(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043491
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】調整の必要性が低減された侵入検知アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
G01D5/353 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023136509
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】17/946,533
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523312565
【氏名又は名称】ネットワーク インテグリティ システムズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ケイリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ゲルツェン,ダニエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジス,マーク ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ,ジョゼフ
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA33
2F103CA07
2F103EC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光ファイバによる監視方法を提供する。
【解決手段】光ファイバが、侵入イベントについて監視され、反射された光信号は、それぞれが光ファイバ上のそれぞれの位置に関連付けられたストリームに分割される。複数のストリームを含有するストリームのブロックが選択され、ストリームは、平均化によって合わせられて単一のストリームを作出し、単一のストリームに対してアルゴリズムが適用されて係数を作出し、係数は閾値と比較されて、侵入イベントによるファイバの撹乱を示す出力を生成する。ファイバの長さを表す各ブロックは、ゾーンとして扱われ、検知アルゴリズムがそれぞれに対して適用される。各ゾーンが独立して監視されるので、特有の調整を必要としないDASシステムが作出される。ゾーン原理およびアルゴリズムをDASシステムに適用することによって、高レベルの、迷惑警報および誤警報の阻止も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの撹乱イベントについて前記光ファイバを監視するための方法であって、
前記光ファイバに監視光信号を導入する工程と、
前記光ファイバ上の撹乱イベントによって変化を受けた光信号を前記光ファイバから受信する工程であって、
前記光信号は複数のデータストリームに分割され、各データストリームは前記光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられ、各データストリームが前記それぞれの部分における撹乱を示すように、前記部分は前記光ファイバの長さに沿って分割され、
各データストリームは、前記それぞれの部分における経時的な撹乱を表す一連のデータ値を含む、受信する工程と、
前記データストリームの少なくとも1つのブロックを分析のために選択する工程であって、前記選択されたブロックが複数の前記部分を含有する前記光ファイバの長さに関連付けられるように、および前記選択されたブロックの前記複数のデータストリームの各々が前記選択されたブロックの長さにおける撹乱を示すように、前記データストリームの各選択されたブロックが複数のデータストリームを含有する、選択する工程と、
各選択されたブロックについて、共通のデータストリームが前記関連付けられ選択されたブロックの全長における経時的な撹乱を表すように、前記選択されたブロックの前記データストリームを前記共通のデータストリームに合わせる工程と、
各選択されたブロックの前記共通のデータストリームにアルゴリズムを適用する工程と、
前記アルゴリズムの結果に応じて、撹乱イベントの検知を示す出力を生成する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記データストリームが数学的平均化システムによって合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルゴリズムが、各選択されたブロックの前記共通のデータストリームに対して別々に適用される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記アルゴリズムが、前記共通のデータストリームに対して分析を実行して前記共通のデータストリーム中の前記データ値に依存する少なくとも1つの係数値を作出する工程と、前記少なくとも1つの係数値を閾値と比較して撹乱イベントの検知を示す前記出力を生成する工程とを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記アルゴリズムが、前記共通のデータストリームに対して分析を実行して前記共通のデータストリーム中の前記データ値に依存する一連の係数値を作出する工程と、前記係数値の各々をそれぞれの閾値と比較して撹乱イベントの検知を示す前記出力を生成する工程とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルゴリズムが、周囲環境の撹乱との相違を判定することに基づいており、前記光ファイバに加えられたサンプル刺激からの記録されたシグネチャを使用しない、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのブロック内のストリームの数が、少なくとも1つの他のブロック内のストリームの数とは異なる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記光ファイバが、監視されるべき物体に沿って設置され、各ブロック内のストリームの数が、その長さに沿って監視されるべき物体の異なる特徴との関連で、前記光ファイバの設置時に選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
各ブロック内のストリームの数が可変である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記光ファイバが監視されるべき物体に沿って設置され、各ブロック内のストリームの数が、前記監視されるべき物体上の検知された変化および/または前記物体の異なる位置における環境の変化に応じて変えられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の選択されたブロックが存在し、前記アルゴリズムが、他のブロックとは独立して各選択されたブロックに適用される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
各ブロック内の前記ストリームが、前記受信された信号からの生データを含むか、または前記ストリームが、フィルタリングまたは平均化などによって前処理される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記共通のデータストリームが、経時的に平均化されたその前記データ値を有する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ファイバ上の変化するノイズに応答して前記アルゴリズムを自動的に変化させることを含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
光ファイバの撹乱イベントについて前記光ファイバを監視するための方法であって、
前記光ファイバに監視光信号を導入する工程と、
前記光ファイバ上の撹乱イベントによって変化を受けた光信号を前記光ファイバから受信する工程であって、
前記光信号は複数のデータストリームに分割され、各データストリームは前記光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられ、各データストリームが前記それぞれの部分における撹乱を示すように、前記部分は前記光ファイバの長さに沿って分割され、
各データストリームは、前記それぞれの部分における経時的な撹乱を表す一連のデータ値を含む、受信する工程と、
前記データストリームの少なくとも1つのブロックを分析のために選択する工程であって、前記選択されたブロックが複数の前記部分を含有する前記光ファイバの長さに関連付けられるように、および前記選択されたブロックの複数のデータストリームが前記選択されたブロックの長さにおける撹乱を示すように、前記データストリームの各選択されたブロックが複数のデータストリームを含有する、選択する工程と、
各選択されたブロックについて、共通のデータストリームが前記関連付けられ選択されたブロックの全長における経時的な撹乱を表すように、少なくとも1つの共通のデータストリームを生成する工程と、
各選択されたブロックの前記共通のデータストリームにアルゴリズムを適用する工程であって、前記アルゴリズムは、前記共通のデータストリームに対する分析を実行して、前記共通のデータストリーム中の前記データ値に応じて少なくとも1つの係数値を作出すること、および前記少なくとも1つの係数値を閾値と比較して、撹乱イベントの検知を示す出力を生成することを含む、アルゴリズムを適用する工程と、
を含む、方法。
【請求項16】
前記アルゴリズムが、前記共通のデータストリームに対する分析を実行して前記共通のデータストリーム中の前記データ値に依存する一連の係数値を作出する工程と、前記係数値の各々をそれぞれの閾値と比較して撹乱イベントの検知を示す前記出力を生成する工程とを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルゴリズムが、周囲環境の撹乱との相違を判定することに基づいており、前記光ファイバに加えられたサンプル刺激からの記録されたシグネチャを使用しない、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記光ファイバが監視されるべき物体に沿って設置され、各ブロック内のストリームの数が、前記監視されるべき物体上の検知された変化および/または前記物体の異なる位置における環境の変化に応じて変えられる、請求項15、16または17に記載の方法。
【請求項19】
光ファイバの撹乱イベントについて前記光ファイバを監視するための方法であって、
前記光ファイバに監視光信号を導入する工程と、
前記光ファイバ上の撹乱イベントによって変化を受けた光信号を前記光ファイバから受信する工程であって、
前記光信号は複数のデータストリームに分割され、各データストリームは前記光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられ、各データストリームが前記それぞれの部分における撹乱を示すように、前記部分は前記光ファイバの長さに沿って分割され、
各データストリームは、前記それぞれの部分における経時的な撹乱を表す一連のデータ値を含む、受信する工程と、
前記データストリームの少なくとも1つのブロックを分析のために選択する工程であって、前記選択されたブロックが複数の前記部分を含有する前記光ファイバの長さに関連付けられるように、および前記選択されたブロックの複数のデータストリームが前記選択されたブロックの長さにおける撹乱を示すように、前記データストリームの各選択されたブロックが前記複数のデータストリームを含有する、選択する工程と、
各選択されたブロックについて、共通のデータストリームが前記関連付けられ選択されたブロックの全長における経時的な撹乱を表すように、少なくとも1つの共通のデータストリームを生成する工程と、
各選択されたブロックの前記共通のデータストリームにアルゴリズムを適用する工程であって、
前記アルゴリズムは、周囲環境の撹乱との相違を判定することに基づき、かつ前記光ファイバに加えられたサンプル刺激からの記録されたシグネチャを使用しない、アルゴリズムを適用する工程と、
前記アルゴリズムの結果に応じて、撹乱イベントの検知を示す出力を生成する工程と、
を含む、方法。
【請求項20】
前記アルゴリズムが、前記共通のデータストリームに対する分析を実行して前記共通のデータストリーム中の前記データ値に依存する少なくとも1つの係数値を作出する工程と、前記少なくとも1つの係数値を閾値と比較して撹乱イベントの検知を示す出力を生成する工程とを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置ごとにシステムを調整する必要性を低減しながら、侵入の試みおよびその他の悪意のあるまたは意図的な撹乱を検知するために光ファイバからの監視信号を分析するための方法またはアルゴリズムに関する。これは、光ファイバがフェンスの少なくとも一部に沿って伸びており、登る、持ち上げるまたは切断するなどの侵入の試みによって引き起こされる動きまたは振動などのファイバの何らかの撹乱に応答して、ファイバに沿って伝達されるモニタ信号に変化を生成するフェンスなどの境界セキュリティに特に適用可能である。しかしながら、本明細書の方法は、その他の種類の侵入イベントに応答して動かされ得るその他のファイバの監視に関連して使用され得る。動き(movement)と振動(vibration)との差が微妙であるので、本明細書では、動きと振動の両方を含むものとして、撹乱(disturbance)という用語が使用される。つまり、その意図は、監視されるべきイベントを示すファイバの任意の撹乱を検知するということである。
【0002】
この方法は、光ファイバに監視光信号を導入し、光ファイバに影響を及ぼすイベントによって変化を受ける光信号を光ファイバから受信することによって動作する監視システムであって、光信号は複数のストリームになり、各ストリームは、光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられており、各ストリームがそれぞれの部分における撹乱を示すように、当該部分は、光ファイバの長さに沿って分割されており、各ストリームは、経時的にそれぞれの部分における撹乱の規模を示す一連のデータ値を含む、監視システムに特に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
このタイプの監視システムの一例は、振動および変位が光ファイバの経路長の局所的なシフトを引き起こす分散型音響センシング(DAS)として知られている。これは、高精度光学時間領域反射測定装置(OTDR)によって検知される。このOTDRは、しばしば位相-OTDRまたはΦ-OTDRと呼ばれ、レイリー後方散乱の点間の距離の変化を測定する。
【0004】
レイリー散乱に基づく分散型光ファイバセンシングでは、コヒーレントなレーザパルスが光ファイバに沿って送られ、ファイバ内の散乱部位が、ファイバをパルス長に概ね等しいゲージ長を有する分散型干渉計として動作させる。反射光の強度が、レーザパルスの送信後の時間の関数として測定される。パルスが、ファイバの全長を移動して戻るための時間を有する場合、次のレーザパルスをファイバに沿って送ることができる。ファイバの同じ領域からの連続パルスの反射強度の変化は、ファイバのその区画の光路長の変化によって引き起こされる。このタイプのシステムは、ファイバの歪みおよび温度変動の両方に対して極めて鋭敏であり、ファイバのすべての区画においてほぼ同時に測定を行うことができる。
【0005】
レイリーに基づくセンシングの感度および速度は、各レーザ源から100kmを超える距離にわたる音響信号の分散型監視を可能にする。典型的な用途としては、望ましくない妨害についてのおよび漏れまたは流れの不規則性についてのパイプラインの継続的な監視、望ましくない妨害およびケーブル故障についての電力ケーブルの監視、不審な行動について、交通(道路、鉄道および列車[6])、境界およびその他の注意を払うべき周辺を監視すること、ならびに本技術が油井の長さ全体に沿って油井の状態をリアルタイムで判定することを可能にする油井監視用途が挙げられる。光ファイバは過酷な環境で動作することができるため、本技術は、環境条件のために典型的な感知システムが使用不可能または非実用的である状況に特によく適している。
【0006】
しかしながら、DAS以外の他の感知システムは、ファイバに沿った特定の点に関連するデータ値の上記ストリームを生成することができる。
【0007】
このDAS法は、Network Integrity SystemsのFocus製品において使用されており、例えばFotech Solutions Limitedに譲渡された米国特許第9,002,149号(Rogers)に示されている方法を使用する。
【0008】
ファイバの一端に接続された分散型音響センサ(DAS)は、レーザを使用して、毎秒ファイバに沿って数千の短い光のパルスを送信する。ファイバ内を移動する光のごく一部が、レイリー後方散乱として知られるプロセスによって反射される。周囲の環境からの振動は、ファイバ内の光を乱し、したがってDASインテロゲータによって観察される。
【0009】
データがリアルタイムで処理されるので、高度なアルゴリズムが各タイプのイベントの特有のシグネチャを認識することができる。懸念のあるイベントは、警報サーバに報告される。
【0010】
DASシステムは、科学と芸術を組み合わせたような較正および微調整プロセスを必要とし得る。これは非常に時間がかかり、システムの性能は調整の専門家の技能に依存している。
【0011】
高度なAI技術を使用して、システムはバックグラウンドノイズと本当の脅威とを区別する。音響イベントが光ファイバケーブルに沿って発生すると、音響イベントはシステムによって検知され、システムは受信されたすべての音響データを処理し、その検知アルゴリズムを適用してイベントを特定し、分類する(例えば、掘る、登るおよびパイプラインの漏れ)。受信されたデータに対して人工知能を使用して、システムは、イベントが資産の完全性に対する「脅威」であるかどうか、およびいつ警報を発するかを判定する。
【0012】
すなわち、従来のDASシステムは、設置されるときに、調整の専門家が、光ファイバの長さに沿った様々な位置で、光ファイバまたは監視のためにその上に光ファイバが取り付けられている部品にサンプル刺激を加え、次いでサンプル刺激に対する応答をシグネチャイベントとして記録するために、システムに対して大規模な試験を実施する必要がある。もちろん、これは、異なる種類の刺激をファイバ上の多くの異なる位置に加える必要がある極めて時間のかかるプロセスである。これにより、比較のために多数のシグネチャイベントが生成される。次いで、システムは、シグネチャイベントの1つと類似するかまたは同等であるファイバからの信号によって生成されたデータを探すように動作する。このシステムを改善するための作業には、AIを使用したより多くのシグネチャイベントの生成およびそれらとの比較を必要とする。その意図は、比較のためにシグネチャイベントの大きなライブラリを作出することである。しかしながら、シグネチャイベントは設置ごとに依然として異なり得るため、サンプル刺激を加え、シグネチャイベントを生成するという同じプロセスを新たな設置ごとに実行しなければならない。
【0013】
このシステムの一部として、ファイバの全長を、第1および第2の異なるフェンス区画、門、構造物内の特に注意を払うべき場所などの別個の区画に分割することが知られている。これは、設置の一環として行われ、上記のように、各区画に対してシグネチャイベントを生成するために、各区画をサンプル刺激で個別に分析しなければならない。
【0014】
システムは、設置および調整されると、次いで、オペレータに脅威の正確な位置を示し、どのようなイベントが発生したかに関する情報を提供し、適時の相応な応答を行う機会をオペレータに与えることができる。DASシステムは、高度に設定可能なセンサを含み、これは、レーザパルス周波数、パルス幅および多くの他のパラメータを制御することができ、システムを各顧客の特定の要件に合わせて調整することが可能であることを意味する。
【0015】
警報管理サーバは、正確で実用的な警報を提供し、警報を地図上に表示する。また、ユーザは、データの対象セグメントを自動的に記録し、そのデータを保存、再生および評価することができる。これらのデータセグメントは、既存の検知システムを強化および改良するために、または新しい検知パラメータを作出するために使用され得る。
【0016】
したがって、DASシステムは、通例、科学と芸術を組み合わせたような上記較正および微調整プロセスを必要とする。これは非常に時間がかかり、システムの性能は調整の専門家の技能に依存している。
【0017】
さらに、DASシステムは、悪天候の間、迷惑な警報に悩まされる。これは、気象イベントが以前に記録されたシグネチャイベントと極めて一致するデータをファイバからの信号内に生成することができるからである。一般的なアプローチは、当該天候の間、警報を抑制し、システムを効果的に消音することである。高頻度の迷惑な警報は監視システムに負担をかけ、エンドユーザにとって腹立たしいものである。
【0018】
したがって、本発明は、境界セキュリティシステムに使用される場合、限定されるわけではないが特にDASに伴ういくつかの一般的な課題に対処する。
【0019】
DASは、特にフェンスに取り付けられた場合、風および雨などの極端な気象条件に弱い。DASシステムの性質および顕著な感度の故に、気象現象は信号を圧倒し得る。これにより、システムは、捕捉するためにそのシステムが装備されたイベントの検知に対する感度の減弱または低下を経験することがある。DASまたは類似のシステムが、極端な気象条件の間、単に感度の低下を示し、そのことを知っている悪意のある者に絶好の機会を与えることは、業界では珍しいことではない。
【0020】
天候によって引き起こされる上記欠点は、フェンス品質の最適化および調整技能によって克服することができる。専門家による調整と併せて、厳格な要件を満たすフェンスを用いれば、DASシステムは気象に対する脆弱性を免れないわけではない。むしろ、天候は、設置を成功させるために必要とされる労力のレベルを増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【発明の概要】
【0022】
本発明の1つの目的は、設置時に必要とされる調整のレベルを低減する、DASなどのこの種のシステムからのデータを分析するための方法またはシステムを提供することである。
【0023】
したがって、本発明によれば、光ファイバの撹乱イベントについて当該光ファイバを監視するための方法であって、
光ファイバに監視光信号を導入する工程と、
光ファイバ上の撹乱イベントによって変化を受けた光信号を前記光ファイバから受信する工程と、
光信号は複数のデータストリームに分割され、各データストリームは光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられ、各データストリームがそれぞれの部分における撹乱を示すように、当該部分は光ファイバの長さに沿って分割され、
各データストリームは、それぞれの部分における経時的な撹乱を代表する一連のデータ値を含み、
データストリームの少なくとも1つのブロックを分析のために選択する工程であって、選択されたブロックが複数の部分を含有する光ファイバの長さに関連付けられるように、および選択されたブロックの複数のデータストリームの各々が選択されたブロックの長さにおける撹乱を示すように、データストリームの各選択されたブロックが複数のデータストリームを含有する、工程と、
各選択されたブロックについて、共通のデータストリームが関連付けられ選択されたブロックの全長における経時的な撹乱を代表するように、選択されたブロックのデータストリームを共通のデータストリームに合わせる工程と、
各選択されたブロックの共通のデータストリームにアルゴリズムを適用する工程と、
アルゴリズムの結果に応じて、撹乱イベントの検知を示す出力を生成する工程と、
を含む方法が提供される。
【0024】
典型的には、一例において、データストリームは、数学的平均化システムによって1つに合わせられる。すなわち、選択されたブロック内のデータストリームのすべては、加算、単純平均、加重平均、および複数の値を表す単一の値を生成するための当業者に公知の他のアルゴリズムなどの適切な数学的平均化システムによって1つにまとめられる。
【0025】
好ましくは、アルゴリズムは、各選択されたブロックの共通のデータストリームに対して別々に適用される。すなわち、選択された1つのブロックまたは複数のブロックからのデータは、各ブロックに対するイベント警報を独立に生成するために、そのブロックの特徴を念頭に置いて独立に分析される。
【0026】
上述したように、各選択されたブロックについて、選択されたブロックのデータストリームは、1つの共通のデータストリームに合わせられる。しかしながら、さらに、追加の工程として、同じデータストリームは、独立した分析のために、1つまたは複数の他の共通のストリームに異なって合わせられ得る。したがって、単一のストリームである必要はなく、独立して分析される共通のデータストリームの作出に過ぎない。
【0027】
共通のデータストリームは、1つより多いデータ要素を含有し得る。すなわち、共通のデータストリームは、ブロック全体に伴う長さの撹乱に関する情報を共に提供する並列データ要素のストリームを含有し得る。
【0028】
好ましくは、アルゴリズムは、共通のデータストリームに対する分析を実行して共通のデータストリーム中のデータ値に依存する少なくとも1つの係数値を作出する工程と、少なくとも1つの当該係数値を閾値と比較して撹乱イベントの検知を示す出力を生成する工程とを含む。すなわち、好ましくは、分析は既存の閾値との比較に基づく。以下で説明されるように、閾値は可変であり得、異なる比較構成において使用され得る。
【0029】
一例として、分析は、上記の引用特許に記載されているように周波数または時間を基礎とすることができ、係数を生成するために、特にフーリエ変換を使用し得る。
【0030】
この構成においては、アルゴリズムが周囲環境の撹乱との差を判定することに基づいており、上記のDASシステムに関して上述したように光ファイバに加えられたサンプル刺激からの記録されたシグネチャを使用しないことが重要な特徴である。したがって、本明細書のシステムは、データを既知のイベントの既知のシグネチャと比較することを試みる従来技術のDASシステムとは異なり、予想される状態との差を探す分析を実行する。
【0031】
ブロックは、1つのブロック内のストリームの数が他のブロック内のストリームの数と異なるように選択され得る。すなわち、特定のブロックの選択によって分析されているファイバの長さは、門を有する境界フェンスなどの、監視されている物体の構造に合わせて調整され得る。
【0032】
本発明のさらなる定義によれば、光ファイバの撹乱イベントについて光ファイバを監視するための方法であって、
光ファイバに監視光信号を導入する工程と、
光ファイバ上の撹乱イベントによって変化を受けた光信号を光ファイバから受信する工程と、
光信号は複数のデータストリームに分割され、各データストリームは光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられ、各データストリームがそれぞれの部分における撹乱を示すように、当該部分は光ファイバの長さに沿って分割され、
各データストリームは、それぞれの部分における経時的な撹乱を代表する一連のデータ値を含み、
データストリームの少なくとも1つのブロックを分析のために選択する工程であって、選択されたブロックが複数の部分を含有する光ファイバの長さに関連付けられるように、および選択されたブロックの複数のデータストリームが選択されたブロックの長さにおける撹乱を示すように、データストリームの各選択されたブロックが複数のデータストリームを含有する、工程と、
各選択されたブロックについて、共通のデータストリームが関連付けられ選択されたブロックの全長における経時的な撹乱を代表するように、少なくとも1つの共通のデータストリームを生成する工程と、
各選択されたブロックの共通のデータストリームにアルゴリズムを適用する工程であって、
アルゴリズムは、共通のデータストリームに対して分析を実行して、共通のデータストリーム中のデータ値に応じて少なくとも1つの係数値を作出すること、および少なくとも1つの当該係数値を閾値と比較して、撹乱イベントの検知を示す出力を生成することを含む、アルゴリズムを適用する工程と、
を含む方法が提供される。
【0033】
本発明のさらなる定義によれば、光ファイバの撹乱イベントについて当該光ファイバを監視するための方法であって、
光ファイバに監視光信号を導入する工程と、
光ファイバ上の撹乱イベントによって変化を受けた光信号を当該光ファイバから受信する工程であって、
光信号は複数のデータストリームに分割され、各データストリームは光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられ、各データストリームがそれぞれの部分における撹乱を示すように、当該部分は光ファイバの長さに沿って分割され、
各データストリームは、それぞれの部分における経時的な撹乱を表す一連のデータ値を含む、受信する工程と、
データストリームの少なくとも1つのブロックを分析のために選択する工程であって、選択されたブロックが複数の部分を含有する光ファイバの長さに関連付けられるように、および選択されたブロックの複数のデータストリームが選択されたブロックの長さにおける撹乱を示すように、データストリームの各選択されたブロックが複数のデータストリームを含有する、選択する工程と、
各選択されたブロックについて、共通のデータストリームが関連付けられ選択されたブロックの全長における経時的な撹乱を表すように、少なくとも1つの共通のデータストリームを生成する工程と、
各選択されたブロックの共通のデータストリームにアルゴリズムを適用する工程であって、
前記アルゴリズムは、周囲環境の撹乱との相違を判定することに基づき、かつ光ファイバに加えられたサンプル刺激からの記録されたシグネチャを使用しない、アルゴリズムを適用する工程と、
アルゴリズムに応答して、撹乱イベントの検知を示す出力を生成する工程と、
を含む方法が提供される。
【0034】
好ましい方法では、各ブロック内のストリームの数は、光ファイバの長さの所望の区画を選択するように選択され得るか、または調整され得る。これらは、門などの重要性の高い場所に存在し得る。すなわち、各ブロック内のストリームの数は、システムの所望の実装を達成するために変更可能または選択可能である。
【0035】
典型的なまたは実際のシステムでは、好ましくは複数のブロックが存在し、アルゴリズムは他のブロックとは独立して各ブロックに適用される。
【0036】
典型的なまたは実際のシステムでは、いくつかの事例において、光ファイバの全長またはその一部を監視するために1つのブロックが選択される。
【0037】
DASによる実装に関しては、ブロックは、好ましくは、受信された光信号からデータ値のウォーターフォールを形成する。
【0038】
典型的なまたは実際のシステムでは、ブロック内のストリームの数によって規定されるブロックの幅は、例えば環境の変化に応じて動的に変更され得る。
【0039】
好ましくは、各ブロックは、時間の経過とともに変化するにつれて、ファイバに沿ったこれらの位置の各々に信号のストリームを含有し、ストリームの分析は、インテロゲータのサンプリング速度ほど小さなまたは全スパンほど大きな光ファイバのゾーンの分析を可能にする。
【0040】
各ブロック内のストリームは、受信された信号からの生データを含むことができ、またはストリームは、フィルタリングまたは平均化などによって前処理され得る。
【0041】
1つの任意選択の実装では、各ストリームは、時間にわたって平均化されたそのデータ値を有する。本明細書で使用されるタイプのDASまたは他の類似のシステムでは、ファイバ資産に沿った各位置における信号はランダムなノイズの中に埋没される。各位置またはストリームにおける時間にわたった移動平均は、ランダム性を低減し、次いで処理のためにアルゴリズムに渡される実際の信号を示すレベルを生成する。
【0042】
好ましくは、各ストリームは、光ファイバの長さに沿って分割された、光ファイバの特定のそれぞれの部分に関連付けられるように、ファイバに沿って時間および/または距離によって分割される。
【0043】
このシステムは、ファイバ上の変化するノイズに対応するために分析の感度を自動的に変化させる構成において有利に使用され得る。
【0044】
典型的には、光ファイバは、監視されるべき境界フェンスなどの物体に沿って設置され、各ブロックのストリームの数は、その長さに沿って監視されるべき物体の異なる特徴との関連で、光ファイバの設置時に選択される。
【0045】
データ値が適用されるアルゴリズムの一例では、デジタルサンプルの選択された時系列を周波数依存変換係数のセットに変換するために変換関数が使用され、変換係数のセットは、エンベロープに対して比較され、エンベロープは、変換係数のセットと同じサイズの係数のブロックであり、変換係数が所定の閾値だけエンベロープ係数を超えれば侵入イベントを示す。変換関数は、フーリエ変換またはウェーブレット変換を含むことができる。したがって、典型的には、変換係数がエンベロープ係数よりも大きいが、閾値より小さい値だけ大きい場合には、エンベロープ係数は、エンベロープ係数をより大きな値に増加させることによって、増加する環境ノイズ条件に対応するために分析の感度をより低くさせるように変更され、エンベロープ係数は、エンベロープ係数をより小さな値に減少させることによって、減少する環境ノイズ条件に対応するために分析の感度をより高くさせるように、減衰値だけ各エンベロープ係数を周期的に低下させることによって時間とともに減衰される。この分析では、好ましくは、変換係数のセットの各変換係数は、係数のブロックのエンベロープ係数のセットのそれぞれの関連付けられた1つに対して比較され、少なくとも1つの変換係数が所定の閾値だけエンベロープ係数のそれぞれの関連付けられた1つを超えれば、侵入イベントが示される。
【0046】
感度調整を改善するために、侵入イベントが検知される分析に関して、エンベロープ係数は、好ましくは、より大きな値に増加されない。
【0047】
感度調整を向上させるために、エンベロープ係数をより大きな値に増加させるためのエンベロープ係数の変更は、複数のサイクルの時間だけ遅延させることが好ましい。例えば、エンベロープ係数の変更は、バッファ中への値の格納によって遅延され、侵入イベントが検知された状況において、バッファ中に格納された値は破棄される。
【0048】
感度調整を改善するために、好ましくは、各エンベロープ係数にはフロア値が提供され、エンベロープ係数がフロア値を下回る減衰値まで減衰されると、そのエンベロープ係数はフロア値に置き換えられる。
【0049】
本明細書のシステムは、上述したように多くの他の感知装置において使用され得るが、光ファイバが境界セキュリティシステムの少なくとも一部に沿って伸び、光ファイバの当該撹乱が境界セキュリティシステム上の侵入イベントに応答して引き起こされる境界セキュリティシステムを監視する上で使用するのに特に有利である。この場合には、分析は、風および雨などの当該気象条件の存在下で標準的な侵入を検知するために、気象によって引き起こされるファイバ上のノイズを十分に補正する。
【0050】
用途または監視されているシステムに応じて、データは、距離を表すものとしてのストリーミングデータまたは経過した時間を表すものとしてのデータのいずれかにおけるデータのサブセットを表すことができる。DASシステムを出る信号を表すための一般的な方法は、「ウォーターフォール」と呼ばれる。
【0051】
境界セキュリティの分野では、フェンスに光ファイバを設置することにより、いくつかの利点が得られる。
【0052】
ガラスは導体を含有しないので、光ファイバセンサは、センサに対する局所出力の必要性などの一般的な電気の問題に対して本質的に耐性がある。
【0053】
光ファイバセンサは金属導体を含有しないので、ヘッドエンドインテロゲータに損傷を引き起こす雷の影響に対して耐性がある。
【0054】
導電体が存在しないので、感電の危険が減少する。
【0055】
導体またはシールドの接合が必要とされない。
【0056】
本発明の概念は、侵入の位置を特定するためにOTDRを使用しない、ゾーンシステム用に設計されたアルゴリズムを採用し、DASウォーターフォールのデータが発生する際に、アルゴリズムをDASウォーターフォールのデータに適用する方法を見出すことである。すなわち、本質的に、各位置または位置のブロックを個々のゾーンとして扱う。したがって、設備を「ゾーン」に分割することができ、各ゾーンまたは位置がアルゴリズムによって分析される。これにより、いくつかの選択肢が可能になる。
【0057】
ゾーンは、所望に応じてまたは処理が許容するだけ大きくまたは小さくすることができる。
【0058】
ゾーンは、検知される撹乱の大きさに合致するように自動的に調整され得る、すなわち、風が吹く状況で使用される場合には極めて広く、またはフェンスの切断に関する場合には極めて狭い。
【0059】
また、各ブロック内のストリームの数は、監視されるべき物体上の検知される変化および/または物体の異なる位置もしくはゾーンで異なることがあり得、様々な様式で物体に影響を及ぼし得る物体における環境の変化に応じて変化させることができる。ブロックの1つまたは複数の長さまたはストリームの数、すなわち選択されたゾーンの長さの変化を判定するために、これらの変化を監視し、使用することができる。
【0060】
例えば、保護されておらず、風が吹いている方向に対して垂直に伸びるフェンスは、曝露された長さ全体にわたって撹乱を示すであろう。逆に、ボルトカッターでフェンスを切断する侵入者は、極めて狭い撹乱を生じさせるであろう。システムは、撹乱の幅を評価し、その情報を使用して分析のためのブロックまたは信号の幅を選択することができる。したがって、風イベントは、分析においては、単一のゾーンまたはブロックとして扱われる。切断侵入は、極めて狭いブロックを選択するように狭い刺激に集中され、他のブロック内への、フェンスの隣接する領域中のストリームを捨てることによって、フェンスの隣接する領域からの妨害を低減する。
【0061】
このように、直線部分の全部または一部は、それがあたかもゾーン監視システム内の1つのゾーンであるかのように考えることができる。例えば、侵入の試みの位置に関する情報を必要とせずに150mのフェンスを監視すべき場合、全長を単一のゾーンとして扱うことができる。領域に沿って水平にすべての点を平均化し、それをゾーン型検知アルゴリズムに供給することは、位置を特定しない監視装置で単一のゾーンとしてファイバの同じ区画を監視することと機能的に同一である。これは、容易に見られるフェンスの長さ、または取り付けられたファイバの長さを有するが、位置情報を必要とせずに単一の実体として取り扱われる門などの、用途に適した広さまたは狭さの部分に、システムの設置中に適用され得る。
【0062】
データストリームは、各ラインがウォーターフォールに入る際の各ラインの水平平均化、各位置での垂直平均化、およびストリームのより広いゾーンまたはブロックの垂直平均化を使用してアルゴリズムに供給する単一のストリームであるかのように使用され得る。既存のゾーン製品から使用することができるアルゴリズムは、調整プロセスを大幅に簡素化する極めて洗練されたアルゴリズムがゾーン製品用に開発されているという利点を有する。
【0063】
ゾーン製品は、本出願人による特許第7092586号、第7206469号.第7403675号、第7376293号および第7693359号に記載されており、これらは参照のために本明細書に引用され、それらの開示は参照により組み入れられる。
【0064】
上記のように、検知システムからの各ストリームは、経時的なそれぞれの部分における撹乱の規模を示す一連のデータ値を含み、システムは、ストリームの少なくとも1つのブロックを選択するように動作し、ストリームのそのブロックまたは各ブロックは少なくとも1つのストリームを含有する。
【0065】
各ブロックに適用されるアルゴリズムは、データを分析するために多くのシステムを使用することができる。
【0066】
いくつかの検知アルゴリズムとして、以下のものを挙げることができる。
【0067】
2009年12月15日に発行された本出願人の米国特許第7,634,387号(Murphy)に示されている構成は、経時的に変化する信号を監視して警報条件を決定するアルゴリズムであって、A/D変換器からのデジタル値のサンプルストリームが等しい長さの断片に分割され、フーリエ変換(FT)アルゴリズムを使用してストリームの各断片を周波数領域振幅、周波数および時間を含む三次元データセットに変換する、アルゴリズムを開示する。ある期間、時間の次元に対して最大値をとることによって周波数エンベロープが計算され、2次元の周波数領域振幅対周波数データセットを残し、定数デルタを加算的にもしくは乗算的に適用することによって、または「リーキーバケット」アルゴリズムを使用することによって周波数エンベロープの各要素について警報条件を決定するために、到着する新しいデータと比較される。
【0068】
周波数および時間という異なる特性を有する少なくとも2つの異なるイベントタイプを含む侵入イベントを検知する方法を提供するアルゴリズムを開示する、2021年7月6日に発行された本出願人の米国特許第11,055,984号(Murphy)に示されている構成は、潜在的な侵入イベントによって生成された、媒体内のセンサ応答性変化を提供する工程であって、当該センサは媒体内の変化を示す出力信号を生成する、工程と、信号を分析して振幅の変化を判定して、時間の関数として検知信号の振幅の変化を検知する工程と、(i)周波数領域において、センサからの信号の周波数分析を実行し、各イベントタイプの特性周波数に対応するように選択された別々の区画に周波数分析を分割すること、または(ii)時間領域ステップ関数の存在もしくは非存在を必要とするアルゴリズムの少なくとも1つを実行する工程とを含む。
【0069】
「Method Of Analyzing A Monitoring Signal From A Sensing System To Determine An Alarm Condition」と題された2022年1月25日に出願された本出願人の同時係属中の米国特許出願第17/583611号(Murphy)に示されている構成は、要素の区画を生成するために周波数ベースまたは時間ベースのアルゴリズムを使用して分析されるデジタル値のストリームとして監視信号が提供され、その感度を調整するために要素の区画の各要素にデルタを適用して閾値を提供し、ストリームの複数の要素を閾値と比較し、閾値を超えた場合に警報条件を惹起するアルゴリズムであって、アルゴリズムは、異なる期間に対して決定された環境の周囲条件に応答して、異なる期間において変更される、アルゴリズムを開示する。
【0070】
2022年8月18日に出願された「Intrusion Detection Algorithm with Wind Rejection Heuristic」と題された本出願人の同時係属中の米国特許出願第17/980359号(Murphy)に示されている構成は、エンベロープ係数のセットと比較される変換係数のセットを生成するために周波数ベースの変換を使用して分析されるデジタル値のストリームとして、監視信号が提供されるアルゴリズムを開示している。比較からより大きい値を採用することによって、および各サイクルにおけるエンベロープ係数を経時的にフロア値までより小さい値に減衰させることによって、各サイクルでの分析の感度をより低くするためにエンベロープ係数を増加させることによって、分析の感度は、ファイバ上の環境ノイズに対応するように自動的に調節される。
【0071】
上記で引用された出願および特許の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
したがって、アルゴリズムは、
ストリームの各ブロックに対して周波数および/または時間依存分析を実行してデータ値に依存する少なくとも1つの係数を作出する工程と、
少なくとも1つの当該係数を係数値と比較する工程と、
当該比較に応答して、侵入イベントの検知を示す出力を生成する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】侵入イベントを示す撹乱の監視装置として機能する光ファイバが取り付けられた境界フェンスの長さを示し、本発明による監視システムの基本的な構成要素を模式的に示す。
【
図2】
図1に図示されている本発明による方法の工程を示すフローチャートである。
【
図3】
図1の方法において使用するためのアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【
図4A】本発明に従ってファイバ上の環境ノイズに対応するために自動感度変化を実行するエンベロープ係数の修正とともに、変換係数とエンベロープ係数との比較を示す
図3のアルゴリズムからの一連の工程を示す。
【
図4B】本発明に従ってファイバ上の環境ノイズに対応するために自動感度変化を実行するエンベロープ係数の修正とともに、変換係数とエンベロープ係数との比較を示す
図3のアルゴリズムからの一連の工程を示す。
【
図4C】本発明に従ってファイバ上の環境ノイズに対応するために自動感度変化を実行するエンベロープ係数の修正とともに、変換係数とエンベロープ係数との比較を示す
図3のアルゴリズムからの一連の工程を示す。
【
図4D】本発明に従ってファイバ上の環境ノイズに対応するために自動感度変化を実行するエンベロープ係数の修正とともに、変換係数とエンベロープ係数との比較を示す
図3のアルゴリズムからの一連の工程を示す。
【
図4E】本発明に従ってファイバ上の環境ノイズに対応するために自動感度変化を実行するエンベロープ係数の修正とともに、変換係数とエンベロープ係数との比較を示す
図3のアルゴリズムからの一連の工程を示す。
【
図5】DASウォーターフォールとしてDASシステムからのデータを示す画像であり、上の部分はリアルタイムで距離の関数として信号レベルを表示し、下の部分は、経時的な瞬間的レベルのローリング表示を表す。
【
図6】リアルタイムで、1回の掃引に対して1つのゾーンとして全長にわたって検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。
【
図7】リアルタイムで、単一のブロックを示す1つのゾーンまたは領域の有限長にわたって検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。
【
図8】複数のゾーンにわたって同時に検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。
【
図9】単一の位置を示す1つのゾーンまたは領域の有限長にわたって検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本明細書の構成が境界フェンス侵入検知での使用を意図されている場合、
フェンス構造を切断する、
フェンス構造を持ち上げ、持ち上げられた部分の下を這って進む、
フェンスをよじ登る
という、検知される必要がある複数の侵入タイプが存在する。
【0075】
光ファイバの振動および動きを検知するセンサを用いてフェンスを監視する上での重要な課題は、風または雨などの荒天の存在下で侵入を検知することである。通例、システムは荒天の存在下での誤警報を抑止するが、これは、システムの知識を持った悪意のある操作者が侵入を計画するために気象現象を待つという脆弱性をもたらす。
【0076】
本発明は、
図1に示されている位置特定システムによって収集または報告されたデータの一部に適用するための、ゾーン製品用に開発された検知アルゴリズムの適用を概説する。
【0077】
保護された境界を覆うフェンス2の上に載せられた光ファイバ1によって提供される光学式感知システムが
図1に示されている。これは境界全体を覆うことができ、または特に注意を払うべき領域などの区画に分割され得る。
【0078】
光ファイバ1によって提供される光学式感知システムは、振動および動きに対して鋭敏である。このため、ファイバ1は、送信された信号が変化を受け、ヘッドエンドの受信機に反射されるように、振動および動きを、送信機3から監視ファイバを通過する光へコード化するように作用する。DASとして知られるこの構成では、受信機は、レーザパルスの送信後に時間の関数として測定される信号の強度に応答するように構成される。パルスが、ファイバの全長を移動して戻るための時間を有する場合、次のレーザパルスをファイバに沿って送ることができる。ファイバの同じ領域からの連続パルスのコヒーレントレイリーノイズ(CRN)の変化は、ファイバのその区画の光路長の変化によって引き起こされる。変化の規模は、ファイバに対して作用する撹乱の強度および種類に依存する。このタイプのシステムは、ファイバの歪みおよび温度変動の両方に対して極めて鋭敏であり、ファイバのすべての区画においてほぼ同時に測定を行うことができる。
【0079】
図に示されているように、信号は、送信機3からファイバ1に送信されて、光ファイバ1に監視光信号を導入する。反射された信号は受信機4によって受信されて、光ファイバに影響を及ぼすイベントによって変化を受けた、光ファイバからの光信号を受信する。
【0080】
当技術分野で公知であるように、DAS受信機は光信号を複数のストリームS1~SNに分割するように作用し、各ストリームは光ファイバの特定のそれぞれの部分P1~PNに関連付けられ、各ストリームがそれぞれの部分Pにおける撹乱を示すように、部分Pは光ファイバの長さに沿って分割される。各ストリームS1~SNは、経時的なそれぞれの部分における撹乱の規模を示す一連のデータ値を含む。この出力は「ウォーターフォール」として知られており、DASシステムからの確立された出力である。
【0081】
これらの部分またはストリームは、様々なデータセットを表す様々な様式で収集され得る。当業者に公知であり、DASなどの実際に使用されるシステムからのデータにおいて利用可能なこれらの収集方法は、
処理されていないストリーミング、
内部で処理されたストリーミング、
位置特定システム自体の中での内部的処理、
記録およびプロセッサへの転送
であり得る。
【0082】
さらに、用途に応じて、データは、距離を表すものとしてのストリーミングデータまたは経過した時間を表すものとしてのデータのいずれかにおいてデータのサブセットを表すことができる。
【0083】
捕捉された信号ストリームS1~S6はアルゴリズム10に適用され、アルゴリズム10は、ストリームの各ブロックに対して周波数および/または時間依存分析を実行するために侵入検知システム11にデータを提供してデータ値に依存する少なくとも1つの係数を作出し、侵入チェック11においてこのようにして生成された係数を閾値などの係数値と比較し、当該比較に応答して、侵入イベントの検知を示す出力12を生成する。
【0084】
アルゴリズムは、上述したように、Fence Detect、Smart Filter Detection(SFD)またはIntrusion Signature(IS)などの既知のシステムを使用することができる。
【0085】
したがって、アルゴリズムは、ウォーターフォールの垂直上方のデータに対して使用される。これにより、任意の所望の選択された幅の、監視されているファイバまたは物体上の特定の位置にズームインし、そのデータストリームがゾーンシステムの経時的な単独の読み取りであるかのようにそのデータストリームを取り扱うことができる。DASの性質は、信号上の多大なランダム性およびノイズを含む。ウォーターフォール上のデータのストリームのゾーンまたはブロックにおけるこの信号の平均化は、真の信号を保持しながらランダム性を低減することができる。
【0086】
システムの処理能力に応じて、この検知分析を実行するために時分割多重化を使用してブロックごとにスキャンすることが有利であり得るか、または必要であり得る。もちろん、これは、すべての部分内のブロックを同時に監視および検知するよりも望ましくないが、処理能力の制限により、これを採用することが必要であることがあり得る。
【0087】
出力において、ウォーターフォールの横軸は、信号対距離(signal verses distance)を表す。すなわち、左から右に、ある起点から、ある場所までまたはファイバに沿って延びる線状センサまでの距離を示す。これは、分割され得るか、または関心対象の「ゾーン」として機能するために使用されるサンプルであり得る。例えば、2kmの設備では、例えば1.2~1.3kmにわたる場所からの門の区画のみが可能である。分析のためにその部分のみを分離することが可能である。
【0088】
縦軸は、時間とともに変化し、その結果、ストリームS1~SNを形成する、これらの位置の各々における信号を示す。縦軸を分析することにより、インテロゲータのサンプリング速度と同じくらい小さいゾーンまたはスパン全体と同じくらい大きいゾーンの分析が可能になる。これらの幅は、門などの領域に対して定義され得、動的に変更され得る。
【0089】
ゾーンセンサシステムでは、センサの全長からの集約データが経時的に検知アルゴリズム中に流され、センサに沿った位置を考慮しない経過した時間にわたっての変化を表す。
【0090】
図2に示されているように、受信機4は、区画4A、4Bおよび4Cに分割されるか、または区画4A、4Bおよび4Cを含み、区画4Cは、ファイバから放出された信号を受信および分析して必要とされる成分を抽出し、適切なフィルタリングを提供し、必要とされる出力を生成するように機能する。4Aにおいて、データはストリームに分割され、各ストリームはファイバ上のそれぞれの位置に関連付けられる。4Bにおいて、各蒸気(steam)からのデータ出力は、デジタルデータまたは値のストリームに変換される。これらの機能のための構成は周知であり、市販されている。
【0091】
工程14において、ストリームのブロックに形成されるために、あるストリームが選択される。上記のように、典型的には、各々が複数のストリームを含有するストリームの複数のブロックが存在する。しかしながら、ブロックの数はより少なくまたはより多くすることができ、ストリームの数はより多くまたはより少なくすることができる。ブロックは、ファイバ上の位置に応じて異なる数のストリームを有することができる。選択工程14は、設置の形状に応じて設置時に実行することができ、または分析中に検知された変化によって動的に実行することができる。
【0092】
各ブロックに対する工程14において、ブロック内の複数のストリームのデータ値が合わせられて、アルゴリズムのための単一のデータのストリームを形成する。これは、典型的には、データを水平方向に平均化することによって行われるが、その他の合わせる方法が使用され得る。
【0093】
各ブロック内のストリームの数は、光ファイバの長さの所望の区画を選択するために選択され、各ブロック内のストリームの数は可変である。いくつかの事例では、光ファイバの全長またはその一部を監視するために少なくとも1つのブロックが選択される。
【0094】
その中のストリームの数、すなわち各ブロック内のストリームの数によって規定されるブロックの幅は、例えば環境の変化に応じて動的に変えられる。
【0095】
したがって、少なくとも1つのブロック内のストリームの数は、少なくとも1つの他のブロック内のストリームの数と異なり、設置時に選択することができ、または動作中に動的に変化させることができる。したがって、各ブロック内のストリームの数は、監視されるべき物体上の検知された変化および/または物体の異なる位置と異なり得る、物体における環境の変化に応じて変化する。
【0096】
各ブロックは、時間の経過とともに変化するにつれて、ファイバに沿ったこれらの位置の各々に信号のストリームを含有し、ストリームの分析は、インテロゲータのサンプリング速度ほど小さなまたは全スパンほど大きなゾーンの分析を可能にする。
【0097】
各ブロック内のストリームは、受信された信号からの生データを含むことができ、またはストリームは、フィルタリングまたは平均化などによって前処理される。
【0098】
工程16において、アルゴリズムは、他のブロックとは独立して、選択されたブロックにまたは各ブロックに適用され、アルゴリズムからのデータは、出力12を提供する工程11において侵入をチェックするために使用される。
【0099】
アルゴリズムの一例において
図3に示されているように、短時間フーリエ変換工程20において、工程15で
図2に示されている各ブロックからのデジタルサンプルの列は、フーリエ変換係数の列に変換される。入ってくる信号は、まず、固定されたサイズの時間区画の列に変換される。時間区画(sectionjs)は、固定された長さまたは一定の長さである。サンプルの各固定されたサイズのブロックは、フーリエ変換を適用されて、
図4A~4Dに示されているフーリエ変換係数を生成する。
【0100】
フーリエ変換係数を一連のエンベロープ係数に対して比較することによって、工程11において、侵入イベントが感知される。比較は
図4Bおよび
図4Cに示されており、図において、変換係数は「信号」の箇所に示されており、変換係数と比較されるエンベロープは「エンベロープ」の箇所に示されている。エンベロープは数または係数のブロックであり、ブロックはフーリエ変換と同じサイズであり、エンベロープおよびフーリエ変換における対応するまたは関連付けられた係数が比較される。
【0101】
工程11に示されているように、1つまたは複数のフーリエ変換係数が、プログラミングにおいて厳格な値として設定されるまたはユーザが設定可能であり得る所定の閾値だけその対応するエンベロープ係数を超えれば、侵入が感知される。調整可能であれば、システムの全体的な感度は、閾値を調整することによって制御され得る。
【0102】
図4Cに示されているように、侵入イベントが比較によって感知された場合、エンベロープ係数のさらなる操作は行われない。これは、エンベロープ値のさらなる変更を防ぐために、侵入イベントの指示が以下に記載されているエンベロープ係数管理システムに伝達される、
図3中のリンク12Aに示されているとおりである。
【0103】
任意の感知された侵入は、リンク12に沿ってユーザに報告され、このため、以下に記載されているエンベロープ管理システムを迂回する。
【0104】
侵入チェックシステム11は、さらなる侵入イベントを検知するための時間を与えるために、侵入イベントの検知後、短時間待機してもよく(図示せず)、その結果、システムが、後続の侵入感知イベントを単一の報告されるイベント中に吸収することを可能にする。
【0105】
ファイバ上の環境ノイズに対応するように分析の感度を自動的に変更するためのエンベロープ係数の管理が、工程17、18および19によって示されている。
【0106】
その結果、システムは、風などの環境ノイズ条件の増加に対応するためにシステム自体の感度を下げることができる。
【0107】
工程17においておよび
図4Bに示されているように、フーリエ変換係数(信号)がエンベロープよりも大きいが、その差が侵入イベント検知を引き起こす閾値より小さければ、エンベロープ係数はより敏感でなくなるように変更される。すなわち、エンベロープおよびフーリエ変換における各対応する係数について、エンベロープ係数は、
図4Dに示されているように、より大きい値を採るように変更され、ここで、より大きい値は、
図4Bで検知された実際の差に等しい。
【0108】
同じエンベロープ管理の一環として、システムは、風の弱まりなどの環境ノイズ条件の減少に対応するために、自らをより敏感にする。すなわち、
図4Eに示されているように、信号の選択されたブロックからのデータの次のブロックの分析によって規定される動作の各サイクルにおいて、エンベロープ係数のセット内の各係数は縮小するかまたは減衰し、その結果、各サイクル後に、時間が経過するにつれて段階的にゆっくりより敏感になる。言い換えれば、エンベロープ内の各係数は少しだけ低下する(減衰)。減衰値は、厳格なプログラムされた値であることができ、またはユーザが設定可能であり得る。もちろん、システムをより速くまたはより遅くより敏感にするために、減衰値の変化を使用することができることが理解されるであろう。上述のように、監視されているシステムに最も適合させるために、これは設置時に選択され得る。
【0109】
しかしながら、システムが敏感すぎて些細なイベントからの誤警報を回避することができなくなることを防止するために、現在のフロア値を下回る各エンベロープ係数については、その係数はフロア値と置き換えられる。このようにして、エンベロープ係数は、予め設定されたフロア値に達するまで、サイクルごとに徐々に繰り返し減衰され、その時点でフロア値は固定される。このようにして、些細なイベントは捨て去られることができ、侵入イベント検知を引き起こさない。このような些細なイベントとしては、小型のげっ歯類からの振動および移動、熱膨張、ならびに雨滴、小さな雹、雪、小さな飛散する破片などを含む小さな物体からの衝撃を挙げることができる。
【0110】
フロア値は、予め設定され得るか、またはユーザが設定可能であり得る。フロア値が大きいほど、システムは些細なイベントに対して感度がより低くなる。
【0111】
したがって、比較および工程17における感度低下動作後のならびに工程18における値の緩やかな減衰または減少および工程19におけるフロア値調節後のエンベロープ値の増加のバランスのとれた効果が、侵入チェック工程11に伝達される新しい値または係数を提供するように作用する。
【0112】
1つの重要な特徴によれば、システムは、エンベロープ係数をより大きい値に増加させるためのエンベロープ係数の変更が複数のサイクルの時間だけ遅延されるように構成される。これは、バッファとして機能し、いくつかのサイクルまたは一定の期間にわたって各値を保つ先入れ先出しバッファ(FIFO)において行われ得る。したがって、例えば、システムは、毎秒10サイクルの速度で動作させることができ、FIFOは、遅延が20サイクルにもなり得るように2または3秒の遅延として機能する。この目的は、ゆっくり開始される侵入がシステムの感度を低下させるのを防ぐことである。例えば、フェンスを登る準備をしている人は、警報を作動させないが、直後に行われる実際の侵入イベントが見逃され得るほど十分にシステムの感度を低下させるように、フェンスを優しく小刻みに揺らし得る。したがって、FIFOバッファは、感度低下に伴った侵入が確実に存在しないようにするために感度低下工程を遅延させるように作用する。侵入が検知された場合、FIFOバッファ内で待機しているか、またはFIFOバッファに格納されているすべての感度低下工程はキャンセルされ、エンベロープに適用されない。
【0113】
工程17に示されているように、エンベロープ係数をより大きな値に増加させるためのエンベロープ係数の変更は、上述のFIFOを使用することによって複数サイクルの時間だけ遅延される。
【0114】
したがって、本明細書の構成は、あたかも距離全体またはその一部がゾーンシステムの1つまたは複数のゾーンであるかのように、距離全体またはその一部を監視するように機能する。信号は、経時的に検知アルゴリズムに供給される。システムはまた、いわゆるウォーターフォールで信号のブロックを経時的に監視する。この信号は、幅全体または任意のサイズの1つもしくは複数のブロックとすることができる。
【0115】
上記のブロックの幅は、動的に変更することができ、例えば、雨の場合には広げることができる。
【0116】
各位置はゾーンとして扱われ、検知アルゴリズムはそれぞれに対して適用される。各位置が独立して監視されるので、これにより、ほぼゼロ調整のDASシステムが作出される。上記のゾーン原理およびアルゴリズムをDASシステムに適用することによって、高レベルの、迷惑な警報および誤警報の阻止も提供される。
【0117】
ここで、
図5~
図9の画像に示されるデータの例に目を向けると、
【0118】
図5は、DASウォーターフォールとしてDASシステムからのデータを示す画像であり、上の部分はリアルタイムで左から右に直線距離の関数として撹乱振幅を表示し、下の部分は、いわゆるウォーターフォールで経時的な瞬間的レベルのローリング表示を表す。この表示の上半分からの瞬間的トレースのピーク値は、下方の表示において最も高いラインとして「書かれる」。各ラインが書かれるにつれて、その下のすべてのトレースは1つの位置を減少させる。リアルタイムで示されると、下方のトレースは滝のように流れ、傾向が容易に見られる。例えば、
図5では、ウォーターフォールの最も右側の3分の1の大きな暗い領域の開始は、撹乱が開始したことを示す。表示は、静かな状態(明るい)からアクティブな状態(暗い)になった。
【0119】
図6は、リアルタイムで、1回の掃引に対して1つのゾーンとして全長にわたって検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。上記のように、上方のトレースは、感知ファイバに沿った信号の振幅のリアルタイムな瞬間的トレースを表示する。1つの方法は、示されている枠内のピーク値のすべてを平均し、それに単一の値を割り当てることである。次いで、これらは、連続して検知アルゴリズムに供給され得る。
【0120】
図7は、リアルタイムで、単一のブロックを示す1つのゾーンまたは領域の有限長にわたって検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。これは、感知ファイバの選択された部分またはゾーンにわたって
図6に示す方法を実行する場合に分析される信号の部分を例示する。
【0121】
図8は、複数のゾーンにわたって同時に検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。下方のトレースでは、枠は、分析のために独立して取り扱われ得る個々の部分またはゾーンを示す。示されている例では、左から右への移動が、まず活動が明白ではない狭いゾーンにおいて見られる。これは、特に監視されており、現在警報が発せられていない、門または金庫などの狭い区画を示すことができる。右に移動すると、封鎖されたより広い経路が存在する。これは、その中の撹乱の場所を特定する必要なしに監視されるフェンスの一部を示し得る。一例は、風の影響を受けやすいフェンスであり得るが、人員または他の監視の監視下にある。さらに右に移動すると、上述した他のブロックと同時に、但し、他のブロックからは独立に監視される別の封鎖された領域が存在する。この区画には、他のゾーンが影響を受けていない間に検知される何らかの撹乱が明らかに存在する。
【0122】
図9は、単一の位置を示す1つのゾーンまたは領域の有限長にわたって検知アルゴリズムを適用するために取得されたデータセットの例示である。この例示では、全体のうちの狭い部分が撹乱について監視されている。これは、特定の場所に存在し、特定の監視を必要とするドアまたはネットワーク金庫であり得る。この例示では、その狭い部分のみが評価されることが示されている。
【外国語明細書】