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特開2024-43397蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043397
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20240322BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240322BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148567
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松隈 かおり
(72)【発明者】
【氏名】相川 建一郎
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC33
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
4K029HA02
4K029HA03
(57)【要約】
【課題】蒸着マスクの製造時において、自重による帯状部の撓みを抑えることを可能とした蒸着マスク中間体、および、蒸着マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】蒸着マスク中間体10は、第1縁部11E1を枠状部12から分離する分離部10Sを備える。蒸着マスク中間体10は、帯状部11のうち、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間の隙間11Gを枠状部12に接続し、分離部10Sを分断する一対の第1架橋部13を備える。一対の第1架橋部13は、帯状部11の幅方向DWにおいて帯状部11を挟む。枠状部12と帯状部11の第2縁部11E2との間に位置し、第2縁部11E2を枠状部12に接続する第2架橋部14と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部と、前記帯状部を囲む枠状部と、を備えた蒸着マスク中間体であって、
前記枠状部は、第1板厚を有し、
前記帯状部は、前記帯状部の長手方向に沿って隙間を空けて並ぶ偶数個のマスク部と、前記マスク部を囲み、前記第1板厚を有する周辺部と、前記周辺部の外縁である外縁部と、を備え、前記マスク部は、複数のマスク孔を含み、
前記外縁部は、第1縁部と第2縁部とを含み、前記第1縁部は、前記長手方向に沿って延び、かつ、前記長手方向に直交する幅方向において、前記偶数個のマスク部と対向することが可能な長さを有し、
前記偶数個のマスク部は、第1マスク部と第2マスク部とを含み、前記第1マスク部と前記第2マスク部とは、前記偶数個のマスク部の個数を2等分する仮想線を挟み、
前記第1縁部を前記枠状部から分離する第1分離部と、
前記帯状部のうち、前記第1マスク部と前記第2マスク部との間の前記隙間を前記枠状部に接続し、前記第1分離部を分断する一対の第1架橋部であって、前記一対の第1架橋部は前記帯状部の前記幅方向において前記帯状部を挟む前記一対の第1架橋部と、
前記枠状部と前記帯状部の前記第2縁部との間に位置し、前記第2縁部を前記枠状部に接続する第2架橋部と、を備える
蒸着マスク中間体。
【請求項2】
前記枠状部は、
外縁部と、
前記帯状部の前記幅方向において、各第1架橋部と前記枠状部の前記外縁部との間の領域であって、前記帯状部を含まない前記領域に位置し、前記帯状部の前記長手方向に沿って延びる貫通部と、を備え、
前記第1架橋部と前記貫通部との間の距離が、前記第1架橋部と前記枠状部の前記外縁部との間の距離よりも短い
請求項1に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項3】
前記第1架橋部と前記貫通部との間の距離が、前記帯状部の前記幅方向における前記第1架橋部の長さよりも短い
請求項2に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項4】
前記枠状部は、内縁部を備え、
前記内縁部は、前記帯状部の前記幅方向において前記帯状部から離れる方向に窪む第1窪みを有し、
前記第1架橋部は、前記帯状部に接続された基端と、前記枠状部に接続された先端とを有し、前記先端は、前記第1窪みに接続されている
請求項2または3に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項5】
前記枠状部は、内縁部を備え、
前記内縁部は、前記帯状部の前記長手方向において前記第1架橋部を挟む一対の第2窪みを備え、各第2窪みは、前記帯状部の前記幅方向において前記第1架橋部から離れる方向に窪み、
前記帯状部の前記幅方向において、前記貫通部と前記第2窪みとが並んでいる
請求項2または3に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項6】
前記第2架橋部は、前記第1板厚よりも薄い第2板厚を有し、前記第2縁部に沿って延びる形状を有したハーフエッチング部である
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項7】
前記第2架橋部は、前記第1板厚を有し、前記第2縁部の一部を前記枠状部に接続し、
前記枠状部と前記帯状部の前記第2縁部との間において、前記第2架橋部を除く部分に位置し、前記第2縁部を前記枠状部から分離する第2分離部をさらに備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク中間体。
【請求項8】
長手方向に沿って延びる帯状を有した蒸着マスクであって、
複数のマスク孔を有した偶数個のマスク部と、
前記マスク部を囲む周辺部と、
前記周辺部の外縁である外縁部と、を備え、
前記偶数個のマスク部は、第1マスク部と第2マスク部とを含み、前記第1マスク部と前記第2マスク部とは、前記偶数個のマスク部の個数を2等分する仮想線を挟み、
前記周辺部は、前記第1マスク部と前記第2マスク部との間の隙間を含み、
前記外縁部は、前記長手方向に直交する幅方向において、前記隙間を挟む一対の切断痕を有する
蒸着マスク。
【請求項9】
金属シートに帯状部と枠状部とを形成すること、および、
前記枠状部から前記帯状部を切断して、前記帯状部から蒸着マスクを形成すること、を含み、
前記帯状部と前記枠状部とを形成することは、
前記枠状部が、第1板厚を有し、
前記帯状部が、前記帯状部の長手方向に沿って隙間を空けて並ぶ偶数個のマスク部と、前記マスク部を囲み、前記第1板厚を有する周辺部と、前記周辺部の外縁である外縁部と、を備え、前記マスク部は、複数のマスク孔を含み、
前記外縁部が、第1縁部と第2縁部とを含み、前記第1縁部は、前記長手方向に沿って延び、前記長手方向に直交する幅方向において、前記偶数個のマスク部と対向することが可能な長さを有し、
前記偶数個のマスク部が、第1マスク部と第2マスク部とを含み、前記第1マスク部と前記第2マスク部とが、前記偶数個のマスク部の個数を2等分する仮想線を挟み、
前記第1縁部を前記枠状部から分離する第1分離部と、
前記帯状部のうち、前記第1マスク部と前記第2マスク部との間の前記隙間を前記枠状部に接続し、前記第1分離部を分断する一対の第1架橋部であって、前記一対の第1架橋部は前記帯状部の前記幅方向において前記帯状部を挟む前記一対の第1架橋部と、
前記枠状部と前記帯状部の前記第2縁部との間に位置し、前記第2縁部を前記枠状部に接続する第2架橋部と、を備えるように、前記帯状部と前記枠状部とを形成する
蒸着マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールツーロール方式を用いた蒸着マスクの製造では、巻出しロールから巻取りロールに向けて金属シートが搬送されている間に、金属シートに対してエッチングなどの各種の処理が行われる。蒸着マスクの製造過程において形成される蒸着マスク中間体は、例えば、蒸着マスクを形成するための帯状部と、帯状部を囲む枠状部とを備えている。帯状部の縁のうちで、搬送方向に沿って延びる長辺は、枠状部から切断されている一方で、幅方向に沿って延びる短辺は、枠状部に対してミシン目によって接続されている。ミシン目の切断により帯状部が枠状部から切断されることによって、帯状部から蒸着マスクが形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-55007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸着マスク中間体には、帯状部を枠状部から切断する工程において、帯状部と枠状部との境界に、帯状部から枠状部を切り離すための外力が付与される。帯状部の変形、特に帯状部が備えるマスク孔の変形を抑える観点では、帯状部と枠状部との境界に付与される外力は、マスク孔から離れた位置にのみ付与されることが好ましい。
【0005】
一方で、近年では、蒸着マスクを用いた蒸着処理の効率を高める観点から、蒸着対象および蒸着マスクの大型化が求められている。これに伴い、蒸着マスクを形成するための帯状部も大型化する。そのため、帯状部と枠状部との接続箇所が限定された場合には、帯状部のうちで枠状部に支持される部分も限定されるから、ロールツーロール方式を用いた蒸着マスクの製造時において、帯状部が自重によって撓みやすくなる。そのため、金属シートの搬送時における帯状部の撓みを抑えることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための蒸着マスク中間体は、帯状部と、前記帯状部を囲む枠状部と、を備える。前記枠状部は、第1板厚を有し、前記帯状部は、前記帯状部の長手方向に沿って隙間を空けて並ぶ偶数個のマスク部と、前記マスク部を囲み、前記第1板厚を有する周辺部と、前記周辺部の外縁である外縁部と、を備え、前記マスク部は、複数のマスク孔を含み、前記外縁部は、第1縁部と第2縁部とを含み、前記第1縁部は、前記長手方向に沿って延び、かつ、前記長手方向に直交する幅方向において、前記偶数個のマスク部と対向することが可能な長さを有し、前記偶数個のマスク部は、第1マスク部と第2マスク部とを含み、前記第1マスク部と前記第2マスク部とは、前記偶数個のマスク部の個数を2等分する仮想線を挟む。蒸着マスク中間体は、前記第1縁部を前記枠状部から分離する第1分離部と、前記帯状部のうち、前記第1マスク部と前記第2マスク部との間の前記隙間を前記枠状部に接続し、前記第1分離部を分断する一対の第1架橋部であって、前記一対の第1架橋部は前記帯状部の前記幅方向において前記帯状部を挟む前記一対の第1架橋部と、前記枠状部と前記帯状部の前記第2縁部との間に位置し、前記第2縁部を前記枠状部に接続する第2架橋部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決するための蒸着マスクは、長手方向に沿って延びる帯状を有する。蒸着マスクは、複数のマスク孔を有した偶数個のマスク部と、前記マスク部を囲む周辺部と、前記周辺部の外縁である外縁部と、を備える。前記偶数個のマスク部は、第1マスク部と第2マスク部とを含み、前記第1マスク部と前記第2マスク部とは、前記偶数個のマスク部の個数を2等分する仮想線を挟む。前記周辺部は、前記第1マスク部と前記第2マスク部との間の隙間を含む。前記外縁部は、前記長手方向に直交する幅方向において、前記隙間を挟む一対の切断痕を有し、かつ、前記外縁部のなかで、前記幅方向において前記偶数個のマスク部と対向する部分に、前記一対の切断痕以外の切断痕を有しない。
【0008】
上記課題を解決するための金属シートに帯状部と枠状部とを形成すること、および、前記枠状部から前記帯状部を切断して、前記帯状部から蒸着マスクを形成すること、を含む。前記帯状部と前記枠状部とを形成することは、前記枠状部が、第1板厚を有し、前記帯状部が、前記帯状部の長手方向に沿って隙間を空けて並ぶ偶数個のマスク部と、前記マスク部を囲み、前記第1板厚を有する周辺部と、前記周辺部の外縁である外縁部と、を備え、前記マスク部は、複数のマスク孔を含み、前記外縁部が、第1縁部と第2縁部とを含み、前記第1縁部は、前記長手方向に沿って延び、前記長手方向に直交する幅方向において、前記偶数個のマスク部と対向することが可能な長さを有し、前記偶数個のマスク部が、第1マスク部と第2マスク部とを含み、前記第1マスク部と前記第2マスク部とが、前記偶数個のマスク部の個数を2等分する仮想線を挟み、前記第1縁部を前記枠状部から分離する分離部と、前記帯状部のうち、前記第1マスク部と前記第2マスク部との間の前記隙間を前記枠状部に接続し、前記第1分離部を分断する一対の第1架橋部であって、前記一対の第1架橋部は前記帯状部の前記幅方向において前記帯状部を挟む前記一対の第1架橋部と、前記枠状部と前記帯状部の前記第2縁部との間に位置し、前記第2縁部を前記枠状部に接続する第2架橋部と、を備えるように、前記帯状部と前記枠状部とを形成する。
【0009】
上記蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法によれば、第1マスク部と第2マスク部との間の隙間を枠状部に接続する一対の第1架橋部を有するから、蒸着マスクの製造時において、自重による帯状部の撓みを抑えることが可能である。
【0010】
上記蒸着マスク中間体において、前記枠状部は、外縁部と、前記帯状部の前記幅方向において、各第1架橋部と前記枠状部の前記外縁部との間の領域であって、前記帯状部を含まない前記領域に位置し、前記帯状部の前記長手方向に沿って延びる貫通部と、を備え、前記第1架橋部と前記貫通部との間の距離が、前記第1架橋部と前記枠状部の前記外縁部との間の距離よりも短くてもよい。この蒸着マスク中間体によれば、枠状部の内縁部から貫通部までにわたって枠状部を切断することによって、第1架橋部を枠状部から切り離すことが可能である。
【0011】
上記蒸着マスク中間体において、前記第1架橋部と前記貫通部との間の距離が、前記帯状部の前記幅方向における前記第1架橋部の長さよりも短くてもよい。この蒸着マスク中間体によれば、枠状部の内縁部から貫通部までの距離が短いから、第1架橋部を枠状部から切り離すことがさらに容易である。
【0012】
上記蒸着マスク中間体において、前記枠状部は、内縁部を備え、前記内縁部は、前記帯状部の前記幅方向において前記帯状部から離れる方向に窪む第1窪みを有し、前記第1架橋部は、前記帯状部に接続された基端と、前記枠状部に接続された先端とを有し、前記先端は、前記第1窪みに接続されていてもよい。この蒸着マスク中間体によれば、内縁部が第1窪みを有する分だけ内縁部と貫通部との間の距離が短くなるから、第1架橋部を枠状部から切り離すことがさらに容易である。
【0013】
上記蒸着マスク中間体において、前記枠状部は、内縁部を備え、前記内縁部は、前記帯状部の前記長手方向において前記第1架橋部を挟む一対の第2窪みを備え、各第2窪みは、前記帯状部の前記幅方向において前記第1架橋部から離れる方向に窪み、前記帯状部の前記幅方向において、前記貫通部と前記第2窪みとが並んでいてもよい。この蒸着マスク中間体によれば、内縁部が第2窪みを有する分だけ内縁部と貫通部との間の距離が短くなるから、第1架橋部を枠状部から切り離すことがさらに容易である。
【0014】
上記蒸着マスク中間体において、前記第2架橋部は、前記第1板厚よりも薄い第2板厚を有し、前記第2縁部に沿って延びる形状を有したハーフエッチング部であってもよい。この蒸着マスク中間体によれば、第2縁部と枠状部との間に沿って延びるハーフエッチング部によって第2縁部が枠状部に接続されるから、蒸着マスク中間体の搬送時において、第2縁部が枠状部から外れにくくなる。
【0015】
上記蒸着マスク中間体において、前記第2架橋部は、前記第1板厚を有し、前記第2縁部の一部を前記枠状部に接続し、前記枠状部と前記帯状部の前記第2縁部との間において、前記第2架橋部を除く部分に位置し、前記第2縁部を前記枠状部から分離する第2分離部を備えてもよい。この蒸着マスク中間体によれば、第2架橋部を切り離すことによって第2縁部を枠状部から取り外すことが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蒸着マスクの製造時において、自重による帯状部の撓みを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態における蒸着マスク中間体の構造を示す平面図である。
図2図2は、図1が示す蒸着マスク中間体が含む架橋部を拡大して示す平面図である。
図3図3は、図1が示す蒸着マスク中間体が含む架橋部を拡大して示す平面図である。
図4図4は、図1が示す蒸着マスク中間体が含む架橋部を拡大して示す平面図である。
図5図5は、図1が示す蒸着マスク中間体から形成された蒸着マスクを示す平面図である。
図6図6は、蒸着マスク中間体の変更例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図5を参照して、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法を説明する。
[蒸着マスク中間体]
図1から図4を参照して、蒸着マスク中間体を説明する。
【0019】
図1が示す蒸着マスク中間体10は、金属シートから形成されている。金属シートは、例えばニッケル、鉄ニッケル系合金、または、鉄ニッケルコバルト系合金から形成されている。金属シートは、鉄ニッケル系合金から形成されることが好ましく、36質量%のニッケルを含む鉄ニッケル系合金から形成されることがさらに好ましい。また、金属シートは、鉄ニッケルコバルト系合金から形成されることが好ましく、32質量%のニッケル、4質量%以上5質量%以下のコバルトを含む鉄ニッケルコバルト系合金から形成されることがさらに好ましい。金属シートの厚さは、例えば5μm以上50μm以下であってよい。金属シートの幅は、例えば250mm以上550mm以下であってよい。
【0020】
蒸着マスク中間体10は、帯状部11と枠状部12とを備えている。枠状部12は、帯状部11を囲んでいる。枠状部12は、第1板厚を有している。蒸着マスク中間体10は、金属シートのウェットエッチングによって形成される。枠状部12は、金属シートのうちでウェットエッチングされていない部分であるから、第1板厚は、蒸着マスク中間体10の形成に用いられた金属シートの厚さである。
【0021】
帯状部11の長手方向DLは、金属シートの長手方向と一致し、かつ、帯状部11の幅方向DWは、金属シートの幅方向と一致している。幅方向DWは、長手方向DLに直交する方向である。幅方向DWに沿う帯状部11の長さは、例えば、帯状部11から形成される蒸着マスクが10インチ以上のタブレット型端末用の蒸着マスクである場合には、200mm以上である。図1が示すように、例えば、金属シートの幅が350mmであり、かつ、10インチのタブレット型端末用の蒸着マスクが帯状部11から形成される場合には、帯状部11の幅方向DWにおいて、金属シートには帯状部11が1つのみ位置している。これに対して、帯状部11の長手方向DLにおいて、金属シートには複数の帯状部11が位置している。
【0022】
なお、例えば、金属シートの幅が550mmであり、かつ、帯状部11から形成される蒸着マスクが10インチのタブレット型端末用の蒸着マスクである場合には、帯状部11の幅方向DWにおいて、金属シートには2つの帯状部11が位置することが可能である。
【0023】
帯状部11は、偶数個のマスク部11M、周辺部11P、および、外縁部11Eを備えている。図1が示す例では、帯状部11は2つのマスク部11Mを備えている。偶数個のマスク部11Mは、帯状部11の長手方向DLに沿って隙間11Gを空けて並んでいる。周辺部11Pは、マスク部11Mを囲み、第1板厚を有している。周辺部11Pは、マスク部11M間の隙間11Gを含んでいる。外縁部11Eは、周辺部11Pの外縁である。マスク部11Mは、複数のマスク孔11Hを含んでいる。マスク孔11Hは、蒸着マスクが蒸着に用いられた場合に、所定の蒸着パターンを形成するための蒸着材料の通路である。周辺部11Pは、マスク孔11Hを有していないが、蒸着材料の通路ではないパターンを有してもよい。
【0024】
パターンは、帯状部11から形成された蒸着マスクの架張時における変形を緩和したり、マスク孔11Hが形成されたマスク部11Mを平坦に保ったりする目的で周辺部11Pに形成される。パターンは、金属シートの厚さ方向において、周辺部11Pを貫通していなくてもよいし、周辺部11Pを貫通していてもよい。一般に、パターンは周辺部11Pを貫通していないことが多い。なお、パターンが周辺部11Pを貫通する場合には、蒸着によって形成された蒸着パターンの特性に影響が生じないように、パターンの数、大きさ、および、形状が設定される。
【0025】
外縁部11Eは、第1縁部11E1と第2縁部11E2とを含んでいる。第1縁部11E1は、長手方向DLに沿って延び、かつ、幅方向DWにおいて、偶数個のマスク部11Mと対向することが可能な長さを有している。偶数個のマスク部11Mは、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2とを含んでいる。第1マスク部11M1と第2マスク部11M2とは、偶数個のマスク部11Mの個数を2等分する仮想線Lを挟んでいる。
【0026】
図1が示す例では、帯状部11が2つのマスク部11Mを備えるから、2つのマスク部11Mは、仮想線Lによって1つずつに分離されている。帯状部11が偶数個のマスク部11Mを備えるから、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2の間の隙間11Gは、長手方向DLにおける帯状部11の中央を含みやすい。また、仮に隙間11Gが長手方向DLにおける帯状部11の中央を含まない場合であっても、隙間11Gは、長手方向DLにおいて、帯状部11における中央の近傍に位置しやすい。図1が示す例では、隙間11Gは、長手方向DLにおける帯状部11の中央を含んでいる。
【0027】
外縁部11Eは、一対の長辺11ELと一対の短辺11ESとも定義することが可能である。各長辺11ELは長手方向DLに沿って延び、かつ、一対の長辺11ELは互いに平行である。各短辺11ESは幅方向DWに沿って延びている。第1縁部11E1は、長辺11ELの一部である。第2縁部11E2は、短辺11ESの全体と、長辺11ELのうちで第1縁部11E1に含まれない部分を含んでいる。なお、長辺11ELのうちで第1縁部11E1に含まれない部分は、短辺11ESに連なっている。すなわち、第2縁部11E2は、短辺11ESと長辺11ELとによって形成される角部を含んでいる。
【0028】
各短辺11ESは、他方の短辺11ESに向けて窪む切り欠き11ESNを含んでいる。そのため、帯状部11の第2縁部11E2は、切り欠き11ESNを含んでいる。蒸着マスクの製造時において、長手方向DLにおける帯状部11の端部が自重によって撓むことを抑える観点では、切り欠き11ESNの大きさが小さいことが好ましい。上述したように、本開示の帯状部11は、幅方向DWにおいて200mm以上の長さを有するから、長手方向DLの端部も撓みやすい。この点、図1が示す例では、各短辺11ESが幅方向DWに沿って間隔を空けて並ぶ3つの切り欠き11ESNを備えている。これにより、帯状部11が切り欠き11ESNを1つのみ備える場合に比べて、切り欠き11ESNごとの大きさを小さくすることが可能であるから、帯状部11における長手方向DLの端部が自重によって撓むことが抑えられる。
【0029】
蒸着マスク中間体10は、一対の第1架橋部13、分離部10S、および、第2架橋部14を備えている。第1架橋部13は、帯状部11のうち、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間の隙間11Gを枠状部12に接続している。一対の第1架橋部13は、帯状部11の幅方向DWにおいて帯状部11を挟んでいる。蒸着マスク中間体10は、第1縁部11E1を枠状部12に接続する架橋部として、一対の第1架橋部13のみを有している。そのため、第1縁部11E1のなかで、第1縁部11E1によって枠状部12に接続された部分以外の部分は、枠状部12には接続されていない。
【0030】
分離部10Sは、枠状部12と帯状部11の第1縁部11E1との間において、各第1架橋部13の両側に位置し、第1縁部11E1を枠状部12から分離している。すなわち、帯状部11の外縁部11Eのなかで、長手方向DLに沿って延び、分離部10Sによって枠状部12から分離され、かつ、第1架橋部13のみによって枠状部12に接続された部分が、第1縁部11E1である。分離部10Sは、長手方向DLに沿って延びる形状を有し、かつ、第1架橋部13によって分断されている。
【0031】
第2架橋部14は、枠状部12と帯状部11の第2縁部11E2との間に位置し、第2縁部11E2を枠状部12に接続している。第2架橋部14は、第1板厚よりも薄い第2板厚を有し、第2縁部11E2に沿って延びる形状を有したハーフエッチング部である。第2架橋部14は、第2縁部11E2の全体にわたる長さを有し、これによって、第2縁部11E2のうちで、切り欠き11ESN以外の部分を枠状部12に接続している。第2架橋部14は、ハーフエッチング部上に位置し、かつ、ハーフエッチング部に沿って間隔を空けて並ぶ貫通部を備えてもよい。各貫通部は、蒸着マスク中間体10の厚さ方向に沿って蒸着マスク中間体10を貫通している。
【0032】
本開示の蒸着マスク中間体10によれば、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間の隙間11Gを枠状部12に接続する一対の第1架橋部13を有するから、蒸着マスクの製造時において、自重による帯状部11の撓みを抑えることが可能である。第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間の隙間11Gは、長手方向DLにおける帯状部11の中央を含む、あるいは、長手方向DLにおいて、帯状部11における中央の近傍に位置するから、帯状部11において、長手方向DLに沿う長さは第1架橋部13によってほぼ二等分される。そのため、第1架橋部13が、帯状部11における長手方向DLの長さを偏りを有するように二分する場合に比べて、自重による帯状部11の撓みが抑えられる。
【0033】
また、蒸着マスク中間体10は、帯状部11の第1縁部11E1を枠状部12に接続する架橋部として、隙間11Gを枠状部12に接続する第1架橋部13のみを有する。そのため、第1架橋部13を枠状部12から取り外す際に帯状部11に作用する外力が、マスク部11Mに伝わりにくい。そのため、マスク部11Mが有するマスク孔11Hが変形しにくい。さらには、蒸着マスク中間体10は、帯状部11の第1縁部11E1を枠状部12に接続する第1架橋部13を一対のみ有するから、第1架橋部13を枠状部12から取り外す際に帯状部11に外力を作用させる回数を最小限に抑えることが可能である。このように、本開示の蒸着マスク中間体10によれば、蒸着マスクの製造時における帯状部11の撓みを抑えることと、枠状部12から帯状部11を切り離す際に生じる帯状部11の変形を抑えることとを両立することができる。
【0034】
一方、第2縁部11E2と枠状部12との間に沿って延びるハーフエッチング部によって第2縁部11E2が枠状部12に接続されるから、蒸着マスク中間体10の搬送時において、第2縁部11E2が枠状部12から外れにくくなる。
【0035】
図2から図4は、それぞれ図1が示す領域Aを拡大した構造を示している。ただし、図2は蒸着マスクの第1例における一部構造を示し、図3は蒸着マスクの第2例における一部構造を示し、かつ、図4は蒸着マスクの第3例における一部構造を示している。
【0036】
図2が示すように、枠状部12は、外縁部12E1(図1参照)、内縁部12E2、および、貫通部12Hを備えている。貫通部12Hは、帯状部11の幅方向DWにおいて、各第1架橋部13と枠状部12の外縁部12E1との間の領域であって、帯状部11を含まない領域に位置している。言い換えれば、帯状部11の幅方向DWにおいて、枠状部12のうち、各第1架橋部13に対して帯状部11とは反対側に位置する領域に、貫通部12Hが位置している。すなわち、貫通部12Hは、幅方向DWにおいて、第1架橋部13と、外縁部12E1のうち、当該第1架橋部13からの直線距離が最も短い部分との間に位置している。
【0037】
貫通部12Hは、帯状部11の長手方向DLに沿って延びている。そのため、貫通部12Hは、分離部10Sと平行である。長手方向DLにおいて、貫通部12Hの長さは、第1架橋部13の長さよりも長い。幅方向DWにおいて、第1架橋部13は、貫通部12Hの長手方向DLにおける両端とは並んでいない。すなわち、長手方向DLにおいて、第1架橋部13は、貫通部12Hの両端に挟まれる領域内に位置している。
【0038】
帯状部11の幅方向DWにおいて、第1架橋部13と貫通部12Hとの間の距離が、第1架橋部13と枠状部12の外縁部12E1との間の距離よりも短い。枠状部12が貫通部12Hを有するから、枠状部12の内縁部12E2から貫通部12Hまでにわたって枠状部12を切断することによって、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことが可能である。例えば、枠状部12は、図2において一点鎖線で示される切断線CLに沿って切断される。切断線CLは、帯状部11の幅方向DWに沿って延びる。
【0039】
そのため、枠状部12の内縁部12E2から外縁部12E1までにわたって枠状部12を切断する場合に比べて、枠状部12を切断する長さが短くて済む。これにより、第1架橋部13の切り離し後において、第1架橋部13に接続された枠状部12の一部の面積が小さくなる。それゆえに、第1架橋部13の切り離し後において、第1架橋部13に作用する荷重を小さくすることができるから、帯状部11の変形が生じにくくなる。
【0040】
図2が示すように、第1架橋部13と貫通部12Hとの間の距離が、帯状部11の幅方向DWにおける第1架橋部13の長さよりも短くてもよい。これにより、枠状部12の内縁部12E2から貫通部12Hまでの距離が短いから、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことがさらに容易である。さらに、第1架橋部13の切り離し後において、第1架橋部13に作用する荷重を小さくすることが可能であるから、帯状部11の変形も生じにくくなる。
【0041】
第1架橋部13は、帯状部11に接続された基端13Bと、枠状部12に接続された先端13Tとを有している。帯状部11の第1縁部11E1は、枠状部12から離れる方向に向けて窪む窪み11E11を有している。第1架橋部13の基端13Bは、第1縁部11E1の窪み11E11に接続されている。
【0042】
第1架橋部13は、基端13Bに位置し、かつ、長手方向DLに沿って延びる脆弱部13Aを備えている。脆弱部13Aは、例えば、ハーフエッチング部でもよいし、ハーフエッチング部と、ハーフエッチング部上に位置し、かつ、ハーフエッチング部に沿って間隔を空けて並ぶ貫通部とを備えてもよい。第1架橋部13の基端13Bに脆弱部13Aが位置するから、第1架橋部13の基端13Bにおいて第1架橋部13を帯状部11から切断することが容易である。また、第1架橋部13の基端13Bは、窪み11E11に接続されているから、第1架橋部13が基端13Bにおいて切断され、これによって形成された切断痕が、帯状部11の外縁部11Eから飛び出すことが抑えられる。
【0043】
図3が示すように、内縁部12E2は、帯状部11の幅方向DWにおいて帯状部11から離れる方向に窪む第1窪み12E21を有してもよい。この場合には、内縁部12E2が第1窪み12E21を有する分だけ内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離が短くなるから、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことがさらに容易である。例えば、枠状部12は、図3において一点鎖線で示される切断線CLに沿って切断される。切断線CLは、帯状部11の幅方向DWに沿って延びる。
【0044】
図4が示すように、内縁部12E2は、帯状部11の長手方向DLにおいて第1架橋部13を挟む一対の第2窪み12E22を備えてもよい。各第2窪み12E22は、長手方向DLにおいて、第1架橋部13から離れている。この場合、各第2窪み12E22は、帯状部11の幅方向DWにおいて、第1架橋部13から離れる方向に窪んでいる。帯状部11の幅方向DWにおいて、貫通部12Hと第2窪み12E22とが並んでいる。この場合には、内縁部12E2が第2窪み12E22を有する分だけ内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離が短くなるから、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことがさらに容易である。例えば、枠状部12は、図4において一点鎖線で示される切断線CLに沿って切断される。切断線CLは、帯状部11の幅方向DWに沿って延びる。
【0045】
第1架橋部13の基端13Bは、帯状部11の第1縁部11E1における窪み11E11に接続されている。第1架橋部13の先端13Tは、枠状部12の内縁部12E2のうちで、一対の第2窪み12E22に挟まれた部分に接続されている。そのため、図3が示す構造に比べて、帯状部11に接続された枠状部12の一部における面積が大きくなる傾向を有する。それゆえに、第1架橋部13を帯状部11から切り離す時に、枠状部12を手、もしくは、切断治具でより押さえ易いから、脆弱部13Aを安定して切断することができる。これにより、脆弱部13Aの切断が、帯状部11の形状に影響を及ぼしにくい。
【0046】
[蒸着マスク]
図5が示す蒸着マスク20は、蒸着マスク中間体10において、枠状部12から帯状部11が切り離され、かつ、第1架橋部13が帯状部11から切り離されることによって形成される。なお、蒸着マスク20は、第1架橋部13が帯状部11から切り離されることのみによって形成されてもよい。
【0047】
図5が示すように、本開示の蒸着マスク20は、長手方向DLに沿って延びる帯状を有している。蒸着マスク20は、複数のマスク孔20Hを有した偶数個のマスク部20Mと、マスク部20Mを囲む周辺部20Pと、周辺部20Pの外縁である外縁部20Eと、を備える。図5が示す例では、蒸着マスク20は、2つのマスク部20Mを備えている。偶数個のマスク部20Mは、第1マスク部20M1と第2マスク部20M2とを含んでいる。第1マスク部20M1と第2マスク部20M2とは、偶数個のマスク部20Mの個数を2等分する仮想線Lを挟んでいる。周辺部20Pは、第1マスク部20M1と第2マスク部20M2との間の隙間20Gを含んでいる。
【0048】
外縁部20Eは、長手方向DLにおける各端部に、複数の切り欠き20Nを有している。図5が示す例では、長手方向DLにおける各端部には、3つの切り欠き20Nが位置し、かつ、3つの切り欠き20Nは、長手方向DLに直交する幅方向DWにおいて間隔を空けて並んでいる。
【0049】
外縁部20Eは、長手方向DLに直交する幅方向DWにおいて、隙間20Gを挟む一対の第1切断痕20C1を有し、かつ、幅方向DWにおいて、外縁部20Eのなかで、偶数個のマスク部20Mと対向する部分に、一対の第1切断痕20C1以外の切断痕を有しない。各第1切断痕20C1は、蒸着マスク中間体10における第1架橋部13の切断によって形成された切断の痕跡である。
【0050】
外縁部20Eは、第2切断痕20C2をさらに備えている。各第2切断痕20C2は、外縁部12E1における長手方向DLでの各端部のうち、切り欠き20Nを除く部分に位置している。さらに、第2切断痕20C2は、外縁部20Eにおいて長手方向DLに沿って延びる部分のうち、長手方向DLにおける端部に連なる部分にまで延びている。長手方向DLにおいて、第2切断痕20C2の端部は、蒸着マスク20における長手方向DLの端部と、当該端部からの距離が最も近いマスク部20Mとの間に位置している。第2切断痕20C2は、蒸着マスク中間体10における第2架橋部14の切断によって形成された切断の痕跡である。
【0051】
なお、蒸着マスク20のうち、各マスク部20Mが蒸着マスク中間体10のマスク部11Mに対応し、周辺部20Pが蒸着マスク中間体10の周辺部11Pに対応し、かつ、隙間20Gが蒸着マスク中間体10の隙間11Gに対応し、また、蒸着マスク20のうち、外縁部20Eは蒸着マスク中間体10の外縁部11Eに対応し、切り欠き20Nが蒸着マスク中間体10の切り欠き11ESNに対応している。
【0052】
[蒸着マスクの製造方法]
本開示の蒸着マスク20の製造方法は、以下を含む。
製造方法は、金属シートに帯状部11と枠状部12とを形成すること、および、枠状部12から帯状部11を切断して、帯状部11から蒸着マスク20を形成すること、を含んでいる。
【0053】
帯状部11と枠状部12とを形成することは、以下のように帯状部11および枠状部12を形成する。すなわち、枠状部12は第1板厚を有している。帯状部11は、帯状部11の長手方向DLに沿って隙間11Gを空けて並ぶ偶数個のマスク部11Mと、マスク部11Mを囲み、第1板厚を有する周辺部11Pと、周辺部11Pの外縁である外縁部11Eと、を備えている。マスク部11Mは、複数のマスク孔11Hを含んでいる。
【0054】
外縁部11Eは、第1縁部11E1と第2縁部11E2とを含んでいる。第1縁部11E1は、長手方向DLに沿って延び、長手方向DLに直交する幅方向DWにおいて、偶数個のマスク部11Mと対向することが可能な長さを有している。
【0055】
偶数個のマスク部11Mは、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2とを含み、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2とが、偶数個のマスク部11Mの個数を2等分する仮想線Lを挟んでいる。
【0056】
蒸着マスク中間体10は、一対の第1架橋部13、分離部10S、および、第2架橋部14を備えている。一対の第1架橋部13は、帯状部11のうち、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間の隙間11Gを枠状部12に接続し、かつ、帯状部11の幅方向DWにおいて帯状部11を挟む。分離部10Sは、枠状部12と帯状部11の第1縁部11E1との間において、第1架橋部13の両側に位置し、第1縁部11E1を枠状部12から分離する。第2架橋部14は、枠状部12と帯状部11の第2縁部11E2との間に位置し、第2縁部11E2を枠状部12に接続する。
【0057】
詳細には、蒸着マスク20を製造する際には、まず金属シートを準備する。金属シートは、例えば、ニッケル、鉄ニッケル系合金、または、鉄ニッケルコバルト系合金から形成されている。金属シートは、例えば5μm以上50μm以下の厚さを有し、かつ、250mm以上の幅を有している。なお、金属シートの厚さは、15μm以上30μm以下であることが好ましい。次いで、フォトリソグラフィ法を用いて、金属シートの両面にレジストマスクを形成する。
【0058】
その後、レジストマスクを用いて金属シートをウェットエッチングすることによって、蒸着マスク中間体10を得ることができる。この際に、まず金属シートを第1面のみからウェットエッチングし、次いで金属シートを第2面のみからウェットエッチングする。このように、金属シートを第1面と第2面との両方からエッチングすることによって、金属シートの厚さ方向に沿って金属シートを貫通する孔が形成される。なお、第2架橋部14が備えるハーフエッチング部は、金属シートを第1面からウェットエッチングすることによって形成されてもよいし、第2面からウェットエッチングすることによって形成されてもよい。
【0059】
金属シートの厚さが十分に薄い場合には、金属シートの片面のみにレジストマスクを形成し、かつ、金属シートをレジストマスクが形成された面のみからウェットエッチングすることによって蒸着マスク中間体10を得てもよい。
【0060】
蒸着マスク中間体10が形成されるまでに金属シートに対して施される上述した各種処理は、ロールツーロール方式を用いて行われる。本開示の蒸着マスク中間体10の製造方法では、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間の隙間11Gを枠状部12に接続するための第1架橋部13を一対形成するから、蒸着マスク20の製造時において、帯状部11が自重により撓むことが抑えられる。
【0061】
次いで、切断器具を用いて枠状部12を切断することによって、帯状部11を枠状部12から切り離す。この際に、例えば図2から図4を用いて先に説明した切断線CLに沿って、すなわち幅方向DWに沿って、枠状部12の内縁部12E2から貫通部12Hまでにわたって、枠状部12を切断する。そのため、枠状部12から切り離された帯状部11には、第1架橋部13と、第1架橋部13に連なる枠状部12の一部とが接続されている。また、第2架橋部14を切断し、これによって、帯状部11の第2縁部11E2を枠状部12から切り離す。第2架橋部14の切断には切断器具を用いてもよいし、切断器具を用いなくてもよい。
【0062】
続いて、帯状部11から第1架橋部13を切り離す。この際に、第1架橋部13の基端13Bに位置する脆弱部13Aにおいて帯状部11に対して第1架橋部13を折り曲げることによって、第1架橋部13を帯状部11から切り離す。これにより、蒸着マスク20を得ることができる。第1架橋部13を帯状部11から切り離す際には、枠状部12の一部を押さえたり、第1架橋部13を折り曲げたりするための切断治具を用いてもよい。
【0063】
以上説明したように、蒸着マスク中間体、蒸着マスク、および、蒸着マスクの製造方法によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間の隙間11Gを枠状部12に接続する一対の第1架橋部13を有するから、蒸着マスクの製造時において、自重による帯状部11の撓みを抑えることが可能である。
【0064】
(2)第2縁部11E2と枠状部12との間に沿って延びるハーフエッチング部によって第2縁部11E2が枠状部12に接続されるから、蒸着マスク中間体10の搬送時において、第2縁部11E2が枠状部12から外れにくくなる。
【0065】
(3)枠状部12が貫通部12Hを有するから、枠状部12の内縁部12E2から貫通部12Hまでにわたって枠状部12を切断することによって、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことが可能である。
【0066】
(4)枠状部12の内縁部12E2から貫通部12Hまでの距離が短いから、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことがさらに容易である。
(5)内縁部12E2が第1窪み12E21を有する分だけ内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離が短くなるから、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことがさらに容易である。
【0067】
(6)内縁部12E2が第2窪み12E22を有する分だけ内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離が短くなるから、第1架橋部13を枠状部12から切り離すことがさらに容易である。
【0068】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[第2架橋部]
図6が示すように、蒸着マスク中間体30は、第2架橋部34を備えている。第2架橋部34は、第1板厚を有し、かつ、第2縁部11E2の一部を枠状部12に接続している。分離部30Sは、枠状部12と帯状部11の第2縁部11E2との間において、第2架橋部34を除く部分に位置し、かつ、第2縁部11E2を枠状部12から分離している。
【0069】
図6が示す例では、蒸着マスク中間体30は、複数の第2架橋部34を備えている。第2架橋部34の一部は、帯状部11の長辺11ELのうちで第1縁部11E1に含まれない部分、すなわち、長辺11ELのうちで、マスク部11Mと短辺11ESとの間に位置する部分を枠状部12に接続している。また、第2架橋部34の一部は、短辺11ESのうちで、切り欠き11ESNを除く部分において、帯状部11を枠状部12に接続している。
【0070】
分離部30Sは、第1縁部11E1と枠状部12との間に加えて、第2縁部11E2と枠状部12との間にも位置している。第2縁部11E2と枠状部12との間において、分離部30Sは、第2架橋部34によって分断され、かつ、切り欠き11ESNによって分断されている。すなわち、分離部30Sは、帯状部11の周方向における全体にわたって枠状部12との間に位置し、かつ、第1架橋部13、第2架橋部34、および、切り欠き11ESNによって分断されている。なお、分離部30Sは、第1縁部11E1に沿う部分である第1分離部と、第2縁部11E2に沿う第2分離部とを含む。
【0071】
この変更例によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(7)第2架橋部34を切り離すことによって第2縁部11E2を枠状部12から取り外すことが可能である。
なお、図6が示す例では、枠状部12の内縁部12E2が、切り欠き11ESNに沿う形状を有した突状縁を有する場合には、切り欠き11ESNのうち、長手方向DLに沿って延びる直線部の一部が、第2架橋部34によって枠状部12に接続されてもよい。
【0072】
[枠状部]
・枠状部12は、図2を参照して先に説明した構造と、図3を参照して先に説明した構造とを組み合わせた構造を有してもよい。すなわち、幅方向DWにおいて、内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離が第1架橋部13の長さよりも短く、かつ、内縁部12E2が第1窪み12E21を有してもよい。この場合には、幅方向DWにおける内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離がさらに短くなるから、枠状部12から帯状部11を切り離すことがさらに容易である。
【0073】
・枠状部12は、図2を参照して先に説明した構造と、図4を参照して先に説明した構造とを組み合わせた構造を有してもよい。すなわち、幅方向DWにおいて、内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離が第1架橋部13の長さよりも短く、かつ、内縁部12E2が一対の第2窪み12E22を有してもよい。この場合にも、幅方向DWにおける内縁部12E2と貫通部12Hとの間の距離が短くなるから、枠状部12から帯状部11を切り離すことがさらに容易である。
【0074】
[第1架橋部]
・蒸着マスク中間体10は、マスク部11M間に位置する隙間であって、第1マスク部11M1と第2マスク部11M2との間に位置する隙間11G以外の部分を枠状部12に接続する第1架橋部13を備えてもよい。上述した仮想線Lは、複数のマスク部11Mを第1のマスク部群と、第2のマスク部群とに分割する。例えば、各マスク部群が偶数個のマスク部11Mを含む場合には、第1マスク部群に含まれるマスク部11M間の隙間のうち、各マスク部群に含まれる複数のマスク部11Mの個数を長手方向DLにおいて2等分するような隙間が、第1架橋部13によって枠状部12に接続されてよい。なお、長手方向DLにおける各マスク部群の長さが700mm以上である場合に、蒸着マスク中間体10がこうした第1架橋部13を備えることが好ましい。これにより、長尺の帯状部11であっても、帯状部11に撓みが生じることが抑えられる。
【符号の説明】
【0075】
10…蒸着マスク中間体
10S…分離部
11…帯状部
11E…外縁部
11E1…第1縁部
11E2…第2縁部
11G…隙間
11H…マスク孔
11M…マスク部
11M1…第1マスク部
11M2…第2マスク部
11P…周辺部
12…枠状部
12E1…外縁部
12E2…内縁部
12E21…第1窪み
12E22…第2窪み
12H…貫通部
13…第1架橋部
13B…基端
13T…先端
14…第2架橋部
図1
図2
図3
図4
図5
図6