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特開2024-43508電動自転車を作動させる方法、および、電動自転車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043508
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】電動自転車を作動させる方法、および、電動自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20240322BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240322BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20240322BHJP
   B60T 8/175 20060101ALI20240322BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20240322BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20240322BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B62M6/45
B60T7/12 B
B60T7/12 A
B60T8/1755 Z
B60T8/175
B62J45/415
B60L15/00 Z
B60L15/20 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146685
(22)【出願日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】10 2022 209 772.6
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】モイア,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】クルーク,ジラス
【テーマコード(参考)】
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246EA05
3D246GB01
3D246GB02
3D246GB04
3D246GB15
3D246GB22
3D246GB23
3D246HA72A
3D246HA84A
3D246HA97A
3D246HB08A
3D246JA12
5H125AA18
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA15
5H125CB00
5H125DD16
5H125EE58
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電動自転車の運転者に対し特に高レベルの乗り心地を可能にするシステムを提供する。
【解決手段】ブレーキシステム(10)と、制御可能に操作可能な駆動ユニット(20)とを有する電動自転車(100)を作動させる方法であって、ブレーキトルクを制御して発生させるため、前記ブレーキシステムが制御可能に操作可能なアクチュエータを有する前記方法において、前記ブレーキシステムによりブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動ユニットにより駆動トルクを制御して発生させるステップとを含み、前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、同時に互いに依存しあうように行い、予め決定されている全ブレーキトルクにより減速させるために、または、予め決定されている全駆動トルクにより加速させるために、互いに依存しあうように行う方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステム(10)と、制御可能に操作可能な駆動ユニット(20)とを有している電動自転車(100)を作動させる方法であって、ブレーキトルクを制御して発生させるため、前記ブレーキシステム(10)が制御可能に操作可能なアクチュエータ(5)を有している前記方法において、次のステップ、すなわち、
-前記ブレーキシステム(10)によりブレーキトルクを制御して発生させるステップと、
-前記駆動ユニット(20)により駆動トルクを制御して発生させるステップと、
を含み、
-前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、同時に且つ次のように互いに依存しあうように行い、すなわち前記電動自転車(100)を、予め決定されている全ブレーキトルクにより減速させるために、または、予め決定されている全駆動トルクにより加速させるために、互いに依存しあうように行う、
方法。
【請求項2】
第1の運転モードで、予め決定されている一定のブレーキトルクを前記ブレーキシステム(10)により発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め決定されている一定のブレーキトルクが、前記駆動ユニット(20)により最大で発生可能な最大駆動トルクの少なくとも10%、好ましくは最大で80%、有利には少なくとも30%、特に有利には最大で60%に相当している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め決定されている一定のブレーキトルクの発生を、前記電動自転車(100)のブレーキレバー(19)でのブレーキレバー力とは独立に行う、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
さらに、次のステップ、すなわち、
-車輪スリップを検出するステップ、
を含み、
前記駆動トルクを制御して発生させるステップを、検知した前記車輪スリップに依存して行い、特に、前記検知した車輪スリップが予め決定されている車輪スリップ限界値を越えれば、前記駆動トルクを減少させる、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)のピッチ角を検知するステップ、
を含み、
前記駆動トルクを制御して発生させるステップを、検知した前記ピッチ角に依存して行い、特に、前記検知したピッチ角が予め決定されているピッチ角限界値を越えれば、前記駆動トルクを減少させる、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の運転モードで、前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、前記電動自転車(100)を停止状態で保持するように行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)の傾斜を検出するステップ、
を含み、
前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、検知した前記傾斜に依存して行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、補助的に前記電動自転車(100)の総重量に依存して行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)が前記駆動トルクによって加速されるようにペダル操作に応答して、前記ブレーキシステム(10)により発生させたブレーキ圧を制御しながら減少させるステップ、
を含んでいる、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)のピッチ角を検知するステップ、
を含み、
-前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップおよび/または前記駆動トルクを制御して発生させるステップを、検知した前記ピッチ角に依存して行い、特に、前記検知したピッチ角が予め決定されているピッチ角限界値を越えれば、前記駆動トルクを減少させ、および/または、前記ブレーキトルクを増大させる、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
-ブレーキシステム(10)と、
-駆動ユニット(20)と、
-請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を実施するために設置された制御ユニット(30)と、
を含んでいる電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動自転車を作動させる方法および電動自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキシステム内のブレーキ圧を制御して発生させることができるアクチュエータを有する液圧式ブレーキシステムを備えた電動自転車は公知である。たとえば、このようなアクチュエータはアンチロックブレーキシステムの一部であってよい。その際、システム内のブレーキ液圧の圧力変調によって車両の車輪のロックを阻止する必要性が頻繁にある。
【発明の概要】
【0003】
請求項1の構成要件を備えた本発明による方法は、電動自転車の格別に柔軟性があって効率的な運転操作を提供できることを特徴としている。その際、特に、電動自転車の運転者に対しとりわけ高度な乗り心地を可能にすることができる。これは、本発明によれば、電動自転車を作動させる方法において、電動自転車がブレーキシステムと、制御可能に操作可能な駆動ユニットとを有していることによって達成される。特に、駆動ユニットは、運転者によるペダル操作に応答したモータトルクを提供することで、運転者の踏み力をモータでアシストするために設置されている。ブレーキシステムは、ブレーキトルクを制御して発生させることができるように、制御可能に操作できるアクチュエータを有している。好ましくは、ブレーキシステムは液圧式ブレーキシステムとして形成されている。本方法は、次のステップ、すなわち、
-ブレーキシステムによりブレーキトルクを制御して発生させるステップと、
-駆動ユニットにより駆動トルクを制御して発生させるステップと、
を含んでいる。その際、ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、駆動トルクを制御して発生させるステップとを同時に実施し、且つ次のように互いに依存しあうように行い、すなわち電動自転車を、予め決定されている全ブレーキトルクにより減速させるように、または、電動自転車を予め決定されている全駆動トルクにより加速させるように、互いに依存しあうように行う。その際、好ましくは、この方法の間にそれぞれゼロよりも大きいブレーキトルクと駆動トルクを同時に発生させる。
【0004】
換言すれば、本方法では、ブレーキトルクと駆動トルクとの互いに依存しあう協調コントロールが行われる。これにより、電動自転車の走行運転時に特に高い柔軟性を提供できる。たとえば、これにより、電動自転車の走行運転時に特に広いトルク範囲を、管理されたコントロールによってカバーできる。すなわち、たとえばブレーキシステムと駆動ユニットとの対応的な協調制御によって電動自転車の加速または減速を柔軟に達成でき、特にたとえばブレーキレバーの操作による運転者のアクティブな介入は必要ない。したがって、多数の自動走行機能を簡単に効率的に提供でき、これによって電動自転車の運転者に対し特に高レベルの乗り心地を可能にすることができる。
【0005】
従属項は、本発明の有利な更なる構成を内容としている。
【0006】
有利には、第1の運転モードで、予め決定されている一定のブレーキトルクを発生させるようにブレーキシステムのアクチュエータを操作する。すなわち、特に、アクチュエータを用いてブレーキシステム内に一定のブレーキ圧を発生させる。これにより、駆動ユニットの動作範囲を全体的により低いトルクのほうへシフトさせることが達成できる。すなわち、駆動ユニットを用いて提供可能な駆動トルクの適合だけで、電動自転車の加速も減速も可能にするトルク範囲をカバーできる。たとえば、この場合、駆動ユニットの駆動トルクを、ブレーキシステムによって発生させた一定のブレーキトルクよりも低い値へ減少させることによって、電動自転車の減速を達成できる。したがって、特に簡単で効率的なコントロールによって、電動自転車の走行運転時における特に高い柔軟性を提供できる。特に、駆動ユニットの制御だけで切り換えることができる有利な複数の走行機能を簡単に提供できる。たとえば、これにより、トラクションコントロール、および/または、電動自転車の前輪のリフティングの阻止または作用減少を特に簡単に提供できる。
【0007】
特に有利には、予め決定されている一定のブレーキトルクは、駆動ユニットにより最大で発生可能な最大駆動トルクの少なくとも10%、好ましくは最大で80%、有利には少なくとも30%、特に有利には最大で60%に相当している。よって、駆動ユニットの唯一の制御によって、多様な走行機能のために電動自転車の十分な減速をも可能にするようなトルク範囲をカバーできることが保証され得る。
【0008】
好ましくは、予め決定されている一定のブレーキトルクの発生を、電動自転車のブレーキレバーでのブレーキレバー力とは独立に行う。特に、ブレーキシステム内にブレーキ圧を手動で発生させるのを可能にするためにブレーキレバーが設けられている。すなわち、ブレーキレバーの操作がなくても、一定のブレーキトルクを第1の運転モードで発生させる。したがって、電動自転車の加速も減速も可能にする完全自動化機能を提供することができる。
【0009】
さらに有利には、本方法はさらに、好ましくは電動自転車の駆動車輪または駆動可能な車輪の、特に後輪の車輪スリップを検出するステップを含んでいる。その際、駆動ユニットを用いて提供される駆動トルクを制御して発生させることは、検知した車輪スリップに依存して実施される。有利には、検知した車輪スリップが予め決定されている車輪スリップ限界値を越えれば、駆動ユニットの駆動トルクを減少させる。換言すれば、駆動ユニットを対応的に制御して操作することによりトラクションコントロールを実施でき、特に車輪スリップを減少させるように実施できる。その際、特にブレーキシステムによって発生させた一定のブレーキ圧との組み合わせで、ホイールスピンしている車輪の合目的的な減速をアクティブに自動的に達成でき、これによって特に効果的なトラクションコントロールを種々の走行状況において提供することができる。
【0010】
特に有利には、本方法は、さらに、電動自転車のピッチ角を検知するステップを含んでいる。ピッチ角とは、特に、たとえばペダルベアリング軸に対し平行であってよい横軸線のまわりでの電動自転車の偏位と見なされる。その際、駆動トルクを制御して発生させることを、検知したピッチ角に依存して行う。有利には、検知したピッチ角が予め決定されているピッチ角限界値を越えれば、駆動ユニットの駆動トルクを減少させる。これによって、たとえば電動自転車の前輪のリフティングを阻止でき、或いは、その影響を弱めることができる。すなわち、たとえばウィリー阻止を提供できる。択一的に、ピッチ角の検知に比べて有利には、たとえばピッチ角の変化を検出してもよく、この場合ピッチ角の変化が予め決定されている限界値を越えれば、好ましくは駆動トルクを減少させる。
【0011】
好ましくは、第2の運転モードで、ブレーキトルクを制御して発生させることと、駆動トルクを制御して発生させることとを、電動自転車を停止状態で保持するように行う。すなわち、電動自転車が好ましくはブレーキトルクと駆動トルクだけで停止状態に保持されるように、ブレーキトルクと駆動トルクとを協調させる。したがって、特にたとえば上り坂または傾斜地でも、電動自転車を停止状態に保持するために、電動自転車の運転者による人力のブレーキ操作またはペダル操作は必要ない。したがって、電動自転車の運転の際に運転者に対し特に高レベルの乗り心地を提供することができる。
【0012】
有利には、本方法は、さらに、特に水平線に相対する電動自転車の傾斜を検出するステップを含んでいる。その際、ブレーキトルクを制御して発生させることと、駆動トルクを制御して発生させることとを、検知した傾斜に依存して行う。これにより、上り坂または傾斜地での電動自転車の自動保持を特に簡単に効果的に可能にすることができる。
【0013】
好ましくは、ブレーキトルクを制御して発生させることと、駆動トルクを制御して発生させることとを、補助的に電動自転車の総重量に依存して行う。特に、総重量とは、少なくとも電動自転車の自重、付加的に運転者の体重および電動自転車の積荷と見なされる。好ましくは、総重量と検知した傾斜に基づいて、電動自転車を対応する傾斜地で停止状態に保持するために必要な駆動トルクおよび/またはブレーキトルクを検出する。たとえば、総重量は電動自転車の運転者によって手動で入力することができる。これにより、ブレーキシステムおよび駆動ユニットの自動作動によって電動自転車を上り坂または傾斜地で停止することが特に簡単に効率的に可能になり得る。
【0014】
特に有利には、本方法は、さらに、ペダル操作に応答して、ブレーキシステムにより発生させたブレーキ圧を制御しながら減少させるステップを含んでいる。その際、ブレーキ圧は、駆動ユニットによって発生させた駆動トルクによって電動自転車が加速されるように減少させる。すなわち、駆動トルクとブレーキトルクとの協調コントロールにより、この場合特にブレーキ圧を減少させることによりブレーキトルクを適合させ、もし運転者が電動自転車のペダルを操作すれば、たとえば上り坂において電動自転車の停止状態からの自動的な発進が開始される。
【0015】
さらに有利には、本方法は、さらに、電動自転車のピッチ角を検知するステップを含んでいる。ピッチ角とは、特に、たとえばペダルベアリング軸に対し平行であってよい横軸線のまわりでの電動自転車の偏位と見なされる。その際、ブレーキトルクを制御して発生させることおよび/または駆動トルクを制御して発生させることを、検知したピッチ角に依存して行う。その際、有利には、検知したピッチ角が予め決定されているピッチ角限界値を越えれば、駆動トルクを減少させ、および/または、ブレーキトルクを増大させる。択一的に、有利には、たとえばピッチ角の変化を検出してよく、この場合好ましくは、ピッチ角の変化が予め決定されている限界値を越えれば、駆動トルクを減少させ、および/または、ブレーキトルクを増大させる。これによって、たとえば簡単に効果的に電動自転車の前輪のリフティングを阻止でき、または、その作用を弱めることができる。すなわち、たとえば電動自転車の発進時のウィリー阻止を提供できる。
【0016】
本発明はさらに電動自転車にも及び、すなわちブレーキシステム、好ましくは液圧式ブレーキシステムであって、特に制御可能に操作可能なアクチュエータを含んでいる前記ブレーキシステムと、特に制御可能に操作できるように形成されている駆動ユニットと、上述の方法を実施するために設置された制御ユニットとを含んでいる電動自転車にも及んでいる。
【0017】
次に、図との関連で実施例を用いて本発明を説明する。図では、機能的に同じ構成部材にはそれぞれ同じ参照符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の有利な実施例による方法が実施される電動自転車の簡略概要図である。
図2】本発明の前記有利な実施例による方法を実施する際に使用するトルクグラフの簡略概要図である。
図3】上り坂で本発明の前記有利な実施例による方法を実施している間の図1の電動自転車の簡略概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の有利な実施例による方法が実施される電動自転車100の簡略概要図である。電動自転車100は、モータ力を用いて運転者の踏み力をアシストするために設置されている駆動ユニット20を含んでいる。駆動ユニット20は、電気エネルギー貯留器106から電気エネルギーの供給を受ける。
【0020】
電動自転車100は液圧式ブレーキシステム10を含み、液圧式ブレーキシステムにより、それぞれ電動自転車100の前輪107または後輪108に設けたブレーキ101,102を操作することができる。液圧式ブレーキシステム10はアンチロックブレーキユニット1を含み、アンチロックブレーキユニットは同様に電気エネルギー貯留器106から電気エネルギーの供給を受ける。
【0021】
アンチロックブレーキユニット1はアクチュエータ5を含み、該アクチュエータを用いて、ブレーキシステム10内のブレーキ液圧を制御可能に変化させることができる。特に、アクチュエータ5を用いると、ブレーキシステム10のブレーキレバー19の操作に関係なく、ブレーキシステム10内のブレーキ圧を変化させることができ、すなわち、特に、ブレーキレバー19の操作を行わずにブレーキ圧を発生させることができ、したがってブレーキトルクを発生させることができる。また、ブレーキレバー19を手動で操作している間も、ブレーキシステム10内のブレーキ圧を、したがってブレーキトルクを減少させることができるので有利である。
【0022】
電動自転車100は、さらに、本発明による方法を実施するために設置されている制御ユニット30を含んでいる。制御ユニット30を用いると、アクチュエータ5の制御される操作および駆動ユニット20の制御される操作を実施することができる。
【0023】
本方法は少なくとも2つの運転モードを含んでおり、これらの運転モードは、たとえば同時に、または択一的に、互いに独立に実施することができる。
【0024】
第1の運転モードでは、ブレーキシステム10を用いて、好ましくは電動自転車10の走行中に、予め決定されている一定のブレーキトルクを発生させる。同時に、駆動ユニット20を用いて、電動自転車100の運転者によって人力で発生させた踏み力に依存して駆動トルクを発生させる。
【0025】
第1の運転モードを図2に図示し、以下に詳細に説明する。図2は、本発明の有利な実施例による方法を実施する際に使用するトルクグラフ50,50’の簡略概要図である。両トルクグラフ50,50’には、それぞれ電動自転車100の速度52に依存したトルク51が図示されている。その際、線55はゼロのトルクを表している。
【0026】
その際、図2で左側の第1のトルクグラフ50は、本方法を実施しない通常作動の簡略概要図である。その際、2つの線57aは、駆動ユニット20を用いて発生させることができる駆動トルクの最大値と最小値を示している。したがって、両線57aの間に、駆動ユニット20の制御される操作によって電動自転車100の駆動部に提供され得るトルク範囲57がある。このトルク範囲57は、ゼロ線55から正のトルク51の方向へのみ延びている。
【0027】
本方法の第1の運転モードを実施すると、すなわちブレーキシステム10を用いて一定のブレーキトルク53を提供すると、図2で右側に図示した第2のトルクグラフ50’を提供することができる。その際、図2で認められるように、駆動ユニット20の作動範囲(第1のトルクグラフ50においてトルク範囲57を参照)に実質的に対応しているトルク範囲57’は、一定のブレーキトルク53だけ相対的に下方へシフトしている。すなわちこの事例では、駆動ユニット20の制御される操作の変化により、負の全トルク51も電動自転車100に提供することができる。
【0028】
これにより、特にトラクションコントロールのような電動自転車100の有利な走行機能を、改善された方法で提供することができる。これを、図2で他のトルク範囲56を用いて説明する。このトルク範囲56は、電動自転車100の後輪108でトラクションコントロールを実施するための最適な範囲を表している。図2で認められるように、たとえば後輪108での非常に強いトラクションロスの際に後輪をアクティブに減速するため、トルク範囲56は負のトルク51をも含んでいる。
【0029】
一定のブレーキトルク53をもたらすことにより、駆動ユニット20の制御される操作の変化だけで提供することができる電動自転車100の全トルクは次のようにシフトされ、すなわち第2のトルク範囲57’と、トラクションコントロールのために最適なトルク範囲56とが、実質的に一致して形成されているようにシフトされる。すなわちトラクションコントロールを、駆動ユニット20の制御の変化だけで、最適な方法で且つ特に広範な使用範囲のために最適に転換することができる。
【0030】
次に、本方法の第2の運転モードを、次に図3を参照して説明する。第2の運転モードを用いると、上り坂70での電動自転車100の停車と、上り坂70での電動自転車100の発進とを提供することができる。この場合、本方法では、水平線71に対する電動自転車の相対傾斜を検知する。検知した傾斜に基づいて、且つ補助的に電動自転車100の総重量に基づいて、電動自転車100を上り坂70で停止状態で保持するにはどの程度の保持力76が必要かを、制御ユニット30を用いて検出する。その際保持力76は、電動自転車100の傾斜と総重量とに基づいている斜面下向き力75に等しいように検出される。
【0031】
保持力76は、有利には、駆動ユニット20の駆動トルクだけで、または択一的に、ブレーキシステム10の補助的なブレーキトルクによって提供することができる。
【0032】
その際、有利には、第2の運転モードは、電動自転車100のブレーキシステム10のブレーキレバー19を人力で操作している間だけ実施する。すなわち、運転者がブレーキレバー19を引いている間、ブレーキシステム10と駆動ユニット20とを対応的に協調制御することにより保持力76を発生させることで、電動自転車100を傾斜70で停止状態に保持する。
【0033】
加えて、第2の運転モードでは、電動自転車101の運転者によるペダル操作に応答して、電動自転車100が駆動ユニット20の駆動トルクによって加速されるように、ブレーキシステム10によって発生させたブレーキトルクを減少させることによって、電動自転車100の発進を開始し得る。特に、この場合、保持力76の方向に斜面下向き力75よりも大きな推進力を発生させることで、電動自転車100を加速させる。
【0034】
加えて、有利には、両運転モードにおいて、電動自転車100のピッチ角の検知を行ってよい。ピッチ角100を監視することにより、ブレーキトルクと駆動トルクとの協調制御を次のように適合させることができ、すなわちピッチ角が大きな望ましくない走行状態、いわゆる「ウィリー」を回避できるように、または、その作用を低減できるように、適合させることができる。このため、特に、予め決定されているピッチ角限界値を越えるピッチ角の検知に応答して、或いは、これとは択一的にまたはこれに加えて、予め決定されている最小ピッチ角変化の検知に応答して、特に後輪108のブレーキトルクを上昇させてよく、および/または、駆動ユニット20の駆動トルクを減少させてよい。
【符号の説明】
【0035】
5 アクチュエータ
10 ブレーキシステム
19 ブレーキレバー
20 駆動ユニット
30 制御ユニット
100 電動自転車
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
第1の運転モードでは、ブレーキシステム10を用いて、好ましくは電動自転車100の走行中に、予め決定されている一定のブレーキトルクを発生させる。同時に、駆動ユニット20を用いて、電動自転車100の運転者によって人力で発生させた踏み力に依存して駆動トルクを発生させる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
加えて、第2の運転モードでは、電動自転車100の運転者によるペダル操作に応答して、電動自転車100が駆動ユニット20の駆動トルクによって加速されるように、ブレーキシステム10によって発生させたブレーキトルクを減少させることによって、電動自転車100の発進を開始し得る。特に、この場合、保持力76の方向に斜面下向き力75よりも大きな推進力を発生させることで、電動自転車100を加速させる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
加えて、有利には、両運転モードにおいて、電動自転車100のピッチ角の検知を行ってよい。ピッチ角を監視することにより、ブレーキトルクと駆動トルクとの協調制御を次のように適合させることができ、すなわちピッチ角が大きな望ましくない走行状態、いわゆる「ウィリー」を回避できるように、または、その作用を低減できるように、適合させることができる。このため、特に、予め決定されているピッチ角限界値を越えるピッチ角の検知に応答して、或いは、これとは択一的にまたはこれに加えて、予め決定されている最小ピッチ角変化の検知に応答して、特に後輪108のブレーキトルクを上昇させてよく、および/または、駆動ユニット20の駆動トルクを減少させてよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステム(10)と、制御可能に操作可能な駆動ユニット(20)とを有している電動自転車(100)を作動させる方法であって、ブレーキトルクを制御して発生させるため、前記ブレーキシステム(10)が制御可能に操作可能なアクチュエータ(5)を有している前記方法において、次のステップ、すなわち、
-前記ブレーキシステム(10)によりブレーキトルクを制御して発生させるステップと、
-前記駆動ユニット(20)により駆動トルクを制御して発生させるステップと、
を含み、
-前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、同時に且つ次のように互いに依存しあうように行い、すなわち前記電動自転車(100)を、予め決定されている全ブレーキトルクにより減速させるために、または、予め決定されている全駆動トルクにより加速させるために、互いに依存しあうように行う、
方法。
【請求項2】
第1の運転モードで、予め決定されている一定のブレーキトルクを前記ブレーキシステム(10)により発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め決定されている一定のブレーキトルクが、前記駆動ユニット(20)により最大で発生可能な最大駆動トルクの少なくとも10%、好ましくは最大で80%、有利には少なくとも30%、特に有利には最大で60%に相当している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め決定されている一定のブレーキトルクの発生を、前記電動自転車(100)のブレーキレバー(19)でのブレーキレバー力とは独立に行う、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
さらに、次のステップ、すなわち、
-車輪スリップを検出するステップ、
を含み、
前記駆動トルクを制御して発生させるステップを、検知した前記車輪スリップに依存して行い、特に、前記検知した車輪スリップが予め決定されている車輪スリップ限界値を越えれば、前記駆動トルクを減少させる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)のピッチ角を検知するステップ、
を含み、
前記駆動トルクを制御して発生させるステップを、検知した前記ピッチ角に依存して行い、特に、前記検知したピッチ角が予め決定されているピッチ角限界値を越えれば、前記駆動トルクを減少させる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
第2の運転モードで、前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、前記電動自転車(100)を停止状態で保持するように行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)の傾斜を検出するステップ、
を含み、
前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、検知した前記傾斜に依存して行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップと、前記駆動トルクを制御して発生させるステップとを、補助的に前記電動自転車(100)の総重量に依存して行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)が前記駆動トルクによって加速されるようにペダル操作に応答して、前記ブレーキシステム(10)により発生させたブレーキ圧を制御しながら減少させるステップ、
を含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
さらに、次のステップ、すなわち、
-前記電動自転車(100)のピッチ角を検知するステップ、
を含み、
-前記ブレーキトルクを制御して発生させるステップおよび/または前記駆動トルクを制御して発生させるステップを、検知した前記ピッチ角に依存して行い、特に、前記検知したピッチ角が予め決定されているピッチ角限界値を越えれば、前記駆動トルクを減少させ、および/または、前記ブレーキトルクを増大させる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
-ブレーキシステム(10)と、
-駆動ユニット(20)と、
-請求項1~のいずれか一項に記載の方法を実施するために設置された制御ユニット(30)と、
を含んでいる電動自転車。
【外国語明細書】