、記憶部196oを有する。なお、走行制御部196a、検出部196b、仮想エンジン回転数導出部196c、仮想差回転数導出部196d、仮想クラッチフェーシング摩擦特性導出部196e、仮想クラッチフェーシング減衰特性導出部196f、仮想レリーズ特性導出部196g、仮想ダイヤフラム特性導出部196h、駆動反力導出部196i、仮想クラッチダンパ固有値導出部196j、疑似クラッチペダル挙動導出部196k、疑似クラッチペダル挙動制御部196l、車体挙動導出部196m、車体挙動制御部196nにより行われる以下で説明する処理を含む各種処理は、プロセッサ192によって実行され得る。詳細には、メモリ194に記憶されているプログラムをプロセッサ192が実行することにより、各種処理が実行される。記憶部196oの機能は、メモリ194と実質的に同じである。
【0042】
なお、制御部190において行われる各種処理は、プロセッサ192によって実行され得る。詳細には、メモリ194に記憶されているプログラムをプロセッサ192が実行することにより、各種処理が実行される。
【0043】
走行制御部196aは、電気自動車100の走行に関する制御を実行する。具体的には、走行制御部196aは、ドライバによるアクセルペダル130の操作をMT車両におけるエンジンに対する燃料供給を制御するアクセルペダルの操作として受け付ける。また、走行制御部196aは、ドライバによる疑似クラッチペダル150の操作をMT車両におけるギア段を切り替えるシフトレバー(シフト装置)の操作として受け付ける。また、走行制御部196aは、ドライバによる疑似シフトレバー160の操作をMT車両におけるクラッチを動作させるクラッチペダルの操作として受け付ける。
【0044】
そして、走行制御部196aは、アクセルペダル130の操作量(ペダル踏込量)と、疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)と、疑似シフトレバー160のシフト位置(シフトポジション)とで定まる駆動輪トルクを、MT車両を模擬したモデルを用いて導出する。
【0045】
そして、走行制御部196aは、導出した駆動輪トルクを電気自動車100の駆動輪(前輪114)に与えるためのモータトルクを導出する。そして、走行制御部196aは、導出したモータトルクに基づいた制御指令をインバータ122に送信する。なお、インバータ122は、走行制御部196aから受信した制御指令に基づいて、モータ102の駆動トルクを制御する。これにより、電気自動車100は、疑似シフトレバー160により設定されるギア段に応じて、MT車両におけるトルク特性を模擬するようなトルク特性を実現する。
【0046】
検出部196bは、電気自動車100の各種センサから入力される信号に基づいて、各種情報を取得し、記憶部196oに記憶する。具体的には、検出部196bは、傾斜センサ100sからの検出信号に基づいて、車体100aの傾斜角度を取得し、記憶部196oに記憶する。
【0047】
また、検出部196bは、アクセルペダルセンサ130sからの検出信号に基づいて、ドライバによるアクセルペダル130の操作量(ペダル踏込量)を取得し、記憶部196oに記憶する。
【0048】
また、検出部196bは、回転数センサ112sからの検出信号に基づいて、ドライブシャフト112の回転数、すなわち、駆動輪である後輪116の回転数、および、電気自動車100の車速を取得し、記憶部196oに記憶する。
【0049】
また、検出部196bは、疑似シフトレバーセンサ160sからの検出信号に基づいて、疑似シフトレバー160の位置、すなわち、シフトポジションを取得し、記憶部196oに記憶する。
【0050】
また、検出部196bは、疑似クラッチペダルセンサ150sからの検出信号に基づいて、疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作量(ペダル踏込量)を取得し、記憶部196oに記憶する。
【0051】
仮想エンジン回転数導出部196cは、予め設けられた複数の仮想エンジン回転数マップのいずれかを用いて、MT車両におけるエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数の導出を行う。
【0052】
仮想エンジン回転数の導出に際し、仮想エンジン回転数導出部196cは、予め設けられた複数の仮想エンジン回転数マップのいずれかの選択を行う。本実施形態では、仮想エンジン回転数マップは、ドライバによる疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)、および、ドライバにより操作された疑似シフトレバー160の位置(シフトポジション)に応じて複数種類設けられている。本実施形態では、疑似クラッチペダル150の操作が行われていない状態から、疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)が最大値となる状態までの間の複数段階と、複数設けられたシフトポジションとのすべての組み合わせに対して、それぞれ、仮想エンジン回転数マップが設けられている。
【0053】
そのため、仮想エンジン回転数導出部196cは、仮想エンジン回転数の導出に際し、検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)、および、疑似シフトレバー160の位置(シフトポジション)に基づいて、複数の仮想エンジン回転数マップのいずれかの選択を行う。
【0054】
例えば、仮想エンジン回転数マップでは、横軸を電気自動車100の車速、縦軸をドライバによるアクセルペダル130の操作量(ペダル踏込量)とした場合の、MT車両におけるエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数の値についての関係が規定されている。そして、仮想エンジン回転数マップでは、車速の値、および、アクセルペダル130の操作量(ペダル踏込量)が大きくなるにしたがって、仮想エンジン回転数の値が大きくなる傾向となる関係が規定されている。
【0055】
そして、仮想エンジン回転数導出部196cは、選択された仮想エンジン回転数マップを参照して、電気自動車100の車速と、アクセルペダル130の操作量(ペダル踏込量)とに基づいて、仮想エンジン回転数を導出し、記憶部196oに記憶する。
【0056】
図6は、本実施形態に係る仮想クラッチ機構300を説明するための概略図である。
図6は、電気自動車100には実際には搭載されていない所謂プッシュ式の仮想クラッチ機構300の一部を示す。
図6に示すように、仮想クラッチ機構300は、仮想フライホイール302、仮想クラッチカバー304、仮想クラッチディスク306、仮想プレッシャープレート308、仮想ダイヤフラムスプリング310、仮想レリーズベアリング312、仮想レリーズフォーク314を含む構成とされる。仮想クラッチ機構300は、仮想エンジンの仮想クランク軸316を覆うように配置されている。
【0057】
仮想フライホイール302は、仮想クランク軸316に連結され、仮想クランク軸316と共に回転する。仮想クラッチカバー304は、仮想フライホイール302の軸方向における仮想クランク軸316が連結された側とは反対側に連結され、仮想フライホイール302と共に回転する。
【0058】
仮想フライホイール302と仮想クラッチカバー304との間には、仮想フライホイール302側から順に、仮想クラッチディスク306、仮想プレッシャープレート308および仮想ダイヤフラムスプリング310が設けられる。仮想プレッシャープレート308は、軸方向に移動可能に仮想クラッチカバー304に保持される。仮想クラッチディスク306は、後述する仮想回転軸318に連結され、外縁部が仮想フライホイール302および仮想プレッシャープレート308の間に位置する。
【0059】
仮想ダイヤフラムスプリング310は、周方向における所定の位置で屈曲した円盤状に形成され、屈曲する位置で仮想クラッチカバー304により支持される。仮想ダイヤフラムスプリング310は、仮想回転軸318が回転自在に挿通される。
【0060】
仮想ダイヤフラムスプリング310は、仮想クラッチディスク306に支持された位置を基準として、外周縁部が仮想プレッシャープレート308に背面側から当接することにより、仮想プレッシャープレート308を仮想エンジン側に付勢する。また、仮想ダイヤフラムスプリング310は、内周縁部が、軸方向に移動自在に仮想回転軸318に保持された仮想レリーズベアリング312の仮想エンジン側に当接している。
【0061】
仮想レリーズベアリング312は、疑似クラッチペダル150に接続されていると仮定する仮想レリーズフォーク314の一端が接続されている。そして、仮想レリーズベアリング312は、ドライバの疑似クラッチペダル150の操作に応じて、仮想レリーズフォーク314を介して仮想回転軸318の軸方向に移動する。このとき、疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)に応じて、仮想レリーズフォーク314の全長や重量等の構造に基づいた振動や反力(仮想レリーズ特性)が発生する。
【0062】
そして、ドライバによって疑似クラッチペダル150が押し込まれると、仮想レリーズベアリング312が軸方向に沿って仮想エンジン側に移動すると仮定する。また、ドライバによる疑似クラッチペダル150の操作が終了すると、仮想レリーズベアリング312が軸方向に沿って車輪側に移動する。
【0063】
すなわち、仮想クラッチ機構300は、ドライバによって疑似クラッチペダル150が押し込まれると、仮想レリーズベアリング312が仮想エンジン側に移動し、仮想ダイヤフラムスプリング310の内周縁部が仮想レリーズベアリング312によって押し込まれる。このとき、疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)に応じて、仮想ダイヤフラムスプリング310のたわみに基づいた振動や反力(仮想ダイヤフラム特性)が発生する。
【0064】
仮想ダイヤフラムスプリング310の外周側が車輪側に移動すると、仮想プレッシャープレート308に対する付勢が解除され、仮想プレッシャープレート308が仮想クラッチディスク306から離間する。これにより、仮想クラッチ機構300は、仮想フライホイール302と仮想クラッチディスク306との摩擦力がなくなり、仮想フライホイール302から仮想クラッチディスク306への動力の伝達が断たれ、仮想フライホイール302と仮想クラッチディスク306とが相対回転する切断状態になる。
【0065】
また、仮想クラッチ機構300は、ドライバによる疑似クラッチペダル150の操作が終了すると、仮想レリーズベアリング312が車輪側に移動し、仮想ダイヤフラムスプリング310の内周縁部も車輪側に移動する。
【0066】
すると、仮想ダイヤフラムスプリング310の外周側が仮想エンジン側に押し込まれて仮想プレッシャープレート308を付勢し、仮想クラッチディスク306を仮想フライホイール302に付勢する。これにより、仮想クラッチ機構300は、仮想フライホイール302と仮想クラッチディスク306とが摩擦力により一体回転し、仮想フライホイール302から仮想クラッチディスク306への動力が伝達されたクラッチ接続状態になる。
【0067】
このとき、仮想フライホイール302と仮想クラッチディスク306との回転数の差(仮想差回転数)がある場合、仮想差回転数に応じて発生する摩擦力(仮想クラッチフェーシング摩擦力)によって振動や反力が生じる。そして、この発生した摩擦力(仮想クラッチフェーシング摩擦力)は、仮想フライホイール302と仮想クラッチディスク306との回転数の差(仮想差回転数)に応じた減衰特性(仮想クラッチフェーシング減衰特性)に基づいて減衰する。
【0068】
また、仮想クラッチディスク306には、仮想エンジンのトルク変動を吸収するための緩衝装置として不図示の仮想クラッチダンパが備えられている。このとき、仮想エンジン回転数に応じて、仮想クラッチダンパのバネ定数に基づいた振動や反力(仮想クラッチダンパ固有値)が発生する。
【0069】
また、電気自動車100の車体100aの傾斜角度に応じて、電気自動車100の慣性力によって作用される振動や反力(駆動反力)が発生する。
【0070】
本実施形態では、ドライバが疑似クラッチペダル150に対する操作を行った場合に、上記の振動や反力を反映した挙動を疑似クラッチペダル150や車体100aに発生させる。これにより、MT車両を操る楽しさを求めるドライバの感覚に合致したクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高めることが可能となる。
【0071】
図5に戻り、仮想差回転数導出部196dは、仮想エンジン回転数導出部196cによって導出された仮想エンジン回転数と、検出部196bによって検出された駆動輪である前輪114の回転数とに基づいて、仮想差回転数を導出する。
【0072】
具体的には、例えば、仮想差回転数導出部196dは、仮想エンジン回転数と、ドライバによる疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)、および、ドライバにより操作された疑似シフトレバー160の位置(シフトポジション)に応じて、仮想回転軸318の回転数(仮想クラッチディスク306の回転数)を導出する。
【0073】
なお、仮想クラッチ機構300が切られている場合には、仮想差回転数導出部196dは、仮想クラッチ機構300が切られる直前の仮想回転軸318と、仮想クラッチ機構300が切られてからの経過時間とに基づいて、仮想回転軸318の回転数を導出してもよい。
【0074】
そして、仮想差回転数導出部196dは、導出した仮想エンジン回転数(仮想フライホイール302の回転数)と、仮想回転軸318の回転数(仮想クラッチディスク306の回転数)との差(仮想差回転数)を導出し、導出した仮想差回転数を記憶部196oに記憶する。
【0075】
なお、本実施形態では、仮想差回転数を導出するために、仮想回転軸318の回転数(仮想クラッチディスク306の回転数)を導出する場合について示したが、これに限定されるものではない。すなわち、仮想回転軸318の回転数(仮想クラッチディスク306の回転数)を示す指標と、仮想エンジン回転数との差を仮想差回転数として、導出してもよい。
【0076】
図5に戻り、仮想クラッチフェーシング摩擦特性導出部196eは、仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数に基づいて、仮想クラッチフェーシング摩擦特性を導出する。
【0077】
図7は、本実施形態に係る仮想クラッチフェーシング摩擦特性マップの一例を示す概略図である。
図7に示すように、仮想クラッチフェーシング摩擦特性マップは、横軸を仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数、縦軸を仮想クラッチフェーシング摩擦特性とした場合の、MT車両を模擬した両者の関係が規定されている。
図7に示すように、仮想クラッチフェーシング摩擦特性マップでは、仮想差回転数の値が大きくなるにしたがって、仮想クラッチフェーシング摩擦特性の値が大きくなるように規定されている。
【0078】
仮想クラッチフェーシング摩擦特性導出部196eは、
図7に示す仮想クラッチフェーシング摩擦特性マップを参照し、仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数に基づいて、仮想クラッチフェーシング摩擦特性を導出し、記憶部196oに記憶する。
【0079】
図5に戻り、仮想クラッチフェーシング減衰特性導出部196fは、仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数に基づいて、仮想クラッチフェーシング減衰特性を導出する。
【0080】
図8は、本実施形態に係る仮想クラッチフェーシング減衰特性マップの一例を示す概略図である。
図8に示すように、仮想クラッチフェーシング減衰特性マップは、横軸を仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数、縦軸を仮想クラッチフェーシング減衰特性とした場合の、MT車両を模擬した両者の関係が規定されている。
図8に示すように、仮想クラッチフェーシング減衰特性マップでは、仮想差回転数の値が大きくなるにしたがって、仮想クラッチフェーシング減衰特性の値が大きくなるように規定されている。
【0081】
仮想クラッチフェーシング減衰特性導出部196fは、
図8に示す仮想クラッチフェーシング減衰特性マップを参照し、仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数に基づいて、仮想クラッチフェーシング減衰特性を導出し、記憶部196oに記憶する。
【0082】
図5に戻り、仮想レリーズ特性導出部196gは、検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)に基づいて、仮想レリーズ特性を導出する。
【0083】
図9は、本実施形態に係る仮想レリーズ特性マップの一例を示す概略図である。
図9に示すように、仮想レリーズ特性マップは、横軸を検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)、縦軸を仮想レリーズ特性とした場合の、MT車両を模擬した両者の関係が規定されている。
図9に示すように、仮想レリーズ特性マップでは、疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)の値が大きくなるにしたがって、仮想レリーズ特性の値が大きくなるように規定されている。
【0084】
仮想レリーズ特性導出部196gは、
図9に示す仮想レリーズ特性マップを参照し、検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)に基づいて、仮想レリーズ特性を導出し、記憶部196oに記憶する。
【0085】
図5に戻り、仮想ダイヤフラム特性導出部196hは、検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)に基づいて、仮想ダイヤフラム特性を導出する。
【0086】
図10は、本実施形態に係る仮想ダイヤフラム特性マップの一例を示す概略図である。
図10に示すように、仮想ダイヤフラム特性マップは、横軸を検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)、縦軸を仮想ダイヤフラム特性とした場合の、MT車両を模擬した両者の関係が規定されている。
図10に示すように、仮想ダイヤフラム特性マップでは、疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)の値が大きくなるにしたがって、仮想ダイヤフラム特性の値が大きくなるように規定されている。
【0087】
仮想ダイヤフラム特性導出部196hは、
図10に示す仮想ダイヤフラム特性マップを参照し、検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)に基づいて、仮想ダイヤフラム特性を導出し、記憶部196oに記憶する。
【0088】
図5に戻り、駆動反力導出部196iは、検出部196bによって検出された車体100aの傾斜角度に基づいて、駆動反力を導出する。
【0089】
図11は、本実施形態に係る駆動反力マップの一例を示す概略図である。
図11に示すように、駆動反力マップは、横軸を検出部196bによって検出された車体100aの傾斜角度、縦軸を駆動反力とした場合の、MT車両を模擬した両者の関係が規定されている。
図11に示すように、駆動反力マップでは、傾斜角度が正の値をとる場合、すなわち、電気自動車100の進行方向の前方側が上方となる傾斜の場合、車体100aの傾斜角度の値が正の値で大きくなるにしたがって、駆動反力の値が大きくなるように規定されている。
【0090】
なお、実際には、駆動反力マップでは、傾斜角度が不の値をとる場合、すなわち、電気自動車100の進行方向の前方側が下方となる傾斜の場合についても規定されている。この場合、駆動反力も同様に負の値となることが規定されている。そして、車体100aの傾斜角度の負の値が大きくなるにしたがって、駆動反力の負の値が大きくなるように規定されている。
【0091】
駆動反力導出部196iは、
図11に示す駆動反力マップを参照し、検出部196bによって検出された車体100aの傾斜角度に基づいて、駆動反力を導出し、記憶部196oに記憶する。
【0092】
図5に戻り、仮想クラッチダンパ固有値導出部196jは、仮想エンジン回転数導出部196cによって導出された仮想エンジン回転数に基づいて、仮想クラッチダンパ固有値を導出する。
【0093】
図12は、本実施形態に係る仮想クラッチダンパ固有値マップの一例を示す概略図である。
図12に示すように、仮想クラッチダンパ固有値マップは、横軸を仮想エンジン回転数導出部196cによって導出された仮想エンジン回転数、縦軸を仮想クラッチダンパ固有値とした場合の、MT車両を模擬した両者の関係が規定されている。
図12に示すように、仮想クラッチダンパ固有値マップでは、仮想エンジン回転数の値が大きくなるにしたがって、仮想クラッチダンパ固有値の値が一旦大きくなり、その後、さらに仮想エンジン回転数の値が大きくなるにしたがって、仮想クラッチダンパ固有値の値が小さくなるように規定されている。
【0094】
仮想クラッチダンパ固有値導出部196jは、
図12に示す仮想クラッチダンパ固有値マップを参照し、仮想エンジン回転数導出部196cによって導出された仮想エンジン回転数に基づいて、仮想クラッチダンパ固有値を導出し、記憶部196oに記憶する。
【0095】
図5に戻り、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、上記したようにして導出された仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値に基づいて、疑似クラッチペダル150の振動の値を導出し、導出した疑似クラッチペダル150の振動の値を記憶部196oに記憶する。具体的には、例えば、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、疑似クラッチペダル150の振動の値を導出する。
【0096】
また、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、上記したようにして導出された仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値に基づいて、疑似クラッチペダル150の反力の値を導出し、導出した疑似クラッチペダル150の反力の値を記憶部196oに記憶する。具体的には、例えば、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、疑似クラッチペダル150の反力の値を導出する。
【0097】
上記したように、検出部196bによって検出された各値、具体的には、アクセルペダル130の操作量、ドライブシャフト112の回転数や車速、疑似シフトレバー160の位置、疑似クラッチペダル150の操作量および操作有無、車体100aの傾斜角度を用いることで、MT車両における実際のクラッチ操作を模擬した疑似クラッチペダル150の振動や反力を導出することが可能となる。換言すれば、アクセルペダル130の操作量、ドライブシャフト112の回転数や車速、疑似シフトレバー160の位置、疑似クラッチペダル150の操作量および操作有無、車体100aの傾斜角度に応じて疑似クラッチペダル150の振動や反力の値を変化させることが可能となる。これにより、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高めることが可能となる。
【0098】
そして、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われると、疑似クラッチペダル挙動制御部196lは、疑似クラッチペダル挙動導出部196kによって上記のようにして導出された疑似クラッチペダル150の振動および反力の値に基づいて疑似クラッチペダル挙動発生装置170に振動および反力を発生させる。
【0099】
また、車体挙動導出部196mは、上記したようにして導出された仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値に基づいて、電気自動車100の振動の値を導出し、導出した電気自動車100の振動の値を記憶部196oに記憶する。具体的には、例えば、車体挙動導出部196mは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、電気自動車100の振動の値を導出する。
【0100】
また、車体挙動導出部196mは、上記したようにして導出された仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値に基づいて、電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値を導出し、導出した電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値を記憶部196oに記憶する。具体的には、例えば、車体挙動導出部196mは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値を導出する。
【0101】
そして、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われると、車体挙動制御部196nは、車体挙動導出部196mによって上記のようにして導出された電気自動車100の振動の値に基づいて車体振動発生装置180に振動を発生させる。
【0102】
また、ドライバによって疑似クラッチペダル150への操作が行われた場合であって、予め設定されているずり下がり条件が成立した場合には、車体挙動制御部196nは、車体挙動導出部196mによって上記のようにして導出された電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値に基づいてブレーキ機構114aを動作させ、前輪114に対してブレーキ機構114aにより制動力を付与すると共に、後輪116が後退方向へ駆動させることで、車体100aの姿勢変化を発生させる。ずり下がり条件が成立する場合とは、例えば、電気自動車100が進行方向の前方が上方となる斜面に位置している場合であり、かつ、ブレーキペダル140およびアクセルペダル130に対するドライバの操作量(踏込量)がそれぞれ所定値以下である場合とすることができる。
【0103】
上記したように、検出部196bによって検出された各値、具体的には、アクセルペダル130の操作量、ドライブシャフト112の回転数や車速、疑似シフトレバー160の位置、疑似クラッチペダル150の操作量および操作有無、車体100aの傾斜角度を用いることで、MT車両における実際のクラッチ操作を模擬した電気自動車100の車体100aの振動や車体100aの姿勢変化の値を導出することが可能となる。換言すれば、アクセルペダル130の操作量、ドライブシャフト112の回転数や車速、疑似シフトレバー160の位置、疑似クラッチペダル150の操作量および操作有無、車体100aの傾斜角度に応じて電気自動車100の車体100aの振動や車体100aの姿勢変化の値を変化させることが可能となる。これにより、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高めることが可能となる。
以下、本実施形態に係る制御部190における処理の流れについて説明する。
【0104】
図13は、本実施形態に係る制御部190における割込み処理の一例を示すフローチャートである。制御部190は、所定制御周期で訪れる割り込みタイミングごとに、
図13に示す一連の割り込み処理を繰り返す。
【0105】
上記の割り込みタイミングが到来すると、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、各種センサからの情報を取得する情報取得処理(ステップS100)を実行する。この情報取得処理(ステップS100)については、詳しくは後述する。
【0106】
また、電気自動車100の制御部190の走行制御部196aは、上記ステップS100の情報取得処理で取得した各種情報に基づいて、電気自動車100の走行に関する制御を実行する走行制御処理(ステップS102)を実行する。具体的には、走行制御部196aは、アクセルペダル130の操作量(ペダル踏込量)と、疑似クラッチペダル150の操作量(ペダル踏込量)と、疑似シフトレバー160のシフト位置(シフトポジション)とで定まる駆動輪トルクを、MT車両を模擬したモデルを用いて導出する。そして、走行制御部196aは、導出した駆動輪トルクを電気自動車100の駆動輪(前輪114)に与えるためのモータトルクを導出する。そして、走行制御部196aは、導出したモータトルクに基づいた制御指令をインバータ122に送信する。
【0107】
また、電気自動車100の制御部190は、上記ステップS100の情報取得処理で取得した各種情報に基づいて、ドライバによる疑似クラッチペダル150への操作に応じて疑似クラッチペダル150における振動や反力の発生、および、電気自動車100の振動、電気自動車100の車体100aの姿勢変化を発生させるための挙動関連処理(ステップS104)を実行する。この挙動関連処理(ステップS104)については、詳しくは後述する。
【0108】
図14は、本実施形態に係る制御部190における情報取得処理(ステップS100)の一例を示すフローチャートである。電気自動車100の制御部190の検出部196bは、アクセルペダルセンサ130sからの検出信号に基づいて、ドライバによるアクセルペダル130の操作量(ペダル踏込量)を取得し、記憶部196oに記憶する(ステップS100-1)。
【0109】
また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、回転数センサ112sからの検出信号に基づいて、ドライブシャフト112の回転数、および、電気自動車100の車速を取得する(ステップS100-3)。また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、取得したドライブシャフト112の回転数、および、電気自動車100の車速を記憶部196oに記憶する。
【0110】
また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、疑似シフトレバーセンサ160sからの検出信号に基づいて、疑似シフトレバー160の位置、すなわち、シフトポジションを取得する(ステップS100-5)。また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、取得したシフトポジションを記憶部196oに記憶する。
【0111】
また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、疑似クラッチペダルセンサ150sからの検出信号に基づいて、疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作量(ペダル踏込量)を取得する(ステップS100-7)。また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、取得した疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作量(ペダル踏込量)を記憶部196oに記憶する。
【0112】
また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、ブレーキペダルセンサ140sからの検出信号に基づいて、ブレーキペダル140に対するドライバの操作量(ペダル踏込量)を取得する(ステップS100-9)。また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、取得したブレーキペダル140に対するドライバの操作量(ペダル踏込量)を記憶部196oに記憶する。
【0113】
また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、傾斜センサ100sからの検出信号に基づいて、電気自動車100の車体100aの傾斜角度を取得する(ステップS100-11)。また、電気自動車100の制御部190の検出部196bは、取得した車体100aの傾斜角度を記憶部196oに記憶し、当該情報取得処理を終了する。
【0114】
図15は、本実施形態に係る制御部190における挙動関連処理(ステップS104)の一例を示すフローチャートである。電気自動車100の制御部190の仮想エンジン回転数導出部196cは、仮想エンジン回転数を導出する仮想エンジン回転数導出処理を実行する(ステップS104-1)。また、電気自動車100の制御部190の仮想エンジン回転数導出部196cは、導出した仮想エンジン回転数を記憶部196oに記憶する。
【0115】
電気自動車100の制御部190の仮想差回転数導出部196dは、仮想エンジン回転数導出部196cによって導出された仮想エンジン回転数と、検出部196bによって検出された駆動輪である前輪114の回転数とに基づいて、上記したようにして、仮想差回転数を導出する仮想差回転数導出処理を実行する(ステップS104-3)。また、仮想差回転数導出部196dは、導出した仮想差回転数を記憶部196oに記憶する。
【0116】
また、電気自動車100の制御部190の仮想クラッチフェーシング摩擦特性導出部196eは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性マップを参照し、仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数に基づいて、上記したようにして仮想クラッチフェーシング摩擦特性を導出する仮想クラッチフェーシング摩擦特性導出処理を実行する(ステップS104-5)。また、仮想クラッチフェーシング摩擦特性導出部196eは、導出した仮想クラッチフェーシング摩擦特性を記憶部196oに記憶する。
【0117】
また、電気自動車100の制御部190の仮想クラッチフェーシング減衰特性導出部196fは、仮想クラッチフェーシング減衰特性マップを参照し、仮想差回転数導出部196dによって導出された仮想差回転数に基づいて、上記したようにして仮想クラッチフェーシング減衰特性を導出する仮想クラッチフェーシング減衰特性導出処理を実行する(ステップS104-7)。また、仮想クラッチフェーシング減衰特性導出部196fは、導出した仮想クラッチフェーシング減衰特性を記憶部196oに記憶する。
【0118】
また、電気自動車100の制御部190の仮想レリーズ特性導出部196gは、仮想レリーズ特性マップを参照し、検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(踏込量)に基づいて、上記したようにして仮想レリーズ特性を導出する仮想レリーズ特性導出処理を実行する(ステップS104-9)。また、仮想レリーズ特性導出部196gは、導出した仮想レリーズ特性を記憶部196oに記憶する。
【0119】
また、電気自動車100の制御部190の仮想ダイヤフラム特性導出部196hは、仮想ダイヤフラム特性マップを参照し、検出部196bによって検出された疑似クラッチペダル150の操作量(踏込量)に基づいて、上記したようにして仮想ダイヤフラム特性を導出する仮想ダイヤフラム特性導出処理を実行する(ステップS104-11)。また、仮想ダイヤフラム特性導出部196hは、導出した仮想ダイヤフラム特性を記憶部196oに記憶する。
【0120】
また、電気自動車100の制御部190の駆動反力導出部196iは、駆動反力マップを参照し、検出部196bによって検出された電気自動車100の車体100aの傾斜角度に基づいて、上記したようにして駆動反力を導出する駆動反力導出処理を実行する(ステップS104-13)。また、駆動反力導出部196iは、導出した駆動反力を記憶部196oに記憶する。
【0121】
また、電気自動車100の制御部190の仮想クラッチダンパ固有値導出部196jは、仮想クラッチダンパ固有値マップを参照し、仮想エンジン回転数導出部196cによって導出された仮想エンジン回転数に基づいて、上記したようにして仮想クラッチダンパ固有値を導出する仮想クラッチダンパ固有値導出処理を実行する(ステップS104-15)。また、仮想クラッチダンパ固有値導出部196jは、導出した仮想クラッチダンパ固有値を記憶部196oに記憶する。
【0122】
また、電気自動車100の制御部190は、疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作を検出したか否かを判定する(ステップS104-17)。その結果、疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作が検出された場合には(ステップS104-17のYES)、ステップS110に処理を移し、疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作が検出されていない場合には(ステップS104-17のNO)、当該挙動関連処理を終了する。
【0123】
なお、例えば、上記ステップS100-7において記憶した疑似クラッチペダル150の操作量(踏込量)の値が0より大きい場合には、疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作が検出されたと判定し、疑似クラッチペダル150の操作量(踏込量)の値が0である場合には、疑似クラッチペダル150に対するドライバの操作が検出されていないと判定してもよい。
【0124】
また、電気自動車100の制御部190は、上記ステップS104-5~上記ステップS104-15の各処理で導出した各導出値に基づいて、ドライバによる疑似クラッチペダル150への操作に応じて疑似クラッチペダル150における振動や反力を発生させるための疑似クラッチペダル挙動関連処理(ステップS110)を実行する。この疑似クラッチペダル挙動関連処理(ステップS110)については、詳しくは後述する。
【0125】
また、電気自動車100の制御部190は、上記ステップS104-5~上記ステップS104-15の各処理で導出した各導出値に基づいて、ドライバによる疑似クラッチペダル150への操作に応じて電気自動車100の振動、電気自動車100の車体100aの姿勢変化を発生させるための車体挙動関連処理(ステップS120)を実行し、当該挙動関連処理を終了する。この車体挙動関連処理(ステップS120)については、詳しくは後述する。
【0126】
図16は、本実施形態に係る制御部190における疑似クラッチペダル挙動関連処理(ステップS110)の一例を示すフローチャートである。電気自動車100の制御部190の疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、上記したようにして導出された仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値に基づいて、疑似クラッチペダル150の振動の値の導出(ステップS110-1)、および、疑似クラッチペダル150の反力の値の導出(ステップS110-3)を行う。
【0127】
具体的には、例えば、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、疑似クラッチペダル150の振動の値を導出する。また、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、導出した疑似クラッチペダル150の振動の値を記憶部196oに記憶する。
【0128】
また、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、疑似クラッチペダル150の反力の値を導出する。また、疑似クラッチペダル挙動導出部196kは、導出した疑似クラッチペダル150の反力の値を記憶部196oに記憶する。
【0129】
また、電気自動車100の制御部190の疑似クラッチペダル挙動制御部196lは、上記のようにして導出された疑似クラッチペダル150の振動および反力の値に基づいて疑似クラッチペダル挙動発生装置170に振動および反力を発生させ(S110-5)、当該疑似クラッチペダル挙動関連処理を終了する。このように、ドライバによる疑似クラッチペダル150への操作に応じて疑似クラッチペダル150に振動および反力を発生させることにより、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高めることが可能となる。
【0130】
図17は、本実施形態に係る制御部190における車体挙動関連処理(ステップS120)の一例を示すフローチャートである。電気自動車100の制御部190の車体挙動導出部196mは、上記したようにして導出された仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値に基づいて、電気自動車100の振動の値の導出を行う(ステップS120-1)。具体的には、例えば、車体挙動導出部196mは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、電気自動車100の振動の値を導出する。また、車体挙動導出部196mは、導出した電気自動車100の振動の値を記憶部196oに記憶する。
【0131】
また、電気自動車100の制御部190の車体挙動制御部196nは、上記のようにして導出された電気自動車100の振動の値に基づいて車体振動発生装置180に振動を発生させる(S120-3)。
【0132】
また、電気自動車100の制御部190は、予め設定されているずり下がり条件が成立するか否かを判定する(ステップS120-5)。その結果、ずり下がり条件が成立する場合には(ステップS120-5のYES)、ステップS120-7に処理を移し、ずり下がり条件が成立しない場合には(ステップS120-5のNO)、当該車両挙動関連処理を終了する。
【0133】
なお、ずり下がり条件が成立する場合とは、例えば、電気自動車100が進行方向の前方が上方となる斜面に位置している場合であり、かつ、ブレーキペダル140およびアクセルペダル130に対するドライバの操作量(踏込量)がそれぞれ所定値以下である場合とすることができる。換言すれば、慣性力によって車両が後退する力の方が、ブレーキ機構114a、116aの制動力またはモータ102による駆動力よりも大きくなる場合である。すなわち、ブレーキペダル140に対するドライバの操作量(踏込量)が所定値を超えた場合、または、アクセルペダル130に対するドライバの操作量(踏込量)が所定値を超えた場合には、後述するステップS120-7およびステップ120-9の処理が行われず、車体100aの姿勢変化は行われないこととなる。
【0134】
また、電気自動車100の制御部190の車体挙動導出部196mは、上記したようにして導出された仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値に基づいて、電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値を導出する車体姿勢変化関連処理を実行する(ステップS120-7)。具体的には、例えば、車体挙動導出部196mは、仮想クラッチフェーシング摩擦特性、仮想クラッチフェーシング減衰特性、仮想レリーズ特性、仮想ダイヤフラム特性、駆動反力、仮想クラッチダンパ固有値について、それぞれ予め設定された所定の重み付け用の係数を乗算した上で、加算を行い、電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値を導出する。また、車体挙動導出部196mは、導出した電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値を記憶部196oに記憶する。
【0135】
また、電気自動車100の制御部190の車体挙動制御部196nは、上記のようにして導出された電気自動車100の車体100aの姿勢変化の値に基づいて車体100aの姿勢変化を行うための車体姿勢変化制御処理を実行し(ステップS120-9)、当該車体挙動関連処理を終了する。具体的には、電気自動車100の制御部190の車体挙動制御部196nは、ブレーキ機構114aを動作させ、前輪114に対してブレーキ機構114aにより制動力を付与すると共に、後輪116が後退方向へ駆動させることで、車体100aの姿勢変化を発生させる。このように、ドライバによる疑似クラッチペダル150への操作に応じて電気自動車100の振動や、車体100aの姿勢変化を発生させることにより、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高めることが可能となる。
【0136】
以上説明したように、駆動源としてのモータ102を備える電気自動車100において、
加速要求を入力するためのアクセル装置(アクセルペダル130)と、
ドライバによって操作され、変速操作を模擬するための疑似シフト装置(疑似シフトレバー160)と、
ドライバによって操作され、クラッチ操作を模擬するための疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)と、
ドライバによるアクセル装置(アクセルペダル130)、疑似シフト装置(疑似シフトレバー160)、および、疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)への操作態様、駆動輪(後輪116)の回転数、および、車体100aの傾斜角度を検出する検出装置(検出部196b)と、
ドライバによる疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)への操作に対して、疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)へ反力または振動の少なくともいずれかを含む所定の挙動を発生させる挙動発生装置(疑似クラッチペダル挙動発生装置170)と、
疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)に発生させる所定の挙動を決定する制御部190と、
を備え、
制御部190は、
1つまたは複数のプロセッサ192と、
プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリ194と、
を有し、
プロセッサ192は、
検出装置(検出部196b)による検出結果に基づいて、駆動源がエンジンであると仮定した場合のエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数を導出し、
仮想エンジン回転数、ドライバによるアクセル装置(アクセルペダル130)への操作態様、ドライバによる疑似シフト装置(疑似シフトレバー160)への操作態様、および、ドライバによる疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル挙動発生装置170)への操作態様に少なくとも基づいて、疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル挙動発生装置170)に発生させる所定の挙動を決定する。
これにより、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高めることが可能となる。なお、本実施形態では、疑似クラッチペダル150に振動および反力の両者を発生させる場合について示したが、これに限定されるものではなく、疑似クラッチペダル150に振動および反力の少なくともいずれか一方のみを発生させることとしてもよい。
【0137】
また、駆動源としてのモータ102を備える電気自動車100において、
加速要求を入力するためのアクセル装置(アクセルペダル130)と、
ドライバによって操作され、変速操作を模擬するための疑似シフト装置(疑似シフトレバー160)と、
ドライバによって操作され、クラッチ操作を模擬するための疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)と、
ドライバによるアクセル装置(アクセルペダル130)、疑似シフト装置(疑似シフトレバー160)、および、疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)への操作態様、駆動輪(後輪116)の回転数、および、車体100aの傾斜角度を検出する検出装置(検出部196b)と、
ドライバによる疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)への操作に対して、車体100aの振動または車体100aの姿勢変化の少なくともいずれかを含む所定の挙動を発生させる挙動発生装置(車体振動発生装置180、ブレーキ機構114a、インバータ122)と、
車体100aに発生させる所定の挙動を決定する制御部190と、
を備え、
制御部190は、
1つまたは複数のプロセッサ192と、
プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリ194と、
を有し、
プロセッサ192は、
検出装置(検出部196b)による検出結果に基づいて、駆動源がエンジンであると仮定した場合のエンジン回転数を模擬した仮想エンジン回転数を導出し、
仮想エンジン回転数、ドライバによるアクセル装置(アクセルペダル130)への操作態様、ドライバによる疑似シフト装置(疑似シフトレバー160)への操作態様、および、ドライバによる疑似クラッチ装置(疑似クラッチペダル150)への操作態様に少なくとも基づいて、車体100aに所定の挙動を決定する。
これにより、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を高めることが可能となる。なお、本実施形態では、電気自動車100の車体100aの振動および車体100aの姿勢変化の両者を発生させる場合について示したが、これに限定されるものではなく、車体100aの振動および車体100aの姿勢変化の少なくともいずれか一方のみを発生させることとしてもよい。
【0138】
また、制動力を車輪(前輪114)に付与するブレーキ装置(ブレーキ機構114a)を、
備え、
制御部190は、
所定の挙動として、ブレーキ装置(ブレーキ機構114a)を動作させて所定の車輪(前輪114)に制動力を付与し、モータ102を動作させて所定の車輪(前輪114)と異なる車輪(後輪116)を後退方向に駆動することで、車体100aの姿勢変化を発生させてもよい。
これにより、所謂、坂道発進時の車体100aが斜面に沿って後方にずり下がる挙動を疑似的に再現することが可能となる。
【0139】
また、プロセッサ192は、
所定の挙動の決定において、車体100aの傾斜角度の大きさに応じて、所定の挙動を変化させてもよい。
これにより、MT車両におけるクラッチ操作を疑似的に再現する際の再現性を更に高めることが可能となる。
【0140】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0141】
なお、上述した本実施形態に係る電気自動車100による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせのうちいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部または外部に設けられる非一時的な記憶媒体(non-transitory media)に予め格納される。そして、プログラムは、例えば、非一時的な記憶媒体(例えば、ROM)から一時的な記憶媒体(例えば、RAM)に読み出され、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0142】
また、上述した実施形態によれば、上記電気自動車100の各機能の処理を実行するためのプログラムを提供することができる。さらに、当該プログラムが格納された、コンピュータにより読み取り可能な非一時的な記録媒体を提供することもできる。非一時的な記録媒体は、例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のディスク型記録媒体であってもよいし、または、フラッシュメモリ、USBメモリ等の半導体メモリであってもよい。
【符号の説明】
【0143】
100 電気自動車
102 モータ
100a 車体
114 前輪
114a ブレーキ機構
116 後輪
116a ブレーキ機構
122 インバータ
130 アクセルペダル
140 ブレーキペダル
150 疑似クラッチペダル
160 疑似シフトレバー
170 疑似クラッチペダル挙動発生装置
180 車体振動発生装置
190 制御部
192 プロセッサ
194 メモリ
196b 検出部