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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043390
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/84 20060101AFI20240322BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148558
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀田 大吾
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅秀
(72)【発明者】
【氏名】水梨 琢也
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM04
4F206AP10
4F206AP18
4F206AP20
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL07
4F206JL09
4F206JP05
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP21
4F206JP27
4F206JQ06
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】部品の履歴を適切に管理する。
【解決手段】一実施形態に係る射出成形機は、コントローラと、当該射出成形機に対して着脱可能な部品と、部品毎に履歴情報を記憶する記憶媒体と、を備え、コントローラは、第1部品の着脱に関する変化を検出した場合に、第1部品が交換されたことを示す情報を履歴情報に追加する、第1部品の履歴情報の初期化する旨を出力する、又は、第1部品の履歴情報を初期化する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラと、
当該射出成形機に対して着脱可能な部品と、
前記部品毎に履歴情報を記憶する記憶媒体と、を備え、
前記コントローラは、第1部品の着脱に関する変化を検出した場合に、前記第1部品が交換されたことを示す情報を前記履歴情報に追加する、前記第1部品の前記履歴情報の初期化する旨を出力する、又は、前記第1部品の前記履歴情報を初期化する、
射出成形機。
【請求項2】
前記記憶媒体は、前記部品の前記履歴情報として、前記第1部品の交換した履歴を保持する交換履歴情報と、前記射出成形機の動作によって前記第1部品に生じた負荷を保持する負荷履歴情報と、を備え、
前記コントローラは、前記第1部品の着脱に関する変化を検出した場合又は前記第1部品の前記履歴情報の初期化する旨を出力した場合に、前記第1部品が交換されたことを示す情報を前記交換履歴情報に追加し、前記第1部品の前記負荷履歴情報の初期化を実行する、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記コントローラは、前記射出成形機における動作時間又は通電時間に基づいた値を、前記部品の負荷を示す情報として、前記負荷履歴情報を更新する、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記コントローラは、前記射出成形機における動作時間又は通電時間を、前記部品の動作状況に基づいて補正した値を、前記部品の負荷を示す情報とする、
請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記第1部品は、前記第1部品を識別する第1識別情報を格納した記憶媒体を備え、
前記射出成形機に設けられた前記記憶媒体は、前記第1部品を識別する第2識別情報が格納され、
前記コントローラは、前記第1識別情報と、前記第2識別情報と、が一致するか否かを、前記第1部品の着脱に関する変化として検出する、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から射出成形機においては、射出成形機に設けられた部品の履歴を管理する技術が提案されている。例えば、特許文献1は、1回のショットで生じる負荷とショット数とに基づいて、部品の劣化度合いを推定し、当該劣化度合いを管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-087587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、ショット数に応じて劣化度合いを推定しているので、部品の交換を行ったタイミングで、劣化度合いを初期化する必要がある。劣化度合いの初期化は、客先で行うことも多い。このため、作業者による初期化の操作の失念などによって、劣化度合いの初期化が行われない場合もあり得る。この場合、部品の劣化度合いが適切に管理されていないという状況が生じる。
【0005】
本発明の一態様は、部品の着脱に関する変化を検出した場合に、射出成形機に格納されている部品の履歴に関する情報を処理することで、部品の履歴を適切に管理する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る射出成形機は、コントローラと、当該射出成形機に対して着脱可能な部品と、部品毎に履歴情報を記憶する記憶媒体と、を備え、コントローラは、第1部品の着脱に関する変化を検出した場合に、第1部品が交換されたことを示す情報を履歴情報に追加する、第1部品の履歴情報の初期化する旨を出力する、又は、第1部品の履歴情報を初期化する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、部品の履歴を適切に管理する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る射出成形機の制御装置の構成要素と、射出成形機に装着された部品の記憶媒体と、を機能ブロックで示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る交換履歴記憶部のテーブル構造を例示した図である。
図5図5は、一実施形態に係る表示制御部が表示する部品毎の負荷の一覧表示の画面例を示している。
図6図6は、一実施形態に係る制御装置における部品交換に関する第1の制御を示したフローチャートである。
図7図7は、一実施形態に係る表示制御部により表示される、交換された部品の通知画面を例示した図である。
図8図8は、一実施形態に係る表示制御部が表示する、部品交換後の部品毎の負荷の一覧表示の画面例を示している。
図9図9は、一実施形態に係る制御装置における部品交換に関する第2の制御を示したフローチャートである。
図10図10は、一実施形態に係る表示制御部により表示される、部品が交換された否かの確認画面を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、第1の実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0011】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0012】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0013】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0014】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0015】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0016】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0017】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0018】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0019】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0020】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0021】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0022】
なお、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0023】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0024】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0025】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0026】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0027】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0028】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0029】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0030】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0031】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0032】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0033】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0034】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0035】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0036】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0037】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0038】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0039】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0040】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0041】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0042】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0043】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0044】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0045】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0046】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0047】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0048】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0049】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0050】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0051】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0052】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0053】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、シリンダ310内で計量された成形材料を、金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0054】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0055】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0056】
シリンダ310及びノズル320の組み合わせは、温度制御を行うために、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0058】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0059】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0060】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0061】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0062】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0063】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0064】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0065】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0066】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0067】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0068】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0069】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0070】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0071】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0072】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0073】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0074】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0075】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0076】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0077】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0078】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0079】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0080】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0081】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0082】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0083】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0084】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0085】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0086】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0087】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0088】
(部品毎の記憶媒体)
本実施形態に係る射出成形機10には、当該射出成形機10に着脱可能な部品毎に、記憶媒体が設けられている。例えば、計量モータエンコーダ341には記憶媒体341Aが設けられている。射出モータエンコーダ351には記憶媒体351Aが設けられている。運動変換機構170には記憶媒体170Aが設けられている。
【0089】
本実施形態においては、交換可能な部品であれば記憶媒体を装着してよい。例えば、型締モータエンコーダ161に記憶媒体が設けられてもよい。トグル機構150に記憶媒体が設けられてもよい。射出成形機10の電源関係の回路が搭載された(図示しない)IPM(Intelligent Power Module)に記憶媒体が設けられてもよい。また、計量モータ340、射出モータ350、及び型締モータ160の各々に記憶媒体が設けられてもよい。
【0090】
部品に設けられた記憶媒体(例えば、記憶媒体341A、351A、170A)は、制御装置700と有線又は無線によって接続されている。制御装置700と無線で接続される場合には、例えば、記憶媒体は、非接触型のICチップとして設けられ、制御装置700に接続されている(図示しない)無線通信装置から出力される無線信号によって、通信及び発電を実現してもよい。これにより、記憶媒体は、制御装置700に直接接続されずとも、制御装置700からの制御に従って、情報の読み込み等を実現できる。
【0091】
(制御装置)
制御装置700(コントローラの一例)は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704と、通信インターフェース705とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0092】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0093】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0094】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0095】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0096】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0097】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0098】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。
【0099】
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。タッチパネル770は、表示された画面領域に操作を受け付け可能とする。また、タッチパネル770の画面領域には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0100】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。操作装置750は、例えば、物理的に設けられたボタン、又は表示装置760に表示されるソフトウェアキーボード等から、数値又は文字の入力を受け付け可能とする。
【0101】
(第1の実施形態)
図3は、一実施形態に係る射出成形機10の制御装置700の構成要素と、射出成形機10に装着された部品の記憶媒体と、を機能ブロックで示す図である。
【0102】
射出成形機10の制御装置700は、射出成形機10に装着された部品に設けられた記憶媒体から情報を読み込み可能に接続されている。図3に示される例では、計量モータエンコーダ341の記憶媒体341Aと、射出モータエンコーダ351の記憶媒体351Aと、運動変換機構170の記憶媒体170Aと、を示している。図3では、説明を容易にするために、記憶媒体341A、351A、170Aのみ示しているが、部品に設けられている記憶媒体であれば、制御装置700は情報を読み込み可能とする。
【0103】
計量モータエンコーダ341の記憶媒体341Aには、計量モータエンコーダ341の識別情報が格納されている。識別情報は、計量モータエンコーダ341を識別可能な情報であればよく、例えば製造番号とする。
【0104】
射出モータエンコーダ351の記憶媒体351Aには、射出モータエンコーダ351の識別情報が格納されている。識別情報は、射出モータエンコーダ351を識別可能な情報であればよく、例えば製造番号とする。
【0105】
運動変換機構170の記憶媒体170Aには、運動変換機構170の識別情報が格納されている。識別情報は、運動変換機構170を識別可能な情報であればよく、例えば製造番号とする。
【0106】
制御装置700のCPU701の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。図3に示すように、制御装置700のCPU701は、取得部711と、負荷算出部712と、書込制御部713と、判定部714と、表示制御部715と、リセット制御部716と、を備える。また、制御装置700は、記憶媒体702に、負荷履歴記憶部721と、交換履歴記憶部722と、を備える。
【0107】
負荷履歴記憶部721は、射出成形機10の射出成形(動作の一例)によって部品に生じた負荷の履歴を記憶する。例えば、負荷履歴記憶部721は、部品の識別情報と、当該部品が装着されてから当該部品に生じた負荷の合計値と、を対応付けて記憶する。詳細な例としては、負荷履歴記憶部721は、計量モータエンコーダ341、射出モータエンコーダ351、及び運動変換機構170の各々について、部品の識別情報と対応付けて、負荷の合計値を記憶している。
【0108】
負荷履歴記憶部721が負荷の履歴を記憶する部品は、射出成形機10に着脱可能な部品であればよく、例えば、シリンダ310、スクリュ330、射出モータ350、及び計量モータ340も含まれる。負荷履歴記憶部721が負荷の履歴を記憶する部品は、図1に示されていない部品でもよく、例えば、射出成形機10の電源を管理するためのIPMでもよい。また、部品に記憶媒体が設けていない場合であっても、負荷履歴記憶部721は、当該部品の識別情報と対応付けずに、当該部品の負荷の履歴を記憶してもよい。
【0109】
交換履歴記憶部(交換履歴情報の一例)722は、射出成形機10で交換された部品の履歴を保持する。図4は、本実施形態に係る交換履歴記憶部722のテーブル構造を例示した図である。図4に示されるように、交換履歴記憶部722は、交換部品(交換された部品の名称)と、交換日と、を対応付けて記憶している。図4に示される例では、交換履歴記憶部722は、2008年9月12日に計量モータエンコーダ341と、射出モータエンコーダ351とが初回取り付けが行われたことが格納されている。さらに、交換履歴記憶部722は、計量モータエンコーダ341、及び射出モータエンコーダ351の各々について、部品が交換されたことが交換日とともに格納されている。なお、交換履歴記憶部722が、交換を管理する部品を、計量モータエンコーダ341及び射出モータエンコーダ351に制限するものではなく、射出成形機10で交換可能な部位であれば管理の対象とする。また、交換履歴記憶部722は、管理する部品毎に設けられてもよい。
【0110】
取得部711は、射出成形機10に関する様々な情報を取得する。例えば、取得部711は、射出成形機10で射出成形を行うために部品に設定されている設定情報を取得する。例えば、取得部711は、運動変換機構170に生じている負荷を算出するために金型装置800の型締に関する設定情報を取得してもよい。
【0111】
さらに、取得部711は、射出成形機10に設けられた各種センサから検出結果を取得する。例えば、取得部711は、運動変換機構170に設けられた検出器から、運動変換機構170に生じている応力又は荷重の検出結果を取得してもよい。
【0112】
本実施形態に係る取得部711が取得する情報は、上述した情報に制限するものではなく、負荷履歴情報として格納される情報、又は格納される情報を算出するための情報であればよい。
【0113】
負荷算出部712は、取得部711が取得した情報に基づいて、部品毎の負荷情報を算出する。例えば、負荷算出部712は、部品に設定されている設定情報、又は各種センサによって検出された実測値等に基づいて、部品で生じている負荷情報を算出する。算出された負荷は、当該負荷が生じているサイクル数、又は動作時間に基づいて補正を行なってもよい。
【0114】
例えば、負荷算出部712は、計量モータエンコーダ341及び射出モータエンコーダ351の各々の負荷情報を算出する。計量モータエンコーダ341及び射出モータエンコーダ351の負荷情報は、部品で生じている負荷に関連する情報であればよく、例えば、サイクル数又は動作時間でもよいし、当該部品に関連するセンサの検出結果等から導出した消耗度合い等でもよい。
【0115】
他の例としては、負荷算出部712は、運動変換機構170の負荷情報を算出する。運動変換機構170の負荷情報は、運動変換機構170に生じている応力又は荷重の検出結果に基づいて算出された負荷を示す数値でもよい。また、運動変換機構170の負荷情報は、金型装置800の型締に関する設定情報に基づいて算出された運動変換機構170で生じている負荷を示す数値でもよい。さらには、運動変換機構170の負荷情報は、サイクル数又は動作時間でもよい。
【0116】
本実施形態に係る負荷算出部712は、負荷履歴記憶部721に負荷の履歴が記憶されている部品毎に、負荷情報を算出する。本実施形態においては、動作時間(サイクル数含む)又は通電時間を、当該部品の動作状況に基づいて補正して、負荷情報を算出してもよい。
【0117】
例えば、負荷履歴記憶部721に射出モータ350の負荷の履歴が記憶されている場合、負荷算出部712は、射出モータ350の負荷情報を算出する。負荷算出部712は、射出モータ350の負荷情報を導出するための負荷参照テーブルを保持している。負荷参照テーブルは、運転周波数、キャリア周波数、及び出力電流値の組み合わせ(動作状況の一例)と、射出モータ350で生じた負荷と、を対応付けた3次元テーブルとする。そして、負荷算出部712は、負荷参照テーブルを参照して、取得部711が取得した、運転周波数、キャリア周波数、及び出力電流値に基づいて、射出モータ350で生じた負荷情報を導出する。そして、負荷算出部712は、導出した負荷情報を、サイクル毎の射出モータ350の負荷とする。複数サイクルで射出成形が行われた場合に、後述する書込制御部713が、負荷情報×サイクル数を、負荷履歴記憶部721が保持している、射出モータ350の負荷の履歴に加算していく。これにより、負荷履歴記憶部721には、射出モータ350で生じた負荷情報の合計が保持される。負荷情報は、例えば、部品に生じた負荷の大きさを数値で示した情報とするが、当該負荷を表現できる情報であればよい。
【0118】
例えば、負荷履歴記憶部721にIPMの負荷の履歴が記憶されている場合、負荷算出部712は、IPMの負荷情報を算出する。負荷算出部712は、IPMの現在の設定から流れている電流値を推定する、又は各種センサによって検出された電流値を算出する。そして、負荷算出部712は、IPMの熱回路モデルを予め保持し、当該熱回路モデル及び電流値から、IPMの発熱量(動作状況の一例)を算出する。そして、発熱量とIPMの負荷との対応関係を予め保持し、当該対応関係及び発熱量に基づいて、IPMで生じている負荷を表す負荷情報を算出する。そして、後述する書込制御部713が、算出した負荷情報を、負荷履歴記憶部721が保持している、IPMの負荷の履歴に加算していく。これにより、負荷履歴記憶部721には、IPM720で生じた負荷情報の合計が保持される。
【0119】
負荷算出部712は、上述した部品と同様に、射出成形機10に設けられた部品毎に負荷情報の算出手法を備えている。例えば、負荷算出部712は、取得部711が取得した、射出成形機10の動作時間(サイクル数含む)又は通電時間に基づいて、シリンダ310及びスクリュ330の負荷情報を算出してもよい。
【0120】
なお、負荷情報の算出手法は、一例を示したものであって、部品毎に適切な負荷情報の算出手法を用いてよい。そして、部品毎に算出された負荷情報は、部品毎に設けられた記憶媒体に格納される。このように、本実施形態においては、各部品が、自部品で生じている負荷情報の合計を保持できる。
【0121】
書込制御部713は、射出成形機10による射出成形(動作の一例)で生じたものとして負荷算出部712により算出された部品毎の負荷情報を、負荷履歴記憶部721に書き込み制御を行う。
【0122】
例えば、書込制御部713は、計量モータエンコーダ341用に算出された負荷情報を、計量モータエンコーダ341の識別情報と対応付けられている、負荷の履歴に加算する。例えば、書込制御部713は、射出モータエンコーダ351用に算出された負荷情報を、射出モータエンコーダ351の識別情報と対応付けられている、負荷の履歴に加算する。例えば、書込制御部713は、運動変換機構170用に算出された負荷情報を、運動変換機構170の識別情報と対応付けられている、負荷の履歴に加算する。
【0123】
また、書込制御部713は、部品の負荷の履歴が、当該部品の識別情報と対応付けられてなくても、当該部品の負荷情報に基づいて、当該部品の負荷の履歴の書き込み制御を行ってもよい。
【0124】
例えば、書込制御部713は、射出モータ350用に算出された負荷情報を、射出モータ350の負荷の履歴に加算してもよい。さらに、書込制御部713は、IPM用に算出された負荷情報を、IPMの負荷の履歴に加算してもよい。
【0125】
他の例としては、書込制御部713は、射出モータ350用に算出された負荷情報を、射出モータ350の負荷の履歴に加算してもよい。さらに、書込制御部713は、IPM用に算出された負荷情報を、IPMの負荷の履歴に加算してもよい。さらに、書込制御部713は、シリンダ310用に算出された負荷情報を、シリンダ310の負荷の履歴に加算してもよい。さらに、書込制御部713は、スクリュ330用に算出された負荷情報を、スクリュ330の負荷の履歴に加算してもよい。
【0126】
判定部714は、射出成形機10に設けられた部品の着脱に関する変化を検出したか否かを判定する。
【0127】
識別情報が格納された記憶媒体が部品に設けられている場合、判定部714は、当該部品に設けられた記憶媒体に格納された識別情報と、記憶媒体702の負荷履歴記憶部721に格納された識別情報と、が一致しているか否かを判定する。
【0128】
当該判定を行うタイミングは、例えば射出成形機10の電源が起動した後でもよい。また、電源をオンの状態で交換が可能な部品も存在する。このため、判定部714は、所定時間(例えば数分)毎に判定を行ってもよい。
【0129】
本実施形態に係る判定部714は、部品が交換されたか否かの判定を識別情報が一致しているか否かに制限するものではない。例えば、判定部714は、射出成形機10のメンテナンスカバーが取り外されたか否かを検知してもよい。つまり、判定部714は、メンテナンスカバーが取り外された場合には、メンテナンスカバー内の部品が交換された可能性があるものとして判定する。
【0130】
表示制御部715は、表示装置760に対して情報を表示する制御を行う。例えば、表示制御部715は、部品の負荷の一覧表示を制御する。
【0131】
図5は、本実施形態に係る表示制御部715が表示する部品毎の負荷の一覧表示の画面例を示している。図5に示される画面例では、部品毎に負荷情報の合計値が表されている。図5で示される例では、射出モータエンコーダ351の負荷情報の合計値1401と、計量モータエンコーダ341の負荷情報の合計値1402と、運動変換機構170の負荷情報の合計値1403と、を示している。また、画面例においては、部品毎の負荷情報をリセットするリセットボタンが設けられてもよい。さらに、部品を交換していないにも関わらず、部品を交換されたと判定される可能性も存在する。そのため、画面例においては、部品毎の負荷情報のリセットが行われた場合に、当該リセットをキャンセルするキャンセルボタンを表示してもよい。
【0132】
図5に示される例では、部品毎の負荷情報が棒グラフとして表示される。そして、当該棒グラフには、交換推奨と、中止と、が示されている。つまり、負荷情報の合計値が交換推奨を示す値まで増加した場合に当該部品の交換を推奨することを示している。負荷情報の合計値が中止を示す値まで増加した場合に射出成形機10の動作を中止することを示している。
【0133】
図5に示される負荷の一覧表示の画面は、例えば、ユーザの操作に従って、表示装置760に表示される。当該画面が表示されることで、ユーザは、部品毎の交換時期を認識できる。
【0134】
リセット制御部716は、部品の交換が行われた条件を満たした場合に、当該部品の負荷の履歴に示された負荷情報の合計値を初期化する。さらに、リセット制御部716は、交換された部品を識別する情報(例えば、部品の名称)を、交換履歴記憶部722に登録する。初期化等を行うための具体的な条件については後述する。
【0135】
従来、ユーザが部品の交換を行った場合、交換した部品の負荷情報の初期化は、ユーザが行う必要があった。これに対して、本実施形態においては、部品が交換されたか否かを検知し、検知結果に応じて負荷の履歴を更新する。次に、本実施形態に係る制御装置700における部品の交換に関する具体的な制御について説明する。
【0136】
図6は、本実施形態に係る制御装置700における部品交換に関する第1の制御を示したフローチャートである。
【0137】
まず、取得部711は、部品毎に、当該部品に設けられた記憶媒体から識別情報を取得する(S801)。
【0138】
そして、判定部714は、取得した識別情報(第1識別情報)が、負荷履歴記憶部721に記憶されている識別情報(第2識別情報)と異なるか否かを判定する(S802)。異ならない、換言すれば全ての部品の識別情報が一致していると判定した場合(S802:NO)、特に処理を行わずに終了する。
【0139】
そして、判定部714は、取得した識別情報が、負荷履歴記憶部721に記憶されている識別情報と異なる、換言すれば識別情報が一致していない部品が存在すると判定した場合(S802:YES)、表示制御部715が、交換された部品の履歴をリセットする旨が示された通知画面を表示する(S803)。
【0140】
図7は、本実施形態に係る表示制御部715により表示される、交換された部品の通知画面を例示した図である。図7は、計量モータエンコーダ341の記憶媒体341Aに格納された識別情報が、記憶媒体702の負荷履歴記憶部721に記憶された識別情報と一致しないと判定された場合に表示される画面とする。
【0141】
図7に示されるように部品の交換を検知した場合に、通知画面1501がポップアップ表示される。そして、当該通知画面1501では、部品の交換が行われた旨と当該部品の負荷の履歴をリセットする旨と、が表される。本実施形態では、当該通知画面1501に、部品の交換が検知されたことを表している。さらに、当該通知画面1501では、リセットする旨の通知として、当該部品の負荷の履歴をリセットすることについて承諾を求める旨として、「軽量モータエンコーダの負荷をリセットしてもよろしいでしょうか?」という文章が表される。あわせて、当該通知画面1501では、"はい"ボタン1502と、"いいえ"ボタン1503と、が表される。"はい"ボタン1502が押下された場合にはリセットを承諾することを示し、"いいえ"ボタン1503が押下された場合にはリセットを承諾しない旨が示されている。なお、本実施形態は、交換を検知した場合の画面の一例を示したものであって、リセットする旨の通知の他の例としては、リセットした方がよいのではないか、というアドバイスを表したり、警告を表する、または、リセットをキャンセルしない場合にはリセットされる旨を表することも考えられる。
【0142】
判定部714は、"いいえ"ボタン1503の押下を受け付けた場合、換言すれば、受け付けた操作がリセット承諾ではないと判定した場合(S804:NO)、表示制御部715が、異常が生じた旨を表示して(S807)、処理を終了する。つまり、制御装置700は、識別情報が一致していないと判定したにも関わらず、部品の交換が行われていない以上、識別情報の読み込み等に異常が生じた可能性が高いので、異常が生じた旨を表示する。
【0143】
一方、判定部714は、"はい"ボタン1502の押下を受け付けた場合、換言すれば、受け付けた操作がリセット承諾であると判定した場合(S804:YES)、リセット制御部716は、交換された部品を識別する情報(例えば、部品の名称)を、日付と共に、交換履歴記憶部722に追加する(S805)。
【0144】
リセット制御部716は、負荷履歴記憶部721に対して、当該部品に対応する負荷の履歴をリセット(初期化)すると共に、当該部品の識別情報を、S801で取得した識別情報に更新する(S806)。
【0145】
本実施形態に係る制御装置700では、上述した制御を行うことで、交換履歴記憶部722に交換された部品の情報を追加すると共に、負荷履歴記憶部721について交換された部品の負荷の履歴が初期化される。
【0146】
図8は、本実施形態に係る表示制御部715が表示する、部品交換後の部品毎の負荷の一覧表示の画面例を示している。図8に示される画面例では、部品毎に負荷情報の合計値が表されている。図8で示される例では、射出モータエンコーダ351の負荷情報の合計値1401と、計量モータエンコーダ341の負荷情報の合計値1601と、運動変換機構170の負荷情報の合計値1403と、を示している。
【0147】
図8に示される例では、計量モータエンコーダ341が交換されたため、負荷情報の合計値1601が初期化されている。当該画面が表示されることで、ユーザは、計量モータエンコーダ341が交換されたことを認識できる。
【0148】
本実施形態に係る部品の負荷の履歴の初期化は、識別情報に基づいた部品の交換の検知に制限するものでない。例えば、射出成形機10のメンテナンスカバーが外された場合に、部品が交換された可能性があるものとして処理を行ってもよい。次に、メンテナンスカバーに基づいた処理について説明する。
【0149】
図9は、本実施形態に係る制御装置700における部品交換に関する第2の制御を示したフローチャートである。
【0150】
まず、取得部711は、(図示しない)メンテナンスカバー等の状態を示した検知信号をセンサ等から取得する(S901)。
【0151】
そして、判定部714は、取得した検出信号に基づいて、メンテナンスカバーが開けられたか否かを判定する(S902)。メンテナンスカバーが開けられていないと判定した場合(S902:NO)。特に処理を行わずに終了する。
【0152】
一方、判定部714は、取得した検出信号に基づいて、メンテナンスカバーが開けられたと判定した場合(S902:YES)、表示制御部715は、部品交換が行われたか否かの確認画面を表示する(S903)。
【0153】
図10は、本実施形態に係る表示制御部715により表示される、部品が交換された否かの確認画面を例示した図である。
【0154】
図10に示されるようにメンテナンスカバーが開けられたことを検知した場合に、確認画面1001がポップアップ表示される。当該確認画面1001ではメンテナンスカバーが開けられたため、メンテナンスカバーを開けた場合に着脱可能な部品が交換されたか否かの確認が行われる。
【0155】
確認画面1001では、メンテナンスカバーが開けられ旨と、部品交換が行われたかを確認する旨と、が表される。さらに当該確認画面1001では、交換された部品を選択することができる。例えば、確認画面1001では、"シリンダ単体"ボタン1002と、"シリンダアッセンブリ全体"ボタン1003と、"交換していません"ボタン1004と、が表示される。
【0156】
"シリンダ単体ボタン"1002は、シリンダ310のみが交換されたことを示し、"シリンダアッセンブリ全体"ボタン1003は、複数の部品の組み合わせ(シリンダ310及びスクリュ330の組み合わせ)が交換されたことを示し、"交換していません"ボタン1004は、部品が交換されなかったことを示している。
【0157】
判定部714は、"交換していません"ボタン1004の押下を受け付けた場合、換言すれば、部品交換されてない旨の操作を受け付けたと判定した場合(S904:NO)、特に処理を行わずに終了する。
【0158】
一方、判定部714は、"シリンダ単体"ボタン1002又は"シリンダアッセンブリ全体"ボタン1003の押下を受け付けた場合、換言すれば、部品交換された旨の操作を受け付けたと判定した場合(S905:NO)、リセット制御部716は、交換された部品を識別する情報(例えば、部品の名称)を、交換履歴記憶部722に追加する(S905)。"シリンダ単体"ボタン1002を押下された場合に、リセット制御部716は、シリンダ310を識別する情報(例えば、部品の名称)を、交換履歴記憶部722に追加する。"シリンダアッセンブリ全体"ボタン1003を押下された場合に、リセット制御部716は、シリンダアッセンブリを構成する部品の各々を識別する情報(例えば、部品の名称)を、交換履歴記憶部722に追加する。
【0159】
リセット制御部716は、負荷履歴記憶部721に対して、当該部品に対応する負荷の履歴をリセット(初期化)する(S906)。リセット制御部716は、"シリンダ単体"ボタン1002を押下された場合に、シリンダ310に対応する負荷の履歴をリセット(初期化)する。リセット制御部716は、"シリンダアッセンブリ全体"ボタン1003を押下された場合に、シリンダアッセンブリを構成する部品の各々の負荷の履歴をリセット(初期化)する。
【0160】
(変形例)
上述した実施形態では、部品の着脱に関する変化を検出した場合に、表示制御部715が、通知画面又は確認画面を表示する例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、部品の着脱に関する変化を検出した場合に行う制御を画面の表示制限するものではない。変形例では、部品の着脱に関する変化を検出した場合に、表示以外の制御を行う例について説明する。
【0161】
本変形例に係る判定部714は、部品の着脱に関する変化を検出したと判定した場合、例えば当該部品に設けられた記憶媒体に格納された識別情報と、記憶媒体702の負荷履歴記憶部721に格納された識別情報と、が一致しないと判定した場合、リセット制御部716が、当該部品を識別する情報(例えば、部品の名称)を、交換履歴記憶部722に追加する。さらに、リセット制御部716は、負荷履歴記憶部721に対して、当該部品に対応する負荷の履歴をリセット(初期化)すると共に、負荷履歴記憶部721に格納されている当該部品の識別情報を更新する。このように本変形例では、部品の交換を検知した場合に、画面の表示を行わずに、交換履歴記憶部722及び負荷履歴記憶部721の更新を行ってもよい。
【0162】
本変形例に係る射出成形機10では、上述した制御を行うことで、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらには作業者の負担を軽減できる。
【0163】
上述した実施形態及び変形例においては、交換対象となる部品の一例を示したものである。上述した実施形態は、交換対象の部品を制限するものではなく、例えば、射出成形機10に設けられたセンサ、IPM、駆動コンポ(ねじ、ベアリング、トグルリンク、リニアガイド、各種モータ)、可塑化部品(シリンダ、ヒータ、熱電対)に上述した制御を適用してもよい。
【0164】
<作用>
本実施形態に係る射出成形機は、上述した構成を備えることで、部品が交換された場合に、当該部品の負荷の履歴をリセットできる。したがって、当該部品で生じている負荷を適切に管理することができる。つまり、射出成形機は、負荷を適切に管理することで、部品の交換の促す旨の通知、又は部品の負荷による射出成形の中止等を、適切に制御できる。
【0165】
本実施形態に係る射出成形機は、部品の交換が行われる毎に、交換履歴記憶部722に交換された部品を識別する情報を追加していくことで、部品の交換の履歴を管理できる。従来は、部品の交換の履歴は、作業者側で行っていたが、射出成形機10側で管理できるので、作業者の負担を軽減できる。
【0166】
上述した実施形態に係る射出成形機では、部品に設けられた記憶媒体に識別情報を格納した場合に、当該記憶媒体に格納された識別情報に基づいて、部品が交換されたか否かを確認できるので、部品の交換の検出精度の向上を図ることができる。
【0167】
以上、本発明に係る射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0168】
10 射出成形機
700 制御装置
701 CPU
711 取得部
712 負荷算出部
713 書込制御部
714 判定部
715 表示制御部
716 リセット制御部
702 記憶媒体
721 負荷履歴記憶部
722 交換履歴記憶部
341A、351A、170A 記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10