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特開2024-43392湿気硬化性組成物および該組成物を含む接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043392
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】湿気硬化性組成物および該組成物を含む接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20240322BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20240322BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240322BHJP
   C09J 201/10 20060101ALI20240322BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240322BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K5/544
C09K3/10 G
C09J201/10
C09J133/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148560
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】500004955
【氏名又は名称】旭化成ワッカーシリコーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
(72)【発明者】
【氏名】田畑 卓哉
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB15
4H017AC05
4J002AC032
4J002AE052
4J002BB182
4J002BC032
4J002BG04X
4J002BG05X
4J002CF003
4J002CH023
4J002CH05W
4J002DA099
4J002DE109
4J002DE139
4J002DE239
4J002DG039
4J002DH009
4J002DH049
4J002DJ009
4J002DJ019
4J002DJ039
4J002DJ059
4J002EG009
4J002EH017
4J002EH137
4J002EH147
4J002EV247
4J002EW037
4J002EX038
4J002EX069
4J002EX076
4J002EX079
4J002FD019
4J002FD023
4J002FD027
4J002FD039
4J002FD146
4J002FD156
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD338
4J002GJ01
4J002GJ02
4J040EF101
4J040EF262
4J040GA31
4J040JA01
4J040JB04
4J040KA14
4J040KA16
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA07
(57)【要約】
【課題】本発明は金属触媒を使用しない環境・安全に配慮した湿気硬化性組成物であって、高い耐水接着性とゴム物性(引張強度と伸びが良好である物性)を示す硬化物を得るための組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]を有するシラン変性ポリマーを含む湿気硬化性組成物に、分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、を配合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 下記一般式(1)で表されるシラン変性ポリマーと、
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yは窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、
(C) 少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、
を含む湿気硬化性組成物。
【請求項2】
前記(B)(メタ)アクリル酸エステル重合体は、主鎖を構成するモノマー単位として(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含み、
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、(メタ)アクリル酸とエステル結合している炭素数が1以上5以下であるアルキル基を有するモノマーである、請求項1に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項3】
前記(C)アミン系触媒はアミノシランである、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の湿気硬化性組成物であって、前記湿気硬化性組成物全体を100質量部としたときに、
前記(A) シラン変性ポリマーを5質量部以上90質量部以下含み、
前記(B) (メタ)アクリル酸エステル重合体を5質量部以上90質量部以下含み、
前記(C) アミン系触媒を0.01質量部以上10質量部以下含む、湿気硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A) シラン変性ポリマーの数平均分子量が400~30,000であり、基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]を1分子当たり平均して1.5個以上2.2個以下有することを特徴とする請求項1に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の湿気硬化性組成物であって、前記湿気硬化性組成物全体を100質量部としたときに、
前記(A) シラン変性ポリマーを5質量部以上90質量部以下と、
前記(B) (メタ)アクリル酸エステル重合体を5質量部以上90質量部以下と、
前記(C) アミン系触媒を0.01質量部以上10質量部以下と、
(D) 可塑剤を0質量部以上50質量部以下と、
(E) 脱水剤を0質量部以上10質量部以下と、
(F) 接着向上剤を0質量部以上5質量部以下と、
(G) 疎水化無機粒子を0.1質量部以上20質量部以下と、
(H) 充填剤を0質量部以上80質量部以下と、
(I) 安定化剤を0.01質量部以上5質量部以下と、
をさらに含む、湿気硬化性組成物。
【請求項7】
(A) 下記 一般式(1)で表されるシラン変性ポリマーと、
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yはポリオキシアルキレンであるポリマー鎖を有し、-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NR’-によって基-[CH2-SiR1 a(OR2)3-a]に結合される基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
R’は、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
(C) 少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、
を含む湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、基材とを接着させる方法であって、
前記湿気硬化性組成物中に(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有させることにより、23℃で168時間浸水させる浸水試験実施後の前記基材と前記硬化物との引張接着強度を、浸水試験実施前の1.0倍以上とする、耐水接着性の向上方法。
【請求項8】
請求項1に記載の湿気硬化性組成物を含む接着剤またはシーリング材。
【請求項9】
基材と、請求項1に記載の湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、を含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化性組成物に関するものであり、より詳しくは、大気中などの水分により室温硬化して、良好なゴム物性を有し、浸水後においても良好な引張接着強度を示す優れた耐水接着性を発現可能な硬化物を形成し得る湿気硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架橋性シリル基を有する有機重合体は、室温においても湿分等による架橋性シリル基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状硬化物を形成することが知られている。これらの中でも架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、建築用途、電気・電子分野関連用途、自動車関連用途などにおける接着剤、シーリング材、塗料等として幅広く用いられている。
【0003】
架橋性シリル基含有有機重合体を含む硬化性組成物は、充填剤や可塑剤など種々の成分を配合することで各種物性を調整することができる。
例えば、特許文献1はケイ素含有官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、分子鎖がアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位からなる重合体(B)を含む硬化性組成物を配合することにより、耐水接着性が改善された変成シリコーン系樹脂組成物が得られることを開示する。
当該組成物は加水分解触媒を用いて硬化されており、主としてジブチルスズジラウレートなどの有機スズ系触媒が使用されている。しかしながら、有機スズ系化合物はその毒性が指摘されており、有機スズ化合物を使用しない、環境・安全に配慮した湿気硬化性組成物が求められている。また、得られた硬化物を水に浸漬した後の接着性(引張接着強度)については、さらなる向上が求められる。
【0004】
特許文献2は、シラン架橋性ポリマーと、少なくとも1個の第1級アミノ基を備えた少なくとも1種のアミノシランおよび第1級アミノ基と1、4付加反応できる少なくとも1種のシラン基のないアルケンとから生成された少なくとも1種の反応生成物とを含む湿気硬化性組成物について、凝集破壊の評価に基づく耐水接着性に優れることを開示する。しかし浸水後の引張接着強度についての言及はなく、浸水後にも十分な接着特性を発揮するかどうか不明である。
このように、シラン架橋性ポリマーをベースとする系において、十分な耐水接着性を発揮する組成物についての知見は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-313419号明細書
【特許文献2】特表2009-524721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べたように、浸水後においても良好な引張接着強度を示すという優れた耐水接着性を有する硬化物を形成可能な湿気硬化性組成物は見出されていなかった。さらに、当該硬化物には高い引張強度と伸びを示すという優れたゴム物性を発揮することが求められる。
したがって、本発明は、金属触媒を使用しない環境・安全に配慮した湿気硬化性組成物であって、高い耐水接着性とゴム物性(引張強度と伸びが良好である物性)を示す硬化物を得るための組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、末端に架橋性シリル基を有する湿気硬化性のポリオキシアルキレン重合体に、特定のシリル化アクリレートを配合することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A) 下記一般式(1)で表されるシラン変性ポリマーと、
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yは窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、
(C) 少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、
を含む湿気硬化性組成物である。
【0009】
上記の湿気硬化性組成物は、有機スズ触媒系等に代表される金属触媒を使用せずに、硬化させることが可能であり、基材に対して良好な接着性を発揮する。また、(B)成分および(C)成分を含有することにより、浸水後においても良好な接着性を発揮することができる。
【0010】
本発明はまた、上記(A)成分および(C)成分を含む湿気硬化性組成物に(B)成分を含有させることにより、23℃で168時間浸水させる浸水試験実施後の前記基材に対する前記硬化物への引張接着強度を、浸水試験実施前と同等またはそれ以上とする方法である。
一般に、湿気硬化性組成物を基材に塗布して硬化させることにより、基材同士を接着させた後に、水分と接触させると硬化物の基材への接着強度は低下する傾向にある。しかし、本発明によれば、水分との接触後においても接着強度を維持またはさらに接着強度を向上させることが可能となる。
【0011】
本発明の湿気硬化性組成物は、少なくとも1液以上の形態であって、湿気により硬化して最終的に組成物の硬化物が得られるものであれば、いかなる態様、形態であってもよい。湿気硬化性組成物に含まれる-CH2-SiR1 a(OR2)3-aで示されるアルコキシシランを末端基とするポリオキシアルキレン重合体((A)成分)は、アルコキシ基を有するアミン系触媒((C)成分)存在下、湿気による加水分解でシラノールを生成する。このシラノール同士の脱水縮合反応によってシロキサン結合によるマトリックスが形成され、硬化する。
ここで、分子内に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル重合体((B)成分)は、(B)成分中の架橋性シリル基により上記マトリックス中に取り込まれ、耐水接着性向上に寄与する。
【0012】
上記(A)成分はポリマー鎖のα位に架橋性シリル基を有しているため、反応性が高く、有機スズ系触媒等に代表される金属触媒を使用しなくとも架橋反応により硬化させることが可能である。具体的には(C)成分のアミン系触媒の存在下において、大気中に湿気等の水分により(A)成分の架橋反応が進行して、湿気硬化性組成物が硬化する。(A)成分を含む湿気硬化性組成物の硬化物は高いゴム物性(すなわち高い引張強度と高い伸び)を発現する。ここで、架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)を配合すると、(A)成分と共に架橋反応によりマトリックスを形成し、硬化物の伸びを維持しながら、引張強度をさらに向上させることが可能となる。
(B)成分中のエステル基は、基材との相互作用により、硬化後の湿気硬化性組成物を基材に接着させるように働く。このため、(A)成分のみが架橋して形成されるマトリックスと比較して、(B)成分を含むマトリックスは、より強固に基材に接着する。このため、硬化後に水分に暴露された場合(すなわち浸水後である)にも、基材と、硬化物との間に水分が入り、引張接着強度が低下する現象を抑制することが可能である。さらに、(B)成分は主鎖にメチル基を有する重合体であるから、メチル基を有しない場合と比較して主鎖の回転が制限されている結果、結晶性が高く、この点においても外部からの水の侵入を抑制することが可能である。
さらに、(C)成分は、分子内のアルコキシ基の部分において(A)成分、(B)成分と一体となりマトリックス中に取り込まれ、アミノ基の部分において基材と相互作用することにより、基材と硬化物との接着性をさらに向上させている。
また、(B)成分はシリル基を含有していることにより、(A)成分との相溶性が良好であり、湿気硬化性組成物を長期にわたり均一な組成に維持することが可能である。従って、本発明の湿気硬化性組成物は貯蔵安定性にも優れている。
【0013】
本発明の湿気硬化性組成物は、接着剤、シーリング材、またはコーティング材として好適な組成物であり、特に基材同士を接着させる接着剤またはシーリング材として使用した場合に優れた耐水接着性を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の湿気硬化性組成物は、
(A) 下記一般式(1)で表されるシラン変性ポリマーと、
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yは窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、
(C) 少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、
を含む。
【0016】
上記式(1)において、Yはポリオキシアルキレンであるポリマー鎖を有し、-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NR’-によって基-[CH2-SiR1 a(OR2)3-a]に結合される基であり、R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、R’は、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
aは、0、1、もしくは2であってもよい。
【0017】
上記の湿気硬化性組成物は、湿気硬化性組成物全体を100質量部としたときに、(A)成分を5質量部以上90質量部以下含み、(B)成分を5質量部以上90質量部以下含み、(C)成分を0.01以上10質量部以下含む組成物であってもよい。
【0018】
((A)成分)
本発明におけるシラン変性ポリマー(A)は、少なくとも1つの下記一般式(1)のアルコキシシリル基を含む。これは、ポリマー骨格の一端に連結したアルコキシシリル基であってもよい。好ましくは、少なくとも1つのポリオキシアルキレン構造単位を含むシラン変性ポリマーである。
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yはポリオキシアルキレンであるポリマー鎖を有し、-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NR’-によって基-[CH2-SiR1 a(OR2)3-a]に結合される基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
R’は、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
【0019】
シラン変性ポリマー(A)は、湿気硬化性組成物の主成分であり、塗布後に湿気により硬化物を形成する成分である。
シラン変性ポリマー(A)は、商業的な製品として購入することができ、また、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。シラン変性ポリマー(A)は単体であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
シラン変性ポリマー(A)は、メチレンスペーサーを介して隣接するウレタン単位に結合している架橋性アルコキシシリル基を有するいわゆるα‐シラン末端のポリマーであってもよい。このような構造を有するシラン変性ポリマー(A)は空気と接触した際に高い硬化速度を達成することから、有毒なスズ触媒の配合の必要がない点で安全性が高く、環境負荷も少ない。市販のα―シラン末端ポリマーは、例えばWacker Chemie AGからのGENIOSIL(登録商標)STP-E 10またはSTP-E 30である。
【0020】
基R1は、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基である。
【0021】
基R1の例は、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-n-ブチル基、2-n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基およびtert-ペンチル基;ヘキシル基、例えば、n-ヘキシル基;ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基;オクチル基、例えば、n-オクチル基、イソオクチル基および2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基、例えば、n-ノニル基;デシル基、例えば、n-デシル基;ドデシル基、例えば、n-ドデシル基;オクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えば、ビニル、1-プロペニルおよび2-プロペニル基;アリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、例えば、o-、m-、p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、ならびにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基である。
【0022】
置換された基R1の例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基およびヘプタフルオロイソプロピル基、ならびにハロアリール基、例えば、o-、m-およびp-クロロフェニル基である。
【0023】
基R1は、好ましくは場合によってハロゲン原子によって置換されており1から6個の炭化水素原子を有している一価の炭化水素基を、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチル基を含むことができる。
【0024】
基R2の例は、基R1に対して特定した基である。
基R2は、好ましくは、水素原子、または場合によってハロゲン原子によって置換されており、1から10個までの炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1から4個までの炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチル基およびエチル基である。
【0025】
ポリマー基Yは、ポリマー鎖として、ポリオキシアルキレン、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーおよびポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレンコポリマー;炭化水素ポリマー、例えば、ポリイソブチレン、ポリエチレン、またはポリプロピレンおよびポリイソブチレンのイソプレンとのコポリマー;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタクリレート;およびポリカーボネートを含み、それらは、好ましくは、-O-C(=O)-NH-または、-NH-C(=O)O-、-NH-C(=O)-NH-、-NR’-C(=O)-NH-、NH-C(=O)-NR’-、-NHC(=O)-、-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-S-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-S-C(=O)-S-、-C(=O)-、-S-、-O-および-NR’-によって1つの基または複数の基-[CH2-SiR1 a(OR2)3-a]に結合される。
【0026】
ここでR’は、同じであっても異なってもよく、アルキル基、例えば、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-n-ブチル基、2-n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基およびert-ペンチル基;ヘキシル基、例えば、n-ヘキシル基;ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基;オクチル基、例えば、n-オクチル基、イソオクチル基および2,2,4-トリメチルペンチル基;ノニル基、例えば、n-ノニル基;デシル基、例えば、n-デシル基;ドデシル基、例えば、n-ドデシル基;オクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えば、ビニル、1-プロペニルおよび2-プロペニル基;アリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、例えば、o-、m-、p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、ならびにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基である。
【0027】
置換された基R’の例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基およびヘプタフルオロイソプロピル基、ならびにハロアリール基、例えば、o-、m-およびp-クロロフェニル基である。
基R’は、好ましくは場合によってハロゲン原子によって置換されており1から6個の炭素原子を有している一価の炭化水素基を、より好ましくは1個または2個の炭素原子を有するアルキル基、より特定的にはメチル基を含む。
【0028】
基R’は、-CH(COO R”)-CH2-COOR”であってもよい。ここでR”は同じであっても異なってもよく、R’に対して与えられた定義を有する。
【0029】
基R”は、好ましくは1から10個までの炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、またはプロピル基である。
【0030】
より好ましくは、式(1)中の基Yは、ポリオキシプロピレン含有ウレタン基またはポリオキシプロピレン基を含む。
【0031】
ここでシラン変性ポリマー(A)は、ポリマー中の任意の望ましい位置、例えば、鎖内および/または末端に、好ましくは鎖内および末端に、より好ましくは末端に、記載されている様式で結合している基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]を有することができる。
(A)成分1分子中の基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]の個数は特に限定されず、1.5個以上2.2個以下であってもよく、1.7個以上2.1個以下であればさらに好ましい。
(A)成分は直鎖状のポリマーであり、分子鎖両末端に1個ずつの基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]を有するものであってもよい。
【0032】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、シラン変性ポリマー(A)は、いずれの場合も、-O-C(=O)-NH-(CH2)基または-NH-C(=O)-NR’-(CH2)基(R’は、上で特定した定義の1つを有する。)によって結合されているジメトキシメチルシリル末端基を有するシラン末端ポリエーテル、より特定的にはシラン末端ポリプロピレングリコールを含む。
【0033】
シラン変性ポリマー(A)の数平均分子量Mnは、好ましくは、400以上30,000以下であることができ、好ましくは1,000以上30,000以下であり、より好ましくは10,000以上30,000以下であり、さらにより好ましくは10,000以上19,000以下である。
【0034】
シラン変性ポリマー(A)の粘度は、いずれの場合にも20℃で測定されて、好ましくは少なくとも0.2Pa・s、より好ましくは少なくとも1Pa・s、非常に好ましくは少なくとも5Pa・sであり、好ましくは1,000Pa・s以下、より好ましくは700Pa・s以下である。
粘度が5Pa・s以上100Pa・s以下であればさらにより好ましい。粘度が低いシラン変性ポリマー(A)であれば相対的にポリマー鎖の鎖長が短く、架橋に寄与する基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]の含有率が高くなる。そのため、より低い粘度のシラン変性ポリマー(A)を使用することにより、架橋密度が高く、引張強度と伸びが良好な硬化物が得られる。
【0035】
本発明の第一の特に好ましい実施形態の場合において、シラン変性ポリマー(A)は、ポリマー基Yとして、線状のまたは分枝したポリオキシアルキレン基、より好ましくはそれらの鎖末端が、好ましくは-O-C(=O)-NH-によって、1つの基または複数の基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]に結合されているポリオキシプロピレン基を含む。ここでは、全鎖末端の好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より特定的には少なくとも95%が、-O-C(=O)-NH-によって基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]に結合されている。
このポリオキシアルキレン基Yは、200から30,000、好ましくは10,000から19,000のMn(数平均分子量)を有する。そのようなシラン変性ポリマー(A)を調製するための適切な製造方法およびシラン変性ポリマー(A)の例それ自体も、既知であり、本明細書の開示内容に含まれるEP1535940B1またはEP1896523B1を含めた出版物に記載されている。対応するシラン末端ポリマーは、例えば、Wacker Chemie AGからGENIOSIL(登録商標)STP-Eの名称の下で市販されてもいる。
【0036】
シラン変性ポリマー(A)を化学的に合成する場合は、例えば、ヒドロシリル化、マイケル付加、ディールス-アルダー付加のような付加反応、またはイソシアネート架橋性化合物とイソシアネート反応性の基を含む化合物との間の反応等のさまざまな既知の製造方法によって合成することができる。
【0037】
組成物全体に対するシラン変性ポリマー(A)の含有量は特に限定されず、例えば5質量部以上90質量部以下の範囲が好ましく、5質量部以上80質量部以下の範囲がより好ましく、10質量部以上70質量部以下の範囲がさらにより好ましい。5質量部以上であれば、ポリマーマトリックスを形成する成分以外の成分が大量に組成物に残存することがなく、組成物としての十分な性能が発揮され、形成するポリマーマトリックスの量が十分で、求められる引張強度や伸び、引裂強度などの機械的特性が十分になり、接着不良、皮膜の割れ、など硬化物としての欠陥発生が少なく、かつ、他成分による弊害を起こす可能性が低くなるからである。より好ましくは、10質量部以上60質量部以下の範囲である。接着剤またはシーリング材用に本発明の湿気硬化性組成物を使用する場合には適度なチキソ性を持たせるために、後述の疎水化無機粒子を配合することが好ましい。十分な充填材量を配合するためには、(A)成分配合量は上記範囲とすることが好ましい。
【0038】
((B)成分)
本発明における重合体(B)は、分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体である。架橋性シリル基は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の主鎖の末端に導入されていてもよく、側鎖に導入されていてもよく、主鎖および側鎖に導入されていてもよい。
【0039】
(B)成分に含まれる架橋性シリル基は、下記一般式(2)で表される構造を有する。
-SiR1 aX3-a (2)
式中、aは、0、1、もしくは2である。R1は上記式(1)における定義と同様であり、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基であり、特に好ましくはメチル基である。Xはそれぞれ独立に、水酸基または加水分解性基を示す。aの数は(B)成分の反応性等に応じて適宜定めることができ、強度が要求される用途においては架橋点が多くなるa=0が好ましく、反応性を抑制したり、硬化物の伸びが要求される用途においてはa=1, または2が好ましい。
【0040】
Xの具体例としては、例えば、水酸基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などがあげられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
【0041】
架橋性シリル基(SiR1 aX3-a)の具体例としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基などがあげられるが、これらに限定されない。これらの中では、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基が高い活性を示し、良好な機械物性を有する硬化物が得られるため好ましい。活性の観点から、トリメトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基が特に好ましく、安定性の観点から、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基が特に好ましく、安全性の観点から、メチルジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基が特に好ましく、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基は、製造が容易であるためより好ましい。
【0042】
(B)成分の1分子あたりの架橋性シリル基の平均数は0.2個以上であることが好ましい。硬化後の強度の点から0.4個以上が好ましく、0.7個以上がより好ましい。硬化物の伸びが良好となりやすいため、4.0個以下が好ましく、3.0個以下がより好ましい。(B)成分の1分子あたりの架橋性シリル基の平均数は0.2個以上4.0個以下であってもよく、0.7個以上3.0個以下がより好ましい。
【0043】
(B)(メタ)アクリル酸エステル重合体は、主鎖を構成するモノマー単位として(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含み、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、(メタ)アクリル酸とエステル結合している炭素数が1以上5以下のアルキル基を有するモノマーであってもよい。主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されず、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組合せて用いてもよい。(B)成分が、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合により形成された共重合鎖である場合、それらの(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、重合により、ブロック重合体を形成していてもよくランダム重合体を形成していてもよい。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシルが挙げられる。なかでも耐水接着性が良好となりやすいことから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーにおける、(メタ)アクリル酸とエステル結合しているアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、1~3がより好ましく、1が特に好ましい。炭素原子数が上記範囲内であれば、湿気硬化性組成物の硬化後における浸水前の接着性および浸水後の接着性がより良好になる。
【0046】
(B)成分として(メタ)アクリル酸メチルモノマーをモノマー単位とする重合体であって、トリメトキシシリル基を有する化合物を使用することが特に好ましく、常態引張接着強度と耐水引張接着強度をいずれも1.0N/mm2以上とすることができ、かつ、耐水引張接着強度が常態引張接着強度を上回る特性を発現することができる。
【0047】
(B)成分は公知の方法で合成することもでき、市販の重合体を用いることもできる。市販品としては、例えばXMAPシリーズ(カネカ社製品名)、ARUFON US-6000シリーズ(例えば、US-6110、US-6120等、いずれも東亜合成社製品名)、アクトフロー NEシリーズ(例えば、NE-1000、NE-3000、いずれも綜研化学社製品名)等を用いることができる。
【0048】
(B)成分の分子量は特に限定されず、例えば1,000以上100,000以下であってもよく、1,000以上50,000以下であればより好ましい。さらに1,000以上10,000以内であればより好ましい。上記の範囲内であれば粘度が十分に低くなりやすく作業性に優れやすい。
【0049】
組成物全体に対する(B)成分の含有量は特に限定されず、例えば5質量部以上90質量部以下の範囲が好ましく、5質量部以上80 質量部以下の範囲がより好ましく、10質量部以上70質量部以下の範囲がさらにより好ましい。5質量部以上であれば、ポリマーマトリックスを形成する成分以外の成分が大量に組成物に残存することがなく、組成物としての十分な性能が発揮され、形成するポリマーマトリックスの量が十分で、求められる引張強度や伸び、引裂強度などの機械的特性が十分になり、接着不良、皮膜の割れ、など硬化物としての欠陥発生が少なく、かつ、他成分による弊害を起こす可能性が低くなるからである。より好ましくは、10質量部以上60質量部以下の範囲である。 接着剤またはシーリング材用に本発明の湿気硬化性組成物を使用する場合には適度なチキソ性を持たせるために、後述の疎水化無機粒子を配合することが好ましい。十分な充填材量を配合するためには、(B)成分配合量は上記範囲とすることが好ましい。
【0050】
((C)成分)
本発明におけるアミン系触媒(C)は、少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有する硬化触媒であり、接着向上剤としても機能する。
本発明の湿気硬化性組成物には、触媒として(C)成分以外の触媒も併用することができるが、環境・安全面からは金属を含む触媒を使用しないことが望ましい。
【0051】
(C)成分は例えば、アルコキシアミン、アラルコキシアミン、アルコキシ基を有するアミノシランであってもよく、特にアルコキシ基を有するアミノシランが好ましい。
アルコキシアミンの例としては、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、エタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、メトキシアミン及びエトキシアミンが挙げられる。
アミノシランの例としては、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N - ( 2 - アミノエチル) アミノプロピルトリメトキシシラン、N - ( 2 - アミノエチル) - アミノプロピルトリエトキシシラン、N - ( 2 - アミノエチル) アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N - ( 2 - アミノエチル) アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N -シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N -シクロヘキシルアミノメチル- メチルジエトキシシラン、N -シクロヘキシルアミノメチル- トリメトキシシラン、およびN -シクロヘキシルアミノメチル- メチルジメトキシシランが挙げられる。これらのアミノシランであれば、好適な硬化速度を有する湿気硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0052】
(C)成分中のアミノ基の数は1個以上であれば特に限定されず、2個以上のアミノ基を含む場合にはより接着強度が向上する傾向にある。
【0053】
上記(A)成分および(B)成分を含む組成物において、接着性を求める場合、(C)成分は、アミノ基を複数有することが好ましく、このような(C)成分としてN - ( 2 - アミノエチル) アミノプロピルトリメトキシシラン、N - ( 2 - アミノエチル) - アミノプロピルトリエトキシシラン、N - ( 2 - アミノエチル) アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N - ( 2 - アミノエチル) アミノプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0054】
上記(A)成分および成分(B)成分を含む組成物において、得られる硬化物の黄変などの変色をできる限り抑制する場合、(C)成分は、アミノ基を1個有することが好ましく、このような(C)成分として、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、エタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、メトキシアミン、エトキシアミン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N - シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N - シクロヘキシルアミノメチル- メチルジエトキシシラン、N - シクロヘキシルアミノメチル- トリメトキシシラン、およびN - シクロヘキシルアミノメチル- メチルジメトキシシランが挙げられる。
【0055】
本発明におけるアミン系触媒(C)は、上記のアルコキシアミン、アラルコキシアミン、アルコキシ基を有するアミノシランに限らず、同様のメカニズムで硬化および接着性を発現するアミン系触媒であっても良い。
【0056】
本発明のアミン系触媒(C)は、本発明に係る湿気硬化性組成物中で、硬化性触媒及び/又は接着促進剤として作用してよい。
本発明に従って使用されるアミン系触媒(C)は、市販製品であり、化学で一般的に使用される方法によって製造可能である。
【0057】
湿気硬化性組成物全体に対する(C)成分の含有量は特に限定されず、例えば0.1質量部以上10質量部以下の範囲が好ましい。0.1質量部以上であれば、シラン変性ポリマーの加水分解および縮合反応を促進することが可能となる。一方で0.1質量部を下回ると加水分解および縮合反応を触媒する効果が低下すると同時に、接着性も低下する。また10質量部以上だと、湿気硬化性組成物の貯蔵中に加水分解および縮合反応が進行し、貯蔵中にゲル化・硬化するなど貯蔵安定性が悪くなる可能性がある。より好ましくは、0.5質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0058】
<湿気硬化性組成物に含まれるその他の原料>
上記の湿気硬化性組成物を、各種用途において各種基材の接着剤やシーリング材として用いる場合の形態、組成物内容は限定されない。
典型的な用途である、建築建材や工業構造物などの基材適合する接着剤組成物としては、下記の組成であることが好ましい。
(A):5質量部以上90質量部以下
(B):5質量部以上90質量部以下
(C):0.01質量部以上10質量部以下
(D):可塑剤:0質量部以上50質量部以下
(E):脱水剤:0質量部以上10質量部以下
(F):接着向上剤:0質量部以上5質量部以下
(G):疎水化無機粒子:0.1質量部以上20質量部以下
(H):充填剤:0質量部以上80質量部以下
(I):安定化剤:0.01質量部以上5質量部以下
ただし、各成分の質量部は、湿気硬化性組成物全体を100質量部とした場合の質量部である。
【0059】
((D)成分)
可塑剤(D)は、本発明の湿気硬化性組成物に対し、粘度・粘性調整の機能を有し、引張強度や伸びなどの物性調整剤、また硬化物の柔軟性や耐候性を改良する添加剤として作用することもできる成分である。この成分は、上記の機能や作用を必要とされない場合は、本発明の湿気硬化性組成物にとっては必須成分ではない。可塑剤(D)は商業的な製品として購入することができ、または化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
【0060】
可塑剤(D)の例は、フタル酸エステル、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチル及びフタル酸ジウンデシル; ペルヒドロ化フタル酸エステル、例えば、ジイソノニル 1 , 2 - シクロヘキサンジカルボキシレート及びジオクチル 1 , 2 - シクロヘキサン- ジカルボキシレート; アジピン酸エステル、例えば、アジピン酸ジオクチル; 安息香酸エステル; グリコールエステル; 飽和アルカンジオールのエステル、例えば、2 ,2 , 4 - トリメチル- 1 , 3 - ペンタンジオールモノイソブチレート及び2 , 2 , 4 - トリメチル- 1 , 3 - ペンタンジオールジイソブチレート; リン酸エステル; スルホン酸エステル; ポリエステル; ポリエーテル、例えば、モル質量が好ましくは100~10,000 g / m o l のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール; ポリスチレン; ポリブタジエン; ポリイソブチレン; パラフィン系炭化水素; 及び高分子量の分岐炭化水素である。
【0061】
組成物全体に対する可塑剤(D)の含有量は、含まれなくてもよいが、0~50質量部の範囲が好ましい。50質量部を超えると、硬化物の物性を劣化させるなどの弊害を起こす可能性があるのと、施工後に硬化不良、未硬化を起こす可能性があるからである。より好ましくは、0~30質量部の範囲である。
【0062】
((E)成分)
脱水剤(E)は、本発明の湿気硬化性組成物に対し、水捕捉を行うことにより、脱水せしめる成分である。
脱水剤(E)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
脱水剤(E)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0063】
脱水剤(E)の例は、シラン、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O-メチルカルバメートメチル-メチルジメトキシシラン、O-メチルカルバメートメチル-トリメトキシシラン、O-エチルカルバメートメチル-メチルジエトキシシラン、O-エチルカルバメートメチル-トリエトキシシランおよび/またはそれらの部分縮合物、および/または、オルトエステル、例えば、1,1,1-トリメトキシエタン、1,1,1-トリエトキシエタン、トリメトキシメタンおよびトリエトキシメタンである。
【0064】
組成物全体に対する脱水剤(E)の含有量は、含まれなくてもよいが、0.01~10質量部の範囲が好ましい。0.01質量部未満だと、脱水の効果が十分でなく、製造中および保存中に増粘、ゲル化、硬化などの不具合が生じる可能性があり、10質量部を超えると、硬化物の物性を劣化させるなどの弊害を起こす可能性があるのと、施工後に硬化不良、未硬化を起こす可能性があるからである。より好ましくは、0.5~3.0質量部の範囲である。
【0065】
((F)成分)
接着向上剤(F)は、本発明の湿気硬化性組成物に対し、硬化共触媒の機能を有し、さらに、接着促進剤として作用するもできる成分である。
接着向上剤(F)は、構造や分子量は特に限定されず、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
接着向上剤(F)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0066】
接着向上剤(F)の例は、有機ケイ素化合物であってもよく、例えば、エポキシシラン、イソシアヌレートシランである。代表的なものとして、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、トリス(- トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0067】
組成物全体に対する接着向上剤(F)の含有量は、含まれなくてもよいが、0.01~5質量部の範囲が好ましい。5質量部を超えると、塗膜の物性を劣化させるなどの弊害を起こす可能性があるのと、施工後に硬化不良、未硬化を起こす可能性があるからである。
【0068】
((G)成分)
任意で配合される疎水化無機粒子(G)は、本発明の湿気硬化性組成物に対して、それらのファンデルワールス力により系内でネットワークを形成して系全体を増粘させることで、一定以上のチキソ性を付与するものである。
【0069】
疎水化無機粒子(G)の原料として用いられる無機粒子としては、例えば、シリカ、二酸化チタン、ベントナイト、酸化亜鉛、タルク、カオリン、雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、金属石鹸等の無機粒子が挙げられる。 また、粒子に金属酸化物等を被覆させて得られる複合粒子や、粒子表面を化合物等で処理した改質粒子を用いてもよい。
【0070】
通常これらの粒子の表面はシラノール基、カルビノール基、あるいはその他の水酸基等の親水基で覆われている部分と、それらの基をアルキル基等で疎水化処理した基、ないしは、別の疎水性の基で覆われている部分が存在する。
その親水性基と疎水性基の比率を調整することにより、系における無機粒子の凝集性や溶解性を制御できる。
【0071】
前記無機粒子の中では、シリカを用いることが好ましい。シリカはフュームドシリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ等の種類があるが、いずれの種類のシリカの粒子においても表面には親水性であるシラノールが存在することと、そのシラノール基を任意の割合でアルキル基等による疎水化処理を行うことができるために、表面の親水基と疎水基のモル比を設定することが容易である。また、シリカは、凝集構造を取ること、各種油分との親和性が高く、入手容易性や経済性等の観点から、広汎な用途を与えることとなるため好ましい。
【0072】
本発明において最も好ましいシリカはフュームドシリカである。
フュームドシリカ粒子は、多次の凝集構造を取っている。そのため、凝集レベルに応じて表面の親水基と疎水基のバランスを制御したり、凝集単位を組み換えたりすることができる。
また、フュームドシリカ粒子は、多孔質構造を有しているので、表面積が大きくなり、より会合や吸着の機能が大きくなるため、系をより安定、均一に生成できるからである。
【0073】
フュームドシリカ粒子は、最小単位である1次粒子は、通常、5~30ナノメートル程度の大きさであり、1次粒子が凝集して1次凝集体、すなわち2次粒子を形成している。
1次凝集体の大きさは、通常、100~400ナノメートル程度である。1次粒子同士は化学結合により融合しているので、1次凝集体を分離するのは通常困難である。さらに、1次凝集体同士が凝集構造を形成しており、これを2次凝集体、すなわち3次粒子と称する。2次凝集体の大きさは概ね10μm程度である。2次凝集体における1次凝集体間の凝集形態は、通常、化学結合ではなく、水素結合やファンデルワールス力によるものである。
【0074】
フュームドシリカ粒子は、粉末状では2次凝集体が多くの場合の最も大きな凝集状態である。しかし、湿気硬化性組成物内では2次凝集体がさらに凝集することができる。すなわち、本発明において疎水化シリカがシラン末端変性ポリマーおよび反応性を有する材料(反応性希釈剤)の疎水部分に対してファンデルワールス力により有効にネットワークを形成している場合が、その一つの例である。その凝集を分離させる力は、2次凝集体を分離させる力よりも弱い力で分離できる。すなわち、本発明における湿気硬化性組成物において、施工時にくし目ごてなどで施工した際、その凝集を分離させることで作用時の粘度が低粘度化することが、その一つの例である。
【0075】
前記フュームドシリカ粒子は、疎水化されている場合が好ましく、疎水化に用いられる成分は特に限定されない。疎水化に用いられる成分は、例えばメチルトリクロロシランのようなハロゲン化有機ケイ素やジメチルジアルコキシシランのようなアルコキシシラン類、シラザン、低分子量のメチルポリシロキサンで、処理する公知の方法によって疎水化することができる。
【0076】
組成物全体に対する疎水化無機粒子(G)の含有量は、含まれなくてもよいが、0.1~20質量部が望ましく、20質量部を超えると系全体の粘度が増加し、湿気硬化性組成物の製造時の撹拌不良による不均一化、施工時の作業性が著しく低下する可能性があるからである。より好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは2~5質量部の範囲である。
【0077】
((H)成分)
任意で配合される充填剤(H)は、本発明の湿気硬化性組成物に対し、増量材、粘度・粘性調整や引張強度や伸びなどの物性調整の機能を有し、含有する水分によってコーティング材の硬化促進剤として作用することもできる、(G)成分以外の成分である。この成分は、上記の機能や作用を必要とされない場合は、本発明のコーティング材組成物にとっては必須成分ではない。
充填剤(H)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
充填剤(H)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0078】
充填剤(H)は、上記機能、作用を示すものであればよく、限定されないが、例としては、非補強性充填剤、好ましくは、最大50 m2/gのBET表面積を有する充填剤、例えば、石英、珪砂、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、タルク、カオリン、ゼオライト、金属酸化物粉末、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、または酸化亜鉛および/またはそれらの混合酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、セッコウ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ガラス粉末およびポリマー粉、例えば、ポリアクリロニトリル粉末;補強性充填剤、50 m2/gを超えるBET表面積を有する充填剤、例えば、熱分解により調製されたシリカ、沈降シリカ、沈降炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カーボンブラック、例えばファーネスブラックおよびアセチレンブラックおよび高いBET表面積の混合ケイ素/アルミニウム酸化物;三水酸化アルミニウムの中空ビーズの形の充填剤、例えば、ドイツ、ノイスの3M Deutschland GmbHから商標名Zeeospheres (登録商標)の下で入手できるものが例である磁性マイクロビーズ、例えば、スウェーデン、スンツバルのAKZONOBEL,Expancelから商標名EXPANCEL(登録商標)の下で入手できるその種の弾性ポリマービーズ、またはガラスビーズ;繊維形状の充填剤、例えば、アスベストおよび/またポリマー繊維である。
上記の充填剤は、例えば、オルガノシランおよび/もしくはオルガノシロキサンによる、または、ステアリン酸による処理によって、またはヒドロキシル基のアルコキシ基へのエーテル化によって疎水化されていてもよい。
【0079】
充填剤(H)は、好ましくは、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウムおよびシリカであり、炭酸カルシウムが特に好ましい。好ましい炭酸カルシウムのグレードは、粉砕または沈降であり、ステアリン酸等の脂肪酸またはそれらの塩により場合によって表面処理されている。好ましいシリカは、好ましくは、熱分解された(ヒュームド)シリカである。
【0080】
充填剤(H)は、好ましくは1質量部未満、より好ましくは0.5質量部未満の水分含量を有する。
【0081】
組成物全体に対する充填剤(H)の含有量は、0~80質量部の範囲が好ましい。より好ましくは、0~60質量部の範囲である。前記範囲内では、接着不良、皮膜の割れ、などコーティング材としての欠陥が発生する可能性が低く、また、製造時の粘度が適しているため均一に撹拌することができるからである。
【0082】
((I)成分)
安定化剤(I)は、本発明の湿気硬化性組成物に対し、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤や光安定剤の機能を有し、ポリマー劣化の安定化剤として作用することもできる成分である。
安定化剤(I)は、商業的な製品として購入することができ、または、化学的な一般的な方法によって調製することもできる。
安定化剤(I)は単体であっても、2種類以上の混合物のいずれでも構わない。
【0083】
安定化剤(I)は、上記機能、作用を示すものであればよく、限定されないが、好ましくは、酸化防止剤、紫外線安定剤、HALSである。
【0084】
組成物全体に対する安定化剤(I)の含有量は、0.01~5質量部の範囲が好ましい。0.01質量部未満だと、紫外線や熱、酸化などによる塗膜劣化が起きる可能性があり、5質量部を超えると、予期せぬ不具合、例えば透明の製品であれば色調変化等、を起こす可能性があるからである。より好ましくは、0.5~2.0質量部の範囲である。
【0085】
本発明の湿気硬化性組成物は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)またはドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6) 、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)のうちいずれか1種または2種以上を含んでいてもよい。
上記(D4)、(D5)、(D6)、(D7)および(D8)のそれぞれの含有量合計は、湿気硬化性組成物全体を100質量部としたときに、0.1質量部未満(すなわち1,000ppm未満)であってもよい。
湿気硬化性組成物中の(D4)~(D8)の含有量合計が上記範囲内であれば、該組成物全体としての引火点が高くなり、貯蔵中の安全性を向上させることが可能となる。
上記(D4)~(D8)の含有量の合計が、湿気硬化性組成物全体を100質量部としたときに、0.1質量部未満である湿気硬化性組成物は、(A)、(B)および(C)成分として(D4)~(D8)の含有量の合計がそれぞれ0.1質量%未満であるものを使用することにより製造することが可能である。
(D4)~(D8)の含有量はガスクロマトグラフィーにより測定される。ガスクロマトグラフィーの測定条件は従来公知の方法に従い適宜選択されればよい。
【0086】
(A)~(C)成分中の(D4)~(D8)の含有量を減らす手法としては、加熱及び減圧処理を行う方法が広く知られており、例えば、(A)~(C)の原料作製時に180℃、20mmHgにて8h程度の加熱減圧処理を行うことが望ましい。
【0087】
本発明の湿気硬化性組成物は、上述した成分以外にも、本発明の目的を達する限りにおいて、任意成分を含有することができる。例えば、消泡剤、硬化速度調整材、添加剤等の全てのその他の物質を含むことができる。
【0088】
本発明はまた、
(A) 下記 一般式(1)で表されるシラン変性ポリマーと、
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yは窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、
(C) 少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、
を含む湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、基材とを接着させる方法であって、
前記湿気硬化性組成物中に(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有させることにより、23℃で168時間浸水させる浸水試験実施後の前記基材と前記硬化物との引張接着強度を、浸水試験実施前の1.0倍以上とする、耐水接着性の向上方法である。
【0089】
ここで、耐水接着性は、23℃で168時間硬化後の試験体の引張接着強度と、23℃で168時間硬化後に23℃で168時間蒸留水中に浸漬し、さらに蒸留水中から取り出して23℃で168時間養生させた試験体の引張接着強度を測定することにより評価することができる。
【0090】
上記の湿気硬化性組成物は、硬化させることにより基材同士を接着させる接着剤またはシーリング材として使用することができる。
【0091】
本発明はまた、基材と、基材上に塗布された上記の湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物を含む積層体である。
ここで、基材は本発明の湿気硬化性組成物を塗布し、接着させるものであれば特に限定されず、例えば、コンクリ-ト、モルタル、石膏ボード、針葉樹合板、木質系セメント板、ケイ酸カルシウム板、またはタイルであってもよい。これらの基材はプライマーによる下処理がされているものであってもよい。
【0092】
本発明はまた、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材とを接着する硬化物と、を備える積層体を製造する方法であって、
第1の基材表面に上記の湿気硬化性組成物を塗布する塗布工程と、
湿気硬化性組成物に第2の基材を接触させた後に、前記湿気硬化性組成物の硬化により硬化物を形成する硬化工程と、を含む、積層体の製造方法である。
【実施例0093】
実施例、比較例を示し、表1、表2に結果を記載した上で本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
<引張接着性評価試験体作製方法>
試験体作製方法はJIS A5536に準拠する。
下記基材Aの平滑面を上にして、JIS Z 1525に規定する粘着テープで四方を7 mm覆うように貼り付け、湿気硬化性組成物の適量を載せて、JIS G 3101に規定するSS330のくし目ごてを斜めに立てて両手で手前に引いて、湿気硬化性組成物を基材Aに均一に塗布する。粘着テープは、湿気硬化性組成物塗布後直ちに剥がして取り去る。湿気硬化性組成物塗布後、基材Aと下記基材Bで湿気硬化性組成物を挟むように基材Bを置き、湿気硬化性組成物の膜厚が約1mmになるように、基材Bの上に約1kgの重しを乗せて、湿気硬化性組成物を基材Aおよび基材Bに密着させる。その後、下記養生条件Aまたは養生条件Bで養生を実施する。
なお、引張接着強度測定試験実施前日に、試験体の基材B(湿気硬化組成物未接着側)にエポキシ樹脂(セメダイン社製、水中エポキシ)を適量塗布し、引張試験用鋼製治具(SS400, 10 x 40 x 40 mm, M10ナット溶接)を固定させる。
【0095】
基材A: ISOモルタル(70 x 70 x 20 mm)
基材B: エタノール洗浄したアルミニウム(A5052, 25 x 60 x 2 mm)
【0096】
養生条件A: 常態接着性
基材Aおよび基材Bを湿気硬化性組成物で接合させた試験体を温度23℃、相対湿度50%の条件下で168時間養生後、直ちに引張試験を実施する。
【0097】
養生条件B: 耐水接着性
基材Aおよび基材Bを湿気硬化性組成物で接合させた試験体を温度23℃、相対湿度50%の条件下で168時間養生後、さらに、水による浸漬を実施する。水浸漬方法は、試験体上部から水面まで約3.5 cmになるように蒸留水で浸漬させ、23℃、168時間静置する。浸漬後、23℃、相対湿度50%で168時間養生し、その後、直ちに引張試験を実施する。
【0098】
<引張接着強度評価方法>
上記引張接着性評価試験体作製方法により得られた試験体の引張接着強度を以下の装置、測定条件で測定し、評価した。
評価装置:卓上形精密万能試験機(オートグラフAGS-X(島津製作所製))
引張速度:1 mm/min
測定値の単位:破断するまでの最大点試験力(N)より算出される引張接着強度(N/mm2)
常態接着性は、試験体を養生条件Aで養生後、上記方法で評価し、0.75 N/mm2以上の場合、引張接着強度を合格とした。ここで得られる引張接着強度測定結果を常態引張接着強度(N/mm2)とする。
耐水接着性は、試験体を養生条件Bで養生後、上記方法で評価し、0.50 N/mm2以上の場合、引張接着強度を合格とした。ここで得られる引張接着強度測定結果を耐水引張接着強度(N/mm2)とする。
【0099】
<耐水接着性評価方法>
常態引張接着強度(N/mm2)÷耐水引張接着強度(N/mm2)の値が1.0倍以上であることが好ましい。
【0100】
<ゴム物性評価方法>
湿気硬化性組成物の引張強度はJIS K 6251に準拠し評価し、1.5 N/mm2以上の場合、引張強度を合格とした。
湿気硬化性組成物の伸びはJIS K 6251に準拠し評価し、55~100%の場合、伸びを合格とした。
【0101】
<貯蔵安定性評価方法>
湿気硬化性組成物作製後、直ちに50℃で28日間貯蔵し、貯蔵後の外観を評価する。評価分類がAの場合、貯蔵安定性を合格とした。
分類A:湿気硬化性組成物中に凝集や分離がみられない状態
分類B:湿気硬化性組成物中に凝集や分離がみられる状態
【0102】
<実施例1>
湿気硬化性組成物として次の各成分を用いた。
シラン変性ポリマー(A)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E 30(粘度が25℃において、30,000 mPa・s、上述の一般式(1)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=1、x=2である)を15.0質量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)として、側鎖および末端にトリメトキシシリル基合計で3個を有する、(メタ)アクリル酸メチル重合体を10質量部、アミン系触媒(C)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) GF 96を2.5質量部、可塑剤(D)として、富士フイルム和光純薬社製のポリプロピレングリコール(ジオール型、分子量400)を21.0質量部、脱水剤(E)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) XL 10を2.0質量部、接着向上剤(F)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) GF 80を2質量部、疎水性無機粒子(G)として、Wacker Chemie AG社製の疎水性シリカ(HDK(登録商標) H 18)を2.5質量部、充填剤(H)として、重質炭酸カルシウム(備北粉化工業社製のソフトン2200)を44.0質量部、安定化剤(I)として、BASFジャパン社製のヒンダートアミンTinuvin B75を1.0質量部を添加し均一に攪拌し、湿気硬化性組成物1を調製した。
GENIOSIL(登録商標) GF 96は3-アミノプロピルトリメトキシシランである。
GENIOSIL(登録商標) XL 10はビニルトリメトキシシランである。
GENIOSIL(登録商標) GF 80は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0103】
湿気硬化性組成物1の常態引張接着強度、耐水引張接着強度、引張強度および伸び、貯蔵安定性ともに合格基準内であるため、合格とした。
【0104】
<実施例2>
(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)として、側鎖および末端にトリメトキシシリル基を合計3個有する、(メタ)アクリル酸エチル重合体を10質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物2を得て、同様の評価を行った。
【0105】
湿気硬化性組成物2の常態引張接着強度、耐水引張接着強度、引張強度および伸び、貯蔵安定性ともに合格基準内であるため、合格とした。耐水引張接着強度と引張強度は実施例1と比較するとやや低下したが、伸びは高い結果が得られた。
【0106】
<実施例3>
(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)として、側鎖および末端にトリメトキシシリル基を合計3個有する、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル重合体を10質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物3を得て、同様の評価を行った。
【0107】
湿気硬化性組成物3の常態引張接着強度、耐水引張接着強度、引張強度および伸び、貯蔵安定性ともに合格基準内であるため、合格とした。耐水引張接着強度と引張強度は実施例1、実施例2と比較するとやや低下したが、伸びは高い結果が得られた。
【0108】
<実施例4>
(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)として、側鎖および末端にトリメトキシシリル基を合計3個有する、(メタ)アクリル酸ステアリル重合体を10質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物4を得て、同様の評価を行った。
【0109】
湿気硬化性組成物4の常態引張接着強度、耐水引張接着強度、引張強度および伸び、貯蔵安定性ともに合格基準内であるため、合格とした。耐水引張接着強度と引張強度は実施例1、実施例2と比較するとやや低下したが、伸びは高い結果が得られた。
【0110】
<実施例5>
アミン系触媒(C)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) GF 94を2.5質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物5を得て、同様の評価を行った。
GENIOSIL(登録商標) GF 94は3-(2-アミノメチルアミノ)プロピルトリエトキシシランである。
【0111】
湿気硬化性組成物5の常態引張接着強度、耐水引張接着強度、引張強度および伸び、貯蔵安定性ともに合格基準内であるため、合格とした。
【0112】
<実施例6>
シラン変性ポリマー(A)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E 10(粘度が25℃において、10,000 mPa・s、上述の一般式(1)においてYはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=1、x=2である)を15.0質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物6を得て、同様の評価を行った。
【0113】
湿気硬化性組成物6の常態引張接着強度、耐水引張接着強度、引張強度および伸び、貯蔵安定性ともに合格基準内であるため、合格とした。
【0114】
以上の通り、(C)成分としてアミノプロピルトリメトキシシランを使用した場合に、基材と硬化物との耐水引張接着強度を、常態引張接着強度の1.2倍以上とすることができた。また、(B)成分としてメタクリル酸メチル重合体である場合に、常態引張接着強度、耐水引張接着強度ともに1.0N/mm2以上の高い値を得ることができた。
【0115】
<比較例1>
(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)として、シリル基を有さない(メタ)アクリル酸メチル重合体を10質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物7を得て、同様の評価を行った。
【0116】
湿気硬化性組成物7の常態引張接着強度、耐水引張接着強度および伸びがそれぞれ0.70 N/mm2、110%であり、合格基準外であるため、不合格とした。
【0117】
<比較例2>
(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の代わりに、末端にトリメトキシシリル基を1個有する、アクリル酸ブチル重合体を10質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物8を得て、同様の評価を行った。
【0118】
湿気硬化性組成物8の常態引張接着強度、耐水引張接着強度および伸びがそれぞれ0.40 N/mm2、0.50 N/mm2、140%であり、合格基準外であるため、不合格とした。主鎖が(メタ)アクリル酸ではない、アクリル酸重合体を使用したことにより、耐水引張接着強度が不十分になったと考えられる。
【0119】
<比較例3>
(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の代わりに、側鎖および末端にカルボキシル基を有する、アクリル酸2-エチルヘキシル重合体を10質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物9を得て、同様の評価を行った。
【0120】
湿気硬化性組成物9の常態引張接着強度および耐水引張接着強度がともに0.40 N/mm2、引張強度が1.0 N/mm2、伸びが1000%であり、合格基準外であるため、不合格とした。
【0121】
<比較例4>
(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)の代わりに、末端にヒドロキシル基を2個有する、アクリル酸2-エチルヘキシル重合体を10質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物10を得て、同様の評価を行った。
【0122】
湿気硬化性組成物10の常態引張接着強度および引張強度がそれぞれ0.50 N/mm2、1.1 N/mm2、伸びが200%であり、合格基準外であるため、不合格とした。
【0123】
<比較例5>
アミン系触媒(C)として、富士フイルム和光純薬社製の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを1.0質量部用い、可塑剤(D)として、富士フイルム和光純薬社製のポリプロピレングリコール(ジオール型、分子量400)を22.5質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物11を得て、同様の評価を行った。
【0124】
湿気硬化性組成物11の常態引張接着強度および耐水引張接着強度がともに0.30 N/mm2であり、合格基準外であるため、不合格とした。
【0125】
<比較例6>
シラン変性ポリマー(A)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E 15(粘度が25℃において、10,000 mPa・s、式Y-[(CH2) 3-SiR1 a(OR2)3-axで表され、Yはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=0、x=2である)を15.0質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物12を得て、同様の評価を行った。
【0126】
湿気硬化性組成物12は硬化しなかったため、不合格とした。ポリマー鎖のγ位に架橋性シリル基を有しているため、アミン系触媒では十分に硬化しなかったと考えられる。
【0127】
<比較例7>
シラン変性ポリマー(A)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E 35(粘度が25℃において、30,000 mPa・s、式Y-[(CH2) 3-SiR1 a(OR2)3-axで表され、Yはポリマー鎖としてオキシアルキレン基を含むウレタン基を介して結合されている2価の有機ポリマー基であり、R1、R2はいずれもメチル基であり、a=0、x=2である)を15.0質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物13を得て、同様の評価を行った。
【0128】
湿気硬化性組成物13は硬化しなかったため、不合格とした。ポリマー鎖のγ位に架橋性シリル基を有しているため、アミン系触媒では十分に硬化しなかったと考えられる。
【0129】
<比較例8>
シラン変性ポリマー(A)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) STP-E 30を25.0質量部用い、(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)を含めず、可塑剤(D)として、富士フイルム和光純薬社製のポリプロピレングリコール(ジオール型、分子量400)を19.0質量部用い、接着向上剤(F)として、Wacker Chemie AG社製のGENIOSIL(登録商標) GF 80を2.0質量部およびGENIOSIL(登録商標) GF 69を2.0質量部用いた他は、すべて実施例1と同じ成分、同じ質量部数と調製方法を用い、湿気硬化性組成物14を得て、同様の評価を行った。
GENIOSIL(登録商標) GF 69はイソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]である。
【0130】
湿気硬化性組成物14の耐水引張接着強度は0.49 N/mm2であり合格基準外であり、常態引張接着強度(0.73N/mm2)よりも大幅に低下しているため、不合格とした。
【0131】
以上の結果から、上述の一般式(1)より表されるシラン変性ポリマー(A)、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)および少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒を含む湿気硬化性組成物は、金属触媒を介さずして、良好なゴム物性および浸水後であっても良好な引張接着強度を有すること評価より確認できた。
【0132】
以上に述べた通り、(B)成分として分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体を使用した場合に、本発明の湿気硬化性組成物を硬化して得られる硬化物において、常態引張接着強度が0.75 N/mm2以上であり、かつ、耐水引張接着強度が常態引張接着強度の1.0倍以上となることが確認された。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。各付記は、特許請求の範囲に記載の各付記と組み合わせることもできる。
【0136】
(付記1)
(A) 下記一般式(1)で表されるシラン変性ポリマーと、
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yは窒素、酸素、または硫黄を介して結合されたx価のポリマー基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、
(C) 少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、
を含む湿気硬化性組成物。
(付記2)
前記(B)(メタ)アクリル酸エステル重合体は、主鎖を構成するモノマー単位として(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含み、
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、(メタ)アクリル酸とエステル結合している炭素数が1以上5以下であるアルキル基を有するモノマーである、付記1に記載の湿気硬化性組成物。
(付記3)
前記(C)アミン系触媒はアミノシランである、付記1または付記2のいずれか1つに記載の湿気硬化性組成物。
【0137】
(付記4)
付記1ないし付記3に記載の湿気硬化性組成物であって、前記湿気硬化性組成物全体を100質量部としたときに、
前記(A) シラン変性ポリマーを5質量部以上90質量部以下含み、
前記(B) (メタ)アクリル酸エステル重合体を5質量部以上90質量部以下含み、
前記(C) アミン系触媒を0.01質量部以上10質量部以下含む、湿気硬化性組成物。
(付記5)
前記(A) シラン変性ポリマーの数平均分子量が400~30,000であり、基-[(CH2)-SiR1 a(OR2)3-a]を1分子当たり平均して1.5個以上2.2個以下有することを特徴とする付記1ないし付記4のいずれか1つに記載の湿気硬化性組成物。
(付記6)
付記1ないし付記5のいずれか1つに記載の湿気硬化性組成物であって、前記湿気硬化性組成物全体を100質量部としたときに、
前記(A) シラン変性ポリマーを5質量部以上90質量部以下と、
前記(B) (メタ)アクリル酸エステル重合体を5質量部以上90質量部以下と、
前記(C) アミン系触媒を0.01質量部以上10質量部以下と、
(D) 可塑剤を0質量部以上50質量部以下と、
(E) 脱水剤を0質量部以上10質量部以下と、
(F) 接着向上剤を0質量部以上5質量部以下と、
(G) 疎水化無機粒子を0.1質量部以上20質量部以下と、
(H) 充填剤を0質量部以上80質量部以下と、
(I) 安定化剤を0.01質量部以上5質量部以下と、
をさらに含む、湿気硬化性組成物。
【0138】
(付記7)
(A) 下記 一般式(1)で表されるシラン変性ポリマーと、
Y-[CH2-SiR1 a(OR2)3-ax (1)
(式中、Yはポリオキシアルキレンであるポリマー鎖を有し、-O-C(=O)-NH-または-NH-C(=O)-NR’-によって基-[CH2-SiR1 a(OR2)3-a]に結合される基であり、
R1は、同じであっても異なってもよく、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
R2は、同じであっても異なってもよく、水素原子、または一価の、場合によって置換されている炭化水素基であり、
R’は、一価の、場合によって置換されているSiC結合した炭化水素基であり、
xは、1から10までの整数であり、
aは、0、1、もしくは2である。)
(C) 少なくとも1つ以上のアルコキシ基を有するアミン系触媒と、
を含む湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、基材とを接着させる方法であって、
前記湿気硬化性組成物中に(B) 分子内に架橋性シリル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有させることにより、23℃で168時間浸水させる浸水試験実施後の前記基材と前記硬化物との引張接着強度を、浸水試験実施前の1.0倍以上とする、耐水接着性の向上方法。
(付記8)
付記1ないし付記7のいずれか1つに記載の湿気硬化性組成物を含む接着剤またはシーリング材。
(付記9)
基材と、付記1ないし付記7のいずれか1つに記載の湿気硬化性組成物を硬化させてなる硬化物と、を含む、積層体。