(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043505
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 53/08 20060101AFI20240322BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20240322BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20240322BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20240322BHJP
B21D 39/20 20060101ALI20240322BHJP
B21D 37/01 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B21D53/08 J
F28F1/32 C
F28F1/40 B
F28F21/08 A
B21D39/20 B
B21D37/01
B21D53/08 P
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146196
(22)【出願日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2022147524
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】的場 由朗
(72)【発明者】
【氏名】清水 基史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝幸
【テーマコード(参考)】
4E050
【Fターム(参考)】
4E050JA02
4E050JB09
4E050JD07
(57)【要約】
【課題】伝熱管の外径を拡大させる拡管工程のために使用される潤滑油の量を削減する。
【解決手段】熱交換器(10)の製造方法おいて、挿管工程と拡管工程とを行う。挿管工程では、フィンの貫通孔に伝熱管が挿し通される。拡管工程では、フィンに挿し通された伝熱管の外径を拡大させる。拡管工程では、伝熱管の外径を拡大させるために、拡管プラグ(60)が伝熱管に押し込まれる。拡管プラグ(60)は、超硬合金からなるプラグ本体(62)と、プラグ本体(62)の表面を覆うダイヤモンド膜(64)とを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のフィン(20)と、円管状の伝熱管(30)とを備えた熱交換器(10)の製造方法であって、
上記フィン(20)に形成された貫通孔(21)に上記伝熱管(30)を挿し通す挿管工程と、
上記伝熱管(30)に上記フィン(20)を固定するために、上記挿管工程において上記フィン(20)に挿し通された上記伝熱管(30)の外径を拡大させる拡管工程とを備え、
上記拡管工程では、上記伝熱管(30)の外径を拡大させるために、超硬合金からなるプラグ本体(62)と、該プラグ本体(62)の表面を覆うダイヤモンド膜(64)とを備えた拡管プラグ(60)が、上記伝熱管(30)に押し込まれる
熱交換器の製造方法。
【請求項2】
上記伝熱管(30)の材質は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、
上記伝熱管(30)は、内側面に複数の溝が形成された内面溝付管である
請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項3】
上記拡管工程において用いられる上記拡管プラグ(60)は、該拡管プラグ(60)の上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下である
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
上記拡管工程の実行前における上記伝熱管(30)の内径が、拡管前内径であり、
上記拡管プラグ(60)は、
基端(60b)及び先端(60a)を有すると共に、
上記基端(60b)と上記先端(60a)の中間に位置して外径が最も大きい第1部分(71)と、
上記先端(60a)から上記第1部分(71)にわたる部分であって上記先端(60a)から上記第1部分(71)に向かって外径が次第に拡大する拡径部(76)と、
上記拡径部(76)のうち外径が上記拡管前内径と等しい部分である第2部分(72)とを含み、
上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが、上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaよりも小さい
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下である
請求項4に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.013μm以下である
請求項4に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項7】
上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下であり、
上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.013μm以下である
請求項4に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項8】
上記拡管工程よりも前に行われる工程であって、上記伝熱管(30)の内面に潤滑油を塗布する塗布工程を備え、
上記塗布工程において一本の上記伝熱管(30)の内側面に塗布される上記潤滑油の量が、上記伝熱管(30)の長さ1mあたり0.5gよりも少ない
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項9】
上記伝熱管(30)の内側面に潤滑油が塗布されていない状態で上記拡管工程を行う
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項10】
上記拡管工程では、上記伝熱管(30)の外径を、該拡管工程の前における上記伝熱管(30)の外径の104%以上112%以下にまで拡大させる
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、拡管プラグが開示されている。拡管プラグは、熱交換器の製造過程において用いられる。具体的には、伝熱管の外径を拡大させて伝熱管にフィンを固定する拡管工程において、拡管プラグが伝熱管に押し込まれる。
【0003】
特許文献1には、伝熱管と拡管プラグの摩擦を低減するための潤滑油の使用量を削減するために、拡管プラグの表面にDLC(Diamond-Like Carbon)膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DLC膜には、比較的摩耗しやすいという特性がある。そのため、拡管プラグの交換頻度が高くなり、費用が嵩むという問題があった。また、拡管プラグの交換頻度を低く抑えると、DLC膜が殆ど無くなった状態で拡管プラグを使用し続けることとなるため、拡管工程の前に伝熱管に塗布する潤滑油の量を殆ど削減できないという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、伝熱管の外径を拡大させる拡管工程のために使用される潤滑油の量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、板状のフィン(20)と、円管状の伝熱管(30)とを備えた熱交換器(10)の製造方法であって、上記フィン(20)に形成された貫通孔(21)に上記伝熱管(30)を挿し通す挿管工程と、上記伝熱管(30)に上記フィン(20)を固定するために、上記挿管工程において上記フィン(20)に挿し通された上記伝熱管(30)の外径を拡大させる拡管工程とを備える。上記拡管工程では、上記伝熱管(30)の外径を拡大させるために、超硬合金からなるプラグ本体(62)と、該プラグ本体(62)の表面を覆うダイヤモンド膜(64)とを備えた拡管プラグ(60)が、上記伝熱管(30)に押し込まれる。
【0008】
第1の態様では、プラグ本体(62)とダイヤモンド膜(64)とを備えた拡管プラグ(60)が、拡管工程において用いられる。ダイヤモンド膜(64)は、DLC膜よりも固くて摩耗しにくいという特性を有する。そのため、拡管プラグ(60)の交換頻度を低く抑えることができる。更に、ダイヤモンド膜(64)を備えた拡管プラグ(60)を用いることによって、拡管工程中に伝熱管(30)と拡管プラグ(60)の接触部分を潤滑する潤滑油を不要とすることができる。また、拡管工程の前に伝熱管(30)の内面に潤滑油を塗布する場合は、塗布される潤滑油の量を削減できる。
【0009】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記伝熱管(30)の材質は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、上記伝熱管(30)は、内側面に複数の溝が形成された内面溝付管である。
【0010】
第2の態様では、熱交換器(10)を構成する伝熱管(30)が、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる内面溝付管である。拡管工程では、この伝熱管(30)に拡管プラグ(60)が押し込まれる。
【0011】
ここで、内面溝付管である伝熱管(30)に拡管プラグ(60)を押し込んだ場合は、伝熱管(30)の内側面の一部だけが拡管プラグ(60)と接触する。そのため、内側面に溝が形成されていない管に拡管プラグ(60)を押し込む場合に比べて、拡管プラグ(60)の外面に作用する面圧が高くなる。一方、第2の態様の製造方法において用いられる拡管プラグ(60)は、外面がダイヤモンド膜(64)によって構成される。そのため、伝熱管(30)が内面溝付管である場合であっても、拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量が低く抑えられる。
【0012】
本開示の第3の態様は、上記第1又は第2の態様において、上記拡管工程において用いられる上記拡管プラグ(60)は、該拡管プラグ(60)の上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下である。
【0013】
第3の態様の製造方法において、拡管工程では、ダイヤモンド膜(64)の表面粗さが比較的小さい拡管プラグ(60)が、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる伝熱管(30)に押し込まれる。ダイヤモンド膜(64)は、アルミニウムとの親和性が比較的低いという性質を有する。特に、この態様では、拡管プラグ(60)に形成されたダイヤモンド膜(64)の表面粗さが比較的小さい。そのため、拡管工程において拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量が低減される。
【0014】
本開示の第4の態様は、上記第1又は第2の態様において、上記拡管工程の実行前における上記伝熱管(30)の内径が、拡管前内径であり、上記拡管プラグ(60)は、基端(60b)及び先端(60a)を有すると共に、上記基端(60b)と上記先端(60a)の中間に位置して外径が最も大きい第1部分(71)と、上記先端(60a)から上記第1部分(71)にわたる部分であって上記先端(60a)から上記第1部分(71)に向かって外径が次第に拡大する拡径部(76)と、上記拡径部(76)のうち外径が上記拡管前内径と等しい部分である第2部分(72)とを含み、上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが、上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaよりも小さい。
【0015】
第4の態様では、拡管プラグ(60)が第1部分(71)と第2部分(72)とを含む。拡管プラグ(60)を先端(60a)側から伝熱管(30)に挿し込んでゆくと、最初に第2部分(72)が伝熱管(30)の内面に接する。その後、伝熱管(30)に拡管プラグ(60)を更に挿し込むと、拡管プラグ(60)のうち第2部分(72)と第1部分(71)の間の領域によって、伝熱管(30)が径方向の外側に押し拡げられる。
【0016】
拡管プラグ(60)を伝熱管(30)に差し込む過程では、拡管プラグ(60)の第2部分(72)が最初に伝熱管(30)の内面に接する。第4の態様の拡管プラグ(60)では、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaよりも小さい。そのため、拡管プラグ(60)を伝熱管(30)に差し込む過程で最初に伝熱管(30)の内面に接する第2部分(72)の表面粗さが相対的に小さくなり、拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量が低く抑えられる。
【0017】
本開示の第5の態様は、上記第4の態様において、上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下である。
【0018】
第5の態様では、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaの数値範囲が特定される。
【0019】
本開示の第6の態様は、上記第4の態様において、上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.013μm以下である。
【0020】
第6の態様では、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaの数値範囲が特定される。
【0021】
本開示の第7の態様は、上記第4の態様において、上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下であり、上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.013μm以下である。
【0022】
第7の態様では、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面と、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面のそれぞれについて、算術平均粗さRaの数値範囲が特定される。
【0023】
本開示の第8の態様は、上記第1~第7のいずれか一つの態様において、上記拡管工程よりも前に行われる工程であって、上記伝熱管(30)の内面に潤滑油を塗布する塗布工程を備え、上記塗布工程において一本の上記伝熱管(30)の内側面に塗布される上記潤滑油の量が、上記伝熱管(30)の長さ1mあたり0.5gよりも少ない。
【0024】
第8の態様では、塗布工程において、伝熱管(30)の内側面に所定量の潤滑油が塗布される。塗布工程は、拡管工程よりも前に行われる。塗布工程を行うタイミングは、拡管工程の直前とは限らない。
【0025】
本開示の第9の態様は、上記第1~第7のいずれか一つの態様において、上記伝熱管(30)の内側面に潤滑油が塗布されていない状態で上記拡管工程を行う。
【0026】
第9の態様では、拡管工程において、内側面に潤滑油が塗布されていない伝熱管(30)に、拡管プラグ(60)が押し込まれる。
【0027】
本開示の第10の態様は、上記第1~第9のいずれか一つの態様において、上記拡管工程では、上記伝熱管(30)の外径を、該拡管工程の前における上記伝熱管(30)の外径の104%以上112%以下にまで拡大させる。
【0028】
第6の態様では、拡管工程における伝熱管(30)の拡管率が4%以上12%以下に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】
図2は、伝熱管の中心軸を含む断面を示す熱交換器の断面図である。
【
図4】
図4は、熱交換器の製造方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、挿管工程におけるフィンと伝熱管の斜視図である。
【
図6】
図6は、拡管装置、および拡管装置に設けられた組立体の平面図である。
【
図7】
図7は、拡管工程中における伝熱管の断面と拡管プラグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本実施形態は、熱交換器(10)の製造方法である。この製造方法では、拡管プラグ(60)を備えた拡管装置(50)が用いられる。
【0031】
-熱交換器-
本実施形態の製造方法によって製造される熱交換器(10)は、いわゆるクロスフィン熱交換器である。この熱交換器(10)は、空気調和機等の冷媒回路に設けられ、冷媒を空気と熱交換させるために用いられる。
【0032】
図1に示すように、熱交換器(10)は、複数のフィン(20)と、複数の伝熱管(30)とを備える。なお、
図1に示すフィン(20)及び伝熱管(30)の数と形状は、単なる一例である。
【0033】
フィン(20)は、長方形の板状に形成される。フィン(20)の材質は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。複数のフィン(20)は、各フィン(20)の厚さ方向に一列に並んでいる。なお、フィン(20)には、伝熱促進用の切り起こし(例えば、ルーバーやスリット等)が形成されていてもよい。
【0034】
フィン(20)には、複数の貫通孔(21)が形成される。
図1に示すフィン(20)では、複数の貫通孔(21)が、フィン(20)の長辺に沿って一列に並んでいる(
図5を参照)。
【0035】
図2に示すように、フィン(20)には、貫通孔(21)と同数のカラー部(22)が形成される。カラー部(22)は、貫通孔(21)の周縁部に連続して形成された円筒状の部分である。
【0036】
伝熱管(30)は、ヘアピン状に形成された円管である。伝熱管(30)の材質は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。伝熱管(30)は、一対の直管部(31)と、一つの曲管部(32)とを備える。
図2に示すように、伝熱管(30)は、直管部(31)がフィン(20)の貫通孔(21)に挿し通される。なお、伝熱管(30)の形状は、ヘアピン状に限定されない。伝熱管(30)の形状は、例えば直管状であってもよい。
【0037】
図3に示すように、伝熱管(30)は、内側面に複数の溝が形成された内面溝付管である。具体的に、伝熱管(30)の内側面には、複数の溝部(33)と複数の山部(34)とが、伝熱管(30)の周方向に交互に形成される。溝部(33)と山部(34)のそれぞれは、伝熱管(30)の軸方向に向かって螺旋状に延びる。なお、溝部(33)と山部(34)のそれぞれは、伝熱管(30)の軸方向に向かって直線状に延びていてもよい。
【0038】
なお、
図1では図示を省略するが、熱交換器(10)には、隣り合う伝熱管(30)を接続するU字管などの部材が設けられる。
【0039】
-熱交換器の製造方法-
図4に示すように、熱交換器(10)の製造方法では、準備工程と、挿管工程と、拡管工程と、乾燥工程と、ロウ付け工程と、試験工程とが順に行われる。
【0040】
〈準備工程〉
準備工程では、フィン(20)と伝熱管(30)のそれぞれが所定の形状に形成される。
【0041】
フィン(20)は、板材にプレス加工を施すことによって、貫通孔(21)とカラー部(22)とを有する長方形板状に形成される。また、準備工程では、複数のフィン(20)が、それぞれの厚さ方向に一列に並べられる。
【0042】
伝熱管(30)は、真っ直ぐな管に曲げ加工を施すことによって、ヘアピン状に形成される。この曲げ加工では、伝熱管(30)の内側面に加工用の油が付着する。
【0043】
〈挿管工程〉
図5に示すように、挿管工程では、準備工程において一列に並べられた複数のフィン(20)の貫通孔(21)に、伝熱管(30)の直管部(31)が挿し通される。挿管工程では、フィン(20)と伝熱管(30)からなる組立体(15)が形成される。挿管工程が終了した時点の組立体(15)では、フィン(20)のカラー部(22)と伝熱管(30)の間に隙間があり、フィン(20)は伝熱管(30)に固定されていない。
【0044】
〈拡管工程〉
拡管工程は、フィン(20)を伝熱管(30)に固定するために、伝熱管(30)の外径を拡大させる工程である。準備工程が終了してから拡管工程が終了するまでの間において、伝熱管(30)の内側面に潤滑油を塗布する工程は行われない。従って、拡管工程は、伝熱管(30)と拡管プラグ(60)の摩擦を低減するための潤滑油が伝熱管(30)の内側面に実質的に塗布されていない状態で行われる。
【0045】
図6に示すように、拡管工程は、拡管装置(50)を用いて行われる。拡管装置(50)の構成は、後述する。
【0046】
拡管工程では、挿管工程において形成された組立体(15)が、拡管装置(50)に設置される。拡管装置(50)は、組立体(15)を構成する伝熱管(30)の直管部(31)に、拡管プラグ(60)を押し込む。拡管プラグ(60)は、最も太い部分の外径dhが、拡管前の伝熱管(30)の直管部(31)の内径diよりも大きい。
図7に示すように、伝熱管(30)の直管部(31)に拡管プラグ(60)を押し込むと、直管部(31)が拡管プラグ(60)によって押し広げられて塑性変形し、直管部(31)の外径が拡大する。
【0047】
本実施形態の拡管工程において、伝熱管(30)の外径の拡大率Rは、4%以上12%以下である。拡大率Rは、(Do-do)/doを百分率で表した値である。「do」は、拡管前の伝熱管(30)の直管部(31)の外径である。「Do」は、拡管後の伝熱管(30)の直管部(31)の外径である。従って、拡管後の直管部(31)の外径Doは、拡管前の直管部(31)の外径doの104%以上112%以下である。
【0048】
拡管工程において伝熱管(30)の直管部(31)の外径が拡大すると、直管部(31)の外側面が、フィン(20)のカラー部(22)の内側面と密着する(
図2を参照)。その結果、伝熱管(30)にフィン(20)が固定される。
【0049】
〈乾燥工程〉
乾燥工程は、伝熱管(30)の内側面に付着した加工用の油を除去するための工程である。乾燥工程では、拡管工程を経た組立体(15)が加熱されると共に、組立体(15)の伝熱管(30)に空気等のガスが流される。伝熱管(30)の内側面に付着した油は、加熱されて蒸発し、伝熱管(30)を流れるガスによって伝熱管(30)の外部へ排出される。
【0050】
〈ロウ付け工程〉
ロウ付け工程では、隣り合う伝熱管(30)を接続するU字管などの部材が、ロウ付けによって組立体(15)に取り付けられる。ロウ付け工程が終了すると、熱交換器(10)が完成する。
【0051】
〈試験工程〉
試験工程では、熱交換器(10)の気密試験が行われる。具体的に、試験工程では、伝熱管(30)に高圧のガスが供給され、伝熱管(30)からのガスの漏れの有無が検査される。
【0052】
-拡管装置-
図6に示すように、拡管装置(50)は、拡管プラグ(60)とロッド(51)とを複数ずつ備える。拡管装置(50)が備える拡管プラグ(60)の数は、組立体(15)に設けられた伝熱管(30)の数の二倍(言い換えると、組立体(15)に設けられた直管部(31)の数と同数)である。拡管装置(50)が備えるロッド(51)の数は、拡管プラグ(60)の数と同数である。また、拡管装置(50)は、連結ブロック(52)と、駆動部(53)と、保持ブロック(54)とを、一つずつ備える。
【0053】
拡管プラグ(60)は、先端に向かって次第に細くなる弾丸形状の部材である。拡管プラグ(60)の詳細は後述する。
【0054】
ロッド(51)は、鋼製の部材である。複数のロッド(51)のそれぞれは、一つの拡管プラグ(60)と対応する。各ロッド(51)の先端には、そのロッド(51)に対応する1つの拡管プラグ(60)が連結される。
【0055】
拡管プラグ(60)が連結された各ロッド(51)は、互いに所定の間隔をおいて平行に配置される。各ロッド(51)の間隔は、組立体(15)における直管部(31)の間隔と実質的に等しい。ロッド(51)は、拡管装置(50)に設置された組立体(15)の伝熱管(30)の直管部(31)と、実質的に同軸上に配置される。各ロッド(51)に取り付けられた拡管プラグ(60)は、対応する直管部(31)の開口端と向かい合う。
【0056】
連結ブロック(52)は、鋼製の細長い部材である。連結ブロック(52)は、その長手方向がロッド(51)の軸方向と直交するように配置される。連結ブロック(52)には、全てのロッド(51)の基端が連結される。
【0057】
駆動部(53)は、連結ブロック(52)を駆動するための部材である。駆動部(53)は、例えば、送りねじと電動機とによって構成される。駆動部(53)は、連結ブロック(52)をロッド(51)の軸方向に往復動させるように構成される。駆動部(53)が連結ブロック(52)を駆動すると、拡管プラグ(60)がロッド(51)の軸方向に移動する。
【0058】
保持ブロック(54)は、組立体(15)を保持するための鋼製の部材である。保持ブロック(54)は、組立体(15)を挟んで拡管プラグ(60)と向かい合うように配置される。保持ブロック(54)は、組立体(15)の伝熱管(30)の曲管部(32)を保持し、拡管中における組立体(15)の変位を規制する。
【0059】
-拡管プラグ-
図8及び
図9に示すように、拡管プラグ(60)は、金属部材(61)と、ダイヤモンド膜(64)とを備える。
【0060】
金属部材(61)は、頭部(62)と基部(63)とを備える。頭部(62)と基部(63)は、別体に形成される。頭部(62)と基部(63)は、例えばロウ付けやねじ締結によって、互いに接合される。
【0061】
頭部(62)は、プラグ本体である。頭部(62)の材質は、超硬合金である。超硬合金は、金属炭化物と鉄系金属で構成される合金である。超硬合金としては、WC-Co合金が例示される。
【0062】
頭部(62)は、先端に向かって次第に細くなる弾丸形状の部分である。なお、
図8及び
図9に示す頭部(62)の形状は、単なる一例である。頭部(62)の形状としては、球形状、楕円球形状、円錐形状、多角錐状などが例示される。
【0063】
基部(63)は、短い円柱状の部分である。基部(63)の材質は、例えばクロムモリブデン鋼である。基部(63)は、頭部(62)の基端に接合される。基部(63)は、頭部(62)と同軸上に配置される。基部(63)の外径は、頭部(62)の外径の最大値dhよりも小さい。
【0064】
ダイヤモンド膜(64)は、金属部材(61)の頭部(62)の外面を覆うように設けられる。ダイヤモンド膜(64)は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成された膜状のダイヤモンドである。ダイヤモンド膜(64)の厚さは、概ね8μmである。
【0065】
拡管プラグ(60)の先端(60a)は、
図8に示す拡管プラグ(60)の左端である。拡管プラグ(60)の基端(60b)は、
図8に示す拡管プラグ(60)の右端である。
【0066】
拡管プラグ(60)は、第1部分(71)を含む。第1部分(71)は、拡管プラグ(60)の中心軸と直交する円形の部分である。第1部分(71)は、拡管プラグ(60)の先端(60a)と基端(60b)の間に位置し、且つ拡管プラグ(60)の中で外径が最も大きい部分である。従って、第1部分(71)の外径は、頭部(62)の外径の最大値dhと一致する。
【0067】
拡管プラグ(60)のうち頭部(62)とダイヤモンド膜(64)とによって構成された部分は、拡径部(76)と縮径部(77)とに区分される。拡径部(76)は、第1部分(71)よりも先端(60a)側の部分である。拡径部(76)の外径は、拡管プラグ(60)の先端(60a)から第1部分(71)に向かって次第に拡大する。縮径部(77)は、第1部分(71)よりも基端(60b)側の部分である。縮径部(77)の外径は、拡管プラグ(60)の第1部分(71)から基端(60b)に向かって次第に縮小する。
【0068】
拡管プラグ(60)は、第2部分(72)を含む。第2部分(72)は、拡管プラグ(60)の中心軸と直交する円形の部分である。第2部分(72)は、拡径部(76)の一部分である。第2部分(72)は、拡管プラグ(60)の先端(60a)と第1部分(71)の間に位置し、且つ外径が伝熱管(30)の拡管前内径diと等しい部分である。
【0069】
図10に示すように、伝熱管(30)の拡管前内径diは、拡管工程において拡管される前の伝熱管(30)の内径の最小値である。より詳しく説明すると、伝熱管(30)の拡管前内径diは、伝熱管(30)管の中心軸に直交する断面における全ての山部(34)の頂部を通る仮想の円(
図10に二点鎖線で示す円)の直径である。
【0070】
拡管工程において、拡管プラグ(60)は、その先端(60a)側から伝熱管(30)に挿し込まれる(
図7を参照)。拡管プラグ(60)を伝熱管(30)に差し込む過程では、第2部分(72)が最初に伝熱管(30)の内面に接する。その後、拡管プラグ(60)を伝熱管(30)に更に挿し込むと、拡管プラグ(60)のうち第2部分(72)と第1部分(71)の間の領域によって、伝熱管(30)が径方向の外側に押し拡げられる。
【0071】
-拡管プラグの表面粗さ-
本実施形態の製造方法において用いられる拡管プラグ(60)では、ダイヤモンド膜(64)の表面に研磨加工が施されている。この拡管プラグ(60)において、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaは、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaよりも小さい。また、拡管プラグ(60)において、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaは0.023μm以下であり、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaは0.013μm以下である。
【0072】
【0073】
ダイヤモンド膜(64)の表面粗さの数値範囲について、表1を参照しながら説明する。表1は、供試体1~6のそれぞれについて行った拡管試験の結果を示す。供試体1~6は、ダイヤモンド膜(64)の表面粗さだけが互いに異なる拡管プラグ(60)である。
【0074】
拡管試験は、一本の直管状の伝熱管に拡管プラグ(60)を挿し通し、その伝熱管を拡管する試験である。拡管試験において用いた伝熱管は、アルミニウム合金製の内面溝付管である。この伝熱管は、外径が7mmであり、長さが150mmである。拡管試験における拡管率は、10%である。拡管試験は、伝熱管の内面に0.01gの潤滑油を塗布した状態で行った。
【0075】
拡管試験では、伝熱管に供試体である拡管プラグ(60)を挿し通し、拡管後に伝熱管から引き抜いた拡管プラグ(60)に、伝熱管を構成するアルミニウムが凝着しているか否かを、目視で確認した。表1に示すように、供試体1,2,3のそれぞれについては、拡管プラグ(60)の表面に対するアルミニウムの凝着は、視認されなかった。一方、供試体4,5,6のそれぞれについては、拡管プラグ(60)の表面に対するアルミニウムの凝着が、視認された。
【0076】
拡管工程において拡管プラグ(60)にアルミニウムが凝着する場合は、拡管工程において伝熱管(30)が損傷していることになる。そのため、拡管工程では、拡管試験においてアルミニウムの凝着が生じなかった拡管プラグ(60)を用いる必要がある。
【0077】
そこで、本実施形態の製造方法の拡管工程では、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下であり、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.013μm以下である拡管プラグ(60)を用いる。その結果、本実施形態の製造方法の拡管工程では、拡管プラグ(60)に対するアルミニウムの凝着が実質的に生じない。
【0078】
また、上述したように、拡管プラグ(60)を伝熱管(30)に差し込む過程では、第2部分(72)が最初に伝熱管(30)の内面に接する。そのため、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面には、ダイヤモンド膜(64)の表面のうちの他の部分に比べて、相対的に大きな荷重が作用する。従って、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面には、ダイヤモンド膜(64)の表面のうちの他の部分に比べて、伝熱管(30)を構成する材料(本実施形態では、アルミニウム)が凝着しやすい。
【0079】
そこで、本実施形態の製造方法の拡管工程では、“第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRa”が“第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRa”よりも小さい拡管プラグ(60)を用いる。その結果、本実施形態の製造方法の拡管工程では、拡管プラグ(60)に対するアルミニウムの凝着が実質的に生じない。
【0080】
拡管試験では、供試体1~6のそれぞれについて、拡管推力を計測した。拡管推力は、供試体である拡管プラグ(60)を伝熱管に挿し通すために拡管プラグ(60)に作用させる必要がある力である。供試体1及び供試体3の拡管推力は、供試体2の拡管推力よりも大幅に小さい。このことから、第2部分(72)の表面粗さが拡管推力に影響を及ぼしていることが、推測される。そのため、本実施形態の拡管工程において用いる拡管プラグ(60)は、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.010μm以下であるのが、更に望ましい。
【0081】
-実施形態の特徴(1)-
本実施形態の熱交換器(10)の製造方法では、拡管工程において、金属部材(61)とダイヤモンド膜(64)とを備えた拡管プラグ(60)が用いられる。ダイヤモンド膜(64)は、DLC膜よりも固くて摩耗しにくいという特性を有する。そのため、ダイヤモンド膜(64)を備えた拡管プラグ(60)を用いることによって、拡管プラグ(60)の交換頻度を低く抑えることができる。
【0082】
また、本実施形態の熱交換器(10)の製造方法では、ダイヤモンド膜(64)を備えた拡管プラグ(60)を用いているため、拡管工程中に伝熱管(30)と拡管プラグ(60)の接触部分を潤滑する潤滑油が不要となる。そのため、拡管工程の終了後に伝熱管(30)から潤滑油を除去する工程を省略することができ、熱交換器(10)の製造に用いられる設備を簡素化できると共に、熱交換器(10)の製造に要する時間を短縮できる。
【0083】
-実施形態の特徴(2)-
本実施形態の製造方法によって製造される熱交換器(10)において、伝熱管(30)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる内面溝付管である。一方、本実施形態の製造方法の拡管工程では、ダイヤモンド膜(64)を備えた拡管プラグ(60)が用いられる。ダイヤモンド膜(64)は、アルミニウムとの親和性が比較的低いという性質を有する。従って、本実施形態によれば、拡管工程において拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量を低減でき、拡管プラグ(60)の寿命を延ばすことができる。
【0084】
ここで、内面溝付管である伝熱管(30)に拡管プラグ(60)を押し込んだ場合は、伝熱管(30)の内側面の一部だけが拡管プラグ(60)と接触する。そのため、内側面に溝が形成されていない管に拡管プラグ(60)を押し込む場合に比べて、拡管プラグ(60)の外面に作用する面圧が高くなる。一方、本実施形態の製造方法において用いられる拡管プラグ(60)は、外面がダイヤモンド膜(64)によって構成される。そのため、伝熱管(30)が内面溝付管である場合であっても、拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量が低く抑えられる。
【0085】
-実施形態の特徴(3)-
本実施形態の熱交換器(10)の製造方法において、拡管工程で使用される拡管プラグ(60)は、そのダイヤモンド膜(64)の表面粗さRaが0.023μm以下である。つまり、本実施形態の拡管工程で使用される拡管プラグ(60)は、伝熱管(30)と接触するダイヤモンド膜(64)の表面粗さRaが比較的小さい。そのため、本実施形態によれば、拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量を、一層低く抑えることができる。
【0086】
-実施形態の特徴(4)-
本実施形態の熱交換器(10)の製造方法において、拡管工程で使用される拡管プラグ(60)は、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaよりも小さい。そのため、拡管プラグ(60)を伝熱管(30)に差し込む過程で最初に伝熱管(30)の内面に接する第2部分(72)の表面粗さが相対的に小さくなる。その結果、拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量を、低く抑えることができる。
【0087】
更に、本実施形態の拡管工程で使用される拡管プラグ(60)は、第1部分(71)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下であり、第2部分(72)におけるダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.013μm以下である。つまり、本実施形態の拡管工程で使用される拡管プラグ(60)は、伝熱管(30)と接触するダイヤモンド膜(64)の表面粗さRaが比較的小さい。そのため、本実施形態によれば、拡管プラグ(60)に凝着するアルミニウムの量を、一層低く抑えることができる。
【0088】
-実施形態の変形例-
本実施形態の熱交換器(10)の製造方法では、拡管工程の開始前に、塗布工程を行ってもよい。塗布工程は、伝熱管(30)の内側面に、拡管工程中に伝熱管(30)と拡管プラグ(60)の接触部分を潤滑する潤滑油を塗布する工程である。塗布工程では、全ての伝熱管(30)の内側面に、潤滑油が塗布される。
【0089】
この塗布工程において伝熱管(30)に塗布される潤滑油の量は、ダイヤモンド膜(64)を備えた拡管プラグ(60)を用いない従来の製造方法において伝熱管に塗布される潤滑油の量に比べて少ない。具体的に、本変形例の塗布工程において、一本の伝熱管(30)に塗布される潤滑油の量は、伝熱管(30)の長さ1mあたり0.5gよりも少ない。一本の伝熱管(30)に塗布される潤滑油の量は、伝熱管(30)の長さ1mあたり0.07g以下であるのが望ましい。この塗布工程では、一本の伝熱管(30)に塗布される潤滑油の量を、伝熱管(30)の長さ1mあたり0.01g以下にまで削減可能である。
【0090】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本開示は、熱交換器の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0092】
10 熱交換器
20 フィン
21 貫通孔
30 伝熱管
50 拡管装置
53 駆動部
60 拡管プラグ
62 頭部(プラグ本体)
64 ダイヤモンド膜
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のフィン(20)と、円管状の伝熱管(30)とを備えた熱交換器(10)の製造方法であって、
上記フィン(20)に形成された貫通孔(21)に上記伝熱管(30)を挿し通す挿管工程と、
上記伝熱管(30)に上記フィン(20)を固定するために、上記挿管工程において上記フィン(20)に挿し通された上記伝熱管(30)の外径を拡大させる拡管工程とを備え、
上記拡管工程では、上記伝熱管(30)の外径を拡大させるために、超硬合金からなるプラグ本体(62)と、該プラグ本体(62)の表面を覆うダイヤモンド膜(64)とを備えた拡管プラグ(60)が、上記伝熱管(30)に押し込まれ、
上記伝熱管(30)の材質は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、
上記伝熱管(30)は、内側面に複数の溝が形成された内面溝付管であり、
上記拡管工程において用いられる上記拡管プラグ(60)は、該拡管プラグ(60)の上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下である
熱交換器の製造方法。
【請求項2】
上記拡管工程の実行前における上記伝熱管(30)の内径が、拡管前内径であり、
上記拡管プラグ(60)は、
基端(60b)及び先端(60a)を有すると共に、
上記基端(60b)と上記先端(60a)の中間に位置して外径が最も大きい第1部分(71)と、
上記先端(60a)から上記第1部分(71)にわたる部分であって上記先端(60a)から上記第1部分(71)に向かって外径が次第に拡大する拡径部(76)と、
上記拡径部(76)のうち外径が上記拡管前内径と等しい部分である第2部分(72)とを含み、
上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが、上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaよりも小さい
請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項3】
上記第1部分(71)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.023μm以下であり、
上記第2部分(72)における上記ダイヤモンド膜(64)の表面の算術平均粗さRaが0.013μm以下である
請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
上記拡管工程よりも前に行われる工程であって、上記伝熱管(30)の内面に潤滑油を塗布する塗布工程を備え、
上記塗布工程において一本の上記伝熱管(30)の内側面に塗布される上記潤滑油の量が、上記伝熱管(30)の長さ1mあたり0.5gよりも少ない
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
上記伝熱管(30)の内側面に潤滑油が塗布されていない状態で上記拡管工程を行う
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
上記拡管工程では、上記伝熱管(30)の外径を、該拡管工程の前における上記伝熱管(30)の外径の104%以上112%以下にまで拡大させる
請求項1又は2に記載の熱交換器の製造方法。