(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043353
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】医用画像処理システム、および、医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240322BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240322BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20240322BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61B6/00 360B
A61B6/03 377
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360G
A61B6/12
A61B5/055 390
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148493
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和喜
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勲
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093AA25
4C093AA26
4C093DA02
4C093FF16
4C093FF35
4C093FF37
4C093FF42
4C096AA18
4C096AB36
4C096AD03
4C096DC19
4C096DC33
4C096DC36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】X線透視像を用いて行う手技を支援するための高精細なガイド画像を、CT装置やMRI装置で事前に撮像された3D画像から生成して表示する。
【解決手段】透視画像を撮像する際にX線撮像装置に設定されるパラメータの値を取得する。被検体を撮像しておいた3次元CT画像と3次元MRI画像とを位置合わせした後、X線撮像装置のパラメータの値を用いて、3次元CT画像と3次元MRI画像にそれぞれコーンビームの光線通過方向を設定し、2次元投影像を生成する。生成した2次元投影像を重畳して、ガイド画像として表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮像装置により撮像する透視画像を見ながら被検体に行う手技の、ガイド画像となる被検体画像を生成する医用画像処理システムであって、
予めCT装置により前記被検体を撮像しておいた3次元CT画像と、予め磁気共鳴イメージング装置により前記被検体を撮像しておいた3次元MRI画像とを受け取る3次元画像取得部と、
前記3次元CT画像と、前記3次元MRI画像とを位置合わせする画像位置合わせ部と、
位置合わせ後の前記3次元MRI画像から予め定めた特定の組織の像を抽出することにより、3次元MRI特定組織画像を生成する組織構造抽出部と、
前記透視画像を撮像する際に前記X線撮像装置に設定される複数種類のパラメータのうち、予め定めた種類のパラメータの値を取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部が取得したパラメータの値を用いて、前記3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像にそれぞれ、前記X線撮像装置においてX線が前記被検体を通過する方向に対応した光線通過方向を設定し、前記光線通過方向に沿って前記3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像をそれぞれ投影して、2次元投影像を生成する投影計算部と、
前記3次元CT画像の2次元投影像と3次元MRI組織構造画像の2次元投影像とを重畳した重畳画像を生成し、生成した重畳画像を前記ガイド画像として表示させる画像重畳部と
を有することを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像処理システムであって、前記光線通過方向は、コーンビームであることを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の医用画像処理システムであって、前記画像重畳部は、前記重畳画像に、前記コーンビームの前記光線通過方向を表す放射状のパターンをさらに重畳することを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の医用画像処理システムであって、前記予め定めた種類のパラメータは、前記X線撮像装置が前記透視画像を撮像する際のX線源とX線検出パネルまでの距離と、前記X線検出パネルのサイズとを含むことを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の医用画像処理システムであって、前記パラメータ取得部は、前記X線撮像装置から設定されている前記パラメータの値を取り込むことを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の医用画像処理システムであって、前記パラメータ取得部は、X線撮像装置の撮像パラメータが予め格納されているデータベースから前記パラメータの値を取り込む
ことを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の医用画像処理システムであって、前記画像重畳部は、前記透視画像と並べて、前記ガイド画像を表示装置に表示させることを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項8】
請求項1に記載の医用画像処理システムであって、前記パラメータ取得部は、前記パラメータとして、前記X線撮像装置のX線源の前記被検体に対する角度を取得し、
前記投影計算部は、前記パラメータ取得部が取得した前記X線源の角度が、予め定めた角度から回転している場合、取得した前記角度に前記光線通過方向を回転させ、前記2次元投影像を生成することを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項9】
X線撮像装置により撮像する透視画像を見ながら被検体に行う手技の、ガイド画像となる被検体画像を生成する医用画像処理方法であって、
前記透視画像を撮像する際に前記X線撮像装置に設定される複数種類のパラメータのうち、予め定めた種類のパラメータの値を取得するステップと、
予めCT装置により前記被検体を撮像しておいた3次元CT画像と、予め磁気共鳴イメージング装置により前記被検体を撮像しておいた3次元MRI画像とを受け取るステップと、
前記3次元CT画像と、前記3次元MRI画像とを位置合わせするステップと、
位置合わせ後の前記3次元MRI画像から予め定めた特定の組織の像を抽出することにより、3次元MRI特定組織画像を生成するステップと、
取得された前記パラメータの値を用いて、前記3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像にそれぞれ、前記X線撮像装置においてX線が前記被検体を通過する方向に対応した光線通過方向を設定し、前記光線通過方向に沿って前記3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像をそれぞれ投影して、2次元投影像を生成するステップと、
前記3次元CT画像の2次元投影像と3次元MRI組織構造画像の2次元投影像とを重畳した重畳画像を生成し、生成した重畳画像を前記ガイド画像として表示させるステップと
を有することを特徴とする医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル検査等においてX線撮像装置に撮像される被検体の透視像に対して、同じ被検体のガイド画像を、予め撮像しておいた3D画像から生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像装置において患者の透視像を撮像して表示しながら、患者の血管や胆管等の管構造にワイヤ等を挿入する手技を行われている。この際、リアルタイムで撮像される透視像とともに、直前にX線源を回転させて取得しておいた3Dマスク像を表示する3Dロードマップ技術が知られている(特許文献1)。3Dマスク画像として血管像を表示することにより、ワイヤ等の血管への挿入を支援することができる。
【0003】
3Dロードマップ技術では、手技の直前に3Dマスク像を撮像することにより、3Dマスク像とリアルタイムで撮像した透視像との位置合わせを不要にしている。しかしながら、手技の直前の3Dマスク像の撮像は、患者の被曝量や造影剤量を増加させるため、患者にとって負担になる。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1には、事前に撮像しておいた3Dマスク像の撮像時の設定条件を、リアルタイムの透視像を撮像するX線撮像装置に設定して透視像を撮像するとともに、透視像と3Dマスク像とのサブトラクション結果により、透視像と3Dマスク像の位置ずれを修正する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のロードマップ技術は、事前撮像する3Dマスク像は、X線撮像装置のX線源を回転させて取得することが前提となっている。事前撮像する3Dマスク像は、X線撮像装置で取得することにより、リアルタイムで撮像される透視像と3Dマスク像との撮像時の設定条件を一致させることができる。また、3Dマスク像と透視像とを位置合わせするだけで一致させることができる。
【0007】
一方、3D画像の取得方法としては、X線撮像装置を用いる方法以外に、CT装置やMRI(磁気共鳴イメージング)装置を用いる方法があることが知られている。CT装置で撮像された3D画像は、X線撮像装置よりも高精細に患者の骨格等を表示することが可能である。また、MRI装置で撮像された3D画像は、造影剤を用いることなく、胆管や血管等の管構造の像を高精細に抽出して表示することが可能である。
【0008】
しかしながら、X線撮像装置は、点光源であるX線源から患者に対してX線を照射し、患者を透過したX線を、平面のX線検出器に投影して撮像するため、X線源に近い患者の体表近くの組織と、X線源から遠くX線検出器に近い領域の組織とでは、透視像上における拡大率が異なるという特徴がある。これに対し、CT装置やMRI装置で撮像された3D画像は、X線撮像装置とは撮像原理が異なり、3Dの画像再構成処理を行って生成されているため、2次元平面に投影しても投影像は、X線撮像装置の透視像とは一致しない。そのため、CT装置やMRI装置で撮像された3D画像からマスク像を生成しても、透視像とは、画像上の患者の組織の位置が一致せず、患者へのワイヤの挿入を支援する画像としては適さない。
【0009】
本発明の目的は、X線透視像を用いて行う手技を支援するための高精細なガイド画像を、CT装置やMRI装置で事前に撮像された3D画像から生成して表示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、X線撮像装置により撮像する透視画像を見ながら被検体に行う手技の、ガイド画像となる被検体画像を生成する医用画像処理システムを提供する。医用画像処理システムは、3次元画像取得部と、画像位置合わせ部と、組織構造抽出部と、パラメータ取得部と、投影計算部と、画像重畳部とを有する。3次元画像取得部は、予めCT装置により被検体を撮像しておいた3次元CT画像と、予め磁気共鳴イメージング装置により被検体を撮像しておいた3次元MRI画像とを受け取る。画像位置合わせ部は、3次元CT画像と、3次元MRI画像とを位置合わせする。組織構造抽出部は、位置合わせ後の3次元MRI画像から予め定めた特定の組織の像を抽出することにより、3次元MRI特定組織画像を生成する。パラメータ取得部は、透視画像を撮像する際にX線撮像装置に設定される複数種類のパラメータのうち、予め定めた種類のパラメータの値を取得する。投影計算部は、パラメータ取得部が取得したパラメータの値を用いて、3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像にそれぞれ、X線撮像装置においてX線が被検体を通過する方向に対応した光線通過方向を設定し、光線通過方向に沿って3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像をそれぞれ投影して、2次元投影像を生成する。画像重畳部は、3次元CT画像の2次元投影像と3次元MRI組織構造画像の2次元投影像とを重畳した重畳画像を生成し、生成した重畳画像をガイド画像として表示させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、顕微鏡の焦点距離に基づいて顕微鏡の視野位置を特定できるため、手術器具のポインタが検出できない場合であっても、手術ナビゲーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1の医用画像処理システム1の構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態1の医用画像処理システム1の動作を示すフローチャート。
【
図3】(a)実施形態1の医用画像処理システム1において、3次元MRI画像の特定組織(血管)をコーンビームの光線通過方向に沿って投影した2次元投影像を示す図、(b)実施形態1の医用画像処理システム1において、3次元MRI画像の特定組織(血管)を平行ビームの光線通過方向に沿って投影した2次元投影像を示す図。
【
図4】(a)実施形態1の医用画像処理システム1において生成されたガイド画像を示す図、(b)手技中のX線撮像装置の透視画像(造影前)を示す図、(c)手技中のX線撮像装置の透視画像(造影後)を示す図、(d)実施形態1の医用画像処理システム1において生成された比較画像を示す図。
【
図5】(a)実施形態1の医用画像処理システム1において設定されるコーンビームの光線通過方向を示す図、(b)実施形態1の医用画像処理システム1において設定される平行ビームの光線通過方向を示す図。
【
図6】(a)実施形態2の医用画像処理システムにおいて生成された放射状のパターンを示す図、(b)実施形態2の医用画像処理システムにおいて生成されたドット状のパターンを示す図。
【
図7】(a)実施形態2の医用画像処理システムにおいて、放射状のパターンを生成するために、X線源の光軸に平行に複数の管状構造にコーンビームの光線通過方向を設定した状態を示す図、(b)実施形態2の医用画像処理システムにおいてドット状のパターンを生成するために、X線源の光軸に平行に複数の管状構造に平行ビームの光線通過方向を設定した状態を示す図。
【
図8】(a)実施形態2の医用画像処理システムにおいて生成されたガイド画像を示す図、(b)手技中のX線撮像装置の透視画像(造影前)を示す図、(c)手技中のX線撮像装置の透視画像(造影後)を示す図、(d)実施形態2の医用画像処理システムにおいて生成された比較画像を示す図、(e)実施形態2の医用画像処理システムにおいて生成された、放射状のパターンが重畳されたガイド画像を示す図、(f)実施形態2の医用画像処理システムにおいて生成された、ドット状のパターンが重畳された比較画像を示す図。
【
図9】実施形態3の医用画像処理システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の医用画像処理システムについて図面を用いて説明する。
【0014】
図1は医用画像処理システム1の構成を示す図である。
図2は、医用画像処理システム1の動作を示すフローチャートである。
図3および
図4は、表示画面の一例である。
【0015】
医用画像処理システム1は、医師が、X線撮像装置により撮像された透視画像を見ながら被検体にカテーテルを挿入する等の手技を行う際に、透視画像と並べる等して表示されガイド画像となる被検体画像を生成する装置である。ガイド画像は、医師が被検体の構造や特定の組織(例えば、胆管や血管や腸管等の管)の位置や形状を正確に把握するための画像である。
【0016】
X線撮像装置で撮像した透視画像における被検体の組織は、X線源からの距離や、X線検出パネルとの距離、組織を通過するX線の軌跡とX線源の光軸となす角度によって、異なる拡大倍率で、透視画像上に投影される。そのため、透視画像上の被検体の組織の位置関係やサイズは、透視画像特有の位置関係やサイズになる。本実施形態では、X線撮像装置で撮像した画像の特徴を考慮し、組織の拡大倍率や位置関係が、透視画像と同じになるように、ガイド画像(被検体画像)を生成する。これにより医師は、透視画像と同じ見え方をするガイド画像を参照して、被検体の構造や特定の組織を把握することができる。よって、医用画像処理システム1は、カテーテルを挿入する等の医師の手技を支援することができる。
【0017】
医用画像処理システム1は、医師が手技を行っている最中に、リアルタイムでガイド画像(被検体画像)を生成し、その時点で撮像された透視画像と並べて表示することが可能である。
【0018】
また、医用画像処理システム1は、医師が手技を行う前に、医師が被検体の構造や組織の位置関係や形状を正確に把握したり、手技をシミュレーション等する際に、X線撮像装置とは切り離された状態でも用いることも可能である。
【0019】
<医用画像処理システム1の構造>
図1に示すように、医用画像処理システム1は、3次元画像取得部20と、X線撮像装置パラメータ取得部10と、画像処理部30と、入力部40と、表示部50とを備えている。画像処理部30は、画像位置合わせ部31と、投影計算部32と、画像重畳部33と、組織構造抽出部34とを含む。
【0020】
3次元画像取得部20は、予めCT装置により被検体を撮像しておいた3次元CT画像と、予め磁気共鳴イメージング(MRI)装置により被検体を撮像しておいた3次元MRI画像とを受け取る。画像の受け取り方法は、どのような方法であってもよいが、
図1では一例として、3次元画像取得部20が、医用画像サーバ4に接続されており、CT装置やMRI装置等から医用画像サーバ4に予め格納されている3次元CT画像と3次元MRI画像とを取り込む構成である。また、3次元画像取得部20は、入力部40を介して、医師から3次元CT画像と3次元MRI画像とを受け取る構成としてもよい。
【0021】
3次元CT画像は、被検体を構成する組織のX線吸収係数に対応する画素値を有するため、被検体の骨格等のX線吸収係数の大きな組織の画素値が大きい(白い画素)。一方、3次元MRI画像は、手技の対象の組織が高信号になる撮像方法で撮像された画像を選択する。例えば、手技対象の組織が胆管である場合、造影剤を用いない血管撮像方法であるMRCP(Magnetic Resonance Cholangio Pancreatography)画像を用いる。
【0022】
X線撮像装置パラメータ取得部10は、手技の際に被検体の透視画像を撮像するために、X線撮像装置に設定される複数種類のパラメータのうち、予め定めた種類のパラメータの値を取得する。
【0023】
X線撮像装置パラメータ取得部10が、値を取得するパラメータとしては、X線撮像装置が透視画像を撮像する際のX線源とX線検出パネルまでの距離(SID:Source to image receptor distance)と、X線検出パネルのサイズとを含む。また、X線源の回転(傾斜)が可能である場合には、X線源と回転軸までの距離(SAD:source-axis distance)を取得することが好ましい。さらに、X線検出パネルを構成する一つ一つの検出器サイズも取得することが好ましい。
【0024】
X線撮像装置パラメータ取得部10は、接続されているX線撮像装置やX線撮像装置撮像パラメータデータベース3から、パラメータの値を取り込む構成であってもよいし、入力部40を介して、医師からパラメータの値を受け付けてもよい。X線撮像装置撮像パラメータデータベースには、手技の種類や、対象部位や、被検体の性別や年齢ごとに、透視画像を撮像するのに適したパラメータが予め格納されているデータベースである。
【0025】
画像位置合わせ部31は、3次元画像取得部20が取得した3次元CT画像と3次元MRI画像とを位置合わせする。位置合せ方法は,公知の画素値を用いた位置合せ方法や、公知の特徴点をランドマークとした位置合せ方法等、所望の方法を用いて行う。
【0026】
組織構造抽出部34は、画像位置合わせ部31が位置合わせ後の3次元MRI画像から予め定めた特定の組織(例えば、血管)の像を抽出することにより、3次元MRI特定組織画像を生成する。抽出方法としては、クリッピング法等の公知の方法を用いることができる。
【0027】
投影計算部32は、X線撮像装置パラメータ取得部10が取得したパラメータの値を用いて、X線撮像装置においてX線が被検体を通過する方向に対応した光線通過方向(レイ)を、3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像にそれぞれ設定する(
図5(a)参照)。すなわち、点光源であるX線源からX線検出パネル全体に到達するコーンビームのX線が、被検体を通過する方向と同じ光線通過方向を、3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像にそれぞれ設定する。
【0028】
投影計算部32は、設定したコーンビームの光線通過方向に沿って3次元CT画像と3次元MRI特定組織画像をそれぞれ投影して、2次元投影像を生成する。投影計算部32の2次元投影像の生成方法としては、レイサム(画素値の総和),最大値投影(MIP)等を用いる。
【0029】
2次元投影像は、設定された光線通過方向の中心(X線源)からの距離や、投影面(X線検出パネル)との距離、組織を通過する光線と光軸(X線源の光軸)となす角度によって、異なる拡大倍率で、投影面に投影される。
【0030】
例えば、投影計算部32が3次元MRI特定組織画像をコーンビームの光線通過方向に投影した2次元投影像(
図3(a)参照)は、
図5(b)のように平行ビームに光線通過方向を設定して投影した2次元投影像(比較画像)(
図3(b)参照)と比較して、X線源に近い位置の組織ほど拡大倍率が大きく、かつ、X線パネルの周縁に向かってずれた位置に投影される。これにより、被検体の組織(
図3(a)、(b)では一例として胆管)の位置関係やサイズが、X線撮像装置で撮像した透視画像と同様の、2次元投影画像を投影計算部32により生成することができる。
【0031】
投影計算部32が生成する3次元CT画像の2次元投影像は、被検体の骨や体輪郭等の構造が表れた画像となる。一方、3次元MRI画像の2次元投影像は、手技の対象とする組織(例えば胆管や血管等の管構造)等軟組織の形態情報が表れた画像となる。
【0032】
画像重畳部33は、3次元CT画像の2次元投影像と3次元MRI組織構造画像の2次元投影像とを重畳した重畳画像を生成し、生成した重畳画像をガイド画像として表示部50に表示させる(
図4(a)参照)。
【0033】
医用画像処理システム1は、手技の最中の場合、X線撮像装置で撮像した透視画像(
図4(b)、(c))と、生成したガイド画像(
図4(a))を並べて表示部50に表示することができる。
図4(c)は、造影剤注入後の透視画像である。
【0034】
これにより医師は、X線撮像装置で撮像される透視画像と、組織の拡大率および位置関係が同じ高精細なガイド画像(
図4(a))を参照することにより、造影剤注入前であっても、被検体の胆管や血管等の管構造の軟組織および骨格等の形状や位置関係を把握することができる。
【0035】
また、投影計算部32は、平行ビームで投影した3次元CT画像の2次元投影像と、3次元MRI組織構造画像の2次元投影像(
図3(b))とを生成し、画像重畳部33が重畳した画像(
図4(d))を比較画像として、コーンビームの光線通過方向で投影した2次元投影像(
図4(a))と並べて表示部50に表示してもよい。
【0036】
コーンビームによる2次元投影像(
図4(a))と,平行ビームによる2次元投影像(
図4(d))を並べて表示することにより、コーンビームによる拡大率の影響(X線源に近いほど拡大倍率が大きくなり、光軸から周縁部に向かって像の位置がずれること)を,医師が理解することができる。
【0037】
医用画像処理システム1の3次元画像取得部20、X線撮像装置パラメータ取得部10および画像処理部30は、CPU(演算処理部)とメモリと記憶装置により構成することができる。記憶装置に予め格納されているプログラムやプログラム実行に必要なデータをメモリにロードして実行することにより、3次元画像取得部20、X線撮像装置パラメータ取得部10および画像処理部30の機能をソフトウエアにより実現する。また、3次元画像取得部20、X線撮像装置パラメータ取得部10および画像処理部30の機能の一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、各部(10,20,30)の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0038】
<医用画像処理システム1の動作>
医用画像処理システム1の各部の動作を
図2のフローを用いて説明する。
【0039】
(ステップ201)
X線撮像装置パラメータ取得部10は、手技の際にX線撮像装置に設定されるX線源とX線検出パネルまでの距離(SID)と、X線検出器のサイズ等のパラメータ値を、接続されているX線撮像装置、または、医師から入力部40を介して取得する。
【0040】
(ステップ202)
3次元画像取得部20は、手技を行う被検体について、事前に撮像された3次元CT画像を医用画像サーバ4等から取得する。
【0041】
(ステップ203)
3次元画像取得部20は、手技を行う被検体について、事前に撮像された3次元MRI画像とを医用画像サーバ4等から取得する。
【0042】
(ステップ204)
画像位置合わせ部31は、ステップ202で取得した3次元CT画像と、ステップ203で取得した3次元MRI画像とを位置合わせする。
【0043】
(ステップ205)
組織構造抽出部34は、ステップ204で位置合わせ後の3次元MRI画像から予め定めた特定の組織(例えば、胆管)の像を抽出し、3次元MRI特定組織画像を生成する。
【0044】
(ステップ206)
投影計算部32は、ステップ201で取得したパラメータの値を用いて、コーンビームの光線通過方向(レイ)を、3次元CT画像に設定し、2次元投影像を生成する。
【0045】
(ステップ207)
投影計算部32は、ステップ201で取得したパラメータの値を用いて、コーンビームの光線通過方向(レイ)を、3次元MRI特定組織画像に設定し、2次元投影像を生成する。
【0046】
(ステップ208)
画像重畳部33は、ステップ206で生成した3次元CT画像の2次元投影像と、ステップ207で生成した3次元MRI組織構造画像の2次元投影像とを重畳し、重畳画像を生成する。
【0047】
(ステップ209)
画像重畳部33は、ステップ208生成した重畳画像をガイド画像として表示部50に表示させる(
図4(a)参照)。
【0048】
(ステップ210)
投影計算部32は、ステップ201で取得したパラメータの値を用いて、平行ビームの光線通過方向(レイ)を、3次元CT画像に設定し、2次元投影像を生成する。
【0049】
(ステップ211)
投影計算部32は、ステップ201で取得したパラメータの値を用いて、平行ビームの光線通過方向(レイ)を、3次元MRI特定組織画像に設定し、2次元投影像を生成する。
【0050】
(ステップ212)
画像重畳部33は、ステップ210で生成した3次元CT画像の2次元投影像と、ステップ211で生成した3次元MRI組織構造画像の2次元投影像とを重畳し、重畳画像を生成する。
【0051】
(ステップ209)
画像重畳部33は、生成した重畳画像を比較画像として、ガイド画像と並べて表示部50に表示させる(
図4(d)参照)。
【0052】
医師は、X線撮像装置で撮像される透視画像と、組織の拡大率および位置関係が同じで、かつ、高精細なガイド画像(
図4(a))を参照することにより、被検体の血管構造等の軟組織および骨格等の形状や位置関係を把握することができる。
【0053】
また、コーンビームによるガイド画像(
図4(a))と,平行ビームによる比較画像(
図4(d))を並べて表示することにより、コーンビームによる拡大率の影響を医師が理解することができる。
【0054】
さらに、医用画像処理システム1は、手技中である場合、X線撮像装置2から透視画像(
図4(b)または
図4(c))を取り込んで、ガイド画像(
図4(a))と比較画像(
図4(d))と並べて表示してもよい。
【0055】
本実施の形態で表示されるガイド画像(
図4(a))は、組織の拡大率および位置関係が、X線撮像装置の透視画像と同じであり、しかも、3次元CT画像と3次元MRI画像からそれぞれ生成された2次元投影像の重畳画像であるため、被検体の骨格や輪郭と、血管等の組織が高精度に表れている。よって、医師は、透視画像とガイド画像(
図4(a))とを高精度に比較することが可能である。
【0056】
<実施形態2>
実施形態2の医用画像処理システムについて説明する。
【0057】
実施形態2の医用画像処理システムは、実施形態1の医用画像処理システム1と同様の構成であり、
図4(a)に示したように、コーンビームの光線通過方向(レイ)を、3次元CT画像および3次元特定組織MRI画像に設定し、それぞれ2次元投影像を生成した後、重畳したガイド画像(
図4(a))を生成する。
【0058】
さらに、実施形態2の医用画像処理装置は、実施形態1のガイド画像(
図4(a))は、X線源の光軸から離れた組織ほど、光軸から周縁部に向かって像の位置がずれていることを、医師に視覚的に把握してもらうために、
図6(a)のような放射状のパターンを生成する。
【0059】
具体的には、投影計算部32は、
図7(a)のように、X線源の光軸に平行に複数の管状構造を配置した3次元画像に、投影計算部32がステップ206、207で設定したのと同一のコーンビーム状の光線通過方向を設定して、2次元平面に投影することにより、放射状のパターンを生成する処理を、ステップ207よりも後に実行する。コーンビーム状の光線通過方向は、
図2のステップ201で取得したX線装置撮像パラメータ値を用いてステップ206,207で設定したものである。生成された放射状のパターンは、
図6(a)のように、X線源の光軸から離れた組織ほど、パターンの線が長くなっており、光軸から周縁部に向かって像の位置がずれていることを、見る者に直観的にイメージさせることができる。
【0060】
画像重畳部33は、生成した放射状のパターンを、
図8(e)のように、ガイド画像(
図8(d))に重畳し、表示部50に表示する。これにより、医師は、ガイド画像に生じている組織のずれ量とずれの方向を、認識することができる。
【0061】
同様に、投影計算部32は、
図7(b)のように、X線源の光軸に平行に複数の管状構造を配置した3次元画像に、ステップ210、211で設定したのと同一の平行ビーム状の光線通過方向を設定して、2次元平面に投影したドット状のパターンを生成してもよい。
【0062】
ドット状のパターンは、平行ビームで2次元平面に投影した投影像は、X線源の光軸から離れても、像の位置ずれは生じていないことを、見る者に直観的にイメージさせることができる。
【0063】
画像重畳部33は、生成したドット状のパターンを、
図8(f)のように、比較画像(
図8(d))に重畳し、表示部50に表示する。これにより、医師は、比較画像には、組織のずれは生じていないことを認識することができる。
【0064】
また、
図8のように、パターンを重畳していないガイド画像(
図8(a))や比較画像(
図8(d))や、X線撮像装置の透視像(
図8(b)、(c))を、合わせて表示部50に表示することにより、医師は、直観的に特定組織(血管)の構造と位置を把握することができる。
【0065】
なお、放射状のパターンおよびドット状のパターンは、予め生成して記憶装置に格納しておき、画像重畳部33は、記憶装置から放射状のパターンおよびドット状のパターンを読み出してガイド画像(
図8(d))や、比較画像(
図8(d))に重畳する構成にしてもよい。この場合、放射状のパターンは、X線撮像装置に設定可能なパラメータ値(SIDと、X線検出器のサイズ)の組み合わせごとに予め生成して記憶装置内に格納しておくことが好ましいが、代表的ないくつかのパターンのみ格納しておき、パラメータ値の組み合わせが近いパターンを選択する構成としてもよい。
【0066】
実施形態2の医用画像処理システムの他の構成、動作および効果は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0067】
<実施形態3>
実施形態3の医用画像処理システムについて
図9のフローを用いて説明する。
【0068】
実施形態3の医用画像処理システムは、実施形態1の医用画像処理システム1と同様の構成である。実施形態3の医用画像処理システムは、
図9に示すように、その動作は、ステップ201~213まで実施形態1の
図2のフローと同様であるが、ステップ209および213の後に、X線撮像装置パラメータ取得部10が、X線源の被検体に対する角度をX線撮像装置2またはX線撮像装置撮像パラメータDBから取得するステップ214を行う点が実施形態1と異なっている。
【0069】
ステップ214において、X線撮像装置パラメータ取得部10が、X線源の被検体に対する角度を取得した後、ステップ215に進み、投影計算部32は、X線源の角度が、予め定めた初期角度(2回目以降は、前回のステップ214の実行時の角度)から回転しているかどうか判定し、回転している場合、ステップ206、210に戻る。
【0070】
ステップ206および207では、それぞれステップ214で取得した角度に、コーンビームの光線通過方向を回転させて設定し、3次元CT画像および3次元MRI特定組織画像の2次元投影像をそれぞれ生成する。ステップ208、209で2次元投影像の重畳画像(ガイド画像)を生成し、表示する。
【0071】
ステップ210および211では、それぞれステップ214で取得した角度に、平行ビームの光線通過方向を回転させて設定し、3次元CT画像および3次元MRI特定組織画像の2次元投影像をそれぞれ生成する。ステップ212、213で2次元投影像の重畳画像(比較画像)を生成し、表示する。
【0072】
再びステップ214において、X線撮像装置パラメータ取得部10がX線源の被検体に対する角度を取得し、ステップ215において、X線源の角度が、前回のステップ214の実行時の角度から回転している場合、ステップ206、210に戻って、ステップ206~213を繰り返す。
【0073】
このように実施形態3では、X線撮像装置のX線源の被検体に対する角度が、手技の途中に回転した場合にも、その角度に応じた角度で、コーンビームで投影したガイド画像および平行ビームで投影した比較画像をリアルタイムに表示することができる。
【0074】
実施形態3の医用画像処理システムの他の構成、動作および効果は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【符号の説明】
【0075】
1 医用画像処理システム
2 X線撮像装置
3 X線撮像装置撮像パラメータデータベース
4 医用画像サーバ
10 X線撮像装置パラメータ取得部
20 3次元画像取得部
30 画像処理部
31 画像位置合わせ部
32 投影計算部
33 画像重畳部
34 組織構造抽出部
40 入力部
50 表示部