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特開2024-43395情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043395
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240322BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148565
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】518070663
【氏名又は名称】株式会社NeU
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 清
(72)【発明者】
【氏名】星野 剛史
【テーマコード(参考)】
4C017
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB06
4C017AC26
4C017BB12
4C017BC11
4C017BC23
4C017DD17
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC11
4C117XD01
4C117XE16
4C117XH12
4C117XJ03
4C117XJ13
4C117XJ23
4C117XJ33
4C117XJ48
(57)【要約】
【課題】より正確に脳年齢を推定する技術を提供する。
【解決手段】利用者が認知機能に関する課題を解く作業を行う際に測定された脳血流変化量、前記利用者の実年齢、前記利用者による前記課題に対する回答を格納する格納部と、前記格納部に格納される前記脳血流変化量から、前記作業の開始時刻から前記脳血流変化量が最初のピークとなる時刻であるピーク潜時までの単位時間当たりの脳血流変化量であるピーク潜時までの傾きを算出し、前記格納部に格納される前記利用者の前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとに基づいて、前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとの関係を示す第1近似式を算出し、前記格納部に格納される前記回答から、前記回答の正答率に基づく得点を算出し、前記格納部に格納される前記利用者の前記実年齢と前記得点とに基づいて、前記実年齢と前記得点との関係を示す第2近似式を算出する制御部を備える、情報処理装置とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が認知機能に関する課題を解く作業を行う際に測定された脳血流変化量、前記利用者の実年齢、前記利用者による前記課題に対する回答を格納する格納部と、
前記格納部に格納される前記脳血流変化量から、前記作業の開始時刻から前記脳血流変化量が最初のピークとなる時刻であるピーク潜時までの単位時間当たりの脳血流変化量であるピーク潜時までの傾きを算出し、前記格納部に格納される前記利用者の前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとに基づいて、前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとの関係を示す第1近似式を算出し、
前記格納部に格納される前記回答から、前記回答の正答率に基づく得点を算出し、前記格納部に格納される前記利用者の前記実年齢と前記得点とに基づいて、前記実年齢と前記得点との関係を示す第2近似式を算出する制御部を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記脳血流変化量は、脳年齢推定対象の利用者が前記作業を行う際に測定された脳血流変化量を含み、
前記回答は、前記脳年齢推定対象の利用者による前記課題に対する回答を含み、
前記制御部は、前記脳年齢推定対象の利用者の前記ピーク潜時までの傾きと前記第1近似式とに基づいて、前記脳年齢推定対象の利用者の前記ピーク潜時までの傾きに基づく脳の状態を示す第1脳年齢を推定し、前記脳年齢推定対象の利用者の前記得点と前記第2近似式とに基づいて、前記脳年齢推定対象の利用者の前記得点に基づく脳の状態を示す第2脳年齢を推定し、前記第1脳年齢及び前記第2脳年齢の平均値を前記脳年齢推定対象の利用者の脳の状態を示す脳年齢として算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
コンピュータが、
利用者が認知機能に関する課題を解く作業を行う際に測定された脳血流変化量、前記利用者の実年齢、前記利用者による前記課題に対する回答を格納し、
格納される前記脳血流変化量から、前記作業の開始時刻から前記脳血流変化量が最初のピークとなる時刻であるピーク潜時までの単位時間当たりの脳血流変化量であるピーク潜時までの傾きを算出し、格納される前記利用者の前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとに基づいて、前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとの関係を示す第1近似式を算出し、
前記回答から、前記回答の正答率に基づく得点を算出し、前記利用者の前記実年齢と前記得点とに基づいて、前記実年齢と前記得点との関係を示す第2近似式を算出する
ことを実行する情報処理方法。
【請求項4】
コンピュータに、
利用者が認知機能に関する課題を解く作業を行う際に測定された脳血流変化量、前記利用者の実年齢、前記利用者による前記課題に対する回答を格納し、
格納される前記脳血流変化量から、前記作業の開始時刻から前記脳血流変化量が最初のピークとなる時刻であるピーク潜時までの単位時間当たりの脳血流変化量であるピーク潜時までの傾きを算出し、格納される前記利用者の前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとに基づいて、前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとの関係を示す第1近似式を算出し、
前記回答から、前記回答の正答率に基づく得点を算出し、前記利用者の前記実年齢と前記得点とに基づいて、前記実年齢と前記得点との関係を示す第2近似式を算出する
ことを実行させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドセットと呼ばれる頭部装着装置に、近赤外線照射部と近赤外線検出部を設け、脳表面の血流量の変化(脳血流変化量)を検出し、検出されたデータをデータ処理装置で処理することで、脳の活動状態を示す情報を取得する計測システムが提供されている。当該計測システムを利用して、何らかのトレーニング等の際の脳活動状態を計測することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-155137号公報
【特許文献2】特表2017-522927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被検者に対して脳の認知機能に対応する課題を行わせ、当該課題の正答率等により、脳年齢を推定することが行われている。しかし、ここで推定される脳年齢は、脳の状態を計測して推定されるものではない。
【0005】
また、MRI(Magnetic Resonance Imaging)などで脳の画像を撮影し、当該画像に基づいて、脳の萎縮の程度により脳の年齢(脳年齢)を推定する技術がある。脳は、一般に、実年齢が上がるにつれて、萎縮する。脳年齢は、脳の加齢の程度を示す指標である。実年齢X歳の人物の平均的な脳を有する人物を、脳年齢X歳の人物とする。MRIなどで脳の画像を撮影するには、大規模な装置を使用することが求められ、手軽に脳年齢を推定することは難しい。
【0006】
本発明は、より正確に脳年齢を推定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、第1の態様は、
利用者が認知機能に関する課題を解く作業を行う際に測定された脳血流変化量、前記利用者の実年齢、前記利用者による前記課題に対する回答を格納する格納部と、
前記格納部に格納される前記脳血流変化量から、前記作業の開始時刻から前記脳血流変化量が最初のピークとなる時刻であるピーク潜時までの単位時間当たりの脳血流変化量であるピーク潜時までの傾きを算出し、前記格納部に格納される前記利用者の前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとに基づいて、前記実年齢と前記ピーク潜時までの傾きとの関係を示す第1近似式を算出し、
前記格納部に格納される前記回答から、前記回答の正答率に基づく得点を算出し、前記格納部に格納される前記利用者の前記実年齢と前記得点とに基づいて、前記実年齢と前記得点との関係を示す第2近似式を算出する制御部を備える、
情報処理装置とする。
【0008】
開示の態様は、プログラムが情報処理装置によって実行されることによって実現されてもよい。即ち、開示の構成は、上記した態様における各手段が実行する処理を、情報処理
装置に対して実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を情報処理装置が実行する方法をもって特定されてもよい。開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を行う情報処理装置を含むシステムとして特定されてもよい。
【0009】
プログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくても、並列的または個別に実行される処理を含む。プログラムを記述するステップの一部が省略されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より正確に脳年齢を推定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、脳血流量計測システムの構成例を示す図である。
図2図2は、頭部装着装置の構成例を示す図である。
図3図3は、情報処理装置の構成例を示す図である。
図4図4は、実施形態の脳血流量計測システムの基準データ算出の際の動作フローの例を示す図である。
図5図5は、利用者が所定の作業をしている際の脳血流変化量の時間変化のグラフの例を示す図である。
図6図6は、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す複数の点、及び、当該複数の点の近似曲線の例を示す図である。
図7図7は、利用者の実年齢と当該利用者の課題に対する得点との関係を示す複数の点、及び、当該複数の点の近似曲線の例を示す図である。
図8図8は、実施形態の脳血流量計測システムの脳年齢推定の際の動作フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0013】
〔実施形態〕
(構成例)
図1は、本実施形態に係る脳血流量計測システムの構成例を示す図である。本実施形態の脳血流量計測システム1は、利用者(被検者)の脳血流変化量を測定しながら、利用者に所定の作業をさせ、当該所定の作業時の脳血流変化量を測定する。所定の作業は、例えば、脳に負荷をかける問題を解く作業、身体の動きを伴う作業などである。所定の作業は、例えば、トレイル・メイキング・テスト(TMT)である。TMTについては、後に説明する。脳血流量計測システムは、様々な年齢、性別等の属性を有する被検者に対して、所定の作業をさせ、脳血流変化量を測定する。脳血流量計測システムは、被検者の年齢、性別等と、脳血流変化量との関係を求める。また、脳血流量計測システムは、被検者に対して所定の作業をさせ、所定の作業時の脳血流変化量に基づいて、被検者の脳年齢を推定する。
【0014】
図1のように、脳血流量計測システム1は、頭部装着装置10、情報処理装置20とを有する。頭部装着装置10と情報処理装置20とは、ネットワークN1を介して、通信可能に接続される。ネットワークN1は、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(L
ocal Area Network)、LTE(Long Term Evolution)等の規格に従うネットワークである。頭部装着装置10は、脳血流変化量等のバイタルデータを計測する計測装置の一例である。頭部装着装置10と情報処理装置20とは、ネットワークN1を介さずに直接接続されてもよい。
【0015】
図2は、頭部装着装置の構成例を示す図である。頭部装着装置10は、情報処理の側面としては、制御部11、無線通信部12、一対の赤外線センサ13、14、及び、加速度センサ15を有する。制御部11は、頭部装着装置10の計測と通信を制御する。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、あるいはDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサとメモリとを有し、メモリ上に実行可能に展開されたコンピ
ュータプログラム、ファームウェア等により処理を実行する。ただし、制御部11は、無線通信部12、赤外線センサ13、14、加速度センサ15を起動し、各構成要素との連携処理を実行する専用のハードウェア回路、FPGA(Field Programmable Gate Array
)等であってもよい。また、制御部11は、CPU、DSP、専用のハードウェア回路等が混在したものであってもよい。頭部装着装置10は、利用者の頭部に装着され、利用者の頭部に固定される構造を有する。
【0016】
無線通信部12は、所定のインターフェースによって、制御部11、赤外線センサ13、14、及び、加速度センサ15と接続される。ただし、無線通信部12は、制御部11を介して、赤外線センサ13、14、加速度センサ15からデータを取得する構成であってもよい。無線通信部12は、ネットワークN1を介して、情報処理装置20と通信する。無線通信部12は、転送手段の一例である。ただし、脳血流量計測システム1において、無線通信部12の無線インターフェースの規格に限定はない。無線通信部12は、
赤外線センサ13、14、及び、加速度センサ15等で検出された検出値を情報処理装置20に送信する。
【0017】
ネットワークN1での通信時、通信ヘッダのヘッダ部分、あるいは、通信データ中の利用者データ部分(ペイロード部分)に、頭部装着装置10を識別する識別子を埋め込んで、情報処理装置20が利用者(被験者)を識別できるようにしてもよい。
【0018】
また、脳血流量計測システム1において、無線通信部12に代えて、あるいは、無線通信部12とともに有線で通信を行う通信部を設けてもよい。すなわち、頭部装着装置10と情報処理装置20とが有線通信のインターフェースで接続されてもよい。この場合の有線通信のインターフェースに限定はなく、脳血流量計測システム1の用途に応じてUSB(Universal Serial Bus)、PCI Express(登録商標)等の各種インターフェースを使用できる。
【0019】
赤外線センサ13、14は、いずれも近赤外線を頭部に照射し、脳の大脳皮質付近で一部吸収されて散乱された近赤外線を受光し、電気信号に変換する。脳の大脳皮質は、例えば、脳の活動状態に応じて、血流量が異なる。その結果、大脳皮質の各部において、血液中の酸素と結合したヘモグロビンの量と、酸素と結合していないヘモグロビンの量が変化する。ヘモグロビンの量の変化、酸素量の変化等に起因して、大脳皮質付近での近赤外線の吸収特性、あるいは、散乱特性が変化する。赤外線センサ13、14は、このような大脳皮質付近の血流の状態に応じた近赤外線吸収率の変化あるいは透過率の変化により光量が変化する近赤外線を電気信号に変換して出力する。赤外線センサ13、14は、検出部の一例である。赤外線センサ13、14で検出される情報により、脳血流変化量、脈拍数などを算出することができる。脈拍数は、心拍数に相当する。
【0020】
赤外線センサ13、14は、例えば、近赤外線を照射する近赤外線光源と、近赤外線を受光する受光部を含む。近赤外線光源は、例えば、LED(Light Emitting Diodes)、
赤外線ランプ等である。また、受光部は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の光電素子と、増幅器と、AD(Analog Digital)コンバータとを含む。なお、近赤外線光源と受光部とが対にして設けられなくてもよい。例えば、1つの近赤外線光源に対して、複数の受光部が設けられてもよい。赤外線センサ13、14は、計測部の一例である。ここでは、2つの赤外線センサ13、14としているが、1つの赤外線センサであっても3つ以上の赤外線センサであってもよい。
【0021】
加速度センサ15は、互いに直交する3軸方向の加速度を計測するセンサである。加速度センサ15は、互いに直交する3軸方向の回りの角速度を計測するセンサを含んでもよい。角速度は、角加速度であってもよい。加速度センサ15は、例えば、ピエゾ抵抗方式、静電容量検出方式、又は熱検知方式等の加速度センサを含む。また、加速度センサ15は、角速度を計測するジャイロセンサを含んでもよい。ジャイロセンサは、例えば、コリオリ力を利用して角速度を検出する振動式ジャイロセンサである。加速度センサ15は、頭部装着装置10が装着される頭部の加速度、角速度、鉛直方向(重力方向)等を検出しうる。
【0022】
図3は、利用者端末の構成例を示す図である。情報処理装置20は、頭部装着装置10を装着した利用者に、所定の作業を促す表示をし、利用者に所定の作業をさせる。情報処理装置20は、利用者に所定の作業をさせている間、脳血流変化量を測定する。情報処理装置20は、コンピュータの一例である。情報処理装置20は、PC(Personal Computer)、スマートフォン、携帯電話、タブレット型端末、カーナビゲーション装置、PDA
(Personal Digital Assistant)のような専用または汎用のコンピュータ、あるいは、コンピュータを搭載した電子機器を使用して実現可能である。
【0023】
情報処理装置20は、CPU21と、メモリ22と、無線通信部23と、公衆回線通信部24と、表示部25と、操作部26と、出力部27と、撮像部28と、測位部29と、物理センサ部2Aを有する。
【0024】
CPU21は、メモリ22に実行可能に展開されたコンピュータプログラムにより、情報処理装置20としての処理を実行する。情報処理装置20としての処理は、例えば、上記利用者の脳の活動状態に関連する様々な情報処理を含むサービスである。また、情報処理装置20としての処理は、例えば、無線通信部23、表示部25などの各構成部に対する制御を含む。このようなコンピュータプログラムを実行するCPU21は、制御部の一例である。
【0025】
メモリ22は、CPU21で実行されるコンピュータプログラム、あるいは、CPU21が処理するデータを記憶する。メモリ22は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを含んでよい。メモリ22は、格納部の一例である。メモリ22には、所定の作業を利用者に行わせるためのプログラム、データ等が格納される。
【0026】
無線通信部23は、頭部装着装置10の無線通信部12と同様である。無線通信部23は、受信手段の一例である。また、情報処理装置20は、無線通信部12に代えて、あるいは、無線通信部12とともに有線で通信を行う通信部を有してもよい。情報処理装置20は、無線通信部23を介して、頭部装着装置10の赤外線センサ13、14、加速度センサ15で検出された情報を取得する。情報処理装置20は、頭部装着装置10から取得した情報に基づいて、利用者の心拍数、脳血流変化量等を算出する。
【0027】
公衆回線通信部24は、上位のネットワーク等を介して、サーバ等の他の情報処理装置等と通信する。上位のネットワークは、公衆回線網等である。公衆回線通信部24は、通信部の一例である。ただし、脳血流量計測システム1において、ネットワークN1は公衆
回線網に限定されず、例えば、LAN(Local Area Network)等の構内ネットワーク、企業、事業者、役所、学校、研究機関等の専用回線、VPN(Virtual Private Network)等の
広域ネットワークであってもよい。
【0028】
表示部25は、例えば、液晶ディスプレイ、EL(Electro-Luminescence)パネル等であり、CPU21からの出力情報を表示する。操作部26は、例えば、押しボタン、タッチパネル、ポインティングデバイス等であり、利用者の操作を受け付ける。操作部26のタッチパネルは、表示部25の表面に設置される。出力部27は、例えば、振動を出力するバイブレータ、音響あるいは音声を出力するスピーカ等である。撮像部28は、例えば、固体撮像素子を含むカメラである。固体撮像素子としては、CCD(Charge-coupled device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を利用できる。
【0029】
測位部29は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機であり、GPS
衛星からの電波を受信し、現在位置(緯度、経度等)、時刻等を算出する。ただし、測位部29としては、GPS受信機を有するものに限定される訳ではない。例えば、公衆回線通信部24が携帯電話網である場合には、測位部29は、携帯電話基地局からの距離を基に測位を実行してもよい。
【0030】
物理センサ部2Aは、例えば、加速度センサ、あるいは角加速度センサ等である。ただし、物理センサ部2Aは、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、または水圧センサであってもよい。
【0031】
〈動作例〉
本実施形態の脳血流量計測システムの動作例について説明する。脳血流量計測システム1は、利用者に所定の作業をさせ、所定の作業を行ったときの脳血流変化量を計測する。また、脳血流量計測システム1は、様々な被検者の所定の作業を行った時の脳血流変化量を測定し、脳年齢推定用の基準データ(脳年齢推定用データ)を算出する。また、脳血流量計測システム1は、当該基準データ等に基づいて、所定の作業を行う被検者の脳年齢を推定する。
【0032】
《基準データ算出》
図4は、本実施形態の脳血流量計測システムの基準データ算出の際の動作フローの例を示す図である。本実施形態の脳血流量計測システム1の情報処理装置20は、例えば、利用者に操作可能な状態で携帯されている。頭部装着装置10は、あらかじめ、利用者の頭部に装着されている。本実施形態の脳血流量計測システム1は、様々な年齢、性別等の属性を有する被検者に対して、所定の作業をさせ、脳血流変化量を測定し、脳血流変化量に基づく脳年齢推定用の基準データを算出する。また、脳血流量計測システム1は、行わせた所定の作業に対して採点をし、得点に基づく脳年齢推定用の基準データを算出する。脳血流変化量の時間変化は、利用者の脳の状態(脳の萎縮の程度)に対応する。
【0033】
S101では、情報処理装置20は、表示部25に、利用者に所定の動作をすることを促す表示をする。当該表示には、所定の作業を促す文字列(文章)等が含まれ得る。情報処理装置20は、所定の作業を促すために、出力部27のスピーカ等により、所定の作業を促す音声(例えば、「課題をはじめてください」)を出力してもよい。また、情報処理装置20は、表示部25に、作業の内容(課題など)を表示してもよい。情報処理装置20の利用者は、当該表示等に従って所定の作業を行う。情報処理装置20は、利用者に行わせる所定の作業の開始のタイミングを表示部25等に出力してもよい。利用者は、表示部25等に出力される開始のタイミングに従って所定の作業を行う。ここでは、利用者は、所定の作業以外の動作は行わない。
【0034】
また、情報処理装置20は、操作部26により、利用者による、課題に対する回答の入力を受け付ける。情報処理装置20は、操作部26により入力された課題に対する回答を、メモリ22に格納する。情報処理装置20は、利用者が所定の作業に要した時間を計測し、計測した時間を、メモリ22に格納する。
【0035】
利用者に行わせる所定の作業は、例えば、注意力に関する課題、短期記憶に関する課題、脳の処理速度に関する課題、脳の抑制力に関する課題などの認知機能に関する課題を解く作業である。ここでは、所定の作業は、認知機能に関する課題を解く作業であるとする。認知機能に関する課題は、それぞれ、利用者による、課題の正答率や課題を解く時間に基づいて採点されるものとする。当該所定の作業は、他の作業であってもよい。
【0036】
S102では、頭部装着装置10は、頭部装着装置10を装着された利用者の脳血流変化量を測定する。即ち、頭部装着装置10は、利用者がS101で促した所定の作業を行っている際に、頭部装着装置10の赤外線センサ13、14を介して所定の情報を検出する。各情報は、所定のサンプリング周波数で検出され、時系列データとして得られる。頭部装着装置10は、検出の開始のタイミングを、情報処理装置20より通知されて、当該通知に基づいて、赤外線センサ13、14による検出を開始してもよい。頭部装着装置10は、無線通信部12を介して、検出した情報を情報処理装置20に送信する。頭部装着装置10は、所定の作業を行う期間(所定の作業の開始から終了までの期間)、脳血流変化量を測定する。
【0037】
S103では、情報処理装置20は、無線通信部23を介して、赤外線センサ13、14によって検出された情報を受信する。情報処理装置20は、受信した情報に基づいて、頭部装着装置10を装着された利用者の脳血流変化量等を算出して取得する。情報処理装置20は、取得した脳血流変化量を、S101で促した所定の作業、利用者(被検者)の情報(年齢、性別等)と対応付けて、メモリ22に格納する。情報処理装置20は、取得した脳血流変化量を、頭部装着装置10を装着された利用者を識別する識別情報等とも対応付けて、メモリ22に格納してもよい。メモリ22には、所定の作業毎(及び、利用者の年齢、性別、利用者など毎)に、脳血流変化量が対応付けられて格納される。ここで取得される脳血流変化量は、所定の作業による脳血流変化量に相当する。情報処理装置20は、ここで取得される脳血流変化量に対してローパスフィルタ(例えば、0.5Hz未満を通すフィルタ)をかけて、1Hz程度の脈拍によるノイズを取り除いたものを、所定の作業による脳血流変化量としてもよい。また、情報処理装置20は、周知の方法により、取得される脳血流変化量から、脈拍による影響を除去してもよい。
【0038】
情報処理装置20は、利用者に対して、同じ所定の作業を複数回行わせて、脳血流変化量を取得し、その平均値を、当該所定の作業に対する脳血流変化量としてもよい。同じ所定の作業を行っても、当該所定の作業に対する脳血流変化量がばらつくことがあるため、複数回行って平均値を取ることで脳血流変化量を標準化でき、より適切に後述の脳年齢推定を行うことができる。また、情報処理装置20は、利用者に対して、定期的に、所定の作業を行わせて、脳血流変化量を取得して、脳血流変化量を更新してもよい。情報処理装置20は、様々な年齢、性別等の属性を有する利用者に所定の作業を行わせ、脳血流変化量を取得して、性別、年齢毎の脳血流変化量のデータを取得し、メモリ22に格納する。情報処理装置20は、上位のネットワーク等を介して、他の情報処理装置において取得された様々な被検者の脳血流変化量を取得し、メモリ22に格納してもよい。
【0039】
情報処理装置20は、利用者に対して、複数種類の所定の作業を行わせてもよい。情報処理装置20は、所定の作業ごとに、脳血流変化量を測定する。
【0040】
S104では、情報処理装置20は、メモリ22に格納される測定された様々な利用者の各脳血流変化量について、ピーク潜時を算出する。潜時とは、刺激が与えられてから反応が起こるまでの時間である。ここでは、ピーク潜時は、所定の作業の開始時刻から脳血流変化量が最初のピークとなる時刻(最初の極大点となる時刻)までの時間である。即ち、ピーク潜時は、所定の作業の開始時刻から脳血流変化量の時間微分が最初に0になる時刻までの時間である。さらに、情報処理装置20は、ピーク潜時と、ピーク潜時の脳血流変化量とから、ピーク潜時までの傾きを算出する。ピーク潜時までの傾きは、所定の作業開始からピーク潜時までの単位時間当たりの脳血流変化量である。所定の作業開始時の脳血流変化量は0とする。よって、ピーク潜時までの傾きは、ピーク潜時の脳血流変化量/所定の作業の開始時刻からピーク潜時までの時間によって求められる。ピーク潜時までの傾きは、脳の状態を示す物理量の一例である。
【0041】
図5は、利用者が所定の作業をしている際の脳血流変化量の時間変化のグラフの例を示す図である。図5のグラフでは、横軸は時刻t、縦軸は脳血流変化量を示す。B(t)は、所定の作業をしている際に測定された時刻tの脳血流変化量を示す。ここでは、B(0)=0とする。所定の作業は、時刻0で開始し、時刻Tで終了するとする。脳血流変化量B(t)は、時刻t1で最初のピークとなる。所定の作業開始からピーク潜時までの時間は、t1-0=t1である。また、B(t1)は、ピーク潜時の脳血流変化量である。よって、ピーク潜時までの傾きは、B(t1)/t1と求められる。
【0042】
情報処理装置20は、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す近似曲線(近似式)を算出する。当該近似曲線は、脳年齢推定用の基準データの例である。情報処理装置20は、算出した近似曲線(脳年齢推定用の基準データ)をメモリ22に格納する。
【0043】
図6は、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す複数の点、及び、当該複数の点の近似曲線の例を示す図である。図6のグラフの横軸は利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きを示し、縦軸は利用者の実年齢を示す。図6のグラフには、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す複数の点が示されている。各点は、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す。図6のグラフでは、ピーク潜時までの傾きが小さいほど、実年齢は低くなる。即ち、ピーク潜時までの傾きが小さいほど、脳年齢は低いと推定される。図6のグラフには、当該複数の点の近似曲線が点線で示されている。当該近似曲線は、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す関係式である。当該近似曲線(関係式)における利用者の実年齢は、平均的な脳を有する利用者の実年齢(即ち、脳年齢)に相当する。即ち、当該関係式(近似式)において、ピーク潜時までの傾きAに対して実年齢Xと求められる場合、ピーク潜時までの傾きがAとなる利用者の脳は、実年齢Xである利用者の平均的な脳に対応する。当該脳年齢は、当該ピーク潜時までの傾きに基づく脳の状態を示す。当該近似曲線は、例えば、y=a/x+b(a、bは係数)等の近似式によって、最小2乗法等により求められる。近似曲線の式(近似式)はこれに限定されるものではない。当該近似曲線は、脳年齢推定用の基準データの例である。当該近似曲線に基づいて、ピーク潜時までの傾きから、脳年齢が推定される。
【0044】
ここでは、ピーク潜時までの傾きと利用者の実年齢との関係から、脳年齢推定用の基準データが算出されるが、ピーク潜時までの傾きの代わりに、所定の作業開始からピーク潜時までの時間t1やピーク潜時の脳血流変化量B(t1)が使用されてもよい。所定の作業開始からピーク潜時までの時間t1は、実年齢が高くなるほど、大きくなる。また、ピーク潜時の脳血流変化量B(t1)は、実年齢が高くなるほど、小さくなる。また、ピーク潜時までの傾きの代わりに、脳血流変化量B(t)の重心に基づく、重心潜時や重心の
脳血流変化量が使用されてもよい。図5に示すように、脳血流変化量B(t)の重心は、脳血流変化量B(t)の曲線と、横軸に平行な脳血流変化量0の直線と、縦軸に平行な時刻Tの直線とに囲まれる図形の重心である。即ち、脳血流変化量B(t)の重心は、所定の作業の開始時刻0から終了時刻Tまでの脳血流変化量の時間変化の重心である。重心潜時は、当該重心の横軸の値(図5の時刻t2)である。重心潜時は、脳血流変化量B(t)の重心の時間方向の値である。当該重心の脳血流変化量は、当該重心の縦軸の値(図5の脳血流変化量B2)である。当該重心の横軸の値である時刻t2は、
【数1】

と表される。重心潜時は、実年齢が高くなるほど、大きくなる。また、脳血流変化量B2は、実年齢が高くなるほど、小さくなる。脳年齢推定用の基準データは、性別ごとに算出されてもよい。
【0045】
また、情報処理装置20は、脳血流変化量B(t)のグラフ及び利用者の性別と、利用者の実年齢との関係を、機械学習等により分析してもよい。分析には、ニューラルネットワークによるディープラーニング、Regression SVM、Regression Random Forest、多重回帰分析、Look Up Table等の学習空間を利用する手法等が使用され得る。また、分析には
他の深層学習が利用されてもよい。情報処理装置20は、脳血流変化量B(t)のグラフ及び利用者の性別と利用者の実年齢との組を教師データとして、脳年齢推定器を学習する。脳年齢推定器は、脳血流変化量B(t)のグラフ及び利用者の性別から、利用者の脳年齢を推定する推定器である。情報処理装置20は、より多くの、脳血流変化量B(t)のグラフ及び利用者の性別と利用者の実年齢との組の教師データを用いることで最適化される。また、教師データとして、ピーク潜時までの傾き、ピーク潜時、ピーク潜時の脳血流変化量、脳血流変化量B(t)のグラフの重心潜時、重心の脳血流変化量、性別、測定場所、測定日時、測定回数、利用者の生活習慣などが使用されてもよい。情報処理装置20は、学習された脳年齢推定器をメモリ22に格納する。
【0046】
また、情報処理装置20は、メモリ22に格納される、利用者ごとの課題に対する回答について、当該課題の正答率を算出する。また、情報処理装置20は、当該課題の正答率、メモリ22に格納される課題を解く時間などに基づいて、採点を行い、採点された得点(課題に対する得点)を、利用者の実年齢と対応付けて、メモリ22に格納する。情報処理装置20は、正答率が高いほど、課題を解く時間が短いほど、高い得点となるような基準で採点する。
【0047】
情報処理装置20は、利用者の実年齢と当該利用者の課題に対する得点との関係を示す近似曲線(近似式)を算出する。当該近似曲線は、脳年齢推定用の基準データの例である。情報処理装置20は、算出した近似曲線(脳年齢推定用の基準データ)をメモリ22に格納する。脳年齢推定用の基準データは、性別ごとに算出されてもよい。
【0048】
図7は、利用者の実年齢と当該利用者の課題に対する得点との関係を示す複数の点、及び、当該複数の点の近似曲線の例を示す図である。図7のグラフの横軸は利用者の課題に対する得点を示し、縦軸は利用者の実年齢を示す。図7のグラフには、利用者の実年齢と当該利用者の課題に対する得点との関係を示す複数の点が示されている。各点は、利用者の実年齢と当該課題に対する得点との関係を示す。図7のグラフでは、課題に対する得点が高いほど、実年齢は低くなる。即ち、課題に対する得点が高いほど、脳年齢は低いと推
定される。図7のグラフには、当該複数の点の近似曲線が点線で示されている。当該近似曲線は、利用者の実年齢と当該利用者の課題に対する得点との関係を示す関係式である。当該近似曲線(関係式)における利用者の実年齢は、平均的な脳を有する利用者の実年齢(即ち、脳年齢)に相当する。即ち、当該関係式(近似式)において、課題に対する得点Aに対して実年齢Xと求められる場合、課題に対するが得点Aとなる利用者の脳は、実年齢Xである利用者の平均的な脳に対応する。当該脳年齢は、当該得点に基づく脳の状態を示す。当該近似曲線は、例えば、y=a/x+b(a、bは係数)等の近似式によって、最小2乗法等により求められる。近似曲線の式(近似式)はこれに限定されるものではない。当該近似曲線は、脳年齢推定用の基準データの例である。当該近似曲線に基づいて、課題に対する得点から、脳年齢が推定される。
【0049】
S104の動作は、上位のネットワーク上の他の情報処理装置において行われてもよい。この場合、当該他の情報処理装置は、情報処理装置20などから、ネットワーク等を介して、S101からS103までの動作で取得された様々な被検者の脳血流変化量を取得する。
【0050】
《脳年齢推定》
図8は、本実施形態の脳血流量計測システムの脳年齢推定の際の動作フローの例を示す図である。脳血流量計測システム1は、脳年齢推定対象の利用者が所定の作業を行っている際の、脳血流変化量に基づいて、当該利用者(被検者)の脳年齢を推定する。頭部装着装置10は、あらかじめ、利用者の頭部に装着されている。
【0051】
S201では、情報処理装置20は、表示部25に、脳年齢推定対象の利用者に所定の動作をすることを促す表示をする。当該表示には、所定の作業を促す文字列(文章)、所定の動作を行う身体を示す身体画像(身体を模擬した画像)等が含まれ得る。情報処理装置20は、所定の作業を促すために、出力部27のスピーカ等により、所定の動作を促す音声(例えば、「課題をはじめてください」)を出力してもよい。所定の作業は、例えば、図4の動作フロー所定の作業と同じ作業である。情報処理装置20の利用者は、当該表示等に従って所定の作業を行う。情報処理装置20は、利用者に行わせる所定の作業の開始のタイミングを表示部25等に出力してもよい。利用者は、表示部25等に出力される開始のタイミングに従って所定の作業を行う。ここでは、利用者は、所定の作業以外の動作は行わない。所定の作業は、S101における所定の作業と同じである。即ち、ここでは、所定の作業は、認知機能に関する課題を解く作業であるとする。
【0052】
また、情報処理装置20は、操作部26により、脳年齢推定対象の利用者による、課題に対する回答の入力を受け付ける。情報処理装置20は、操作部26により入力された課題に対する回答を、メモリ22に格納する。情報処理装置20は、利用者が所定の作業に要した時間を計測し、計測した時間を、メモリ22に格納する。
【0053】
S202では、頭部装着装置10は、頭部装着装置10を装着された脳年齢推定対象の利用者の脳血流変化量を測定する。即ち、頭部装着装置10は、利用者がS101で促した所定の作業を行っている際に、頭部装着装置10の赤外線センサ13、14を介して所定の情報を検出する。各情報は、所定のサンプリング周波数で検出され、時系列データとして得られる。頭部装着装置10は、検出の開始のタイミングを、情報処理装置20より通知されて、当該通知に基づいて、赤外線センサ13、14による検出を開始してもよい。頭部装着装置10は、無線通信部12を介して、検出した情報を情報処理装置20に送信する。頭部装着装置10は、所定の作業を行う期間(所定の作業の開始から終了までの期間)、脳血流変化量を測定する。
【0054】
S203では、情報処理装置20は、無線通信部23を介して、赤外線センサ13、1
4によって検出された情報を受信する。情報処理装置20は、受信した情報に基づいて、頭部装着装置10を装着された脳年齢推定対象の利用者の脳血流変化量等を算出して取得する。情報処理装置20は、取得した脳血流変化量を、S201で促した所定の作業、利用者(被検者)の情報(年齢、性別等)と対応付けて、メモリ22に格納する。情報処理装置20は、取得した脳血流変化量を、頭部装着装置10を装着された利用者を識別する識別情報等とも対応付けて、メモリ22に格納してもよい。ここで取得される脳血流変化量は、所定の作業による脳血流変化量に相当する。情報処理装置20は、ここで取得される脳血流変化量に対してローパスフィルタ(例えば、0.5Hz未満を通すフィルタ)をかけて、1Hz程度の脈拍によるノイズを取り除いたものを、所定の作業による脳血流変化量としてもよい。また、情報処理装置20は、周知の方法により、取得される脳血流変化量から、脈拍による影響を除去してもよい。
【0055】
S204では、情報処理装置20は、脳年齢推定対象の利用者の脳年齢を推定する。情報処理装置20は、メモリ22に格納される脳年齢推定対象の利用者の脳血流変化量から、ピーク潜時を算出する。さらに、情報処理装置20は、ピーク潜時と、ピーク潜時の脳血流変化量とから、ピーク潜時までの傾きを算出する。情報処理装置20は、メモリ22に格納される脳年齢推定用の基準データを取得する。ここでは、脳年齢推定用の基準データは、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す関係式である。情報処理装置20は、ピーク潜時までの傾きと、脳年齢推定用の基準データ(第1近似式)とに基づいて、脳年齢推定対象の利用者の脳年齢(第1脳年齢)を推定する。第1脳年齢は、脳血流変化量に基づく脳年齢である。
【0056】
脳年齢推定用の基準データが、ピーク潜時までの傾き以外の情報(例えば、ピーク潜時、重心潜時など)に基づく場合、情報処理装置20は、脳血流変化量から当該情報を算出し、脳年齢推定対象の利用者の脳年齢(第1脳年齢)を推定する。また、情報処理装置20は、脳年齢推定用の基準データが脳年齢推定器である場合、当該推定器に脳年齢推定対象の利用者の脳血流変化量B(t)のグラフを入力して、脳年齢(第1脳年齢)を推定する。
【0057】
また、情報処理装置20は、メモリ22に格納される、脳年齢推定対象の利用者の課題に対する回答について、当該課題の正答率を算出する。また、情報処理装置20は、当該課題の正答率、メモリ22に格納される課題を解く時間などに基づいて、採点を行う。情報処理装置20は、メモリ22に格納される脳年齢推定用の基準データを取得する。ここでは、脳年齢推定用の基準データは、利用者の実年齢と当該利用者の課題に対する得点との関係を示す関係式である。情報処理装置20は、課題に対する得点と、脳年齢推定用の基準データ(第2近似式)とに基づいて、脳年齢推定対象の利用者の脳年齢(第2脳年齢)を推定する。第2脳年齢は、課題に対する回答結果に基づく脳年齢である。
【0058】
情報処理装置20は、脳血流変化量に基づく脳年齢推定用の基準データによる第1脳年齢と、課題に対する回答結果に基づく脳年齢推定用の基準データによる第2脳年齢との平均値を、脳年齢推定対象の利用者の脳年齢とする。
【0059】
S204の動作は、上位のネットワーク上の他の情報処理装置において行われてもよい。この場合、当該他の情報処理装置は、情報処理装置20から、ネットワーク等を介して、S201からS203までの動作で取得された脳年齢推定対象の利用者の脳血流変化量を取得する。
【0060】
(実施形態の作用、効果)
脳血流量計測システム1の情報処理装置20は、利用者に認知機能に関する課題を解く作業を行うことを促し、利用者の頭部に装着された頭部装着装置10により、利用者の脳
血流変化量を測定する。情報処理装置20は、様々な利用者が当該作業を行っている際に脳血流変化量を測定し、測定された脳血流変化量を利用者の属性(性別、実年齢等)と対応付けて格納する。また、情報処理装置20は、課題に対する回答、課題を解く時間を、利用者の属性に対応付けて格納する。情報処理装置20は、格納される測定された様々な利用者の各脳血流変化量について、ピーク潜時までの傾き等を算出する。情報処理装置20は、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す近似曲線を算出する。情報処理装置20は、格納される測定された様々な利用者の課題に対する回答、課題を解く時間に基づいて、採点をする。情報処理装置20は、利用者の実年齢と当該利用者の脳血流変化量から求めたピーク潜時までの傾きとの関係を示す近似曲線を算出する。情報処理装置20は、利用者の実年齢と当該利用者の課題に対する得点との関係を示す近似曲線を算出する。情報処理装置20は、算出した近似曲線を、脳年齢推定用の基準データとして、格納する。ピーク潜時までの傾きの代わりに、所定の作業開始からピーク潜時までの時間やピーク潜時の脳血流変化量、重心潜時等が使用されて、脳年齢推定用の基準データが作成されてもよい。
【0061】
脳血流量計測システム1の情報処理装置20は、脳年齢推定対象の利用者に認知機能に関する課題を解く作業を行うことを促し、当該利用者の頭部に装着された頭部装着装置10により、利用者の脳血流変化量を測定する。情報処理装置20は、脳年齢推定対象の利用者が所定の作業を行っている際に脳血流変化量を測定し、測定された脳血流変化量を格納する。情報処理装置20は、課題に対する回答、課題を解く時間を、利用者の属性に対応付けて格納する。情報処理装置20は、格納される測定された当該利用者の脳血流変化量について、ピーク潜時までの傾き等を算出する。情報処理装置20は、ピーク潜時までの傾きと、脳年齢推定のための基準データとに基づいて、脳年齢推定対象の利用者の第1脳年齢を推定する。第1脳年齢は、脳血流変化量に基づく脳年齢である。脳年齢推定用の基準データが、ピーク潜時までの傾き以外の情報(例えば、ピーク潜時、重心潜時など)に基づく場合、情報処理装置20は、脳血流変化量から当該情報を算出し、脳年齢推定対象の利用者の脳年齢を推定する。情報処理装置20は、課題に対する得点と、脳年齢推定のための基準データとに基づいて、脳年齢推定対象の利用者の第2脳年齢を推定する。第2脳年齢は、認知機能に関する課題に対する回答結果に基づく脳年齢である。情報処理装置20は、第1脳年齢、第2脳年齢に基づいて、脳年齢推定対象の利用者の脳年齢を算出する。脳血流量計測システム1によれば、利用者が所定の作業を行っている際の脳血流変化量による脳の状態(脳の萎縮の状態)及び認知機能に関する課題の回答結果に基づいて、利用者の脳年齢を推定することができる。即ち、脳血流量計測システム1によれば、利用者の脳の状態と認知機能の程度とに基づいて、より正確に利用者の脳年齢を算出することができる。また、情報処理装置20は、脳血流変化量から求められるピーク潜時までの傾きや重心潜時などの特徴量を用いることで、より適切に利用者の脳年齢を推定することができる。
【0062】
上記の構成は、可能な限りこれらを組み合わせて実施され得る。
【0063】
〈コンピュータ読み取り可能な記録媒体〉
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0064】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体内には、CPU、メモリ等のコンピュータを構成する要素を設け、そのCPUにプログラムを実行させてもよい。
【0065】
また、このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。
【0066】
また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0067】
1 脳血流量計測システム
10 頭部装着装置
11 制御部
12 無線通信部
13 赤外線センサ
14 赤外線センサ
15 加速度センサ
20 情報処理装置
21 CPU
22 メモリ
23 無線通信部
24 公衆回線通信部
25 表示部
26 操作部
27 出力部
28 撮像部
29 測位部
2A 物理センサ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8