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特開2024-43487回折格子を備える外側コンポーネントを製造する方法
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  • 特開-回折格子を備える外側コンポーネントを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043487
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】回折格子を備える外側コンポーネントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240322BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240322BHJP
   G04B 19/18 20060101ALI20240322BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20240322BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20240322BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B1/11
G04B19/18 A
G04B45/00 D
G04B19/06 G
G04B37/22 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122186
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22196175.8
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ・ヴュイユ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ジリー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・リティネ
(72)【発明者】
【氏名】バスチャン・コンボット
【テーマコード(参考)】
2H249
2K009
【Fターム(参考)】
2H249AA03
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA60
2K009AA02
(57)【要約】
【課題】 回折格子がある装飾を備える外側コンポーネントを製造する。
【解決手段】 本発明は、携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネント(10)を製造する方法に関し、この方法は、光透過性の材料によって作られた基材(11)の内面(110)の面の全部又は一部上に不透明のベース層(12)を堆積させるベース層堆積ステップと、レーザー加工によってベース層(12)を局所的に除去して、底部に回折格子(15)を備える少なくとも1つのポケット(14)を形成する局所的除去ステップとを含む。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネント(10)を製造する方法であって、
光透過性の材料によって作られた基材(11)の内面(110)の面の全部又は一部上に不透明のベース層(12)を堆積させるベース層堆積ステップと、
レーザー加工によって前記ベース層(12)を局所的に除去して、底部に回折格子(15)を備える少なくとも1つのポケット(14)を形成する局所的除去ステップとを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポケット(14)の前記底部は、前記基材(11)及び/又は前記ベース層(12)によって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の回折格子(15)を作るように前記局所的除去ステップを複数回行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベース層堆積ステップの前に、前記基材(11)の前記内面(110)を研磨する研磨ステップを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材(11)の前記内面(110)に大きな影響を与えることなく、前記ベース層(12)の全部又は一部をその厚み全体にわたって除去する彫刻ステップを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記回折格子(15)上に不透明の二次層(13)を堆積させる二次層堆積ステップを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも前記回折格子(15)上に不透明の二次層(13)を堆積させる二次層堆積ステップを行い、
前記彫刻ステップの間に、前記基材(11)の前記内面(110)が大きな影響を受けることなく、前記二次層(13)の一部を除去して、所定の形状に従って前記二次層(13)を形成する
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記内面(110)とは反対側の前記基材(11)の外面(111)上に反射防止被覆を堆積させる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法を実行することによって形成される
ことを特徴とする携行型時計用表盤。
【請求項10】
請求項1に記載の方法を実行することによって形成される外側コンポーネント(10)を備える
ことを特徴とするファッションアイテム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、ファッションアイテム又は宝飾品の分野に関し、特に、回折格子を備える、携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネントを製造する方法に関する。
【0002】
本明細書において、「ファッションアイテム」の概念は、ベルト、靴、衣料品のような衣類の付属品又はアイテムを含み、アイウェアアイテム、テレフォニーアイテム又はその他の装飾品を含む。
【背景技術】
【0003】
特に、計時器の分野において、携行型時計用の外側コンポーネント、特に、表盤、フランジ、ベゼルなどは、装飾の目的で、基材の面上に堆積させた薄層から作られた装飾を備えることがある。特に、このような薄層のおかげで、外側コンポーネントに色付けして、例えば、その面上にパターンを印刷することが可能になる。
【0004】
また、外側コンポーネントの面は、例えば、機械加工によって、構造化されて、特定のレリーフがあるようにすることもある。
【0005】
また、光の回折現象を発生させて、ユーザーの観察方向の向き及び/又は光源の向きに応じて変わる色を有するように、外側コンポーネント上に装飾を作ることもできる。このような現象は、スイス特許文献CH715906に記載されているような、外側コンポーネントにおいて作られた回折格子を利用して発生させる。この種の装飾は、拡張性があって大幅に変えることができることが魅力的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この種の装飾を作るには、いくつもの制約があり、特に、製造公差と表面状態の管理という点で高いレベルの要件がある。また、この種の装飾は、金属材料上にのみ作られる。したがって、外側コンポーネントの構成材料の性質を多様化しつつ、製造要件に確実に適合するようにすることによって、回折格子がある装飾を再現可能な方法で作ることができるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、携行型時計、ファッションアイテム又は宝飾品の外側コンポーネントを製造する方法に関し、この方法は、光透過性の材料によって作られた基材の内面の面の全部又は一部上に不透明のベース層を堆積させるベース層堆積ステップと、レーザー加工によって前記ベース層を局所的に除去して、底部に回折格子を備える少なくとも1つのポケットを形成する局所的除去ステップとを含む。
【0008】
基材ではなくベース層に対して除去ステップを行うことによって、基材とベース層との除去しきい値の違いを利用して、著しく低下したエネルギーレベルで回折格子を作ることが可能になる。
【0009】
基材を構成する任意の光透過性の材料、特にサファイアやガラスのような非常に高い除去しきい値を有する光透過性の材料、の選択を可能にすることに加えて、本発明に係る方法は、関与するエネルギーレベルが低いために、優れた再現性と製造公差の制御を確実にすることを可能とする。
【0010】
特定の実施態様において、本発明は、さらに、単独で、又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って、以下の特徴の一又は複数を有することができる。
【0011】
特定の実施態様において、前記ポケットの前記底部は、前記基材及び/又は前記ベース層によって形成される。
【0012】
特定の実施態様において、複数の回折格子を作るように前記局所的除去ステップを複数回行う。
【0013】
特定の実施態様において、前記ベース層堆積ステップの前に、前記基材の前記内面を研磨する研磨ステップを行う。
【0014】
特定の実施態様において、本方法は、前記基材の前記内面に大きな影響を与えることなく、前記ベース層の全部又は一部をその厚み全体にわたって除去する彫刻ステップを行う。
【0015】
特定の実施態様において、本方法は、少なくとも前記回折格子上に不透明の二次層を堆積させる二次層堆積ステップを行う。
【0016】
特定の実施態様において、前記彫刻ステップの間に、前記基材の前記内面が大きな影響を受けることなく、前記二次層の一部を除去して、所定の形状に従って前記二次層を形成する。
【0017】
特定の実施態様において、前記内面とは反対側の前記基材の外面上に反射防止被覆を堆積させる。
【0018】
別の目的によると、本発明は、上述のような方法を実行することによって形成される携行型時計用表盤に関する。
【0019】
別の目的によると、本発明は、上述のような方法を実行することによって形成される外側コンポーネントを備えるファッションアイテムに関する。
【0020】
添付の図面を参照しながら例として与えられる以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る製造方法のステップを実行することによって作られる外側コンポーネントを概略的に示している断面図である。
図2図2~5は、本発明に係る製造方法を実行することによって得られる様々な実施例における外側コンポーネントについて概略的に示している断面図である。図2は、ベース層を局所的に除去して、底部に回折格子を備えるポケットを形成した様子を示している。
図3】ベース層の一部をその厚み全体にわたって除去してベース層を成形した様子を示している。
図4】二次層が基材の内面に対向するように堆積された様子を示している。
図5】ベース層の一部及び二次層の一部を同時に除去してベース層と二次層を成形した様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面において縮尺が常に一致しているわけではない。
【0023】
本発明は、図2~5に示しているような前記方法の様々な実施例における外側コンポーネント10を製造する方法に関する。
【0024】
外側コンポーネント10は、好ましいことに、表盤のような携行型時計の外側コンポーネント、ファッションアイテムの外側コンポーネント、又は宝飾品の外側コンポーネントであることができる。
【0025】
「ファッションアイテム」という用語は、本明細書において、ベルト、靴、衣類のようなあらゆる外側アクセサリー又は外側アイテムを意味し、さらに、アイウェアアイテム、電話機の筐体のようなテレフォニーアイテム、又はあらゆる装飾品を含む。
【0026】
この製造方法は、図1に示しているように、光透過性の材料によって作られた基材11の内面110の面の全部又は一部に、「ベース層」12と呼ばれる不透明の薄層を堆積させる第1のステップを含む。なお、用語「光透過性」は、本文において、光線、特に肉眼で見える光、の全部又は一部を通過させる材料の能力を意味する。このような光透過性の材料は、サファイア、ガラスなどであることができる。
【0027】
ベース層12の堆積は、物理的蒸着法、化学的蒸着法、又は当業者の能力の範囲内の他の適切な方法によって行うことができる。例として、ベース層12は、単独又は合金として、特にCr、Au、Ti、Zrである、金属材料、誘電体材料、酸化物及び/又は窒化物、例えば、CrTiO2、によって作られていることができる。
【0028】
基材11の内面110は、外側環境の方を向くように意図された外面111とは反対側にあり、内面110は、内部環境の方を向くように意図されており、例えば、外側コンポーネント10が携行型時計のコンポーネントである場合、計時器用ムーブメントに対向する。
【0029】
好ましくは、内面110は、ベース層12を堆積させる前に、予備研磨ステップにおいて研磨される。
【0030】
本方法は、ベース層12を堆積させるステップの後に、レーザー加工によってベース層12を局所的に除去して、ベース層12の厚み内に、底部に図2に示しているような回折格子15を備える一又は複数のポケット14を形成する局所的除去ステップを含む。ポケット14は、ベース層12の材料の厚みの方向において、ベース層12の外面120と底部の間に形成されている。
【0031】
本発明の説明において、図面と合致するように、以下において、文章を読みやすくするために、1つのみのポケット14、したがって、1つの回折格子15、について言及する。
【0032】
このような回折格子15は、回折パターンの周期的な繰り返しによって形成される。
【0033】
例えば、回折格子は、数μmのような典型的には2~20μmである規則的なピッチで互いに離間した複数の平行な筋によって形成されている。
【0034】
例として、レーザー加工に用いられるレーザーは、数μJ、例えば1~5μJ、のパルスエネルギーと、数百kHz、例えば300~500kHz、の繰り返し周波数を有するフェムト秒レーザーであることができる。
【0035】
図2~5に示している実施例において、ポケット14は、基材11の内面110上にて開いており、その内面110に回折格子15が形成されている。本発明の他の実施例において、特に、レーザーのパワーやエネルギー、焦点の位置のようなレーザー加工のパラメーターに応じて、かつ/又はベース層12を構成する材料に応じて、回折格子15は、基材11の内面110によって、又はベース層12の材料と前記基材11の材料の混合物によって、形成することができる。
【0036】
好ましいことに、装飾を向上させるために、本発明に係る方法は、特定のパターンを表すように複数の回折格子15を作るように、前記局所的除去ステップを複数回行うことができる。このような回折格子15は、互いに異なるように形成することができ、例えば、各筋の向き、それらの筋の数や寸法、又はそれらの筋の離間ピッチは異なっていることができる。また、基材11の内面110のうち互いに対して傾斜した部分に回折格子15を作ることができる。
【0037】
短く書くと、前記局所的除去ステップは、作る回折格子15の所望の外観に応じて異なるパラメーターで実行することができ、当業者であれば、このようなパラメーターの値を決定する能力がある。
【0038】
局所的除去によってポケット14と回折格子15が同時に形成されるので、回折格子15は、ともに形成されるポケット14と完全に合致する。したがって、ベース層12の外面120と回折格子15の間のアライメント公差の適合が確実にされる。
【0039】
好ましいことに、本方法は、図3に示しているように、基材11の内面110が大きな影響を受けることなく、ベース層12の一部をその厚み全体にわたって除去して、所定の形状に従って前記ベース層12を成形する彫刻ステップを含むことができる。この特徴は、外側コンポーネント10上に作られることがある装飾を向上させることに貢献する。このような彫刻ステップは、フォトリソグラフィー、レーザー加工などによって実行することができる。
【0040】
代わりに、前記彫刻ステップの間に、ベース層12全体をその厚み全体にわたって除去することができる。
【0041】
上述した図2及び3に示している実施例において、前記基材11を介して外面111から、又は携行型時計、宝飾品又はファッションアイテム内の前記外側コンポーネント10の構成に従って内面110から、前記外側コンポーネント10の装飾をユーザーが見るように意図されている。
【0042】
ユーザーが外面111から前記基材11を通して外側コンポーネント10の装飾を見るように意図されている場合、前記基材11には、好ましいことに、外側環境の潜在的な危険性からベース層12を保護する効果がある。
【0043】
本発明の実施例の1つにおいて、本方法は、二次層13を堆積させるステップを含むことができ、このステップにおいては、前記彫刻ステップにおいてベース層12が完全に除去されていない場合又は前記彫刻ステップが実行されていない場合、不透明の二次層13を回折格子15上及びベース層12上に堆積される。前記彫刻ステップが実行されベース層12全体が除去されている場合、図4に示しているように、二次層13も基材11の内面110に対向するように堆積される。
【0044】
この図4及び5に示している実施例において、前記基材11を通して外面111からのみユーザーが外側コンポーネント10の装飾を見ることが意図されている。
【0045】
二次層13は、好ましいことに、回折された光線の反射を大きくし、したがって、作られる装飾の輝度やコントラストを大きくすることを可能にする。このために、この二次層13は、金属材料、セラミックス、酸化物、及び/又は窒化物によって作られていることができる。
【0046】
図5に示している実施例において、前記彫刻ステップは、基材11の内面110が大きな影響を受けることなく、ベース層12の一部及び二次層13の一部を同時に除去して、所定の形状に従って前記ベース層12と前記二次層13を成形することを伴うことができる。二次層13の除去された部分は、ベース層12の除去された部分に重なり合う。
【0047】
好ましいことに、基材11の外面111上に反射防止被覆(図示せず)を堆積させることができる。このような反射防止被覆のおかげで、入射光線の透過を有利にし、基材11の外面111上の入射光線の反射を最小にし又はさらにはなくすことが可能になる。したがって、この特徴のおかげで、回折現象の出現を強めることが可能となる。
【0048】
検討される本発明の実施例に応じて、ベース層12又は二次層13上に反射防止被覆を堆積させ、随意的に、前記彫刻ステップが行われた場合に、基材11の内面110上にも堆積させることができる。
【0049】
本発明の特徴のおかげで、ベース層12、及び場合によって二次層13、のために考えられる色に加えて回折格子15の外観が与えられるために、外側コンポーネント10の装飾の視覚的外観を特に豊かで魅力的にすることができる。また、本発明に係る方法は、ベース層12、二次層13及び回折格子15の間の深さの視覚効果を発生させることを可能にする。
【0050】
また、ベース層12は、好ましいことに、低いパワーを必要とするレーザー加工によって、光透過性の基材11上に回折格子15を備える装飾を作ることを可能にし、このことによって、加工の繰り返し性の良好な制御を確実にし、結果的に、製造公差に常に適合することを確実にすることを可能にする。また、大きなパワーを必要とする機械加工を実行することで、基材11の内面110の表面状態を変化させ、その面の艶を消してしまうだけでなく、外側コンポーネント10の寸法の要件の適合についても不確定要素が発生してしまう。
【0051】
より一般的には、上で考慮された実装及び実施形態は、例として説明しており、したがって、他の代替的形態も可能である。
【0052】
特に、ベース層12及び/又は二次層13は、当業者によく知られている形態で、薄層の積み重ねからなることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 外側コンポーネント
11 基材
12 ベース層
13 二次層
14 ポケット
15 回折格子
110 基材の内面
111 基材の外面
120 ベース層の外面
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】