(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043439
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体およびフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20240322BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240322BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240322BHJP
C08G 63/197 20060101ALI20240322BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C08L79/08
C08G73/10
C08L67/00
C08G63/197
C08J5/18 CFD
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148639
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】片山 敬介
(72)【発明者】
【氏名】石黒 文康
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J029
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AA81
4F071AC12A
4F071AE19A
4F071AF30Y
4F071AF34Y
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4J043UA151
4J043UA152
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4J043UB122
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4J043XA16
4J043YA01
4J043ZA31
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB23
(57)【要約】
【課題】優れた機械強度と透明性を両立可能な樹脂組成物、それを含む成形体およびフィルムの提供を目的とする。
【解決手段】樹脂組成物は、ポリイミドとポリエステル系樹脂を含み、前記ポリイミドは、ジアミン由来構造およびテトラカルボン酸二無水物由来構造を有し、前記ジアミン由来構造がフルオロアルキル基を有し、前記テトラカルボン酸二無水物由来構造がエステル構造を有し、前記ポリエステル系樹脂がアリール化フルオレンを側鎖に有し、前記ポリイミドと前記ポリエステル系樹脂は、ジメチルホルムアミド中で相溶可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドとポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリイミドは、一般式(IIa)で表されるジアミン由来構造、および一般式(IIIa)で表されるテトラカルボン酸二無水物由来構造を有し、
Yは2価の有機基であるジアミン残基であり、Xは4価の有機基であるテトラカルボン酸二無水物残基であり、
前記ジアミン由来構造がフルオロアルキル基を有し、前記テトラカルボン酸二無水物由来構造がエステル構造を有し、
前記ポリエステル系樹脂が、アリール化フルオレンを側鎖に有するポリエステル樹脂であることを特徴とし、
前記ポリイミドと前記ポリエステル系樹脂が、溶媒中で相溶可能である、樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
フルオロアルキル基を有するジアミンが、フルオロアルキル置換ベンジジンを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記フルオロアルキル置換ベンジジンが、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミドは、前記ジアミン由来構造の全量に対する、フルオロアルキル基を有するジアミンに由来する構造の比率が20モル%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エステル基を有する酸二無水物が、ビス(無水トリメリット酸)エステルである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ビス(無水トリメリット酸)エステルとして、式(1)で表される化合物からなる群から選択される1種以上を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。(ただし、一般式(1)におけるQは、任意の2価の有機基であり、Qの両端において、カルボキシ基とQの炭素原子が結合している。カルボキシ基に結合する炭素原子は、環構造を形成していてもよい。)
【化2】
【請求項7】
前記ポリイミドは、前記テトラカルボン酸二無水物由来構造の全量に対する、ビス(無水トリメリット酸)エステルに由来する構造の比率が50モル%以上である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
ポリエステル系樹脂の重量平均分子量が、10000を超えて、200000以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリイミドと前記ポリエステル系樹脂を、98:2~2:98の範囲の重量比で含む、請求項1のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むフィルム。
【請求項12】
全光線透過率が85%以上、ヘイズが10%以下、黄色度が5.0以下である、請求項11に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体およびフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶、有機EL、電子ペーパー等の表示装置や、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスデバイスにおいて、薄型化や軽量化、さらにはフレキシブル化が要求されている。これらのデバイスに使用されるガラス材料をフィルム材料に代えることにより、フレキシブル化、薄型化、軽量化が図られる。ガラス代替材料として、透明ポリイミドフィルムが開発され、ディスプレイ用基板やカバーフィルム等に用いられている。
【0003】
通常のポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を支持体上に膜状に塗布し、高温処理することにより、溶媒除去と同時に熱イミド化を行うことにより得られる。しかしながら、熱イミド化のための加熱温度は高く(例えば300℃以上)、加熱による着色(黄色度の上昇)が生じやすく、ディスプレイ用カバーフィルム等の高い透明性が要求される用途への適用が困難である。
【0004】
高い透明性を有するポリイミドフィルムの製造方法として、有機溶媒に可溶であり、フィルム化後の高温でのイミド化を必要としないポリイミド樹脂を用いる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、テトラカルボン酸二無水物成分としてビス無水トリメリット酸エステル類を含むポリイミドが、有機溶媒への溶解性に優れ、かつ透明性および機械強度に優れることが記載されている。しかし、透明性という観点でさらなる改善の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミドは、剛直な構造を導入すると、機械強度が向上するものの、有機溶媒への溶解性の低下や着色の要因となり、ポリイミド単独で、透明性と高機械強度を両立することは容易ではない。かかる課題に鑑み、本発明は、優れた機械強度と透明性を両立可能な樹脂組成物、樹脂組成物を含む成形体およびフィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記構成とすることで上記課題を解決することを見出した。
【0008】
1).ポリイミドとポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリイミドは、一般式(IIa)で表されるジアミン由来構造、および一般式(IIIa)で表されるテトラカルボン酸二無水物由来構造を有し、
【化1】
Yは2価の有機基であるジアミン残基であり、Xは4価の有機基であるテトラカルボン酸二無水物残基であり、
前記ジアミン由来構造がフルオロアルキル基を有し、前記テトラカルボン酸二無水物由来構造がエステル構造を有し、
前記ポリエステル系樹脂が、アリール化フルオレンを側鎖に有するポリエステル樹 脂であることを特徴とし、
前記ポリイミドと前記ポリエステル系樹脂が、溶媒中で相溶可能である、樹脂組成物。
【0009】
2).フルオロアルキル基を有するジアミンが、フルオロアルキル置換ベンジジンを含む、1)に記載の樹脂組成物。
【0010】
3).前記フルオロアルキル置換ベンジジンが、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンである、2)に記載の樹脂組成物。
【0011】
4).前記ポリイミドは、前記ジアミン由来構造の全量に対する、フルオロアルキル基を有するジアミンに由来する構造の比率が20モル%以上である、1)~3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0012】
5).前記エステル基を有する酸二無水物が、ビス(無水トリメリット酸)エステルである1)~4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0013】
6).前記ビス(無水トリメリット酸)エステルとして、式(1)で表される化合物からなる群から選択される1種以上を含む、5)に記載の樹脂組成物。
ただし、一般式(1)におけるQは、任意の2価の有機基であり、Qの両端において、カルボキシ基とQの炭素原子が結合している。カルボキシ基に結合する炭素原子は、環構造を形成していてもよい。
【化2】
【0014】
7).前記ポリイミドは、前記テトラカルボン酸二無水物由来構造の全量に対する、ビス(無水トリメリット酸)エステルに由来する構造の比率が50モル%以上である、5)または6)に記載の樹脂組成物。
【0015】
8).ポリエステル系樹脂の重量平均分子量が、10000を超えて、200000以下であることを特徴とする1)~7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0016】
9).前記ポリイミドと前記ポリエステル系樹脂を、98:2~2:98の範囲の重量比で含む、1)~8)のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0017】
10).1)~9)のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【0018】
11).1)~9)のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むフィルム。
【0019】
12).全光線透過率が85%以上、ヘイズが10%以下、黄色度が5.0以下である、11)に記載のフィルム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた機械強度と透明性を両立可能な樹脂組成物、樹脂組成物を含む成形体およびフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[樹脂組成物]
本発明の一実施形態は、ポリイミドとポリエステル系樹脂とを含む、溶媒中で相溶可能な樹脂組成物である。
【0022】
<ポリイミド>
ポリイミドは、一般式(I)で表される構造単位を有するポリマーであり、テトラカルボン酸二無水物(以下、「酸二無水物」と記載する場合がある)とジアミンとの付加重合により得られるポリアミック酸を脱水環化することにより得られる。すなわち、ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重縮合物であり、酸二無水物由来構造(酸二無水物成分)とジアミン由来構造(ジアミン成分)とを有する。なお、ポリイミドは、ジイソシアネートと酸二無水物との脱炭酸による縮合により合成することもできる。
【0023】
【0024】
一般式(I)において、Yは2価の有機基であり、Xは4価の有機基である。Yはジアミン残基であり、下記一般式(II)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた有機基である。なお、ジイソシアネートを用いてポリイミドを合成する場合、Yはジイソシアネート残基であり、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた有機基である。Xは、テトラカルボン酸二無水物残基であり、下記一般式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物から、2つの無水カルボキシ基を除いた有機基である。
【0025】
【0026】
換言すると、ポリイミドは、下記一般式(IIa)で表される構造単位と下記一般式(IIIa)で表される構造単位を含み、ジアミン由来構造(IIa)とテトラカルボン酸二無水物由来構造(IIIa)がイミド結合を形成することにより、一般式(I)で表される構造単位を有している。
【0027】
【0028】
前述のように、ポリイミドは、ジアミン由来構造(ジアミン成分)とテトラカルボン酸二無水物由来構造(酸二無水物成分)を含む。本実施形態で用いるポリイミドは、ジアミン由来構造にフルオロアルキル基を有するジアミンを含み、テトラカルボン酸二無水物由来構造がエステル構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含む。
【0029】
(フルオロアルキル基を有するジアミン)
フルオロアルキル基を有するジアミンとしては、フルオロアルキル置換ベンジジンが挙げられる。フルオロアルキル置換ベンジジンの具体例としては、2-(トリフルオロメチル)ベンジジン、3-(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2、6-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン等が挙げられる。
【0030】
中でも、ビフェニルの2位にフルオロアルキル基を有するフルオロアルキル置換ベンジジンが好ましく、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下「TFMB」と記載)が特に好ましい。ビフェニルの2位および2’位にフルオロアルキル基を有することにより、フルオロアルキル基の電子求引性によるπ電子密度の低下に加えて、フルオロアルキル基の立体障害によって、ビフェニルの2つのベンゼン環の間の結合がねじれてπ共役の平面性が低下するため、吸収端波長が短波長シフトして、ポリイミドの着色が低減するとともに、有機溶媒への溶解性が高められる傾向がある。
【0031】
ジアミン由来構造の全量に対する、フルオロアルキル基を有するジアミンに由来する構造の比率が20モル%以上であることが、溶媒への可溶性やポリエステル系樹脂との相溶性との観点で好ましく、50モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。
【0032】
フルオロアルキル置換ベンジジン以外の、フルオロアルキル基を有するジアミンとしては、1,4-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4-ジアミノ-2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4-ジアミノ、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフルオロアルキル基が結合した芳香環を有するジアミン;2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等の芳香環に直接結合していないフルオロアルキル基を有するジアミンが挙げられる。
【0033】
(他のジアミン)
ポリイミドは、ジアミン成分として、フルオロアルキル基を有さないジアミンを含んでいてもよい。フルオロアルキル基を有さないジアミンの中で、ポリエステル系樹脂との相溶性に優れるジアミン成分の例として、脂環式構造を有するジアミン、フルオレン構造を有するジアミン、スルホン基を有するジアミン、フルオロアルキル基以外のフッ素含有基を有するジアミンが挙げられる。
【0034】
脂環式構造を有するジアミンとしては、イソホロンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルネン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、アダマンタン-1,3-ジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。脂環式構造を有するジアミンを用いることで、弾性率や透過率や機械強度に優れる成形体を得ることができる。
【0035】
フルオレン構造を有するジアミンの例として、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。フルオレン構造を有するジアミンを用いることで、弾性率や機械強度に優れる成形体を得ることができる。
【0036】
スルホン基を有するジアミンとしては、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン等が挙げられる。スルホン基を有するジアミンを用いることにより、ポリイミドの溶媒への溶解性や透明性が向上し、弾性率や靭性等の機械特性が向上する場合がある。ジアミノジフェニルスルホンの中でも、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)および4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)が好ましい。3,3’-DDSと4,4’-DDSを併用してもよい。スルホン基を有するジアミンを用いることで、弾性率や機械強度に優れる成形体を得ることができる。
【0037】
また、フルオロアルキル基以外のフッ素含有基を有するジアミンとしては、2-フルオロベンジジン、3-フルオロベンジジン、2,3-ジフルオロベンジジン、2,5-ジフルオロベンジジン、2、6-ジフルオロベンジジン、2,3,5-トリフルオロベンジジン、2,3,6-トリフルオロベンジジン、2,3,5,6-テトラフルオロベンジジン、2,2’-ジフルオロベンジジン、3,3’-ジフルオロベンジジン、2,3’-ジフルオロベンジジン、2,2’,3-トリフルオロベンジジン、2,3,3’-トリフルオロベンジジン、2,2’,5-トリフルオロベンジジン、2,2’,6-トリフルオロベンジジン、2,3’,5-トリフルオロベンジジン、2,3’,6-トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’-オクタフルオロベンジジン、1,4-ジアミノ-2-フルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジフルオロベンゼン、1、4-ジアミノ-2,6-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン、2,2’-ジメチルベンジジン等が挙げられる。フッ素含有ジアミンを用いることで、透過率に優れる成形体を得ることができる。
【0038】
上記以外のジアミンの例として、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、o-キシレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
【0039】
ジアミンとして、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス[2-(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2-ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン等の鎖状ジアミンを用いることもできる。
【0040】
(エステル構造を有するテトラカルボン酸二無水物)
エステル構造を有するテトラカルボン酸二無水物として、ビス(無水トリメリット酸)エステル類は、下記一般式(1)で表される。
【化6】
【0041】
一般式(1)におけるQは、任意の2価の有機基であり、Qの両端において、カルボキシ基とQの炭素原子が結合している。カルボキシ基に結合する炭素原子は、環構造を形成していてもよい。2価の有機基Qの具体例としては、下記(A)~(K)が挙げられる。
【0042】
【0043】
式(A)におけるR1は、フッ素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、または炭素原子数1~20のフルオロアルキル基であり、mは1~4の整数である。式(A)で表される基は、ベンゼン環上に置換基を有するヒドロキノン誘導体から2つの水酸基を除いた基である。ベンゼン環上に置換基を有するヒドロキノンとしては、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン等が挙げられる。なお、R1が炭素原子数1~20のフルオロアルキル基である場合、ビス(無水トリメリット酸)エステルはフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物に該当する。
【0044】
式(B)におけるR2は、フッ素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、または炭素原子数1~20のフルオロアルキル基であり、nは0~4の整数である。式(B)で表される基は、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいビフェノールから2つの水酸基を除いた基である。ベンゼン環上に置換基を有するビフェノール誘導体としては、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオール、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジオール等が挙げられる。なお、R2が炭素原子数1~20のフルオロアルキル基である場合、ビス(無水トリメリット酸)エステルはフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物に該当する。
【0045】
式(C)で表される基は、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)から2つの水酸基を除いた基である。式(D)で表される基は、レゾルシノールから2つの水酸基を除いた基である。
【0046】
式(E)におけるpは1~10の整数である。式(E)で表される基は、炭素数1~10の直鎖のジオールから2つの水酸基を除いた基である。炭素数1~10の直鎖のジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等が挙げられる。
【0047】
式(F)で表される基は、1,4-シクロヘキサンジメタノールから2つの水酸基を除いた基である。
【0048】
式(G)におけるR3は、水素原子、フッ素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、または炭素原子数1~20のフルオロアルキル基であり、qは0~4の整数である。式(G)で表される基は、フェノール性水酸基を有するベンゼン環上に置換基を有していてもよいビスフェノールフルオレンから2つの水酸基を除いた基である。フェノール性水酸基を有するベンゼン環上に置換基を有するビスフェノールフルオレン誘導体としては、ビスクレゾールフルオレン等が挙げられる。なお、R3が炭素原子数1~20のフルオロアルキル基である場合、ビス(無水トリメリット酸)エステルはフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物に該当する。
【0049】
ビス(無水トリメリット酸)エステルは芳香族エステルであることが好ましく、Qとしては、上記(A)~(K)の中では、(A)(B)(C)(D)(G)(H)(I)が好ましい。中でも、(A)~(D)が好ましく、(B)および(C)が特に好ましい。Qが一般式(B)で表される基である場合、ポリイミドの溶解性の観点から、Qは、下記の式(B1)で表される2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジイルであること好ましい。
【0050】
【0051】
一般式(1)においてQが式(B1)で表される基である酸二無水物は、下記の式(2)で表されるビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’ -ジイル(略称:TAHMBP)である。
【0052】
【0053】
テトラカルボン酸二無水物由来構造の全量に対する、ビス(無水トリメリット酸)エステルに由来する構造の比率が50モル%以上であることが、ポリエステル系樹脂との相溶性の観点で好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。
【0054】
(他の酸二無水物)
ポリイミドは、酸二無水物成分としてビス(無水トリメリット酸)エステル類を有さない酸二無水物を含んでいてもよい。ビス(無水トリメリット酸)エステル類を有さない酸二無水物の中で、ポリエステル系樹脂との相溶性に優れるテトラカルボン酸二無水物の例として、フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、エーテル結合を有するテトラカルボン酸二無水物、および芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物は、少なくとも1つの脂環構造を有していればよく、1分子中に脂環と芳香環の両方を有していてもよい。脂環は多環でもよく、スピロ構造を有していてもよい。
【0055】
ポリエステル系樹脂との相溶性に優れるフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4-トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、3,6-ジ[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピロメリット酸二無水物、1-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピロメリット酸二無水物、N,N’-[[2,2,2―トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(6-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス[1,3―ジハイドロ-1,3―ジオキソ-5-イソベンゾフランカルボキサミド]等が挙げられる。中でも、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(以下「6FDA」と記載)が特に好ましい。
【0056】
ポリエステル系樹脂との相溶性に優れる脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、メソ-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’テトラカルボン酸-3,4:3’,4’-二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2”-ノルボルナン-5,5”,6,6”-テトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビノルボルナン-5,5’,6,6’テトラカルボン酸二無水物、3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン-1,4-ジイルビス(メチレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジハイドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、5,5’-[シクロヘキシリデンビス(4,1-フェニレンオキシ)]ビス-1,3-イソベンゾフランジオン、5-イソベンゾフランカルボン酸,1,3-ジハイドロ-1,3-ジオキソ-,5,5’-[1,4-シクロヘキサンジイルビス(メチレン)]エステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2-酢酸2,3:5,6-二無水物、デカハイドロ-1,4,5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6.4.0.0(2,7)]ドデカン-1,8:2,7-テトラカルボン酸二無水物、オクタヒドロ-1H,3H,8H,10H-ビフェニレノ[4a,4b-c:8a,8b-c’]ジフラン-1,3,8,10-テトロン、エチレングリコールビス(水素化トリメリット酸無水物)エステル、デカハイドロ[2]ベンゾピラノ[6,5,4,-def][2]ベンゾピラン-1,3、6,8-テトロン、等が挙げられる。
【0057】
脂環式テトラカルボン酸二無水物の中でも、ポリイミドの透明性および機械強度の観点から、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H-PMDA)または1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’テトラカルボン酸-3,4:3’,4’-二無水物(H-BPDA)が好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0058】
ポリエステル系樹脂との相溶性に優れるエーテル結合を有する酸二無水物としては、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、等が挙げられる。エーテル結合を有する酸二無水物の中でも、ポリエステル系樹脂との相溶性の観点から、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物が好ましい。
【0059】
ポリエステル系樹脂との相溶性に優れる酸二無水物成分としての芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ジメチルメチレンビス(フタル酸無水物)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、N,N’-(9H-フルオレン-9-イリデンジ-4,1-フェニレン)ビス[1,3-ジハイドロ-1,3-ジオキソ-5-イソベンゾフランカルボキサミド]、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、11,11-ジメチル-1H-ジフロ[3,4-b:3’,4’-i]キサンテン-1,3,7,9(11H)-テトロン、4-(2,5―ジオキソテトラハイドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラハイドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、等が挙げられる。
【0060】
上記以外の芳香族酸二無水物の例として、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,3-ビス[(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-[4-(3,4-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4’-ビス[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-5-イソベンゾフランカルボン酸)-1,4-フェニレンエステルが挙げられる。酸二無水物として、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物等の鎖状脂肪族酸二無水物を用いてもよい。
【0061】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の中でも、ポリイミドとポリエステル系樹脂との相溶性の観点から、ピロメリット酸二無水物およびメロファン酸二無水物が特に好ましい。
【0062】
(ポリイミドの組成)
前述のように、本実施形態で用いるポリイミドは、ジアミンがフルオロアルキル基を含み、テトラカルボン酸二無水物がビス(無水トリメリット酸)エステル類を含む。また、フルオロアルキル基を含むジアミンとフルオロアルキル基を含むテトラカルボン酸二無水物の両方を用いてもよい。ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の双方がフルオロアルキル基を含むことにより、有機溶媒への溶解性およびポリエステル系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。
【0063】
特に、多様な溶媒中でポリエステル系樹脂との相溶性を示すことから、ポリイミドは、ジアミン成分としてフルオロアルキル基を有するジアミンを含み、TFMB等のフルオロアルキル置換ベンジジンを含むことが好ましい。ポリイミドのジアミン成分全量に対するフルオロアルキル基を有するジアミンの比率は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上、85モル%以上または90モル%以上であってもよい。フルオロアルキル置換ベンジジンの量が上記範囲であることが好ましく、TFMBの量が上記範囲であることが特に好ましい。
【0064】
ポリイミドが、ジアミン成分としてフルオロアルキル基を有さないジアミンを含む場合、フルオロアルキル基を有さないジアミンとしては、脂環式構造を有するジアミン、エーテル構造を有するジアミン、フルオレン構造を有するジアミン、スルホン基を有するジアミン、フルオロアルキル基以外のフッ素含有基を有するジアミンが好ましい。脂環式構造を有するジアミン、エーテル構造を有するジアミン、フルオロアルキル基以外のフッ素含有基を有するジアミン、およびフルオレン構造を有するジアミンは、含まれなくてもよく、それぞれ、ポリイミドのジアミン成分全量に対して、10モル%以上、30モル%以上、50モル%または80モル%であってもよい。スルホン基を有するジアミンは、ポリイミドのジアミン成分全量に対して、80モル%以下が好ましく、60モル%以下が好ましく、40モル%または20モル%以下であってもよく、含まれなくてもよい。スルホン基を有するジアミンのモル比率が高すぎる場合、ポリエステル系樹脂との相溶性が悪化する惧れがある
【0065】
ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物成分としてエステル構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含み、TAHMBP等のビス(無水トリメリット酸)エステル類を含むことが好ましい。ポリイミドのテトラカルボン酸二無水物成分全量に対するエステル構造を有するテトラカルボン酸二無水物の比率は、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、75モル%以上、90モル%以上または100モル%であってもよい。
【0066】
ポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物成分としてエステル構造を有するテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を含む場合、当該テトラカルボン酸二無水物としては、ポリエステル系樹脂との相溶性に優れるテトラカルボン酸二無水物成分として、フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、エーテル構造を有するテトラカルボン酸二無水物、および芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。エステル構造を有するテトラカルボン酸二無水物、フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物、エーテル構造を有するテトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物および前述の芳香族テトラカルボン酸二無水物の合計は、ポリイミドのテトラカルボン酸二無水物成分全量に対して、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上または100モル%であってもよい。
【0067】
(ポリイミドの調製)
酸二無水物とジアミンとの反応によりポリイミド前駆体としてのポリアミド酸が得られ、ポリアミド酸の脱水環化(イミド化)によりポリイミドが得られる。ポリアミド酸の調製方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法を適用できる。例えば、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを、略等モル量(90:100~110:100のモル比)で有機溶媒中に溶解させ、攪拌することにより、ポリアミド酸溶液が得られる。
【0068】
ポリアミド酸溶液の濃度は、通常5~35重量%であり、好ましくは10~30重量%である。この範囲の濃度である場合に、重合により得られるポリアミド酸が適切な分子量を有するとともに、ポリアミド酸溶液が適切な粘度を有する。
【0069】
ポリアミド酸の重合に際しては、酸二無水物の開環を抑制するため、ジアミンにテトラカルボン酸二無水物を加える方法が好ましい。複数種のジアミンや複数種のテトラカルボン酸二無水物を添加する場合は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。モノマーの添加順序を調整することにより、ポリイミドの諸物性を制御することもできる。
【0070】
ポリアミド酸の重合に使用する有機溶媒は、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物と反応せず、ポリアミド酸を溶解させ得る溶媒であれば、特に限定されない。有機溶媒としては、メチル尿素、N,N-ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォン等のスルホキシドあるいはスルホン系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p-クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独でまたは必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて用いる。ポリアミド酸の溶解性および重合反応性の観点から、DMAc、DMF、NMP等が好ましく用いられる。
【0071】
ポリアミド酸の脱水環化によりポリイミドが得られる。ポリアミド酸溶液からポリイミドを調製する方法として、ポリアミド酸溶液に脱水剤、イミド化触媒等を添加し、溶液中でイミド化を進行させる方法が挙げられる。イミド化の進行を促進するため、ポリアミド酸溶液を加熱してもよい。ポリアミド酸のイミド化により生成したポリイミドが含まれる溶液と貧溶媒とを混合することにより、ポリイミドが固形物として析出する。ポリイミドを固形物として単離することにより、ポリアミド酸の合成時に発生した不純物や、残存脱水剤およびイミド化触媒等を、貧溶媒により洗浄・除去可能であり、ポリイミドの着色や黄色度の上昇等を防止できる。また、ポリイミドを固形物として単離することにより、フィルム等の成形体を作製するための溶液を調製する際に、低沸点溶媒等のフィルム化に適した溶媒を適用できる。
【0072】
ポリイミドの分子量(ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量)は、10,000~500,000が好ましく、20,000~400,000がより好ましく、40,000~300,000がさらに好ましい。分子量が過度に小さい場合、フィルムの強度が不足する場合がある。分子量が過度に大きい場合、ポリエステル系樹脂との相溶性に劣る場合や製膜性に劣る場合がある。
【0073】
樹脂組成物およびフィルムの熱安定性および光安定性の観点から、ポリイミドは反応性が低いことが好ましい。ポリイミドの酸価は、0.4mmol/g以下が好ましく、0.3mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以下がさらに好ましい。ポリイミドの酸価は、0.1mmol/g以下、0.05mmol/g以下または0.03mmol/g以下であってもよい。酸価を小さくする観点から、ポリイミドはイミド化率が高いことが好ましい。酸価が小さいことにより、ポリイミドの安定性が高められるとともに、ポリエステル系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。
【0074】
(ポリエステル系樹脂)
本発明におけるポリエステル系樹脂は、アリール化フルオレンを側鎖に有するポリエステル樹脂であることを特徴とする。具体的には、下記式(3)において、nが1である化合物(化合物(a1)ということがある)を少なくとも含むジオール成分(ジオール成分(a)ということがある)と、ジカルボン酸成分(ジカルボン酸成分(b))とを重合成分とするポリエステル(ポリエステル樹脂)などが挙げられる。
【化10】
【0075】
前記ジオール成分(a)は、前記化合物(a1)で構成されている限り、他のジオール成分(化合物(a1)以外のジオール成分)を含んでいてもよい。このような他のジオール成分(ジオール成分(a2)ということがある)としては、例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2-10アルカンジオール、好ましくはC2-6アルカンジオール、さらに好ましくはC2-4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2-4アルカンジオールなど)、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5-8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C5-8シクロアルカンなど)、ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、芳香脂肪族ジオール[1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C6-10アレーンなど]、ビフェノール、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1-10アルカンなど]などが挙げられる。他のジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0076】
これらのジオール成分(a2)のうち、重合性の点、ポリエステル系樹脂にバランスよく光学的特性を付与するという点からは、アルカンジオール、ポリアルカンジオールなどが好ましく、特に、C2-4アルカンジオール(特にエチレングリコールなどのC2-3アルカンジオール)が好ましい。
【0077】
ポリエステル系樹脂において、前記化合物(a1)(又は化合物(a1)のジオール単位)とジオール成分(a2)(又はジオール成分(a2)のジオール単位)との割合(モル比)は、前者/後者=30/70~99/1(例えば、40/60~99/1)程度の広い範囲から選択できるが、優れた光学的特性(高屈折率など)を付与するという観点からは、特に、50/50~99/1、好ましくは60/40~95/5、さらに好ましくは70/30~90/10(例えば、75/25~85/15)程度であってもよい。このような範囲でジオール成分(a2)を併用すると、高い重合性で、高耐熱性及び高屈折率(さらには、低複屈折性)のポリエステル系樹脂を得ることができる。
【0078】
なお、前記化合物(a1)の割合は、ジオール成分全体に対して、30モル%以上(例えば、40~100モル%)の範囲から選択でき、例えば、50モル%以上(例えば、55~100モル%程度)、好ましくは60モル%以上(例えば、65~99モル%程度)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、75~95モル%程度)であってもよく、通常60~90モル%程度であってもよい。
【0079】
なお、必要に応じて、ジオール成分に加えて、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール成分[例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのアルカンポリオール、フルオレン骨格を有するポリオール(ビスカテコールフルオレンなど)など]を少量[例えば、ジオール成分とポリオール成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.1~8モル%、好ましくは0.2~5モル%程度)]使用してもよい。
【0080】
また、前記ポリエステル系樹脂において、ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸[例えば、アルカンジカルボン酸(アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC2-20アルカン-ジカルボン酸、好ましくはC2-14アルカン-ジカルボン酸など)など];脂環族ジカルボン酸[例えば、シクロアルカンジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸など)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸など)など];芳香族ジカルボン酸[例えば、アレーンジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などのC6-14アレ-ンジカルボン酸など)、ビフェニルジカルボン酸(2,2’-ビフェニルジカルボン酸など)、ジフェニルアルカンジカルボン酸(4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、2,2-ジ(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのジフェニルC1-10アルカンジカルボン酸)、ジフェニルケトンジカルボン酸(4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸など)、ジフェニルエーテルジカルボン酸(4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸など)、フルオレン骨格を有するジカルボン酸など];これらの誘導体[例えば、ジカルボン酸ハライド(ジカルボン酸ジクロライド)、ジカルボン酸無水物、低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステルなどのC1-4アルキルエステル、好ましくはC1-2アルキルエステルなど)など]などが例示できる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジカルボン酸成分のうち、脂環族ジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロアルカンジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸などのアレーンジカルボン酸)、これらの誘導体(特に、メチルエステルなどの低級アルキルエステル)が好ましい。すなわち、脂環族ジカルボン酸成分を使用すると、複屈折を低下させることができ、芳香族ジカルボン酸成分を使用すると、耐熱性及び屈折率を向上できる点で好ましい。
【0081】
なお、必要に応じて、ジカルボン酸成分に加えて、3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸など)を少量[例えば、ジカルボン酸成分とポリカルボン酸成分との総量に対して10モル%以下(例えば、0.1~8モル%、好ましくは0.2~5モル%程度)]使用してもよい。
【0082】
ポリエステル系樹脂の好ましい態様(ジオール成分とジカルボン酸成分との好ましい組合せ)には、以下の(i)及び(ii)などが含まれる。
【0083】
(i)ジオール成分が、前記化合物(a)と、エチレングリコールなどのC2-4アルカンジオールとを、前者/後者(モル比)=50/50~99/1(例えば、55/45~97/3、好ましくは65/35~95/5、さらに好ましくは70/30~93/7、特に75/25~90/10)程度の割合で含むジオール成分であり、ジカルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸成分(例えば、テレフタル酸ジメチルなどのアレーンジカルボン酸又はこの誘導体)であるポリエステル樹脂。
【0084】
このようなポリエステル系樹脂は、前記化合物(a)と芳香族ジカルボン酸成分とを組み合わせているため、非常に高い屈折率および耐熱性を有している。また、芳香族ジカルボン酸成分を含んでいるにもかかわらず、比較的複屈折が低く、通常、両立が難しい高屈折率と低複屈折性とを備えたポリエステル樹脂である。
【0085】
(ii)ジオール成分が、前記化合物(a)と、エチレングリコールなどのC2-4アルカンジオールとを、前者/後者(モル比)=50/50~99/1(例えば、55/45~97/3、好ましくは65/35~95/5、さらに好ましくは70/30~93/7、特に75/25~90/10)程度の割合で含むジオール成分であり、ジカルボン酸成分が、脂環族ジカルボン酸成分(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロアルカンジカルボン酸又はこの誘導体)であるポリエステル樹脂。
【0086】
このようなポリエステル系樹脂は、複屈折が非常に小さい。また、前記化合物(a)と脂環族ジカルボン酸成分との組み合わせにより、脂環族ジカルボン酸成分を含んでいるにもかかわらず、比較的高屈折率(さらには高耐熱性)であり、低複屈折性と高屈折率とを両立できる。
【0087】
なお、ポリエステル系樹脂は、前記のように、前記ジオール成分(a)と、前記ジカルボン酸成分(b)とを重合成分とするポリエステル樹脂であり、通常、下記式(4)で表されるユニットを有するポリエステルである。
【0088】
【0089】
(式中、Aはジカルボン酸成分(b)の残基を示し、Z、R1、R2、R3、k、mおよびpは前記と同じ)。
【0090】
有機溶媒への溶解性、上記のポリイミドとの相溶性および成形体の強度の観点から、ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、例えば、10000~200000程度の範囲から選択でき、例えば、15000~150000、好ましくは20000~100000、さらに好ましくは30000~80000程度であってもよい。ポリエステル系樹脂の分子量が小さすぎる場合、得られるフィルムの耐久性が低下する場合がある。ポリエステル系樹脂の分子量が高すぎる場合、製膜性に劣る場合がある。
【0091】
樹脂組成物および成形体の耐熱性の観点から、ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、50~350℃、好ましくは60~300℃、さらに好ましくは70~250℃、特に80~200℃程度であってもよい。
【0092】
なお、重合法については特に限定されず、公知の製法を用いれば良い。製法としては例えば、エステル交換反応法、直接エステル化法によりオリゴマーを得た後溶融重合、あるいはさらに固相重合して得ること等ができるが、ここに挙げた製法に限定されない。
【0093】
ポリエステル系樹脂は、一般的に用いられる有機溶媒に対する溶解性を有していれば良いが、ポリイミドの溶解性及びポリイミドとの相溶性という観点からは、特にアミド系溶媒等の高極性溶媒に対する溶解性を有することが好ましい。ポリイミドは一般に、アミド系溶媒等の高極性溶媒にしか溶解しないため、ポリエステル系樹脂がアミド系溶媒等の高極性溶媒に溶解することで、ポリイミドとの相溶を行うことが容易となる。
【0094】
ポリエステル系樹脂としては例えば、OKP-4HT(大阪ガスケミカル株式会社製、重量平均分子量3.8万、Tg:142℃)等が挙げられる。
【0095】
<樹脂組成物の調製>
上記のポリイミドとポリエステル系樹脂とを混合して、樹脂組成物を調製する。樹脂組成物におけるポリイミドとポリエステル系樹脂との比率は特に限定されない。ポリイミドとポリエステル系樹脂の混合比(重量比)は、98:2~2:98、95:5~10:90、または90:10~15:85であってもよい。ポリイミドの比率が高いほど、フィルム等の成形体の機械強度が高くなる傾向がある。ポリエステル系樹脂の比率が高いほど、フィルム等の成形体の着色が少なく透明性が高くなる傾向がある。
【0096】
ポリイミドとポリエステル系樹脂との混合による透明性向上の効果を十分に発揮するためには、ポリイミドとポリエステル系樹脂の合計に対するポリエステル系樹脂の比率は、10重量%以上が好ましく、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上であってもよい。
【0097】
ポリイミドは特殊な分子構造を有するポリマーであり、一般には、有機溶媒に対する溶解性が低く、他のポリマーとは相溶性を示さない。本実施形態では、特定のポリイミドを用いることにより、有機溶媒に対して高い溶解性を示すとともに、ポリエステル系樹脂との相溶性を示す。ポリイミドとポリエステル系樹脂が溶液状態において相溶性を示すか否かは、樹脂組成物を固形分濃度が10重量%となるようにジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させて確認する。DMF溶液が相分離しておらず、透明であれば、樹脂組成物において、ポリイミドとポリエステル系樹脂は相溶性を示すと判断し、DMF溶液が2相以上に分離している場合や濁っている場合は、ポリイミドとポリエステル系樹脂は相溶性を示さないと判断する。ポリイミドおよびポリエステル系樹脂を含む溶液の光路長1cmで測定したヘイズは、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0098】
ポリイミドとポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物は、固体状態において、示唆走査熱量測定(DSC)および/または動的粘弾性測定(DMA)において単一のガラス転移温度を有することが好ましい。樹脂組成物が単一のガラス転移温度を有するとき、ポリイミドとポリエステル系樹脂が完全に相溶しているとみなすことができる。ポリイミドとポリエステル系樹脂を含む成形体も単一のガラス転移温度を有することが好ましい。
【0099】
前述のように、ポリイミドがジアミン由来構造にフルオロアルキル基を有し、テトラカルボン酸二無水物由来構造にエステル構造を有することにより、ポリエステル系樹脂との相溶性を示す。ポリイミドがポリエステル系樹脂と相溶性を示すか否かは、フルオロアルキル基含有モノマーの種類および含有量、エステル構造含有モノマーの種類及び含有量、その他のモノマーの種類および含有量、ならびにポリエステル系樹脂の種類等に左右される。
【0100】
樹脂組成物は、固形分として析出させたポリイミドとポリエステル系樹脂を単に混合したものでもよく、ポリイミドとポリエステル系樹脂を混錬したものであってもよい。また、ポリイミド溶液を貧溶媒と混合してポリイミド樹脂を析出させる際に、溶液にポリエステル系樹脂を混合して、ポリイミドとポリエステル系樹脂を混合した樹脂組成物を固形物(粉末)として析出させてもよい。
【0101】
樹脂組成物は、ポリイミドとポリエステル系樹脂とを含む混合溶液であってもよい。樹脂の混合方法は特に限定されず、固体の状態で混合してもよく、液体中で混合して混合溶液としてもよい。ポリイミド溶液およびポリエステル系樹脂溶液を個別に調製し、両者を混合してポリイミドとポリエステル系樹脂との混合溶液を調製してもよい。
【0102】
ポリイミドおよびポリエステル系樹脂を含む溶液の溶媒としては、ポリイミドおよびポリエステル系樹脂の両方に対する溶解性を示すものであれば良く、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒が挙げられる。
【0103】
一般的に、ポリイミドは溶媒に対する溶解性が低く、高極性溶媒にのみ溶解する場合が多い。そのため、溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒がより好ましい。これら溶媒を用いることで、ポリイミドとポリエステル系樹脂との相溶性が向上する場合がある。また、これらポリイミドが溶解しやすい溶媒を用いることで、得られる溶液の粘度が低下し、その結果、取り扱い性が向上したり、製膜等により成形品を作成する際にムラ等の外観不良が生じにくくなったりする効果が得られることがある。
【0104】
樹脂組成物には、有機または無機の低分子化合物、高分子化合物(例えばエポキシ樹脂)等を配合してもよい。樹脂組成物は、難燃剤、紫外線吸収剤、架橋剤、染料、顔料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を含んでいてもよい。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、多孔質や中空構造であってもよい。繊維強化材には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が含まれる。
【0105】
[成形体およびフィルム]
上記の組成物は、各種の成形体の形成に使用できる。成形法としては、射出成形、トランスファー成形、プレス成形、ブロー成形、インフレーション成形、カレンダー成形、溶融押出成形等の溶融法が挙げられる。ポリイミドとポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物は、ポリイミド単体に比べて溶融粘度が小さい傾向があり、射出成形、トランスファー成形、プレス成形、溶融押出成形等の成形性に優れている。
【0106】
また、ポリイミドとポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物の溶液は、同一の固形分濃度のポリイミド単体の溶液に比べて溶液粘度が低い傾向がある。そのため、溶液の輸送等の取扱性に優れるとともに、コーティング性が高く、フィルムの厚みムラ低減等において有利である。
【0107】
一実施形態において成形体はフィルムである。フィルムの成形方法は、溶融法および溶液法のいずれでもよいが、透明性および均一性に優れるフィルムを作製する観点からは溶液法が好ましい。溶液法では、上記のポリイミドおよびポリエステル系樹脂を含む溶液を、支持体上に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより、フィルムが得られる。
【0108】
樹脂溶液を支持体上に塗布する方法としては、バーコーターやコンマコーター等を用いた公知の方法を適用できる。支持体としては、ガラス基板、SUS等の金属基板、金属ドラム、金属ベルト、プラスチックフィルム等を使用できる。生産性向上の観点から、支持体として、金属ドラム、金属ベルト等の無端支持体、または長尺プラスチックフィルム等を用い、ロールトゥーロールによりフィルムを製造することが好ましい。プラスチックフィルムを支持体として使用する場合、製膜ドープの溶媒に溶解しない材料を適宜選択すればよい。
【0109】
溶媒の乾燥時には加熱を行うことが好ましい。加熱温度は溶媒が除去でき、かつ得られるフィルムの着色を抑制できる温度であれば特に制限されず、室温~250℃程度で適宜に設定され、50℃~220℃が好ましい。加熱温度は段階的に上昇させてもよい。溶媒の除去効率を高めるために、ある程度乾燥が進んだ後に、支持体から樹脂膜を剥離して乾燥を行ってもよい。溶媒の除去を促進するために、減圧下で加熱を行ってもよい。ポリイミドとポリエステル系樹脂の相溶系となることで、ポリイミド単独と比較してガラス転移温度が低下しているため、ポリイミド単独と比較してより低い乾燥温度でも溶媒を除去することが可能となり、その結果、フィルムの着色を低減する事が可能となる。
【0110】
ポリエステル系樹脂フィルムは、靭性が低い場合があるが、ポリイミドとポリエステル系樹脂との相溶系を採用することによりフィルムの強度が向上する場合がある。フィルムの機械強度向上等を目的として、一方向または複数の方向に延伸を行ってもよい。フィルムを延伸するとポリマー鎖が延伸方向に配向するため、フィルムの面内方向の強度が向上し、フィルムの割れやクラックの発生が抑制される傾向がある。
【0111】
特に、ポリイミドとポリエステル系樹脂との相溶系では、延伸方向の引張弾性率が大きくなりこれに伴って耐屈曲性が向上する傾向がある。
【0112】
例えば、折りたたみ可能な表示装置(フォルダブルディスプレイ)のカバーフィルムや基板材料として用いられるフィルムは、同一箇所で折り曲げ軸に沿って折り曲げが繰り返されるため、折り曲げ軸と直交する方向の機械強度が高いことが求められる。そのため、フィルムの延伸方向が折り曲げ軸と直交するように配置することにより、折り曲げを繰り返しても、折り曲げ箇所でのフィルムの割れやクラックが生じ難く、折り曲げ耐性の高いデバイスを提供できる。
【0113】
フィルムの延伸条件は特に限定されない。例えば、延伸温度は、フィルムのガラス転移温度±40℃程度であり、120~300℃、150~250℃または180~230℃程度であってもよい。延伸倍率は、1~200%程度であり、5~150%、10~120%、20~100%であってもよい。延伸倍率が大きいほど、延伸方向の引張弾性率が大きくなる傾向がある。一方、延伸倍率が過度に大きい場合は、延伸方向と直交する方向の機械強度が低下する傾向があり、フィルムのハンドリング性が低下する場合がある。
【0114】
面内の任意の方向における強度を高める観点から、フィルムを二軸延伸してもよい。二軸延伸は同時二軸延伸でもよく、逐次二軸延伸でもよい。二軸延伸では、一方向の延伸倍率と、その直交方向の延伸倍率とが、同一でもよく異なっていてもよい。延伸倍率に差を設けると、延伸倍率が大きい方向の機械強度が相対的に大きくなる傾向がある。延伸倍率に異方性がある二軸延伸フィルムをフォルダブルデバイスに使用する場合は、延伸倍率が大きい方向を折り曲げ軸と直交するように配置することが好ましい。
【0115】
フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。フィルムの厚みは、例えば5~300μmである。自己支持性と可撓性とを両立し、かつ透明性の高いフィルムとする観点から、フィルムの厚みは20μm~200μmが好ましく、30μm~150μm、40μm~100μm、または50μm~80μmであってもよい。ディスプレイのカバーフィルム用途としてのフィルムの厚みは、10μm以上が好ましい。フィルムを延伸する場合は、延伸後の厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0116】
フィルムのヘイズは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましく、3.5%以下、3%以下、2%以下または1%以下であってもよい。フィルムのヘイズは低いほど好ましい。上記の様に、ポリイミドとポリエステル系樹脂が相溶性を示すため、ヘイズが低く、透明性の高いフィルムが得られる。ポリイミドとポリエステル系樹脂を混合した樹脂組成物は、厚み10μmのフィルムを作製した際のヘイズが10%以下であることが好ましい。
【0117】
フィルムの全光線透過率は85%以上が好ましく、90%以上が好ましい。ポリイミドとポリエステル系樹脂を混合した樹脂組成物は、厚みが10μmのフィルムを作製した際の全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0118】
フィルムの黄色度(YI)は、5.0以下が好ましく、4.0以下、3.0以下、2.0以下、1.5以下または1.0以下であってもよい。ポリイミドとポリエステル系樹脂を混合した樹脂組成物は、厚みが10μmのフィルムを作製した際の黄色度が5.0以下であることが好ましい。上記のように、ポリイミドとポリエステル系樹脂とを混合することにより、ポリイミドを単独で用いる場合に比べて、着色が少なく、YIの小さいフィルムが得られる。
【0119】
強度の観点から、室温におけるフィルムの引張弾性率は2.0GPa以上が好ましく、3.0GPa以上がより好ましい。上記のように、引張弾性率が異方性を有していてもよく、少なくとも一方向の引張弾性率が、4.0GPa以上、5.0GPa以上、5.5GPa以上、6.0GPa以上、6.5GPa以上または7.0GPa以上であってもよい。フィルムの鉛筆硬度は、6B以上が好ましく、4B以上が好ましく、2B以上、F以上、または2H以上であってもよい。ポリイミドとポリエステル系樹脂との相溶系においては、ポリエステル系樹脂の比率を高めても鉛筆硬度が低下し難い。そのため、ポリイミド特有の優れた機械強度を大きく低下させることなく、着色が少なく透明性に優れるフィルムを提供できる。
【0120】
耐熱性の観点から、150℃におけるフィルムの引張り弾性率は、1.0MPa以上が好ましく、10.0MPa以上がより好ましく、100MPa以上が更に好ましい。高温での弾性率が高いことで、高温環境下や長期使用環境下における成形体の変形量が小さくなり好ましい。
【0121】
ポリイミドとポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物により形成されるフィルムは、着色が少なく、透明性が高いことから、ディスプレイ材料として好適に用いられる。特に、機械的強度が高いフィルムは、ディスプレイのカバーウインドウ等の表面部材への適用が可能である。本発明のフィルムは、実用に際して、表面に帯電防止層、易接着層、ハードコート層、反射防止層等を設けてもよい。
【実施例0122】
以下、実施例を示して本発明の実施形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
[ポリイミド樹脂の調製]
セパラブルフラスコにジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載)を投入し、窒素雰囲気下で撹拌した。そこに、表1に示す比率(モル%)で、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物を投入し、更に酢酸を投入後、窒素雰囲気下にて5~10時間撹拌して反応させ、固形分濃度13重量%のポリアミド酸溶液を得た。ポリアミド酸溶液に、イミド化触媒としてピリジンを添加し、完全に分散させた後、無水酢酸を添加し、90℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶液を攪拌しながら、2-プロピルアルコール(以下、IPAと記載)を滴下して、ポリイミド樹脂を析出させた。さらにIPAを添加し、約30分撹拌後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。得られた固体をIPAで洗浄した後、120℃に設定した真空オーブンで12時間乾燥させて、ポリイミド樹脂を得た。
【0124】
[樹脂組成物(溶液)の調製およびフィルムの作製]
<ポリイミドとポリエステル系樹脂の樹脂組成物>
DMFに、上記のポリイミド樹脂と、市販のポリエステル系樹脂(大阪ガスケミカル製「OKP-4HT」、重量平均分子量3.8万、以下「PET」)を、表1に記載の重量比で投入し、固形分10重量%のDMF溶液を調製した。
【0125】
上記の溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、60℃で15分、150℃で30分、200℃で15分、大気雰囲気下で加熱乾燥し、厚さ約10μmのフィルムを作製した。
【0126】
[評価]
<溶媒中での相溶性>
上記の製造例で得られたポリイミドとポリエステル系樹脂のDMF溶液を目視で観察し、DMF溶液が相分離しておらず、透明であれば、樹脂組成物において、ポリイミドとポリエステル系樹脂は相溶性を示すと判断し、DMF溶液が2相以上に分離している場合や濁っている場合は、ポリイミドとポリエステル系樹脂は相溶性を示さないと判断した。
【0127】
<ヘイズおよび全光線透過率>
厚さ10μmフィルム付きガラスを、スガ試験機製のヘイズメーター「HZ-V3」により、JIS K7136およびJIS K7361-1に従って、ヘイズおよび全光線透過率(TT)を測定した。
【0128】
<黄色度>
厚さ10μmフィルム付きガラスを、スガ試験機製の分光測色計「SC-P」により、JIS K7373に従って黄色度(YI)を測定した。
【0129】
<重量平均分子量>
PET(大阪ガスケミカル製「OKP-4HT」)が溶液に対して0.15wt%となるように表2に示す溶離液で溶かした後に以下の条件にて重量平均分子量を測定した。
【表1】
【0130】
表1において、化合物は以下の略称により記載している。
<ジアミン>
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
33DDS:3,3’-ジアミノジフェニルスルホン
ISO:イソホロンジアミン
BAMC:1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
22BZ:2,2’-ジメチルベンジジン
BAPP:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェニル-1,1’-ジイルジオキシ)ジアニリン
【0131】
<テトラカルボン酸二無水物>
TAHMBP:ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジイル
BP-TME:ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)ビフェニル-4,4’-ジイル
TAHQ:ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸無水物
H-PMDA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
【0132】
【0133】
実施例1~7で示したポリイミドとPET樹脂のアロイフィルムは、10%以下のヘイズ、85%以上の全光線透過率(Tt)を示していた。
一方でテトラカルボン酸二無水物由来構造がエステル構造を有さない比較例1~4は、溶媒中でのPET樹脂との相溶性が悪く、フィルム化してもヘイズが高くなり透明性が不十分であった。テトラカルボン酸二無水物由来構造がエステル構造を有した場合でもジアミン由来構造がフルオロアルキル基を有さない比較例5では比較例1~4と同様にポリイミドとPET樹脂との相溶性を示さなかった。比較例6および7は、ポリイミド樹脂の溶解性が低いため、イミド化時点で重合溶液がゲル化し、ポリイミド樹脂及びそのアロイフィルムを得ることができなかった。