(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043486
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
G04B 37/22 20060101AFI20240322BHJP
A44C 27/00 20060101ALI20240322BHJP
G04B 19/06 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G04B37/22 L
A44C27/00
G04B19/06 N
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122184
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22196167.5
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ・ヴュイユ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・リンティメル
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ジリー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・リティネ
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114AA01
3B114BB09
3B114BB12
(57)【要約】
【課題】 携行型時計などの外側コンポーネントの装飾の精度や品質を向上させる。
【解決手段】 本発明は、携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネント(10)を製造する方法に関し、この方法は、光透過性の材料によって作られた基材(11)の内面(110)の面の全部又は一部上に内層(12)を堆積させる内層堆積ステップと、基材(11)の内面(110)の第2の部分上に開く少なくとも1つのポケット(14)を形成して基材(11)の内面(110)の第2の部分を構造化するように、内層(12)を局所的に除去して、内層(12)の一部を基材(11)の内面(110)の第1の部分上に保持する局所的除去ステップと、内層(12)の面、及び基材(11)の内面(110)の第2の部分の面を処理する処理ステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネント(10)を製造する方法であって、
光透過性の材料によって作られた基材(11)の内面(110)の面の全部又は一部上に内層(12)を堆積させる内層堆積ステップと、
前記基材(11)の前記内面(110)の第2の部分上に開く少なくとも1つのポケット(14)を形成して前記基材(11)の前記内面(110)の前記第2の部分を構造化するように、前記内層(12)を局所的に除去して、前記内層(12)の一部を前記基材(11)の前記内面(110)の第1の部分上に保持する局所的除去ステップと、
前記内層(12)の面、及び前記基材(11)の前記内面(110)の前記第2の部分の面を処理する処理ステップとを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記内層堆積ステップの前に行われる研磨ステップの間に、前記基材の前記内面(110)を研磨する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内層(12)の面、及び前記基材(11)の前記内面(110)の前記第2の部分の面を処理する前記処理ステップを行う前に、前記基材(11)の前記内面(110)が大きな影響を受けることなく、前記内層(12)の一部が除去されるように前記内層(12)を彫刻して、所定の形状に従って前記内層を形成する内層彫刻ステップを行う
ことを特徴とする請求項1又は2の一項に記載の方法。
【請求項4】
前記局所的除去ステップは、レーザービームによって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材(11)の前記内面(110)、又は前記内面(110)の反対側の外面(111)に大きな影響を与えることなく、前記基材(11)を彫刻して、前記基材(11)の厚み内にパターンを形成する基材彫刻ステップを含む
ことを特徴とする請求項1に係る製造方法。
【請求項6】
前記基材(11)の外面(111)の面の全部又は一部上に外層(13)を堆積させる外層堆積ステップと、
前記外層(13)の局所的な除去及び/又は彫刻を行う外層除去ステップと、
前記外層(13)の面を処理する処理ステップとを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記外層除去ステップは、
前記基材(11)の前記外面(111)の第1の部分上において前記外層(13)の一部を保持し、
前記基材(11)の前記内面(110)の前記第2の部分の反対側に少なくとも延在する前記基材(11)の前記外面(111)の第2の部分上に開く少なくとも1つのポケット(15)を形成し、
前記基材(11)の前記外面(111)の前記第2の部分を構造化するように行う
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外層除去ステップは、前記基材(11)の前記外面(111)が大きな影響を受けることなく、所定の形状に従って前記外層(13)を成形するために、前記外層(13)の一部を除去するように行われる
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記外層除去ステップは、好ましいことに、前記内層(12)が前記基材(11)を通して見えるように行われる
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記内層堆積ステップと前記外層堆積ステップの前に、前記基材の前記外面(111)を研磨する研磨ステップを行う
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法を実行することによって形成される
ことを特徴とする携行型時計用表盤。
【請求項12】
請求項1に記載の方法を実行することによって形成される外側コンポーネントを備える
ことを特徴とするファッションアイテム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器、ファッションアイテム又は宝飾品の分野に関し、特に、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネント、及びこのような外側コンポーネントを製造する方法に関する。
【0002】
本明細書において、「ファッションアイテム」の概念は、ベルト、靴、衣料品のような衣類のアクセサリー又はアイテムを含み、さらに、アイウェアアイテム、テレフォニーアイテム、又はその他の装飾品を含む。
【背景技術】
【0003】
特に、計時器の分野において、携行型時計の外側コンポーネント、特に表盤、フランジ、ベゼルなどに、装飾の目的で、基材の面に堆積された薄層から作られた装飾が施されることがある。
【0004】
外側コンポーネントの装飾の細部の寸法や数によっては、外側コンポーネントを作ることが比較的複雑であることがある。特に、装飾が基材上の構造の組み合わせと基材上に堆積された薄層によって形成される場合、それらの構造に対する薄層のアライメント公差に適合させることが特に複雑となる。
【0005】
一般的には、ファッションアイテムや宝飾品のような分野でも前記のような課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネントの装飾の精度や品質を向上させることを目的とする。
【0007】
特に、本発明は、外側コンポーネントに対する装飾のアライメント公差、特に、前記薄層が堆積される基材の面の構造に対する薄層のアライメント、に適合させる問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネントを製造する方法に関し、この方法は、光透過性の材料によって作られた基材の内面の面の全部又は一部上に内層を堆積させる内層堆積ステップと、前記基材の前記内面の第2の部分上に開く少なくとも1つのポケットを形成して前記基材の前記内面の前記第2の部分を構造化するように、前記内層を局所的に除去して、前記内層の一部を前記基材の前記内面の第1の部分上に保持する局所的除去ステップと、前記内層の面、及び前記基材の前記内面の前記第2の部分の面を処理する処理ステップとを含む。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、さらに、単独で、又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って、以下の特徴の一又は複数を有することができる。
【0010】
特定の実施態様において、前記内層堆積ステップの前に行われる研磨ステップの間に、前記基材の前記内面を研磨する。
【0011】
特定の実施態様において、本方法は、前記処理ステップを行う前に、前記基材の前記内面が大きな影響を受けることなく、前記内層の一部が除去されるように前記内層を彫刻して、所定の形状に従って前記内層を形成する内層彫刻ステップを行う。
【0012】
特定の実施態様において、前記局所的除去ステップは、レーザービームによって行われる。
【0013】
特定の実施態様において、本方法は、前記基材の前記内面、又は前記内面の反対側の外面に大きな影響を与えることなく、前記基材を彫刻して、前記基材の厚み内にパターンを形成する基材彫刻ステップを含む。
【0014】
特定の実施態様において、本方法は、前記基材の外面の面の全部又は一部上に外層を堆積させる外層堆積ステップと、前記外層の局所的な除去及び/又は彫刻を行う外層除去ステップと、前記外層の面を処理する処理ステップとを含む。
【0015】
特定の実施態様において、前記外層除去ステップは、前記基材の前記外面の第1の部分上において前記外層の一部を保持し、前記基材の前記内面の前記第2の部分の反対側に少なくとも延在する前記基材の前記外面の第2の部分上に開く少なくとも1つのポケットを形成し、前記基材の前記外面の前記第2の部分を構造化するように行う。
【0016】
特定の実施態様において、前記外層除去ステップは、前記基材の前記外面が大きな影響を受けることなく、所定の形状に従って前記外層を成形するために、前記外層の一部を除去するように行われる。
【0017】
特定の実施態様において、前記外層除去ステップは、好ましいことに、前記内層が前記基材を通して見えるように行われる。
【0018】
特定の実施態様において、前記内層堆積ステップと前記外層堆積ステップの前に、前記基材の前記外面を研磨する研磨ステップを行う。
【0019】
別の態様によると、本発明は、上述したような方法を実行することによって形成される携行型時計用表盤に関する。
【0020】
別の態様によると、本発明は、上述のような方法を実行することによって形成される外側コンポーネントを備えるファッションアイテムに関する。
【0021】
添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を理解することかできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る製造方法のステップを実行することによって作られる外側コンポーネントを概略的に示している断面図である。
【
図2】
図2~5は、本発明に係る製造方法を実行することによって得られる外側コンポーネントについての様々な実施例を概略的に示している断面図である。
図2は、内層を局所的に除去して、基材の内面上に開くポケットを形成し、同時に、ポケットにおいて内面を構造化して構造化部を作った様子を示している。
【
図3】内層を彫刻して所定の形状に従う内層を形成した様子を示している。
【
図4】薄層を堆積して、その後に外層を局所的に除去した様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面において縮尺が常に一致しているわけではない。
【0024】
本発明は、前記方法の様々な実施形態に係る
図2~5に示しているような外側コンポーネント10を製造する方法に関する。
【0025】
本発明は、好ましいことに、表盤のような携行型時計の外側コンポーネント、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネントであることができる。
【0026】
用語「ファッションアイテム」は、本明細書において、あらゆる外側のアクセサリー又はアイテムを意味し、例えば、ベルト、靴、衣類であり、さらに、アイウェアアイテム、電話機の筐体のようなテレフォニーアイテム、又はあらゆる装飾品を含む。
【0027】
この製造方法は、
図1に示しているように、光透過性の材料によって作られた基材11の内面110の面の全部又は一部上に、「内層」12と呼ばれる薄層を堆積させる第1のステップを含む。なお、本明細書において、用語「光透過性」は、光線、特に肉眼で見える光、の全部又は一部を通過させる材料の能力を意味する。このような光透過性の材料は、サファイア、ガラスなどであることができる。
【0028】
基材11の内面110は、ユーザーが前記基材11を通して外側コンポーネント10の装飾を見ることが意図されている外面111とは反対側にある。特に、外面111は、外側環境の方を向くことが意図されており、内面110は、内部環境の方を向くことが意図されており、例えば、外側コンポーネント10が携行型時計のコンポーネントである場合、計時器用ムーブメントに対向する。
【0029】
このような堆積は、物理的蒸着法、化学的蒸着法、又は他の任意の適切な方法によって行うことができる。例として、内層12は、単独又は合金として、特にCr、Au、Ti、Zrである、金属材料、又は誘電体材料によって作られることができる。
【0030】
好ましくは、内面110は、内層12を堆積させる前に、予備研磨ステップの間に研磨される。
【0031】
本方法は、
図2に示しているように、その後に、内層12を局所的に除去(ablation)して、基材11の内面110上に開く一又は複数のポケット14を形成し、同時に、前記一又は複数のポケット14において前記内面110を構造化して構造化部112を作るステップを含む。
【0032】
当然、本方法は、複数の構造化部112を作るように、複数の局所的な除去ステップを含むことができる。特に、前記除去ステップは、異なる外観の構造化部112を作るように、異なるパラメーターで行うことができる。それにもかかわらず、本発明の説明において、文章の読解を容易にするために、以下では単一の構造化部112について言及する。「構造化部」の概念は、ここにおいて、面の状態、すなわち、トポグラフィー、が変更された面を意味し、サテン仕上げ、テクスチャリング、彫刻などを行ったものであることができる。
【0033】
前記除去ステップを実行するために用いられるパラメーターは、構造化部112の所望の外観に従って決められ、当業者であればそのような決定を行う能力がある。
【0034】
局所的な除去ステップの終わりにおいて、除去の大きな影響を受けなかった内層12の部分は、基材11の内面110の第1の部分に支えられ、ポケット14が基材11の内面110の第2の部分上に開き、内面110の前記第2の部分は構造化される。したがって、構造化部112は、その構造化部112とともに作られるポケット14と完全に合致する。したがって、内面110の構造化部112と、内層12とのアライメント公差の適合が確実になる。
【0035】
内層12の局所的な除去、したがって、内面110の第2の部分の構造化部112の構造化は、好ましくは、レーザービームによって行われる。代わりに、前記局所的な除去ステップは、ダイヤモンドチップを用いたロボットによる彫刻のような機械的な加工、化学的な加工などによって、実行することができる。
【0036】
その後に、内層12の面、及び基材11の内面110の面、特に前記内面110の第2の部分の面、を処理するステップを行う。このような処理は、反射防止被覆の層、又は金属、有機物質、セラミックス、半導体、酸化物、炭化物、窒化物、ラッカー又はエナメル材料の層からなる被覆を堆積させることを伴うことができる。
【0037】
好ましいことに、1つの実施例において、本発明に係る方法は、内層12の面及び基材11の内面110の面を処理するステップを行う前に、
図3に示しているように、基材11の内面110が大きな影響を受けることなく、内層12の一部が除去された内層12を彫刻して、所定の形状に従う前記層を形成するステップを含むことができる。
【0038】
このような彫刻ステップは、フォトリソグラフィー、レーザー加工などによって実行することができる。
【0039】
好ましいことに、本方法は、前記基材11の内面110、又はこの内面110の反対側の外面111に大きな影響を与えることなく、前記基材11の厚み内にパターンを形成するように基材11を彫刻するステップを含むことができる。この特徴のおかげで、本発明に係る方法を実行することによって作られる装飾を強化することが可能になる。
【0040】
実施例の1つにおいて、本発明に係る方法は、
図4に示しているように、基材11の外面110の面の全部又は一部に「外層」13と呼ばれる薄層を堆積させるステップと、その後に外層13を局所的に除去するステップを含むことができる。
【0041】
この除去は、外層13の一部が基材11の外面111の第1の部分において保持され、基材11の外面110の第2の部分上に開く少なくとも1つのポケット15を形成し、同時に、外面110の前記第2の部分を構造化するように行われる。魅力的な装飾を作るために、外面111の第2の部分は、基材11の内面110の第2の部分の反対側に少なくとも延在している。したがって、内層12と構造化部112は、ポケット15を通して見える。
【0042】
外層13を局所的に除去するステップに加えて、又はその代わりに、本方法は、内層12を彫刻するステップと同様の形態で、外層13を彫刻するステップを含んでよい。このような彫刻ステップは、外層13の局所的な除去のステップと組み合わせて、
図5に示している。外層13を彫刻するステップは、好ましいことに、基材11の外面111に大きな影響を与えることなく、外層13の一部が除去されて、所定の形状に従って前記層を形成するように行われる。このような彫刻ステップは、フォトリソグラフィー、レーザー加工などによって実行することができる。
【0043】
図5に、外層13を彫刻するステップの結果を示しており、本明細書において上述したように、所定の形状に成形された内層12が、内層12を彫刻するステップの終わりにも見えるように構成している。
【0044】
すなわち、特定の装飾を作るように、内層12と外層13の一方及び他方を局所的に除去することができる。特に、外層13を彫刻する前記ステップを、好ましいことに、内層12が基材11を通して見えるように行う。すなわち、外層13を彫刻する前記ステップを、
図5に示しているように、基材11の外面111上の内層12の投影が外層13を超えて延在するように行う。
【0045】
外層13、及び基材11の外面111、特に前記外面111の第2の部分に対して、その後に、表面処理を施すことができ、この表面処理は、例えば、内層12、及び基材11の内面110の第2の部分について上で説明したものである。
【0046】
好ましいことに、前記層の劣化を避けるために、外層13を堆積させるステップの前かつ内層12を堆積させるステップの前に行われる研磨ステップの間に、基材の外面111を研磨することができる。
【0047】
なお、本発明の特徴のおかげで、潜在的な内層12と外層13の間の色の差のコントラストが、それらの層がそれぞれ堆積される基材11の内面110と外面111の部分の間の表面状態のコントラストに加わるかぎり、外側コンポーネント10の装飾の外観は、特別に豊かで魅力的であることができる。また、本発明に係る方法によって、内層12と外層13の間の深さの視覚効果を発生させることができる。
【0048】
一般的に、上で検討された実装及び実施形態は、例を用いて説明しており、したがって、他の代替的形態も可能である。
【0049】
特に、内層12及び/又は外層13は、当業者によく知られている方法で、薄層の積み重ねからなることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 外側コンポーネント
11 基材
12 内層
13 外層
14、15 ポケット
110 基材の内面
111 基材の外面
112 構造化部
【外国語明細書】