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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043476
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】浴室床の排水口構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
E03C1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051677
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022148257
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩坪 徳泰
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061CA02
2D061CB06
2D061CC13
2D061DE01
(57)【要約】
【課題】浴室床の排水口構造における排水縁部材と排水ベース部材との間を確実に止水するとともに、リフォームに際して止水手段の除去作業の手間を省き、かつリフォーム後の止水不良が起きるのを防止する。
【解決手段】浴室床3の排水口39を画成する排水ベース部材31における浴室床面21に臨む上端部に、排水口39を囲む環状の受け座33を形成する。排水口39の上端部39eを画成する排水縁部材40を、受け座33に分離可能に設置する。浴室床面21を構成する表層シート20の排水口縁23と排水縁部材40とを接合する。受け座33の環状のシール受け面33sと排水縁部材40との間に、圧縮可能な環状のシール部材50を設ける。シール部材50は、嵌合又は接着によって排水縁部材40に保持される一方、排水ベース部材31とは分離可能とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室床の排水口を画成するとともに、浴室床面に臨む上端部には前記排水口を囲む環状の受け座が形成された排水ベース部材と、
前記受け座に分離可能に設置されて、前記排水口の上端部を画成するとともに、前記浴室床面を構成する表層シートの排水口縁と接合される排水縁部材と、
前記受け座に設けられた環状のシール受け面と前記排水縁部材との間に介在された圧縮可能な環状のシール部材と、
を備え、前記シール部材が、嵌合又は接着によって前記排水縁部材に保持される一方、前記排水ベース部材とは分離可能であることを特徴とする浴室床の排水口構造。
【請求項2】
前記シール部材の断面形状が円形状である請求項1に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項3】
前記排水縁部材における前記シール受け面との対向面には陥入突起が形成され、
前記シール部材には、前記陥入突起が陥入される凹みが形成されている請求項1に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項4】
前記排水縁部材には、前記シール受け面へ向かって開く開口を有するシール保持凹部が形成され、
前記シール部材が、前記開口から突出されるように前記シール保持凹部に収容されて保持されている請求項1~3の何れかに記載の浴室床の排水口構造。
【請求項5】
前記排水縁部材が、前記シール部材を、前記シール受け面へ向かって突出されるように保持する保持部を有し、
前記受け座が、前記保持部を受け容れる保持受け凹部を有し、前記シール受け面が前記保持受け凹部に面している請求項1~3の何れか1項に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項6】
前記保持部における前記シール受け面とは反対側を向く背面と、前記保持受け凹部における前記シール受け面と対向する側面とが、互いに同一の傾斜角度で、前記保持受け凹部の底部へ向かうにしたがって前記シール受け面へ近づくように傾斜されている請求項5に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項7】
前記受け座には凸壁部が設けられ、
前記排水縁部材における前記排水口の上端部の周縁を画成する部分が、排水口側から前記凸壁部に被さっている請求項1~3の何れか1項に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項8】
前記受け座及び前記排水縁部材の一方には嵌合孔が形成され、前記受け座及び前記排水縁部材の他方には、前記嵌合孔に嵌る嵌合突起が形成されている請求項1~3の何れか1項に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項9】
前記排水縁部材が、前記シール部材を、前記シール受け面へ向かって突出されるように保持する保持部を有し、
前記受け座が、前記保持部を受け容れる保持受け凹部を有し、前記シール受け面が前記保持受け凹部に面しており、
前記保持受け凹部及び前記保持部の一方に前記嵌合孔が形成され、前記保持受け凹部及び前記保持部の他方に前記嵌合突起が形成され、
前記保持部の底面には、前記保持受凹部の凹底面に突き当たる底凸部が形成されている請求項8に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項10】
前記受け座と前記排水縁部材との間の隙間に充填式水密材が設けられている請求項1~3の何れか1項に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項11】
前記保持受け凹部の入隅部と前記保持部の出隅部との間のコーナー隙間に充填式水密材が設けられている請求項5に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項12】
前記保持受け凹部の凹底面と前記保持部の底面との間の底面隙間に充填式水密材が設けられている請求項5に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項13】
前記凹底面と前記底面との対向距離が1mm以下であり、前記排水口の周方向と直交する幅方向に沿う前記底面の幅が3mm以上である請求項12に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項14】
前記受け座には、前記底面隙間に連なる逃がし開口が形成されている請求項12に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項15】
前記保持受け凹部の凹底面と前記保持部の底面との間の底面隙間に充填式水密材が設けられている請求項9に記載の浴室床の排水口構造。
【請求項16】
前記底凸部の突出高さが1mm以下であり、前記排水口の周方向と直交する幅方向に沿う前記底面の幅が3mm以上である請求項15に記載の浴室床の排水口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室床から排水するための排水口構造に関し、特にリフォームに適した排水口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の浴室ユニットにおいては、例えば毛染め剤など除去し難い汚れが付着した床面をきれいにする場合、床を交換するか、塗装して隠していた。
【0003】
特許文献1の浴室ユニットにおいては、床面を構成する表層シートが貼り替え可能になっている。表層シートの排水口周縁部の裏面には、排水口の上端部を画成する排水縁部材が両面粘着テープ等で接着されている。排水縁部材は、排水ベース部材の上側部に分離可能に嵌め込まれている。排水ベース部材によって、排水口の前記上端部を除く主部が画成されている。排水ベース部材と排水縁部材との間には、充填式の水密材が設けられている。貼替工事時には、表層シートを引き剥がした後、排水縁部材を排水ベース部材から分離して撤去する。排水ベース部材は残置する。その後、新たな表層シート及び排水縁部材を設置する。新たな排水縁部材の設置に際し、残置された排水ベース部材の水密材用凹溝に水密材を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-94758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲特許文献1の浴室ユニットの排水口構造においては、排水ベース部材と排水縁部材との間を充填式の水密材だけでシールしているため、充填すべき水密材の所要量が多く充填作業に時間がかかる。また、床貼替等のリフォームに際し、古い排水縁部材を撤去後、排水ベース部材の水密材用凹溝内に残った古い水密材を取り除く作業に時間がかかり煩雑である。除去が不十分であると、古い水密材が残置されることで、リフォーム後の排水ベース部材と排水縁部材との間の止水に影響が出ることも想定される。
本発明は、かかる事情に鑑み、浴室の排水口構造における排水縁部材と排水ベース部材との間を確実に止水するとともに、リフォームに際して水密材(止水手段)の除去作業を容易化し、リフォーム後の止水不良が起きるのを抑制又は防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る浴室床の排水口構造は、
浴室床の排水口を画成するとともに、浴室床面に臨む上端部には前記排水口を囲む環状の受け座が形成された排水ベース部材と、
前記受け座に分離可能に設置されて、前記排水口の上端部を画成するとともに、前記浴室床面を構成する表層シートの排水口縁と接合される排水縁部材と、
前記受け座に設けられた環状のシール受け面と前記排水縁部材との間に介在された圧縮可能な環状のシール部材と、
を備え、前記シール部材が、嵌合又は接着によって前記排水縁部材に保持される一方、前記排水ベース部材とは分離可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、浴室床の排水口構造における、排水ベース部材と排水縁部材との間の止水手段として、特許文献1の充填式型の水密材の全部又は一部に代えて、乾式かつ非充填式の圧縮可能な弾性シール部材を使用するものである。排水縁部材に保持されたシール部材が圧縮されて排水ベース部材の受け座のシール受け面に密着されることによって水密性が発現し、排水ベース部材と排水縁部材との間を確実に止水できる。シール部材に加えて充填式の水密材を用いる場合でも、充填式の水密材は、シール部材のシール機能のばらつきを補完する位置付けで済み、少量で済むから、充填作業を短時間で簡単に行なうことができる。なお、シール部材のシール機能のばらつきは、浴室床排水口構造の構成部材の寸法誤差や欠損等に起因して生じ得る。
リフォーム時には、古い排水縁部材を排水ベース部材から分離して撤去すると、シール部材が排水縁部材と一緒に排水ベース部材から分離されて撤去される。したがって、リフォーム作業を容易化できる。充填式の水密材が用いられていたとしても少量であるから除去作用を短時間で簡単に行なうことができ、充填式の水密材の除去不十分によるリフォーム後の止水不良が起きるのを抑制又は防止できる。
【0008】
前記シール部材の材質は、好ましくは乾式のEPDMゴム、シリコーンゴム等の弾性体である。
好ましくは、前記シール部材の断面形状が円形状である。
これによって、水密性を測りやすくなる。また、形状がシンプルで製造しやすい。
【0009】
好ましくは、前記排水縁部材における前記シール受け面との対向面には陥入突起が形成され、前記シール部材には、前記陥入突起が陥入される凹みが形成されている。
これによって、シール部材のズレを防止でき、かつ水密性を確実に発現できる。
【0010】
好ましくは、前記排水縁部材には、前記シール受け面へ向かって開く開口を有するシール保持凹部が形成され、
前記シール部材が、前記開口から突出されるように前記シール保持凹部に収容されて保持されている。
これによって、シール部材におけるシール保持凹部の開口から突出された部分がシール受け面に当たり、シール部材がシール受け面と直交する方向に圧縮されて、水密性が発現される。前記圧縮される方向を横向きにすることで、排水口構造が上から踏まれる等しても、シール部材に上下方向の反発力が発生することがなく、排水縁部材及び表層シートの排水口縁の浮きを防止できる。
【0011】
好ましくは、前記特徴又は前記何れかの好ましい発明形態において、前記排水縁部材が、前記シール部材を、前記シール受け面へ向かって突出されるように保持する保持部を有し、前記受け座が、前記保持部を受け容れる保持受け凹部を有し、前記保持受け凹部の一側面が前記シール受け面となっている。
前記保持受け凹部に保持部を嵌め入れることで、保持部に保持されたシール部材がシール受け面に当たって圧縮され、水密性が発現される。シール部材の反発力によって排水縁部材が変形しようとしても、保持受け凹部におけるシール受け面と対向する側面に当たることで変形を低減でき、水密性を確保できる。
【0012】
好ましくは、前記保持部における前記シール受け面とは反対側を向く背面と、前記保持受け凹部における前記シール受け面と対向する側面とが、互いに同一の傾斜角度で、前記保持受け凹部の底部へ向かうにしたがって前記シール受け面へ近づくように傾斜されている。
これによって、前記シール部材の反発力によって、保持部の背面と保持受け凹部の対向する側面とが面接触されて互いに強く押し当たる。したがって、汚れなどの異物が保持受け凹部内に入り込むのを防ぐことができる。
【0013】
好ましくは、前記特徴又は前記何れかの好ましい発明形態において、前記受け座には凸壁部が設けられ、前記排水縁部材における前記排水口の上端部の周縁を画成する部分が、排水口側から前記凸壁部に被さっている。
これによって、例えば排水口を流れる洗剤成分等を含んだ排水がシール受け面及びシール部材と直接接触して環境応力腐食割れが起きるのを防ぐことができる。
【0014】
好ましくは、前記特徴又は前記何れかの好ましい発明形態において、前記受け座及び前記排水縁部材の一方には嵌合孔が形成され、前記受け座及び前記排水縁部材の他方には、前記嵌合孔に嵌る嵌合突起が形成されている。
これによって、排水ベース部材と排水縁部材とを、ビス等の別の連結部材を使用することなく相互に連結することが出来る。
【0015】
好ましくは、前記排水縁部材が、前記シール部材を、前記シール受け面へ向かって突出されるように保持する保持部を有し、
前記受け座が、前記保持部を受け容れる保持受け凹部を有し、前記シール受け面が前記保持受け凹部に面しており、
前記保持受け凹部及び前記保持部の一方に前記嵌合孔が形成され、前記保持受け凹部及び前記保持部の他方に前記嵌合突起が形成され、
前記保持部の底面には、前記保持受凹部の凹底面に突き当たる底凸部が形成されている。
嵌合孔と嵌合突起との嵌め合いによって、排水ベース部材と排水縁部材とをビス等の別の連結部材を使用することなく連結できる。かつ、底凸部が受け座に突き当てられることによって、保持部が相対的に受け座に対して押し上げられ、嵌合突起が嵌合孔の内面に押し当てられる。これによって、排水縁部材のぐらつきを防止できる。
【0016】
前記シール部材のシール機能を補完するために、充填式水密材を併用してもよい。
好ましくは、前記特徴又は前記何れかの好ましい発明形態において、前記受け座と前記排水縁部材との間の隙間に充填式水密材が設けられている。充填式水密材は、少なくとも浴室床の排水口構造への供給時点で流動可能かつ充填可能な不定形の水密材である。
これによって、前記シール部材のシール機能に、浴室床排水口構造の構成部材の寸法誤差や欠損等に起因するばらつきがあったとしても、充填式水密材によって、シール部材のシール機能を補完でき、受け座と排水縁部材との間を確実にシールできる。しかも、少量の充填式水密材でシール補完機能を効果的に発現できる。充填式水密材は少量でよいから、浴室床排水口構造の製造又は設置施工時における充填式水密材の充填作業を短時間で簡単に行なうことができる。また、リフォーム時における充填式水密材の除去作業を短時間で簡単に行なうことができる。
【0017】
より好ましくは、前記保持受け凹部の入隅部と前記保持部の出隅部との間のコーナー隙間に充填式水密材が設けられている。
充填式水密材を、保持受け凹部の内部全体を埋めるように充填する必要は無く、コーナー隙間に局所的に充填すればよい。したがって、浴室床排水口構造の製造又は設置施工時における充填式水密材の充填作業を短時間で簡単に行なうことができる。また、リフォーム時における充填式水密材の除去作業では、専らコーナー隙間の充填式水密材を除去すればよいから、除去作業を短時間で簡単に行なうことができる。
【0018】
より好ましくは、前記保持受け凹部の凹底面と前記保持部の底面との間の底面隙間に充填式水密材が設けられている。
充填式水密材を、保持受け凹部の内部全体を埋めるように充填する必要は無く、底面隙間が埋まる程度に薄く充填すればよい。したがって、浴室床排水口構造の製造又は設置施工時における充填式水密材の充填作業を短時間で簡単に行なうことができる。また、リフォーム時における充填式水密材の除去作業では、専ら底面隙間の充填式水密材を除去すればよいから、除去作業を短時間で簡単に行なうことができる。
【0019】
好ましくは、前記凹底面と前記底面との対向距離が1mm以下であり、前記排水口の周方向と直交する幅方向に沿う前記底面の幅が3mm以上である。
これによって、底面隙間が厚み1mm以下、幅3mm以上となり、底面隙間に充填された充填式水密材が厚み1mm以下、幅3mm以下となる。これによって、充填式水密材が充填後、未硬化であっても、充填式水密材の粘性による流動抵抗が生じてシール補完機能が発現する。したがって、充填した充填式水密材の硬化を待つことなくシール性の試験を行なうことができ、浴室床排水口構造の設置施工後、ただちにシール性試験をしたい場合に好適である。
【0020】
好ましくは、前記特徴又は前記何れかの好ましい発明形態において、前記受け座には、前記底面隙間に連なる逃がし開口が形成されている。
これによって、保持受け凹部に保持部を嵌め込む際、充填式水密材の流動抵抗を下げることで、嵌め込み操作をし易くできる。保持部の嵌め込みに応じて、余分な充填式水密材は底面隙間から逃がし開口へ押し出される。
【0021】
好ましくは、前記底凸部を有する好適発明において、前記保持受け凹部の凹底面と前記保持部の底面との間の底面隙間に充填式水密材が設けられている。
これによって、保持受け凹部に保持部を嵌め込んでいくと、底凸部が保持受け凹部の凹底面に突き当たることで、底面隙間の充填式水密材が過度に押し潰されないようにでき、充填式水密材の必要厚みを確保できる。少量の充填式水密材を底面隙間に薄く広く充填することによって、シール部材のシール機能を補完でき、浴室床排水口構造の製造又は設置施工時における充填式水密材の充填作業を短時間で簡単に行なうことができる。また、リフォーム時における充填式水密材の除去作業を短時間で簡単に行なうことができる。
【0022】
好ましくは、前記底凸部の突出高さが1mm以下であり、前記排水口の周方向と直交する幅方向に沿う前記底面の幅が3mm以上である。
底面隙間の充填式水密材の厚みは、底凸部の突出高さと同等であり、1mm以下となる。前記底凸部からずれた位置における底面隙間の充填式水密材の幅は、前記底面の幅と同等であり、3mm以上となる。これによって、充填式水密材が充填後、未硬化であっても、充填式水密材の粘性による流動抵抗が生じてシール補完機能が発現する。したがって、浴室床排水口構造の設置施工後、ただちにシール性試験をしたい場合に好適である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、浴室床の排水口構造における排水縁部材と排水ベース部材との間を圧縮可能なシール材からなる止水手段によって確実に止水できる。リフォームに際しては、止水手段の除去作業を簡単化でき、又は除去作業の手間を省くことができるから、リフォーム作業を容易化できるとともに、除去不十分によるリフォーム後の止水不良が起きるのを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る浴室の平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図3(a)は、図2に現れた浴室床の排水口構造の排水ベース部材の平面図である。図3(b)は、前記排水口構造の排水縁部材の平面図である。
図4図4は、前記排水口構造の上側部分の断面図である。
図5図5(a)は、浴室床のリフォーム作業を、古い表層シート及び排水縁部材を撤去する工程で示す、排水口構造の上側部分の断面図である。図5(b)は、浴室床のリフォーム作業を、新たな表層シート及び排水縁部材を設置する工程で示す、排水口構造の上側部分の断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る浴室床の排水口構造の上側部分の断面図である。
図7図7は、本発明の第3実施形態に係る浴室床の排水口構造の上側部分の断面図である。
図8図8は、本発明の第4実施形態に係る浴室床の排水口構造の上側部分の断面図である。
図9図9は、本発明の第5実施形態に係る浴室床の排水口構造の上側部分の断面図である。
図10図10(a)は、前記第5実施形態の排水口構造の排水ベース部材の平面図である。図10(b)は、前記第5実施形態の排水口構造の排水縁部材の平面図である。
図11図11は、本発明の第6実施形態に係る浴室床の排水口構造の一部分を示す断面図である。
図12図12は、本発明の第7実施形態に係る浴室床の排水口構造の一部分を示し、図13のXII-XII線に沿う側面断面図である。
図13図13は、前記第7実施形態に係る浴室床の排水口構造の一部分を、図12のXIII-XIII線に沿って示す正面断面図である。
図14図14は、前記第7実施形態に係る浴室床の排水口構造の一部分を、図13のXIV-XIV線に沿って示す正面断面図である。
図15図15は、本発明の第8実施形態に係る浴室床の排水口構造の一部分を示す側面断面図である。
図16図16は、前記第8実施形態に係る浴室床の排水口構造を、図15のXVI-XVI線に沿って示す背面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図5)>
図1に示すように、浴室1の洗い場2を構成する浴室床パネル3(浴室床)は、パネル本体10と、表層シート20と、排水口構造30を備えている。平面視で四角形のパネル本体10のおもて面(上面)に表層シート20が被せられている。表層シート20によって、浴室床面21が構成されている。浴室床面21には排水勾配が付けられている。
【0026】
図1及び図2に示すように、浴室床パネル3における前記排水勾配の低位部に、排水口構造30が設けられている。排水口構造30は、例えば洗い場2における浴槽1a側の端部の立ち上がり部2bに沿う平面視長方形に形成されている。排水口構造30の中央部に排水口39が形成されている。排水口39は、平面視で立ち上がり部2bに沿う細長い長方形に形成されている。なお、排水口構造30及び排水口39の平面視形状は、長方形に限らず、円形等であってもよい。
【0027】
図1及び図2に示すように、排水口構造30は、排水ベース部材31と、排水縁部材40と、シール部材50を備えている。図1及び図3(a)に示すように、排水ベース部材31は、硬質樹脂によって構成され、平面視で立ち上がり部2bに沿う長方形の箱状に形成されている。排水ベース部材31の内部空間が排水口39となっている。図2に示すように、排水ベース部材31の上端部より下側のベース部32によって、排水口39の上端部を除く主部39aが画成されている。
【0028】
図4に示すように、排水ベース部材31の浴室床面21へ臨む上端部には、受け座33が形成されている。図4及び図3(a)に示すように、受け座33は、側壁33a及び底板33bを有する断面L字状をなし、平面視で排水口39を囲む長方形の環状に形成されている。図4に示すように、底板33bにおける排水口39へ臨む内端部が、ベース部32の上端部に連なっている。底板33bの外端部から側壁33aが立ち上げられている。
【0029】
図4に示すように、側壁33aの内側面がシール受け面33sを構成している。図3(a)に示すように、シール受け面33sは、平面視で受け座33の全周にわたる環状になっている。
【0030】
図4に示すように、側壁33aの上端部には、外方へ突出する上鍔部33cが形成されている。上鍔部33cの上面に表層シート20が被さっている。表層シート20と排水ベース部材31とは、分離可能に接しており、接着剤等で接合されてはいない。
【0031】
図4に示すように、受け座33に排水縁部材40が分離可能に収容されて設置されている。図3(b)に示すように、排水縁部材40は、硬質樹脂によって構成され、平面視で排水ベース部材31よりひとまわり小さい長方形の枠状(環状)に形成されている。図4に示すように、排水縁部材40は、上板部41と、内側壁部42と、外側壁部43を有し、逆さU字状の断面形状になっている。上板部41が、内外の壁部42,43の上端部に架け渡されるとともに壁部42,43と一体に連なっている。
【0032】
表層シート20の排水口縁23が、上鍔部33cの上面から上板部41の上面に跨るように被さっている。言い換えると、排水ベース部材31及び排水縁部材40によって、表層シート20の排水口縁23が支持されている。表層シート20と上板部41ひいては排水縁部材40とは、接着剤49によって接着されることで強固に接合されている。
【0033】
排水縁部材40の内側壁部42は、平面投影視でベース部32の上端部と重なっている。内側壁部42の下端部は、ベース部32と底板33bとのコーナー部に突き当てられている。内側壁部42によって、排水口39の上端部39eが画成されている。
【0034】
図4に示すように、排水縁部材40の外側壁部43は、側壁33aのシール受け面33sと対向するように配置されている。外側壁部43には保持部44が一体に設けられている。
【0035】
詳しくは、外側壁部43には、上下一対の保持板部43a,43bが形成されている。上側の保持板部43aは、外側壁部43の上側部からシール受け面33sへ向かって突出されている。下側の保持板部43bは、保持板部43aと平行に、外側壁部43の下端部からシール受け面33sへ向かって突出されている。外側壁部43における上下の保持板部43a,43bの間の壁部分43cと、保持板部43a,43bとによって、コ字状ないしはC字状の断面の保持部44が構成されている。保持部44は、シール受け面33sへ向かって開口するシール保持凹部44aを有している。上下の保持板部43a,43bの突出端部どうしの間に、シール保持凹部44aの開口44cが形成されている。
【0036】
図4に示すように、排水ベース部材31と排水縁部材40との間に乾式の弾性シール部材50が設けられている。シール部材50の材質は、EPDMゴム、シリコーンゴム等の圧縮可能かつ不透液性の弾性材である。図3(b)に示すように、シール部材50は、平面視で受け座33及び排水縁部材40の周方向に沿う輪環状に形成されている。図4において二点鎖線にて示すように、自然状態(弾性変形前)のシール部材50の断面形状は、好ましくは円形になっている。したがって、設計時に水密性を測りやすい。また、形状がシンプルで製造しやすい。自然状態におけるシール部材50の断面の直径φ50は、外側壁部43におけるシール受け面33sとの対向面44dとシール受け面33sとの対向距離Dより大きい(φ50>D)。
【0037】
図4に示すように、シール部材50は、シール保持凹部44aに収容されることで保持部44に保持されている。これによって、シール部材50が、排水縁部材40に嵌合されている。一方、シール部材50は、排水ベース部材31とは分離可能である。
【0038】
図4において二点鎖線にて示すように、シール部材50の外まわり側部分53は、開口44cから突出されている。図4において実線にて示すように、シール部材50における前記突出された外まわり側部分53がシール受け面33sに当たって密着し、シール部材50がシール受け面33sと直交する方向に圧縮されている。これによって、水密性が発現され、受け座33と排水縁部材40との間がシールされている。
【0039】
シール部材50は上下の保持板部43a,43bに挟まれているから、排水口構造30が上から踏まれる等しても、それによってシール部材50に上下方向の反発力が発生することはない。したがって、前記反発力による表層シート20の排水口縁23及び排水縁部材40の浮きが起きることは無い。
【0040】
かかる排水口構造30を有する浴室1において、表層シート20が汚損される等によってリフォームする際は、図5(a)に示すように、先ず表層シート20をパネル本体10から剥がして撤去する。次に、排水縁部材40を、引き上げることで、排水ベース部材31から分離する。すると、シール部材50が保持部44に嵌って保持されたまま、シール部材50の全体が排水縁部材40と一体に排水ベース部材31から分離される。分離した排水縁部材40及びシール部材50を撤去する。排水ベース部材31は残置する。
【0041】
排水縁部材40及びシール部材50の分離、撤去時に、シール部材50(止水手段)が破砕されて一部が受け座33に残留されることは無い。したがって、止水手段の破砕残留物の除去作業を行なう必要が無く、リフォーム作業を容易化できる。
【0042】
図5(b)に示すように、その後、新たな表層シート20Aをパネル本体10の上面に敷設するとともに、その排水口縁23に予め接着しておいた新たな排水縁部材40Aを、前記残置した排水ベース部材31の受け座33に収容する。
【0043】
予め、排水縁部材40Aの保持部44には、新たなシール部材50Aを保持させておく。これによって、排水縁部材40Aを受け座33に収容するのと同時に、シール部材50Aがシール受け面33sに密着される。この結果、排水ベース部材31と排水縁部材40Aとの間の水密性が確保される。受け座33には止水手段の破砕残留物が存在しないから、その破砕残留物の除去不十分によるリフォーム後の水密性水不良が起きることが無い。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図6)>
図6に示すように、本発明の第2実施形態に係る浴室床の排水口構造30Bにおいては、受け座33に保持受け壁34が立設されている。保持受け壁34は、底板33bの中間部から上へ突出されるとともに、排水ベース部材31の周方向に沿う環状になっている。保持受け壁34の厚みは上へ向かって漸減されており、その外側面34bが上へ向かうにしたがって内側(排水口39側)へ傾斜されている。
【0045】
受け座33の側壁33aと保持受け壁34との間に凹形状の保持受け凹部33dが形成されている。シール受け面33sが保持受け凹部33dに面している。
【0046】
保持受け凹部33dに保持部44が受け容れられている。保持部44におけるシール受け面33sとは反対側を向く背面44bは、保持受け壁34の外側面34b(保持受け凹部33dにおけるシール受け面33sと対向する側面)と同一の傾斜角度で、保持受け凹部33dの底部へ向かうにしたがってシール受け面33sへ近づくように傾斜されている。
【0047】
排水口構造30Bによれば、保持部44がシール部材50を保持した状態で保持受け凹部33dに嵌め込まれることで、シール部材50がシール受け面33sに当たって圧縮され、水密性が発現されている。シール部材50の反発力によって排水縁部材40が変形しようとしても、保持受け壁34に当たることで変形を阻止できる。したがって、シール部材50の圧縮状態を維持でき、水密性を確保できる。
【0048】
<第3実施形態(図7)>
図7に示すように、本発明の第3実施形態に係る浴室床の排水口構造30Cにおいては、排水縁部材40の保持部44に陥入突起45が形成されている。陥入突起45は、保持板部43a,43bの間の壁部分43cにおけるシール受け面33sとの対向面43dから保持板部43a,43bと平行に突出されている。陥入突起45の突出端部は、保持板部43a,43bの突出端部よりも引っ込んでいる。詳細な図示は省略するが、陥入突起45は、平面視で排水縁部材40の周方向の全周にわたって環状に延びている。
【0049】
シール部材50における壁部分43cを向く内まわり側部分には、凹み55が形成されている。詳細な図示は省略するが、凹み55は、平面視でシール部材50の輪環状の延び方向の全周にわたって延びている。凹み55に陥入突起45が陥入されている。これによって、シール部材50のズレを防止できる。また、水密性を確実に発現できる。
なお、自然状態のシール部材50には凹み55が形成されていなくてもよい。陥入突起45がシール部材50に食い込むことで、シール部材50が凹まされて凹み55が形成されるようにしてもよい。
【0050】
<第4実施形態(図8)>
図8に示すように、本発明の第4実施形態に係る浴室床の排水口構造30Dにおいては、受け座33の底板33bに凸壁部36が立設されている。凸壁部36は、底板33bにおける保持受け壁34よりも内端側の部分に配置され、好ましくは底板33bにおける内端部の近傍部分に配置されている。凸壁部36の突出高さは、保持受け壁34の突出高さより低い。詳細な図示は省略するが、凸壁部36は、平面視で排水口39を囲むように、排水ベース部材31の周方向の全周にわたって環状に延びている。
【0051】
排水縁部材40の内側壁部42(排水口上端部39eの周縁を画成する部分)が、排水口39の側から凸壁部36に被さることで、凸壁部36と重ねられている。これによって、汚れなどの異物が保持受け凹部33d内に入り込むのを確実に防ぐことができ、例えば排水口39を流れる洗剤成分等を含んだ排水が、シール部材50及びシール受け面33s及び保持受け壁34と直接接触して環境応力腐食割れが起きるのを一層確実に防止することができる。
【0052】
<第5実施形態(図9図10)>
図9に示すように、本発明の第5実施形態に係る浴室床の排水口構造30Eにおいては、受け座33に嵌合孔37が形成され、排水縁部材40に嵌合突起47が形成されている。詳述すると、嵌合孔37は、受け座33の側壁33aの上側部分に設けられるとともに、側壁33aを厚み方向に貫通している。図10(a)に示すように、複数の嵌合孔37が、受け座33の一対の長辺部の長手方向に互いに間隔を置いて配置されている。
【0053】
図9及び図10(b)に示すように、嵌合突起47は、概略三角形状ないしは爪形状に形成されて、排水縁部材40の保持板部43aの端部から突出されている。複数の嵌合突起47が、排水縁部材40の一対の長辺部の長手方向に互いに間隔を置いて配置されている。各嵌合突起47が、対応する嵌合孔37に嵌っている。これによって、排水ベース部材31と排水縁部材40とを、ビス等の別の連結部材を使用することなく、相互に連結することができる。
【0054】
嵌合突起47の下側面は、嵌合突起47の先端へ向かって上へ傾く案内斜面47bになっている。これによって、排水縁部材40を上方から受け座33に設置する際、案内斜面47bが側壁33aの上端面に当たって、嵌合突起47等が弾性変形されながら、嵌合突起47を嵌合孔37にスムーズに嵌め込むことができる。
【0055】
壁部分43cの下端ひいては保持部44の底面44gには、複数の底凸部48が形成されている。詳細な図示は省略するが、複数の底凸部48は、排水口39の周方向に互いに間隔を置いて配置されている(図13参照)。各底凸部48は、保持板部43bよりも下方へ突出して、受け座33の底板33bに突き当てられている。このため、相対的に保持部44が受け座33に対して押し上げられ、嵌合突起47が、嵌合孔37の上面に押し当てられている。これによって、排水縁部材40のぐらつきが防止され、排水縁部材40が排水ベース部材31に対して固定されている。
【0056】
<第6実施形態(図11)>
図11に示すように、本発明の第6実施形態に係る浴室床の排水口構造30Fにおいては、シール部材50のシール機能を補完するために、充填式水密材60が併用されている。充填式水密材60は、少なくとも排水口構造30Fへの供給時点で流動可能かつ充填可能な不定形の水密材である。充填式水密材60としては、例えばシリコーンシーリングが挙げられる。充填式水密材60は、受け座33と排水縁部材40との間の隙間35に設けられている。
【0057】
第6実施形態の排水口構造30Fは、充填式水密材60の有無を除き、第5実施形態(図9図10)の排水口構造30Eと実質的に同じである。なお、第6実施形態の排水口構造が、第1~第4実施形態(図4図6図8)の排水口構造30,30B,30C,30Dと実質的に同じ(充填式水密材60の有無を除く)であってもよい。つまり、排水口構造30,30B,30C,30Dにおける受け座33と排水縁部材40との間の隙間に充填式水密材60が設けられていてもよい。
【0058】
図11に示すように、詳しくは、排水口構造30Fにおける、保持受け凹部33dの入隅部33e(隅部)と、保持部44の出隅部44fとの間に、充填式水密材60が設けられている。入隅部33eは、保持受け凹部33dの凹底面33dbとシール受け面33sとが交差する角部である。出隅部44fは、保持部44における下側の端面44eと底面44gとが交差する角部である。入隅部33eと出隅部44fとが対向されることによって、互いの間にコーナー隙間35cが形成されている。該コーナー隙間35cに充填式水密材60が充填されている。充填式水密材60は、入隅部33e及び出隅部44fに倣って断面が概略L字状に形成されている。該充填式水密材60が、入隅部33eにおける凹底面33db及びシール受け面33sと密着されるとともに、出隅部44fにおける底面44g及び端面44eと密着されている。
【0059】
詳細な図示は省略するが、コーナー隙間35cは、平面視で長方形の排水口39(図10参照)を囲む長方形の環状に形成されている。充填式水密材60は、コーナー隙間35cの全周に沿って閉じた環状になるよう塗布されている。
【0060】
好ましくは、排水口構造30Fの製造又は設置施工の際、充填式水密材60を入隅部33eに塗布した後、シール部材50を装着した保持部44を保持受け凹部33dに嵌め込むようにして、排水縁部材40を受け座33に設置する。これによって、充填式水密材60が、出隅部44fと入隅部33eとの間に挟み付けられて概略L字断面に成形される。
【0061】
第6実施形態によれば、シール部材50のシール機能にばらつきがあったとしても、充填式水密材60によってシール機能を補完でき、排水ベース部材31の受け座33と排水縁部材40との間を確実にシールできる。なお、シール部材50のシール機能のばらつきは、排水口構造30Fの構成部材31,40,50の寸法誤差や欠損等に起因して生じ得る。
【0062】
しかも、少量の充填式水密材60でシール補完機能を効果的に発現できる。充填式水密材60を保持受け凹部33dの内部全体を埋めるように充填する必要は無く、コーナー隙間35cだけに充填すればよい。したがって、排水口構造30Fの製造又は設置施工時における充填式水密材60の充填作業を短時間で簡単に行なうことができる。また、リフォーム時における充填式水密材60の除去作業を短時間で簡単に行なうことができる。
【0063】
<第7実施形態(図12図14)>
図12に示すように、本発明の第7実施形態に係る浴室床の排水口構造30Gは、第6実施形態(図11)の変形例であり、受け座33と排水縁部材40との間における充填式水密材60の充填範囲が、第6実施形態より広い。
【0064】
詳しくは、充填式水密材60は、底面水密材部分61と、立ち上がり水密材部分62と、保持凹部内水密材部分63を一体に含む。底面水密材部分61は、保持受け凹部33dの凹底面33dbと、保持部44の底面44gとの間の底面隙間35aに充填され、水平な面状になっている。図13に示すように、底面水密材部分61における排水口39側の端部(図13において左端部)は、隣接する底凸部48どうしの間に入り込んでいる。
【0065】
底面水密材部分61におけるコーナー隙間35c側の端部から立ち上がり水密材部分62がほぼ垂直に立ち上がっている。立ち上がり水密材部分62は、保持部44の端面44eとシール受け面33sとの間の立ち上がり隙間35bに充填されている。立ち上がり水密材部分62の上端部に保持凹部内水密材部分63が連なっている。保持凹部内水密材部分63は、保持部44のシール保持凹部44aの底面と、シール部材50との間の保持凹部内隙間35dに入り込んで、シール部材50と接している。
【0066】
なお、充填式水密材60の水密材部分61~62のうち保持凹部内水密材部分63は無くてもよい。更に、充填式水密材60の水密材部分61~62のうち少なくとも底面水密材部分61があればよく、立ち上がり水密材部分62及び保持凹部内水密材部分63は無くてもよい。
【0067】
保持部44の底面44gからの底凸部48の下方への突出高さは、1mm以下である。底面44gと凹底面33dbとの対向距離は、底凸部48の突出高さと実質的に等しく、1mm以下である。図14に示すように、底面水密材部分61の厚みt61は、底凸部48の突出高さ及び前記対向距離と実質的に等しく、t61=1mm以下である。
【0068】
保持部44の底面44gの幅(排水口39の周方向と直交する幅方向(図14において左右方向)の寸法)は、3mm以上である。底面水密材部分61の幅w61は、底面44gの幅と実質的に等しく、w61=3mm以上である。
なお、図12に示すように、排水口39の周方向における底凸部48の配置箇所においては、底面水密材部分61の幅が、底凸部48の幅相当分だけ、底凸部48からずれた箇所(図14)での幅より短い。一方、図13に示すように、各底凸部48の長さ(図13において左右方向の寸法)は、排水口39の長さに対し十分に小さい。したがって、排水口39の周方向における底面水密材部分61の殆ど全部ないしは大部分が、幅w61=3mm以上である(図14)。
【0069】
第7実施形態においては、排水口構造30Gの製造又は設置施工に際し、充填式水密材60を保持受け凹部33dの凹底面33dbに塗布する。塗布量は、第6実施形態(図11)より多めにする。その後、保持部44を保持受け凹部33dに嵌め込んでいく。すると、充填式水密材60が、保持受け凹部33dと保持部44との隙間の形状に倣うように流動して変形され、底面水密材部分61と立ち上がり水密材部分62と保持凹部内水密材部分63とが形成される。やがて、底凸部48が保持受け凹部33dの凹底面33dbに突き当たる。
【0070】
したがって、保持部44の底面44gが凹底面33dbに直接突き当たるのを阻止でき、底面44gと凹底面33dbとの間に、底凸部48の高さ分の底面隙間35aを確保できる。これによって、充填式水密材60における底面水密材部分61が過度に押し潰されないようにでき、底面水密材部分61の必要厚み(1mm以下)を確保できる。
【0071】
第7実施形態の排水口構造30Gにおいては、第6実施形態の排水口構造30F(図11)と同様に、充填式水密材60を保持受け凹部33dの内部全体を埋めるように充填する必要は無い。充填式水密材60の所要量は、隙間35a,35b,3dcに充填される量であればよく、更には隙間35a,35b,35dのうち少なくとも底面隙間35aに充填される量であればよい。したがって、少量の充填式水密材60によってシール補完機能を効果的に発現できる。充填式水密材60が少量で済むから、排水口構造30Gの製造又は設置施工時における充填式水密材60の充填作業を短時間で簡単に行なうことができる。
【0072】
加えて、排水口構造30Gによれば、製造又は設置施工後、ただちにシール性試験をしたい場合に好適である。すなわち、排水口構造30Gによれば、充填式水密材60の底面水密材部分61が、厚み1mm以下、幅3mm以上となるよう底面隙間35a内に薄く広く充填される。これによって、充填式水密材60が充填後、未硬化であっても、充填式水密材60の特に底面水密材部分61の粘性による流動抵抗が生じてシール補完機能が発現する。したがって、充填した充填式水密材60の硬化を待つことなくシール性の試験を行なうことができる。
【0073】
排水口構造30Gのリフォームの際は、底面隙間35a及び立ち上がり隙間35bの水密材部分61,62を除去すればよい。保持凹部内水密材部分63は、古い排水縁部材40と一緒に撤去できる。したがって、充填式水密材60の除去作業を短時間で簡単に行なうことができる。
【0074】
<第8実施形態(図15図16)>
図15及び図16に示すように、本発明の第8実施形態に係る浴室床の排水口構造30Hは、第7実施形態(図12)の変形例であり、受け座33に、底面隙間35aに連なる逃がし開口38が形成されている。
【0075】
詳しくは、受け座33の保持受け壁34の一部分が切欠されている。該切欠部分が、逃がし開口38を構成している。逃がし開口38は、保持受け壁34の上端に達するとともに保持受け壁34の底部まで及んでいる。底面隙間35aが、逃がし開口38を介して、保持受け壁34と凸壁部36との間の壁間室36bに連なっている。図示は省略するが、好ましくは、複数の逃がし開口38が、保持受け壁34の長手方向(図15において紙面直交方向)に互いに離間して配置されている。
【0076】
受け座33の底板33bにおける逃がし開口38の形成箇所の上面には、低壁34wが形成されている。低壁34wは、保持受け壁34に対して、保持受け壁34の厚みの半分程度だけ凸壁部36側にずれて配置されている。低壁34wの高さは、保持受け壁34の高さより数分の1程度低い。低壁34wは、逃がし開口38の下端部を塞ぐように保持受け壁34の長手方向(図16において左右方向)へ延びている。低壁34wの両端部が、保持受け壁34における逃がし開口38の両縁部と一体に連なっている。
【0077】
第8実施形態によれば、排水口構造30Hの製造又は設置施工に際して、充填式水密材60の塗布後の保持受け凹部33dに保持部44を嵌め込む際、充填式水密材60の一部が、保持部44に押されて、底面隙間35aから逃がし開口38を介して壁間室36bへ向けて流動できる。したがって、充填式水密材60の流動抵抗が低減され、保持部44の嵌め込み操作をし易くできる。充填式水密材60を多めに塗布した場合でも、充填式水密材60の流動抵抗の増大を十分に抑えることができ、保持部44を容易に嵌め込むことができる。一方、低壁34wが障壁となることで、充填式水密材60が必要以上に押し出されるのを防止できる。
排水口構造30Gのリフォームの際は、底面隙間35a及び立ち上がり隙間35bの水密材部分61,62に加えて、逃がし開口38ないしは壁間室36bの漏出水密材部分64を除去すればよく、充填式水密材60の除去作業が煩雑化することはない。
【0078】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、シール部材40が排水縁部材40と接着されていてもよい。
第5実施形態(図9図10)の変形例として、排水縁部材40に嵌合孔が形成され、受け座33に嵌合孔に嵌る嵌合突起が形成されていてもよい。
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば第3実施形態(図7)の陥入突起45を、第4~第8実施形態(図8図16)の浴室床排水口構造にも設けてもよい。第6、第7実施形態(図11図12図14)のシール機能補完用の充填式水密材60を、第1~第4実施形態(図1図8)の浴室床排水口構造に適用してもよく、第8実施形態(図15図16)のシール機能補完用の充填式水密材60を、第2~第4実施形態(図6図8)の浴室床排水口構造に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えば住宅等の建物の浴室ユニットに適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 浴室
3 浴室床パネル(浴室床)
10 パネル本体
20 表層シート
20A 新たな表層シート
21 浴室床面
23 排水口縁
30 排水口構造
30B~30H 排水口構造
31 排水ベース部材
33 受け座
33a 側壁
33b 底板
33d 保持受け凹部
33db 凹底面
33e 入隅部(隅部)
33s シール受け面
34 保持受け壁
34b 外側面(保持受け凹部におけるシール受け面と対向する側面)
34w 低壁
35 受け座と排水縁部材との間の隙間
35a 底面隙間
35b 立ち上がり隙間
35c コーナー隙間
35c コーナー隙間
35d 保持凹部内隙間
36 凸壁部
36b 壁間室
37 嵌合孔
38 逃がし開口
39 排水口
39a 主部
39e 排水口の上端部
40 排水縁部材
40A 新たな排水縁部材
41 上板部
42 内側壁部(排水口上端部の周縁を画成する部分)
43 外側壁部
43a,43b 保持板部
43d 壁部分におけるシール受け面との対向面
44 保持部
44a シール保持凹部
44b 保持部におけるシール受け面とは反対側を向く背面
44c 開口
44d 外側壁部におけるシール受け面との対向面
44e 保持部の下側の端面
44f 出隅部
44g 保持部の底面
45 陥入突起
47 嵌合突起
47b 案内斜面
48 底凸部
50 シール部材
50A 新たなシール部材
53 外まわり側部分
55 凹み
60 充填式水密材
61 底面水密材部分
62 立ち上がり水密材部分
63 保持凹部内水密材部分
64 漏出水密材部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16