(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043380
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】対象物処理装置、対象物処理方法、および原版の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240322BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240322BHJP
C23C 16/26 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/302 105Z
H01L21/302 101B
C23C16/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148547
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本川 剛治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 典子
(72)【発明者】
【氏名】桜井 秀昭
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA09
4K030AA10
4K030BA27
4K030BA28
4K030DA08
4K030FA03
4K030HA01
4K030JA17
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB29
5F004BC03
5F004BC06
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5F004DA00
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5F045EM02
5F045EM09
5F045EN04
5F045GB09
5F045GB15
5F045HA03
5F045HA13
5F045HA23
(57)【要約】
【課題】対象物の表面のラフネスを低減する。
【解決手段】対象物処理方法は、対象物を処理室に搬入する第1のステップと、炭素を含む第1のイオンおよび炭素を含む第1のプラズマの少なくとも一つを生成し、第1のイオンおよび第1のプラズマの少なくとも一つを用い、対象物の上に炭素を含む膜を形成する第2のステップと、酸素、窒素、および希ガスからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む第2のガスから第2のプラズマを生成し、第2のプラズマと膜との反応により膜を除去する第3のステップと、を有し、処理室内において第2のステップと第3のステップをシームレスに交互に切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を処理室に搬入する第1のステップと、
炭素を含む第1のイオンおよび炭素を含む第1のプラズマの少なくとも一つを生成し、前記第1のイオンおよび第1のプラズマの少なくとも一つを用い、前記対象物の上に炭素を含む膜を形成する第2のステップと、
酸素、窒素、および希ガスからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む第2のガスから第2のプラズマを生成し、前記第2のプラズマと前記膜との反応により前記膜を除去する第3のステップと、を有し、
前記処理室内において前記第2のステップと前記第3のステップとをシームレスに交互に切り替える、対象物処理方法。
【請求項2】
前記第1のステップは、前記処理室に炭素を含む第1のガスを導入し、第1の電圧を前記処理室に供給することにより、前記第1のガスから前記第1のプラズマを生成し、前記第1のプラズマを用いて前記対象物の上に前記膜を形成し、その後前記第1の電圧の供給および前記第1のガスの導入を停止する、ことを有する請求項1に記載の対象物処理方法。
【請求項3】
前記第1のステップは、アーク放電により炭素ソースから前記第1のイオンを生成し、前記第1のイオンを前記処理室に導入し、前記第1のイオンを用いて前記対象物の上に前記膜を形成し、その後前記第1のイオンの導入を停止する、ことを有する請求項1に記載の対象物処理方法。
【請求項4】
前記第2のステップは、前記第2のガスを前記処理室に導入し、第2の電圧を前記処理室に供給することにより、前記第2のガスから前記第2のプラズマを生成し、前記第2のプラズマと前記膜との化学反応により前記膜を除去し、その後前記第2の電圧の供給および前記第2のガスの導入を停止する、ことを有する請求項1に記載の対象物処理方法。
【請求項5】
前記第2のステップは、リモートプラズマ源において前記第2のガスから生成された前記第2のプラズマを前記処理室に導入し、前記第2のプラズマと前記膜との化学反応により前記膜を除去し、その後前記第2のプラズマの導入を停止する、ことを有する請求項1に記載の対象物処理方法。
【請求項6】
前記第1の電圧の電位は、正電位、ゼロ電位、および負電位の順に切り替えられる、請求項2に記載の対象物処理方法。
【請求項7】
前記膜は、非晶質炭素膜である、請求項1に記載の対象物処理方法。
【請求項8】
前記第1のステップは、前記対象物の下方に強磁性体を前記対象物と略平行な方向において単一の極性を有するように配置して行われる、請求項1または請求項2に記載の対象物処理方法。
【請求項9】
処理室と、
炭素を含む第1のイオンおよび炭素を含む第1のプラズマの少なくとも一つを生成する第1の供給源と、
酸素、窒素、および希ガスからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む第2のガスから第2のプラズマを生成する第2の供給源と、
前記処理室内に対象物を搬送する搬送部と、
前記第1の供給源および前記第2の供給源を制御することにより、前記第1のイオンおよび第1のプラズマの少なくとも一つを用いて前記処理室内に配置される対象物の上に炭素を含む膜を形成する第1の動作と、前記第2のプラズマと前記膜との化学反応により前記膜を除去する第2の動作と、を前記処理室内においてシームレスに交互に切り替える制御装置と、
を具備する、対象物処理装置。
【請求項10】
前記第1の供給源に設けられ、前記処理室に第1の電圧を供給するための第1の電源と、
前記第2の供給源に設けられ、前記処理室に第2の電圧を供給するための第2の電源と、
炭素を含む第1のガスと、前記第2のガスと、を選択的に前記処理室に導入するためのガス供給源と、
をさらに具備し、
前記第1の動作は、前記第1のガスを前記ガス供給源から前記処理室に導入し、前記第1の電圧を前記第1の電源から前記処理室に供給することにより、前記第1のガスから前記第1のイオンを生成し、その後前記第1の電圧の供給および前記第1のガスの導入を停止することを含み、
前記第2の動作は、前記第2のガスを前記ガス供給源から前記処理室に導入し、第2の電圧を前記第2の電源から前記処理室に供給することにより、前記第2のガスから前記第2のプラズマを生成し、その後前記第2の電圧の供給および前記第2のガスの導入を停止することを含む、請求項9に記載の対象物処理装置。
【請求項11】
前記第1の供給源は、アーク放電により前記第1のイオンを生成して前記第1のイオンを前記処理室に導入するアークイオン源を有する、請求項9に記載の対象物処理装置。
【請求項12】
前記第2の供給源は、前記第2のガスから前記第2のプラズマを生成して前記第2のプラズマを前記処理室に導入するリモートプラズマ源を有する、請求項9に記載の対象物処理装置。
【請求項13】
前記第1の動作は、前記対象物の下方に強磁性体を前記対象物と略平行な方向において単一の極性を有するように配置して行われる、請求項9に記載の対象物処理装置。
【請求項14】
対象物を処理室に搬入する第1のステップと、
炭素を含む第1のイオンおよび炭素を含む第1のプラズマの少なくとも一つを生成し、前記第1のイオンおよび第1のプラズマの少なくとも一つを用い、前記対象物の上に炭素を含む膜を形成する第2のステップと、
酸素、窒素、および希ガスからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む第2のガスから第2のプラズマを生成し、前記第2のプラズマと前記膜との反応により前記膜を除去する第3のステップと、を有し、
前記処理室内において前記第2のステップと前記第3のステップをシームレスに交互に切り替える、原版の製造方法。
【請求項15】
前記原版は、フォトマスクまたはテンプレートである、請求項14に記載の原版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、対象物処理装置、対象物処理方法、および原版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対象物基板装置等の対象物処理装置を用いて対象物の表面を処理する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の発明が解決しようとする課題は、対象物の表面のラフネスを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の対象物処理方法は、対象物を処理室に搬入する第1のステップと、炭素を含む第1のイオンおよび炭素を含む第1のプラズマの少なくとも一つを生成し、第1のイオンおよび第1のプラズマの少なくとも一つを用い、対象物の上に炭素を含む膜を形成する第2のステップと、酸素、窒素、および希ガスからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む第2のガスから第2のプラズマを生成し、第2のプラズマと膜との反応により膜を除去する第3のステップと、を有し、処理室内において第2のステップと第3のステップをシームレスに交互に切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】対象物処理方法の例を説明するための模式図である。
【
図2】テンプレートの構造例を説明するための斜視模式図である。
【
図3】テンプレートの構造例を説明するための断面模式図である。
【
図4】表面MSのレイアウト例を説明するための上面模式図である。
【
図5】表面MSのレイアウト例を説明するための断面模式図である。
【
図6】炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を行うことによる対象物の変化を説明するための模式図である。
【
図7】炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を行うことによる対象物の変化を説明するための模式図である。
【
図8】炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を行うことによる対象物の変化を説明するための模式図である。
【
図9】対象物処理装置100の構成例を示す模式図である。
【
図10】対象物処理方法の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図12A】対象物の他の例の処理方法例を説明するための断面模式図である。
【
図12B】対象物の他の例の処理方法例を説明するための断面模式図である。
【
図13】対象物処理装置100の他の構成例を示す模式図である。
【
図14】対象物処理方法の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図15】対象物処理装置100の他の構成例を示す模式図である。
【
図16】対象物処理方法の例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図17】磁性体を用いた炭素膜形成工程S2の例を説明するための模式図である。
【
図18】磁性体122を有する場合の炭素膜形成工程S2における、陽イオンPの挙動を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
[第1の実施形態]
本実施形態では、対象物処理方法および対象物処理装置の一例について説明する。
【0009】
(対象物処理方法)
図1は、対象物処理方法の例を説明するための模式図である。対象物処理方法は、
図1に示すように、パターン形成工程S1と、炭素膜形成工程S2と、炭素膜除去工程S3と、洗浄工程S4と、を有する。
【0010】
パターン形成工程S1は、対象物の表面にパターンを形成する。対象物は、例えば原版である。原版は石英ガラス基板等の透光性基板を有し、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)を用いたパターン形成方法に用いられるテンプレートまたは光リソグラフィの際に用いられるフォトマスクが挙げられる。フォトマスクは、石英ガラスなどの透光性の基板上にクロムなどの金属を含む遮光膜やハーフトーン膜などによってパターンが形成されたものである。一般的なテンプレートとしては、例えば鋳型となるマスターテンプレートやマスターテンプレートを用いて製造されるレプリカテンプレートが挙げられる。なお、テンプレートなどの原版に限定されず、対象物は、例えばシリコンウエハなどの半導体ウエハ上に回路パターンが形成された半導体基板であってもよい。以下では対象物にレプリカテンプレートを用いる例について説明するが、これに限定されない。
【0011】
NILを用いたパターン形成方法では、対象物の上に設けられた紫外線硬化樹脂等のインプリント材料層の上にテンプレートを押しつけて、光を照射してインプリント材料層を硬化させて、パターンをインプリント材料層に転写する。
【0012】
図2は、テンプレートの構造例を説明するための斜視模式図である。テンプレートは、
図2に示すように、メサと呼ばれる表面MSと、溝COと、を含む基材111を有する。基材111は、例えば石英ガラス基板である。従って、基材111は、シリコンと、酸素と、を含む。
図3は、テンプレートの構造例を説明するための断面模式図であり、
図2に示す線分X1-X2における、基材111のX軸とX軸およびY軸と直交するZ軸とを含むX-Z断面の一部を示す。
【0013】
図4は、表面MSのレイアウト例を説明するための上面模式図であり、基材111のX-Y平面の一部を示す。
図5は、表面MSのレイアウト例を説明するための断面模式図であり、
図4に示す線分Y1-Y2における、基材111のX-Z断面の一部を示す。
【0014】
表面MSは、インプリントパターン112を含む。インプリントパターン112は、NILを用いたパターン形成方法により転写されるパターンである。インプリントパターン112の数、位置、および形状は、特に限定されない。一例として、
図4および
図5は、上面TSを有する凸部112aと、下面BSを有する凹部112bと、を含むラインアンドスペースで構成されるインプリントパターン112を示す。インプリントパターン112は、さらに上面TSと下面BSとの間に凸部112aの側面(ラインエッジともいう)LEを有する。
【0015】
炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3は、後述する対象物処理装置100の処理室I内においてシームレスに交互に繰り返されることにより、対象物の表面のラフネスを低減してパターンの品質を向上させる。炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3は、一つの対象物処理装置100を用いて対象物を大気に曝すことなく行われる。
【0016】
図6、
図7、
図8は、炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を行うことによる対象物の変化を説明するための模式図である。
【0017】
図6は、炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を行う前のテンプレートの側面LEの例を示す。側面LEは、
図6に示すように、表面に凹凸を有する場合がある。
【0018】
次に、炭素膜形成工程S2により、
図7に示すように、基材111の表面に膜113を形成する。膜113は、
図7に示すように基材111の表面の凹部により厚く形成される。膜113は、例えば炭素(C)を含む。膜113は、炭化ケイ素等の化合物を含んでいてもよい。膜113は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜などの非晶質炭素膜でもよい。膜113は、例えば基材111の表面に炭素イオン等のイオンを注入および堆積することにより、形成される。
【0019】
膜113は、側面LEの上にも形成される。膜113を形成することにより、側面LEにおいて基材111が部分的に変質して混合層120が形成される。混合層120は、例えば炭素イオンが基材111に注入されることにより形成される。炭素イオンが基材111に注入されると、石英ガラスの二酸化ケイ素におけるSi-O結合が切断され、シリコンと炭素とが結合してSi-C結合を形成する。もしくは、酸素に炭素がさらに結合してSi-O-C結合を形成する。よって、混合層120は、炭素と、シリコンと、酸素と、を含む。
【0020】
次に、炭素膜除去工程S3により、
図8に示すように、膜113を除去する。膜113は、例えば酸素、窒素、および希ガスの少なくとも一つを含むガスから生成されたプラズマを用いて除去可能である。
【0021】
また、炭素膜除去工程S3により、混合層120の少なくとも一部も除去される。これにより、側面LEのラフネスを低減できる。炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3は、例えば基材111の表面のラフネスが所望の値になるまで繰り返し行われる。
【0022】
(対象物処理装置)
次に、対象物処理装置100の構成例について以下に説明する。
図9は、対象物処理装置100の構成例を示す模式図である。対象物処理装置100は、制御装置Aと、ガス供給源B1と、交流電源Cと、直流電源Dと、昇降機Eと、搬送ポートGと、真空排気機構Hと、処理室Iと、ステージJと、を具備する。
【0023】
制御装置Aは、対象物処理装置100内の各構成要素の動作を制御する。制御装置Aは、例えばガス供給源B1からのガスの供給動作、交流電源Cから処理室Iへの交流電圧の供給動作、直流電源Dから処理室Iへの直流電圧の供給動作、昇降機Eによる対象物Fの昇降動作、および搬送ポートGを介した処理室Iと外部との対象物Fの搬送動作、および真空排気機構Hによる処理室Iの排気動作の少なくとも一つを制御可能である。
【0024】
制御装置Aは、例えばプロセッサやパーソナルコンピュータ等を用いたハードウェアを有していてもよい。ハードウェアは、例えば、制御装置A、ガス供給源B1、交流電源C、直流電源D、昇降機E、搬送ポートG、および真空排気機構Hのそれぞれに直接的に、または、コンピュータネットワークを介して間接的に接続され、それぞれとの情報の送受信により各動作を制御できる。なお、各動作を動作プログラムとしてメモリ等のコンピュータ読み取りが可能な記録媒体に保存しておき、ハードウェアにより記録媒体に記憶された動作プログラムを適宜読み出すことで各動作を実行してもよい。
【0025】
ガス供給源B1は、成膜ガスおよびエッチングガスのそれぞれを処理室Iに供給可能である。成膜ガスは、例えばメタン(CH4)、アセチレン(C2H2)、またはトルエン(C6H5CH3)等の炭素化合物を含む。エッチングガスは、例えば酸素、またはフッ素を含む。フッ素を含むエッチングガスの例は、テトラフルオロメタン(CF4)、トリフルオロメタン(CHF3)等のフッ化炭素が挙げられる。ガス供給源B1は、さらにパージガスを処理室Iに供給してもよい。パージガスは、例えば窒素を含む。
【0026】
ガス供給源B1は、処理室Iおよび制御装置Aに接続される。ガス供給源B1は、シリンダーキャビネットB1aと、マスフローコントローラB1bと、ガスポートB1cと、を有する。シリンダーキャビネットB1a、マスフローコントローラB1b、およびガスポートB1cは、供給するガスの数に対応して複数設けられる。例えば、ガス供給源B1が成膜ガス、エッチングガス、およびパージガスを供給する場合、シリンダーキャビネットB1a、マスフローコントローラB1b、およびガスポートB1cは、それぞれ3つ以上設けられる。
【0027】
交流電源Cは、処理室Iおよび制御装置Aに接続される。交流電源Cは、処理室I内に設けられた電極C1を用いて交流電圧を処理室Iに供給可能である。交流電圧は、例えば13.56MHz以上の周波数を有する。交流電源Cは、ガス供給源B1とともに、プラズマ/イオン供給源を形成する。
【0028】
直流電源Dは、処理室Iおよび制御装置Aに接続される。直流電源Dは、ステージJに埋め込まれた電極J2を用いて直流電圧を処理室Iに供給可能である。直流電源Dは、ガス供給源B1とともに、プラズマ/イオン供給源を形成する。
【0029】
昇降機Eは、リフトE1を用いて対象物Fを昇降させることができる。昇降機Eは、制御装置Aに接続される。昇降機Eの昇降は、制御装置Aにより制御される。
【0030】
搬送ポートGは、処理室Iを形成する筐体に設けられる。搬送ポートGは、開閉されることにより処理室Iと外部とを接続または遮断する。搬送ポートGの開閉は、制御装置Aにより制御される。
【0031】
真空排気機構Hは、処理室Iに接続される。真空排気機構Hは、処理室Iからガスを排出可能である。
【0032】
処理室Iは、対象物Fに対して炭素膜形成、炭素膜除去等の処理が行われる空間である。処理室Iの圧力は、真空排気機構Hにより処理室Iを常時排気することにより所定の圧力に調整できる。
【0033】
ステージJは、処理室I内に設けられる。ステージJは、対象物Fが配置される表面J1を有する。
【0034】
次に、対象物処理装置100を用いた対象物処理方法の例について
図10を参照して説明する。
図10は、対象物処理方法の例を説明するためのタイミングチャートである。
【0035】
対象物処理方法の例は、
図10に示すように、搬入ステップS-Aと、成膜ステップS-Bと、エッチングステップS-Cと、搬出ステップS-Dと、を有する。
【0036】
搬入ステップS-Aは、搬送ポートGを開け(搬送ポートG:OPEN)、処理室Iの外部に設けられた搬送部から対象物Fを処理室Iに搬入し、搬送ポートGを閉じる(搬送ポートG:CLOSE)。
【0037】
図11は、搬送部の構成例を示す模式図である。搬送部は、サンプル棚Kと、搬送ロボットLと、真空予備室Mと、真空ロボットNと、を有する。
【0038】
対象物Fを処理室Iに搬入するために、サンプル棚Kに対象物Fをセットする。また、制御装置Aにより対象物Fの処理レシピを設定する。この処理レシピは、成膜ステップS-BおよびエッチングステップS-Cのそれぞれにおいて、例えば供給ガス種、供給ガス流量、処理室内圧力、電圧印加条件、ステップ時間等のプロセス条件を示すデータを含む。これらのデータは、例えば制御装置Aに設けられたメモリに記憶されていてもよい。
【0039】
制御装置Aによりステップ開始を指示すると、対象物Fは、サンプル棚Kから搬送ロボットLにより真空予備室Mに搬送される。対象物Fは、真空予備室Mから常時真空雰囲気下で真空ロボットNにより処理室Iに搬送ポートGを介して搬入される(対象物F:IN)。
【0040】
処理室Iに搬入された対象物Fは、
図9に示す昇降機Eにより真空ロボットNのロボットアーム上から持ち上げられる。その後、ロボットアームは、元の位置に戻され、搬送ポートGは閉じられ、昇降機Eにより対象物FをステージJの表面J1に下ろして対象物Fを載置する。
【0041】
次に、制御装置Aにより設定された処理レシピに基づき、成膜ステップS-Bと、エッチングステップS-Cと、を処理室I内においてシームレスに交互に切り替えて繰り返し行う。繰り返し回数は、処理レシピに応じて適宜設定される。
【0042】
成膜ステップS-Bは、まず、ガス供給源B1からパージガスの処理室Iへの導入を開始する(パージガス:ON)。これにより、処理室I内の雰囲気が調整される。この間、成膜ガスおよびエッチングガスの導入は停止される(成膜ガス、エッチングガス:OFF)。次に、パージガスの処理室Iへの導入を停止し(パージガス:OFF)、成膜ガスの処理室Iへの導入を開始する(成膜ガス:ON)。この間、エッチングガスの導入は停止される(エッチングガス:OFF)。
【0043】
成膜ガスが処理室Iに導入されている間、直流電源Dから直流電圧の供給を開始する。これにより、成膜ガスから炭素プラズマ等の第1のプラズマを生成する。直流電圧の電位は、時間経過とともに、正電位(直流電源D:+)、ゼロ電位(直流電源D:0)、負電位((直流電源D:-))に順に切り替えられる。第1のプラズマは、例えば正電位のときに生成され、負電位のときに対象物Fの表面に堆積され、
図7に示す膜113を形成する。なお、正電位、ゼロ電位(無電位)、および負電位の切り替えは、繰り返し行われる。この繰り返し回数は、例えば形成する膜113の厚さ等のパラメータに応じて適宜設定される。直流電圧の電位は、例えば±5kVの範囲で且つ3~5kHzの周波数で変化する。1回あたりの直流電圧の供給時間は、例えば60秒以下である。成膜ガスの流量は、例えば10sccm以上である。処理室Iの圧力は、例えば0.4Pa以下である。成膜ステップS-Bにより例えば厚さ5nm以下の薄い膜113を形成する場合もあるため、成膜速度を制御するために成膜ガスの流量や直流電圧の印加シーケンスを制御することが重要である。
【0044】
所望の厚さを有する膜113の形成後、直流電圧の供給を停止し、成膜ガスの供給を停止する(成膜ガス:OFF)。次に、ガス供給源B1からパージガスの処理室Iへの導入を開始する(パージガス:ON)。パージガスにより処理室I内の雰囲気が調整される。このとき、成膜ガス、エッチングガスの供給は、停止されたままである(成膜ガス、エッチングガス:OFF)。その後、ガス供給源B1からのパージガスの導入を停止する(パージガス:OFF)。
【0045】
エッチングステップS-Cは、成膜ガスおよびパージガスの導入を停止したまま(成膜ガス、パージガス:OFF)、ガス供給源B1からのエッチングガスの処理室Iへの導入を開始する(エッチングガス:ON)。
【0046】
エッチングガスが処理室Iに導入されている間、交流電源Cから交流電圧の供給を開始する(交流電源C:ON)。これにより、エッチングガスから酸素プラズマ等の第2のプラズマを生成する。第2のプラズマにより、
図8に示すように、対象物Fの表面の膜113および混合層120が除去される。1回あたり交流電圧の供給時間は、1回あたりの直流電圧の供給時間よりも長く、例えば除去される膜113の厚さ等のパラメータに応じて適宜設定される。1回あたり交流電圧の供給時間は、例えば120秒以上である。エッチングガスの流量は、例えば30sccm以上である。処理室Iの圧力は、例えば2.7Pa以下である。膜113の除去後、交流電圧の供給を停止し(交流電源C:OFF)、エッチングガスの導入を停止する(エッチングガス:OFF)。
【0047】
第2のプラズマは、酸素プラズマが好ましい。酸素プラズマにより基材111の除去を抑制しつつ膜113および混合層120を除去することができる。
【0048】
成膜ステップS-BおよびエッチングステップS-Cは、処理室I内においてシームレスに交互に切り替えて行われる。成膜ステップS-BおよびエッチングステップS-Cの切り替えは、繰り返し行われる。繰り返し回数は、例えば対象物Fの表面のラフネス等のパラメータに応じて適宜設定される。
【0049】
搬出ステップS-Dは、搬送ポートGを開け(搬送ポートG:OPEN)、
図11に示す搬送部において、真空ロボットNにより搬送ポートGから対象物Fを搬出(対象物F:OUT)して搬送ポートGを閉じる(搬送ポートG:CLOSE)。対象物Fは、真空予備室Mを経て搬送ロボットLによりサンプル棚Kに戻されて対象物処理装置100の外に搬出される。
【0050】
成膜ステップS-Bと、エッチングステップS-Cと、を行うことにより、対象物Fの表面のラフネスを低減できる。例えば、成膜ステップS-BおよびエッチングステップS-Cを1回ずつ行う場合、対象物Fの表面のラフネスは、例えば初期状態の85%程度まで低減できる。また、成膜ステップS-BおよびエッチングステップS-Cを3回以上繰り返す場合、対象物Fの表面のラフネスは、例えば初期状態の74%程度まで低減できる。また、このときのパターン寸法の変動を1nm以下にすることができる。
【0051】
その後、洗浄工程S4により、対象物Fの表面を洗浄する。以上が対象物処理方法の説明である。
【0052】
以上のように、第1の実施形態の対象物処理方法では、一つの対象物処理装置100を用いて処理室I内においてシームレスに炭素膜生成と炭素膜除去とを交互に切り替えて行うことができる。これにより、対象物Fを大気に曝すことなく対象物を処理することができ、対象物Fの表面の酸化および吸湿に応じた膜113の成膜量および除去量の変化を抑制できる。よって、加工寸法を大きく変更することなく、対象物の表面のラフネスを低減することができる。
【0053】
[第2の実施形態]
対象物処理装置100を用いて処理可能な対象物は、テンプレートに限定されない。
図12A、および
図12Bは、対象物の他の例の処理方法例を説明するための断面模式図である。
【0054】
図12Aは、処理室Iに搬入された状態の対象物200の一部を示す。対象物200は、例えばフォトマスクであり、
図12Aに示すように、基板201と、位相シフト膜202と、金属膜211と、酸化膜212と、を有する。
【0055】
基板201は、例えば、石英ガラスであり、シリコンと、酸素と、を含む。
【0056】
位相シフト膜202は、例えば、窒化シリコン膜であり、シリコンと、窒素と、を含む。位相シフト膜202は、基板201の上に設けられる。位相シフト膜202は、基板201を構成する石英ガラスよりも露光光の透過率が低い膜であり、透過光の位相を反転させる性質を有する。また、位相シフト膜202を有するフォトマスクは位相シフトマスクと呼ばれる。
【0057】
金属膜211は、位相シフト膜202の上に設けられる。金属膜211は、例えばクロムを含有する。金属膜211は、エッチングにより位相シフト膜202を加工するために設けられる。
【0058】
酸化膜212は、金属膜211の上に設けられる。酸化膜212は、例えば、酸化シリコン膜であり、シリコンと、酸素と、を含む。酸化膜212は、エッチングにより金属膜211を加工するために設けられる。
【0059】
図12に示す対象物200における酸化膜212は、上面TSを有する凸部213aを有し、金属膜211の上面が下面BSとして露出した凹部213bと、を含むパターンを有する。酸化膜212は、さらに上面TSと下面BSとの間に凸部213aの側面LEを有する。
【0060】
図12Aに示す対象物200は、例えば以下のような手順で形成される。まず、基板201上に位相シフト膜202を形成し、位相シフト膜202の上に金属膜211を形成し、金属膜211の上に酸化膜212を形成し、酸化膜212の上にレジストを形成する。次に、レジストにパターンを現像し、パターンが現像されたレジストを加工マスクとして酸化膜212を部分的にエッチングしてパターンを加工する。この際、レジストのラフネスが酸化膜212に転写されてしまう。その後、酸化膜212の上に残ったレジストを除去することで対象物200が形成される。
【0061】
図12Aに示す対象物200に対し、第1の実施形態と同様に対象物処理装置100を用いて炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を処理室I内においてシームレスに交互に繰り返すことにより、側面LEの表面に存在する凹凸などのラフネスを低減できる。炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3のその他の説明は、第1の実施形態の炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3の説明と同じであるため、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0062】
上記の第1の実施形態と同様の処理を行った後、
図12Bに示すように、ラフネスが低減された酸化膜212をマスクとして金属膜211をエッチングによって加工し、さらに金属膜211をマスクとして位相シフト膜202を加工することにより位相シフト膜202にパターンを転写する。その後、金属膜211を除去することでフォトマスクが製造される。
【0063】
第2の実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0064】
[第3の実施形態]
対象物処理装置100の構成は、
図9に示す構成に限定されない。
図13は、対象物処理装置100の他の構成例を示す模式図である。
図13に示す対象物処理装置100は、
図9に示す対象物処理装置100と同様に、制御装置Aと、ガス供給源B1と、交流電源Cと、直流電源Dと、昇降機Eと、搬送ポートGと、真空排気機構Hと、処理室Iと、ステージJと、を具備する。これらの構成要素の説明については、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。以下
図9に示す対象物処理装置100と異なる部分について説明し、その他の部分については、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0065】
図13に示す対象物処理装置100は、リモートプラズマ源B2をさらに具備する。リモートプラズマ源B2は、ガス供給源B1に接続され、シリンダーキャビネットB1aからマスフローコントローラB1bおよびガスポートB1cを経て供給されるエッチングガスから酸素プラズマ等のリモートプラズマを生成し、供給ゲートB2aを開けることにより、リモートプラズマを処理室Iに供給可能である。供給ゲートB2aはバルブであってもよい。リモートプラズマ源B2は、制御装置Aに接続される。制御装置Aは、リモートプラズマ源B2からのプラズマ供給動作を制御する。リモートプラズマ源B2は、ガス供給源B1とともにプラズマ/イオン供給源を形成する。
【0066】
第1の実施形態と同様に、
図13に示す対象物処理装置100を用いて炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を交互に繰り返すことにより、側面LEの表面のラフネスを低減できる。また、炭素膜除去工程S3において、リモートプラズマ源B2により生成された酸素プラズマ等のリモートプラズマを用いて膜113を除去することができる。
【0067】
図14は、対象物処理方法の例を説明するためのタイミングチャートである。以下では、第1の実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。また、
図14は、便宜のため、昇降機E、対象物F、搬送ポートGのタイミングチャートの図示を省略するが、第1の実施形態と同様の動作を行うものとする。
【0068】
成膜ステップS-Bは、供給ゲートB2aを閉じ(供給ゲートB2a:CLOSE)、リモートプラズマ源B2の動作を停止する(リモートプラズマ源B2:OFF)。
【0069】
エッチングステップS-Cは、成膜ガスおよびパージガスの導入を停止したまま(成膜ガス、パージガス:OFF)、供給ゲートB2aを開け(供給ゲートB2a:OPEN)、その後、リモートプラズマ源B2の動作を開始する(リモートプラズマ源B2:ON)。さらに、ガス供給源B1からのエッチングガスの処理室Iへの導入を開始し(エッチングガス:ON)、交流電圧の供給を開始する(交流電源C:ON)。これにより、エッチングガスから第2のプラズマを生成するとともに、リモートプラズマ源B2から処理室Iにリモートプラズマが供給される。第2のプラズマおよびリモートプラズマにより、対象物Fの表面の膜113および混合層120が除去される。膜113および混合層120の除去後、交流電圧の供給を停止し(交流電源C:OFF)、エッチングガスの導入を停止する(エッチングガス:OFF)。その後、リモートプラズマ源B2の動作を停止し(リモートプラズマ源B2:OFF)、そして供給ゲートB2aを閉じる(供給ゲートB2a:CLOSE)。このように、リモートプラズマの供給時間を第2のプラズマの供給時間よりも長くすることにより、膜113を除去するとともに、処理室Iのクリーニングを行うことができるため、好ましい。
【0070】
なお、交流電源Cを設けることなく、リモートプラズマ源B2により生成されたリモートプラズマだけを用いて膜113を除去してもよい。炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3のその他の説明は、第1の実施形態の炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3の説明と同じであるため、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0071】
第3の実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0072】
[第4の実施形態]
対象物処理装置100の構成は、
図9に示す構成に限定されない。
図15は、対象物処理装置100の他の構成例を示す模式図である。
図15に示す対象物処理装置100は、
図9に示す対象物処理装置100と同様に、制御装置Aと、ガス供給源B1と、交流電源Cと、直流電源Dと、昇降機Eと、搬送ポートGと、真空排気機構Hと、処理室Iと、ステージJと、を具備する。これらの構成要素の説明については、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。以下
図9に示す対象物処理装置100と異なる部分について説明し、その他の部分については、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0073】
図14に示す対象物処理装置100は、アークイオン源B3をさらに具備する。アークイオン源B3は、アーク放電を起こすことにより炭素棒などの固体の炭素ソースから炭素イオンを生成し、炭素イオンを処理室Iに供給可能である。アークイオン源B3には、ガス供給源B1に接続され、シリンダーキャビネットB1aからマスフローコントローラB1bからキャリアガスが導入されてもよい。キャリアガスは例えば、希ガスなどである。供給ゲートB3aを開けることにより、炭素イオンをアークイオン源B3から処理室Iに導入可能である。供給ゲートB3aはバルブであってもよい。アークイオン源B3は、制御装置Aに電気的に接続される。制御装置Aは、アークイオン源B3からのイオン供給動作を制御する。
【0074】
第1の実施形態と同様に、
図15に示す対象物処理装置100を用いて炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3を交互に繰り返すことにより、側面LEの表面のラフネスを低減できる。また、炭素膜形成工程S2において、アークイオン源B3により生成された炭素イオンを用いて膜113を形成することができる。
【0075】
図16は、対象物処理方法の例を説明するためのタイミングチャートである。以下では、第1の実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。また、
図16は、便宜のため、昇降機E、対象物F、搬送ポートGのタイミングチャートの図示を省略するが、第1の実施形態と同様の動作を行うものとする。
【0076】
成膜ステップS-Bは、まず、ガス供給源B1からパージガスの処理室Iへの導入を開始する(パージガス:ON)。これにより、処理室I内の雰囲気が調整される。この間、成膜ガスおよびエッチングガスの導入は停止される(成膜ガス、エッチングガス:OFF)。また、供給ゲートB3aは閉じられている(供給ゲートB3a:CLOSE)。次に、パージガスの処理室Iへの導入を停止し(パージガス:OFF)、成膜ガスの処理室Iへの導入を開始する(成膜ガス:ON)。この間、エッチングガスの導入は停止される(エッチングガス:OFF)。
【0077】
成膜ガスが処理室Iに導入されている間、直流電源Dから直流電圧の供給を開始する。これにより、成膜ガスから第1のプラズマを生成する。第1のプラズマは、例えば正電位のときに生成され、負電位のときに対象物Fの表面に堆積され、
図7に示す膜113を形成する。なお、正電位、ゼロ電位(無電位)、および負電位の切り替えは、繰り返し行われる。
【0078】
成膜ガスが処理室Iに導入されている間、アークイオン源B3の動作を開始し(アークイオン源B3:ON)、供給ゲートB3aを開ける(供給ゲートB3a:OPEN)。これにより、アークイオン源B3により生成された炭素イオンが処理室Iに供給される。炭素イオンは、第1のプラズマとともに対象物Fの表面に堆積され、膜113を形成する。膜113の形成後、供給ゲートB3aを閉じ(供給ゲートB3a:CLOSE)、その後、成膜ガスの供給を停止する(成膜ガス:OFF)。供給ゲートB3aを閉じた後に成膜ガスの供給を停止することにより、ガス供給源B1への炭素イオンの逆流を抑制できる。
【0079】
エッチングステップS-Cは、供給ゲートB3aを閉じ(供給ゲートB3a:CLOSE)、アークイオン源B3の動作を停止する(アークイオン源B3:OFF)。なお、アークイオン源B3は、動作したままであってもよい。
【0080】
なお、炭素膜形成工程S2において、直流電源Dを設けることなく、アークイオン源B3により生成された炭素イオンだけを用いて膜113を形成してもよい。アークイオン源B3は、微少量のイオンであっても供給できるため、イオンの堆積量を細かく調整できる。炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3のその他の説明は、第1の実施形態の炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3の説明と同じであるため、第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0081】
第4の実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。例えば、
図9に示す対象物処理装置100は、第3の実施形態におけるリモートプラズマ源B2と、第4の実施形態におけるアークイオン源B3と、を両方具備していてもよい。
【0082】
[第5の実施形態]
図9に示す対象物処理装置100を用いた対象物処理方法は、炭素膜形成工程S2および炭素膜除去工程S3の前に対象物Fの表面のクリーニングを行ってもよい。クリーニングは、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガス、酸素、または窒素から生成されたプラズマに対象物Fの表面を曝露することにより行われる。クリーニングに用いられるプラズマは、例えば、交流電源Cにより交流電圧を処理室Iに供給し、シリンダーキャビネットB1aからマスフローコントローラB1bおよびガスポートB1cを経て供給されるガスから生成可能である。
【0083】
クリーニングは、1回目の炭素膜形成工程S2の前に行われればよく、2回目以降の炭素膜形成工程S2の前に行わなくてもよい。
【0084】
第5の実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0085】
[第6の実施形態]
図9に示す対象物処理装置100を用いた対象物処理方法は、炭素膜形成工程S2により形成される膜113の厚さを測定し、測定された厚さに応じて炭素膜除去工程S3におけるエッチングステップS-Cのステップ時間を決定するように処理レシピを用いて設定してもよい。
【0086】
膜113の厚さを測定する方法としては、処理室Iを大気開放することなく測定できる方法が好ましく、例えば処理室Iの筐体I1に設置されたビューポートを形成し、ビューポートから光を対象物Fの表面に入射し、光の透過率を測定することにより膜厚を算出する方法がある。対象物Fの光の反射率が高い場合、光の干渉を利用して膜113の厚さを測定することもできる。算出された厚さを有する膜113を除去するために十分なエッチング条件のステップ時間は、例えば、膜113の厚さがT[nm]により表され、膜113の除去レートがS[nm/s]により表され、オーバーエッチング率がOver[%]により表されるとき、(T/S)(1+Over/100)[s]により決定される。
【0087】
第6の実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0088】
[第7の実施形態]
図9に示す対象物処理装置100を用いた対象物処理方法は、磁性体を用いて炭素膜形成工程S2を行ってもよい。
【0089】
図17は、磁性体を用いた炭素膜形成工程S2の例を説明するための模式図である。
図17は、トレイ121と、磁性体122と、を有する構造物102を示す。構造物102は、対象物Fとともに搬送部を用いて搬入および搬出される。
【0090】
トレイ121は、対象物Fを収容可能である。トレイ121は、例えばプラスチック等の樹脂材料を用いて形成できる。トレイ121は、誘電体であることが好ましい。誘電体は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂が挙げられる。トレイ121は、耐熱性が高く、耐磨耗性や寸法安定性に優れる材料により構成されることが好ましい。
【0091】
磁性体122は、対象物Fの下に位置するようにトレイ121に埋め込まれるとともにZ軸方向において対象物Fの収容部に重なる。磁性体122は、対象物Fに面するS極領域122aと、対象物Fの反対側のN極領域122bと、を有する。磁性体122は、凹部123の底面124に平行な方向において、単一の極性を有する。磁性体122は、トレイ121上に設けられるとともにトレイ121に対して着脱可能であってもよい。磁性体122は、例えば強磁性体である。強磁性体の例は、強磁性体の例は、フェライト、サマリウム-コバルト合金、ネオジム、鉄-アルミニウム-シリコン系合金等の材料を用いた永久磁石等の硬磁性体を含む。磁性体122は、電極J2に埋め込まれていてもよい。
【0092】
炭素膜形成工程S2では、前述のとおり、直流電圧を供給して成膜ガスからプラズマを生成する。このとき、磁性体122により対象物Fと交差する方向において、S極領域122aからN極領域122bに向かって磁力線MLが形成される。
【0093】
プラズマを生成する際、電極J2の温度は、例えば温度制御機構により磁性体122がキュリー温度未満の温度になるように調整されることが好ましい。ネオジム等の希土類元素を含有する永久磁石は、熱の影響を受けやすい。成膜処理に用いられるプラズマが熱源となるため、磁性体122の温度を制御することにより、磁性体122の特性を維持できる。例として、ネオジムのキュリー温度は、約330℃である。
【0094】
図18は、磁性体122を有する場合の炭素膜形成工程S2における、炭素イオン等の陽イオンPの挙動を説明するための模式図である。磁性体122を有する場合、陽イオンPは、磁力線MLに基づく磁界に応じて加速される。加速された陽イオンPにはローレンツ力が作用する。このローレンツ力は、フレミングの左手の法則に従って、陽イオンPの運動をらせん運動に変化させる。すなわち、陽イオンPは、
図18に示すように、電極J2の表面と交差する方向に対し、らせん状に移動するらせん運動を行う。この場合、直線運動よりも陽イオンPの滑走量を増やすことができるため、上面TSに対して側面LEへの陽イオンPの堆積量を増やすことができる。なお、らせん運動の角速度は、磁性体の磁束密度に比例するため、磁束密度を高くするほどらせん運動が大きくなり、直線運動よりも陽イオンPの滑走量を増やすことができる。
【0095】
第7の実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
100…対象物処理装置、102…構造物、111…基材、112…インプリントパターン、112a…凸部、112b…凹部、113…膜、120…混合層、121…トレイ、122…磁性体、122a…S極領域、122b…N極領域、123…凹部、124…底面、200…対象物、201…基板、202…位相シフト膜、211…金属膜、212…マスク膜、213a…凸部、213b…凹部、A…制御装置、B1…ガス供給源、B1a…シリンダーキャビネット、B1b…マスフローコントローラ、B1c…ガスポート、B2…リモートプラズマ源、B2a…供給ゲート、B3…アークイオン源、B3a…供給ゲート、BS…下面、C…交流電源、C1…電極、CO…溝、D…直流電源、E…昇降機、E1…リフト、F…対象物、G…搬送ポート、H…真空排気機構、I…処理室、I1…筐体、J…ステージ、J1…表面、J2…電極、K…サンプル棚、L…搬送ロボット、LE…側面、M…真空予備室、ML…磁力線、MS…表面、N…真空ロボット、P…陽イオン、S-A…搬入ステップ、S-B…成膜ステップ、S-C…エッチングステップ、S-D…搬出ステップ、S1…パターン形成工程、S2…炭素膜形成工程、S3…炭素膜除去工程、S4…洗浄工程、TS…上面。