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特開2024-43398積層フィルム、包装体、および、包装体の製造方法
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  • 特開-積層フィルム、包装体、および、包装体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043398
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】積層フィルム、包装体、および、包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20240322BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240322BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20240322BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240322BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B9/00 A
B41M5/26
B65D65/40 D
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148569
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井口 依久乃
【テーマコード(参考)】
2H111
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
2H111HA14
2H111HA23
2H111HA35
3E086AA23
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB21
3E086BB51
3E086BB90
4F100AA19A
4F100AA20A
4F100AA21B
4F100AD11D
4F100AD11H
4F100AK06C
4F100AK06D
4F100AK42B
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA13D
4F100EC182
4F100EH66A
4F100EJ52C
4F100EJ54C
4F100GB15
4F100JD02A
4F100JD03A
4F100JD04A
4F100JL10D
4F100JL12C
4F100JN01A
4F100JN02D
4F100JN28C
(57)【要約】
【課題】積層フィルムに対するレーザー光の照射後において、バリア層におけるバリア性を維持することを可能とした積層フィルム、包装体、および、包装体の製造方法を提供する。
【解決手段】積層フィルム10は、酸化アルミニウム(AlO)または酸化ケイ素(SiO)から構成される透明な蒸着層を含むバリア層11と、紫外領域のレーザー光の照射によって発色することが可能に構成された発色層12Aを含むシーラント層12と、バリア層11とシーラント層12との間に位置する基材層13とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウム(AlO)または酸化ケイ素(SiO)から構成される透明な蒸着層を含むバリア層と、
紫外領域のレーザー光の照射によって発色することが可能に構成された発色層を含むシーラント層と、
前記バリア層と前記シーラント層との間に位置する基材層と、を備える
積層フィルム。
【請求項2】
前記発色層は、1重量%以上30重量%以下の酸化チタンを含む
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記シーラント層は、前記発色層に対して前記基材層とは反対側に位置する遮光層をさらに備え、
前記遮光層は、1重量%以上30重量%以下のカーボンブラックを含む
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層フィルムを含む包装体であって、
前記包装体の外表面が前記積層フィルムの前記バリア層によって構成される
包装体。
【請求項5】
酸化アルミニウム(AlO)または酸化ケイ素(SiO)から構成される透明な蒸着層を含むバリア層を備えた基材層に対して、紫外領域のレーザー光の照射によって発色することが可能に構成された発色層を含むシーラント層を接着することによって積層フィルムを形成すること、
前記紫外領域の前記レーザー光を前記バリア層を介して前記発色層に照射し、これによって前記レーザー光の照射によって発色した被照射部を形成すること、および、
前記バリア層が包装体の外表面を構成するように、前記積層フィルムを用いて前記包装体を形成すること、を含む
包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザーマーキングに用いられる積層フィルム、積層フィルムから形成される包装体、および、包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーマーキングに用いられる積層フィルムの一例は、レーザー発色層と、ポリオレフィン系樹脂から構成される層とを備えている。レーザー発色層は、ポリオレフィン系樹脂およびレーザー発色剤を含んでいる。レーザー発色剤は、高分子物質、雲母、雲母状物質、金属硫化物から構成される群から選択されるいずれか一種以上を含んでいる。レーザー発色層は、YAGレーザーが発振するレーザー光、または、YVOレーザーが発振するレーザー光が照射されることによって発色する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-146962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザーマーキングが可能な積層フィルムは、物品が出荷されてから使用される直前まで、酸素や水蒸気などの酸化源への暴露が抑えられることを求められる物品にも適用される。こうした物品は、例えば医療用医薬品などである。そのため、積層フィルムには、積層フィルムに対する印字を目的としたレーザー光の照射後においても、酸化源への暴露を抑えることが可能な、言い換えれば外部環境に対するバリア性を維持することが可能な積層フィルムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための積層フィルムは、酸化アルミニウム(AlO)または酸化ケイ素(SiO)から構成される透明な蒸着層を含むバリア層と、紫外領域のレーザー光の照射によって発色することが可能に構成された発色層を含むシーラント層と、前記バリア層と前記シーラント層との間に位置する基材層と、を備える。
【0006】
上記課題を解決するための包装体は、上記積層フィルムを含む。前記包装体の外表面が前記積層フィルムの前記バリア層によって構成される。
上記課題を解決するための包装体の製造方法は、酸化アルミニウム(AlO)または酸化ケイ素(SiO)から構成される透明な蒸着層を含むバリア層を備えた基材層に対して、紫外領域のレーザー光の照射によって発色することが可能に構成された発色層を含むシーラント層を接着することによって積層フィルムを形成すること、前記紫外領域の前記レーザー光を前記バリア層を介して前記発色層に照射し、これによって前記レーザー光
の照射によって発色した被照射部を形成すること、および、前記バリア層が包装体の外表面を構成するように、前記積層フィルムを用いて前記包装体を形成すること、を含む。
【0007】
上記積層フィルムによれば、発色層が紫外領域のレーザー光で発色するから、発色層に被照射部を形成するためのレーザー光が積層フィルムに照射された後において、バリア層のバリア性を維持することができる。
【0008】
上記積層フィルムにおいて、前記発色層は、1重量%以上30重量%以下の酸化チタンを含んでもよい。この積層フィルムによれば、発色層が白色を呈し、かつ、発色層のうちでレーザー光が照射された被照射部が黒色を呈するから、発色層においてレーザー光を照射された部分と照射されていない部分とのコントラストを高めることが可能である。
【0009】
上記積層フィルムにおいて、前記シーラント層は、前記発色層に対して前記基材層とは反対側に位置する遮光層をさらに備え、前記遮光層は、1重量%以上30重量%以下のカーボンブラックを含んでもよい。この積層フィルムによれば、遮光層によって光を遮ることが可能であるから、包装体の内容物が光によって劣化することが抑えられる。
【発明の効果】
【0010】
上記積層フィルム、包装体、および、包装体の製造方法によれば、積層フィルムに対するレーザー光の照射後において、バリア層におけるバリア性を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、積層フィルムの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、積層フィルム、包装体、および、包装体の製造方法の一実施形態を説明する。
[積層フィルム]
図1が示すように、積層フィルム10は、バリア層11と、発色層12Aを含むシーラント層12と、基材層13とを備えている。バリア層11は、酸化アルミニウム(AlO)または酸化ケイ素(SiO)から構成される透明な蒸着層を含んでいる。発色層12Aは、紫外領域に含まれる波長を有したレーザー光の照射によって発色することが可能に構成されている。本開示において、紫外領域とは、100nm以上400nm以下の波長の範囲である。基材層13は、バリア層11と発色層12Aとの間に位置している。
【0013】
積層フィルム10によれば、発色層12Aが紫外領域のレーザー光で発色するから、発色層12Aに被照射部を形成するためのレーザー光が積層フィルム10に照射された後において、バリア層11のバリア性を維持することが可能である。
【0014】
なお、バリア性とは、バリア層11を介した水蒸気の透過を抑える性質、および、バリア層11を介した酸素の透過を抑える性質を意味する。すなわち、バリア性は、酸化源の透過を抑える性質を意味する。そのため、バリア層11が有するバリア性は、水蒸気透過度および酸素透過度によって評価することが可能である。
【0015】
バリア層11は、蒸着層に加えて、バリアコート層を備えてもよい。バリア層11がバリアコート層を備える場合には、蒸着層に対して、基材層とは反対側にバリアコート層が位置してもよいし、バリアコート層に対して、基材層とは反対側に蒸着層が位置してもよい。なお、蒸着層を保護する観点では、バリアコート層は、蒸着層に対して基材層とは反対側に位置することが好ましい。バリアコート層は、バリアコート組成物の硬化体である。
【0016】
バリアコート組成物は、例えば水溶性高分子と無機化合物とを含むことが好ましい。水溶性高分子は、水酸基を有する。水溶性高分子は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどであってよい。バリア層11のバリア性を高める観点では、水溶性高分子がポリビニルアルコール(PVA)であることが好ましい。
【0017】
無機化合物は、例えば、Si(ORまたは、RSi(ORによって表されるケイ素化合物、あるいは、当該ケイ素化合物の加水分解物であってよい。なお、ケイ素化合物を表す化学式において、ORおよびORは加水分解性基であり、Rは有機官能基である。バリアコート組成物は、2種以上の無機化合物を含んでもよい。すなわち、バリアコート組成物は、ケイ素化合物を2種以上含んでもよいし、ケイ素化合物の加水分解物を2種以上含んでもよいし、ケイ素化合物を1種以上含み、かつ、ケイ素化合物の加水分解物を1種以上含んでもよい。Si(ORは、例えばテトラエトキシシラン(Si(OC)(TEOS)であってよい。TEOSは、加水分解後において、水系の溶媒中にて比較的安定である点で好ましい。また、RSi(ORが含むRは、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、および、イソシアネート基から構成される群から選択されることが好ましい。
【0018】
発色層12Aは、発色層12Aの総重量を100重量%とする場合に、1重量%以上30重量%以下の酸化チタンを含んでいる。発色層12Aは、粒子状の酸化チタンを含んでいる。発色層12Aは、酸化チタンに加えて、母材である透明樹脂を含んでいる。透明樹脂は、例えばポリエチレンであってよい。酸化チタンは白色顔料であるから、発色層12Aは白色を呈する。酸化チタンは、紫外領域に含まれる波長を有したレーザー光が照射されることによって、黒色を呈する。これにより、発色層12Aのなかで、レーザー光が照射された被照射部が黒色を呈する。
【0019】
積層フィルム10によれば、発色層12Aが白色を呈し、かつ、発色層12Aのうちでレーザー光が照射された被照射部が黒色を呈するから、発色層12Aにおいてレーザー光を照射された部分と照射されていない部分とのコントラストを高めることが可能である。
【0020】
なお、発色層12Aは白色を呈するから、発色層12Aに入射した光を吸収する。そのため、バリア層11が包装体の外表面を構成する場合に、発色層12Aは、発色層12Aに対して基材層13とは反対側への光の透過を抑える。
【0021】
シーラント層12は、発色層12Aに対して基材層13とは反対側に位置する第1遮光層12Bをさらに備えている。第1遮光層12Bは、1重量%以上30重量%以下のカーボンブラックを含んでいる。カーボンブラックは炭素の微粒子であって、黒色を呈する。シーラント層12が第1遮光層12Bを備える場合には、第1遮光層12Bによって光を遮ることが可能であるから、包装体の内容物が光によって劣化することが抑えられる。例えば、バリア層11が包装体の外表面を構成するように、積層フィルム10を用いて包装体が形成される場合には、バリア層11および基材層13を介してシーラント層12に達した外光は、第1遮光層12Bによって吸収される。これにより、包装体が画定する収容空間内に外光が達することが抑えられる。
【0022】
第1遮光層12Bは、カーボンブラックに加えて、母材である透明樹脂を含んでいる。透明樹脂は、例えばポリエチレンであってよい。カーボンブラックは黒色顔料であるから、第1遮光層12Bは黒色を呈する。
【0023】
シーラント層12は、第2遮光層12Cをさらに備えている。第2遮光層12Cは、第1遮光層12Bに対して発色層12Aとは反対側に位置している。第2遮光層12Cは、白色顔料と透明樹脂とを含み、これによって白色を呈する。白色顔料は、例えば酸化チタンであってよい。透明樹脂は、例えばポリエチレンであってよい。シーラント層12が、一対の白色層と、一対の白色層間に位置する黒色層とを有するから、シーラント層12の外観が白色を呈することを維持した状態で、シーラント層12が白色層のみを備える場合に比べて、シーラント層12の遮光率を高めることが可能である。
【0024】
なお、第2遮光層12Cが白色顔料として酸化チタンを含む場合には、発色層12Aと同様に、紫外領域に含まれる波長を有したレーザー光が照射されることによって発色する。なお、第2遮光層12Cは、発色性を有しなくてもよい。この場合には、第2遮光層12Cは、発色性を有しない白色顔料を含んでいればよい。
【0025】
シーラント層12の全光線透過率は、0.0001%以上1.5%以下であることが好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997「プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第1部:シングルビーム法」に準拠した方法によって測定される。
【0026】
基材層13は、各種の樹脂から形成される。基材層13を構成する樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどであってよい。ポリエチレンは、例えばポリエチレンテレフタレートであってよい。
【0027】
積層フィルム10は、基材層13とシーラント層12との間に位置する接着層14をさらに備えている。基材層13とシーラント層12とは、ドライラミネート法によって接着されてもよいし、ノンソルベントラミネート法によって接着されてもよいし、押出ラミネート法によって接着されてもよい。
【0028】
基材層13とシーラント層12とがドライラミネート法によって接着される場合には、接着層14は、例えば、ポリエステル接着剤、ポリエステルポリウレタン接着剤、ポリエーテル接着剤から形成されてよい。基材層13とシーラント層12とがノンソルベントラミネート法によって接着される場合には、接着層14は、例えばポリエステル接着剤、ポリエーテル接着剤であってよい。基材層13とシーラント層12とが押出ラミネート法によって接着される場合には、接着層14は、例えば低密度ポリエチレンから形成されてよい。
【0029】
積層フィルム10は、インキ層を備えてもよい。積層フィルム10がインキ層を備える場合には、インキ層は、例えば基材層13のうちで、バリア層11に対向する面とは反対側の面に形成される。
【0030】
[包装体の製造方法]
積層フィルム10を用いて形成された包装体では、包装体の外表面が積層フィルム10のバリア層11によって構成される。
【0031】
包装体の製造方法は、積層フィルム10を形成すること、被照射部を形成すること、および、包装体を形成することを含んでいる。積層フィルム10を形成することは、基材層13に対してシーラント層12を接着することによって積層フィルム10を形成する。基材層13は、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素から構成される透明な蒸着層を含むバリア層11を備えている。シーラント層12は、紫外領域のレーザー光の照射によって発色することが可能に構成された発色層12Aを含む。被照射部を形成することは、紫外領域のレーザー光をバリア層11を介して発色層12Aに照射し、これによってレーザー光の照射によって発色した被照射部を形成する。包装体を形成することは、バリア層11が包装体の外表面を構成するように、積層フィルム10を用いて包装体を形成する。
【0032】
積層フィルム10を形成する際には、バリア層11を備えた基材層13と、シーラント層12とを準備する。シーラント層12は、発色層12Aを備えていればよいから、第1遮光層12Bおよび第2遮光層12Cを備えなくてもよい。なお、シーラント層12による遮光性を高める観点では、上述したように、シーラント層12は、発色層12A、第1遮光層12B、および、第2遮光層12Cを備えることが好ましい。
【0033】
基材層13にシーラント層12を接着する際には、上述したように、ドライラミネート法を用いてもよいし、ノンソルベントラミネート法を用いてもよいし、押出ラミネート法を用いてもよい。
【0034】
発色層12Aに被照射部を形成する際には、紫外線レーザーを用いる。紫外線レーザーの照射口とバリア層11との間の距離が、照射口とシーラント層12との間の距離よりも小さい状態で、積層フィルム10に対してレーザ-光を照射する。これにより、バリア層11にもレーザー光が照射される。発色層12Aのうち、レーザー光の照射された被照射部では、被照射部に含まれる酸化チタンが呈する色が、白色から黒色に変わる。これにより、発色層12Aは、所定の情報を表示することが可能である。
【0035】
包装体を形成する際には、被照射部を含むフィルム片を積層フィルム10から切り出す。次いで、例えば、シーラント層12の第2遮光層12Cにおける第1領域と第2領域とが向かい合うように、1枚のフィルム片を折り曲げる。そして、第2遮光層12Cのうち、第1領域と第2領域とを熱圧着することによって、包装体を形成する。
【0036】
あるいは、包装体を形成する際には、第1のフィルム片と第2のフィルム片を準備し、第1のフィルム片におけるシーラント層12と、第2のフィルム片におけるシーラント層12とが対向するように、第1のフィルム片に第2のフィルム片を重ねる。そして、第1のフィルム片における第2遮光層12Cの一部と、第2のフィルム片における第2遮光層12Cの一部とが熱圧着されることによって、包装体が形成される。
【0037】
[実施例]
表1を参照して、実施例および比較例を説明する。
[実施例1]
基材層である樹脂フィルム上に、酸化ケイ素の蒸着層が形成され、かつ、蒸着層上にバリアコート層が形成された積層フィルムを準備した。また、30重量%の酸化チタンを含み、かつ、低密度ポリエチレンから形成された発色層と、30重量%のカーボンブラックを含み、かつ、低密度ポリエチレンから形成された第1遮光層と、発色層と同一の組成を有する第2遮光層とを備えるシーラント層を準備した。発色層、第1遮光層、および、第2遮光層の厚さは、20μmであった。
【0038】
次いで、ドライラミネート法によって、発色層と基材層とが接着剤を挟むように、基材層にシーラント層を接着した。これにより、実施例1の積層フィルムを得た。
【0039】
3-Axis UVレーザーマーカー(MD‐U1020C、(株)キーエンス)を用いて、発色層にレーザー光を照射した。この際に、レーザーマーカーの照射口とバリア層とを対向させ、かつ、照射口と積層フィルムとの間の距離を300mmに設定した。また、レーザーの出力値を2.5W対する60%の値に設定した。これにより、発色層に対して、医療用医薬品のバーコードである「GS1データバー限定型合成シンボルCC‐A」を印字した。
【0040】
[実施例2]
実施例1において、基材層、蒸着層、および、バリアコート層から構成される積層フィルムが備える蒸着層を酸化アルミニウムに変更した積層フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の積層フィルムを得た。
【0041】
[実施例3]
実施例1において、シーラント層における第2遮光層を省略した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の積層フィルムを得た。
【0042】
[実施例4]
実施例2において、シーラント層における第2遮光層を省略した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例4の積層フィルムを得た。
【0043】
[比較例1]
実施例1において、基材層、蒸着層、および、バリアコート層から構成される積層フィルムを省略し、これによって、シーラント層のみから構成される積層フィルムを得た。
【0044】
[評価方法]
[バーコード印字性]
実施例1から実施例4の積層フィルム、および、比較例1の積層フィルムが備えるバーコードを目視で確認した。バーコードの全体が目視で確認できる場合を「○」とし、バーコードの一部を目視で確認できない場合を「×」とした。
【0045】
ポータブルバーコード検証機(Xaminer ELITE、Stratix社製)を用いて、実施例1から実施例4の積層フィルム、および、比較例1の積層フィルムが備えるバーコードを読み取った。この際に、JIS X 0526:2017「情報技術-自動認識及びデータ取得技術-バーコードシンボル印刷品質の評価仕様-二次元シンボル」に準拠した方法によって、バーコードの品質を評価した。詳細には、クワイエットゾーンを含むバーコードの走査により得られた反射率波形状の最大反射率と最小反射率との差分値であるSC値が70%以上である場合に、バーコードの品質を「○」とし、70%未満である場合に、バーコードの品質を「×」に設定した。
【0046】
[積層フィルムの表面における傷]
実施例1から実施例4の積層フィルムにおいて、積層フィルムの表面であるバリア層における基材層とは反対側の面を実体顕微鏡を用いて観察した。また、比較例1の積層フィルムにおいて、積層フィルムの表面である発色層において第1遮光層とは反対側の面を実体顕微鏡を用いて観察した。積層フィルムの表面に傷が確認できない場合を「○」に設定し、積層フィルムの表面に傷が確認できた場合を「×」に設定した。
【0047】
[酸素透過度]
実施例1から実施例4の積層フィルム、および、比較例1の積層フィルムについて、酸素透過度測定装置(Mocon社製、OX‐TRAN 2/20)を用いて酸素透過度を測定した。この際に、測定方法には、JIS K 7126‐2:2006(等圧法)、に準拠する方法を用いた。また、温度を30℃に設定し、相対湿度を70%に設定した。酸素透過度の測定値における単位を[cc/m・day・atm]に設定した。
【0048】
[水蒸気透過度]
実施例1から実施例4の積層フィルム、および、比較例1の積層フィルムについて、水蒸気透過度測定装置(Mocon社製、PERMATRAN‐W 3/31)を用いて水蒸気透過度を測定した。この際に、測定方法には、JIS K 7129‐2:2019(赤外線センサ法)に準拠する方法を用いた。また、温度を40℃に設定し、相対湿度を90%に設定した。水蒸気透過度の測定値における単位を[g/m・day]に設定した。
【0049】
[評価結果]
以下の表1が示す通りであった。
【0050】
【表1】
【0051】
表1が示すように、バーコード印字性は、目視で確認した場合と、読み取り機であるバーコード検証機を用いて確認した場合との両方において、実施例1から実施例4の積層フィルム、および、比較例1の積層フィルムの全てにおいて評価結果が「○」であることが認められた。これに対して、実施例1から実施例4の積層フィルムの表面には、実体顕微鏡で確認することが可能な傷は認められなかった。これに対して、比較例1の積層フィルムの表面には、実体顕微鏡で確認することが可能な傷が認められた。
【0052】
また、酸素透過度は、実施例1から実施例4の積層フィルムにおいて1cc/m・day・atm未満である一方で、比較例1の積層フィルムでは、酸素透過度が酸素透過度測定装置によって検出可能な上限値を超えることが認められた。また、水蒸気透過度は、実施例1から実施例4の積層フィルムにおいて1g/m・day未満である一方で、比較例1の積層フィルムでは、水蒸気透過度が水蒸気透過度の測定装置によって検出可能な上限値を超えることが認められた。
【0053】
なお、実施例1から実施例4の積層フィルムでは、レーザー光の照射前においても、酸素透過度が1cc/m・day・atm未満であり、かつ、水蒸気透過度が1g/m・day未満であることが認められている。すなわち、蒸着層を含むバリア層に対するレーザー光の照射後においても、蒸着層によるバリア性が紫外帯域の波長を有するレーザー光によって損なわれず、これによってバリア層が有するバリア性が維持されているといえる。
【0054】
以上説明したように、積層フィルム、および、包装体の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)発色層12Aが紫外領域に含まれる波長を有したレーザー光で発色するから、発色層12Aに被照射部を形成するためのレーザー光を積層フィルム10に照射した際に、バリア層11が劣化することが抑えられる。
【0055】
(2)発色層12Aが白色を呈し、かつ、発色層12Aのうちでレーザー光が照射された被照射部が黒色を呈するから、発色層12Aにおいてレーザー光を照射された部分と照射されていない部分とのコントラストを高めることが可能である。
【0056】
(3)第1遮光層12Bによって光を遮ることが可能であるから、包装体の内容物が光によって劣化することが抑えられる。
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
【0057】
[第1遮光層]
・積層フィルム10は、第1遮光層12Bを備えなくてもよい。この場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0058】
[第2遮光層]
・積層フィルム10は、第2遮光層12Cを備えなくてもよい。この場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【符号の説明】
【0059】
10…積層フィルム
11…バリア層
12…シーラント層
12A…発色層
12B…第1遮光層
12C…第2遮光層
13…基材層
14…接着層
図1