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特開2024-43426情報処理装置の動作方法、化粧料、情報処理装置、プログラム、及びシステムの動作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043426
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】情報処理装置の動作方法、化粧料、情報処理装置、プログラム、及びシステムの動作方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240322BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G01N21/27 B
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148613
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】柿本 涼
(72)【発明者】
【氏名】築山 文彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】柿沢 恵美
(72)【発明者】
【氏名】竹下 卓志
(72)【発明者】
【氏名】小竹山 祐輝
【テーマコード(参考)】
2G059
4C117
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059DD01
2G059EE02
2G059EE12
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF10
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM03
4C117XB01
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE36
4C117XG19
4C117XJ18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】化粧後の顔肌の印象をより多角的かつ詳細に評価することを可能にする。
【解決手段】情報処理装置の動作方法は、顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けする第1工程と、前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて格納する第2工程と、各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を出力する第3工程と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置の動作方法であって、
顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けする第1工程と、
前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて格納する第2工程と、
各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を出力する第3工程と、
を含む動作方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の多波長光は白色光であり、
前記第2の多波長光は、前記第1の多波長光を受けた前記顔肌との明度差及び色変化幅がそれぞれ所定の範囲に収まるように各波長の光の強度が調整される、
動作方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記カテゴリ毎に、前記分析情報に基づいて生成される、前記印象項目の印象を改善するために強化すべき波長の分光反射率を増大させる化粧料の処方の情報を格納する工程をさらに含む、
動作方法。
【請求項4】
請求項3に記載の処方に基づいて製造された化粧料。
【請求項5】
記憶部と、
出力部と、
制御部とを有し、
前記制御部は、
顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けし、前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて前記記憶部に格納し、各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を前記出力部により出力する、
情報処理装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記記憶部は、前記分光反射率パターンのカテゴリ分けの情報と、前記スコアと、前記分析情報に基づいて生成される、前記印象項目の印象を改善するために強化すべき波長の分光反射率を増大させる化粧料の処方の情報とを有する教師データを機械学習することで生成されるモデルを更に格納し、
前記制御部は、ユーザの分光反射率パターンに基づいて当該ユーザ向けの化粧料の処方の情報を出力する、
情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置により実行されることで、当該情報処理装置が、
顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けする第1工程と、
前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて格納する第2工程と、
各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を出力する第3工程と、を実行する、
プログラム。
【請求項8】
室内の天井付近に設けられ、ピークの波長が異なる光を照射可能な複数の発光素子を備え多波長可変光を当該室内で反射させて被験者の顔肌に照射可能な照明装置と、情報処理装置とを有するシステムの動作方法であって、
前記照明装置が、前記多波長可変光を前記被験者の前記顔肌に照射する工程と、
前記情報処理装置が、
前記顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けし、
前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて格納し、
各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を出力する、工程と、
を含む動作方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置の動作方法、化粧料、情報処理装置、プログラム及びシステムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料は、化粧料を塗布した顔肌が他者に与える印象を左右する。化粧料の開発においては、化粧料により生起する印象を評価し開発過程にフィードバックすることが肝要である。特許文献1には、化粧後の顔肌に照明光を照射したときの輝度の偏在に基づいて、化粧後の顔肌の印象を定量的に評価する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-169880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化粧料を用いるユーザの顔肌の色が本来多様であることに加え、価値観、美意識の多様化を受けて、化粧後の顔肌が他者に与える印象をより多角的かつ詳細に評価することが求められる。
【0005】
上記に鑑み、以下では、化粧後の顔肌の印象をより多角的かつ詳細に評価することを可能にする、情報処理装置の動作方法等を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示における情報処理装置の動作方法は、顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けする第1工程と、前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて格納する第2工程と、各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を出力する第3工程と、を含む。
【0007】
また、本開示における情報処理装置は、記憶部と、出力部と、制御部とを有し、前記制御部は、顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けし、前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて前記記憶部に格納し、各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を前記出力部により出力する。
【0008】
さらに、本開示におけるプログラムは、情報処理装置により実行されることで、当該情報処理装置が、顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けする第1工程と、前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて格納する第2工程と、各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を出力する第3工程と、を実行する。
【0009】
さらに、本開示におけるシステムの動作方法は、室内の天井付近に設けられ、ピークの波長が異なる光を照射可能な複数の発光素子を備え多波長可変光を当該室内で反射させて被験者の顔肌に照射可能な照明装置と、情報処理装置とを有するシステムの動作方法であって、前記照明装置が、前記多波長可変光を前記被験者の前記顔肌に照射する工程と、前記情報処理装置が、前記顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより前記分光反射率パターンをカテゴリ分けし、前記カテゴリ毎に、第1の多波長光を反射した前記顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光を反射した当該顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、当該カテゴリに対応付けて格納し、各印象項目の前記スコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した前記印象項目と当該印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための分析情報を出力する、工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示における情報処理装置の動作方法等によれば、化粧後の顔肌の印象をより多角的かつ詳細に評価することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】情報処理システムの構成例を示す図である。
図2】情報処理装置の動作手順例を示すフローチャート図である。
図3】カテゴリ分類工程の動作手順例を示すフローチャート図である。
図4】分光反射率パターンについて説明する図である。
図5】パラメータについて説明する図である。
図6】カテゴリ分けについて説明する図である。
図7】評価工程の動作手順例を示すフローチャート図である。
図8】調整光について説明する図である。
図9A】調整光について説明する図である。
図9B】調整光について説明する図である。
図10】分析工程の動作手順例を示すフローチャート図である。
図11A】分析情報について説明する図である。
図11B】分析情報について説明する図である。
図11C】分析情報について説明する図である。
図11D】分析情報について説明する図である。
図11E】分析情報について説明する図である。
図11F】分析情報について説明する図である。
図11G】分析情報について説明する図である。
図12】実施例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
[システムの構成]
図1は、本発明の一実施形態の構成例を示す図である。情報処理システム1は、ネットワーク13を介して互いに情報通信可能に接続される情報処理装置10と照明設備11とを有する。情報処理装置10は、例えば、一以上のパーソナルコンピュータである。情報処理装置10は、タブレット端末装置、スマートフォン等を含んでもよい。照明設備11は、例えば、被験者12に照明光を照射して被験者12の顔肌の色を測定するためのスタジオである。照明設備11は、例えば、天井に設けられる照明装置111、照明装置111からの照明光を反射するための反射板112、被験者12が顎を固定するためのチンレスト113、被験者12の顔肌の分光反射率を測定する測定装置115、各種操作のための制御端末116を有する。ネットワーク13は、例えば、研究所、工場等の構内LAN(Local Area Network)である。ネットワーク13は、インターネット、アドホックネットワーク、MAN(Metropolitan Area Network)、移動体通信網もしくは他のネットワークを含んでもよい。
【0014】
本実施形態における情報処理装置10の動作方法は、顔肌の分光反射率パターンから抽出される主成分のクラスタリングにより分光反射率パターンをカテゴリ分けする第1工程(以下、カテゴリ分類工程という)と、カテゴリ毎に、第1の多波長光(以下、基準光という)を反射した顔肌の印象に対する、いずれかの波長の光を強化した第2の多波長光(以下、調整光という)を反射した顔肌の印象の改善の程度を複数の印象項目について示すスコアを、カテゴリに対応付けて格納する第2工程(以下、評価工程という)と、各印象項目のスコアのカテゴリ毎の平均を導出し、印象が改善した印象項目とその印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための情報(以下、分析情報という)を出力する第3工程(以下、分析工程という)と、を含む。
【0015】
カテゴリ分類工程では、被験者12の顔肌の多様な色が、分光反射率パターンによりカテゴリに分けられる。評価工程では、カテゴリ毎に、基準光を照射されたときの顔肌から輝度差及び色変化幅がそれぞれある程度の範囲に収まるような調整光を用いることで、被験者12の顔肌の色によらず均一の条件で、顔肌の印象の改善の程度を評価者が評価することが可能となる。その際、評価者は、複数の印象項目について多角的に印象を評価することができる。そして、分析工程では、被験者12の顔肌の色によらず、印象が改善した印象項目とその改善に寄与した波長、つまり出力を強化した色が分析情報に基づき特定される。このように、本実施形態によれば、被験者12の顔肌の色が多様であっても、化粧後の顔肌の印象をより多角的かつ詳細に評価することが可能になる。
【0016】
次いで、情報処理装置10の構成について説明する。
【0017】
情報処理装置10は、通信部101、記憶部102、制御部103、入力部105、及び出力部106を有する。これらの構成は、情報処理装置10が互いに情報通信可能な二以上のコンピュータで構成される場合には、二以上のコンピュータに適宜に配置される。
【0018】
通信部101は、一以上の通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、有線又は無線LAN規格に対応し、近傍のルータ装置に接続するインタフェースである。通信部101は、情報処理装置10の動作に用いられる情報を受信し、また情報処理装置10の動作によって得られる情報を送信する。情報処理装置10は、通信部101によりネットワーク13に接続され、ネットワーク13経由で他の装置と情報通信を行う。
通信インタフェースは、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、若しくは5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応するモジュール等を有し、移動体通信の基地局を介してネットワーク13に接続されてもよい。
【0019】
記憶部102は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する一以上の半導体メモリ、一以上の磁気メモリ、一以上の光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)である。RAMは、例えば、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)である。ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)である。記憶部102は、制御部103の動作に用いられる情報と、制御部103の動作によって得られた情報とを格納する。
【0020】
制御部103は、一以上のプロセッサ、一以上の専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)等の専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。制御部103は、情報処理装置10の各部を制御しながら、情報処理装置10の動作に係る情報処理を実行する。
【0021】
情報処理装置10の機能は制御部103に含まれるプロセッサが、制御プログラムを実行することにより実現される。制御プログラムは、プロセッサを制御部103として機能させるためのプログラムである。また、情報処理装置10の一部又は全ての機能が、制御部103に含まれる専用回路により実現されてもよい。また、制御プログラムは、制御部103により読取り可能な非一過性の記録・記憶媒体に格納され、制御部103が媒体から読み取ってもよい。
【0022】
入力部105は、一以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイクロフォン、撮像画像を取り込むカメラ等である。更に、入力用インタフェースは、画像コードをスキャンするスキャナ又はカメラ、ICカードリーダを含んでもよい。入力部105は、情報処理装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付け、入力される情報を制御部103に送る。
【0023】
出力部106は、一以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイである。出力部106は、情報処理装置10の動作によって得られる情報を出力する。
【0024】
次いで、照明設備11の構成について説明する。
【0025】
照明設備11は、例えば、被験者12に照明光を照射して被験者12の顔肌の色を調整するため照明スタジオである。照明スタジオは、例えば、天井又は天井付近に光源となる照明装置111が設けられており、幅300センチメートル、奥行き300センチメートル、高さ250センチメートルの寸法を有する屋内空間である。壁面及び天井は、黒色又は灰色又は白色で着色されるとともに、窓や隙間を設けずに外光が遮断されるように構成される。照明スタジオは、例えば、被験者12の顔の周囲半径50センチメートル以内の任意の位置における照度が50ルクス以上であるように構成される。照明設備11は、照明装置111に加え、例えば、反射板112、チンレスト113、測定装置115、及び制御端末116を有してもよい。
【0026】
照明装置111は、照明設備11の天井又は天井付近に設けられる。照明装置111は、それぞれのピークの波長が異なるLED素子群を有する。照明装置111は、LED素子群を選択的に点灯・消灯することにより、380nm~780nmの光を含む照射光を照射可能に構成される。照明装置111は、複数のLED素子群を点灯することで基準光として白色光を照射したり、いずれかの色に対応する波長のLED素子の出力を他のLED素子の出力より強化して、いずれかの色が強化された調整光を照射したりする。LED素子群は、その種類は特に限定されないが、例えば、分光照射強度のピークを380~450ナノメートル、450~485ナノメートル、485~500ナノメートル、500~565ナノメートル、500~565ナノメートル、565~590ナノメートル、590~625ナノメートル、625~780ナノメートルの7つの領域に有する、10~20種類のLED素子群である。かかる構成によれば、被験者12の顔肌に照射する可視光領域を網羅的かつ精緻に調整することが可能となる。照明装置111は、通信モジュールを有し、通信モジュールにより制御端末116と有線又は無線通信可能に構成される。照明装置111は、制御端末116からの指示に応じて、LED素子群の点灯・消灯の切替及び出力の調整を行う。あるいは、照明装置111は、通信モジュールによりネットワーク13と接続し、情報処理装置10から指示を受けて動作してもよい。
【0027】
反射板112は、上方の照明装置111からの照射光を乱反射させ間接光を被験者12の顔に照射するための、布、発砲スチロール等、任意の反射率を有する素材を表面に備える板状体である。反射板112は、被験者12の顔の左右及び前方下方の一箇所以上の被験者12の顔から例えば100センチメートル以内の任意の位置に、照明装置111からの照射光を被験者12の顔へ向けて反射可能な角度に設けられる。反射板112は、支持台等に固定されてもよいし、作業員により保持されてもよい。
【0028】
チンレスト113は、被験者12が顎を載せて顎を固定する載置台とそれを支持する支持脚を有する。載置台は、被験者12が座位又は立位で顎を載せることができるような高さに設定される。支持脚は、可動式であっても固定式であってもよい。
【0029】
測定装置115は、顔肌が反射する光の分光反射率を計測する分光測色計である。測定装置115は、測定対象物の反射光が入力されると、分光反射率を測定し、測定結果として波長毎の反射率を成分とするスペクトルのデータを出力する。測定装置115は、通信モジュールにより制御端末116と接続され、制御端末116から操作者の操作に応じた指示を受けて動作する。あるいは、測定装置115は、通信モジュールによりネットワーク13と接続し、情報処理装置10から指示を受けて動作してもよい。測定装置115は、制御端末116又は情報処理装置10へ測定結果を送ってもよい。
【0030】
[システムの動作]
図2は、情報処理装置10の動作例を説明するためのフローチャート図である。各ステップは、制御部103により実行される。
【0031】
ステップS20において、制御部103は、カテゴリ分類工程を実行する。カテゴリ分類工程の詳細な手順が図3に示される。
【0032】
図3は、カテゴリ分類工程の詳細な手順を説明するためのフローチャート図である。各ステップは、制御部103により実行される。
【0033】
ステップS30において、制御部103は、被験者12の顔肌の分光反射率パターンを取得する。被験者12の顔肌の分光反射率パターンは、照明設備11において基準光のもとで測定装置115により測定される測定結果であって、波長毎の分光反射率を成分とするスペクトルである。図4には、分光反射率パターンの例が示される。図4に示す分光反射率パターンでは、400nm~700nmの波長に0%~60%の反射率が対応付けられる。分光反射率パターンは、顔肌の色が異なる複数の、例えば500人~1000人の被験者12の顔肌の分光反射率を順次測定することで得られる。制御部103は、通信部101により測定装置115から送られる測定結果を取得してもよいし、入力部105に対し操作者により入力される測定装置115の測定結果を取得してもよい。あるいは、予め測定された複数の被験者12の顔肌の分光反射率パターンがオープンデータから取得可能な場合、制御部103は、通信部101によりインターネット等を介して分光反射率パターンを取得してもよい。
【0034】
ステップS32において、制御部103は、分光反射率パターンからパラメータ値を導出する。制御部103は、任意に設定される複数のパラメータについて任意のアルゴリズムにより分光反射率パターンを処理し、各パラメータの値を導出する。図5のテーブルは、パラメータの例を示す。制御部103は、例えば、三刺激値、表色系、カラーモデル、波長区分毎の分光反射強度及び分光反射面積に関する36個のパラメータの値を、分光反射率パターン毎に導出する。
【0035】
ステップS34において、制御部103は、パラメータ値を用いて主成分分析を行う。制御部103は、例えば、各パラメータ値の標準偏差、寄与率、及び累積寄与率を導出し、これらを用いて例えば3次元の主成分を導出する。
【0036】
ステップS36において、制御部103は、主成分に基づくクラスタリングを行い、分光反射率パターンをカテゴリ分けする。制御部103は、例えば、主成分を軸とする3次元空間に分布する分光反射率パターンに対し階層型クラスタ解析を行い、分光反射率パターンを例えば6個のカテゴリに分類する。制御部103は、各分光反射率パターンに、分類したカテゴリの情報を紐づけて記憶部102に格納する。
【0037】
図6は、6個のカテゴリC1~C6に分類された分光反射率パターンの、カテゴリ毎の平均の例を示す。カテゴリC1は最も明るい肌色に、カテゴリC2は明るくて赤みがある肌色に、カテゴリC3は明るくて黄みがある肌色に、カテゴリC4は少し色が濃い肌色に、カテゴリC5は色が濃い肌色に、そしてカテゴリC6は最も色が濃い肌色にそれぞれ対応する。このように、分光反射率パターンが、肌色に応じて6個のカテゴリに分類される。
【0038】
図2に戻ると、ステップS22において、制御部103は、評価工程を実行する。評価工程の詳細な手順が、図7に示される。
【0039】
図7は、評価工程の詳細な手順を説明するためのフローチャート図である。各ステップは、制御部103により実行される。
【0040】
ステップS70において、制御部103は、被験者12の顔肌の基準光による分光反射率パターンを取得する。分光反射率パターンは、顔肌の色が異なる複数の、例えば50人~100人の被験者12の顔肌の分光反射率を照明設備11にて順次測定することで得られる。ステップS70で分光反射率が測定される被験者12は、ステップS30で分光反射率が測定される被験者12の母集団に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。制御部103は、通信部101により測定装置115から送られる測定結果を取得してもよいし、入力部105に対し入力される測定装置115の測定結果を取得してもよい。
【0041】
ステップS72において、制御部103は、ステップS70で取得した分光反射率パターンからパラメータ値を、ステップS32と同様にして、導出する。
【0042】
ステップS74において、制御部103は、ステップS70で取得した分光反射率パターンをステップS30で取得した分光反射率パターンに加えたデータセットを対象に、ステップS34と同様にして、パラメータ値を用いた主成分分析を行う。
【0043】
ステップS76において、制御部103は、主成分に基づくクラスタリングを行い、分光反射率パターンをカテゴリ分けする。これにより、ステップS70で取得した分光反射率パターンが、ステップS36において分類されたカテゴリのいずれかに、例えば6個のカテゴリC1~C6のいずれかに分類される。制御部103は、各分光反射率パターンに、被験者12の識別情報とともに分類したカテゴリの情報を紐づけて記憶部102に格納する。
【0044】
ステップS78において、制御部103は、被験者12の顔肌についての評価情報を取得する。評価情報は、基準光を被験者12の顔肌が反射したときの印象に対する、いずれかの波長の光を強化した調整光を顔肌が反射したときの印象の改善の程度を示すスコアである。
【0045】
まず、照明設備11において、被験者12の顔肌に調整光が照射される。調整光は、基準光のいずれかの一以上の波長の光を強化して得られる。照明装置111は、例えば、制御端末116から操作に応じた指示を受けて、順次、LED素子群の点灯強度を調整して調整光を生成する。あるいは、照明装置111は、情報処理装置10から操作者の操作に応じた指示を受けて動作してもよい。
【0046】
照明装置111は、例えば図8に示すように、異なる波長の光を照射する16個のLED素子L1~L16の強度を調整することにより、紫、青、水色、緑、黄、オレンジ、赤といった色の一以上の出力が適宜強化された調整光を生成する。例えば、紫を強化する場合にはLED素子L1~L4の出力が、青色を強化する場合にはLED素子L5~L6の出力が、緑を強化する場合にはLED素子L8~L10の出力が、黄色を強化する場合にはLED素子L10~L11の出力が、オレンジを強化する場合にはLED素子L10~L12の出力が、赤を強化する場合にはLED素子L13~L16の出力が、青及び赤を強化する場合にはLED素子L5、L6、L13~L16の出力が、それぞれ強化される。
【0047】
調整光により得られる分光反射率パターンは、同じ被験者12であっても、基準光により得られる分光反射率パターンとは異なる態様を呈する。例えば図9A、9Bに示すように、調整光により得られる分光反射率パターン、つまり、紫が強化されたパターン91、青が強化されたパターン92、緑が強化されたパターン93、黄色が強化されたパターン94、オレンジが強化されたパターン95、赤が強化されたパターン96、又は青と赤が強化されたパターン97は、いずれも基準光による得られる分光反射率パターン90と異なる形状を呈する。よって、調整光を受けた顔肌は、基準光を受けたときとは異なる輝度、色を呈するので、基準光を受けたときとは異なる印象を評価者に与えうる。ここで、照明装置111により調整光を照射する際、測定装置115により基準光の場合と比較した明度差ΔL及び色変化幅ΔEを測定し、明度差ΔL及び色変化幅ΔEが一定の範囲に収まるように、強化する波長の強度が調整される。例えば、操作者は、明度差ΔLが0.5未満、色変化幅ΔEが4.5±0.5となるような指示を、制御端末116又は情報処理装置10から照明装置111へ送る。そうすることで、被験者12の顔肌の色によらず均一の条件で、調整光を受けたときの印象の改善の程度を評価することが可能となる。
【0048】
次いで、照明設備11において、一人以上の評価者が、被験者12毎に、基準光を受けたときの顔肌の印象に対する、調整光を受けたときの顔肌の印象の改善の程度を、それぞれ評価する。評価者は、予め任意に設定される印象項目毎に、印象を例えば7段階のスコアで評価する。印象項目は、例えば、「いきいき」、「健康的」、「若々しい」、「上品」、「清潔感」、「透明感」、「明るい」、及び「自然」といった表現に対応する項目である。評価者は、「いきいき」、「健康的」、「若々しい」、「上品」、「清潔感」、「透明感」、「明るい」の各項目について、基準光による印象を0点とし、印象が改善された場合は+1~+3点、印象が悪化した場合は-1~-3点を付与する。また、評価者は、「自然」については、自然に見える場合は「はい」、見えない場合は「いいえ」のいずれかを選択する。複数の評価者による評価が行われる場合には、評価者間で評価の際の着眼点等が予め共有される。
【0049】
制御部103は、入力部105に入力されるスコアを取得することで、評価情報を取得する。評価情報には、被験者12の識別情報及び強化された波長の情報が含まれる。評価者は、例えば、情報処理装置10を照明設備11に持ち込んで、被験者12の顔肌の印象を評価して、スコアを入力部105に入力する。制御部103は、取得した評価情報を記憶部102に格納する。
【0050】
図2に戻ると、ステップS24において、制御部103は、分析工程を実行する。分析工程の詳細な手順が図10に示される。
【0051】
図10は、分析工程の詳細な手順を説明するためのフローチャート図である。各ステップは、制御部103により実行される。
【0052】
ステップS1000において、制御部103は、調整光の強化した色毎に、印象項目毎のスコアのカテゴリ平均を導出する。図11A~11Gには、強化された色ごとの、印象項目におけるスコアのカテゴリ平均の例が示される。図11Aは紫が強化された場合の、図11Bは青が強化された場合の、図11Cは緑が強化された場合の、図11Dは黄色が強化された場合の、図11Eはオレンジが強化された場合の、図11Fは赤が強化された場合の、図11Gは青と赤が強化された場合の、各印象項目におけるスコアの、カテゴリC1~C6毎の平均が示される。印象項目は、「いきいき」、「健康的」、「若々しい」、「上品」、「清潔感」、「透明感」、「明るい」及び「自然」といった項目を有する。なお、「自然」の印象項目には、「はい」の回答率のカテゴリ平均が示される。
【0053】
ステップS1002において、制御部103は、分析情報を出力する。分析情報は、印象が改善した印象項目と、その印象項目が改善したときに強化した波長を特定するための情報である。制御部103は、例えば、図11A図11Fに示すような、スコアのカテゴリ平均を含むテーブルを分析情報として、出力部106により研究者へ向けて表示する。
【0054】
分析情報の提示を受けた研究者は、分析情報に基づいて印象項目が改善したときに強化した波長を特定する。例えば、研究者は、図11A~11Fの分析情報において、「自然」の印象項目が50%以上であることを条件として、強化した色毎に、スコアのカテゴリ平均が高い印象項目を特定する。図11A~11Fの分析情報は、それぞれ以下のように判断される。
【0055】
図11Aに示す紫が強化された場合の分析情報では、全カテゴリC1~C6において「自然」の印象項目が50%以上であり、また、「上品」、「清潔感」、「透明感」及び「明るい」といった印象項目のスコア(枠1001)が比較的高い。ただし、カテゴリC6における「いきいき」、「健康的」、「若々しい」及び「自然」といった印象項目のスコア(枠1002)が比較的低く、やや不自然な印象と考えられる。
【0056】
図11Bに示す青が強化された場合の分析情報では、全カテゴリC1~C6において「自然」の印象項目が50%以上であり、また、「上品」、「清潔感」、「透明感」及び「明るい」といった印象項目のスコア(枠1003)が比較的高い。ただし、カテゴリC6における「いきいき」、「健康的」、「若々しい」及び「自然」といった印象項目のスコアが比較的低く(枠1004)、「健康的」においてマイナスを示し、不自然な印象と考えられる。
【0057】
図11C及び11Dにそれぞれ示す緑が強化された場合及び黄色が強化された場合の分析情報では、全カテゴリC1~C6において「自然」の印象項目のスコアが50%未満である。また、すべての印象項目のスコアがマイナスを示す。すなわち、印象がむしろ悪化している。これは、緑又は黄色が強化された調整光を受けた顔肌の色がエイジングによるいわゆる「黄ぐすみ」を想起させることによると考えられる。
【0058】
図11Eに示すオレンジが強化された場合の分析情報では、全カテゴリC1~C6において「自然」の印象項目が90%以上であり、「いきいき」、「健康的」、及び「若々しい」といった印象項目のスコア(枠1005)が比較的高い。一方、「上品」、「清潔感」、「透明感」及び「明るい」といった印象項目におけるスコアが、カテゴリC1~C5においてマイナスを示している。ただし、カテゴリC6においては他のカテゴリよりも比較的高いスコアが保たれている(枠1006)。これは、オレンジが強化された調整光を受けた顔肌の色が血色感を想起させることによると考えられる。
【0059】
図11Fに示す赤が強化された場合の分析情報では、全カテゴリC1~C6において「自然」の印象項目が70%以上であり、「いきいき」、「健康的」、及び「若々しい」といった印象項目のスコア(枠1007)が比較的高い。一方、「上品」、「清潔感」、「透明感」及び「明るい」といった印象項目におけるスコアが、カテゴリC1~C5においてマイナスを示している。ただし、カテゴリC6においては他のカテゴリよりも比較的高いスコアが保たれている(枠1008)。これは、赤が強化された調整光を受けた顔肌の色が血色感を想起させることによると考えられる。
【0060】
図11Gに示す青及び赤が強化された場合の評価情報は、全カテゴリC1~C6において「自然」の印象項目が90%以上を示し、「いきいき」、「健康的」、及び「若々しい」といった印象項目のスコア(枠1009)が比較的高い。そして、全カテゴリにおけるすべての印象項目でスコアがプラスを示している。これは、波長が複合的に強化されたことによる相乗効果と考えられる。
【0061】
上述したように、図11A~11Fに示す分析情報からは、次のように、印象が改善した印象項目とそのときに強化した波長(色)が特定される。まず、「いきいき」、「健康的」及び「若々しい」といった印象項目の印象が向上したときはオレンジの波長が強化された。また、「上品」、「清潔感」、「透明感」及び「明るい」といった印象項目の印象が向上したときは紫又は青の波長が強化された。そして、すべての印象項目の印象が向上したときは青及び赤の波長が同時に強化された。
【0062】
上述のような情報処理装置10の動作により、被験者12の顔肌の色によらず均一の条件で、顔肌の印象の改善の程度を評価者が評価することが可能となる。そして、印象が改善した印象項目とその改善に寄与した波長、つまり出力を強化した色が分析情報に基づき特定される。このように、本実施形態によれば、被験者12の顔肌の色が多様であっても、化粧後の顔肌の印象をより多角的かつ詳細に評価することが可能になる。
【0063】
[実施例]
評価工程において複数段階の調整光を用いることで、分析工程において印象項目の改善度が最大となる場合を探索することが可能となる。
【0064】
例えば、基準光の場合に対する色変化幅ΔEが以下のような5段階となるような調整光を用いて、各段階で評価工程が実行される
第一段階: 1.0≦ΔE≦2.0
第二段階: 2.5≦ΔE≦3.5
第三段階: 4.0≦ΔE≦5.0
第四段階: 5.5≦ΔE≦6.5
第五段階: 7.0≦ΔE≦8.0
【0065】
各段階で得られた評価情報に基づく分析情報を用いて、分析工程が実行される。そして、例えば図12に示すような、印象項目の改善度が最大となる場合が特定される。図12のテーブルは、「自然」の印象項目が70%以上となった場合のスコアのカテゴリ平均を用いて、各印象項目のスコアが最大となる場合の組合せを示す。このテーブルは、カテゴリC1~C6のそれぞれについて、光の色と強度(基準光のときの同じ波長の強度に対する比率)、及びスコア平均の組合せが、印象項目毎に示される。
【0066】
[応用例1]
図12に示す結果は、化粧料の開発に用いることができる。図12のテーブルに示すような、カテゴリ毎に各色の分光反射率が増大するような材料を混合して乳液、化粧水等を製造することが可能となる。情報処理装置10の制御部103は、かかる化粧料を製造するための処方の情報を記憶部102に格納する。かかる化粧料は、各カテゴリに分類される顔肌の色を有するユーザにおいて用いることで、分光反射率を制御し印象を向上させることが可能となる。化粧料は、例えば、酸化チタン6%、赤酸化鉄0.14%、黄酸化鉄2.45%、黒酸化鉄0.06%、赤色226号0.04%、青色1号レーキ顔料0.04%を含むO/W乳化タイプのリキッドファンデーションである。このファンデーションであればカテゴリC2の「上品」、「清潔感」、「透明感」及び「明るい」の印象を向上させることができる。また、酸化チタン1%、赤酸化鉄2.17%、黄酸化鉄7.00%、黒酸化鉄1.20%、赤色226号0.35%、青色1号レーキ顔料0.05%を含むO/W乳化タイプのリキッドファンデーションである。このファンデーションであればカテゴリC6の「いきいき」、「健康的」、及び「若々しい」の印象を向上させることができる。
【0067】
[応用例2]
被験者12の分光反射率パターン、複数段階の調整光を用いた評価情報、分析情報、及び印象改善に寄与する波長(色)と強化すべき強度の組合せに対応する化粧料又はその処方の情報を教師データとして機械学習することで、被験者12の分光反射率パターンから、適した化粧料又はその処方の情報を導出するモデルを構築することが可能である。かかるモデルは、例えば、クラウドサーバ又はPC、タブレット端末等に格納されて、アプリケーションとして利用可能に構成される。そうすることで、ユーザの顔肌の分光反射率パターンを測定し、測定結果に基づいて、そのユーザの印象改善に寄与する化粧料又はその処方の情報を提供することが可能となる。
【0068】
上述において、情報処理装置10の動作を規定する処理・制御プログラムは、クラウドサーバ等に格納されていて、ネットワーク13経由で情報処理装置10にダウンロードされてもよいし、コンピュータに読取り可能な非一過性の記録・記憶媒体に格納され、情報処理装置10が媒体から読み取ってもよい。
【0069】
上述したカテゴリ分類工程、評価工程、及び分析工程は、一の情報処理装置により実行される場合も、各工程の一部又は全部が複数の情報処理装置により実行される場合も、本実施形態の範囲に含まれる。また、複数の情報処理装置が用いられる場合、互いに通信可能に接続されていてもよいし接続されていなくてもよい。複数の情報処理装置が互いに通信可能に接続されていない場合、一の情報処理装置による情報処理の結果は、例えば記憶媒体に格納されて他の情報処理装置により読み出されることで、他の情報処理装置に共有されてもよい。
【0070】
上述において、実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
10:情報処理装置
11:照明設備
12:被験者
13:ネットワーク
101:通信部
102:記憶部
103:制御部
105:入力部
106:出力部
111:照明装置
112:反射板
113:チンレスト
115:測定装置
116:操作端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12