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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043433
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】繊維機械
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/08 20060101AFI20240322BHJP
   B65H 57/28 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B65H67/08 B
B65H57/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148626
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓之
【テーマコード(参考)】
3F110
3F112
【Fターム(参考)】
3F110CA05
3F110DA07
3F110DB18
3F112AA08
3F112CA03
3F112ED02
(57)【要約】
【課題】サクションマウス駆動部の位置が調整可能な繊維機械を提供する。
【解決手段】巻取ユニットは、糸巻取装置と、第2糸捕捉装置74と、を備える。糸巻取装置は、糸を巻き取ってパッケージを形成する。第2糸捕捉装置74は、パッケージから解舒された糸を引き出す。第2糸捕捉装置74は、捕捉パイプ74aと、サクションマウス74bと、を有する。捕捉パイプ74aは、細長く形成され、一端を回転中心C1として回転可能に設けられる。サクションマウス74bは、捕捉パイプ74aの回転中心C1から遠い側の端部に設けられる。巻取ユニットには、捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置を調整する位置調整機構93が設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取機構と、
前記パッケージから解舒された糸を引き出す糸引出し装置と、
を備え、
前記糸引出し装置は、
細長く形成されるとともに一端を回転中心として回転可能に設けられた本体部と、
前記本体部の前記回転中心から遠い側の端部に設けられた糸捕捉部と、
を有し、
前記本体部の前記回転中心の位置を調整する位置調整機構が設けられることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記糸巻取機構は、前記パッケージと接触して回転する接触ローラを備え、
前記位置調整機構は、前記本体部の回転中心の位置を移動させることにより、前記糸引出し装置の前記糸捕捉部が糸を捕捉する位置にあるときの当該糸捕捉部と前記接触ローラとの距離を調整することを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記位置調整機構は、前記本体部の回転中心を上下方向に移動させることを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記位置調整機構は、前記糸引出し装置と一体的に移動することを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記位置調整機構は、前記本体部の回転中心を移動させるレバー部材を備えることを特徴とする繊維機械。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維機械であって、
前記糸引出し装置には、前記レバー部材を取り付けるための穴が形成されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項7】
請求項5に記載の繊維機械であって、
前記レバー部材は細長く形成されるとともに回転可能に支持されており、
前記レバー部材の回転中心部に締付部材が配置され、
前記締付部材を締め付けることにより前記レバー部材の角度を保持可能であることを特徴とする繊維機械。
【請求項8】
請求項5に記載の繊維機械であって、
前記位置調整機構は、前記レバー部材の姿勢を変化させるレバー姿勢調整部材を備え、
前記レバー姿勢調整部材は締付部材なしで前記レバー部材へ装着可能であることを特徴とする繊維機械。
【請求項9】
請求項5に記載の繊維機械であって、
前記レバー部材は細長く形成されるとともに回転可能に支持されており、
前記レバー部材の回転中心部と異なる位置に、前記レバー部材の角度を保持する保持機構が設けられることを特徴とする繊維機械。
【請求項10】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記糸捕捉部が糸を捕捉する捕捉位置において、前記本体部の回転中心の移動に伴って位置が変更される前記糸捕捉部の位置を確認する治具が取付け可能であることを特徴とする繊維機械。
【請求項11】
請求項10に記載の繊維機械であって、
前記治具は目盛りを有することを特徴とする繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績された糸をパッケージに巻き取る糸巻取部を備える繊維機械が知られている。特許文献1は、この種の繊維機械を開示する。
【0003】
特許文献1の繊維機械は、紡績コップから解舒された糸を巻き返すことによって綾巻パッケージを製造する。この繊維機械は、旋回可能に支持されたサクションノズルを備える。巻返しが中断された後、サクションノズルは、パッケージに巻き上げられた糸の端部を受け取るために旋回される。
【0004】
特許文献1の繊維機械においては、旋回軌道においてサクションノズルが停止する位置を変化させることにより、糸を受け取るために停止したサクションノズルの吸引口と、綾巻パッケージと、の間の間隔を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-77970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、糸を受け取るために停止したサクションノズルの吸引口と、綾巻パッケージと、の間の間隔を調整するために、サクションノズルは旋回軌道に沿う方向で位置を変化させる。装置の材質、又は、各部分の取付けのための構成等により、上記の方向で位置を調整するだけでは、パッケージを形成する糸巻取部と、サクションノズルの吸引口と、の位置関係の精度が十分に達成できない場合があった。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、サクションマウス駆動部の位置を調整可能な繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の繊維機械が提供される。即ち、この繊維機械は、糸巻取機構と、糸引出し装置と、を備える。前記糸巻取機構は、糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸引出し装置は、前記パッケージから解舒された糸を引き出す。前記糸引出し装置は、本体部と、糸捕捉部と、を有する。前記本体部は、細長く形成され、一端を回転中心として回転可能に設けられる。前記糸捕捉部は、前記本体部の前記回転中心から遠い側の端部に設けられる。前記繊維機械には、前記本体部の前記回転中心の位置を調整する位置調整機構が設けられる。
【0010】
これにより、本体部の回転中心の位置(ひいては、糸捕捉部の捕捉位置)を適切な位置に調整することができる。
【0011】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸巻取機構は、前記パッケージと接触して回転する接触ローラを備える。前記位置調整機構は、前記本体部の回転中心の位置を移動させることにより、前記糸引出し装置の前記糸捕捉部が糸を捕捉する位置にあるときの当該糸捕捉部と前記接触ローラとの距離を調整する。
【0012】
これにより、本体部の回転中心を調整することで、接触ローラに対するサクションマウスの位置を容易に調整することができる。前記糸捕捉部が糸を捕捉する位置にあるときのパッケージとサクションマウスの位置を調整する技術は従来から知られているが、これに加えて接触ローラに対するサクションマウスの位置を調整することにより、サクションマウスの位置をより正確に決定することができる。
【0013】
前記の繊維機械においては、前記位置調整機構は、前記本体部の回転中心を上下方向に移動させることが好ましい。
【0014】
これにより、糸捕捉部の旋回軌道全体の高さを調整することができる。
【0015】
前記の繊維機械においては、前記位置調整機構は、前記糸引出し装置と一体的に移動することが好ましい。
【0016】
これにより、糸引出し装置と位置調整機構とを製造時にまとめて取り扱うことができる。従って、製造工数を減らすことができる。
【0017】
前記の繊維機械においては、前記位置調整機構は、前記本体部の回転中心を移動させるレバー部材を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、本体部の回転中心の位置調整を簡素な構成で行うことができる。
【0019】
前記の繊維機械においては、前記糸引出し装置には、前記レバー部材を取り付けるための穴が形成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、レバー部材を糸引出し装置に容易に取り付けることができる。
【0021】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記レバー部材は細長く形成されるとともに回転可能に支持されている。前記レバー部材の回転中心部に締付部材が配置される。前記締付部材を締め付けることにより前記レバー部材の角度を保持可能である。
【0022】
これにより、必要に応じて、本体部の回転中心が移動しないように固定することができる。
【0023】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記位置調整機構は、前記レバー部材の姿勢を変化させるレバー姿勢調整部材を備える。前記レバー姿勢調整部材は締付部材なしで前記レバー部材へ装着可能である。
【0024】
これにより、レバー姿勢調整部材を容易に取り外すことができる。レバー姿勢調整部材を例えば複数の繊維機械で共用することにより、部品の費用を削減することができる。
【0025】
前記の繊維機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記レバー部材は細長く形成されるとともに回転可能に支持されている。前記レバー部材の回転中心部と異なる位置に、前記レバー部材の角度を保持する保持機構が設けられる。
【0026】
これにより、簡単な構成で、本体部の回転中心が移動しないように固定することができる。
【0027】
前記の繊維機械においては、前記糸捕捉部が糸を捕捉する捕捉位置において、前記本体部の回転中心の移動に伴って位置が変更される前記糸捕捉部の位置を確認する治具が取付け可能であることが好ましい。
【0028】
これにより、接触ローラに対する糸捕捉部の位置を容易に確認することができる。
【0029】
前記の繊維機械において、前記治具は目盛りを有することが好ましい。
【0030】
これにより、糸捕捉部の位置を一層正確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの構成を示す斜視図。
図2】自動ワインダに備えられる巻取ユニットの構成の一例を模式的に示す図。
図3】第2糸捕捉装置の構成を示す斜視図。
図4】第2糸捕捉装置の取付けを示すイメージ図。
図5】位置調整機構の構成の一部を示す拡大図。
図6】捕捉パイプの根元側の位置変化を説明する図。
図7】サクションマウスの位置を確認する治具の構成を示す斜視図。
図8】治具の周辺を拡大して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ1の構成を示す斜視図である。図2は、自動ワインダ1に備えられる巻取ユニット4の構成の一例を模式的に示す側面図である。図3は、第2糸捕捉装置74の構成を示す斜視図である。
【0033】
自動ワインダ1は、メインフレーム2と、複数の巻取ユニット(繊維機械)4,4,・・・と、図示しない機台制御部と、を備える。巻取ユニット4は1列に並べて配置され、それぞれメインフレーム2に取り付けられる。
【0034】
巻取ユニット4,4,・・・は、正面視で左右方向に並べて配置されている。それぞれの巻取ユニット4は、その給糸交換部3にセットされた給糸ボビン6又は図示しない給糸パッケージから糸を解舒する。それぞれの巻取ユニット4は、解舒された糸を巻き取る。これにより、それぞれの巻取ユニット4においてパッケージ9が形成される。
【0035】
機台制御部は、メインフレーム2の、複数の巻取ユニット4,4,・・・が並べられた方向の一端に配置される。機台制御部は、各巻取ユニット4に備えられるユニットコントローラ90と通信することにより、巻取ユニット4,4,・・・を統括的に制御する。オペレータは、機台制御部に適宜の指示を入力することにより、複数の巻取ユニット4を一括して管理することができる。
【0036】
次に、巻取ユニット4の構成について、図2を参照してより具体的に説明する。図2は、自動ワインダ1の巻取ユニット4の構成の一例を模式的に示す側面図である。
【0037】
図2に示すように、巻取ユニット4は、糸巻取部5と、糸処理部10と、を備える。垂直方向において、糸巻取部5はメインフレーム2の上部に配置される。垂直方向において、糸処理部10は、糸巻取部5の下方に配置される。糸処理部10は、給糸交換部3と、糸継部8と、を備える。給糸交換部3は、糸処理部10の下部に配置される。糸継部8は、糸巻取部5と給糸交換部3との間に配置される。
【0038】
このように、巻取ユニット4は、モジュール分割式のユニットであって、下から順に配置された給糸交換部3と、糸継部8と、糸巻取部5と、の3つのモジュールを組み合わせて構成される。給糸交換部3、糸継部8及び糸巻取部5に取り付けられる各装置は、何れも、モジュールとして、メインフレーム2に対して着脱可能に設けられている。
【0039】
給糸交換部3は、糸処理部10の一部である。給糸交換部3は、パッケージ9に巻き返すための糸を供給する給糸ボビン6(又は給糸パッケージ)が交換可能にセットされる部分である。給糸交換部3は、メインフレーム2の底板部12に載置されるようにして、メインフレーム2の下部に取り付けられる。
【0040】
給糸交換部3は、複数の形式の給糸交換装置のうちの何れかを選択的に取り付けることにより構成される。具体的には、本実施形態の給糸交換部3には、マガジン式のボビン供給装置、トレイ式のボビン供給装置30、及びパッケージ供給装置の中から、何れか1つを取り付けることが可能である。
【0041】
糸継部8は、糸処理部10の一部である。糸継部8は、給糸交換部3から糸巻取部5へ供給される糸を繋ぎ合わせる部分である。糸継部8は、メインフレーム2の上下方向中間部に取り付けられる。具体的にいうと、糸継部8がメインフレーム2に取り付けられる位置は、給糸交換部3が設けられる位置よりも上方であり、かつ、糸巻取部5が取り付けられる位置よりも下方である。糸継部8は、例えば、適宜の固定部材(例えば、ボルト)によって、メインフレーム2の前面側に取り付けられる。糸継部8がメインフレーム2に固定された状態において、糸継部8の重量は、メインフレーム2が備える支持軸14によって支持されている。
【0042】
以下、これらの3つのモジュールの組合せの一例を用いて構成された巻取ユニット4について、詳細に説明する。
【0043】
図2に示す巻取ユニット4は、糸巻取部5にアームトラバース式の糸巻取装置(糸巻取機構)60を、給糸交換部3に搬送トレイ式のボビン供給装置30を、糸継部8にサクションマウス式の糸継メカニズム70を、それぞれ取り付けて構成される。
【0044】
糸巻取装置60は、巻取ボビン61と、図示しない巻取ボビン回転駆動源と、クレードル62と、接触ローラ63と、糸巻取フレーム64と、トラバースアーム67と、トラバース駆動モータ66と、を備える。
【0045】
クレードル62は、巻取ボビン61を回転可能に支持する。巻取ボビン61は、巻取ボビン回転駆動源の出力軸に連結され、回転駆動される。トラバースアーム67は、トラバース駆動モータ66によって往復旋回駆動される。
【0046】
接触ローラ63は、回転可能に糸巻取フレーム64に支持されている。接触ローラ63の軸方向の一端部が、糸巻取フレーム64に取り付けられている。接触ローラ63は、巻取ボビン61の周面に接触して回転可能である。接触ローラ63は、例えば、糸巻取フレーム64に固定された図示しない支持アーム等に回転可能に取り付けられても良い。
【0047】
糸巻取フレーム64の左右方向一側には、糸巻取装置60の各種装置が配置される。各種装置は、クレードル62、巻取ボビン回転駆動源、及びトラバース駆動モータ66等を含む。トラバースアーム67は、トラバース駆動モータ66によって往復旋回駆動される。
【0048】
トラバースアーム67は、トラバース駆動モータ66のロータが正逆回転を繰り返すことにより、往復旋回運動を行う。これにより、トラバースアーム67の先端に引っ掛けられている糸は、トラバースされながら接触ローラ63側へ供給され、回転する巻取ボビン61に巻き取られる。これにより、給糸ボビン6の糸を巻き返したパッケージ9を形成することができる。
【0049】
ボビン供給装置30は、ボビンセット部31と、糸解舒補助装置39と、支持体38と、を備える。
【0050】
ボビンセット部31は、糸を解舒するための給糸ボビン6を、立てた姿勢で、所定の位置で保持することが可能である。糸解舒補助装置39は、給糸ボビン6の上部に形成されるバルーンに対して可動部材を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸の解舒を補助する。支持体38は、糸解舒補助装置39をボビンセット部31の上方の位置に支持する。ボビンセット部31の底部が底板部12の上に載置された状態で、ボビンセット部31(ひいては、搬送トレイ式のボビン供給装置30)がメインフレーム2に取り付けられる。
【0051】
サクションマウス式の糸継メカニズム70は、糸監視装置71と、スプライサ72と、第1糸捕捉装置73と、第2糸捕捉装置(糸引出し装置)74と、テンション付与装置75と、糸継フレーム76と、を備える。
【0052】
糸継フレーム76は、縦方向に細長い概ね直方体状の部材である。糸継フレーム76の左右一側には、糸監視装置71と、スプライサ72と、第1糸捕捉装置73と、第2糸捕捉装置74と、テンション付与装置75と、が配置される。糸継フレーム76は、これらの部材を片持ち支持している。
【0053】
糸継フレーム76は、上記の各部を支持した状態で、メインフレーム2の上下方向中間部に取り付けられる。糸継フレーム76は、隣接する巻取ユニット4の糸継部8との間を仕切るように、糸巻取フレーム64と左右方向で位置を合わせて配置される。糸巻取フレーム64と糸継フレーム76とは直接的には接続されておらず、互いの間に(上下方向に)空間としての隙間が形成されている。
【0054】
糸継フレーム76の内部には、ユニットコントローラ90等が配置されている。ユニットコントローラ90は、巻取ユニット4の各部を制御するための制御部として機能する。
【0055】
糸監視装置71は、糸の太さを監視することにより、糸に生じるスラブ等の欠陥(以下、糸欠陥と称することがある。)を検出する。糸監視装置71の近傍には、当該糸監視装置71が糸欠陥を検出したときに直ちに糸を切断するためのカッタが配置されている。
【0056】
スプライサ72は、糸監視装置71が糸欠陥を検出してカッタで糸を切断する糸切断時、給糸ボビン6から解舒中の糸の糸切れ時、又は給糸ボビン6の交換時等に、給糸交換部3側の糸と、糸巻取部5側の糸とを繋ぎ合わせる。本実施形態のスプライサ72においては、図略のコンプレッサからの圧縮空気が供給されることにより糸の撚り合わせ等が行われ、これにより糸継ぎが行われる。
【0057】
スプライサ72の下側及び上側には、第1糸捕捉装置73と、第2糸捕捉装置74と、が設けられている。第1糸捕捉装置73は、給糸交換部3側の糸を吸引捕捉して案内する。第2糸捕捉装置74は、糸巻取部5側の糸を吸引捕捉して案内する。第1糸捕捉装置73の先端には吸引口が形成され、第2糸捕捉装置74の先端にはサクションマウス(糸捕捉部)74bが備えられている。第1糸捕捉装置73及び第2糸捕捉装置74は、配管等を介して、ブロアダクト13の開口13aに接続されている。これにより、吸引口及びサクションマウス74bに吸引流を発生させることができる。
【0058】
この構成で、給糸ボビン6の交換時等においては、第1糸捕捉装置73の吸引口が下方へ回動して給糸交換部3側の糸を捕捉し、その後、上方へ回動することでスプライサ72まで糸を案内する。また、これとほぼ同時に、第2糸捕捉装置74のサクションマウス74bが、逆転駆動されるパッケージ9から解舒される糸を捕捉し、その後、下方へ回動することでスプライサ72まで糸を案内する。そして、スプライサ72において、給糸交換部3からの糸とパッケージ9からの糸の糸継ぎが行われる。
【0059】
以下、第2糸捕捉装置74において、サクションマウス74bがパッケージ9の表面に吸引流を作用させるときのサクションマウス74bの位置を、サクションマウス74bの「捕捉位置」と呼ぶことがある。パッケージ9の表面に対して良好に吸引流を作用させて糸の捕捉成功率を向上させるために、パッケージ9に対するサクションマウス74bの位置関係を正確にすることが重要である。
【0060】
続いて、本実施形態の巻取ユニット4における第2糸捕捉装置74の構成について詳細に説明する。図3は、第2糸捕捉装置74の構成を示す斜視図である。図4は、第2糸捕捉装置74の取付けを示す分解斜視図である。
【0061】
第2糸捕捉装置74は、捕捉パイプ(本体部)74aと、サクションマウス74bと、駆動モータ74cと、ケーシング74dと、を備える。
【0062】
捕捉パイプ74aは、上下旋回可能にケーシング74dに支持される。捕捉パイプ74aのうち旋回中心から遠い側の端部には、サクションマウス74bが取り付けられている。以降の説明において、捕捉パイプ74aのうちサクションマウス74bが配置されている側を「先端側」と称し、旋回中心に近い側を「根元側」と称する。
【0063】
捕捉パイプ74aの旋回運動に伴って、サクションマウス74bは図2の実線に示す待機位置から図2の鎖線に示す捕捉位置まで回転することができる。即ち、サクションマウス74bは、捕捉パイプ74aの根元側を中心として旋回する。捕捉パイプ74aは剛性を有する部材から構成されている。従って、捕捉パイプ74aの根元側端部(ひいては、回転中心C1)からサクションマウス74bまでの距離は、捕捉パイプ74aの姿勢にかかわらず一定である。
【0064】
捕捉パイプ74aは、図示しない配管等を介して、ブロアダクト13の開口13aに接続されている。捕捉パイプ74aは、糸を吸引する吸引流が流れる経路を構成する。これにより、サクションマウス74bの開口部に吸引流を作用させることができる。
【0065】
駆動モータ74cは、捕捉パイプ74aを旋回させるための動力を供給する。駆動モータ74cは、捕捉パイプ74aの根元部よりも下方において、ケーシング74dに固定される。なお、駆動モータ74cが取り付けられる位置は特に限定されない。
【0066】
ケーシング74dは、薄いカバー状に形成されている。ケーシング74dは、例えば金属のプレス品として構成することができるが、ケーシング74dの素材は限定されない。例えば、合成樹脂により形成することもできる。図3に示すように、ケーシング74dの厚み方向における一側の面には、捕捉パイプ74aが旋回可能に取り付けられている。
【0067】
ケーシング74dは、適宜の締付部材(例えばボルト92、ネジ等)を介して、糸継フレーム76の左右一側に取り付けられる。これにより、ケーシング74dと糸継フレーム76との間には、収容スペースが形成される。図示しないが、この収容スペースには、捕捉パイプ74aを旋回させるための歯車、及び、駆動モータ74cからの動力を歯車に伝達するベルト等が配置される。
【0068】
図4に示すように、ケーシング74dには、位置決め穴74eと、複数の第1取付穴74fと、が形成されている。位置決め穴74e及び第1取付穴74fは、ケーシング74d(即ち第2糸捕捉装置74)を糸継フレーム76に取り付けるために用いられる。加えて、ケーシング74dには、通過穴74g及びレバー穴74kが形成されている。通過穴74gには、後述する基準ピン95が差し込まれる。レバー穴74kには、後述する伝達レバー94が取り付けられる。
【0069】
これに対応して、本実施形態の巻取ユニット4において、糸継フレーム76には、位置決めピン76aと、基準ピン穴76bと、複数の第2取付穴76cと、が形成されている。複数の第2取付穴76cは、図4に示す前後方向及び上下方向(即ち垂直方向)における複数位置に形成されることが好ましい。
【0070】
位置決めピン76a及び第2取付穴76cは、第2糸捕捉装置74を糸継フレーム76へ取り付けるために用いられる。基準ピン穴76bは、ケーシング74dの姿勢の変更を通じて、捕捉パイプ74aの旋回中心の位置を変更するために用いられる。
【0071】
位置決め穴74eはケーシング74dに設けられた穴であり、位置決めピン76aは円柱状のピンである。位置決め穴74eの内径は位置決めピン76aの外径と実質的に等しい。第2糸捕捉装置74を糸継フレーム76に取り付けるとき、位置決めピン76aは、ケーシング74dの位置決め穴74eに挿入される。位置決めピン76aは、ケーシング74dの姿勢を糸継フレーム76に対して変更する際の中心軸となる。
【0072】
第1取付穴74fは、第2取付穴76cに対応した位置に形成されている。第1取付穴74fは、ボルト92の軸部の太さよりやや大きく形成されている。これにより、糸継フレーム76に対するケーシング74dのある程度の位置調整が許容される。第1取付穴74fは、ボルト92の軸部に相当する円より大きければ、長穴、丸穴の何れに形成されても良い。
【0073】
位置決めピン76aが位置決め穴74eに挿入されることにより、糸継フレーム76に対して第2糸捕捉装置74のケーシング74dが回転可能に支持される。言い換えれば、位置決めピン76aは、ケーシング74dの固定のための基準点として機能する。位置決めピン76aを中心として、適切な位置までケーシング74dを回転させた状態で、ボルト92等を第1取付穴74fに差し込んで第2取付穴76cに締め付ける。これにより、第2糸捕捉装置74が糸継フレーム76に取り付けられる。
【0074】
通過穴74gは、長穴として形成されている。本実施形態において、通過穴74gは、基準ピン95が支点ボルト92aを中心として相対的に旋回する軌跡に対して、十分大きく形成されている。
【0075】
続いて、第2糸捕捉装置74の位置(ひいては、捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置)を調整するための位置調整機構93について、図4及び図5等を参照して詳細に説明する。図5は、位置調整機構93の構成の一部を示す拡大図である。
【0076】
位置調整機構93は、図4に示すように、伝達レバー(レバー部材)94と、基準ピン95と、操作レバー(レバー姿勢調整部材)96と、を備える。伝達レバー94及び操作レバー96は、図4に示すように、ケーシング74dの厚み方向(糸継フレーム76の左右方向)において、糸継フレーム76とは反対側の面に設けられている。ケーシング74dに伝達レバー94及び操作レバー96が取り付けられる面は、ケーシング74dから捕捉パイプ74aの根元部が突出する側の面ということもできる。
【0077】
伝達レバー94は、細長い板状に形成されている。伝達レバー94の長手方向一端側には、基準ピン95が固定されている。伝達レバー94の長手方向において、基準ピン95と反対側には突起が形成されている。この突起には、操作レバー96が装着される。以下の説明においては、伝達レバー94の長手方向において基準ピン95に近い側を「基準ピン側」と称し、操作レバー96が取り付けられる側を「操作受入側」と称する。
【0078】
伝達レバー94の長手方向中央部は、支点ボルト92aを介してケーシング74dに取り付けられている。支点ボルト92aは、ケーシング74dに形成されたレバー穴74kに固定される。これにより、伝達レバー94は、支点ボルト92aの軸を中心として回転可能にケーシング74dに支持される。
【0079】
支点ボルト92aは、伝達レバー94をケーシング74dに対して連結するが、ケーシング74dと糸継フレーム76の間の連結には関与しない。支点ボルト92aはケーシング74dにネジ結合しており、締め付けることで、伝達レバー94が回転しないように角度を保持することができる。
【0080】
図4及び図5に示すように、巻取ユニット4(糸継フレーム76)の前後方向において、支点ボルト92aは、捕捉パイプ74aの根元側端部より後方に位置している。回転中心である支点ボルト92aを基準として、基準ピン側は後下方に位置し、操作受入側は前上方に位置する。
【0081】
基準ピン95は、丸棒状の部材である。基準ピン95は、伝達レバー94の厚み方向(糸継フレーム76の左右方向)において、伝達レバー94から糸継フレーム76に向かって突出する。基準ピン95は、ケーシング74dに形成された通過穴74gを通過して、糸継フレーム76に形成された基準ピン穴76bに挿入される。
【0082】
これにより、伝達レバー94が支点ボルト92aの軸を中心として回転するとき、基準ピン95は、支点ボルト92aの軸を中心とする円弧状の軌道に沿って相対移動する。この円弧の半径は、支点ボルト92aの軸と基準ピン95の軸との間の距離に等しい。通過穴74gは基準ピン95に対して十分な遊びを有しているので、基準ピン95が軌道に沿って移動しても通過穴74gに接触することはない。
【0083】
第2糸捕捉装置74が糸継フレーム76に取り付けられるとき、当該基準ピン95は、糸継フレーム76に形成された基準ピン穴76bに挿入される。基準ピン穴76bは、前後方向に細長い穴として形成されている。基準ピン穴76bの上下方向の寸法は、基準ピン95の外径と実質的に等しい。
【0084】
基準ピン95の高さの変更は、基準ピン穴76bによって規制される。従って、伝達レバー94の回転に伴って基準ピン95が支点ボルト92aに対して相対上昇する場合、支点ボルト92aが基準ピン穴76bに対して押し下げられる。伝達レバー94の回転に伴って基準ピン95が支点ボルト92aに対して相対下降する場合、支点ボルト92aが基準ピン穴76bに対して押し上げられる。これにより、ケーシング74dが位置決めピン76aを中心として回転し、その姿勢を変更することができる。
【0085】
操作レバー96は、概ね前後方向に細長い板状に形成されている。操作レバー96は、捕捉パイプ74aの根元側端部の上方を通過するように配置されている。操作レバー96は、ケーシング74dにおいて伝達レバー94が取り付けられる側の面に配置されている。操作レバー96は、ケーシング74dの面に沿うように配置されている。本実施形態の操作レバー96は、捕捉パイプ74aの根元側端部に対して上方に迂回する円弧状の部分を有している。しかし、操作レバー96の形状は限定されない。
【0086】
図4等に示すように、操作レバー96は、糸継フレーム76(即ち、ケーシング74d)の前後方向に延びるように設けられている。
【0087】
長手方向における操作レバー96の一端側(図4に示す後端側)は、厚み方向で見た場合、U字状に形成される。このU字状の部分の凹部には、伝達レバー94の操作受入側が嵌められる。操作レバー96が伝達レバー94に装着された状態では、操作レバー96の角度が変化するのに伴って、伝達レバー94の角度も一体的に変化する。以下の説明においては、操作レバー96の長手方向において伝達レバー94と連結する側を「連結側」と称する。
【0088】
操作レバー96の長手方向において、伝達レバー94から遠い側(図4に示す前側)の端部は、図4に示す固定ピン96aが設けられている。以下の説明においては、操作レバー96の当該側を「操作側」と称する。作業者は、操作レバー96の操作側を手で上下方向に押すことにより、操作レバー96の角度を変更することができる。
【0089】
操作レバー96の固定ピン96aに対応して、ケーシング74dには、複数の固定ピン穴74hが形成されている。固定ピン穴74hは、図4等に示すように、ケーシング74dの前端側において、上下方向に並べて形成されている。固定ピン96aは、複数から選択された1つの固定ピン穴74hに差し込むことができる。これにより、操作レバー96の操作側を、上下方向における異なる位置で保持することができる。
【0090】
このように、操作レバー96の連結側が伝達レバー94の操作受入側と嵌合し、操作側が、固定ピン96aが固定ピン穴74hに挿入することにより保持される。操作レバー96の連結側は伝達レバー94に対して着脱可能であり、操作側もケーシング74dに対して着脱可能である。即ち、操作レバー96をケーシング74dから容易に取り外すことができる。
【0091】
前述のとおり、ケーシング74dは、位置決めピン76aを中心として回転可能である。伝達レバー94に装着された状態の操作レバー96の姿勢は、ケーシング74dの姿勢と1対1で対応する。従って、実質的に言えば、位置決めピン76aと固定ピン穴74hを用いることにより、ケーシング74dの姿勢を複数段階の異なる位置で保持することができる。
【0092】
位置調整機構93を構成する伝達レバー94及び支点ボルト92a等の部品は、ケーシング74dに取り付けられている。従って、位置調整によって第2糸捕捉装置74が上下方向に移動すると、それに伴って位置調整機構93も上下方向に移動する。位置調整機構93は、第2糸捕捉装置74に取り付けられた形で、第2糸捕捉装置74と一体的に取り扱うことができる。従って、組立工数を減らすことができる。
【0093】
続いて、図5図6及び図7を参照して、第2糸捕捉装置74の姿勢の調整(ひいては、捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置の調整)について、詳細に説明する。図6は、捕捉パイプ74aの根元側端部の位置変化を示す図である。図7は、サクションマウス74bと接触ローラ63との相対位置変化を示す斜視図である。
【0094】
本実施形態において、捕捉パイプ74aの回転中心C1(根元側端部)の位置調整は、第2糸捕捉装置74が糸継フレーム76に取り付けられている状態で行われる。
【0095】
具体的に説明すると、作業者は先ず、伝達レバー94に操作レバー96を装着する。このとき、通常、操作レバー96の固定ピン96aの位置は、複数の固定ピン穴74hのうち何れかと一致している。作業者は、操作レバー96の固定ピン96aを、位置が一致している固定ピン穴74hに差し込んだ状態とする。
【0096】
次に、作業者は、支点ボルト92aを緩める。これにより、伝達レバー94が自由に回転できる状態になる。
【0097】
続いて、作業者は、ケーシング74dを糸継フレーム76に固定するための複数のボルト92(本実施形態においては3つ)を緩める。ケーシング74dの固定が失われても、操作レバー96の位置が固定ピン96a及び固定ピン穴74hによって保持されているので、ケーシング74dの姿勢が自重で変化することはない。
【0098】
その後、作業者は、操作レバー96が伝達レバー94に連結された状態を維持しつつ、操作側だけをケーシング74dから離すように少し動かす。これにより、固定ピン96aと固定ピン穴74hの連結が解除される。この状態で、作業者は、操作レバー96の操作側の上下位置を変更する。
【0099】
上述のとおり、操作レバー96が押し上げられた場合、基準ピン穴76bに対して支点ボルト92aが相対上昇する。従って、ケーシング74dは、押し上げられるようにして、位置決めピン76aを中心として回転する。この結果、捕捉パイプ74aの根元側端部の高さが上昇する。
【0100】
図6の左側には押上げ前の状態が、右側には押上げ後の状態が、それぞれ示されている。最も下の固定ピン穴74hから最も上の固定ピン穴74hまで操作レバー96を上昇させることにより、捕捉パイプ74aの回転中心C1は、距離L1だけ上昇する。厳密に言えば、捕捉パイプ74aの回転中心C1は、位置決めピン76aを中心とする円弧を描いて移動する。しかしながら、実質的には、捕捉パイプ74aの回転中心C1の移動軌跡は上下方向の直線とみなすことができる。
【0101】
操作レバー96が押し下げられた場合、基準ピン穴76bに対して支点ボルト92aが相対下降する。従って、ケーシング74dは、押し下げられるようにして、位置決めピン76aを中心として回転する。この結果、捕捉パイプ74aの根元側端部の高さが下降する。
【0102】
操作レバー96及び伝達レバー94は、支点ボルト92aを支点とする梃子として機能する。従って、操作レバー96を大きく動かしても、第2糸捕捉装置74の高さを細かく調整することができるので、作業が円滑である。
【0103】
捕捉パイプ74aを良好な高さに調整した後、作業者は、操作レバー96が伝達レバー94に連結された状態を維持しつつ、操作側だけをケーシング74dへ近づけるように少し動かす。これにより、変更後のレバー角度で、固定ピン96aと固定ピン穴74hが再び連結される。この状態で作業者がケーシング74dから手を離しても、ケーシング74dの姿勢が自重で変化することはない。
【0104】
この状態で、作業者は、複数のボルト92を締め付け、ケーシング74dを糸継フレーム76に固定する。その後、支点ボルト92aが締め付けられた後、操作レバー96が伝達レバー94から取り外される。以上により、第2糸捕捉装置74の高さの調整が完了する。
【0105】
捕捉パイプ74aの根元側端部の高さが変更されれば、これに伴って、前述のサクションマウス74bの捕捉位置の高さも変更される。図7の上向き矢印は、捕捉パイプ74aの根元側端部が上昇した結果、サクションマウス74bの捕捉位置が接触ローラ63(接触ローラ63の回転軸)に対して上方に移動する例を示している。捕捉パイプ74aの根元側端部が下降すれば、捕捉位置は接触ローラ63に対して下方へ移動する。図7においては、調整作業のためにクレードル62からパッケージ9が取り外されており、パッケージ9は描かれていないが、クレードル62にパッケージ9を取り付けたまま調整することも可能である。このように、位置調整機構93は、実質的に、捕捉位置の高さ調整機構として機能する。
【0106】
サクションマウス74bの捕捉位置は、捕捉パイプ74aの根元側端部(回転中心C1)を中心とした円弧に沿って変更することもできる。この変更は、捕捉パイプ74aの旋回が停止するようにユニットコントローラ90が駆動モータ74cを制御する角度の設定を、ソフトウェア的に変更することによって実現される。本実施形態において、実質的には、サクションマウス74bの捕捉位置の上下方向の調整が位置調整機構93によって実現され、前後方向の調整がソフトウェアの設定により実現される。これにより、自由度の高い位置調整作業を実現できる。
【0107】
本実施形態においては、1つの巻取ユニット4を構成する糸継部8と糸巻取部5は物理的に別のモジュールであり、メインフレーム2に対して個別に固定される。従って、異なる巻取ユニット4の間で、糸巻取部5と糸継部8との相対位置に差が生じる場合が多くなる傾向がある。この場合でも、本実施形態では捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置を高さ方向で調整できるので、サクションマウス74bと接触ローラ63との間隔を巻取ユニット4同士の間で揃えることが容易である。この結果、複数の巻取ユニット4から構成された自動ワインダ1において、各巻取ユニット4の効率及び生産品質のバラツキを減らすことができる。
【0108】
図7に示すように、巻取ユニット4には、捕捉位置におけるサクションマウス74bの位置を確認する治具68を取り付けることができる。
【0109】
治具68は、図7及び図8に示すように、ベース部材68aと、目盛り部材68bと、を備える。
【0110】
ベース部材68aは、水平な板状に形成されている。ベース部材68aの底面に、下側に突出する2つの取付ピン68eが固定されている。当該2つの取付ピン68eは、図7に示す左右方向に間隔を開けて設けられている。
【0111】
糸巻取フレーム64の上面には、治具を装着するための平坦なマウント面が形成されている。2つの取付ピン68eに対応して、マウント面には2つの取付穴64aが形成されている。ベース部材68aの取付ピン68eを当該2つの取付穴64aに挿入することにより、治具68が糸巻取フレーム64の上部に着脱可能に取り付けられる。マウント面がベース部材68aの底面に接触することにより、高さ方向における治具68の位置決めが行われる。
【0112】
目盛り部材68bは、板状の部材として形成されている。目盛り部材68bは、図示しないボルト等を介して、ベース部材68aの前面に固定されている。目盛り部材68bは、ベース部材68aから水平方向に一側へ延びる部分を有している。
【0113】
目盛り部材68bは、その厚み方向が、図7に示す前後方向と一致するように設けられている。目盛り部材68bの厚み方向一方側の面には、2種類の目盛り68c,68dが付されている。以下、目盛り部材68bにおいて目盛りが付されている面を目盛り面と呼ぶことがある。サクションマウス74bが捕捉位置付近に位置するとき、先細り状に形成されているサクションマウス74bの先端部が、目盛り面と対面する。
【0114】
目盛り68cは、図7及び図8に示す左右方向に延びる複数の溝から構成される。当該複数の溝は、上下方向において、等間隔をあけて並べて形成されている。
【0115】
目盛り68dは、複数の丸穴から構成される。目盛り68dは、目盛り68cの上方に配置される。目盛り68dを構成する複数の穴は、上下方向において、等間隔をあけて複数列(本実施形態においては2列)に並べて形成されている。
【0116】
図7に示すように、治具68が糸巻取フレーム64に取り付けられているとき、目盛り部材68bの一部は、接触ローラ63の上方で近接している。目盛り68c,68dは、目盛り部材68bのうち、接触ローラ63の上方に位置する部分に付されている。目盛り部材68bのうち接触ローラ63の上方にある部分は、捕捉位置にあるサクションマウス74b、又は、移動する途中のサクションマウス74bと接触可能である。
【0117】
この構成により、サクションマウス74bの吸引口と、接触ローラ63と、の相対位置を容易且つ正確に確認することができる。
【0118】
以上に説明したように、本実施形態の巻取ユニット4は、糸巻取装置60と、第2糸捕捉装置74と、位置調整機構93と、を備える。糸巻取装置60は、糸を巻き取ってパッケージ9を形成する。第2糸捕捉装置74は、パッケージ9から解舒された糸を引き出す。第2糸捕捉装置74は、捕捉パイプ74aと、サクションマウス74bと、を有する。捕捉パイプ74aは、細長く形成され、一端を回転中心C1として回転可能に設けられる。サクションマウス74bは、捕捉パイプ74aの回転中心C1から遠い側の端部に設けられる。巻取ユニット4には、捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置を調整する位置調整機構93が設けられる。
【0119】
これにより、捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置(ひいては、サクションマウス74bの捕捉位置)を適切な位置に調整することができる。
【0120】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、糸巻取装置60は、接触ローラ63を備える。接触ローラ63は、パッケージ9と接触して回転する。位置調整機構93は、捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置を移動させることにより、サクションマウス74bが糸を捕捉する位置にあるときの当該サクションマウス74bと、接触ローラ63と、の距離を調整する。
【0121】
これにより、捕捉パイプ74aの回転中心C1を調整することで、接触ローラ63に対するサクションマウス74bの位置を容易に調整することができる。
【0122】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、位置調整機構93は、捕捉パイプ74aの回転中心C1を上下方向に移動させる。
【0123】
これにより、サクションマウス74bの旋回軌道全体の高さを調整することができる。
【0124】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、位置調整機構93は、第2糸捕捉装置74と一体的に移動する。
【0125】
これにより、第2糸捕捉装置74と位置調整機構93とを製造時にまとめて取り扱うことができる。従って、製造工数を減らすことができる。
【0126】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、位置調整機構93は、捕捉パイプ74aの回転中心C1を移動させる伝達レバー94を備える。
【0127】
これにより、捕捉パイプ74aの回転中心C1の位置調整を簡素な構成で行うことができる。
【0128】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、第2糸捕捉装置74には、伝達レバー94を取り付けるためのレバー穴74kが形成されている。
【0129】
これにより、伝達レバー94を第2糸捕捉装置74に容易に取り付けることができる。
【0130】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、伝達レバー94は細長く形成され、回転可能に支持されている。伝達レバー94の回転中心部に支点ボルト92aが配置されている。支点ボルト92aを締め付けることにより伝達レバー94の角度を保持可能である。
【0131】
これにより、必要に応じて、捕捉パイプ74aの回転中心C1が移動しないように固定することができる。
【0132】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、位置調整機構93は、伝達レバー94の姿勢を変化させる操作レバー96を備える。操作レバー96は締付部材なしで伝達レバー94に装着可能に設けられている。
【0133】
これにより、操作レバー96を容易に取り外すことができる。操作レバー96を複数の巻取ユニット4で共用することにより、部品の費用を削減することができる。
【0134】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、伝達レバー94は細長く形成され、回転可能に支持されている。伝達レバー94の回転中心部と異なる位置に、伝達レバー94の角度を(操作レバー96を通じて間接的に)保持する、固定ピン96aと固定ピン穴74hからなる保持機構が設けられる。
【0135】
これにより、簡単な構成で、捕捉パイプ74aの回転中心C1が移動しないように固定することができる。
【0136】
また、本実施形態の巻取ユニット4には、サクションマウス74bの位置を確認する治具68が取付可能である。
【0137】
これにより、接触ローラ63に対するサクションマウス74bの位置を容易に確認することができる。
【0138】
また、本実施形態の巻取ユニット4において、治具68は目盛り68c,68dを有する。
【0139】
これにより、サクションマウス74bの位置を一層正確に確認することができる。
【0140】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0141】
糸巻取部5には、綾振ドラム式の糸巻取装置を取り付けることも可能である。
【0142】
給糸交換部3には、例えば、マガジン式のボビン供給装置、パッケージ供給装置等を取り付けることも可能である。
【0143】
糸継部8には、サクションマウス式の糸継メカニズム70以外に、例えば糸貯留式の糸継メカニズムを取り付けることも可能である。
【0144】
巻取ユニット4は、空気紡績ユニット又はロータ式紡績ユニットとして構成されても良い。
【0145】
位置調整機構93は、捕捉パイプ74aの回転中心C1を斜め上下方向で調整しても良い。
【0146】
位置調整機構93は、第2糸捕捉装置74側に代えて、例えば糸継フレーム76側に設けられても良い。
【0147】
位置調整機構が、例えば上下方向のネジ軸を有する送り機構によって構成されても良い。この場合、伝達レバー94及び操作レバー96を省略することができる。
【0148】
ケーシング74dに、レバー穴74kに代えて支点軸を突出状に設け、この支点軸に伝達レバー94を回転可能に支持しても良い。
【0149】
操作レバー96は、例えばボルトなどの締付部材を介して伝達レバー94に固定されても良い。操作レバー96が伝達レバー94に対して取外し不能に固定されても良い。操作レバー96が伝達レバー94に対して一体的に設けられても良い。
【0150】
伝達レバー94が、支点ボルト92aによる締付けが不能となるように取り付けられても良い。固定ピン96aと固定ピン穴74hによる操作レバー96の保持機構が省略されても良い。
【0151】
上記の実施形態において、基準ピン95は、支点ボルト92aを基準として、操作レバー96と反対側に配置されている。この結果、操作レバー96を上側へ操作すれば捕捉パイプ74aの回転中心C1を上昇させ、下側へ操作すれば捕捉パイプ74aの回転中心C1を下降させることができるので、直感的な調整作業が実現できる。しかしながら、支点ボルト92aに対して、基準ピン95を操作レバー96と同じ側に配置しても良い。
【0152】
治具68の目盛りは、溝状の目盛り68c、丸穴状の目盛り68dの何れか一方のみで構成されても良い。
【0153】
治具68は、左右方向にスライドして目盛り部材68bの一部が接触ローラ63の上方に進出するように、糸巻取フレーム64の上に取り付けられても良い。
【0154】
治具68の代わりに、例えば非接触の距離計を用いて、サクションマウス74bの位置を確認することができる。
【0155】
糸巻取部5の糸巻取フレーム64と、糸継部8の糸継フレーム76とが、互いに直接固定されても良い。
【0156】
巻取ユニット4は、モジュール分割式に限定されない。位置調整機構93は、例えば、共通のユニットフレームに対して糸巻取装置60及び第2糸捕捉装置74が固定される構成の巻取ユニットに適用することもできる。
【0157】
繊維機械は、自動ワインダ1の巻取ユニット4に限定されない。位置調整機構93は、例えば、紡績機の紡績ユニットに適用することもできる。
【符号の説明】
【0158】
4 巻取ユニット(繊維機械)
9 パッケージ(糸巻取機構)
60 糸巻取装置
63 接触ローラ
68 治具
68c 目盛り
68d 目盛り
74 第2糸捕捉装置(糸引出し装置)
74a 捕捉パイプ(本体部)
74b サクションマウス(糸捕捉部)
93 位置調整機構
94 伝達レバー(レバー部材)
96 操作レバー(レバー姿勢調整部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8