(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043432
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】バックボードの取り付け構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20240322BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B60N2/64
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148622
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】上木 昌徳
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EC01
3B084EC02
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB05
(57)【要約】
【課題】質量の増加を抑えることが可能になると共に車両の後面衝突時におけるシートバック内への着座乗員の背中の入り込みを良好に実現することが可能なバックボードの取り付け構造を得る。
【解決手段】シートバックフレーム10の背面側にバックボード20が配置される。バックボード20にはクリップ30、31が設けられ、クリップ30、31がシートバックフレーム10に背面側から係合されることによってバックボード20がシートバックフレーム10に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ材で構成されたシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの背面側に配置されるバックボードと、
前記バックボードに設けられ、前記シートバックフレームに背面側から係合されることによって前記バックボードを前記シートバックフレームに取り付けるクリップと、
を備えるバックボードの取り付け構造。
【請求項2】
前記シートバックフレームは、シートバック上下方向に沿って延在する縦フレーム部と、シートバック幅方向に沿って延在する横フレーム部と、が接続されて構成され、
前記バックボードには、前記縦フレーム部と前記横フレーム部との接続部に対向する部分の近傍において前記横フレーム部に対向する部分に第一取付孔が貫通形成されると共に前記縦フレーム部に対向する部分に第二取付孔が貫通形成され、
前記クリップとして、前記第一取付孔を貫通して前記横フレーム部の一部と係合される第一クリップと、前記第二取付孔を貫通して前記縦フレーム部の一部と係合される第二クリップと、を含み、
前記バックボードの背面側で前記第一クリップの一部と前記第二クリップの一部とが互いに係合するように構成されている、請求項1に記載のバックボードの取り付け構造。
【請求項3】
前記第一クリップ及び前記第二クリップは、それぞれの一部同士が前記バックボードの背面側で前記バックボードの板厚方向に互いに重なり合うように配置されている、請求項2に記載のバックボードの取り付け構造。
【請求項4】
前記第一クリップと前記第二クリップとは、同形状に形成されている、請求項2に記載のバックボードの取り付け構造。
【請求項5】
前記第一取付孔及び前記第二取付孔には、それぞれ開口縁から切り欠かれた誤組付け防止用の切欠部が形成され、前記第一クリップ及び前記第二クリップには、当該クリップが正しい向きで組み付けられた場合には前記切欠部に挿し込まれ当該クリップが正しくない向きで組み付けられた場合には前記バックボードの一部に当接するリブが形成されている、請求項2に記載のバックボードの取り付け構造。
【請求項6】
前記第一クリップ及び前記第二クリップの各頭部の頂面には、当該クリップの組み付け時の向きの指標となる方向マークが形成されている、請求項2に記載のバックボードの取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックボードの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートバックの背面にバックボードを取り付ける構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、シートバックのパッドの背面側には、シート幅方向に延在するワイヤ本体が設けられると共にワイヤ本体の両端にはそれぞれブラケットが固着されており、それらのブラケットにはクリップを係止可能な係止孔が形成されている。また、ブラケットは、ワイヤ本体がシートバックのバックフレーム(パイプ材で構成されたシートバックフレーム)の左右を橋渡す格好となるように、バックフレームの左右にそれぞれ接合されている。そして、バックボード側に取り付けられているクリップがブラケットの係止孔に係止されることでシートバックの背面にバックボードが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような先行技術では、シートバックのバックフレーム側にワイヤ本体及びブラケットを配置しているため、その分質量が増加するうえ、車両の後面衝突時にはシートバック内への着座乗員の背中の入り込みが抑制されることで着座乗員の頭部をヘッドレストによって適切に支持させる点で不利になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、質量の増加を抑えることが可能になると共に車両の後面衝突時におけるシートバック内への着座乗員の背中の入り込みを良好に実現することが可能なバックボードの取り付け構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明のバックボードの取り付け構造は、パイプ材で構成されたシートバックフレームと、前記シートバックフレームの背面側に配置されるバックボードと、前記バックボードに設けられ、前記シートバックフレームに背面側から係合されることによって前記バックボードを前記シートバックフレームに取り付けるクリップと、を備える。
【0007】
上記構成によれば、バックボードに設けられたクリップが、パイプ材で構成されたシートバックフレームに背面側から係合されることによってバックボードがシートバックフレームに取り付けられる。このため、シートバックフレーム側にワイヤ本体及びブラケットを別途設ける必要がないので、質量の増加を抑えることが可能になると共に車両の後面衝突時にシートバック内への着座乗員の背中の入り込みを良好に実現することが可能になる。
【0008】
請求項2に記載する本発明のバックボードの取り付け構造は、請求項1に記載の構成において、前記シートバックフレームは、シートバック上下方向に沿って延在する縦フレーム部と、シートバック幅方向に沿って延在する横フレーム部と、が接続されて構成され、前記バックボードには、前記縦フレーム部と前記横フレーム部との接続部に対向する部分の近傍において前記横フレーム部に対向する部分に第一取付孔が貫通形成されると共に前記縦フレーム部に対向する部分に第二取付孔が貫通形成され、前記クリップとして、前記第一取付孔を貫通して前記横フレーム部の一部と係合される第一クリップと、前記第二取付孔を貫通して前記縦フレーム部の一部と係合される第二クリップと、を含み、前記バックボードの背面側で前記第一クリップの一部と前記第二クリップの一部とが互いに係合するように構成されている。
【0009】
上記構成によれば、バックボードには、縦フレーム部と横フレーム部との接続部に対向する部分の近傍において横フレーム部に対向する部分に第一取付孔が貫通形成されると共に縦フレーム部に対向する部分に第二取付孔が貫通形成されている。そして、クリップとして第一クリップと第二クリップとが含まれており、第一クリップは、第一取付孔を貫通して横フレーム部の一部と係合され、第二クリップは、第二取付孔を貫通して縦フレーム部の一部と係合されている。さらに、バックボードの背面側(バックボードに対してシートバックフレーム側とは反対側)では、第一クリップの一部と第二クリップの一部とが互いに係合している。このため、第一クリップ及び第二クリップのがたつきが抑えられ、バックボードを縦フレーム部と横フレーム部との接続部の近傍において強固に取り付けることができる。
【0010】
請求項3に記載する本発明のバックボードの取り付け構造は、請求項2に記載の構成において、前記第一クリップ及び前記第二クリップは、それぞれの一部同士が前記バックボードの背面側で前記バックボードの板厚方向に互いに重なり合うように配置されている。
【0011】
上記構成によれば、第一クリップ及び第二クリップのがたつきが一層効果的に抑えられてバックボードを縦フレーム部と横フレーム部との接続部の近傍においてより強固に取り付けることができるうえ、組み付け性も良い。
【0012】
請求項4に記載する本発明のバックボードの取り付け構造は、請求項2に記載の構成において、前記第一クリップと前記第二クリップとは、同形状に形成されている。
【0013】
上記構成によれば、クリップの生産性の点で有利となる。
【0014】
請求項5に記載する本発明のバックボードの取り付け構造は、請求項2に記載の構成において、前記第一取付孔及び前記第二取付孔には、それぞれ開口縁から切り欠かれた誤組付け防止用の切欠部が形成され、前記第一クリップ及び前記第二クリップには、当該クリップが正しい向きで組み付けられた場合には前記切欠部に挿し込まれ当該クリップが正しくない向きで組み付けられた場合には前記バックボードの一部に当接するリブが形成されている。
【0015】
上記構成によれば、第一取付孔及び第二取付孔には、それぞれ開口縁から切り欠かれた誤組付け防止用の切欠部が形成されており、第一クリップ及び第二クリップに形成されたリブは、当該リブが形成されたクリップが正しい向きで組み付けられた場合には切欠部に挿し込まれ、当該クリップが正しくない向きで組み付けられた場合にはバックボードの一部に当接する。このため、第一クリップ及び第二クリップの誤組付けを容易に防止することができ、第一クリップの一部と第二クリップの一部とをより確実に係合させることができる。
【0016】
請求項6に記載する本発明のバックボードの取り付け構造は、請求項2に記載の構成において、前記第一クリップ及び前記第二クリップの各頭部の頂面には、当該クリップの組み付け時の向きの指標となる方向マークが形成されている。
【0017】
上記構成によれば、第一クリップ及び第二クリップを正しい向きに組み付けることが容易になり、第一クリップの一部と第二クリップの一部とを容易に係合させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のバックボードの取り付け構造によれば、質量の増加を抑えることが可能になると共に車両の後面衝突時におけるシートバック内への着座乗員の背中の入り込みを良好に実現することが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るバックボードの取り付け構造をバックボードの背面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図2】
図1のバックボードの取り付け構造を正面から見た状態で示す正面図である。
【
図3】
図2のバックボード単体を示す正面図である。
【
図4】
図3のバックボードのクリップ取付部にクリップを取り付ける状態を正面側から見て拡大した状態で示す拡大斜視図である。
【
図5】バックボードに取り付けられたクリップをシートバックフレームの縦フレーム部に係合させようとしている状態を背面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図8A】第2の変形例においてバックボードに設けた台座にクリップを取り付けようとしている状態を正面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図8B】第2の変形例においてバックボードに取り付けられたクリップをシートバックフレームに係合させようとしている状態を正面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図9】第2の変形例においてバックボードにクリップが取り付けられた状態を
図8Bとは別の方向から見た斜視図である。
【
図10A】第3の変形例においてクリップを用いてバックボードをシートバックフレームに取り付けようとしている状態を示す斜視図である。
【
図10B】第3の変形例においてクリップを用いてバックボードをシートバックフレームに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係るバックボードの取り付け構造をバックボードの背面側から見た状態で示す背面図である。
【
図12】
図11のa部の組み付け途中の状態を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図13】
図11のクリップ取付部の一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るバックボードの取り付け構造について
図1~
図5を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはシートバック前方側を示しており、矢印UPはシートバック上方側を示しており、矢印Wはシートバック幅方向を示している。
【0021】
(構成)
図1には、本実施形態に係るバックボードの取り付け構造をバックボード20の背面側から見た状態の斜視図が示されている。また、
図2には、本実施形態に係るバックボードの取り付け構造を正面から見た状態の正面図が示されている。
図1及び
図2に示されるように、バックボードの取り付け構造は、バックボード20をシートバックフレーム10に取り付ける構造である。
【0022】
シートバックフレーム10は、車両用シートのシートバックの骨格部を構成し、パイプ材で構成されている。なお、車両用シートは、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション(図示省略)と、着座乗員の背部を支持するシートバック(全体構成としては図示省略)と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト(図示省略)と、を備えている。また、本実施形態の車両用シートは、一例としてリアシート(ここではベンチシート)とされる。
【0023】
図1に示されるように、シートバックフレーム10は、シートバック上下方向に沿って延在する複数の(本実施形態では三本の)縦フレーム部12と、シートバック幅方向に沿って延在する上下一対の横フレーム部14と、が接続されて構成されている。なお、図中において、三本の縦フレーム部12の各々については、便宜上、シートバック左右方向の左から順に括弧書きで12A、12B、12Cの符号を符号12の後に付す。また、図中において、上下一対の横フレーム部14の各々については、便宜上、上から順に括弧書きで14A、14Bの符号を符号14の後に付す。
【0024】
縦フレーム部12及び横フレーム部14は金属製とされる。また、三本の縦フレーム部12、及び横フレーム部14のうちの上側の横フレーム部14Aは、一例として丸パイプ材から形成されたものであり、横フレーム部14のうち下側の横フレーム部14Bは、角パイプ材から形成されたものである。
【0025】
縦フレーム部12のうち左右の縦フレーム部12A、12Cの上下端部は、上下一対の横フレーム部14のシート幅方向の両端部に接合されている。すなわち、左右の縦フレーム部12A、12C及び上下一対の横フレーム部14は、シートバックフレーム10の枠状の部分を構成している。縦フレーム部12のうち左右の縦フレーム部12A、12Cの間に配置される補強用の縦フレーム部12Bの上下端部は、上下一対の横フレーム部14のシート幅方向中間部(より具体的には
図1に示されるシートバックフレーム10の背面側から見てシート幅方向中間部の左寄りの部分)に突き当てられて接合されている。なお、上側の横フレーム部14Aの前側部分には、ヘッドレスト(図示省略)を連結するための筒状のホルダ16が溶接によって固定されている。
【0026】
シートバックフレーム10の背面側には、バックボード20が配置される。バックボード20は、一例として、樹脂製のボードとされる。なお、バックボードには、ハードボード、プラスチックダンボールからなるボード、ハニカムボード等の適用が可能である。
図3には、バックボード20の単体が正面図で示されている。
図3に示されるように、バックボード20には、複数のクリップ取付部22、24が形成されている。
図1に示されるように、複数のクリップ取付部22、24は、バックボード20においてシートバックフレーム10に対応する部分の所定部位に間隔をあけて(極力等間隔に近付けられるように)設定されている。バックボード20の背面側においては、複数のクリップ取付部22、24は、その周囲部に対して若干凹んでいる。
【0027】
図3に示されるように、複数のクリップ取付部22、24のうちクリップ取付部22には、矩形状の取付孔22Aが貫通形成されると共に、取付孔22Aの近傍に取付孔22Aよりも小さい矩形状とされた嵌合孔22Bが貫通形成されている。また、複数のクリップ取付部22、24のうちクリップ取付部24には、正面視でバックボード20の外方側に開放された取付用切欠部24Aが貫通形成されると共に、正面視で取付用切欠部24Aに対して内方側の近傍において取付用切欠部24Aよりも小さくかつ矩形状とされた嵌合孔24Bが貫通形成されている。
【0028】
なお、取付孔22Aを備えるクリップ取付部22は、バックボード20の外周端からある程度内方側の位置に設定されるクリップ取付部であり、取付用切欠部24Aを備えるクリップ取付部24は、バックボード20の外周端からの距離が短い位置に設定されるクリップ取付部である。取付孔22Aを備えるクリップ取付部22は、取付用切欠部24Aを備えるクリップ取付部24よりも、バックボード20の端部の強度低下を避ける点では有利といえる。なお、クリップ取付部22及びクリップ取付部24は、それぞれ複数(一例としてそれぞれ四個)設定されている。また、取付用切欠部24Aは、形成される部位によって形状が異なるものがあるが、便宜上同一符号を付す。
【0029】
図1に示されるように、バックボード20には、複数のクリップ取付部22、24のそれぞれに一個ずつ配置されるクリップ30、31が設けられている。クリップ30、31の数(言い換えればクリップ取付部22、24の数)は、バックボード20の剛性を踏まえて、最適な数に設定されている。クリップ30、31は、シートバックフレーム10に背面側から係合されることによってバックボード20をシートバックフレーム10に取り付ける。なお、クリップ30は、丸パイプ用のクリップとされ、クリップ31は、角パイプ用のクリップとされる。
【0030】
ここで、クリップ30、31を用いてバックボード20をシートバックフレーム10に取り付ける構成について、より具体的に説明する。
【0031】
図4には、バックボード20のクリップ取付部22にクリップ30を取り付ける状態(組み付ける状態)を正面側から見て拡大した拡大斜視図が示されている。また、
図5には、バックボード20に取り付けられたクリップ30をシートバックフレーム10の縦フレーム部12(図中では一部を図示)に係合させようとしている状態を背面側から見た状態の斜視図が示されている。
【0032】
図4及び
図5に示されるクリップ30は、樹脂製の射出成形品とされ、弾性変形可能とされる。クリップ30は、略U字状に形成されたフレーム係合部32と、フレーム係合部32のU字底側を構成する閉塞部32A(
図4参照)における外面から延出されて略L字状に形成されたL字延出部34と、を含んで構成されている。
【0033】
図4に示されるように、フレーム係合部32は、閉塞部32Aと、閉塞部32Aにおけるクリップ幅方向(図中の左右方向)の両端部から延出された一対の挟持部32Bと、を備えている。一対の挟持部32Bにおいて互いの対向面でかつ閉塞部32A寄りの部分は凹湾曲状に形成されている。一対の挟持部32Bには、互いの対向面側でかつ開放端寄りの部分に互いの対向間隔を狭めるように略三角状に突出した内側突出部32Tが形成されている。また、L字延出部34は、閉塞部32Aにおけるクリップ幅方向(図中の左右方向)の中央部からフレーム係合部32側とは反対側に短距離だけ延出してからクリップ幅方向の一方側に曲げられて延出している。L字延出部34における先端部側でかつL字の内面側には、爪部34Aが突出形成されている。
【0034】
クリップ30をバックボード20のクリップ取付部22に取り付ける(組み付ける)場合には、クリップ取付部22の取付孔22Aに対して、バックボード20の正面側からクリップ30のL字延出部34を挿入し、その後、クリップ30をクリップ取付部22の嵌合孔22B側にスライド移動させる(矢印A参照)。これにより、L字延出部34は、弾性変形した後、弾性復帰して爪部34Aが嵌合孔22Bに嵌合する。この嵌合によって、
図5に示されるように、クリップ30は、バックボード20のクリップ取付部22に取り付けられる。次に、バックボード20に取り付けられたクリップ30のフレーム係合部32をシートバックフレーム10の縦フレーム部12に押し付け(矢印B参照)、フレーム係合部32をシートバックフレーム10の縦フレーム部12に係合させる。
【0035】
また、
図1に示されるバックボード20のクリップ取付部24へクリップ30を取り付ける(組み付ける)場合には、クリップ30のL字延出部34の先端側を取付用切欠部24Aの開放側へ向けた状態からクリップ30のL字延出部34の基端部側を取付用切欠部24Aに入り込ませて(矢印D参照)バックボード20の嵌合孔24B(
図3参照)にクリップ30の爪部34A(
図4参照)を嵌合させる。また、バックボード20のクリップ取付部24に取り付けられたクリップ30をシートバックフレーム10の上側の横フレーム部14A及び左右の縦フレーム部12A、12Cに係合させる方法は、バックボード20のクリップ取付部22に取り付けられたクリップ30をシートバックフレーム10の縦フレーム部12に係合させる方法と同様である。
【0036】
一方、
図1の図中下部側に示されるクリップ31は、クリップ30と基本的な構成は実質的に同様であるが、
図4に示されるフレーム係合部32の内面側の形状が角パイプ用となっている点で異なる。
図1に示されるバックボード20のクリップ取付部22へのクリップ31の取り付け(組み付け)方法は、図中にクリップ31の組み付け方向を矢印Cで示すように、バックボード20のクリップ取付部22へのクリップ30の取り付け(組み付け)方法(矢印A参照)と同様である。また、バックボード20に取り付けられたクリップ31をシートバックフレーム10の下側の横フレーム部14Bに係合させる方法は、バックボード20に取り付けられたクリップ30をシートバックフレーム10の縦フレーム部12に係合させる方法と同様である。
【0037】
(作用・効果)
次に、第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
第1の実施形態では、バックボード20に設けられたクリップ30、31が、パイプ材で構成されたシートバックフレーム10に背面側から係合されることによってバックボード20がシートバックフレーム10に取り付けられる。このため、シートバックフレーム10側にワイヤ本体及びブラケットを別途設ける必要がない。よって、本実施形態では、質量の増加を抑えることが可能になると共に車両の後面衝突時にシートバック内への着座乗員の背中の入り込みを良好に実現することが可能になる。ここで、車両の後面衝突時にシートバック内へ着座乗員の背中を良好に入り込ませることができると、車両の後面衝突時に着座乗員の頭部をヘッドレストにより適切に支持させることができるので、着座乗員の頚部の鞭打ち防止性能の低下を防ぐことが可能になる。
【0039】
なお、この実施形態では、バックボード20を縦フレーム部12と横フレーム部14の両方にクリップ30、31で固定するので、バックボード20を組み付けた後のがたつきを軽減することができる。また、バックボード20をシートバックフレーム10の外郭部(枠状部)にクリップ30、31で固定するので、バックボード20の端部のばたつき及び異音の発生を軽減することができる。
【0040】
また、この実施形態に係る構成では、バックボード20と、シートバックフレーム10に係合されるクリップ30、31とが別体であるので、例えば、シートバックフレーム(10)のパイプ径が上記実施形態とは異なるものでも、そのシートバックフレーム(10)のパイプ径に合わせて設定されたクリップを用いれば、上記実施形態と同じバックボード20を使用することができる。また、この実施形態では、仮にクリップ30、31が破損しても、破損したクリップ30、31のみを交換する、という対応ができる。さらに、バックボード20と、シートバックフレーム10に係合されるクリップ30、31とが別体である、という構成を採ることで、クリップが一体化されたバックボードを射出成形によって製造した場合と比較して射出成形金型の構成を簡素化すること(スライド型を削減すること)ができる。
【0041】
[第1の実施形態の変形例]
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
【0042】
(第1の変形例)
まず、第1の変形例について
図6及び
図7を参照しながら説明する。なお、この変形例は、
図6及び
図7に示す構成部分を除いて、第1の実施形態と実質的に同様の構成とする。
図6には、第1の変形例の要部が正面図で示され、
図7には、
図6の矢印7方向から見た状態の図が示されている。
【0043】
図6及び
図7に示されるように、シートバックフレーム10において縦フレーム部12と横フレーム部14とで形成されるコーナ部分からはみ出るフレーム端部にクリップ40が取り付けられてもよい。なお、横フレーム部14の端部は、
図1等に示される第1の実施形態における横フレーム部14の端部とは若干形状が異なるが、便宜上同一符号を付す。
【0044】
図6及び
図7に示されるように、クリップ40は、ストッパリブ42が形成されている点を除いて、第1の実施形態のクリップ30(
図4及び
図5参照)と実質的に同様の構成である。このため、クリップ40において、第1の実施形態のクリップ30(
図4及び
図5参照)と実質的に同様の構成部については同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
クリップ40に形成されたストッパリブ42は、閉塞部32Aの内面側でかつフレーム係合部32の貫通方向一方側(
図6の右側)の部位から一対の挟持部32Bの延出方向と同様の方向に短い距離延出されている。
図6に示されるように、ストッパリブ42の延出方向先端部42B側には、ストッパリブ42の基端部42A側よりもクリップ40の内方側に延出された内側延出部42Xが形成されている。ストッパリブ42の基端部42Aにおいてクリップ40の内方側を向く面は、横フレーム部14の先端面の一部に隣接して配置される。また、ストッパリブ42の内側延出部42Xにおいて閉塞部32A側を向く面は、横フレーム部14の先端部側の内周面の一部に隣接して配置される。
【0046】
このクリップ40を取り付ける場合には、
図6及び
図7に示される横フレーム部14の端部側に対して図中上方側から図中下方側へクリップ40を移動させて一対の挟持部32Bで横フレーム部14の端部を挟み込んだ後に
図6に示される横フレーム部14と縦フレーム部12との接続部側にスライド移動させる(
図6の矢印Z参照)。
【0047】
この第1の変形例によれば、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえ、シートバックフレーム10においてコーナ部分からはみ出るフレーム部分の端部をカバーすることができる。なお、第1の変形例の更なる変形例として、クリップ40の外形に適正なカーブ(
図6の二点鎖線40R参照)等を加えてもよい。そのようにすることで、乗員の接触による受傷を軽減させる車室内突起物規制の対策部品とすることが可能である。
【0048】
(第2の変形例)
次に、第2の変形例について
図8A、
図8B及び
図9を参照しながら説明する。この第2の変形例では、第1の実施形態におけるバックボード20(
図3参照)に代えて、
図8A、
図8B及び
図9に一部が示される樹脂製のバックボード50が適用される。バックボード50は、一例として射出成形によって形成されたものである。
【0049】
図8Aには、第2の変形例に適用されるバックボード50に設けた台座部54にクリップ30を取り付け(組み付け)ようとしている状態を正面側から見た状態の斜視図が示されている。バックボード50は、第1の実施形態のクリップ取付部22、24(
図3参照)に相当する位置に台座部54が形成されている点で第1の実施形態のバックボード20(
図3参照)とは異なる。バックボード50の他の構成は、第1の実施形態のバックボード20(
図3参照)と同様である。
【0050】
図8Aに示されるように、台座部54の座板部54Aは、バックボード50の平板状の一般部52と対向配置されて正面視で略U字状に形成されている。座板部54AのU字外周側の端部は、連結壁部54Bによってバックボード50の一般部52と繋がれている。座板部54Aには、矩形状に切り欠かれた取付用切欠部54Kが貫通形成されると共に、正面視で取付用切欠部54Kに対してその開放側とは反対側の近傍において取付用切欠部54Kよりも小さくかつ矩形状とされた嵌合孔54Hが貫通形成されている。
【0051】
クリップ30をバックボード50に取り付ける(組み付ける)場合には、まず、正面側(
図8Aの図中手前側)にクリップ30のフレーム係合部32を向けてL字延出部34の先端側を取付用切欠部54Kの開放側へ向ける。この状態からクリップ30の閉塞部32Aの外面でL字延出部34と重ならない部分を座板部54Aにおける両サイド(図中の上側の部分及び下側の部分)に支持させつつクリップ30のL字延出部34の基端部側を取付用切欠部54Kに入り込ませるように(矢印E参照)スライドさせ、バックボード50の嵌合孔54Hにクリップ30の爪部34Aを嵌合させる。この嵌合によって、
図8B及び
図9に示されるように、クリップ30は、バックボード50に取り付けられる。次に、第1の実施形態と同様に、
図8Bに示されるバックボード50に取り付けられたクリップ30のフレーム係合部32をシートバックフレーム10(図中では一部を図示)に押し付け(矢印F参照)、フレーム係合部32をシートバックフレーム10の一部に係合させる。以上により、バックボード50がシートバックフレーム10に取り付けられる。
【0052】
この第2の変形例によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0053】
(第3の変形例)
次に、第3の変形例について
図10A及び
図10Bを参照しながら説明する。この第3の変形例では、第1の実施形態におけるバックボード20(
図3参照)に代えて、
図10A及び
図10Bに一部が示される樹脂製のバックボード60が適用されると共に、第1の実施形態における複数のクリップ30(
図1参照)のうちの一部に代えて、
図10A及び
図10Bに示されるクリップ64が適用される。また、シートバックフレーム10は、一例として、すべて丸パイプ材から形成されているが、他の点については第1の実施形態におけるシートバックフレーム10と同様の構成である。ここでは、便宜上、シートバックフレーム10については第1の実施形態と同様の符号を付す。
【0054】
図10Aには、第3の変形例においてクリップ64を用いてバックボード60をシートバックフレーム10(図中では一部を図示(
図10Bも同様))に取り付けようとしている状態の斜視図が示されている。バックボード60は、第1の実施形態のクリップ取付部22に相当する位置にクリップ取付部62が形成されている点で第1の実施形態のバックボード20(
図3参照)とは異なる。バックボード60の他の構成は、第1の実施形態のバックボード20(
図3参照)と同様である。
【0055】
図10Aに示されるように、バックボード60の背面側においては、クリップ取付部62は、その周囲部に対して若干凹んでいる。クリップ取付部62には、略矩形状の取付孔62Aが貫通形成されている。一方、クリップ64は、クリップ取付部62の背面側に配置される略矩形板状の頭部64Aと、頭部64Aに連続して形成されたフレーム係合部64Bと、を備えている。フレーム係合部64Bは、第1の実施形態におけるクリップ30のフレーム係合部32(いずれも
図4参照)と同様の形状に形成されている。
【0056】
クリップ64を用いてバックボード60をシートバックフレーム10に取り付ける場合には、まず、バックボード60をシートバックフレーム10の背面側に配置し、次に、クリップ64のフレーム係合部64Bをクリップ取付部62の背面側に向け、フレーム係合部64Bを取付孔62Aに挿し込んでシートバックフレーム10の一部に押し付け、フレーム係合部64Bをシートバックフレーム10の一部に係合させる。これにより、
図10Bに示されるように、バックボード60がシートバックフレーム10に取り付けられる。
【0057】
この第3の変形例によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0058】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るバックボードの取り付け構造について
図11~
図13を用いて説明する。なお、第2の実施形態の構成部で第1の実施形態の構成部と実質的に同様のものについては、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
(構成)
図11には、本実施形態に係るバックボードの取り付け構造をバックボード80の背面80B側から見た状態の背面図が示されている。本実施形態のシートバックフレーム70は、第1の実施形態において開示した角パイプ材から形成された下側の横フレーム部14B(
図1参照)に代えて、丸パイプ材から形成された横フレーム部14Cが設けられている点を除いて、第1の実施形態のシートバックフレーム10(
図1参照)と同様の構成とされ、縦フレーム部12と横フレーム部14(便宜上、第1の実施形態と同様の符号を付す)とが接続されて構成されている。下側の横フレーム部14Cは、二本の横フレーム部14のうちの一本であり、第1の実施形態の横フレーム部14B(
図1参照)と同様にシートバック幅方向に沿って延在している。また、下側の横フレーム部14Cには、三本の縦フレーム部12の下端部が接合されている。
【0060】
シートバックフレーム70の背面側には、樹脂製のバックボード80が配置される。バックボード80には、複数のクリップ取付部82、84が形成されている。複数のクリップ取付部82、84は、バックボード80においてシートバックフレーム70に対応する部分の所定部位に間隔をあけて設定されている。補足説明すると、複数のクリップ取付部82、84は、バックボード80においてシートバックフレーム70の四隅のうちの三隅に対応する部分に設定されるもの、及びバックボード80においてシートバックフレーム70の四隅のうちの残りの一隅に対応する部分の近くに設定されるものを含む。バックボード80の背面80B側においては、複数のクリップ取付部82、84は、その周囲部に対して若干凹んでいる。
【0061】
複数のクリップ取付部82、84には、それぞれクリップ90が設けられている。複数のクリップ取付部82、84のうちクリップ取付部82は、一個のクリップ90を取り付けるための取付部であり、複数箇所(本実施形態では一例として三箇所)に設けられている。また、複数のクリップ取付部82、84のうちクリップ取付部84は、二個のクリップ90を取り付けるための取付部であり、複数箇所(本実施形態では一例として三箇所)に設けられている。
【0062】
図12には、
図11のa部の組み付け途中の状態を拡大した拡大斜視図が示されている。また、
図13には、クリップ取付部82の一部を拡大した拡大斜視図が示されている。
図12及び
図13に示されるように、クリップ取付部82、84には、シートバックフレーム70(
図11参照)に対向する部分にクリップ90の挿し込み用の矩形状の取付孔86が貫通形成されている。また、
図13に示されるように、取付孔86には、その開口縁から切り欠かれた誤組付け防止用の切欠部88が形成されている(
図12では図示省略)。切欠部88は、一例として、取付孔86の長手方向の中間部に形成され、取付孔86の長手方向と直交する方向に沿って延出された矩形状に形成されている。
【0063】
図12に示されるように、二個のクリップ90を取り付けるためのクリップ取付部84には、取付孔86として、第一取付孔86A(図中では、符号86の後に括弧書きで符号86Aを付す。)と、第二取付孔86B(図中では、符号86の後に括弧書きで符号86Bを付す。)と、が設けられている。第一取付孔86Aは、縦フレーム部12と横フレーム部14との接続部(継手部)に対向する部分の近傍において、横フレーム部14に対向する部分に貫通形成されている。これに対して、第二取付孔86Bは、縦フレーム部12と横フレーム部14との接続部に対向する部分の近傍において、縦フレーム部12に対向する部分に貫通形成されている。第一取付孔86A及び第二取付孔86Bに形成されている図示しない誤組付け防止用の切欠部(
図13の誤組付け防止用の切欠部88参照)は、
図12に示される第一取付孔86A及び第二取付孔86Bの互いの遠い側の長辺縁から切り欠かれている。
【0064】
図11に示される複数のクリップ取付部82、84に設けられるクリップ90は、シートバックフレーム70に背面側から係合されることによってバックボード80をシートバックフレーム70に取り付ける。
図12及び
図13に示されるように、クリップ90は、クリップ取付部82、84の背面側に配置される略板状の頭部92と、頭部92に連続して形成されたフレーム係合部94と、を備えている。フレーム係合部94は、第1の実施形態におけるクリップ30のフレーム係合部32(いずれも
図4参照)と同様の形状に形成されている。
【0065】
頭部92は、頂面側から見て、長方形から互いに隣り合う二つの角部が斜めに切除されて傾斜辺部92A、92Bとされたような略六角形状となっている。頭部92には、一方の傾斜辺部92Aの近傍二個の係合孔92Hが貫通形成されている。二個の係合孔92Hは、一方の傾斜辺部92Aの延在方向に沿う方向に並んでいる。また、頭部92には、他方の傾斜辺部92Bに沿って形成されて頂面が一段下がった低面部92Lが形成され、この低面部92Lからは二個のボス92X(広義には「突出部」として把握される要素)が突出形成されている。
図13に示されるように、ボス92Xは、一例として、すり割りされた形状とされる。二個のボス92Xは、傾斜辺部92Bの延在方向に沿う方向に並んでおり、二個のボス92X同士の間隔は、二個の係合孔92H同士の間隔と同様に設定されている。
【0066】
また、クリップ90の頭部92の頂面92Tには、クリップ90の組み付け時の向きの指標となる方向マーク92Mが形成されている。方向マーク92Mは、一例として、二等辺三角形に形成され、当該二等辺三角形は、一対の傾斜辺部92A、92B同士を繋ぐ短辺部92Cと平行な底辺を有すると共に短辺部92Cの延在方向中央部側を頂点が向くような形状とされている。
【0067】
また、クリップ90の頭部92には、短辺部92C側とは反対側の長辺部92D側の下面側にリブ92Rが形成されている。リブ92Rは、クリップ90が正しい向きで組み付けられた場合には切欠部88に挿し込まれ、クリップ90が正しくない向きで組み付けられた場合にはバックボード80の一部(取付孔86の周囲部)に当接するように設定されている。取付孔86に挿し込まれたクリップ90は、その一部を構成するフレーム係合部94がシートバックフレーム70(
図12参照)に係合される。
【0068】
次に、
図12に示されるクリップ取付部84に配置されるクリップ90がシートバックフレーム70に係合される構成について詳細に説明する。以下の説明においては、クリップ取付部84に配置されるクリップ90のうち、第一取付孔86Aを貫通して横フレーム部14の一部と係合されるクリップ90を第一クリップ90A(図中では、便宜上、符号90の後に括弧書きで90Aの符号を付す。)といい、第二取付孔86Bを貫通して縦フレーム部12の一部と係合されるクリップ90を第二クリップ90B(図中では、便宜上、符号90の後に括弧書きで90Bの符号を付す。)という。なお、本実施形態では、これまでの説明及び図面からも明らかなように、第一クリップ90Aと第二クリップ90Bとは、同形状に形成されている。
【0069】
第一クリップ90Aは、その組付方向に見て、方向マーク92Mが見える状態としかつ方向マーク92Mの指す方向がシートバックフレーム70の直近のコーナ部側を向く状態で、第一取付孔86Aに挿し込まれる。また、第二クリップ90Bは、その組付方向に見て、方向マーク92Mが見える状態としかつ方向マーク92Mの指す方向がシートバックフレーム70の直近のコーナ部側を向く状態で、第二取付孔86Bに挿し込まれる。
【0070】
図12に示される部分のクリップ取付部84では、第一取付孔86Aに挿し込まれた第一クリップ90Aのボス92Xは、第二取付孔86Bに挿し込まれる第二クリップ90Bの係合孔92Hに挿し込まれて係合されるようになっている(
図11の図中左上のクリップ取付部84も同様)。また、
図11の図中下側のシート幅方向中間部のクリップ取付部84では、
図12を援用して説明すると、
図12に示される第二クリップ90Bの右下の低面部92Lの上に第一クリップ90Aの一方の傾斜辺部92A側の部位が重ねられるような構成となっていて第二クリップ90Bのボス92Xが第一クリップ90Aの係合孔92Hに挿し込まれて係合されるようになっている。
【0071】
以上についてまとめると、第2の実施形態では、
図11に示されるように第一クリップ90A及び第二クリップ90Bは、それぞれの一部同士がバックボード80の背面80B側(バックボード80に対してシートバックフレーム70側とは反対側)でバックボード80の板厚方向に互いに重なり合うように配置されている。そして、バックボード80の背面80B側で第一クリップ90Aの一部と第二クリップ90Bの一部とが互いに係合するように構成されている。
【0072】
(作用・効果)
次に、第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0073】
図11に示されるように、第2の実施形態では、バックボード80に設けられたクリップ90が、パイプ材で構成されたシートバックフレーム70に背面側から係合されることによってバックボード80がシートバックフレーム70に取り付けられる。このため、第1の実施形態と同様に、シートバックフレーム70側にワイヤ本体及びブラケットを別途設ける必要がない。よって、第1の実施形態と同様に、質量の増加を抑えることが可能になると共に車両の後面衝突時にシートバック内への着座乗員の背中の入り込みを良好に実現することが可能になる。
【0074】
また、
図12に示されるように、第2の実施形態では、バックボード80のクリップ取付部84には、縦フレーム部12と横フレーム部14との接続部に対向する部分の近傍において横フレーム部14に対向する部分に第一取付孔86Aが形成されると共に縦フレーム部12に対向する部分に第二取付孔86Bが形成されている。そして、第一取付孔86Aを貫通する第一クリップ90Aが横フレーム部14の一部と係合され、第二取付孔86Bを貫通する第二クリップ90Bが縦フレーム部12の一部と係合される。さらに、
図11に示されるように、バックボード80の背面80B側で第一クリップ90Aの一部と第二クリップ90Bの一部とが互いに係合している。このため、第一クリップ90A及び第二クリップ90Bのがたつきが抑えられ、バックボード80を縦フレーム部12と横フレーム部14との接続部の近傍において強固に取り付けることができる。
【0075】
また、第2の実施形態では、第一クリップ90A及び第二クリップ90Bは、それぞれの一部同士がバックボード80の背面80B側でバックボード80の板厚方向に互いに重なり合うように配置されており、そのような状態で第一クリップ90Aの一部と第二クリップ90Bの一部とが互いに係合している。このため、第一クリップ90A及び第二クリップ90Bのがたつきが一層効果的に抑えられてバックボード80を縦フレーム部12と横フレーム部14との接続部の近傍においてより強固に取り付けることができるうえ、組み付け性も良い。
【0076】
また、第2の実施形態では、第一クリップ90Aと第二クリップ90Bとは、同形状に形成されている。このため、クリップ90の生産性の点で有利となる。
【0077】
さらに、
図13に示されるように、第2の実施形態では、バックボード80にクリップ90の挿し込み用として貫通形成された取付孔86には、その開口縁から切り欠かれた誤組付け防止用の切欠部88が形成されている。そして、クリップ90に形成されたリブ92Rは、クリップ90がバックボード80の取付孔86に正しい向きで挿し込まれた場合には切欠部88に挿し込まれ、クリップ90が取付孔86に正しくない向きに挿し込まれた場合には取付孔86の周囲部に当接する。このため、クリップ90の誤組付けを容易に防止することができる。
【0078】
誤組付けの防止について補足説明すると、
図12では図示が省略されているが、
図12に示される第一取付孔86A及び第二取付孔86Bにも、それぞれ
図13に示される切欠部88と同様の切欠部は形成されており、
図12に示される第一クリップ90A及び第二クリップ90Bにも、それぞれ
図13に示されるリブ92Rと同様のリブは形成されているので、
図12に示される第一クリップ90A及び第二クリップ90Bの誤組付けを容易に防止することができ、第一クリップ90Aの一部と第二クリップ90Bの一部とをより確実に係合させることができる。
【0079】
また、本実施形態では、第一クリップ90A及び第二クリップ90Bの各頭部92の頂面92Tには、クリップ組み付け時の向きの指標となる方向マーク92Mが形成されている。このため、第一クリップ90A及び第二クリップ90Bを正しい向きに組み付けることが容易になり、第一クリップ90Aの一部と第二クリップ90Bの一部とを容易に係合させることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、シートバックフレーム70の四隅のうちの三隅及び残りの一隅の近くにクリップ90が係合(嵌合)されているので、バックボード80の端部のばたつき及び異音の発生を効果的に軽減することができるうえ、シートバック後端部においてバックボード80の前側に隙ができにくく、見栄えを向上させることができる。
【0081】
[第2の実施形態の変形例]
なお、第2の実施形態では、
図11に示されるように、第一クリップ90A及び第二クリップ90Bは、それぞれの一部同士がバックボード80の背面80B側でバックボード80の板厚方向に互いに重なり合うように配置されており、そのような構成が好ましいが、そのような構成を備えない変形例として、バックボード(80)の背面(80B)側で第一クリップの一部(例えば背面視でクリップ頭部の外方側に突出する部分)と第二クリップの一部(例えば背面視でクリップ頭部の内方側に凹む部分)とが互いに係合するように構成されてもよい。
【0082】
また、第2の実施形態では、第一クリップ90Aと第二クリップ90Bとが同形状に形成されているが、第一クリップと第二クリップとが互いに異なる形状に形成されている、という構成も採り得る。
【0083】
また、第2の実施形態では、
図13に示されるように、バックボード80に貫通形成された取付孔86には誤組付け防止用の切欠部88が形成され、クリップ90には切欠部88に挿し込まれるリブ92Rが形成されているが、そのような切欠部88及びリブ92Rが形成されない構成も採り得る。
【0084】
[実施形態の補足説明]
なお、シートバックフレームの背面側に配置されるバックボードには、金属製(例えば鋼製、アルミ合金製等)のプレス成形品が適用されてもよい。
【0085】
また、
図1~
図13を用いて説明した上記第1、第2実施形態及び上述の複数の変形例では、クリップ30、31、64、90は、シートバックフレーム10、70のうちパイプ断面が潰されていない直線部に配置されており、クリップの種類を最適化するという観点からはそのような構成が好ましいが、シートバックフレームの曲げ部ないしは潰し部等に係合されるようなクリップが設けられてもよい。補足すると、クリップは、パイプ材で構成されたシートバックフレームの形状に合わせてフレーム係合部(フレーム係合部32、64B、94に相当する構成部)の形状を設定すれば、種々のシートバックフレームの種々の形状部(異形パイプ材で構成された部分を含む)に固定できる。
【0086】
なお、上記第1、第2実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0087】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
10 シートバックフレーム
12 縦フレーム部
14 横フレーム部
20 バックボード
30 クリップ
31 クリップ
50 バックボード
60 バックボード
64 クリップ
70 シートバックフレーム
80 バックボード
80B バックボードの背面
86A 第一取付孔
86B 第二取付孔
88 切欠部
90 クリップ
90A 第一クリップ(クリップ)
90B 第二クリップ(クリップ)
92 頭部
92T 頂面
92M 方向マーク
92R リブ