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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043435
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】着色マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240322BHJP
   D04H 1/413 20120101ALI20240322BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
D04H1/413
D01F1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148630
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】508200090
【氏名又は名称】株式会社マテラ
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 照旺
【テーマコード(参考)】
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035EE07
4L035FF05
4L035JJ08
4L047AA12
4L047AA14
4L047AA17
4L047AA21
4L047AA23
4L047AA27
4L047AA29
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB08
4L047BA08
4L047BB01
4L047BB06
4L047BB09
4L047CB07
4L047CB08
4L047CC03
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】マスク表面の色相、彩度、明度を調整することなく肌色と調和して違和感なく顔に被着できる肌色にでき、かつ肌触りの快適なマスクとする。
【解決手段】マスク本体10の不織布繊維を肌色に着色する無機顔料15に、焼結されて表面のボディカラーを、400nm~550nmにおける反射率が20~50%、550nm以上の波長領域では波長が長くなるにしたがって反射率が次第に高くなり、700nmの反射率が60%以上である流紋岩を粉砕して、親水性のある多孔質な状態となる焼成流紋岩多孔質粉末16を使用し、焼成流紋岩多孔質粉末16を局所的に繊維の表面に露出して埋設してマスク本体10を肌色としている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布製のマスク本体と、
前記マスク本体の両側に連結されてなる耳掛け部とを備え、
前記マスク本体が無機顔料で肌色に着色された着色マスクであって、
前記マスク本体が、
前記無機顔料を繊維に埋設してなる着色繊維を立体的に集合してなる肌色不織布を備え、
前記無機顔料が、
流紋岩を焼成して親水性のある多孔質な粉末としてなる焼成流紋岩多孔質粉末で、
前記着色繊維が、
表面に長手方向に伸びる複数列の溝を表面に有する延伸された透明の合成繊維に、
前記焼成流紋岩多孔質粉末を局所的に繊維表面に露出して埋設してなり、
前記焼成流紋岩多孔質粉末は、
焼結された状態における表面のボディカラーが、
400nm~550nmの波長領域における反射率が20~50%で、
550nm以上の波長領域においては波長が長くなるにしたがって反射率が次第に高くなり、
700nmの反射率が60%以上である流紋岩の粉末で、
前記焼成流紋岩多孔質粉末でもって、
前記マスク本体の前記肌色不織布を肌色としてなる着色マスク。
【請求項2】
請求項1に記載する着色マスクであって、
不織布の前記着色繊維が、
0.3デシテックス以上の前記合成繊維であって、
埋設している前記無機顔料を体積平均径を1μm以下とする前記焼成流紋岩多孔質粉末としてなる着色マスク。
【請求項3】
請求項1に記載する着色マスクであって、
前記着色繊維が、
0.1重量%以上の前記焼成流紋岩多孔質粉末を含む着色マスク。
【請求項4】
請求項1に記載する着色マスクであって、
前記マスク本体が、
複数枚の不織布の積層体であって、
少なくとも1枚の前記不織布が前記肌色不織布である着色マスク。
【請求項5】
請求項4に記載の着色マスクであって、
前記不織布がノーバインダーの不織布である着色マスク。
【請求項6】
請求項1に記載する着色マスクであって、
前記合成繊維がレーヨン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリ乳酸のいずれかを含む着色マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌色に着色されたマスクに関し、とくに無機顔料で肌色に着色されたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
肌色のマスクは、白色のマスクに比較して汚れが目立ち難い特長がある。とくに肌色のマスクは、白色のマスクに比較して使用時の違和感を少なくできる特長もある。特許文献1は、マスク本体を着色しているマスクを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-190549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の着色マスクは、不織布製の基材シートを折り重ねて、複数の襞部を設けて、内面側に位置する内層シートと、外面側に位置する外層シートと、内外層シート間に中間シートとを設けている。内外層シートは、中間シートよりも光線透過率の高くして、基材シートの中間シートを着色している。さらに耳掛け部も中間シートと同色系に着色している。この着色マスクは着色不織布を使用し、不織布の着色には有機または無機の着色顔料や染料を使用している。
【0005】
以上の着色不織布は、異なる色の顔料を調合して最適な色合いとするので、マスクに最適な色相、彩度、明度の三属性の調合に手間がかかり、とくに自然な色合いであって顔の肌色に調和した色相、彩度、明度とするのが難しい。さらに、不織布の繊維表面に顔料を付着して着色するので、顔料が剥離しないように繊維の表面に付着すると繊維の柔軟性が低下して、肌触りを低下させる原因となる。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の一目的は、色相、彩度、明度を調整することなく、肌色と調和して違和感なく顔に被着できる肌色にできると共に、肌触りの快適なマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の着色マスクは、不織布製のマスク本体と、マスク本体の両側に連結している耳掛け部とを備え、マスク本体を無機顔料で肌色に着色している。マスク本体は、無機顔料を繊維に埋設してなる着色繊維を立体的に集合してなる肌色不織布を備え、無機顔料が、流紋岩を焼成して親水性のある多孔質な粉末としてなる焼成流紋岩多孔質粉末で、着色繊維が、表面に長手方向に伸びる複数列の溝を表面に有する延伸された透明の合成繊維に、焼成流紋岩多孔質粉末を局所的に繊維表面に露出して埋設してなる。マスク本体は無機顔料を繊維に埋設してなる着色繊維を立体的に集合してなる肌色不織布を備える。着色繊維の無機顔料は、流紋岩を焼成して親水性のある多孔質な粉末としてなる焼成流紋岩多孔質粉末で、着色繊維が、焼成流紋岩多孔質粉末を局所的に繊維の表面に露出して埋設している。さらに焼成流紋岩多孔質粉末は、焼結された状態における表面のボディカラーが、400nm~550nmの波長領域における反射率が20~50%で、550nm以上の波長領域においては波長が長くなるにしたがって反射率が次第に高くなり、700nmの反射率を60%以上である流紋岩の粉末で、以上の焼成流紋岩多孔質粉末がマスク本体の肌色不織布を肌色としている。
【発明の効果】
【0008】
以上の着色マスクは、色相、彩度、明度を調整することなく、顔の肌色と調和して違和感なく被着できる色に着色としながら、肌触りを快適にできる特長がある。とくに、以上の着色マスクは、不織布や繊維の表面に無機顔料を付着してマスク本体を肌色に着色するのではなく、無機顔料には焼成し、硬化させて特有の反射スペクトルとなる流紋岩の多孔質粉末を使用して、この硬化した流紋岩の多孔質粉末を不織布や繊維の表面に付着することなく、不織布の繊維に埋設することで不織布の繊維自体を肌色に着色し、さらに多孔質な粉末は、その表面を局所的に繊維の表面に露出させるという独特の状態で埋設することで、焼成し、硬化して親水性のある多孔質な粉末となった特有の反射スペクトルの流紋岩に特有の物性を生かしながら、マスク本体を自然な肌色に着色することを特徴とするものである。
【0009】
以上の特有の構造によって、マスク本体は無機顔料の脱落しない自然な肌色に着色され、しかも不織布の繊維自体を肌色に着色することによって、全体を斑なく自然な肌色に着色できる。さらに、不織布の繊維には、焼成し、硬化させて高強度になって変形しない硬質な粉末を繊維に埋設するので、焼成流紋岩多孔質粉末を埋設することによる繊維の強度低下を少なくしながら、繊維を肌色に着色できる混合率で焼成流紋岩を埋設できる。したがって、マスク本体の肌色不織布は、着色繊維を細くして優れた柔軟性のある不織布として、快適な肌触りで肌色のマスク本体にできる。さらにまた、肌色不織布の繊維表面に局所的に露出する焼成流紋岩多孔質粉末は、親水性のある多孔質粉末に独特の作用効果、すなわち、ユーザーが呼吸する毎に通過する空気から水分を吸収して保水し、保水した水分を排出するので、乾燥空気からユーザーの喉を保護する特長がある。とくに、局所的に繊維表面に露出している親水性のある流紋岩の多孔質粉末は、空気中の水分を効率よく吸収して乾燥空気に排出して、ユーザーの喉を乾燥から保護する。さらにまた、焼成流紋岩の多孔質粉末がユーザーの呼吸から吸入した水分は、焼成流紋岩に特有の殺菌効果によって、保水する水分によるカビの発生を防止するので、着色マスクを衛生的に使用できる特長も実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る着色マスクを使用した状態を示す概略図である。
図2】着色マスクの平面模式図である。
図3】マスク本体の側面模式図である。
図4】着色繊維横断面の一部を示す電子顕微鏡写真の線図である。
図5】紡糸孔の形状例を示す模式図である。
図6】無機顔料の各波長における反射率を示すグラフである。
図7】焼成流紋岩多孔質粉末1μmの粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施態様に係る着色マスクは、マスク本体の両側に耳掛け部を連結している。マスク本体は、表面を肌色に着色するために、繊維に無機顔料を埋設してなる着色繊維を立体的に集合してなる肌色不織布を備える。着色繊維の無機顔料は、流紋岩を焼成して親水性のある多孔質な粉末としてなる焼成流紋岩多孔質粉末で、着色繊維は、表面に長手方向に伸びる複数列の溝を表面に有する延伸された透明の合成繊維に、焼成流紋岩多孔質粉末を局所的に繊維の表面に露出して埋設している。さらに、着色繊維に埋設している焼成流紋岩多孔質粉末は、焼結された状態における表面のボディカラーが、400nm~550nmの波長領域における反射率が20~50%で、550nm以上の波長領域においては波長が長くなるにしたがって反射率が次第に高くなり、700nmの反射率が60%以上となる選別された流紋岩の粉末である。以上の着色マスクは、着色繊維に埋設している焼成流紋岩多孔質粉末でもって、マスク本体の肌色不織布を肌色としている。
【0012】
以上の着色マスクは、従来の着色マスクのように、色が異なる複数の無機顔料を調合して色合いを調整することなくマスク本体を、顔の肌色に調和した自然な色合いにできる特長がある。それは、以上の着色マスクが、焼結された状態における表面のボディカラーが、400nm~550nmの領域における反射率が20~50%で、550nm以上の波長領域において波長が長くなるにしたがって反射率が次第に高くなり、700nmの反射率が60%以上である流紋岩の粉末である焼成流紋岩多孔質粉末を無機顔料として、この焼成流紋岩多孔質粉末を不織布の合成繊維に埋設して着色繊維とし、この着色繊維を集合して肌色不織布としてマスク本体に使用しているからである。
【0013】
さらに、以上の着色マスクは、特定の反射スペクトルの流紋岩を原料として得られる焼成流紋岩多孔質粉末を局所的に繊維表面に露出して埋設して着色繊維とし、この着色繊維の肌色不織布をマスク本体に使用するので、着色繊維の表面に局所的に露出している焼成流紋岩多孔質粉末の優れた吸水性によって、ユーザーが呼吸して吐き出す空気中の水分を保水し、保水した水分を、ユーザーが呼吸して通過する乾燥空気に補給して、ユーザーの吸入空気を快適な湿度に調整する。したがって、ユーザーが乾燥空気を吸入して発生する喉の弊害を防止できる特長がある。さらに、焼成流紋岩多孔質粉末は親水性があり、この親水性によって、マスク本体が空気中の水分を速やかに吸収して保水性を向上する効果も実現する。
【0014】
さらに好都合なことに、焼成流紋岩多孔質粉末は、焼結工程で微細な空隙の内部まで完全に殺菌された多孔質粉末となり、さらに焼成流紋岩の自体の殺菌効果によって、微細な空隙に吸収した水分によるカビの発生を防止できる。したがって、以上の着色マスクは、長期間に渡ってカビの発生を防止して、細菌の繁殖を抑制して衛生的に使用できる特長も実現する。
【0015】
また、以上の着色マスクは、焼結されて特定のボディカラーとなる流紋岩を粉砕して得られる焼成流紋岩多孔質粉末を無機顔料として合成繊維に埋設してマスク本体を肌色に着色しているので、長期間に渡って繰り返し使用しても、無機顔料が脱落する等の弊害を防止できる。また、肌色のマスク本体は、白色のマスクに比較して使用時の汚れが目立ち難く、新品に近い状態で長期間に渡って繰り返し使用できる。
【0016】
さらにまた、着色のために不織布に顔料粉末をバインダー等を介して付着する必要がなく、バインダー等を介して顔料付着による不織布繊維の柔軟性の低下を防止して、優れた肌触りとする特長も実現する。
【0017】
本発明の他の実施態様に係る着色マスクは、肌色不織布の着色繊維を0.3デシテックス以上として、着色繊維に埋設している無機顔料を1μm以下の焼成流紋岩多孔質粉末とすることができる。以上の着色マスクは、繊維の強度を維持しながら、マスク本体の着色繊維を優れた柔軟性として肌触りを快適にし、さらに空気の透過抵抗を小さくして、快適に呼吸できる特長も実現する。
【0018】
本発明の他の実施形態に係る着色マスクの肌色不織布は、着色繊維に0.1重量%以上の焼成流紋岩多孔質粉末を埋設して、マスク本体の表面を綺麗な肌色に着色できる。
【0019】
本発明の他の実施形態に係る着色マスクは、マスク本体を複数枚の不織布を積層構造とすることができる。この着色マスクは、マスク本体の空気の透過抵抗を小さくしして、スムーズに呼吸できるようにしながら、異物やウィルス等の濾過特性を改善できる。
【0020】
本発明の他の実施形態に係る着色マスクは、マスク本体の肌色不織布をノーバインダーの不織布とすることができる。この着色マスクは、繊維を結合するバインダーによる空気の透過抵抗の増加を抑制して、スムーズに呼吸できる特長を保持しながら、マスク本体を顔面の凹凸に沿う柔軟な状態にできる特長がある。
【0021】
本発明の他の実施形態に係る着色マスクは、合成繊維がレーヨン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリ乳酸のいずれかを含むことができる。
【0022】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0023】
図1図3Bに着色マスク100を示す。図1は着色マスク100の使用例、図2は着色マスク100の平面模式図、図3A及び図3Bはマスク本体の側面模式図、をそれぞれ示す。さらに、図4は着色繊維の断面線図、図6は無機顔料15の各波長における反射率のグラフ、図7は本発明の実施例に使用する焼成流紋岩多孔質粉末の粒度分布図、をそれぞれ示す。
【0024】
図1及び図2に示すように、着色マスク100は、マスク本体10と、マスク本体10の両側に連結されてなる耳掛け部20とを備えてなる。マスク本体10は、合成繊維12に無機顔料15を埋設してなる着色繊維を立体的に集合している肌色不織布11で表面を肌色に着色している。着色繊維は、図4の着色繊維の断面線図に示すように、合成繊維12に、焼成された流紋岩の多孔質粉末、すなわち焼成流紋岩多孔質粉末16の無機顔料15を埋設している。着色繊維が、表面に長手方向に伸びる複数列の溝を有する延伸された透明の合成繊維12に埋設している焼成流紋岩多孔質粉末16は、繊維の表面に局所的に露出して、合成繊維12を着色して着色繊維とし、この着色繊維を集合して肌色不織布11としている。ここで透明とは半透明も含むものとする。マスク本体10は、焼成流紋岩多孔質粉末16で肌色に着色され、さらに繊維に埋設している焼成流紋岩多孔質粉末16でもって、調湿性を実現すると共に、マスク本体10の吸着した水分よるカビの発生をも防止している。図4は電子顕微鏡で観察した状態を示す線図である。着色繊維の表面及び断面は、例えば、日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡JSM-IT700HRで観察できる。
(マスク本体10)
【0025】
図1及び図2に示すマスク本体10は、顔面の所定の位置に着用された状態で、呼吸する空気の漏れを少なくスムーズに透過できるように、顔面の鼻と口を含む広い領域をカバーする大きさとする。マスク本体10は、好ましくは、図1ないし図3Aに示すように、横方向に伸びる平行な複数列の折れ線で折り返して、折り返し部を分離できる状態で重ねて、空気が透過する実質的な面積を広くして、空気の透過抵抗を小さく、すなわちスムーズに呼吸できる形状とする。ただ、マスク本体10は必ずしも、図3Aに示すように折り返すことなく、図3Bで示すように例えばガーゼマスクのように、折り返し部を設けることなく、不織布を平面状として、両側に耳掛け部を連結することもできる。図3A及び図3Bは、は、1枚の不織布を例としてマスク本体10の側面模式図を示すが、マスク本体10は2層、3層、4層など複数の不織布を積層できる。
【0026】
マスク本体10は、1枚の不織布で製作し、あるいは複数の不織布を積層して製作することができる。1枚の不織布からなるマスク本体10は、1枚の不織布を肌色不織布11とし、複数の不織布を積層しているマスク本体10は、好ましくは全ての不織布を肌色不織布11とする。ただ、複数の不織布を積層しているマスク本体10は、外側表面に積層している不織布のみを肌色不織布11とし、あるいは、外側表面と内側表面の2枚の不織布を肌色不織布11とし、あるいはまた、外側表面とその内側に積層している2枚またはそれ以上の不織布を肌色不織布11とし、あるいはまた、中間に積層している1または複数の不織布を肌色不織布11とすることができる。
【0027】
積層している複数の不織布を全て肌色不織布11とするマスク本体10は、表面を鮮明な肌色としながら、各々の肌色不織布11に含まれる焼成流紋岩多孔質粉末16によって、優れた保水性を実現して、呼吸で通過する空気の湿度調整能力を高くでき、さらに吸入した水分によるカビの発生を効果的に防止できる特長がある。
【0028】
複数の不織布を積層しているマスク本体10は、少なくともいずれか1枚の不織布を肌色不織布11として、肌色に着色された着色マスクとし、肌色不織布11に含まれる焼成流紋岩多孔質粉末16によって、マスク本体10の保水性を実現して、さらにマスク本体10の呼吸で通過する空気の湿度調整能力を高くし、さらに吸入した水分によるカビの発生を効果的に防止できる。
【0029】
また、外側表面に積層している不織布を肌色不織布11とするマスク本体10は、表面の肌色不織布11によってマスク本体10表面を鮮明な肌色にでき、内側表面を肌色不織布11とするマスク本体10は、肌に接触する不織布を焼成流紋岩多孔質粉末16を含む肌色不織布11として、焼成流紋岩多孔質粉末16が肌に加温されて遠赤外線を効果的に顔面に放射でき、中間の不織布を肌色不織布11とするマスク本体10は、肌色不織布11の外側面に積層している不織布の透光性を調製して、マスク本体10表面の肌色を、淡い肌色から鮮明な肌色に調製できる。
【0030】
複数の不織布を積層しているマスク本体10は、空気の透過抵抗の小さい、すなわち空隙率の高い2枚以上の不織布を積層して、マスク本体10の空気の透過抵抗を小さくして、スムーズに呼吸できる特長を実現しながら、異物やウィルス等の濾過特性を改善できる特長がある。積層された肌色不織布11は、互いに分離しないように外周部を熱溶着や接着剤で接合し、あるいは積層している肌色不織布11をニードルパンチで繊維を絡ませて接合し、あるいはまたバインダーを介して積層する肌色不織布11を局所的に接合することもできる。
【0031】
耳掛け部20は、マスク本体10と同様の肌色に着色にでき、またマスク本体10と異なる色に着色でき、またあるいは着色しないこともできる。耳掛け部20は、例えば伸縮性の不織布のほか、ゴム糸、綿、樹脂フィラメントなどを交織、交編できる。本発明の着色マスク100は、マスク本体10及び耳掛け部20を特定の形状、サイズ、構造、材質などに限定するものではなく、従来公知のものにできる。
(肌色不織布11)
【0032】
肌色不織布11は、焼成流紋岩多孔質粉末16で肌色に着色された不織布である。肌色不織布11は、着色繊維を立体的に方向性なく集合して、繊維の交点をバインダーで接合し、あるいはバインダーを使用することなく、繊維を絡ませてノーバインダーの不織布として製作できる。ノーバインダーの不織布は、バインダーによる柔軟性の低下がなく、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、アセトアルデヒドなど有害な揮発性有機化合物(有害化学物質)を含有することなく安全に使用できる柔軟な不織布となる。
【0033】
不織布製のマスク本体10は、ガーゼ等の編物に比べて微細な空隙が立体的に存在して、ウイルス、埃や花粉、など有害物質を付着して人体への吸入を防止できる。また咳やくしゃみ等に伴い放出される飛沫の飛散を防止または減少する能力が高いことから、マスク本体10の素材として適している。また、肌色不織布11は、従来の織る布に比べ製造工程も簡単で、生産性が高く、コスト面で優れ、消費者の経済的負担を小さくでき、使い捨てマスクの素材としても適している。使い捨てマスクは頻繁に交換して、衛生的に使用できる。またさらに、肌色不織布11は、様々な原材料の組み合わせが可能であり、また製造方法と加工方法によっても肌色不織布11自体に様々な機能を持たせることができる。また、マスク本体10は、肌色不織布11と異なるシートや繊維を追加でき、例えば、マスク本体は、肌色不織布の内側に従来のマスクに使用しているガーゼなどの濾過シートを脱着自在に積層することができる。
【0034】
マスク本体10は、焼成流紋岩多孔質粉末16を合成繊維12に埋設してなる着色繊維の肌色不織布11で表面を肌色に着色して、強度、柔軟性、保水性、被着の快適性を実現し、さらに、抗菌性、抗ウイルス性、消臭性、さらに遠赤外線放射などの多様な機能を実現する。さらに肌色不織布11のマスク本体10は、特定の流紋岩を焼成し、粉砕して得られる焼成流紋岩多孔質粉末16を無機顔料15に使用して、マスク本体10の非刺激性及び安全性も実現する。マスク本体10の肌色不織布11は、短繊維不織布や長繊維不織布等の従来公知のものを用いることができ、単一成分に限らず、複数の繊維を組み合わせて用いることができる。
【0035】
肌色不織布11の原料となる繊維は、レーヨン繊維に焼成流紋岩多孔質粉末16を埋設して製作できる。レーヨン繊維は吸水性と吸湿性があり、さらに繊維の風合いが柔らかなので、この着色繊維の肌色不織布11からなるマスク本体10は、顔面の凹凸に沿って自由に変形して、素肌に付着して快適な感触を実現し、さらに生分解性もあるので簡単に廃棄できる特長がある。肌色不織布11の合成繊維12は、レーヨン繊維の他にも、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリ乳酸などの他の合成繊維も使用できる。ポリ乳酸繊維は生分解性があるので、この肌色不織布11は廃棄を簡単にできる特長がある。肌色不織布11の合成繊維12は、無機顔料15との相性は勿論、機能性、バインダーなどとの兼ね合いで適切に定められる。肌色不織布11は、例えば、1μm以下の焼成流紋岩多孔質粉末16を適切な合成繊維12に埋設して、使用時に焼成流紋岩多孔質粉末16の飛散や流出を防ぎながら、耐久性に優れた無機顔料15による肌色効果を持続できる。また、天然岩石の焼成流紋岩多孔質粉末16を、生分解性のある繊維に練り込むことで、サステイナブルな循環型社会に適応した環境に優しいマスクを提供できる。
【0036】
さらに、肌色不織布11の着色繊維は、焼成流紋岩多孔質粉末16に他の無機粉末、例えばエリオン沸石以外のゼオライトなど混合して、吸湿性を向上することもできる。さらに、マスク本体10は、特定の機能を有するシートやフィルターなどを肌色不織布11に積層することができる。例えば、抗ウイルス剤の接着性(抗ウイルス剤の付着量やその接着力)の向上を目的として、ポリオレフィン樹脂微粒子からなる接着剤を使用でき、肌色不織布11としてもポリオレフィン系長繊維よりなる肌色不織布11を用いることができる。ポリオレフィン系長繊維としては、ポリプロピレン長繊維やポリエチレン長繊維を挙げることができる。しかしながら、このような単一成分の長繊維では、長繊維相互間が融着しすぎてフィルム状になり、通気性が悪くなるので、衛生マスクの素材として好適ではない。したがって、本発明でも、芯成分が高融点のポリエステルよりなり、鞘成分が低融点のポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンよりなる芯鞘型複合長繊維を用いるのが好ましい。このような芯鞘型複合長繊維の場合は、鞘成分のみの融着によって長繊維相互間が結合するため、通気性を犠牲にせずに、形態安定性のよい肌色不織布11が得られるからである。
【0037】
肌色不織布11の合成繊維12は、紡糸されて高分子物質から細い糸状の繊維をつくる。高分子物質を溶解あるいは融解し、紡糸孔(紡糸用ノズル)から押し出したあと、引き伸して延伸する。延伸により適度な強さと伸度をもった繊維でき、繊維を構成する分子の配列を調整できる。紡糸孔は、様々な形状にでき、例えば、丸孔、Y孔の他、図5(a)及び(b)に示す形状など様々なの異形孔のから紡糸された繊維は、様々な繊維断面を形成する。例えば、同じ素材でも断面形状によって風合いなどが変わり、吸水性などそれぞれ特徴や機能性を付与できる。図5(a)の紡糸孔は複数の半円(曲線)を有し、図5(b)の紡糸孔は複数の棒状(直線)を有する。この形状ような紡糸孔から押し出された着色繊維の表面には長手方向に伸びる凹凸、溝が形成される。図5(a)及び(b)の紡糸孔において、押し出された着色繊維の表面には長手方向に伸びる8列のV溝を有する形状として繊維表面の表面積を増大し、焼成流紋岩多孔質粉末16を繊維の表面に露出し易くできる。さらに押し出された合成繊維12を延伸することで、繊維の外表面付近に埋設された焼成流紋岩多孔質粉末16を表面に露出し易くして、埋設している焼成流紋岩多孔質粉末16の露出面積を拡大することができる。
【0038】
肌色不織布11の着色繊維は、例えば、繊維径(正量繊度)を0.3デシテックス(dtex)以上であって5デシテックス以下、好ましくは0.5デシテックス以上であって3デシテックス以下として、焼成流紋岩多孔質粉末16を埋設して肌色にできる。繊維径を0.3デシテックス以下とする着色繊維は、無機粉末を埋設して十分な強度を実現することが難しく、また、繊維径を5デシテックス以上とする繊維は、肌色不織布11としてふんわりと柔らかい感触が低下して、素肌に快適に付着することが難しくなる。肌色不織布11は、繊維径を最適には、約1.4デシテックスとして、十分な強度で無機粉末を繊維に埋設でき、また柔らかい感触にできるので、マスク本体10として最適な肌色不織布11は、繊維径を1~3デシテックスとする。
【0039】
肌色不織布11は、着色繊維に埋設する焼成流紋岩多孔質粉末16を多くして保水性、消臭性、抗菌性、放射する遠赤外線強度を強くできるなどの効果を増強できるので、肌色不織布11は、好ましくは着色繊維に、0.1重量%以上の焼成流紋岩多孔質粉末16を埋設する。ただ、着色繊維は、埋設する無機粉末が多過ぎると柔軟性や強度が低下して、マスクとして顔面に沿った形状に変形し難く、また使用時に肌色不織布11が破断する弊害が発生する。したがって、着色繊維は、好ましくは焼成流紋岩多孔質粉末16の含有量を10重量%以下とする。さらに着色繊維は、焼成流紋岩多孔質粉末16の含有量を0.5重量%以上であって5重量%以下として、十分な強度を保持しながら肌色不織布11として好ましい機能を発揮できるので、無機粉末の添加量は好ましくは以上の範囲とする。
【0040】
以上の肌色不織布11は、焼結された状態における表面のボディカラーが特定の反射スペクトルとなる流紋岩を原料とする焼成流紋岩多孔質粉末16で繊維を肌色にしているので、従来の着色マスクのように、異なる色の複数の顔料を調合して顔の肌色に調和した、マスクに最適な色合いに着色する必要がない。さらに、以上の肌色不織布11は、合成繊維12の表面にバインダーを介して無機顔料15を付着して着色する従来のマスクのように、顔料が剥離しないようにバインダーを使用することで生ずる、繊維の柔軟性の低下や肌触りの低下の問題も生じない。したがって、以上の肌色不織布11は、マスク本体10を着色するために、無機顔料15の色相、彩度、明度を調整することなく、焼成されて特定のボディカラーとなる流紋岩を選別して原料に使用することで、肌色と調和して違和感なく顔に被着できる色に着色できると共に、肌触りの快適なマスクを提供できる。
【0041】
焼成流紋岩多孔質粉末16の粒径は、肌色不織布11の合成繊維12径よりも小さく、局所的に繊維の表面に露出して埋設されていることで、肌色不織布11の繊維の強度を維持しながら、繊維の柔軟性と不織布の肌触りを保持しながら肌色に着色される。さらに肌色不織布11は、焼成流紋岩多孔質粉末16の繊維からの離脱を防止して、埋設された状態に保持する。さらにまた、焼成流紋岩多孔質粉末16に特有の物性である、保水性、消臭、抗菌、遠赤外線放射などの効果効能を、肌色不織布11に表出できる。加えて、焼成流紋岩多孔質粉末16が、局所的に着色繊維の表面に露出することで、これらの効果効能の程度をより高めることができる。
(無機顔料15)
【0042】
無機顔料15は、流紋岩を焼結して粉砕した焼成流紋岩多孔質粉末16である。焼成流紋岩多孔質粉末16は、合成繊維12に埋設されて繊維を着色する。焼成流紋岩多孔質粉末16は、焼成して特定のボディカラーとなる流紋岩を選択し、この流紋岩を焼結し、粉砕して得られる無機顔料15である。焼成流紋岩多孔質粉末16の原料は、愛媛県で採取される流紋岩が選別して使用できる。この流紋岩は、約8000万年前にできた関東から九州までを縦断する中央構造線上にある四国・石鎚山のふもとから産出される火成岩の一種である。焼成流紋岩多孔質粉末16は、流紋岩を砂利程度の粒径に破砕して焼成した後、粉砕して得られる。流紋岩は、酸化雰囲気で焼結した後、さらに粉砕して親水性と吸水性のある焼成流紋岩多孔質粉末16に加工できる。
【0043】
流紋岩は、花崗岩と同様に、ケイ素成分が70%程度の粘っこいマグマが地表付近で急冷されて固まってできる天然石で、きめが細かく、堅くて、水がしみ込み難い白っぽい天然石であるが、愛媛県で産出される特定の流紋岩は、酸化雰囲気において、800℃以上で焼成するとさらに堅くなって粉砕し易く、優れた親水性のある多孔質な状態に焼結されて、優れた吸水性を有する堅い岩石となる。この焼結流紋岩を粉砕して、焼成流紋岩多孔質粉末16が得られる。
【0044】
焼成流紋岩多孔質粉末16は、焼成して特定の反射スペクトルの流紋岩を酸化雰囲気で焼成し、粉砕して製作できる。焼成流紋岩多孔質粉末16は、焼結された状態における表面のボディカラーが、400nm~550nmの波長領域における反射率が20~50%で、550nm以上の波長領域において波長が長くなるにしたがって反射率が次第に高くなり、700nmの反射率が60%以上とする選別された流紋岩を粉砕して得られる。焼成流紋岩多孔質粉末16は、焼成した状態におけるボディカラーが以上の特定された範囲となる流紋岩の粉末である。焼成された全ての流紋岩の表面ボディカラーが以上の範囲となるものでない。例えば、板状に切断して焼成した流紋岩表面において、前述のボディカラーとなる領域と、白黒の混在した灰色に近い領域となる場合がある。本発明の着色マスク100は、焼成されて肌色に近いボディカラーとなる特定の流紋岩を選別して焼成流紋岩多孔質粉末16とするものであって、ボディカラーが以上の範囲にない流紋岩の焼成粉末は、無機顔料15には使用できない。
【0045】
以上の焼成流紋岩多孔質粉末16の反射率は、例えば、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計CM-3700dで測定できる。以下の[表1]は、分光測色計CM-3700dによる抜粋測定値の一例であり、測定条件は視野10°、第一光源D65、測定径8mmとした。図6は、縦軸を反射率(%)、横軸を波長(nm)として、各波長における焼成流紋岩多孔質粉末16の反射率及びその変化を示す。焼成流紋岩多孔質粉末16の反射率は、複数のサンプルを測定対象とし、また異なる測定機(例えば、日本分光株式会社製の分光光度計V-760)においても、ほぼ同様の測定値が確認された。
【0046】
[表1]
【0047】
焼成流紋岩多孔質粉末16は、選別された流紋岩を酸化雰囲気で焼成した後、粉砕して粉末状としたものである。流紋岩を焼成して粉砕する方法は、好ましくは流紋岩を砂利の粒径に破砕して、酸化雰囲気で焼成した後、粉砕する。焼成された流紋岩は、炭酸ガスを放出して硬く、脆くなるので、能率よく粉砕できる。焼成温度は、流紋岩を多孔質に焼結できる温度であって、低すぎると内部まで均一に焼成できずに硬度が低下する。反対に焼成温度を高くしすぎると焼成コストが高くなり、さらに溶融して多孔質な空隙が減少する。流紋岩の焼成温度は、たとえば600℃以上であって900℃以下、好ましくは800℃~900℃とする。焼成は、例えば、破砕した流紋岩を下り勾配に配置した回転するトロンメルに供給し、トロンメルで撹拌しながら移送して能率よく均一に焼成することができる。流紋岩に含まれる融点の低い物質(例えば酸化カリウム等)は、焼成工程で溶融されて消失し、発生する炭酸ガスで微細な空隙が発生して多孔質となる。また、焼成工程では、溶融した低融点の物質(酸化カリウム等)が融材となって硬く焼結される。
【0048】
流紋岩を焼成すると、融点の低い酸化カリウム等が溶融して消失し、炭酸ガスが放出されて微細な空隙が発生して、親水性と吸水性のある多孔質となる。この状態に焼成された流紋岩は、空気中の水分を吸収して保水し、また乾燥空気に触れると保水した水分を放出して湿度調整する。さらに焼成工程で溶融した低融点の酸化カリウムの一部は、融材となって流紋岩をさらに硬く焼結するので、衝撃で効率よく破砕できる焼成岩となる。焼成後の流紋岩を粉末状に粉砕して、親水性と吸水性のある焼成流紋岩多孔質粉末16が得られる。以上の工程で得られた焼成流紋岩多孔質粉末16は、好ましくは、さらにルツボに充填して、酸化雰囲気で焼成することで、全ての多孔質粉末を完全に焼成して親水性と吸水性に優れた多孔質粉末とすることができる。
【0049】
焼成されて多孔質となった流紋岩は、内部の微細な空隙が互いに連続する親水性の微細連続気泡状態となって吸水性が向上する。ちなみに、焼成されない流紋岩の表面に水滴を付着すると水は内部に吸収されることなく水滴となって付着するが、焼成した流紋岩は、表面に水を付着すると速やかに内部に浸透して吸収される。
【0050】
多孔質粉末は、例えば、焼成し、粉砕した後、特定の粒径よりも小さいものを選別して調整することができる。焼成流紋岩多孔質粉末16は、たとえば、焼成して粉砕した粉末から、1μm以下の微粉末を選別して調整できる。上記の方法で焼成された焼成流紋岩多孔質粉末16は、株式会社マテラ(愛媛、日本)から購入することもできる。
【0051】
焼成流紋岩多孔質粉末16は、局所的に繊維の表面から露出して、空気中の水分を吸水して保水し、また乾燥空気に放出して湿度調整する。焼成流紋岩多孔質粉末16は、粒径が大きすぎると繊維の強度を低下させるため、焼成流紋岩多孔質粉末16の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、0.4μm以下であることがより好ましい。以上の焼成流紋岩多孔質粉末16は、繊維に埋設して着色繊維の強度を維持できる。着色繊維は、例えば繊維径(正量繊度)を1.4デシテックスとする合成繊維12に、体積平均径を0.3μmとする無機粉末を、2重量%埋設して、後述する効果を発揮しながら十分な強度と、柔軟性を実現できる。なお、粉末の平均粒径は、体積平均径(MV;Mean Volume Diameter)を示す。体積平均径は、体積基準の粒度分布における算術平均径であり、例えば、粒度分布を粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300)にて解析して算出することができる。
【0052】
図7に焼成流紋岩多孔質粉末1μm以下の粒度分布を示す。この粒度分布図における焼成流紋岩多孔質粉末1μm以下の測定算出結果は、体積平均径が0.296μm、ピーク粒径が0.257μm、10%径が0.138μm、50%径が0.257μm、90%径(d90)が0.494μmであった。焼成流紋岩多孔質粉末16は、流紋岩を焼成し、硬化させる状態で粉砕して製作するので、この図に示すように綺麗な二項分布に近似する綺麗なカーブとなって、合成繊維の理想的な状態で埋設できる。
【0053】
焼結された状態における表面のボディカラーを特定の反射スペクトルとする以上の流紋岩は、麦飯石に比較してより優れた遠赤外線放射特性を有する。以上の焼成流紋岩多孔質粉末16をマスク本体10の無機顔料15に使用するこの着色マスク100は、ユーザーの顔面に接近して使用され、ユーザーの顔で加温されて遠赤外線を素肌に放射できる。繊維に埋設している天然石の焼結粉末の無機粉末は、素肌からの放射エネルギーに励起されて遠赤外線を照射するので、素肌に接近して付着されることで、顔面からのエネルギーを効率よく吸収して素肌に遠赤外線を照射する。この特性は、例えば冬期の寒いシーズに使用されて、顔面をあたたかく加温できる効果がある。
【0054】
さらに、焼結された状態における表面のボディカラーを特定の反射スペクトルとする以上の流紋岩は、強い抗菌効果が認められる。以上の焼成流紋岩多孔質粉末16を繊維に埋設し、とくに強い抗菌効果のある焼成流紋岩多孔質粉末16を局所的に露出して埋設してなる肌色不織布11を備えるマスク本体10は、抗菌効果が認められる。マスク本体10は、天然石の抗菌効果により、別途抗菌成分を添加することなく、安全に使用できる特長がある。
【0055】
さらに、焼結された状態における表面のボディカラーを特定の反射スペクトルとする焼成流紋岩多孔質粉末16は、優れた消臭効果が認められる。本発明の実施例で製作された肌色不織布11の着色マスク100は、繊維径(正量繊度)を1.4デシテックスとする透明の合成繊維12に、体積平均径を0.3μmとする無機粉末を、2重量%埋設している着色繊維からなり、以下の優れた消臭効果が実現できる。肌色不織布の着色繊維16は、例えば図5の(a)に示す溶融樹脂などの紡糸孔から押し出し、延伸して、長手方向に伸びる複数列の溝を表面に設けてなる外周形状の透明繊維に、図4の電子顕微鏡写真の線図に示すように、焼成流紋岩多孔質粉末16を局所的に表面に露出する繊維である。この着色マスク100に使用する、15cm×15cmの肌色不織布11は、体臭成分のひとつであるアンモニアガスの除去試験においては、30分後の濃度が90%以上と極めて優れた消臭効果を実現する。この消臭効果は、以上の肌色不織布11を、アンモニアガス濃度を80ppm以上とする5リットルの密閉容器に入れて、30分後のアンモニアガス濃度を測定して測定した。さらに以上の着色マスク100の肌色不織布11における、体臭成分のひとつである酢酸ガスの消臭効果を、アンモニアガスと同じ試験方法で測定すると、密閉容器の酢酸ガス濃度を30ppmとして、消臭効果は80%以上となった。
【0056】
着色マスク100の以上の優れた消臭効果は、消臭効果のある焼成流紋岩多孔質粉末16を局所的に繊維の表面に露出させることに加えて、着色繊維の表面には長手方向に伸びる複数列の溝を有する形状として表面積を増大し、さらに押し出された合成繊維12を延伸することで、埋設している焼成流紋岩多孔質粉末16を繊維表面に局所的に露出させる露出面積を大きくする独特の繊維形状で実現できる。以上の消臭効果のある着色マスク100は、薬剤の消臭剤を別途添加することなく、ユーザーが着用して臭気が付着するのを防止して快適に使用できる特長がある。
【0057】
さらに、以上の着色マスク100は、焼成流紋岩多孔質粉末16の消臭効果と同様に、着色マスク100の肌色不織布11に、焼成流紋岩多孔質粉末16による防腐、防カビ効果が実現される。それは、防腐、防カビ効果のある焼成流紋岩多孔質粉末16を局所的に繊維の表面に露出することに加えて、着色繊維の表面には長手方向に伸びる複数列の溝を有する形状として表面積を増大し、さらに押し出された合成繊維12を延伸することで、埋設している焼成流紋岩多孔質粉末16の露出面積を拡大することで助長される。肌色不織布11が、マスク本体10のカビの発生を防止するために、有害な揮発性有機化合物(例えば、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、アセトアルデヒドなど有害化学物質)を使用することなく安全にカビの発生を防止できる。従来のマスクの無機顔料に使用される麦飯石は、カビの発生が問題視されるが、焼成流紋岩多孔質粉末16は、焼結工程で高温に加熱されて微細な空隙内まで完全に殺菌され、さらに焼成流紋岩多孔質粉末16自体の殺菌効果によって、微細な空隙に吸収した水分によるカビの発生を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、色相、彩度、明度を調整することなく、肌色と調和して違和感なく顔に被着できる色に着色できると共に、肌触りの快適なマスクとして有効に使用できる。
【符号の説明】
【0059】
100…着色マスク
10…マスク本体
11…肌色不織布
12…合成繊維
15…無機顔料
16…焼成流紋岩多孔質粉末
20…耳掛け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7