(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043494
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】流体ディスペンサー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 69/02 20060101AFI20240322BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20240322BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240322BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20240322BHJP
B05B 11/04 20060101ALI20240322BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20240322BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B29C69/02
F04B9/14 B
B29C45/17
B29C45/00
B05B11/04 A
B05B11/04 B
B05B11/04 M
B05B11/04 N
B05B1/02 102
B65D83/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138285
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】22196193
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】512245713
【氏名又は名称】アプタル ラドルフツエル ゲーエムベーハ
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ハインツル, フォルカー
【テーマコード(参考)】
3E014
3H075
4F033
4F206
4F213
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC03
3E014PD11
3E014PE16
3H075AA01
3H075BB01
3H075BB30
3H075CC11
3H075DA02
3H075DA11
3H075DB14
4F033AA00
4F033BA03
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4F206AH63
4F206AM33
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4F206JW41
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4F213AG08
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4F213AJ02
4F213WA05
4F213WA08
4F213WA38
4F213WA40
4F213WA43
4F213WA54
(57)【要約】 (修正有)
【課題】送出開口の領域の設計に関して低コストで大きなフレキシビリティを与える、流体ディスペンサーを製造するための方法、及び製造される流体ディスペンサーを提供する。
【解決手段】完成状態では、流体ディスペンサーは、流体貯蔵部及び送出開口を有し、送出開口を通って流体が送出方向で環境に放出される。流体ディスペンサーは、ハウジング構成要素(14)を有し、その内部に送出開口が作られ、ハウジング構成要素(14)が、送出開口を形成する及び/又は送出開口に隣接する送出構造(40)を、送出特徴に影響を及ぼすために有する。ハウジング構成要素(14)は、まず鋳型におけるプラスチック射出成形によってベース体(14’)が製造され、次いでベース体(14’)の仮の送出構造(40’)の領域において機械的な力が付与されて仮の送出構造(40’)が変形され、かくして最終的な送出構造(40)を作ることで製造される。
【選択図】
図5D-5G
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有する流体ディスペンサーを製造するための方法:
(a)流体ディスペンサー(10)が流体貯蔵部(12)及び送出開口(30)を有し、送出開口(30)を通って流体が送出方向(2A)で環境に放出されることができる、
(b)流体ディスペンサー(10)がハウジング構成要素(14)を有し、ハウジング構成要素(14)が、送出開口(30)によって貫かれ、かつハウジング構成要素(14)が、送出開口(30)を形成する及び/又は送出開口(30)に隣接する送出構造(40)を、送出特徴に影響を及ぼすために有する、
(c)送出開口(30)によって貫かれたハウジング構成要素(14)が、まず鋳型(200)におけるプラスチック射出成形によってベース体(14’)が製造され、次いでベース体(14’)の仮の送出構造(40’)の領域において機械的な力が付与されて仮の送出構造(40’)が変形され、かくして最終的な送出構造(40)を作ることで製造される。
【請求項2】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1に記載の方法:
(a)機械的な力が流体ディスペンサーの保護キャップ(60)によって付与され、保護キャップ(60)が内側上に拡大構造(62)を有し、拡大構造(62)が、外側から送出開口の方向に先細になり、かつベース体(14’)の送出構造(40’)がカップの態様で広げられるように拡大構造(62)がベース体(14’)の送出構造(40’)の仮形態に適応される。
【請求項3】
以下のさらなる特徴を有する、請求項1又は2に記載の方法:
(a)機械的な力がダイ(220)、好ましくは金属ダイ(220)によって付与される。
【請求項4】
以下のさらなる特徴を有する、請求項3に記載の方法:
(a)機械的な力が、加熱されたダイ(220)によって及び/又はハウジング構成要素(14)の加熱後に付与され、ダイ(220)又はハウジング構成要素(14)の温度が好ましくは少なくともハウジング構成要素(14)の材料のビカー軟化温度に相当する。
【請求項5】
以下の特徴を有する、特に液滴ディスペンサーの形の流体ディスペンサー(10):
(a)流体ディスペンサー(10)が流体貯蔵部(12)及び送出開口(30)を有し、送出開口(30)を通って流体が送出方向(2A)で環境に放出されることができる、
(b)流体ディスペンサー(10)がハウジング構成要素(14)を有し、ハウジング構成要素(14)が、送出開口(30)によって貫かれ、かつハウジング構成要素(14)が、送出開口(30)に隣接して放出路を包囲する送出構造(40)を、送出特徴に影響を及ぼすために有する、
(c)送出構造(40)がその外側上に円周方向の凹所(42)を有する。
【請求項6】
以下のさらなる特徴を有する、請求項5に記載の流体ディスペンサー(10):
(a)流体ディスペンサー(10)が液滴ディスペンサーとして形成される、
(b)送出構造(40)が液滴形成面(44)を形成し、その上に送出開口(30)を通って放出された流体が付着して液滴(100)を形成し、その後、液滴(100)が重力下で離れる、
好ましくは
(c)液滴形成面(44)が少なくとも1mmかつ/又は多くとも3mmの外径、好ましくは少なくとも1.5mmかつ/又は多くとも2.5mmの外径を有する。
【請求項7】
以下のさらなる特徴を有する、請求項5又は6に記載の流体ディスペンサー(10):
(a)液滴形成面(44)が引き離し縁(46)によって外側上を画定され、引き離し縁(46)が、0.05mmより大きい、特に0.1mmより大きい曲率半径で形成される。
【請求項8】
以下のさらなる特徴を有する、請求項5~7のいずれかに記載の流体ディスペンサー(10):
(a)送出構造(40)が、外側上に、送出方向(2A)に連続的に広がる外部広がり領域(50)を有する、
好ましくは
(b)外部広がり領域(50)の面と送出方向(2A)の間の角度(B)が20°より大きい、好ましくは30°より大きい、特に好ましくは40°より大きい。
【請求項9】
以下のさらなる特徴を有する、請求項5~8のいずれかに記載の流体ディスペンサー(10):
(a)送出構造(40)が、内側上に、送出方向(2A)に広がる内部広がり領域(52)を有する、
好ましくは
(b)外部広がり領域(50)の面と送出方向(2A)の間の角度(B)が内部広がり領域(52)の面と送出方向(2A)の間の角度(A)より小さい。
【請求項10】
以下のさらなる特徴を有する、請求項5~9のいずれかに記載の流体ディスペンサー(10):
(a)流体ディスペンサー(10)が、取りはずし可能で再装着可能な保護キャップ(60)を有し、保護キャップ(60)の装着時に保護キャップ(60)が送出開口(30)をカバーする、
(b)保護キャップ(60)が、内側に向かってとがっている拡大構造(62)を有し、拡大構造(62)が、保護キャップ(60)の装着時に送出構造(40)の内側に圧迫する、
好ましくは
(c)保護キャップ(60)がねじキャップとして形成される、かつ/又は
(d)送出構造(40)が、保護キャップ(60)の装着時に拡大構造(62)によって弾性緊張下で保持される。
【請求項11】
以下のさらなる特徴を有する、請求項5~10のいずれかに記載の流体ディスペンサー(10):
(a)送出開口(30)及び/又は送出構造(40)が、回転対称から逸脱する形状を有する。
【請求項12】
以下のさらなる特徴を有する、請求項5~11のいずれかに記載の流体ディスペンサー(10):
(a)流体ディスペンサー(10)が、ポンプディスペンサーとして構成され、かつポンプ室と入口弁と出口弁を有する手動で作動可能なポンプ装置(16)を有する、又は
(b)流体ディスペンサー(10)が、スクイズボトルディスペンサーとして構成され、かつ送出目的のために手動で圧縮されることができるスクイズボトルを流体ディスペンサーとして有する。
【請求項13】
以下のさらなる特徴の少なくとも一つを有する、請求項5~12のいずれかに記載の流体ディスペンサー(10):
(a)流体貯蔵部(12)が医薬流体を充填される、かつ/又は
(b)流体貯蔵部(12)が200ml未満、特に100ml未満の内部体積を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ディスペンサーを製造するための方法、及び特にこの方法によって製造されることができる流体ディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の方法によって製造されることができる、かかる流体ディスペンサーは、通常、医薬又は化粧流体を送出するために使用される。それは、送出前に流体を貯蔵するための流体貯蔵部、及び流体が送出方向で環境に放出されることができる送出開口を有する。
【0003】
送出開口の好適な設計、及び送出開口を包囲し、特にその下流に位置される送出構造は、ディスペンサーの性質、特に希望の付与形態に依存する。
【0004】
一般的に、流体ディスペンサーは、その少なくとも幾つか又はもっと多くの構成要素がプラスチック射出成形によって製造される。これは、プラスチックが通常ツーピースの鋳型によって形成されたキャビティ中に液体形態で導入され、そこでそれが冷却して硬化し、次いで鋳型が開放されて、得られたプラスチック構成要素を取り出すことができることを意味する。いわゆるスライドの使用のような特定の手段をとらない限り、このタイプの製造は、鋳型を開放すると、得られたプラスチック構成要素が型から取り出し可能な状態のままであるという条件(即ち、プラスチック構成要素がキャビティを形成する鋳型半分体の一つからのその分離を妨げるか又は防止するアンダーカットを持たないという条件)を満たすことが要求される。この条件は、流体ディスペンサーの構成要素(特に送出開口が作られるプラスチック構成要素)がそれらの設計に制限を有することを意味し、特に鋳型半分体の分離面から出発して先細りするだけでなく、複数の場所で広がる形状を持つ設計は、実施するのが困難であることを意味する。
【0005】
流体ディスペンサーの場合には、これは、送出開口の領域において前記送出構造の設計の可能性を制限する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、流体ディスペンサーを製造するための方法、及びこの方法を使用して製造されることができる流体ディスペンサーを提供することであり、送出開口の領域の設計に関して、この製造方法は、低コストで大きなフレキシビリティを与えるものである。
【0007】
この目的のために、流体貯蔵部、及び流体が送出方向で環境に放出されることができる送出開口を有する流体ディスペンサーを製造するための方法が提案される。
【0008】
具体的には、本発明は、送出開口によって貫かれ、かつ送出開口の送出特徴に影響を及ぼすために、送出開口を形成する及び/又は送出開口を密接に包囲する送出構造を有するハウジング構成要素の製造に関する。ハウジング構成要素は、外部ハウジング構成要素であることができ、外部ハウジング構成要素は、送出開口と同様に、流体ディスペンサーに結合するための雌ねじ又は係止縁のような結合手段を有する。しかしながら、ハウジング構成要素はまた、送出ヘッドの外部面を形成するために他のハウジング構成要素に接続される、より小さいハウジング構成要素であってもよい。
【0009】
ハウジング構成要素の送出構造は、放出路を包囲し、特に放出路の最も狭い断面の下流の設計によって送出特徴に影響を与える。特に、液滴形成の目的のため、送出構造は、液滴が重力下で単一の液滴の形で離れるまで出てくる流体が送出構造に付着するように設計されることができる。
【0010】
本発明によれば、送出開口によって貫かれるハウジングが、まず第一工程において、ベース体が鋳型におけるプラスチック射出成形によって製造されることで製造されることが提案される。ここでは、好ましくは、キャビティを形成する二つの鋳型半分体を有する鋳型が使用される(即ち、より複雑な設計を製造するためにスライド又は同種物を全く持たない)。しかしながら、スライドの使用はまた、本発明による方法で可能である。しかし、好ましくは、それは、送出構造の領域では行なわれない。
【0011】
特に、ハウジング構成要素のベース体(即ち、最初にプラスチック射出成形によって形成された後の中間状態のハウジング構成要素)は、ハウジング構成要素が二つの鋳型半分体の分離境界から出発して両方向に先細り、鋳型からの取り出しを妨げうるアンダーカットを形成する広がりを持たない設計を有する。
【0012】
プラスチック射出成形の完了後、第二工程では、まだ完成していない送出構造に機械的な力が付与され、その力は、ベース体の変形に導き、従って確定した設計を有する送出構造の形成に導く。
【0013】
本発明によれば、最初に送出開口を有するハウジング構成要素が従来のように射出成形法によって製造され、次いで送出構造のプラスチックの変形が行なわれ、それによって送出開口を通した送出特徴に影響を与える。
【0014】
得られたハウジング構成要素は、通常、さらなる構成要素と、特に流体貯蔵部を形成する構成要素及び送出ヘッドのさらなる構成要素(例えば弁又はポンプ構成要素)と組み合わされるが、それらは、本発明の文脈において本質的な重要性を有さない。特に、本発明に従って製造されたハウジング構成要素中に送出開口を与えられる送出ヘッドは、追加の外部ハウジングを含むことができ、それは、端面に開口を有し、その中に流体放出部として形成されたハウジング構成要素が挿入される。
【0015】
本発明による方法は、二つの主な利点を与える:
【0016】
第一に、端部の広がり、及びこれにより生じたアンダーカットを持つハウジング構成要素が、特に複雑な鋳型の必要なしで、例えば分離して動くことができるスライドなしで製造されることができる。
【0017】
第二に、個別の鋳型の必要性なしで様々な送出構造を作ることができる。代わりに、均一な鋳型が二つの異なる設計の送出構造のために使用され、射出成形によるベース体の製造後、同一構造のベース体から出発してこの時点まで元々同一の送出構造に異なる力を付与することによって、異なる送出特徴を有する送出構造が作られることができる。従って、特に、同一のベース体から出発して異なる送出構造を有するハウジング構成要素を製造することが提案される。
【0018】
機械的な力はダイによって付与されることが好ましく、ダイは、最初の製造後、送出構造を押圧する。特に、それは、金属ダイであることができ、金属ダイは、製造システムの一部であり、製造工程時に規定された力/走行パラメーターで送出構造に自動的に作用することができる。好ましくは、機械的な力は、ダイによって付与されることができ、ダイは、送出開口の主範囲方向でベース体に進められ、そこで内側から又は特に外側から送出構造に押圧し、特に流体の後の出口方向とは反対にベース体の上に押圧される。
【0019】
ダイ、又は本発明による力付与の目的のための別の要素は、特に拡大構造を有することができ、従って、その送出構造への接近時に、それは、継続した進行で送出構造と接触して送出構造を大きく広げることができる。ベース体の送出構造の形状は、変形が第二工程で起こる前に、内部円錐形態又は内部円柱形態を既に有することが好ましく、それは、次いで第二工程において、特に前記拡大ダイ又は他の力付与要素によって広げられる。
【0020】
好ましくは、送出構造の遠位端では、第二工程で起こる広がりは、正味の内径の断面積を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%広げる。
【0021】
力付与の目的は、送出構造の永続的な変化、即ちプラスチック材料の塑性変形である。これを達成するために、加熱された構成要素によって力が付与されることが好ましい。使用されるプラスチックに依存して、変形時の構成要素の温度は、少なくともビカット軟化温度であることが好ましい。ほとんどのプラスチック材料では、この温度は、60℃~160℃である。この方法は、原則として流体ディスペンサーのために従来使用される全てのプラスチックに適用可能である。
【0022】
加熱された構成要素での力付与は、特にベース構成要素が射出成型後にまだ温かいときにダイによって力が送出構造に付与されることにより達成されることができる。代替的に又は追加的に、力は、加熱されたダイで直接付与されることができる。特に、この目的のため、ダイは、加熱要素を装着されることができる。
【0023】
射出成形からの残留熱の使用、及び加熱されたダイの使用と同様に、射出成形後に別の加熱工程でベース構成要素を全体として加熱し、力を加熱された状態で付与することも当然可能である。
【0024】
力付与時の送出構造の加熱、特に力付与の目的のための加熱されたダイの使用はまた、射出成形から送出開口の領域に残るバリがそれによって減少又は除去されることができるという利点を与える。特に点眼ディスペンサーの製造では、これは、かなりの利点である。
【0025】
送出構造に対する力付与、及び関連する変形は、必ずしも前記ダイのような別のツールによって行なわれる必要はなく、流体ディスペンサー自体の要素を使用してもよい。特に、機械的な力付与、及び関連する変形は、流体ディスペンサーの保護キャップを使用して行なうことができる。このため、保護キャップは、その内側に、外側から送出開口の方向に先細る拡大構造を有し、それは、この送出構造がカップの態様で広げられるように最初の成形後にベース体の出口構造の仮の形状に適応される。
【0026】
かかる手順は、方法を簡略化する。なぜなら第二工程(送出構造の変形)は、キャップを装着する工程と関連するからである。好ましくは、保護キャップは、ハウジング構成要素とは別個の第二構成要素であり、それは、特に別個に製造されることが好ましい。送出構造を有するハウジング構成要素の最初の成形、そしておそらくこのハウジング構成要素と、例えば流体貯蔵部又は弁ポンプ構成要素のような他のハウジング構成要素との組み立ての後、保護キャップは次いで装着される。保護キャップの装着中、送出構造に力が付与され、特に送出構造は、半径方向に広げられる。特に、好ましくは送出構造は、このときに加熱され、保護キャップ及びその上に与えられる拡大構造によって送出構造の希望の塑性変形を達成する。送出構造に影響を与える要素として保護キャップを使用することによって、同一のディスペンサーが異なる保護キャップによって異なる送出構造を与えられることができる。
【0027】
前記製造方法と同様に、本発明はまた、特にこの方法を使用して製造されることができる流体ディスペンサーに関する。特に、好ましくは、これは、別々の個々の液滴を送出するための液滴ディスペンサーである。かかる液滴ディスペンサーは、送出構造を持ち、それは、送出開口の領域において放出された流体が留まる液滴形成面を有する。一つの液滴に相当する流体量が達成されたときにのみ、この液滴は、重力下で送出構造から離れる。
【0028】
本発明による流体ディスペンサーは、流体貯蔵部及び送出開口を有し、送出開口を通って流体が送出方向で環境に放出されることができる。この送出開口は、流体ディスペンサーに結合するように構成される送出ヘッドの上に与えられることが好ましい。流体ディスペンサーは、特にポンプディスペンサー又はスクイズボトルディスペンサーとして構成されることができる。ポンプディスペンサーとして構成されるとき、ディスペンサーは、ポンプ室を有するポンプ装置を持ち、ポンプ室は、入口側と出口側に弁を与えられ、ポンプ室は、制御装置によって、特に送出ヘッドのハウジングの側に与えられたつまみによって操作されてポンプ室から流体を送出し、流体貯蔵部から新しい流体を吸引することができる。スクイズボトルディスペンサーの場合には、ポンプ装置は与えられない。代わりに、圧力が付与され、流体ディスペンサーが全体として弾性的に圧縮され、それによって押された流体が送出開口を通る。ポンプディスペンサーでもスクイズボトルディスペンサーでも、送出弁は、送出開口のすぐ上流に接続され、それは、正圧下で開放し、従って放出を可能にすることが好ましい。
【0029】
流体ディスペンサーは、ハウジング構成要素、特に送出ヘッドの外部ハウジング又はそこに挿入された流体放出部を有し、流体放出部の中を送出開口が通り、流体放出部は、送出開口を形成する及び/又は送出開口に隣接する送出構造を持つ。送出構造は、特に上述の液滴形成面を形成し、送出開口の下流に与えられることができ、放出特徴に影響を与える役割を有する。前記液滴形成は、この一例である。しかし、この送出構造はまた、例えば流体ジェットを作るために異なる設計を有することもできる。
【0030】
本発明による流体ディスペンサーの特徴は、送出構造がその外側に円周方向の凹所を持つことである。下流の遠位端の送出構造の断面積と比較して、円周方向の凹所の領域における送出構造の断面積は、収縮する態様で減少する。液滴ディスペンサーの場合には、遠位端は、少なくとも1mmかつ/又は多くとも3mm、好ましくは少なくとも1.5mmかつ/又は多くとも2.5mmの外径を有して形成されることが好ましい。この下の円周方向の凹所の領域では、外径は、好ましくは少なくとも10%小さく、より好ましくは少なくとも20%小さい。
【0031】
特に液滴放出の目的のための遠位端の直径のサイズは、流体、その粘性及び密度、並びに送出構造の材料の特性を考慮して、希望の液滴体積に依存する。直径は、希望の体積の液滴がここで形成され、この体積に達すると、重力下で送出構造から確実に離れるように、及び好ましくはカップ形状がここで形成されるように選択されるべきである。本発明による方法は、射出成形後に同一の形態のベース構成要素から出発して、続く変形、特に送出構造の遠位端の広げによって、各々がそれぞれの流体に理想的に適応された設計を持つ異なる送出構造の製造を可能にする。
【0032】
送出構造の遠位端の下の円周方向の凹所から生じるカップ形状は、液滴形成時に送出構造の内側からの流体の逃避を防止するためのカップの上端における有利な幾何学的な状態に導く。送出構造の外側では、これは、送出方向に連続的に広がる外部広がり領域を有することが好ましく、それは、円周方向の凹所から送出構造の遠位端まで延びる。外部広がり領域の面(即ち、広がり領域の平面にある直線)と送出方向の間の角度は、好ましくは20°より大きく、特に好ましくは30°又は40°より大きい。
【0033】
好ましくは、送出構造によって形成された平坦な又は内部円錐の液滴形成面は、流体の逃避を妨げる引き離し縁によって送出構造の遠位端の外側上で画定される。特に、引き離し縁は、引き離し縁からの損傷を避けるため、0.05mmより大きい、特に0.1mmより大きい曲率半径で形成されることができる。
【0034】
好ましくは、送出構造は、凹所の領域にバリを持たない。送出構造の領域におけるバリは、目に適応される医薬の場合に危険をもたらすので避けられるべきである。もし鋭い縁のバリが目と接触すると、それは、損傷を起こしうる。
【0035】
凹所の領域にバリがないことは、特に上述の方法によって達成されることができる。従来の方法を使用して円周方向の凹所を有する送出構造の造形中、これは、鋳型の半分体の分離線が凹所の領域に与えられるか、又はスライドを有する鋳型が使用されるなら、達成されるにすぎないが、本発明による方法は、前述の二段階の方法(即ち、最初の射出成形工程において、ベース形態が凹所なしで製造され、次いでこれが凹所の上の送出構造の続く拡大によって形成される)によって円周方向の凹所が製造されることを可能にする。
【0036】
送出構造は、外側及び内側のそれぞれの広がり領域にカップ状の広がりを有することが好ましい。好ましくは、外部広がり領域の面と送出方向の間の角度は、内部広がり領域の面と送出方向の間の角度より小さい。送出構造のカップ状壁は、遠位端に向かって薄くなることが好ましい。
【0037】
既に上で記載したように、ベース形態から出発する送出構造の塑性変形が力付与要素として保護キャップを使用して行なわれるように本発明による製造方法を使用することが可能である。
【0038】
それゆえ、本発明による流体ディスペンサーは、取りはずし可能で再装着可能な保護キャップを有し、保護キャップの装着時に保護キャップが送出開口をカバーすることが好ましく、保護キャップは、その内側上に、保護キャップの装着時に送出構造の内側に圧迫する拡大構造を有することが好ましい。送出構造の設計は、拡大構造によって製造する間に決定され、拡大構造及び送出構造の内側は、保護キャップの装着時に特に一緒に接近する。これはまた、後の操作において、保護キャップが使用後に流体ディスペンサーに再装着されるときに送出構造からの流体残留物を極めて信頼性高く排出できる利点を構成する。
【0039】
もし送出開口が作られるハウジング構成要素、及び保護キャップ又は少なくともその拡大構造が異なるプラスチック材料からなるなら有利でありうる。特に、拡大構造は、より硬い材料及び/又はより高い軟化温度を持つ材料から作られることができる。
【0040】
保護キャップの最初の付与又はダイの使用で起こることが意図される送出構造の変形は、少なくとも部分的に可塑性であり、従って残留変形が起こる。しかしながら、保護キャップの装着時に送出構造が弾性緊張下にあるように変形が部分的に弾性であることは、好適な方法パラメーター、特に好適に選択される温度によって与えられ、達成されることができる。
【0041】
保護キャップは、単にプッシュオンキャップではなく、嵌合装着により脱落に抵抗するものであることが好ましい。これは、特に保護キャップ上の係止縁によって又は送出ヘッドの外部ハウジングに結合するためのねじを有する保護キャップの設計によって達成されることができる。
【0042】
流体ディスペンサーの送出開口及び送出構造は、通常、回転対称の設計を持つ。しかしながら、これは必須ではない。また、非回転対称形態、例えば多角形断面又は円周方向に明確な膨らみを有する断面を与えることも有利である。液滴ディスペンサーの場合には、これは、液滴の分離傾向に影響しうる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明のさらなる利点及び態様は、図面を参照して以下に説明される本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の記載及び請求項から明らかである。
【0044】
【
図1】
図1は、本発明による流体ディスペンサーを断面図で示す。
【0045】
【
図2】
図2は、流体ディスペンサーの送出開口の領域を拡大図で示す。
【0046】
【
図3】
図3は、流体ディスペンサーの使用をある方向で示す。
【
図4】
図4は、流体ディスペンサーの使用を別の方向で示す。
【0047】
【
図5A-5C】
図5A-5Cは、ディスペンサー10の液体放出部14を製造するための方法を示す。
【
図5D-5G】
図5D-5Gは、ディスペンサー10の液体放出部14を製造するための方法を示す。
【0048】
【
図6】
図6は、部分的に別の方法によって製造される流体ディスペンサーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、主要範囲軸2の方向に直線的に延びる流体ディスペンサー10(本例では例えば液滴ディスペンサー)を示す。流体ディスペンサー10は、送出ヘッド11を有し、それに流体貯蔵部12が係止接続によって結合される。送出ヘッド11内に、ポンプ装置16が与えられ、ポンプ装置16は、送出ヘッド11の外部ハウジング13の側上に与えられる作動ボタン17によって作動されることができ、ポンプ装置16は、作動されると、流体貯蔵部12から流体を吸引し、それを送出開口30の方向に運ぶ。
図2は、送出開口30の領域を拡大図で示す。
【0050】
送出開口30は、流出放出部14の一部である。これは、ディスペンサー10の内部構成要素18に取り付けられ、送出開口30への流体路を画定する。それは、以下で詳細に説明するように、スリーブ状部分を有し、その部分は、外部ハウジング13における開口内を貫き、その端で送出構造40が与えられる。
【0051】
流出放出部14の内側に弁体19が与えられ、弁体19は、コイルばね20によって送出開口30の方向に押圧され、閉鎖状態では送出開口30を閉鎖する。ポンプ装置16と送出開口30の間の領域の流体圧力が十分な圧力レベルに到達したときにのみ、出口弁は、コイルばね20のばね力に対して弁体19を変位させることによって開放し、流体を出すことができる。
【0052】
図2は、送出開口30の領域における送出構造40を明瞭に示す。送出構造40は、流出放出部14の領域の幾何学形状を意味し、その領域は、送出開口30を包囲するか又はそれに隣接し、放出の形態に影響する。
【0053】
本ケースでは、送出構造40は、液滴を放出するために設計される。送出構造は、主要範囲軸2に対して回転対称であり、実質的にカップ状の設計を有する。それは、主に送出方向2Aの方向に広がる内部広がり領域52、及び送出方向2Aの方に広がる外部広がり領域50によって画定される。
【0054】
外側上には円周方向の凹所42が与えられる。これは、収縮する態様のものであり、そこから流出放出部14が両方向に広がる。
【0055】
図3に示すように、内部広がり領域52は、液滴形成面44を形成する。送出開口30を通って放出された流体は、まず、生じた液滴が重力下にそれを送出構造40から分離する塊になるまで、この広がり領域52に付着される。広がり領域52及び送出構造40の端面は、一緒に液滴形成面44を形成する。
【0056】
円周方向の凹所42は、流出放出部14の遠位端の外側に図示の角度Bを与えることを可能にする。この角度Bは、主範囲軸2と内部広がり領域52の間の角度Aより小さいことが好ましい。この角度Bは、流体が広がり領域52中及び端面上に集まることを防止するだけでなく、遠位の外縁のまわりを通って外部広がり領域50中に動くことも防止するためには有利である。これは、液滴100の流体量が意図した流体量から逸脱しないことを保証する。
【0057】
図4は、液滴ディスペンサーが液滴放出時に斜めに保持される場合に角度Aが大きな役割を果たすことを示す。これに該当する場合、流体が内部液滴形成面44から外部広がり領域50に動く傾向が高まる。角度Aが大きくなると、このような斜め方向によって均一な液滴体積を達成することができなくなる危険が少なくなる。
【0058】
送出構造40の記載した設計は、プラスチック射出成形のみによって達成されることはできない。
【0059】
図5A~5Fは、流出放出部14の製造のためのありうる順序を示す。
【0060】
まず、ベース体14’が製造される。これは、プラスチック射出成形によって達成される。
図5Aに示すように、二つの鋳型半分体202A及び202Bを有する鋳造ツール200が使用される。
図5Bの閉鎖状態では、二つの鋳型半分体202A,202Bは、ベース体14’の雌型を有するキャビティ204を形成する。
図5Cに示すように、液体状プラスチックがこのキャビティ204中に注入される。
【0061】
プラスチックの硬化後、鋳造ツールが開放され、ベース体14’を取り除くことができる。
図5Aから明らかなように、二つの鋳型半分体202A,202Bは、鋳型からのベース体14’の取り出しを妨げうるアンダーカットが全くないように形成される。それゆえ、これは、変形なしで取り出すことができる。
【0062】
図5Dは、射出成型後のベース体14’を示す。分離境界206が送出構造40’の遠い側上にあり、それは、
図5Dの状態ではまだ仮であるので、これは、バリが全くない。
【0063】
図5Dの状態から出発して、流出放出部14の製造における第二工程が行なわれる。円錐形の先端を有するダイ220は、
図5Eに示されるように、主範囲軸2の方向で外側から進められる。
【0064】
図5Fに示されるように、ダイ220は、仮の送出構造40’を外側に押圧し、これを塑性変形する。特に、このとき、ベース体14’は、前の射出成形工程又は別の加熱によって加熱されてもよい。これにより、送出構造40が塑性変形する傾向を高めることができる。ベース体14’の先行する加熱に加えて又は代替的に、ダイ220自体を加熱することも考えられる。
【0065】
ここで選択される温度は、使用されるプラスチックに依存する。好ましくは、温度は、それぞれのプラスチックの軟化温度より上である。ポリプロピレンの場合には、この温度は、例えば150℃付近である。
【0066】
塑性変形が起こるとすぐに、ダイ220は、再び取り出されることができる。これは、今や完全な流出放出部14を残し、その送出構造40は、
図2に既に示された形状を有する。カップ状の広がりは、放出された液滴がそれらの流体体積において極めてわずかにしか異ならないので特に正確な投与を可能にする。
【0067】
図6は、代替設計を示す。ここでの明確な特徴は、流出放出部14が最初にベース体14’の形状になり、塑性変形が保護キャップ60によって起こされることである。
【0068】
この目的のため、保護キャップ60は、その内側に拡大構造62を有する。好ましくは、保護キャップは全体として、又は少なくとも拡大構造62は、流出放出部14の材料より硬い材料で作られるか、又は流出放出部14の材料より高い軟化温度を有する材料から作られる。
【0069】
保護キャップ60が最初に好ましくはねじによって螺合されてディスペンサーに装着されるとき、この拡大構造62は、
図5A-5Fの場合のダイ220のように送出構造40を外側に押圧して塑性変形を起こす。好ましくは、この造形は、熱の影響下で行なわれる。特に、流出放出部14は、保護キャップ60が装着されるときに少なくとも部分的に加熱されてもよい。