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特開2024-43346推奨システム、推奨方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043346
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】推奨システム、推奨方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240322BHJP
   B66B 1/18 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G05B23/02 X
B66B1/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148478
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 良介
(72)【発明者】
【氏名】会津 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】松江 清高
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英光
(72)【発明者】
【氏名】槇岡 良祐
(72)【発明者】
【氏名】杉原 俊雄
【テーマコード(参考)】
3C223
3F502
【Fターム(参考)】
3C223AA21
3C223AA23
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB02
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF23
3C223FF24
3C223FF26
3C223FF42
3C223FF43
3C223GG01
3C223HH08
3F502HB02
3F502JA32
3F502JA33
3F502JA38
(57)【要約】
【課題】需要の変化に応じた制御対象の動作モードを推奨することが可能な推奨システム、推奨方法及びプログラムを提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る推奨システムは、格納手段と、取得手段と、抽出手段と、決定手段と、出力手段とを具備する。格納手段は、制御対象の利用に関する利用データが分類される複数のクラスタの各々に対応づけて予め用意されている当該制御対象の複数の動作モードのうちの推奨すべき動作モードを含む推奨データを格納する。取得手段は、第1時間帯における制御対象の利用に関する第1利用データを取得する。抽出手段は、取得された第1利用データから第1特徴量を抽出する。決定手段は、抽出された第1特徴量に基づいて、第1利用データが分類されるクラスタを決定する。出力手段は、決定されたクラスタに対応づけて推奨データに含まれる動作モードを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の動作モードを推奨する推奨システムにおいて、
前記制御対象の利用に関する利用データが分類される複数のクラスタの各々に対応づけて予め用意されている当該制御対象の複数の動作モードのうちの推奨すべき動作モードを含む推奨データを格納する格納手段と、
第1時間帯における前記制御対象の利用に関する第1利用データを取得する取得手段と、
前記取得された第1利用データから第1特徴量を抽出する抽出手段と、
前記抽出された第1特徴量に基づいて、前記第1利用データが分類されるクラスタを決定する決定手段と、
前記決定されたクラスタに対応づけて前記推奨データに含まれる動作モードを出力する出力手段と
を具備する推奨システム。
【請求項2】
前記推奨データは、第1時間帯よりも前の第2時間帯における前記制御対象の利用に関する複数の第2利用データの各々から第2特徴量を抽出し、当該抽出された第2特徴量に基づいて前記複数の第2利用データの各々を前記複数のクラスタに分類し、前記複数のクラスタの各々に分類された第2利用データの一部のデータをサンプルデータとしてサンプリングし、当該サンプルデータに基づいて前記クラスタ毎に前記推奨すべき動作モードを決定することによって生成される請求項1記載の推奨システム。
【請求項3】
前記サンプルデータは、前記複数のクラスタの各々に分類された第2利用データのうちの予め定められた条件を満たすデータである請求項2記載の推奨システム。
【請求項4】
前記推奨すべき動作モードは、予め定められている数のサンプルデータに基づいて決定される請求項3記載の推奨システム。
【請求項5】
前記サンプルデータの数は、前記推奨すべき動作モードを決定するための処理時間、前記第2利用データの数に対するサンプルデータの数の割合及び前記推奨すべき動作モードの精度のうちの少なくとも1つに基づいて変更される請求項4記載の推奨システム。
【請求項6】
前記複数のクラスタの各々に分類された第2利用データのデータ量が予め定められた量よりも多い場合に、当該クラスタに分類された第2利用データの一部がサンプルデータとしてサンプリングされる請求項2記載の推奨システム。
【請求項7】
前記クラスタの数は、前記制御対象の動作モードの数に基づいて決定される請求項2記載の推奨システム。
【請求項8】
前記推奨すべき動作モードは、前記サンプルデータに基づいて前記制御対象の動作をシミュレーションすることによって得られる指標、前記サンプルデータに基づいて前記制御対象を実際に動作させることによって得られる指標、または前記サンプルデータに応じた過去の前記制御対象の運用実績を示す実績データから得られる指標に基づいて決定される請求項2記載の推奨システム。
【請求項9】
前記複数のクラスタの各々に分類された第2利用データから複数のサンプルデータがサンプリングされた場合、前記推奨すべき動作モードは、前記指標に基づいて前記複数のサンプルデータの各々について決定された動作モードに基づいて決定される請求項8記載の推奨システム。
【請求項10】
前記決定手段は、前記抽出された第1特徴量と、前記複数のクラスタの各々に分類されている第2利用データの各々から抽出された第2特徴量に基づく当該クラスタ毎のセントロイドとに基づいて、前記第1利用データと前記複数のクラスタの各々との距離を計算し、前記計算された距離に基づいて前記第1利用データが分類されるクラスタを決定し、
前記距離は、前記制御対象の現在の動作モードに基づいて調整される
請求項2記載の推奨システム。
【請求項11】
前記制御対象は、昇降機を含み、
前記第1及び第2利用データは、前記昇降機を利用した複数の利用者の各々の出発階及び到着階を含み、
前記第1及び第2特徴量は、前記第1及び第2利用データに含まれる複数の利用者の各々の出発階及び到着階に基づいて特定される上り方向に移動する利用者の数、下り方向に移動する利用者の数、予め定められている基準階以外を出発階及び到着階とする利用者の数、下り方向に移動する利用者の数を超過した上り方向に移動する利用者の数、及び上り方向に移動する利用者の数を超過した下り方向に移動する利用者の数のうちの少なくとも1つを含む
請求項2記載の推奨システム。
【請求項12】
前記第1及び第2特徴量は、正規化されている請求項11記載の推奨システム。
【請求項13】
前記制御対象は、昇降機を含み、
前記指標は、前記サンプルデータに基づいて全ての利用者を移動させた場合の前記昇降機の消費電力に基づいて計算される消費エネルギー、各利用者の待ち時間及び各利用者に対するサービス時間に基づいて計算される性能指数、前記昇降機内の積載荷重に基づいて計算される快適指数のうち少なくとも1つを含む
請求項8記載の推奨システム。
【請求項14】
制御対象の動作モードを推奨する推奨システムが実行する推奨方法であって、
前記制御対象の利用に関する利用データが分類される複数のクラスタの各々に対応づけて予め用意されている当該制御対象の複数の動作モードのうちの推奨すべき動作モードを含む推奨データを格納手段に格納することと、
第1時間帯における前記制御対象の利用に関する第1利用データを取得することと、
前記取得された第1利用データから第1特徴量を抽出することと、
前記抽出された第1特徴量に基づいて、前記第1利用データが分類されるクラスタを決定することと、
前記決定されたクラスタに対応づけて前記推奨データに含まれる動作モードを出力することと
を具備する推奨方法。
【請求項15】
前記推奨データは、第1時間帯よりも前の第2時間帯における前記制御対象の利用に関する複数の第2利用データの各々から第2特徴量を抽出し、当該抽出された第2特徴量に基づいて前記複数の第2利用データの各々を前記複数のクラスタに分類し、前記複数のクラスタの各々に分類された第2利用データの一部のデータをサンプルデータとしてサンプリングし、当該サンプルデータに基づいて前記クラスタ毎に前記推奨すべき動作モードを決定することによって生成される請求項14記載の推奨方法。
【請求項16】
制御対象の動作モードを推奨する推奨システムのコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記制御対象の利用に関する利用データが分類される複数のクラスタの各々に対応づけて予め用意されている当該制御対象の複数の動作モードのうちの推奨すべき動作モードを含む推奨データを格納手段に格納することと、
第1時間帯における前記制御対象の利用に関する第1利用データを取得することと、
前記取得された第1利用データから第1特徴量を抽出する第1ことと、
前記抽出された第1特徴量に基づいて、前記第1利用データが分類されるクラスタを決定することと、
前記決定されたクラスタに対応づけて前記推奨データに含まれる動作モードを出力することと
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
前記推奨データは、第1時間帯よりも前の第2時間帯における前記制御対象の利用に関する複数の第2利用データの各々から第2特徴量を抽出し、当該抽出された第2特徴量に基づいて前記複数の第2利用データの各々を前記複数のクラスタに分類し、前記複数のクラスタの各々に分類された第2利用データの一部のデータをサンプルデータとしてサンプリングし、当該サンプルデータに基づいて前記クラスタ毎に前記推奨すべき動作モードを決定することによって生成される請求項16記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、推奨システム、推奨方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、昇降機(エレベータ)または空調機等のビル設備(以下、制御対象と表記)の動作は、所定の動作モードで制御されることが知られている。
【0003】
なお、制御対象の動作を制御するための動作モードは例えば当該制御対象を管理する管理者の指示または所定の条件(時間帯等)に従って決定されるが、制御対象に対する需要は時々刻々と変化する。
【0004】
このため、単に管理者の指示または所定の条件等に従って決定される動作モードでは、需要の変化に適した制御対象の動作を実現することができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-226460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、需要の変化に応じた制御対象の動作モードを推奨することが可能な推奨システム、推奨方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、制御対象の動作モードを推奨する推奨システムが提供される。前記推奨システムは、格納手段と、取得手段と、抽出手段と、決定手段と、出力手段とを具備する。前記格納手段は、前記制御対象の利用に関する利用データが分類される複数のクラスタの各々に対応づけて予め用意されている当該制御対象の複数の動作モードのうちの推奨すべき動作モードを含む推奨データを格納する。前記取得手段は、第1時間帯における前記制御対象の利用に関する第1利用データを取得する。前記抽出手段は、前記取得された第1利用データから第1特徴量を抽出する。前記決定手段は、前記抽出された第1特徴量に基づいて、前記第1利用データが分類されるクラスタを決定する。前記出力手段は、前記決定されたクラスタに対応づけて前記推奨データに含まれる動作モードを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る推奨システムを含むネットワーク構成の一例を示す図。
図2】学習装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】推奨装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図4】学習装置の機能構成の一例を示す図。
図5】推奨装置の機能構成の一例を示す図。
図6】学習装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
図7】人流データのデータ構造の一例を示す図。
図8】特徴量データのデータ構造の一例を示す図。
図9】クラスタ番号が追記された特徴量データのデータ構造の一例を示す図。
図10】推奨データ生成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図11】運転モードが追記された特徴量データのデータ構造の一例を示す図。
図12】推奨データのデータ構造の一例を示す図。
図13】推奨データ生成処理の他の例を示すフローチャート。
図14】推奨装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
図15】クラスタ決定処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図16】本実施形態の変形例について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る推奨システムを含むネットワーク構成の一例を示す。図1に示すように、推奨システム1は、人流システム2及び昇降機システム3と、インターネットのようなネットワーク4を介して通信可能に接続されている。
【0010】
人流システム2は、例えばオフィスビルのような所定のビル(以下、対象ビルと表記)に設置されている昇降機を利用する人の流れを示す人流データ(つまり、対象ビル内における昇降機の利用に基づく人流に関するデータ)を任意のタイミングで収集(集計)及び出力するように構成されている。
【0011】
昇降機システム3は、上記した対象ビルに設置されている昇降機及び当該昇降機の運転を制御する昇降機制御装置等を備える。本実施形態において、昇降機システム3は、例えば群管理システムを含む。群管理システムは、複数の昇降機(乗りかご)を群管理制御する機能を有する。このような群管理システムによれば、例えば利用者が昇降機を利用する際に複数の昇降機の中から最適な昇降機(乗りかご)を選択することによって、当該利用者の効率的な移動を実現することができる。以下、本実施形態における昇降機システム3が群管理システムであるものとして説明するが、当該昇降機システム3は、群管理システム以外の昇降機システムであってもよい。
【0012】
なお、昇降機システム3において、昇降機制御装置は、例えば予め用意されている複数の運転モードを切り替えながら昇降機の運転を制御する。昇降機システム3が上記した群管理システムである場合、当該昇降機システム3において予め用意されている複数の運転モードには、例えば通常運転モード、閑散運転モード、出勤運転モード、昼食運転モード及び退勤運転モード等が含まれる。通常運転モードは、他の運転モードのような特殊な制御を行わない運転モードである。閑散運転モードは、例えば昇降機を利用する利用者の数が少なく、利用者が昇降機に乗車する出発階(乗車階)及び当該利用者が昇降機から降車する到着階(降車階)に特定の傾向がないような場合に、複数の昇降機を異なる階床に分散して配置しておく運転モードである。出勤運転モードは、出勤時には多くの利用者がエントランスホール(基準階)から乗車するという傾向に基づいて、全ての利用者が当該昇降機から降車し、当該昇降機に対する呼びが残っていないときに、当該昇降機を基準階に移動させるように、当該昇降機の運転を制御する運転モードである。昼食運転モードは、昼食時の前半では、多くの利用者が食堂のある階(食堂階)で降車するという傾向に基づいて、乗場で発生する呼びのうち、食堂階の方を向いた呼びを優先して昇降機を割り当て、昼食時の後半は、多くの利用者が食堂のある階(食堂階)で乗車するという傾向に基づいて、食堂階の乗場で発生する呼びに対し、複数の昇降機を割り当てるように、当該昇降機の運転を制御する運転モードである。退勤運転モードは、退勤時には多くの利用者がエントランスホール(基準階)で降車するという傾向に基づいて、利用者が基準階で降車した場合に当該昇降機を基準階以外に移動させるように、当該昇降機の運転を制御する運転モードである。
【0013】
また、昇降機システム3(群管理システム)においては、例えば複数の昇降機のうちの一部を対象ビルの高層階用の昇降機として運転させ、他部を対象ビルの低層階用の昇降機として運転させるような制御を実現することも可能である。
【0014】
本実施形態に係る推奨システム1は、上記した人流システム2において収集された人流データによって示される人の流れの変化(つまり、昇降機に対する需要の変化)に応じた昇降機の運転モードを昇降機システム3に対して推奨するために用いられる。
【0015】
なお、図1に示すように、推奨システム1は、学習装置11及び推奨装置12を備える。本実施形態においては、推奨システム1が別個の装置として学習装置11及び推奨装置12を備えるものとして説明するが、当該学習装置11及び推奨装置12は1つの装置として実現されてもよい。また、本実施形態において学習装置11及び推奨装置12のうちの一方または両方は、対象ビル内に設置されていてもよいし、クラウドコンピューティングサービスを提供するサーバ装置であってもよい。更に、本実施形態に係る推奨システム1は、学習装置及び推奨装置のうちの一方のみを備える構成であってもよい。
【0016】
以下、本実施形態に係る推奨システム1に備えられる学習装置11及び推奨装置12について説明する。まず、学習装置11及び推奨装置12のハードウェア構成について説明する。
【0017】
図2は、学習装置11のハードウェア構成の一例を示す。図2に示すように、学習装置11は、CPU11a、不揮発性メモリ11b、RAM11c及び通信デバイス11d等を備える。
【0018】
CPU11aは、学習装置11内の各コンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU11aは、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。CPU11aは、不揮発性メモリ11bからRAM11cにロードされる様々なプログラムを実行する。本実施形態においてCPU11aによって実行されるプログラムには、学習プログラム11eが含まれる。
【0019】
不揮発性メモリ11bは、補助記憶装置として用いられる記憶媒体である。RAM11cは、主記憶装置として用いられる記憶媒体である。図2においては、不揮発性メモリ11b及びRAM11cのみが示されているが、学習装置11は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
【0020】
通信デバイス11dは、外部装置との通信を実行するように構成されたデバイスである。なお、学習装置11が通信を実行する外部装置には、例えば人流システム2及び推奨装置12等が含まれる。
【0021】
図3は、推奨装置12のハードウェア構成の一例を示す。図3に示すように、推奨装置12は、CPU12a、不揮発性メモリ12b、RAM12c及び通信デバイス12d等を備える。
【0022】
CPU12aは、推奨装置12内の各コンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU12aは、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。CPU12aは、不揮発性メモリ12bからRAM12cにロードされる様々なプログラムを実行する。本実施形態においてCPU12aによって実行されるプログラムには、推奨プログラム12eが含まれる。
【0023】
不揮発性メモリ12bは、補助記憶装置として用いられる記憶媒体である。RAM12cは、主記憶装置として用いられる記憶媒体である。図3においては、不揮発性メモリ12b及びRAM12cのみが示されているが、推奨装置12は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
【0024】
通信デバイス12dは、外部装置との通信を実行するように構成されたデバイスである。なお、推奨装置12が通信を実行する外部装置には、例えば人流システム2、昇降機システム3及び学習装置11等が含まれる。
【0025】
次に、学習装置11及び推奨装置12の機能構成について説明する。図4は、学習装置11の機能構成の一例を示す。図4に示すように、学習装置11は、データ取得部111、特徴量抽出部112、クラスタリング部113、推奨データ生成部114及び格納部115を含む。
【0026】
なお、データ取得部111、特徴量抽出部112、クラスタリング部113及び推奨データ生成部114の一部または全ては、例えばCPU11a(つまり、学習装置11のコンピュータ)が学習プログラム11eを実行すること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。この学習プログラム11eは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネットワークを通じて学習装置11にダウンロードされてもよい。
【0027】
ここでは各部111~114の一部または全てがソフトウェアによって実現されるものとして説明したが当該各部111~114の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成によって実現されてもよい。
【0028】
また、格納部115は、例えば不揮発性メモリ11bまたは他の記憶装置等によって実現されるものとする。
【0029】
データ取得部111は、人流システム2において例えば所定の期間(時間帯)毎に収集された複数の人流データを当該人流システム2から取得(受信)する。データ取得部111によって取得された複数の人流データは、格納部115に格納(蓄積)される。なお、格納部115に格納されている複数の人流データは、対象ビル内における過去の人の流れを示す人流データの集合(つまり、過去の人流データ)に相当する。ここでは、データ取得部111によって取得された複数の人流データが格納部115に格納されるものとして説明したが、当該複数の人流データは、予め格納部115に格納されていても構わない。
【0030】
特徴量抽出部112は、格納部115に蓄積(格納)されている複数の人流データを当該格納部115から取得し、当該複数の人流データの各々から、当該人流データによって示される人の流れの特徴を表す特徴量を抽出する。特徴量抽出部112によって抽出された特徴量を含むデータ(以下、特徴量データと表記)は、格納部115に格納される。
【0031】
クラスタリング部113は、格納部115に格納された特徴量データ(に含まれる特徴量)に基づいて、当該格納部115に格納されている複数の人流データを複数のクラスタに分類する(つまり、当該複数の人流データに対するクラスタリングを実施する)。クラスタリング部113によるクラスタリング結果は、格納部115に格納される。
【0032】
推奨データ生成部114は、例えばクラスタリング部113によって複数のクラスタの各々に分類された複数の人流データのうちの一部のデータをサンプルデータとしてサンプリングする。推奨データ生成部114は、サンプリングされたサンプルデータに基づいて、上記した複数の人流データが分類されたクラスタ毎に、予め用意されている複数の運転モードのうちの1つの運転モードを当該クラスタに分類された人流データによって示される人の流れに応じた運転モード(つまり、推奨すべき運転モード)として決定する。推奨データ生成部114は、クラスタ毎に決定された運転モードを示す推奨データ(つまり、当該クラスタに対応づけて当該クラスタについて決定された運転モードを含む推奨データ)を生成する。このように推奨データ生成部114によって生成された推奨データは、推奨装置12に出力され、当該推奨装置12が昇降機の運転モードを推奨する際に用いられる。
【0033】
すなわち、本実施形態において、学習装置11は、過去の人流データ(から抽出された特徴量を含む特徴量データ)を学習して、昇降機の運転モードを推奨するために用いられる推奨データを生成する処理(学習処理)を実行するように動作する。
【0034】
図5は、推奨装置12の機能構成の一例を示す。図5に示すように、推奨装置12は、データ取得部121、特徴量抽出部122、クラスタ決定部123、運転モード決定部124及び格納部125を含む。
【0035】
なお、データ取得部121、特徴量抽出部122、クラスタ決定部123及び運転モード決定部124の一部または全ては、例えばCPU12a(つまり、推奨装置12のコンピュータ)が推奨プログラム12eを実行すること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。この推奨プログラム12eは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネッワークを通じて推奨装置12にダウンロードされてもよい。
【0036】
ここでは各部121~124の一部または全てがソフトウェアによって実現されるものとして説明したが当該各部121~124の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成によって実現されてもよい。
【0037】
また、格納部125は、例えば不揮発性メモリ12bまたは他の記憶装置等によって実現されるものとする。
【0038】
データ取得部121は、上記した学習装置11(に含まれる推奨データ生成部114)から出力(送信)された推奨データを取得(受信)する。データ取得部121によって取得された推奨データは、格納部125に格納される。
【0039】
また、データ取得部121は、人流システム2において収集された人流データを当該人流システム2から取得(受信)する。データ取得部121によって取得される人流データは、例えば対象ビル内における現在の人の流れ(利用者の移動)を示す人流データ(つまり、現在の人流データ)に相当し、特徴量抽出部122に出力される。
【0040】
特徴量抽出部122は、データ取得部121から出力された人流データから、当該人流データによって示される人の流れの特徴を表す特徴量を抽出する。特徴量抽出部122によって抽出された特徴量を含む特徴量データは、クラスタ決定部123に出力される。
【0041】
クラスタ決定部123は、特徴量抽出部122から出力された特徴量に基づいて、データ取得部121によって取得された人流データが分類されるクラスタを決定する。この場合、クラスタ決定部123は、上記した学習装置11において複数の人流データが分類された複数のクラスタの中から1つのクラスタを決定(判別)する。
【0042】
運転モード決定部124は、格納部125に格納された推奨データ及びクラスタ決定部123によって決定されたクラスタに基づいて、当該クラスタに対応づけて当該推奨データに含まれる運転モードを、昇降機システム3に対して推奨すべき昇降機の運転モード(つまり、現在の人流データによって示される人の流れに応じた運転モード)として決定する。運転モード決定部124によって決定された運転モードは、昇降機システム3に出力(送信)され、当該昇降機システム3における昇降機の運転を制御するために用いられる。
【0043】
すなわち、本実施形態において、推奨装置12は、現在の人流データから抽出された特徴量を含む特徴量データに基づいて当該人流データが分類されるクラスタを決定し、当該決定されたクラスタに対応する運転モードを昇降機システム3に推奨する処理(推奨処理)を実行するように動作する。
【0044】
以下、本実施形態に係る推奨システム1(学習装置11及び推奨装置12)の動作について説明する。
【0045】
まず、図6のフローチャートを参照して、学習装置11(によって実行される学習処理)の処理手順の一例について説明する。なお、図6に示す処理は、例えば推奨システム1(学習装置11)の管理者の指示(つまり、外部からの要求)に従って実行されてもよいし、例えば予め定められた時刻に到達した等の所定の条件を満たした場合に実行されてもよい。
【0046】
特徴量抽出部112は、格納部115に格納されている過去の人流データを当該格納部115から取得する(ステップS1)。なお、過去の人流データとは、上記したように人流システム2において過去に収集された人流データの集合(複数の人流データ)である。ここでは格納部115に格納されている過去の人流データが取得されるものとして説明したが、当該過去の人流データは、例えばデータ取得部111を介して、当該過去の人流データを管理する外部装置等から取得(受信)されても構わない。
【0047】
ここで、図7を参照して、ステップS1において取得される過去の人流データ(のうちの1つ人流データ)のデータ構造の一例について説明する。
【0048】
図7に示すように、人流データは、当該人流データが収集された日時を含む。図7に示す例では、人流データには、日時「2020/02/18 10:30」が含まれている。なお、上記したように人流データは所定の期間毎に収集されるが、当該所定の期間が5分間であるものとすると、図7に示す人流データは、2020年2月18日の10時30分から10時35分までの5分間の対象ビル内の人の流れ(昇降機を利用した利用者の移動)を示している。
【0049】
また、図7に示すように、人流データは、対象ビルに設置されている昇降機を利用した複数の利用者の各々の出発階(昇降機に乗車した乗車階)及び到着階(昇降機から降車した降車階)に対応づけて当該出発階から当該到着階に移動した利用者の数を含む。図7に示す例では、人流データには、例えば出発階「2F」及び到着階「9F」に対応づけて「4」が含まれている。これによれば、上記した2020年2月18日の10時30分から10時35分までの5分間に2Fから9Fに移動した利用者の数が4であることが示されている。また、図7に示す例では、人流データは、例えば出発階「9F」及び到着階「1F」に対応づけて「7」を含む。これによれば、2020年2月18日の10時30分から10時35分までの5分間に9Fから1Fに移動した利用者の数が7であることが示されている。
【0050】
なお、図7に示す人流データは、OD(Origin-Destination)表と称され、所定の期間毎に発生した利用者の移動を階床(フロア)及び方向毎に集計することによって生成される。このような人流データを生成するためには、昇降機を利用した利用者の出発階及び到着階を認識する必要があるが、当該利用者の出発階及び到着階は、例えば昇降機が着床する各階床に設置されているセキュリティゲートから取得される当該セキュリティゲートの通過データ(当該セキュリティゲートを利用者が通過したことを示すデータ)を利用して認識することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、例えばデータ取得部111が人流システム2から人流データ(OD表)を取得し、当該人流データが格納部115に格納される(つまり、人流データは人流システム2側で生成される)場合を想定しているが、データ取得部111は、人流データを生成するためのデータ(つまり、セキュリティゲートの通過データ)を取得し、当該データに基づいて人流データを生成する構成であってもよい。つまり、本実施形態は、データ取得部111によって生成された(つまり、学習装置11側で生成された)人流データが格納部115に格納される構成であってもよい。
【0052】
また、ここではセキュリティゲートの通過データを利用して人流データが生成されることについて説明したが、上記した利用者の出発階及び到着階は、例えばビーコンまたはカメラ(つまり、顔認証)等を利用して認識してもよい。
【0053】
なお、図7においては人流データがOD表の形式のデータであるものとして説明したが、当該人流データは、他の形式のデータであっても構わない。
【0054】
ここでは主に過去の人流データに含まれる1つの人流データについて説明したが、上記したように格納部115には所定の期間(例えば、5分間)毎に収集された複数の人流データが過去の人流データとして格納されており、ステップS1においては当該複数の人流データが取得される。なお、人流データが収集される所定の期間は5分間以外であってもよい。
【0055】
再び図6に戻ると、特徴量抽出部112は、ステップS1において取得された過去の人流データの各々から特徴量を抽出する(ステップS2)。
【0056】
以下、ステップS2において抽出される特徴量について具体的に説明する。ここでは、ステップS2において、5つの特徴量(以下、特徴量1~5と表記)が抽出されるものとする。
【0057】
まず、特徴量1は、上り方向に移動する利用者の数(上り方向の人数)を含む。また、特徴量2は、下り方向に移動する利用者の数(下り方向の人数)を含む。更に、特徴量3は、予め定められた基準階(例えば、エントランスホール等)以外を出発階及び到着階とする利用者の数(階間交通量)を含む。また、特徴量4は、下り方向に移動する利用者の数を超過した上り方向に移動する利用者の数(上り超過人数)を含む。更に、特徴量5は、上り方向に移動する利用者の数を超過した下り方向に移動する利用者の数(下り超過人数)を含む。
【0058】
なお、特徴量1は、上記した過去の人流データの各々において上り方向に対応する出発階及び到着階に対応づけられている利用者の数の合計値(つまり、図7に示すOD表の対角線右上半分の値の合計)を計算することによって抽出(特定)される。また、特徴量2は、上記した過去の人流データの各々において下り方向に対応する出発階及び到着階に対応づけられている利用者の数の合計値(つまり、図7に示すOD表の対角線左下半分の値の合計)を計算することによって抽出(特定)される。ここでは、特徴量1及び2について説明したが、他の特徴量3~5についても過去の人流データの各々(に含まれる各利用者の出発階及び到着階)に基づいて特定(抽出)することができる。なお、例えば下り方向に移動する利用者が上り方向に移動する利用者の数よりも多い場合、特徴量4は0であるものとする。同様に、例えば上り方向に移動する利用者が下り報告に移動する利用者の数よりも多い場合、特徴量5は0であるものとする。
【0059】
また、上記した特徴量1~5は、正規化されても構わない。この場合、特徴量1~5は、例えば当該特徴量1~5が抽出された人流データに基づいて計算(特定)される総利用者数(全交通量)で除算することによって正規化することができる。このように正規化された場合、特徴量1は上り方向の人数比、特徴量2は下り方向の人数比、特徴量3は階間交通量比、特徴量4は上り超過人数比、特徴量5は下り超過人数比となる。
【0060】
また、特徴量1~5はステップS1において取得された過去の人流データの各々から抽出されるが、当該特徴量1~5は、当該過去の人流データの各々に基づいて計算される総利用者数の最大値(最大交通量)で除算することによって正規化されてもよい。また、特徴量1~5は、過去の人流データの各々から抽出された特徴量1~5の各々の最大値または当該特徴量1~5の各々の最大値の中の最大値で除算することによって正規化されてもよい。
【0061】
上記した特徴量1~5を正規化するためのパラメータ値(例えば、全交通量等)は、ステップS2の処理が実行される時点で特徴量抽出部112によって決定(計算)されてもよいし、予め設定値(固定値)として格納部115に格納されていてもよい。また、ここで説明した特徴量1~5を正規化するためのパラメータ値は、一例であり、上記した人流データから所定の観点に基づいて特定される利用者の数の最大値、最小値、平均値またはこれらを組み合わせた計算式によって計算される値等であればよい。
【0062】
ステップS2の処理が実行されると、特徴量抽出部112は、当該ステップS2において抽出された特徴量を含む特徴量データを格納部115に格納する。
【0063】
ここで、図8は、特徴量データのデータ構造の一例を示す。図8に示すように、特徴量データは、人流データに含まれる日時及び当該人流データから抽出された特徴量1~5を含む。なお、特徴量データは、例えば日時に基づいて人流データに対応づけられた、特徴量1~5の各々を成分とするベクトルデータであるといえる。
【0064】
日時は、特徴量データに含まれる特徴量1~5が抽出された人流データが収集された日時(時間帯)を示す。特徴量1~5は、特徴量データに対応する人流データ(当該特徴量データと同一の日時を含む人流データ)から抽出された特徴量である。なお、図8においては、正規化された特徴量1~5が示されている。
【0065】
図8においては1つの特徴量データのみが示されているが、当該特徴量データは、ステップS1において取得された人流データ毎に格納部115に格納される(つまり、格納部115には過去の人流データの各々に対応する複数の特徴量データが格納される)。
【0066】
再び図6に戻ると、クラスタリング部113は、格納部115に格納された複数の特徴量データ(つまり、ステップS2において過去の人流データの各々から抽出された特徴量を含む特徴量データ)を用いて、当該過去の人流データに対するクラスタリングを実施する(ステップS3)。
【0067】
ステップS3におけるクラスタリングは、例えば非階層型クラスタリングのアルゴリズムであるk平均法に基づいて実施される。k平均法によれば、クラスタの中心値(以下、セントロイドと表記)に近い特徴量データを当該クラスタに割り当て、当該セントロイドを再度計算するような処理を繰り返すことによって、ベクトルデータの成分に相当する複数の特徴量の傾向が類似する複数の特徴量データに対応する複数の人流データを同一のクラスタに分類することができる。ここではクラスタリングがk平均法に基づいて実施される例を示したが、他のアルゴリズムを用いてもよい。
【0068】
なお、上記したように特徴量データ(人流データ)をクラスタリングする機械学習モデル(以下、クラスタモデルと表記)は、格納部115に格納されている。クラスタモデルは、過去の人流データが分類される複数のクラスタの各々に割り当てられているクラスタ番号及び当該クラスタのセントロイド等のクラスタリングに必要なデータを保持する。
【0069】
また、k平均法におけるハイパーパラメータであるクラスタの数(例えば、N個)は、ステップS3の処理が実行される時点でクラスタリング部113によって決定されてもよいし、予め設定値(固定値)として格納部115に格納されていてもよい。本実施形態において、クラスタの数は昇降機の運転モードの数(推奨される運転モードの候補の数)としているが、当該昇降機の運転モードの数に関係しない任意の正の数であってもよく、例えば人流データから所定の観点に基づいて特定される利用者の数の最大値、最小値、平均値またはこれらを組み合わせた計算式によって計算される値を用いて決定されてもよい。
【0070】
ステップS3の処理の結果(つまり、クラスタリング結果)は、格納部115に格納される。クラスタリング結果はクラスタ及び当該クラスタに分類された人流データ(特徴量データ)との対応関係を把握することができる態様で格納部115に格納されればよいが、一例としては、図9に示すように人流データが分類されたクラスタに割り当てられているクラスタ番号が当該人流データに対応する特徴量データに追記されるものとする。図9に示す例では、当該図9に示す特徴量データに対応する人流データが分類されたクラスタに割り当てられているクラスタ番号が1であることが示されている。図示しないが、例えば格納部115に格納されている過去の人流データの各々に対して、当該人流データが分類されたクラスタに割り当てられているクラスタ番号を付加するようにしてもよい。
【0071】
ステップS3の処理が実行されると、推奨データ生成部114は、上記したクラスタリング結果に基づいて推奨データを生成する処理(以下、推奨データ生成処理と表記)を実行する(ステップS4)。
【0072】
以下、図10のフローチャートを参照して、上記した推奨データ生成処理の処理手順の一例について説明する。なお、推奨データ生成処理が実行される際には、上記した図6に示すステップS3において実施されたクラスタリングの結果に基づいて、クラスタ毎に、過去の人流データ(及び当該人流データに対応する特徴量データ)が整理(グループ化)されているものとする。
【0073】
まず、推奨データ生成部114は、上記した過去の人流データが分類された複数のクラスタのうちの1つのクラスタを選択する(ステップS11)。以下、ステップS11において選択されたクラスタをクラスタiと称する。
【0074】
ここで、推奨データ生成部114は、クラスタiに分類された複数の人流データのうちの一部のデータをサンプリングするサンプリング部を含む。これにより、推奨データ生成部114は、サンプリング部によってクラスタiに分類された複数の人流データの中からサンプリングされたサンプルデータ(クラスタiに分類された複数の人流データのうちの例えば1つの人流データ)を取得する(ステップS12)。上記したようにクラスタリング結果(クラスタ番号)が特徴量データに追記されている場合、ステップS12においては、クラスタiに割り当てられているクラスタ番号が追記されている特徴量データに対応する人流データ(当該特徴量データと日時が同一の人流データ)の中からサンプルデータが取得される。
【0075】
なお、サンプルデータは、クラスタiに分類された複数の人流データのうちの任意の人流データであればよいが、例えば当該複数の人流データのうちの予め定められた条件(以下、フィルタリング条件と表記)を満たす人流データであってあってもよい。フィルタリング条件には、例えば上記した全交通量(総利用者数)が予め定められた値よりも多い(または0でない)こと等が含まれるものとする。このようなフィルタリング条件によれば、対象ビル内における人の流れを適切に示していない人流データがサンプルデータとして取得されることを回避することができる。フィルタリング条件は、推奨データを生成する(運転モードを決定する)ために適さない人流データを外れ値として除外するような条件であればよく、ここで説明した条件以外であってもよい。なお、フィルタリング条件は、例えば設定値として格納部115に格納されているものとする。以下、ステップS12において取得されたサンプルデータをサンプルデータjと称する。
【0076】
ステップS12の処理が実行されると、推奨データ生成部114は、昇降機の複数の運転モードのうちの1つの運転モードを選択する(ステップS13)。なお、昇降機の運転モードの一覧(を示すデータ)は、例えば設定値として予め格納部115に格納されているものとする。以下、ステップS13において選択された運転モードを運転モードkと称する。
【0077】
ここで、推奨データ生成部114は、サンプルデータj(によって示される人の流れ)に対して運転モードkを適用した際の昇降機の運転をシミュレーションするシミュレーション部を有する。シミュレーション部は、例えば昇降機システム3(群管理システム)を模擬したシミュレータ(昇降機モデル)を保持しており、サンプルデータj(人流データ)によって示される人の流れ(つまり、出発階から到着階までの各利用者の移動)を実現するように当該シミュレータにおいて運転モードkで昇降機を運転する(つまり、昇降機の運転をシミュレーションする)。推奨データ生成部114は、このようなシミュレーション部によるシミュレーション結果を取得する(ステップS14)。
【0078】
ステップS14において取得されるシミュレーション結果は、例えば消費エネルギー、性能指数及び快適指数のうちの少なくとも1つを、昇降機の運転をシミュレーションすることによって得られる指標として含む。消費エネルギーは、例えばサンプルデータに含まれる出発階から到着階まで全ての利用者を移動させた場合の昇降機の消費電力等に基づいて計算される。性能指数は、例えばサンプルデータに含まれる出発階から到着階まで全ての利用者を移動させた場合の各利用者の待ち時間及び各利用者に対するサービス時間等に基づいて計算される。なお、サービス時間とは、利用者が乗場に到着(乗場で呼びが発生)してから行先階で降車する(昇降機が行先階に到着する)までの時間(つまり、待ち時間+乗車時間)をいう。快適指数は、例えばサンプルデータに含まれる出発階から到着階まで全ての利用者を移動させた場合の昇降機(乗りかご)内の積載荷重(つまり、乗車人数)等に基づいて計算される。なお、ここではシミュレーション結果に消費エネルギー、性能指数及び快適指数のうちの少なくとも1つが含まれるものとして説明したが、当該シミュレーション結果には、サンプルデータjによって示される人の流れに対して運転モードkを適用すべきか否かを判断するために有用な指標が含まれていればよい。
【0079】
ステップS14において取得されたシミュレーション結果は、推奨データ生成部114の内部に保持される。
【0080】
ステップS14の処理が実行されると、全ての運転モードについて処理が実行された(つまり、全ての運転モードのシミュレーション結果が取得された)か否かが判定される(ステップS15)。
【0081】
全ての運転モードについて処理が実行されていないなと判定された場合(ステップS15のNO)、ステップS13に戻って処理が繰り返される。この場合、処理が実行されてない運転モードがステップS13において選択され、ステップS14の処理が実行される。
【0082】
一方、全ての運転モードについて処理が実行されたと判定された場合(ステップS15のYES)、推奨データ生成部114は、サンプルデータjの運転モードを決定する(ステップS16)。
【0083】
ここで、上記したように全ての運転モードについてステップS13及びS14の処理が実行された(つまり、全ての運転モードとの総当たりのシミュレーションが行われた)と判定された場合、推奨データ生成部114の内部には、当該運転モード毎のシミュレーション結果が保持されている。このシミュレーション結果には、当該シミュレーションによって得られる指標として、上記した消費エネルギー、性能指数及び快適指数のうちの少なくとも1つが含まれている。
【0084】
この場合、例えば特定の運転モードのシミュレーション結果に含まれる消費エネルギーが低い場合には、当該運転モードは、サンプルデータjによって示される人の流れ(人流の状況)に対して省エネルギー効果が高く、当該人の流れに適した運転モードであるといえる。また、特定の運転モードのシミュレーション結果に含まれる性能指数が高い場合には、当該運転モードは、サンプルデータjによって示される人の流れ(人流の状況)に対して効率的に利用者を移動させることができ、当該人の流れに適した運転モードであるといえる。更に、特定の運転モードのシミュレーション結果に含まれる快適指数が高い場合には、当該運転モードは、サンプルデータjによって示される人の流れ(人流の状況)において利用者を快適な状態で移動させることができ、当該人の流れに適した運転モードであるといえる。
【0085】
ステップS16においては、上記した観点に基づいて最もよいシミュレーション結果(消費エネルギー、性能指数及び快適指数のうちの少なくとも1つ)が得られた運転モードが、サンプルデータjの運転モード(当該サンプルデータjによって示される人の流れに適した運転モード)として決定される。
【0086】
ステップS16において決定されたサンプルデータjの運転モード(つまり、サンプルデータjに対して決定された運転モード)は、格納部115に格納される。具体的には、サンプルデータjの運転モードは、例えば図11に示すように当該サンプルデータj(人流データ)に対応する特徴量データに追記される。図11に示す例では、サンプルデータjの運転モードが運転モードXであることが示されている。図示しないが、例えばサンプルデータjの運転モード(を示すデータ)は、格納部115に格納されている当該サンプルデータj(人流データ)に付加されてもよい。
【0087】
ステップS16の処理が実行されると、サンプルデータの数が所定数に到達した(つまり、所定数のサンプルデータの運転モードが決定された)か否かが判定される(ステップS17)。
【0088】
サンプルデータの数が所定数に到達していないと判定された場合(ステップS17のNO)、ステップS12に戻って処理が繰り返される。なお、この場合、上記したステップS12において取得されたサンプルデータとは異なる人流データが新たなサンプルデータとして取得(サンプリング)され、ステップS13以降の処理が実行される。
【0089】
一方、サンプルデータの数が所定数に到達したと判定された場合(ステップS17のYES)、推奨データ生成部114は、クラスタiの運転モードを決定する(ステップS18)。
【0090】
ステップS18においては、クラスタiに分類された複数の人流データの中からサンプリングされた所定数のサンプルデータの各々の運転モードが格納部115に格納されている当該サンプルデータに対応する特徴量データから取得され、当該取得された運転モードに基づいてクラスタiの運転モードが決定される。この場合、クラスタiの運転モードは、例えば所定数のサンプルデータの各々の運転モードのうちの出現頻度が最大の運転モードとする(つまり、多数決によって決定する)ことができる。
【0091】
なお、ここではサンプルデータの数が所定数に到達したと判定された場合にステップS18の処理が実行されるものとして説明したが、例えばクラスタiに分類された人流データの数が所定数よりも少ない(つまり、当該人流データのデータ量が所定量よりも少ない)場合には、当該人流データの全てについてステップS12~S16の処理が実行された後に、ステップS18の処理が実行されればよい。
【0092】
ステップS18の処理が実行されると、全てのクラスタについて処理が実行された(つまり、全てのクラスタの運転モードが決定された)か否かが判定される(ステップS19)。
【0093】
全てのクラスタについて処理が実行されていないと判定された場合(ステップS19のNO)、ステップS11に戻って処理が繰り返される。この場合、処理が実行されていないクラスタがステップS11において選択され、ステップS12以降の処理が実行される。
【0094】
一方、全てのクラスタについて処理が実行されたと判定された場合(ステップS19のYES)、推奨データ生成部114は、ステップS18において決定されたクラスタの各々の運転モードを示す推奨データを生成する(ステップS20)。
【0095】
ここで、図12は、上記した推奨データ生成処理が実行されることによって生成される推奨データのデータ構造の一例を示す。
【0096】
図12に示すように、推奨データは、例えばクラスタに割り当てられているクラスタ番号と当該クラスタの運転モードとの関係性を示す表形式のデータであり、当該クラスタ番号及び当該運転モードを対応づけて含む。
【0097】
図12に示す例では、推奨データは、クラスタ番号「1」及び運転モード「運転モードX」を含む。これによれば、クラスタ番号「1」が割り当てられているクラスタに分類されている人流データによって示される人の流れに適した運転モードが運転モードXである(つまり、当該クラスタに分類されている人流データの場合には運転モードXが推奨されるべきである)ことが示されている。
【0098】
また、推奨データは、クラスタ番号「2」及び運転モード「運転モードY」を含む。これによれば、クラスタ番号「2」が割り当てられているクラスタに分類されている人流データによって示される人の流れに適した運転モードが運転モードYである(つまり、当該クラスタに分類されている人流データの場合には運転モードYが推奨されるべきである)ことが示されている。
【0099】
更に、推奨データは、クラスタ番号「3」及び運転モード「運転モードZ」を含む。これによれば、クラスタ番号「3」が割り当てられているクラスタに分類されている人流データによって示される人の流れに適した運転モードが運転モードZである(つまり、当該クラスタに分類されている人流データの場合には運転モードZが推奨されるべきである)ことが示されている。
【0100】
ここではクラスタ番号「1」~「3」が割り当てられているクラスタの運転モードについて説明したが、推奨データには、過去の人流データが分類された他のクラスタに割り当てられているクラスタ番号及び当該クラスタの運転モードが更に含まれる。
【0101】
なお、上記したようにクラスタの運転モードは当該クラスタ(に分類された複数の人流データの中)からサンプリングされたサンプルデータの運転モードの多数決によって決定されるため、推奨データには、当該サンプルデータの運転モードの偏り(当該運転モードが分散した程度)等を示す付加情報が更に含まれていてもよい。図12に示す例では、付加情報は、例えば所定数のサンプルデータの運転モードのうちのクラスタの運転モードとして決定された運転モードの割合を示している。
【0102】
このように推奨データ生成処理が実行されることによって生成された推奨データは、学習装置11から推奨装置12に出力(転送)され、当該推奨装置12に含まれる格納部125に格納される。
【0103】
ところで、図10に示す推奨データ生成処理においてはステップS17においてサンプルデータの数が所定数に到達したと判定された場合にステップS18の処理が実行される(つまり、クラスタの運転モードは所定数のサンプルデータに基づいて決定される)ものとして説明したが、クラスタの運転モードを決定するために用いられるサンプルデータの数(つまり、サンプルデータのサンプリングを終了するタイミング)は、変更されてもよい。
【0104】
具体的には、ステップS18の処理は、例えばサンプルデータの数が所定数に到達していない場合であっても、クラスタiについての処理時間(クラスタiの運転モードを決定するための処理時間)が所定時間を超えた場合またはクラスタiに分類された複数の人流データの数に対するサンプルデータの数の割合(以下、クラスタに対するサンプルデータの割合と表記)が所定の割合に到達した場合に実行されてもよい。
【0105】
更に、クラスタの運転モードを決定するために用いられるサンプルデータの数は、当該クラスタの運転モードの精度に基づいて変更されてもよい。
【0106】
ここで、図13を参照して、上記したようにクラスタの運転モードの精度に基づいてサンプルデータの数が変更される場合の推奨データ生成処理の処理手順の一例について説明する。ここでは、上記した図10に示す推奨データ生成処理と異なる点についてのみ説明する。
【0107】
図13に示す推奨データ生成処理においては、例えばステップS18の処理が実行されると、当該ステップS18において決定されたクラスタiの運転モードの精度が高いか否かが判定される(ステップS21)。クラスタiの運転モードの精度が高いと判定された場合(ステップS21のYES)、上記したステップS19の処理が実行される。一方、クラスタiの運転モードの精度が高くないと判定された場合(ステップS21のNO)、ステップS12に戻って処理が繰り返される。
【0108】
なお、ステップS21においては、例えばステップS12~S18の処理が繰り返し実行されることによって当該ステップS18において決定された複数の運転モードが同一の運転モードであるまたは当該複数の運転モードのうちの予め定められた割合以上が同一の運転モードである(つまり、当該複数のクラスタの運転モードの偏りが小さく、一致度が高い)場合に、クラスタiの運転モードの精度が高い(クラスタiの運転モードが収束した)と判定される。このようにクラスタiの運転モードの精度が高いと判定された場合には、当該精度が高いと判定された運転モード(収束した運転モード)がクラスタiの運転モードとして採用される。
【0109】
ここでは、サンプルデータのサンプリングを終了するタイミングを判定するための条件(以下、サンプリング終了条件と表記)として、サンプルデータが所定数に到達すること(以下、第1条件と表記)、処理時間が所定時間を超えたこと(以下、第2条件と表記)、クラスタに対するサンプルデータの割合が所定の割合を超えたこと(以下、第3条件と表記)及びクラスタの運転モードの精度が高いこと(以下、第4条件と表記)について説明したが、当該サンプリング終了条件は、当該第1~第4条件のうちの1つであればよいが、当該第1~第4条件のうちの少なくとも2つを組み合わせたものであってもよい。
【0110】
なお、図10に示す推奨データ生成処理においては全てのクラスタについてステップS11~S18の処理が繰り返し実行されるものとして説明したが、各クラスタに分類されている人流データ及び当該人流データに対応する特徴量データ(当該クラスタ内のデータ)は独立しているため、当該各クラスタについて実行されるステップS11~S18の処理は並列化されても構わない。このような構成によれば、推奨データ生成処理に要する処理時間(計算時間)を短縮することが可能となる。ここでは各クラスタについて実行されるステップS11~S18の処理を並列化することについて説明したが、例えば各運転モードについて実行されるステップS12及びS13の処理が並列化されてもよい。更に、図10に示す推奨データ生成処理においてはステップS12~S16の処理が所定数分のサンプルデータについて繰り返し実行されるものとして説明したが、当該ステップS12において所定数のサンプルデータが取得され、当該サンプルデータの各々についてステップS13~S16の処理が実行されるような構成とすることも可能である。
【0111】
なお、上記した学習処理(図6に示す処理)は推奨データを生成するために少なくとも1度実行されればよいが、例えば格納部115に人流データが追加された場合には、当該人流データを用いた学習処理を再度実行することによって推奨データを更新するようにしてもよい(つまり、学習処理は定期的に実行されてもよい)。
【0112】
次に、図14のフローチャートを参照して、推奨装置12(によって実行される推奨処理)の処理手順の一例について説明する。なお、図14に示す処理は、例えば推奨システム1(推奨装置12)の管理者の指示(つまり、外部からの要求)に従って実行されてもよいし、例えば予め定められた時刻に到達した等の所定の条件を満たした場合に実行されてもよい。
【0113】
ここでは、上記した学習装置11(に含まれる推奨データ生成部114)から出力された推奨データが格納部125に格納されているものとする。
【0114】
まず、データ取得部121は、人流システム2において収集された現在の人流データ(現在の人の流れ示す人流データ)を取得する(ステップS31)。
【0115】
なお、ステップS31において取得される現在の人流データは、上記した学習装置11によって実行された学習処理において用いられた過去の人流データが収集された時間帯よりも後の時間帯に人流システム2において収集された人流データであればよく、例えば現在時刻に人流システム2において収集された人流データに限られない。
【0116】
また、ステップS31において取得される現在の人流データのデータ構造は、上記した図7において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。ただし、上記した図6に示すステップS1においては過去の人流データとして複数の人流データが取得されるが、ステップS31においては、現在の人流データとして例えば1つの人流データが取得されるものとする。
【0117】
また、ステップS31においては人流データ(OD表)が人流システム2から取得されるものとして説明したが、データ取得部121は、当該人流データを作成するためのデータを人流システム2から取得し、当該データに基づいて人流データを生成(取得)する構成であってもよい。なお、推奨処理においては後述するようにシミュレーションを行う必要がない(つまり、必ずしも人流データを取得しなければならないわけではない)ため、ステップS31においては、特徴量を取得(抽出)することが可能なデータが取得されればよい。これによれば、データ取得部121によって取得されるデータ量を削減することができる可能性がある。
【0118】
ステップS31の処理が実行されると、特徴量抽出部122は、当該ステップS31において取得されたデータ(例えば、現在の人流データ)から特徴量を抽出する(ステップS32)。
【0119】
なお、上記した図6に示すステップS2においては過去の人流データの各々から特徴量を抽出するものとして説明したが、ステップS32の処理は、当該ステップS2における過去の人流データを現在の人流データとした点以外は当該ステップS2の処理と同様の処理である。このため、ここではステップS32の処理についての詳しい説明を省略する。
【0120】
また、ステップS32において特徴量を正規化する場合、当該正規化のためのパラメータ値(例えば、全交通量等)は、ステップS32の処理が実行される時点で特徴量抽出部122によって決定(計算)されてもよいし、予め設定値(固定値)として格納部125に格納されていてもよい。
【0121】
ステップS32の処理が実行されると、クラスタ決定部123は、ステップS32において抽出された特徴量を含む特徴量データに基づいて、ステップS31において取得された現在の人流データが分類されるクラスタを決定する処理(以下、クラスタ決定処理と表記)を実行する(ステップS33)。なお、ステップS33において実行されるクラスタ決定処理は、学習処理時に過去の人流データが分類された複数のクラスタのうち現在の人流データに最も近いクラスタを決定する処理に相当する。このクラスタ決定処理の詳細については後述する。
【0122】
次に、運転モード決定部124は、格納部125に格納されている推奨データ及びステップS33(クラスタ決定処理)において決定されたクラスタに基づいて、ステップS31において取得された現在の人流データによって示される人の流れに適した運転モード(つまり、昇降機システム3に推奨する運転モード)を決定する(ステップS34)。ステップS34においては、クラスタ決定処理において決定されたクラスタに割り当てられているクラスタ番号に対応づけて推奨データに含まれる運転モードが、現在の人流データによって示される人の流れに適した運転モードとして決定される。
【0123】
ステップS34において決定された運転モード(を示すデータ)は、昇降機システム3に対して出力(送信)される(ステップS35)。
【0124】
上記した図14に示す推奨処理が実行されることにより、昇降機システム3(昇降機制御装置)は、推奨装置12から出力された運転モードで昇降機の運転を制御することができる。
【0125】
ここではステップS34において決定された運転モードが自動的に昇降機システム3に適用される(つまり、昇降機の運転モードが自動的に変更される)場合を想定しているが、当該運転モードは、昇降機システム3を管理する管理者に提示されてもよい。これによれば、管理者は、推奨装置12(に含まれる運転モード決定部124)から出力された運転モードを参考にして、昇降機の運転を制御するための運転モードを変更するか否かを判断することができる。
【0126】
なお、上記したように推奨データに付加情報が含まれている場合、例えば上記したクラスタ決定処理において決定されたクラスタに割り当てられているクラスタ番号に対応づけて推奨データに含まれている付加情報を運転モードとともに昇降機システム3に出力する(管理者に提示する)構成としてもよい。この場合、管理者は、推奨装置12から出力された付加情報(例えば、上記した推奨データ生成処理においてクラスタの運転モードが決定された際に用いられたサンプルデータの運転モードの偏り)を更に参考にして、運転モードを変更するか否かを判断することができる。
【0127】
次に、図15のフローチャートを参照して、上記したクラスタ決定処理の処理手順の一例について説明する。
【0128】
クラスタ決定部123は、上記した学習処理において過去の人流データが分類された複数のクラスタのうちの1つのクラスタを選択する(ステップS41)。なお、上記したように学習装置11に含まれる格納部115には複数のクラスタ番号及び当該クラスタ番号が割り当てられているクラスタのセントロイド等のクラスタリングに必要なデータを保持するクラスタモデルが格納されていると説明したが、推奨装置12に含まれる格納部125には、当該クラスタモデルと同一のクラスタモデルが格納されているものとする。ステップS41においては、このようなクラスタモデルに保持されている複数のクラスタ番号のうちの1つのクラスタ番号が割り当てられている1つのクラスタが選択される。以下、ステップS41において選択されたクラスタをクラスタiと称する。
【0129】
次に、クラスタ決定部123は、上記した図14に示すステップS31において取得された現在の人流データとクラスタiとの距離を計算する(ステップS42)。
【0130】
ここで、上記したクラスタモデルには各クラスタのセントロイドが保持されているが、現在の人流データに対応する特徴量データが上記した図8において説明したように例えば特徴量1~5を成分とするベクトルデータであるものとすると、クラスタiのセントロイドは、当該特徴量1~5と同数の成分によって当該クラスタiの中心値を示すデータであるものとする。ステップS42においては、このような特徴量データ及びクラスタiのセントロイドの対応する成分同士の差分に基づいて、当該特徴量データに対応する現在の人流データと当該クラスタiとの距離が計算される。具体的には、現在の人流データとクラスタiとの距離は、例えばL2ノルムによって計算される。
【0131】
上記したステップS42において計算された現在の人流データとクラスタiとの距離は、クラスタ決定部123の内部に保持される。
【0132】
ステップS42の処理が実行されると、全てのクラスタについて処理が実行された(つまり、全てのクラスタについて現在の人流データとの距離が計算された)か否かが判定される(ステップS43)。
【0133】
全てのクラスタについて処理が実行されていないと判定された場合(ステップS43のNO)、ステップS41に戻って処理が繰り返される。この場合、処理が実行されていないクラスタがステップS41において選択され、ステップS42の処理が実行される。
【0134】
一方、全てのクラスタについて処理が実行されたと判定された場合(ステップS43のYES)、ステップS41及びS42の処理が繰り返し実行されることによって、クラスタ決定部123の内部には、全てのクラスタについて現在の人流データとの距離が保持されている。この場合、クラスタ決定部123は、当該クラスタ決定部123の内部に保持されている距離に基づいて、現在の人流データとの距離が最も短いクラスタを決定する(ステップS44)。
【0135】
上記した図15に示すクラスタ決定処理においては、現在の人流データから抽出された特徴量を含む特徴量データ及びクラスタモデルに保持されている各クラスタのセントロイドを用いて、当該現在の人流データに最も近いクラスタを決定することができる。
【0136】
ところで、本実施形態においては上記したように現在の人流データによって示される人の流れに適した運転モードを昇降機システム3に推奨し、昇降機の運転を制御する運転モードを自動的に変更することが可能であるが、昇降機システム3において安定した昇降機の運転を実現するためには、当該運転モードを頻繁に変更することは好ましくない。
【0137】
しかしながら、上記した推奨処理が比較的短い間隔で(つまり、リアルタイムに)実行された場合には、運転モードが頻繁に変更される(つまり、時間方向にばたつく)場合があり、昇降機の安定した運転を阻害する可能性がある。
【0138】
そこで、本実施形態においては、このような運転モードが頻繁に変更されることを抑制する(運転モードの時間方向のばたつきを低減する)ための処理(以下、チャタリング除去処理と表記)が実行される構成であってもよい。
【0139】
チャタリング除去処理の一例としては、上記したステップS42において計算された現在の人流データとクラスタiとの距離を例えば現在の昇降機の運転モードに基づいて調整することが考えられる。これによれば、例えばクラスタiがステップS44において決定された場合に現在の昇降機の運転モードを変更することになるような場合には、当該クラスタiについて計算された距離にペナルティを与える(例えば、当該距離に予め定められている距離を加算する)ことによって、現在の昇降機の運転モードが容易に変更されないようにすることができる。
【0140】
具体的には、例えば現在の人流データとクラスタ1(クラスタ番号が1であるクラスタ)との距離が距離1であり、現在の人流データとクラスタ2(クラスタ番号が2であるクラスタ)との距離が距離2であり、現在の昇降機の運転モードが運転モードX(クラスタ1の運転モード)である場合、距離2にペナルティとして距離αを加算する。これによれば、例えば距離1が距離2よりも長い場合であっても、距離1が距離2+αよりも短い場合には、現在の人流データに最も近いクラスタとしてクラスタ1が決定される(つまり、クラスタ1の運転モードである運転モードXが昇降機システム3に推奨される)ため、昇降機の運転モードが変更されることを抑制することができる。なお、ペナルティは、設定値として予め格納部125に格納されているものとする。
【0141】
更に、チャタリング除去処理の他の例としては、例えば現在の昇降機の運転モードに対応するクラスタ(つまり、当該運転モードに対応づけて推奨データに含まれるクラスタ番号が割り当てられているクラスタ)について計算された距離を推奨処理が実行される度に累積し、当該累積された距離が閾値を超えた場合に現在の昇降機の運転モードが変更される(つまり、現在の昇降機の運転モードとは異なる運転モードを推奨する)ような構成とすることも可能である。
【0142】
なお、上記した現在の昇降機の運転モードは昇降機システム3(に備えられる昇降機制御装置)から取得することが可能であるが、当該現在の昇降機の運転モードとしては、例えば過去(直前)に推奨装置12において決定された運転モード(昇降機システム3に出力された運転モード)を利用してもよい。
【0143】
また、上記したチャタリング除去処理は、例えば複数のクラスタ間の距離(複数のクラスタの各々のセントロイドに基づいて計算される距離)、現在の人流データと複数のクラスタの各々との距離、当該距離の比率、当該距離または比率の合計値、または当該距離または比率の積分値等を利用して実行されてもよい。
【0144】
なお、上記した図14に示す推奨処理においてはステップS31において取得された現在の人流データ(または当該人流データから抽出された特徴量データ)に基づいてリアルタイムに運転モードを推奨するような場合を想定しているが、当該推奨処理は、例えば1日分の人流データ(複数の人流データ)の各々について実行されてもよい。このような推奨処理によれば、1日分の人流データの各々について運転モードを決定することによって、1日を通した運転モードのスケジュール(つまり、次の日の運転モードのスケジュール等)を作成する(推奨する)ようなことが可能となる。
【0145】
上記したように本実施形態において、推奨装置12は、昇降機を利用する人の流れ(利用者の移動)を示す人流データが分類される複数のクラスタの各々に対応づけて推奨すべき運転モードを含む推奨データを格納部125に格納し、現在の人流データ(第1時間帯において人流システム2において収集された第1人流データ)を取得し、当該取得された人流データから特徴量(第1特徴量)を抽出し、当該抽出された特徴量(を含む特徴量データ)に基づいて、現在の人流データが分類されるクラスタを決定し、当該決定されたクラスタに対応づけて推奨データに含まれる運転モードを出力する。
【0146】
なお、上記した格納部125に格納される推奨データは、学習装置11によって生成される。具体的には、学習装置11は、過去の人流データ(第1時間帯よりも前の第2時間帯において人流システム2において収集された第2人流データ)の各々から特徴量(第2特徴量)を抽出し、当該抽出された特徴量(を含む特徴量データ)に基づいて当該過去の人流データの各々を複数のクラスタに分類し、当該複数のクラスタの各々に分類された人流データの一部のデータをサンプルデータとしてサンプリングし、当該サンプルデータに基づいてクラスタ毎に推奨すべき運転モードを決定することによって、当該クラスタに対応づけて当該運転モードを含む推奨データを生成する。
【0147】
本実施形態においては、このような構成により、昇降機に対する需要の変化(現在の人流データによって示される人の流れの変化)に応じた適切な運転モードを推奨することが可能となる。
【0148】
ところで、例えば昇降機の運転モードを推奨する構成(以下、本実施形態の第1比較例と表記)としては、例えば当該昇降機の運転モードを推奨する前に、当該運転モードの各々を適用した際の昇降機の運転をシミュレーションし、当該シミュレーション結果に基づいて推奨すべき運転モードを決定することが考えられる。しかしながら、このような本実施形態の第1比較例においては、推奨すべき運転モードを決定する度に昇降機の運転をシミュレーションする必要があり、当該運転モードを推奨する処理(推奨処理)に係る計算コスト及び計算時間が増加することが懸念される。実際にシステムを運用する際には、制御時間やハードウェアの計算リソースによる制約に従って、計算コスト及び計算時間を最小限に抑えることが好ましい。
【0149】
これに対して、本実施形態においては、上記したように学習装置11によって予め生成された推奨データを用いて推奨すべき運転モードが決定される(つまり、運転モードを推奨する推奨処理においてはシミュレーションが不要である)ため、当該推奨処理に係る計算コスト及び計算時間を削減することができる。
【0150】
更に、本実施形態の第2比較例として、過去の人流データの全てに対して運転モードの各々を適用した際の昇降機の運転をシミュレーションすることによって予め推奨データを生成しておくことが考えられる。しかしながら、過去の人流データのデータ数が多い場合には、推奨データを生成する処理(学習処理)に係る計算コスト及び計算時間(つまり、シミュレーションコスト)が増加する。
【0151】
これに対して、本実施形態においては、過去の人流データを間引いて(つまり、過去の人流データからサンプルデータをサンプリングして)シミュレーションするため、当該シミュレーション回数を削減し、結果として推奨データを生成する処理に係る計算コスト及び計算時間を削減することができる。
【0152】
更に、例えば過去の人流データをランダムにサンプリングして推奨データを生成することによって計算コスト及び計算時間を削減するものとすると、当該サンプリングされる人流データに偏りが生じ、生成される推奨データの精度が低下することが懸念される。しかしながら、本実施形態においては、クラスタリングが実施されることにより特徴量の傾向が類似する人流データの集合となるように予めグループ分けし、当該グループ(クラスタ)の各々からサンプリングされたサンプルデータ(特徴量の傾向が類似する人流データ)を利用して推奨データを生成する。これにより、本実施形態においては、推奨データの精度を保ちながら計算コスト及び計算時間を削減することが可能となる。
【0153】
なお、本実施形態におけるサンプルデータは、複数のクラスタの各々に分類された複数の人流データのうちの予め定められた条件を満たすデータである。本実施形態においては、このような構成により、例えば外れ値に相当する人流データをサンプリングの対象外とすることができるため、サンプルデータに基づいて決定される運転モード(サンプルデータに基づいて生成される推奨データ)の精度を向上させることができる。
【0154】
また、本実施形態において推奨データに含まれる運転モード(つまり、昇降機システム3に推奨すべき運転モード)は例えば予め定められている数(所定数)のサンプルデータに基づいて決定されるが、当該サンプルデータの数は、予め定められた処理時間、クラスタに分類された人流データの数に対するサンプルデータの数の割合(クラスタに対するサンプルデータの割合)及び推奨すべき運転モードの精度のうちの少なくとも1つに基づいて変更(決定)される構成であっても構わない。このような構成によれば、例えばサンプルデータの数が所定数に到達していない場合であっても、例えば処理時間が所定時間(予め定められた処理時間)を超えた場合、クラスタに対するサンプルデータの割合が所定の割合を超えた場合または推奨すべき運転モード(決定された運転モード)の精度が高い場合には、サンプルデータのサンプリングを終了するようなことが可能となり、計算コスト及び計算時間を更に削減することができる可能性がある。
【0155】
更に、本実施形態においては複数のクラスタの各々に分類された複数の人流データの一部のデータがサンプルデータとしてサンプリングされるが、当該サンプリングは、当該クラスタに分類された人流データのデータ量が所定量(予め定められた値)よりも多い場合に行われるようにしてもよい。
【0156】
また、本実施形態においては過去の人流データに対してクラスタリングが実施されることによって当該過去の人流データが複数のクラスタに分類されるが、当該クラスタの数は、昇降機の運転モードの数に基づいて決定されるものとする。この場合、例えばクラスタの数を昇降機の運転モードの数と同数とすることが考えられるが、このような構成によれば、例えば複数のクラスタの各々に対応づけて異なる運転モードを含む推奨データが生成されることによって、当該クラスタ毎に適切に運転モードを推奨することが可能となる。
【0157】
ここではクラスタの数を昇降機の運転モードの数と同数とする場合について説明したが、クラスタの数は、昇降機の運転モードの数と一致している必要はない。
【0158】
ここで、上記した推奨データ生成処理によっては例えば2つのクラスタの運転モードが共通する(つまり、当該2つのクラスタに対応づけて同一の運転モードを含む推奨データが生成される)可能性があるが、この場合においてクラスタの数を運転モードの数と同数とすると、複数の運転モードのうちの少なくとも1つの運転モードが推奨されないという事態が生じる。これに対して、運転モードの数よりもクラスタの数が多い場合には、2つのクラスタの運転モードが共通する場合であっても、全ての運転モードを推奨することができるような推奨データを生成することができる可能性がある。
【0159】
なお、2つのクラスタの運転モードが共通する場合であっても、当該クラスタの各々に対応づけて推奨データに含まれる付加情報(上記した推奨データ生成処理においてクラスタの運転モードが決定された際に用いられたサンプルデータの運転モードの偏り)は異なると考えられる。このため、本実施形態においては、現在の人流データ(に基づいて決定されたクラスタ)に応じて付加情報が異なる同一の運転モードを推奨するような構成とすることも可能である。
【0160】
また、本実施形態において、推奨すべき運転モード(クラスタに対応づけて推奨データに含まれる運転モード)は、当該クラスタ(に分類された複数の人流データの中)からサンプリングされたサンプルデータに基づいて昇降機の運転をシミュレーションすることによって得られる指標(例えば消費エネルギー、性能指数及び快適指数のうちの少なくとも1つ)に基づいて決定される。なお、例えばクラスタから複数のサンプルデータ(例えば、所定数のサンプルデータ)がサンプリングされた場合、推奨すべき運転モードは、上記した指標に基づいて複数のサンプルデータの各々について決定された運転モード(例えば、当該運転モードの多数決の結果)に基づいて決定される。本実施形態においては、このような構成により、各クラスタに対応する適切な運転モードを決定することができる。
【0161】
ここで、本実施形態においてはサンプルデータに対して複数の運転モードの各々を適用した際の昇降機の運転をシミュレーションすることによって得られる指標(シミュレーション結果)に基づいて推奨すべき運転モードが決定されるものとして説明したが、当該推奨すべき運転モードは、当該シミュレーション結果に代わりに、サンプルデータに基づいて昇降機システム3に備えられる昇降機を実際に運転させることによって得られる指標(つまり、実機を用いた測定によって得られる指標)またはサンプルデータに基づいて検索される過去の昇降機システム3の運用実績(当該サンプルデータと同程度の人の流れに応じた昇降機の運転実績)を示す実績データから得られる指標に基づいて決定されてもよい。また、これらの指標を組み合わせて推奨すべき運転モードが決定されてもよい。
【0162】
また、本実施形態においては現在の人流データから抽出された特徴量(を含む特徴量データ)と、複数のクラスタの各々のセントロイド(当該複数のクラスタの各々に分類されている人流データの各々から抽出された特徴量に基づくクラスタ毎のセントロイド)とに基づいて、当該現在の人流データと複数のクラスタの各々との距離を計算し、当該計算された距離に基づいて当該現在の人流データが分類されるクラスタ(当該現在の人流データに最も近いクラスタ)を決定するが、当該距離は上記した例えば昇降機の現在の運転モードに基づいて調整されてもよい(つまり、チャタリング除去処理が実行されてもよい)。このような構成によれば、昇降機の運転モードが頻繁に変更されるような運転モードの時間方向のばたつきを抑制することが可能となる。
【0163】
ところで、本実施形態においては昇降機システム3に備えられる昇降機の運転モードを推奨することを想定し、人流システム2において収集される人流データは、例えば昇降機を利用した複数の利用者の各々の出発階及び到着階を含む。また、本実施形態において人流データから抽出される特徴量は、例えば当該人流データに含まれる複数の利用者の各々の出発階及び到着階に基づいて特定される上り方向に移動する利用者の数、下り方向に移動する利用者の数、予め定められている基準階以外を出発階及び到着階とする利用者の数、下り方向に移動する利用者の数を超過した上り方向移動する利用者の数、及び上り方向に移動する利用者の数を超過した下り方向に移動する利用者の数のうちの少なくとも1つを含む。本実施形態においては、上記したような特徴量(を含む特徴量データ)を抽出することにより、昇降機に対する需要の変化を適切に把握し、当該需要の変化に応じた昇降機の運転モードを推奨することができる。
【0164】
なお、上記した特徴量(上り方向に移動する利用者の数、下り方向に移動する利用者の数、予め定められている基準階以外を出発階及び到着階とする利用者の数、下り方向に移動する利用者の数を超過した上り方向に移動する利用者の数、及び上り方向に移動する利用者の数を超過した下り方向に移動する利用者の数のうちの少なくとも1つ)は、例えば全交通量等のパラメータ値を用いて正規化されていてもよい。このような正規化された特徴量を含む特徴量データを用いた場合には、当該特徴量データに対応する人流データに対するクラスタリングの精度を向上させることができる。更に、正規化された特徴量を含む特徴量データを用いて生成された推奨データは、当該特徴量データに対応する人流データ(過去の人流データ)が収集された対象ビルとは例えば規模が異なるビルに設置されている昇降機の運転モードを推奨する際にも利用することが可能となる。
【0165】
なお、本実施形態においては、推奨システム1が昇降機システム3に備えられる昇降機の運転モードを推奨するものとして主に説明したが、当該推奨システム1は、例えば空調機の運転モードを推奨する場合に適用されても構わない。
【0166】
以下、図16を参照して、本実施形態の変形例として、空調機の運転モードを推奨する推奨システムについて簡単に説明する。
【0167】
上記した図1においては推奨システム1が人流システム2及び昇降機システム3とネットワーク4を介して通信可能に接続されているものとして説明したが、本実施形態の変形例に係る推奨システム1は、人流システム2及び空調システム5と、ネットワーク4を介して通信可能に接続されている。
【0168】
本実施形態の変形例において、人流システム2は、対象ビルに設置されている空調機を利用する人の流れを示す人流データを任意のタイミングで収集(集計)及び出力するように構成されている。なお、上記したように推奨システム1が昇降機の運転モードを推奨する場合に人流システム2において収集される人流データは昇降機を利用する各利用者の出発階及び到着階を含むものとして説明したが、推奨システム1が空調機の運転モードを推奨する場合に人流システム2において収集される人流データは、例えば空調機が設置されているフロア(またはエリア)毎の利用者の人数または密度等を含むデータであればよい。
【0169】
空調システム5は、対象ビルに設置されている空調機及び当該空調機の運転を制御する空調機制御装置等を備える。空調システム5において、空調機制御装置は、例えば予め用意されている複数の運転モードを切り替えながら空調機の運転を制御する。
【0170】
なお、空調システム5に備えられる空調機は室内の空気の温度等を調整する空調機能に加えて換気機能を有し、当該空調システム5においては、当該換気機能における換気比率が異なる複数の運転モード(例えば0%、10%、20%、…のように離散化された換気比率がそれぞれ割り当てられた複数の運転モード)が用意されているものとする。換気比率としては、例えば空調機が設置されている室内容積に対する単位時間当たりの当該室内に流入する空気量の割合等を想定しているが、他の値であってもよい。
【0171】
また、空調システム5が複数の空調機を備える場合には、当該複数の空調機の各々の換気機能に関する分担率(離散化された分担率)が割り当てられた複数の運転モードが用意されていてもよい。
【0172】
本実施形態の変形例に係る推奨システム1の動作は、人流データ及び運転モード(の内容)が上記した本実施形態とは異なるものの、その他の点については概ね本実施形態において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0173】
なお、本実施形態の変形例において人流データから抽出される特徴量は、上記したように人流データに含まれる利用者の人数また密度であってもよいし、当該利用者の人数または密度に基づいて特定される値(当該利用者の人数または密度が適用される所定の計算式等によって計算される値)であってもよい。
【0174】
すなわち、本実施形態の変形例に係る推奨システム1は、上記した本実施形態において説明したように学習装置11によって生成された推奨データに基づいて、空調システム5に備えられる空調機の運転モードを推奨することが可能である。
【0175】
なお、本実施形態及び本実施形態の変形例においては昇降機及び空調機の運転モードを推奨する推奨システム1について説明したが、当該推奨システム1は、昇降機及び空調機以外のビル設備を含む制御対象の動作モードを推奨するために用いることができる。すなわち、本実施形態及び本実施形態の変形例において説明した昇降機及び空調機は、推奨システム1によって推奨される動作モードで動作が制御される制御対象の一例である。
【0176】
更に、本実施形態及び本実施形態の変形例においては人流データに基づいて昇降機及び空調機の運転モード(つまり、制御対象の動作モード)を推奨するものとして説明したが、当該人流データは、制御対象に対する需要の変化を把握することができるデータ(すなわち、当該制御対象の利用に関する利用データ)であればよい。すなわち、本実施形態及び本実施形態の変形例においては、上記した人流データの代わりに例えば制御対象の動作ログのようなデータ(例えば、稼働データ)が用いられてもよいし、当該制御対象が利用される際の対象ビルの内部または外部の環境に関するデータ(例えば、温度データ等)が用いられてもよい。
【0177】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0178】
1…推奨システム、2…人流システム、3…昇降機システム、4…ネットワーク、5…空調システム、11…学習装置、11a…CPU、11b…不揮発性メモリ、11c…RAM、11d…通信デバイス、11e…学習プログラム、12…推奨装置、12a…CPU、12b…不揮発性メモリ、12c…RAM、12d…通信デバイス、12e…推奨プログラム、111…データ取得部、112…特徴量抽出部、113…クラスタリング部、114…推奨データ生成部、115…格納部、121…データ取得部、122…特徴量抽出部、123…クラスタ決定部、124…運転モード決定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16