(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043358
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ガス拡散基材及び燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/96 20060101AFI20240322BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240322BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20240322BHJP
C04B 35/83 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01M4/96 B
H01M8/10 101
C04B38/00 303A
C04B35/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148505
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内村 玲夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 美穂
【テーマコード(参考)】
4G019
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G019EA09
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB05
5H018BB06
5H018DD05
5H018DD06
5H018DD08
5H018EE05
5H018EE06
5H018EE08
5H018HH00
5H018HH01
5H018HH02
5H018HH05
5H018HH06
5H018HH09
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】 圧縮されたとしても、ガス通気性及びガス拡散性が高く、かつ、接触抵抗も低い炭素繊維シートを含むガス拡散基材を提供する。
【解決手段】 複数の炭素繊維と、上記炭素繊維同士を結着する樹脂炭化物とを含む炭素繊維シートを含むガス拡散基材であって、上記炭素繊維の平均繊維長が2~12mmであり、上記炭素繊維シートにおける上記炭素繊維の重量割合が70~87重量%であり、上記炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の上記炭素繊維の嵩密度が0.30~0.38g/cm
3であることを特徴とするガス拡散基材。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭素繊維と、前記炭素繊維同士を結着する樹脂炭化物とを含む炭素繊維シートを含むガス拡散基材であって、
前記炭素繊維の平均繊維長が2~12mmであり、
前記炭素繊維シートにおける前記炭素繊維の重量割合が70~87重量%であり、
前記炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の前記炭素繊維の嵩密度が0.30~0.38g/cm3であることを特徴とするガス拡散基材。
【請求項2】
前記炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の前記炭素繊維シートの電気抵抗値が、2~4.5mΩ・cm2である請求項1に記載のガス拡散基材。
【請求項3】
下記ガス通気性試験における、前記炭素繊維シートのガス通気量が110~140L/minである請求項1又は2に記載のガス拡散基材。
ガス通気性試験:
炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス通気性試験用サンプルとする。
前記ガス通気性試験用サンプルの両主面が1.1cm2だけ露出し、かつ、前記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面が、他方の主面の露出面と対向するように前記ガス通気性試験用サンプルを、ガス通気性試験用治具に固定する。この際、前記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面に空気が噴射された場合、空気が他方の主面の露出面以外から漏れないようにする。
次に、前記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面に50kPaの圧力で空気を噴射し、前記ガス通気性試験用サンプルの他方の主面の露出面に通気される空気の量(L/min)を測定し、その値を炭素繊維シートのガス通気量とする。
【請求項4】
下記ガス拡散性試験における、前記炭素繊維シートのガス拡散量が250~700cm3/cm2・secである請求項1又は2に記載のガス拡散基材。
ガス拡散性試験:
炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス拡散性試験用サンプルとする。
前記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面が1.1cm2だけ露出し、かつ、前記ガス拡散性試験用サンプルの側面が露出するように前記ガス拡散性試験用サンプルを、ガス拡散性試験用治具に固定する。この際、前記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面の露出面に空気が噴射された場合、空気が前記ガス拡散性試験用サンプルの側面以外から漏れないようにする。
次に、前記ガス拡散性試験用サンプルの厚さ方向に1MPaの荷重をかける。
次に、前記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面の露出面に100kPaの圧力で空気を噴射し、前記ガス拡散性試験用サンプルの側面に通気される空気の量(cm3/sec)を測定し、その値を、荷重負荷時の前記ガス拡散性試験用サンプルの側面の面積で割った値を炭素繊維シートのガス拡散量とする。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のガス拡散基材を備える燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス拡散基材及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体高分子型燃料電池(以下、単に「燃料電池」とも記載する)は、基本構造として、電解質層と、電解質層を隔てて配置された燃料極(負極)と酸素極(正極)とからなる。
燃料極は、電解質層に接する触媒層と、ガス拡散基材とから構成される。同様に、酸素極は、電解質層に接する触媒層と、ガス拡散基材とから構成される。なお、一般的な燃料電池では、触媒層とガス拡散基材との間には撥水層が配置され、ガス拡散基材の撥水層が配置された側と反対側にはセパレータが配置される。
燃料電池において、ガス拡散基材は、電池反応の場となる役割、及び、集電体の役割を果たす。
【0003】
特許文献1には、このようなガス拡散基材として機能する多孔質炭素シートとして、分散している炭素短繊維を結着炭化物で結着した多孔質炭素シートであって、密度が0.25~0.40g/cm3、厚さ方向の熱伝導率が1.4~4.0W/m/K、および、曲げ強度が25~40MPaであることを特徴とする多孔質炭素シートが開示されている。
また、特許文献1は、このような低密度、高強度、高熱伝導性の多孔質炭素シートを燃料電池に用いることにより、加湿条件によらず燃料電池の発電性能を高くできることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の多孔質炭素シートの密度、強度及び熱伝導率は、非圧縮時の数値である。
実際にこのような多孔質炭素シートをガス拡散基材として燃料電池に配置する際には、多孔質炭素シートは圧縮される。
特許文献1に記載の多孔質炭素シートは、繊維比率が低く、非圧縮時の嵩密度は低い。しかし、繊維比率が低いため圧縮時の面圧は低くなる。そのため、圧縮時の嵩密度が高くなる。従って、特許文献1に記載の多孔質炭素シートを実際に燃料電池に用いると、ガス通気性及びガス拡散性が低くなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の多孔質炭素シートは、空隙が多く、燃料電池のセパレータ―や撥水層との接触面積が小さいので、接触抵抗が大きくなるという問題がある。
接触抵抗を小さくする方法としては、炭素短繊維や結着炭化物の量を増やして多孔質炭素シートの密度を高くする方法が考えられるが、多孔質炭素シートの密度を高くすると、ガス通気性及びガス拡散性が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、圧縮されたとしても、ガス通気性及びガス拡散性が高く、かつ、接触抵抗も低い炭素繊維シートを含むガス拡散基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガス拡散基材は、複数の炭素繊維と、上記炭素繊維同士を結着する樹脂炭化物とを含む炭素繊維シートを含むガス拡散基材であって、上記炭素繊維の平均繊維長が2~12mmであり、上記炭素繊維シートにおける上記炭素繊維の重量割合が70~87重量%であり、上記炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の上記炭素繊維の嵩密度が0.30~0.38g/cm3であることを特徴とする。
【0009】
炭素繊維の平均繊維長が2~12mmである場合、炭素繊維が比較的短いので、炭素繊維シートの圧縮時において、炭素繊維シートの表面に露出する炭素繊維の総面積を充分に大きくすることができる。そのため、ガス拡散基材をセパレータや撥水層等の部材に接触させた際に、接触抵抗が小さくなる。
炭素繊維の平均繊維長が2mm未満である場合、1本の炭素繊維における他の炭素繊維と接触する箇所が少なくなる。そのため、炭素繊維同士が交絡しにくくなり、炭素繊維シートを成形しにくくなる。
炭素繊維の平均繊維長が12mmを超えると、炭素繊維シートの圧縮時において、炭素繊維シートの表面に露出する炭素繊維の総面積が小さくなる。そのため、ガス拡散基材をセパレータや撥水層等の部材に接触させた際に、接触抵抗が大きくなる。
【0010】
炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合が70~87重量%であると、炭素繊維シートの圧縮時の面圧を充分に高くすることができる。その結果、炭素繊維シートの圧縮時の嵩密度を適度な範囲とすることができ、ガス通気性及びガス拡散性が高くなる。
炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合が70重量%未満であると、炭素繊維の密度が低くなり、圧縮した際の面圧が低くなる。その結果、炭素繊維シートの圧縮時の嵩密度が高くなり、ガス通気性及びガス拡散性が低くなる。
炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合が87重量%を超えると、相対的に樹脂炭化物の割合が小さくなり、炭素繊維同士が纏まりにくくなる。
【0011】
炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維の嵩密度が0.30~0.38g/cm3であると、炭素繊維シートのガス通気性及びガス拡散性が高くなる。
炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維の嵩密度が0.30g/cm3未満である場合、荷重をかけた際の炭素繊維シートの表面に露出する炭素繊維の総面積が小さくなる。そのため、ガス拡散基材をセパレータや撥水層等の部材に接触させた際に、接触抵抗が大きくなる。
炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維の嵩密度が0.38g/cm3を超えると、炭素繊維シートのガス通気性及びガス拡散性が低くなる。
【0012】
なお、本明細書において、「ガス通気性」とは、炭素繊維シートの厚さ方向のガスの通りやすさを意味する。
また、本明細書において、「ガス拡散性」とは、炭素繊維シートの厚さ方向に垂直な方向のガスの通りやすさを意味する。
【0013】
本発明のガス拡散基材は、上記炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の上記炭素繊維シートの電気抵抗値が、2~4.5mΩ・cm2であることが好ましい。
荷重負荷時の炭素繊維シートの電気抵抗値が上記範囲内であると、ガス拡散基材の集電体としての機能が充分に高くなる。
上記電気抵抗値を、2mΩ・cm2未満にしようとすると、炭素繊維シートの密度が高くなりすぎ、炭素繊維シートのガス通気性及びガス拡散性が低下しやすくなる。
上記電気抵抗値が、4.5mΩ・cm2を超えると、集電体として充分に機能しにくくなる。
【0014】
下記ガス通気性試験における、上記炭素繊維シートのガス通気量が110~140L/minであることが好ましい。
ガス通気性試験:
炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス通気性試験用サンプルとする。
上記ガス通気性試験用サンプルの両主面が1.1cm2だけ露出し、かつ、上記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面が、他方の主面の露出面と対向するように上記ガス通気性試験用サンプルを、ガス通気性試験用治具に固定する。この際、上記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面に空気が噴射された場合、空気が他方の主面の露出面以外から漏れないようにする。
次に、上記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面に50kPaの圧力で空気を噴射し、上記ガス通気性試験用サンプルの他方の主面の露出面に通気される空気の量(L/min)を測定し、その値を炭素繊維シートのガス通気量とする。
【0015】
炭素繊維シートのガス通気量が上記範囲であると、炭素繊維シートのガス通気性が充分に高いと言える。そのため、本発明のガス拡散基材は燃料電池のガス拡散基材として好適に機能する。
【0016】
本発明のガス拡散基材は、下記ガス拡散性試験における、上記炭素繊維シートのガス拡散量が250~700cm3/cm2・secであることが好ましい。
ガス拡散性試験:
炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス拡散性試験用サンプルとする。
上記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面が1.1cm2だけ露出し、かつ、上記ガス拡散性試験用サンプルの側面が露出するように上記ガス拡散性試験用サンプルを、ガス拡散性試験用治具に固定する。この際、上記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面の露出面に空気が噴射された場合、空気が上記ガス拡散性試験用サンプルの側面以外から漏れないようにする。
次に、上記ガス拡散性試験用サンプルの厚さ方向に1MPaの荷重をかける。
次に、上記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面の露出面に100kPaの圧力で空気を噴射し、上記ガス拡散性試験用サンプルの側面に通気される空気の量(cm3/sec)を測定し、その値を、荷重負荷時の上記ガス拡散性試験用サンプルの側面の面積で割った値を炭素繊維シートのガス拡散量とする。
【0017】
炭素繊維シートのガス拡散量が上記範囲であると、炭素繊維シートのガス拡散性が充分に高いと言える。そのため、本発明のガス拡散基材は燃料電池のガス拡散基材として好適に機能する。
【0018】
本発明の燃料電池は、上記本発明のガス拡散基材を備えることを特徴とする。
【0019】
上記の通り、本発明のガス拡散基材は、圧縮時のガス通気性及びガス拡散性が高く、同時にガス拡散基材をセパレータや撥水層等の部材に接触させた際の接触抵抗が低い。
そのため、本発明のガス拡散基材を備える燃料電池では、ガス拡散基材に到達した水素は好適に分散し、ガス拡散基材の集電体としての機能も充分に高くなる。そのため、本発明のガス拡散基材を備える燃料電池は発電性能が高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、炭素繊維シートの電気抵抗値の測定方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、ガス通気性試験の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、ガス拡散性試験の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施例及び比較例に係る炭素繊維シートの厚さ方向に荷重を徐々に負荷した際の、各炭素繊維シートの嵩密度の変化を示すチャートである。
【
図6】
図6は、実施例及び比較例に係る炭素繊維シートを用いて電気抵抗値の測定試験を行った際の結果を示すチャートである。
【0021】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のガス拡散基材及び燃料電池について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0022】
本発明のガス拡散基材は、複数の炭素繊維と、上記炭素繊維同士を結着する樹脂炭化物とを含む炭素繊維シートを含むガス拡散基材である。
【0023】
本発明のガス拡散基材において、炭素繊維シートに含まれる炭素繊維の平均繊維長は2~12mmである。炭素繊維シートに含まれる炭素繊維の平均繊維長は2~6mmであることが好ましく、2~4mmであることがより好ましい。
炭素繊維の平均繊維長が2~12mmである場合、炭素繊維が比較的短いので、炭素繊維シートの圧縮時において、炭素繊維シートの表面に露出する炭素繊維の総面積を充分に大きくすることができる。そのため、ガス拡散基材をセパレータや撥水層等の部材に接触させた際に、接触抵抗が小さくなる。
炭素繊維の平均繊維長が2mm未満である場合、1本の炭素繊維における他の炭素繊維と接触する箇所が少なくなる。そのため、炭素繊維同士が交絡しにくくなり、炭素繊維シートを成形しにくくなる。
炭素繊維の平均繊維長が12mmを超えると、炭素繊維シートの圧縮時において、炭素繊維シートの表面に露出する炭素繊維の総面積が小さくなる。そのため、ガス拡散基材をセパレータや撥水層等の部材に接触させた際に、接触抵抗が大きくなる。
【0024】
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維を用いることができる。これらの中では、機械的強度に優れ、しかも、適度な柔軟性を有するハンドリング性に優れた多孔質炭素シートが得られることから、PAN系やピッチ系、特に導電性に優れることからPAN系もしくは異方性のピッチ系の炭素繊維を用いることが好ましい。
【0025】
本発明のガス拡散基材において、炭素繊維シートは炭素質粉末を含むことが好ましい。炭素質粉末を含むことにより、炭素繊維シートの導電性が向上する。炭素質粉末の平均粒子径は0.01~10μmであることが好ましく、1~8μmがより好ましく、3~6μmがさらに好ましい。また、炭素質粉末は、黒鉛またはカーボンブラックの粉末であることが好ましく、黒鉛粉末であることがさらに好ましい。炭素質粉末の平均粒子径は、動的光散乱測定を行い、求めた粒径分布の数平均から求めることができる。
【0026】
本発明のガス拡散基材において、炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合は70~87重量%である。
炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合が70~87重量%であると、炭素繊維シートの圧縮時の面圧を充分に高くすることができる。その結果、炭素繊維シートの圧縮時の嵩密度を適度な範囲とすることができ、ガス通気性及びガス拡散性が高くなる。
炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合が70重量%未満であると、炭素繊維の密度が低くなり、圧縮した際の面圧が低くなる。その結果、炭素繊維シートの圧縮時の嵩密度が高くなり、ガス通気性及びガス拡散性が低くなる。
炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合が87重量%を超えると、相対的に樹脂炭化物の割合が小さくなり、炭素繊維同士が纏まりにくくなる。
【0027】
本発明のガス拡散基材において、炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維の嵩密度は0.30~0.38g/cm3である。
炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維の嵩密度が0.30~0.38g/cm3であると、炭素繊維シートのガス通気性及びガス拡散性が高くなる。
炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維の嵩密度が0.30g/cm3未満である場合、荷重をかけた際の炭素繊維シートの表面に露出する炭素繊維の総面積が小さくなる。そのため、ガス拡散基材をセパレータや撥水層等の部材に接触させた際に、接触抵抗が大きくなる。
炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維の嵩密度が0.38g/cm3を超えると、炭素繊維シートのガス通気性及びガス拡散性が低くなる。
【0028】
本発明のガス拡散基材において、炭素繊維シートの目付量は、36~75g/m2であることが好ましい。
【0029】
本発明のガス拡散基材において、炭素繊維シートの厚さは、用途に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、本発明のガス拡散基材を燃料電池用のガス拡散層として用いる場合は、炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維シートの厚みが、0.08~0.20mmであることが好ましい。
【0030】
本発明のガス拡散基材に含まれる炭素繊維シートは、炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維シートの電気抵抗値が、2~4.5mΩ・cm2であることが好ましく、2~4mΩ・cm2であることがより好ましい。
荷重負荷時の炭素繊維シートの電気抵抗値が上記範囲内であると、ガス拡散基材の集電体としての機能が充分に高くなる。
上記電気抵抗値を、2mΩ・cm2未満にしようとすると、炭素繊維シートの密度が高くなりすぎ、炭素繊維シートのガス通気性及びガス拡散性が低下しやすくなる。
上記電気抵抗値が、4.5mΩ・cm2を超えると、集電体として充分に機能しにくくなる。
【0031】
<炭素繊維シートの電気抵抗値の測定>
ここで、炭素繊維シートの電気抵抗値の測定方法について図面を用いて説明する。
図1は、炭素繊維シートの電気抵抗値の測定方法の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、炭素繊維シート10の電気抵抗値を測定する場合、炭素繊維シート10を1対の電極21の間に挟む。次に、電極21間の抵抗値を測定しながら0.6MPa/minの条件で炭素繊維シートの厚さ方向(
図1中、荷重をかける方向を白矢印で示す)に荷重をかける。
荷重が1MPaになった時の、電極21間の抵抗値の値が、「1MPaの荷重をかけた際の炭素繊維シートの電気抵抗値」である。
【0032】
本発明のガス拡散基材に含まれる炭素繊維シートは、下記ガス通気性試験において、ガス通気量が110~140L/minであることが好ましい。
炭素繊維シートのガス通気量が上記範囲であると、炭素繊維シートのガス通気性が充分に高いと言える。そのため、本発明のガス拡散基材は燃料電池のガス拡散基材として好適に機能する。
【0033】
<ガス通気性試験>
図2は、ガス通気性試験の一例を模式的に示す断面図である。
ガス通気性試験では、まず、炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス通気性試験用サンプルとする。
次に、
図2に示すように、ガス通気性試験用サンプル30の両主面(
図1中、符号「31」及び「32」で示す面)が1.1cm
2だけ露出し、かつ、ガス通気性試験用サンプル30の一方の主面31の露出面31aが、他方の主面32の露出面32aと対向するようにガス通気性試験用サンプル30を、ガス通気性試験用治具40に固定する。
この際、ガス通気性試験用サンプル30の一方の主面31の露出面31aに空気が噴射された場合、空気が他方の主面32の露出面32a以外から漏れないようにする。つまり、ガス通気性試験用サンプル30の一方の主面31の露出面31a及び他方の主面32の露出面32a以外の部分をガス通気性試験用治具40の固定具41に密着させる。
次に、ガス通気性試験用サンプル30の一方の主面31の露出面31aに50kPaの圧力で空気を噴射し(
図2中、空気の流れを矢印「A」で示す)、ガス通気性試験用サンプル30の他方の主面32の露出面32aに通気される空気の量(L/min)を測定し、その値を炭素繊維シートのガス通気量とする。
【0034】
本発明のガス拡散基材に含まれる炭素繊維シートは、下記ガス拡散性試験において、ガス拡散量が250~700cm3/cm2・secであることが好ましい。
炭素繊維シートのガス拡散量が上記範囲であると、炭素繊維シートのガス拡散性が充分に高いと言える。そのため、本発明のガス拡散基材は燃料電池のガス拡散基材として好適に機能する。
【0035】
<ガス拡散性試験>
図3は、ガス拡散性試験の一例を模式的に示す断面図である。
ガス拡散性試験では、まず、炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス拡散性試験用サンプルとする。
次に、
図3に示すように、ガス拡散性試験用サンプル50の一方の主面51が1.1cm
2だけ露出し、かつ、ガス拡散性試験用サンプル50の側面53が露出するようにガス拡散性試験用サンプル50を、ガス拡散性試験用治具60に固定する。
この際、ガス拡散性試験用サンプル50の一方の主面51の露出面51aに空気が噴射された場合、空気がガス拡散性試験用サンプル50の側面53以外から漏れないようにする。つまり、ガス拡散性試験用サンプル50の一方の主面51の露出面51a及び側面53以外の部分をガス拡散性試験用治具60の固定具61に密着させる。
次に、上記ガス拡散性試験用サンプル50の厚さ方向に1MPaの荷重をかける(
図3中、荷重をかける方向を白矢印で示す。)。
次に、ガス拡散性試験用サンプル50の一方の主面51の露出面51aに100kPaの圧力で空気を噴射し(
図3中、空気の流れを矢印「A」で示す)、ガス拡散性試験用サンプル50の側面53に通気される空気の量(cm
3/sec)を測定する。測定された値を、荷重負荷時のガス拡散性試験用サンプル50の側面53の面積で割った値を炭素繊維シートのガス拡散量とする。
【0036】
本発明のガス拡散基材において、炭素繊維シートは、さらに撥水性物質を含んでいてもよい。
撥水性物質としては、テトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)等のフッ素樹脂等が挙げられる。
【0037】
次に、本発明の炭素繊維シートの製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維シートの製造方法は、集合体形成工程と、樹脂含浸工程と、焼成工程とを含む。各工程について、以下に説明する。
【0038】
(集合体形成工程)
集合体形成工程では、複数の炭素繊維を集合し集合体を形成する。
炭素繊維を集合させる方法としては、特に限定されないが、乾式法、メルトブローン法、抄造法、ニードルパンチ法、クロス工法、水流絡合法等を採用することができる。
【0039】
(樹脂含浸工程)
次に、集合体に樹脂を含浸し、樹脂含浸集合体を形成する。
【0040】
集合体に樹脂を含浸する方法としては、例えば、樹脂を含む分散液に集合体を浸す方法、集合体に樹脂を含む分散液を噴霧する方法、印刷法(ロールコーター、スクリーン)等が挙げられる。
なお、分散液には、メタノール等の分散媒や、黒鉛、カーボンブラック等の炭素粒子等を混合してもよい。
【0041】
また、集合体形成工程において、抄造法を採用する場合、抄造用のスラリーに樹脂を混合してもよい。これにより、集合体形成工程と樹脂含浸工程とを同時に行うことができる。
【0042】
樹脂としては、焼成により樹脂炭化物となり、炭素繊維同士を結着することができる有機樹脂であれば、特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ピッチ等を用いることができる。
これらの中ではフェノール樹脂が好ましく、レゾール型フェノール樹脂や、ノボラック型フェノール樹脂であることがより好ましい。
【0043】
樹脂含浸工程では、集合体に樹脂を含浸することになるが、この際の含浸後の集合体重量に対する樹脂の重量割合は、26~43重量%であることが好ましい。
上記重量割合が、26重量%未満であると、樹脂の量が少ないので、炭素繊維同士を結着しにくくなる。
上記重量割合が、43重量%を超えると、炭素繊維シートにおける炭素繊維の重量割合を70重量%以上にできなくなる。
【0044】
なお、本工程では、樹脂含浸集合体を形成した後、必要に応じ樹脂含浸集合体を乾燥させてもよい。
【0045】
(焼成工程)
次に、樹脂含浸集合体を焼成することによって、樹脂を樹脂炭化物とする。
本工程を行うことにより、炭素繊維同士は、樹脂炭化物により結着される。
【0046】
焼成工程における、焼成の条件は特に限定されないが、1000~2500℃、1~60minであることが好ましく、1000~2000℃、1~60minであることがより好ましく、1000~2000℃、1~30minであることがさらに好ましい。
【0047】
焼成工程における焼成の雰囲気は特に限定されないが、アルゴン、窒素等であることが好ましい。
【0048】
以上の工程を経て炭素繊維シートを製造することができる。
【0049】
次に、本発明のガス拡散基材を備える燃料電池について説明する。
なお、本発明のガス拡散基材を備える燃料電池は、本発明の燃料電池でもある。
図4は、本発明の燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
燃料電池100においては、燃料極200において水素210が供給され、触媒層220において水素210が触媒(白金)によって水素イオン230と電子240に分離される。
水素イオン230は電解質膜250を通過して空気極300へ移動する。電子240は外部に抜け出し導線を伝って電流となる。
空気極300には酸素310を含む空気が導入される。触媒層320において、酸素310と、電解質膜250を通って入ってきた水素イオン230と外部の導線を経由してきた電子240との反応で水330が生成される。
【0050】
上記の燃料電池100は、燃料極200に燃料極側ガス拡散層260を備えており、空気極300に空気極側ガス拡散層360を備えている。
ガス拡散層は、燃料である水素210及び酸素310(空気)の拡散、触媒層220及び触媒層320への供給、触媒層220での化学反応により生じた電子240の集電、触媒層320での反応において生じた水330の排出といった役割を担う。
本発明のガス拡散基材は、燃料極側ガス拡散層260や、空気極側ガス拡散層360として好適に用いることができる。
【0051】
なお、燃料電池100では、燃料極側ガス拡散層260と触媒層220との間、及び、空気極側ガス拡散層360と触媒層320との間に、撥水層(Micro Porоus Layer:MPL)が配置されていてもよい。
【0052】
本開示(1)は複数の炭素繊維と、上記炭素繊維同士を結着する樹脂炭化物とを含む炭素繊維シートを含むガス拡散基材であって、上記炭素繊維の平均繊維長が2~12mmであり、上記炭素繊維シートにおける上記炭素繊維の重量割合が70~87重量%であり、上記炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の上記炭素繊維の嵩密度が0.30~0.38g/cm3であることを特徴とするガス拡散基材である。
【0053】
本開示(2)は上記炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の上記炭素繊維シートの電気抵抗値が、2~4.5mΩ・cm2である本開示(1)に記載のガス拡散基材である。
【0054】
本開示(3)は下記ガス通気性試験における、上記炭素繊維シートのガス通気量が110~140L/minである本開示(1)又は(2)に記載のガス拡散基材である。
ガス通気性試験:
炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス通気性試験用サンプルとする。
上記ガス通気性試験用サンプルの両主面が1.1cm2だけ露出し、かつ、上記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面が、他方の主面の露出面と対向するように上記ガス通気性試験用サンプルを、ガス通気性試験用治具に固定する。この際、上記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面に空気が噴射された場合、空気が他方の主面の露出面以外から漏れないようにする。
次に、上記ガス通気性試験用サンプルの一方の主面の露出面に50kPaの圧力で空気を噴射し、上記ガス通気性試験用サンプルの他方の主面の露出面に通気される空気の量(L/min)を測定し、その値を炭素繊維シートのガス通気量とする。
【0055】
本開示(4)は下記ガス拡散性試験における、上記炭素繊維シートのガス拡散量が250~700cm3/cm2・secである本開示(1)~(3)に記載のガス拡散基材である。
ガス拡散性試験:
炭素繊維シートを、長さ×幅=2.5cm×2.5cmにカットしガス拡散性試験用サンプルとする。
上記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面が1.1cm2だけ露出し、かつ、上記ガス拡散性試験用サンプルの側面が露出するように上記ガス拡散性試験用サンプルを、ガス拡散性試験用治具に固定する。この際、上記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面の露出面に空気が噴射された場合、空気が上記ガス拡散性試験用サンプルの側面以外から漏れないようにする。
次に、上記ガス拡散性試験用サンプルの厚さ方向に1MPaの荷重をかける。
次に、上記ガス拡散性試験用サンプルの一方の主面の露出面に100kPaの圧力で空気を噴射し、上記ガス拡散性試験用サンプルの側面に通気される空気の量(cm3/sec)を測定し、その値を、荷重負荷時の上記ガス拡散性試験用サンプルの側面の面積で割った値を炭素繊維シートのガス拡散量とする。
【0056】
本開示(5)は本開示(1)~(4)に記載のガス拡散基材を備える燃料電池である。
【0057】
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
平均繊維長が3mmの炭素繊維を準備し、抄造法により集合させ集合体を作製した。
次に、メタノール100重量部に対し、レゾール型フェノール樹脂が2.8重量部、ノボラック型フェノール樹脂が1.7重量部、鱗片状黒鉛が0.7重量部及びカーボンブラックが0.7重量部含まれた分散液を準備し、当該分散液に集合体を含浸し、樹脂含浸集合体を形成した。
この際、含浸させたフェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂及びノボラック型フェノール樹脂)の重量割合を、集合体の重量に対して36重量%とした。
その後、280kPaで加圧しながら、145℃、15minの条件で樹脂含浸集合体を乾燥させた。
【0059】
上記樹脂含浸集合体を、アルゴン雰囲気下、7kPaで加圧しながら、100℃/hrで昇温して500℃になった時点で5min保持し、その後、100℃/hrで昇温して1000℃になった時点で5min保持し、その後100℃/hrで昇温して2000℃になった時点で5min保持することにより焼成し、樹脂を樹脂炭化物とし、炭素繊維同士を結着させた。
以上の工程を経て実施例1に係る炭素繊維シートを作製した。
実施例1に係る炭素繊維シートの目付量は、67g/m2であった。
また、実施例1に係る炭素繊維シートの厚さ方向に1MPaの荷重をかけた際の厚さは、0.19mmであった。
【0060】
(実施例2)及び(比較例1)
表1に示す材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2及び比較例1に係る炭素繊維シートを作製した。
【0061】
【0062】
(巻き付け性評価)
実施例1、実施例2及び比較例1に係る炭素繊維シートを、底面の直径が65mmである円柱体に巻き付け、破断が生じるか否かを目視で観察し、巻き付け性評価を行った。結果を表1に示す。
なお、評価基準は以下の通りである。
〇:破断が観察されなかった
×:破断が観察された
【0063】
表1に示すように、実施例1、実施例2及び比較例1に係る炭素繊維シートのいずれも巻き付け性は良好であった。一般的に、炭素繊維シートを構成する炭素繊維の平均繊維長が短い場合、繊維の交絡箇所が少なくなり、炭素繊維シートを被着体に巻き付ける際に、炭素繊維シートが破断しやすくなる。しかし、実施例1及び実施例2に係る炭素繊維シートでは、炭素繊維の平均繊維長が3mmと短いにも関わらず、炭素繊維シートを被着体に巻き付けたとしても、炭素繊維シートが破断しにくいことが判明した。
【0064】
(荷重負荷時の嵩密度の測定)
実施例1、実施例2及び比較例1に係る炭素繊維シートの厚さ方向に荷重を負荷し、炭素繊維シートの嵩密度の変化を測定した。結果を
図5に示す。
図5は、実施例及び比較例に係る炭素繊維シートの厚さ方向に荷重を徐々に増加させた際の、各炭素繊維シートの嵩密度の変化を示すチャートである。
また、圧力を1MPa付加した際の炭素繊維シートの嵩密度の数値を表1に示す。
【0065】
図5に示すように、荷重負荷していない時及び荷重負荷時のいずれにおいても、実施例1及び実施例2に係る炭素繊維シートの嵩密度は、比較例1に係る炭素繊維シートの嵩密度よりも低かった。
【0066】
(電気抵抗値の測定試験)
実施例1、実施例2及び比較例1に係る炭素繊維シートについて、上記<炭素繊維シートの電気抵抗値の測定>に記載した方法に基づき、各炭素繊維シートの電気抵抗値を測定した。
なお、荷重負荷のプロファイルは、0.6MPa/minの条件で加圧し、圧力が1MPaに到達した際にその状態で5min静置し、その後、0.6MPa/minの条件で加圧し、圧力が2MPaに到達した際にその状態で5min静置し、その後、0.6MPa/minの条件で加圧し、圧力が3MPaに到達した際にその状態で5min静置した。
結果を
図6に示す。また、圧力が1MPaに到達した際の各炭素繊維シートの電気抵抗値を表1に示す。
図6は、実施例及び比較例に係る炭素繊維シートを用いて電気抵抗値の測定試験を行った際の結果を示すチャートである。
【0067】
図6に示すように、実施例1及び2に係る炭素繊維シートは、比較例1に係る炭素繊維シートと比較して電気抵抗値が低かった。
実施例1及び2に係る炭素繊維シートは、電気抵抗値が充分に低く、ガス拡散基材の集電体としての好適に機能することが判明した。
【0068】
(ガス通気性試験)
実施例1、実施例2及び比較例1に係る炭素繊維シートについて、上記<ガス通気性試験>で説明した方法に基づき、炭素繊維シートのガス通気量を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(ガス拡散性試験)
実施例1、実施例2及び比較例1に係る炭素繊維シートについて、上記<ガス拡散性試験>で説明した方法に基づき、炭素繊維シートのガス拡散量を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
表1に示すように、実施例1及び2に係る炭素繊維シートは、比較例1に係る炭素繊維シートと比較してガス通気量が多かった。
また、表1に示すように、実施例1に係る炭素繊維シートは、比較例1に係る炭素繊維シートと比較してガス拡散量が多かった。
【0071】
また、実施例2に係る炭素繊維シートは、比較例1に係る炭素繊維シートと比較してガス拡散量が同等程度であった。この理由は以下のように考えられる。
表1に示すように、1MPaの荷重をかけた際の実施例2の係る炭素繊維シートの厚さは、0.09mmであり、1MPaの荷重をかけた際の比較例1の係る炭素繊維シートの厚さは、0.18mmである。つまり、1MPaの荷重をかけた際の実施例2の係る炭素繊維シートの厚さは、1MPaの荷重をかけた際の比較例1の係る炭素繊維シートの厚さよりも薄い。そのため、実施例2の係る炭素繊維シートを用いてガス拡散性試験を行う場合、ガスの出口の流路が狭くなり、これが原因となり圧力損失が大きくなる。そのため、ガス拡散性試験における実施例2に係る炭素繊維シートのガス拡散量が、比較例1に係る炭素繊維シートのガス拡散量に比べ、大きくならなかったと考えられる。
【0072】
これらの結果より、実施例1及び2に係る炭素繊維シートはガス通気性及びガス拡散性が充分に高く、かつ、接触抵抗も低い炭素繊維シートであり、燃料電池用のガス拡散基材として適していることが判明した。
【符号の説明】
【0073】
10 炭素繊維シート
21 電極
30 ガス通気性試験用サンプル
31 一方の主面
31a 一方の主面の露出面
32 他方の主面
32a 他方の主面の露出面
40 ガス通気性試験用治具
41 ガス通気性試験用治具の固定具
50 ガス拡散性試験用サンプル
51 一方の主面
51a 一方の主面の露出面
53 側面
60 ガス拡散性試験用治具
61 ガス拡散性試験用治具の固定具
100 燃料電池
200 燃料極
210 水素
220 触媒層
230 水素イオン
240 電子
250 電解質膜
260 燃料極側ガス拡散層
300 空気極
310 酸素
320 触媒層
330 水
360 空気極側ガス拡散層