(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043512
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】杭管を把持し掘削孔に挿入するハンドリング装置および方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148285
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】22196152
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】502407107
【氏名又は名称】バウアー マシーネン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウーリ ヴィーデンマン
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050EE04
(57)【要約】
【課題】基礎杭を形成するために、杭管を把持し、地盤の掘削孔に効率的に挿入するハンドリング装置を提供する。
【解決手段】ハンドリング装置50は、ベースフレーム52と、杭管10を把持し保持する把持装置56と、ベースフレーム52を巻上装置、具体的には懸吊ロープに取外し可能に連結する保持要素55とを備える。本発明によれば、硬化性媒体を供給するための少なくとも1つの入口装置62を、ベースフレーム52の上方領域に配置し、杭管10への硬化性媒体のための少なくとも1つの出口装置66を、下方領域に配置することが行われる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎杭を形成するために、杭管を把持し、地盤の掘削孔に挿入するハンドリング装置であって、
- ベースフレームと、
- 前記杭管を把持し保持する把持装置と、
- 前記ベースフレームを巻上装置に取外し可能に連結する保持要素、特に懸吊ロープと
を備えるハンドリング装置であって、
- 前記ベースフレームには、上方領域に硬化性媒体を供給するための少なくとも1つの入口装置が配置され、下方領域に前記杭管への前記硬化性媒体のための少なくとも1つの出口装置が配置されている、
ことを特徴とするハンドリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
前記把持装置が、形状接続および/または力接続方式で前記杭管を保持する複数の把持要素を備えることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
前記把持装置が、前記杭管を前記杭管の内面で形状接続式および/または非形状接続式に保持するように構成されていることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
前記把持装置が、少なくとも1つの調節シリンダを備え、前記調節シリンダを用いて、少なくとも1つの把持要素が、前記杭管を保持する保持位置と前記少なくとも1つの把持要素が前記杭管から取り外される取外し位置との間で調節可能であることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項5】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
前記入口装置が、供給ラインを接続する接続装置を備えることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項6】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
前記出口装置が、前記杭管の供給開口へ接続するための少なくとも1つの出口を備えることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項7】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
前記ハンドリング装置を前記杭管に取り付けるための取付要素が、前記掘削孔内に配置されていることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項8】
請求項7に記載のハンドリング装置であって、
少なくとも1つの調節装置が配置され、前記調節装置を用いて、前記取付要素が前記杭管と共に、前記掘削孔の周壁または支持管に対して変位可能かつ調節可能であることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項9】
請求項8に記載のハンドリング装置であって、
前記調節装置が、少なくとも1つの調節シリンダ、特に液圧シリンダを備えることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項10】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
前記保持要素が、アイレットまたはフックを備えることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項11】
請求項1に記載のハンドリング装置であって、
2つの搬送ラインが、前記入口装置と前記出口装置との間に延在し、前記2つの搬送ラインが、2重の供給ラインを形成するために並行に接続され得、または洗浄作業のために直列に接続され得るように、バルブ装置を用いて切り替え可能であることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項12】
杭管を把持し、地盤の掘削孔に挿入する方法であって、
請求項1に記載のハンドリング装置を使用することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記ハンドリング装置によって前記杭管を保持している間に、前記ハンドリング装置を介して前記杭管に硬化性媒体を供給することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、
前記ハンドリング装置を、取付要素によって前記杭管に配置し、前記把持装置と、前記把持装置によって保持された前記杭管とを伴う前記ベースフレームを、少なくとも1つの調節装置を用いて、支持管または前記掘削孔に対して変位させ調節することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、
前記杭管上の前記ハンドリング装置を、前記掘削孔に挿入後、前記巻上装置および/または供給ラインから取外し、積載荷重として前記杭管に残すことができることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースフレームと、杭管を把持し保持する把持装置と、ベースフレームを巻上装置、具体的には懸吊ロープに取外し可能に連結する保持要素とを備える、基礎杭を形成するために杭管を把持し、地盤の孔に挿入するハンドリング装置に関する。
【0002】
本発明は、さらに、杭管を把持し、地盤の孔に挿入する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
EP2930275A1は、水中構造用の基礎杭の設置方法および装置を開示する。この方法では、支持管を有する掘削孔を、最初に地盤に掘る。このように掘られた掘削孔を液体、具体的には水で充填する。このようにして形成された鞘状の掘削孔に杭管を挿入し、その杭管には、管状の基体を有する単純な鋼管が使用される。次いで、外側の支持管を引き抜き、掘削孔の底に着床している挿入済み杭管とそれを取り巻いている掘削孔の壁との間の環状空間を硬化性媒体によって充填する。周囲の水は、杭管内に残ることがある。このようにして設置された基礎杭の支承能力は、周囲の環状空間内に硬化媒体を伴う周囲の土壌に対する挿入された杭管の外殻面によって決定される。水のみによって充填されている内部空間は、必要なら、たとえば、測定または試験装置を挿入するために使用することができる。
【0004】
WO2021/180515A1は、杭管を取り扱い掘削孔に挿入する装置を記載する。その装置は、クレーンの懸吊ケーブルに取り付けるように構成されている。把持要素を用いて、杭管の環状縁部を押圧係止方式で把持することができる。全体として、その装置は、杭管を水平な貯蔵状態から垂直な挿入状態に枢動することができるように構成されている。
【0005】
US2010/0296875A1は、水中穿孔リグを使用して水中基礎を設置する装置および方法を開示する。水中穿孔リグを水底に配置することができる。管状要素を用いて基礎掘削孔を掘る。管状要素は、同時に、穿孔装置を水中に固定するように働くことができる。
【0006】
既知のプロセスでは、設置された掘削孔に杭管を挿入した後、杭管の外周面とそれを取り囲む掘削孔の壁との間の外側管状空間を充填する。このために、1つ以上の供給ホースを環状空間に導入し、次いで、そのホースを介して、モルタルまたはセメントスラリなどの硬化性媒体を環状空間に導入することが知られている。硬化性媒体は、可能なら、環状空間が下から充填され、その結果、管状空間内に存在する液体、具体的には水が硬化性媒体によって下方から上方へ置き換えられるように、導入されるべきである。
【0007】
環状空間へのホースの導入は、通常、掘削孔の外側から手作業で行われる。10メートル以上の掘削孔深さでは、供給ホースが掘削孔の中程で引っ掛かることがあり、その結果、掘削孔の底に届かないという問題がある。これは、通常、掘削孔の外側からは検出できない。硬化性スラリが、そのような不正確に挿入された供給ホースによって供給された場合、流体が、供給ホースの下方の環状空間内に残り、上に被さる硬化性スラリによって閉じ込められることがある。そのような場合、スラリが硬化した後、杭管が、全長に亘って周囲の土壌に連結されることはなくなるであろう。これは、付随して形成される基礎要素の荷重支承能力を低減させ、その結果、信頼性のある基礎は、もはや確保されない。
【0008】
基礎要素の再形成が必要になり得、それには極めて時間が掛かり、費用が掛かり得る。その場合、基礎要素を再構築することが必要にさえなり得る。
【0009】
硬化性スラリ用の供給ラインを杭管の内部にも設けることがさらに知られている。少なくとも1つの供給ラインを介して、その場合、硬化性媒体を杭管の内部、杭管の下方領域まで供給し、関係する通路を介して杭管の外側の環状空間に導入することができる。この方法では、対応する硬化性スラリの供給は、杭管が挿入された後、杭管における環状空間への通路、または杭管の上側連結部の準備しなければならない。対応する連結部の設置は、時間が掛かり、労力を要し、失敗の危険性も伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2930275号明細書
【特許文献2】国際公開第2021/180515号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0296875号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、杭管を地盤の孔に効率的に挿入して基礎要素を形成することができるハンドリング装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1の特徴を有するハンドリング装置、および請求項12の特徴を有する方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態が、従属請求項に明示される。
【0013】
本発明によるハンドリング装置は、硬化性媒体を供給するための少なくとも1つの入口装置がベースフレームの上方領域に配置され、杭管への硬化性媒体のための少なくとも1つの出口装置が下方領域に配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の基本的思想は、ハンドリング装置を、杭管を把持し掘削孔に挿入するためのみでなく、硬化性媒体を掘削孔に導入するためにも使用することである。具体的には、ハンドリング装置は、杭管を掘削孔に挿入した後、杭管から取り外さずに、杭管上の設定された初期位置に残すことができ、その位置は、杭管の外で杭管を把持した時点のハンドリング装置によって定まる。このようにして設定された杭管とハンドリング装置との相対位置は、ハンドリング装置を介して硬化性媒体を確実に供給することを可能にする。
【0015】
このために、ハンドリング装置は、ベースフレームの上方領域に、硬化性媒体を供給するための少なくとも1つの入口装置と、下方領域に、杭管への硬化性媒体のための少なくとも1つの出口装置とを備える。出口装置は、杭管の対応する供給装置に接続することができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、把持装置が、杭管を形状接続および/または非形状接続で保持する複数の把持要素を備えることである。形状接続は、接続される2つの部材がかみ合う、またははめ合うようにして接続される、例えば凹凸を嵌め合わせて接続される接続態様である。この実施形態の場合、把持装置は、ハンドリング装置を杭管に取外し可能に連結するように働く。それに関して、連結は、任意の適切な方式、具体的には、杭管を非形状接続式にクランプすることのみによって、または非形状接続式にクランプすることと併せて成立させることができる。このために、たとえば、締付けまたはクランプ装置、具体的にはコレットを用いることができる。
【0017】
本発明のさらに別の発展によれば、把持装置が、杭管をその内面で形状接続式および/または非形状接続式に保持するように構成されていることが好ましい。したがって、把持装置は、杭管を、杭管の内面のみで、具体的には内面を力接続方式でクランプして、把持し保持することができる。力接続は、接続される2つの部材の間に作用する摩擦力によって接続される接続態様である。好ましくは、この場合、ハンドリング装置は、杭管の外周内に配置され、杭管の外形を越えて突出しないように、構成することができる。このように、ハンドリング装置は、完全にまたは部分的に杭管内に配置することができる。それによって、杭管は、ほんの僅か大きい直径を有する掘削孔に挿入することができる。杭管と掘削孔の僅かの直径差によって、杭管の外周と周囲の掘削孔壁との間の環状空間が小さくなる。このようにして、硬化性媒体、具体的にはモルタルまたはセメントスラリの消費量を、好ましくは、最小限に保つことができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、杭管の特に確実な保持を、把持装置が少なくとも1つの調節シリンダを備え、その調節シリンダを用いて、少なくとも1つの把持要素を、杭管を保持する保持位置と少なくとも1つの把持要素が杭管から取り外される取外し位置との間で調節することができることによって達成することができる。
【0019】
調節シリンダは、具体的には液圧シリンダまたは気体圧シリンダとして構成することができる。調節シリンダの作動は、その調節シリンダは好ましくはハンドリング装置および杭管の長手方向に配置されているが、具体的にはレバー機構を介して1つ以上の把持または保持要素に伝達することができる。
【0020】
硬化性媒体を供給するために、入口装置が、供給ラインを接続する接続装置を備えることがさらに好ましい。供給ラインは、いわゆるアンビリカルであり得、硬化性媒体、エネルギ(具体的には電気エネルギ、液圧エネルギおよび/または気体圧エネルギ)、洗浄液および/または空気などのさらに別の流体、ならびに/あるいはデータを供給するように構成することができる。接続装置は、具体的にはプラグイン接続の形態または別の適切な方式で構成することができる。
【0021】
水中で使用するために、接続装置が、大波などの何らかの緊急または危険事態において、供給ラインの制御不能な引きちぎりを防止するために、急速解放を確実にするクイックリリース装置を備えることがさらに特に有利であり得る。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態によれば、出口装置が、杭管の供給開口へ接続するための少なくとも1つの出口を備えることが有利である。入口装置と出口装置との間に、ハンドリング装置、特にベースフレームに沿って、1つ以上の搬送ラインが延在し得る。出口装置は、また、出口装置から杭管の供給開口への硬化性媒体の移送を確実にするために、対応する杭管の供給手段に係合するように構成することができる。好ましくは、1つ以上の入口漏斗を杭管の供給装置に配置することができ、その漏斗内に出口装置の1つ以上の出口管を、たとえば、延出させることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、杭管へのハンドリング装置の特に良好な位置決めを確実にするようにハンドリング装置を杭管に配置する取付要素が、掘削孔内に配置されていることが好ましい。ハンドリング装置は、具体的には杭管が掘削孔に挿入される前に、杭管に連結されることに留意されたい。これは、ハンドリング装置と杭管との確実かつ制御された連結を可能にする。ハンドリング装置は、杭管の上端部、および/またはさらに杭管の内側領域の適切な位置に位置決めまたは配置することができる。
【0024】
さらに別の発展によれば、ハンドリング装置の特に有効な働きが、少なくとも1つの調節装置を配置することによって達成され得、その調節装置を用いて、取付要素が杭管と共に、掘削孔の周壁、支持管、および/またはハンドリング装置のベースフレームに対して変位可能かつ調節可能になる。すなわち、ハンドリング装置は、孔の周壁に対する杭管の何らかの事後の調節に使用することもできる。これにより、形成される基礎要素の品質をさらに高めることができる。
【0025】
調節装置は、基本的に、調節および補正用の適切なアクチュエータによって構成することができる。本発明の一実施形態によれば、調節装置は、少なくとも1つの調節シリンダ、具体的には液圧シリンダを備えることが特に有利である。
【0026】
具体的には、ハンドリング装置は、巻上装置、具体的にはクレーンの懸吊ロープまたは懸吊ロッドに取り付けることができる。この場合、保持要素が、アイレット(丸環状引っ掛け具)またはフックを備えることが有利である。取外し可能な連結は、特に簡単かつ確実な方式で、具体的には懸吊ケーブルまたは懸吊ロッドのクレーンフックまたは別の従来の連結要素によって成立させることができる。
【0027】
ハンドリング装置を特に耐久性良く使用するために、2つの搬送ラインが、入口装置と出口装置との間に延在し、それら2つの搬送ラインが、2重の供給ラインを形成するために並行に接続され得、または洗浄作業のために直列に接続され得るように、バルブ装置を用いて切り替えることができることが、本発明の実施形態によれば有利である。並行接続の場合、少なくとも2つの搬送ラインを介して同じ方向に硬化性媒体を供給することができる。バルブ装置を作動させることによって、2つの搬送ラインを直列に接続することができ、その結果、第1の搬送ラインは、洗浄液の供給ラインとして働くことができ、直列に接続された第2の搬送ラインは、洗浄液の戻りラインとして働くことができる。すなわち、この構成によって、2つの搬送ラインから確実に硬化性媒体を洗い流すことができ、その結果、それら搬送ラインは、詰まるようにならず、それによって、複数回使用することができる。
【0028】
さらに、本発明は、杭管を把持し、地盤の孔に挿入する方法において、上記の本発明によるハンドリング装置を使用することを特徴とする方法に関する。この方法では、ハンドリング装置の使用における前述の利点を、同じく実現することができる。
【0029】
本発明による方法の実施形態によれば、ハンドリング装置によって杭管を保持している間に、ハンドリング装置を介して杭管に硬化性媒体を供給することが好ましい。これによって、硬化性媒体を、特に確実に杭管に外側から供給し、具体的には、杭管の周りを取り囲む環状空間に導入することができる。このようにして、高品質の基礎要素を、硬化性媒体を過剰に消費することなく、設置することができる。
【0030】
本発明のさらに別の発展によれば、ハンドリング装置を、取付要素によって杭管に配置し、少なくとも1つの調節装置によって、把持装置と、把持装置によって保持された杭管とを伴うベースフレームを、支持管または掘削孔に対して変位させ調節することが好ましい。これは、ハンドリング装置を用いて、杭管を掘削孔内に正確に位置合わせすることを可能にする。
【0031】
本発明によれば、別の有利な方法の変形形態は、杭管上のハンドリング装置を、掘削孔に挿入後、巻上装置および/または供給ラインから取外し、バラストとして杭管に残すことができることである。ハンドリング装置は、杭管に取り付け続けられ、それによって、少なくとも杭管の周りの環状空間に導入された硬化性媒体が十分に硬化し固まるまで、杭管を所定位置に保持する追加のバラストとして杭管に取り付けられて残ることができる。その後、ハンドリング装置を、再び巻上装置によって杭管から取外し、回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図3】杭管の隔壁板上の供給装置の詳細断面図である。
【
図4】杭管を取り扱うハンドリング装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明が、図面に概略的に示された実施形態の好ましい例を参照して、以下にさらに説明される。
【0034】
図1によれば、杭管10は、管状基体12を備える。管状基体12の内部領域13には、管状基体12の長手方向軸に対して横向きの隔壁板20が配置され、その隔壁板は、内部領域13を下方部分14と上方部分15とに分割し、それら両部分を互いに分離する。環状封止要素19が、管状基体12の下方縁部に配置され得、その環状封止要素によって、杭管10を、可能な限り封止した状態で掘削孔の底に据えることができる。
【0035】
図示の実施形態では、隔壁板20は、概略的に示された2つの貫通開口22を備え、それら貫通開口は、同様に概略的に示された閉止装置24を用いて選択的に開閉することができる。
図3に関連してより詳細に下記で説明されるように、挿入漏斗34をそれぞれが持つ概略的に示された2つの供給開口32を有する供給装置30が、隔壁板20の中央領域に配置されている。
【0036】
挿入漏斗34を有する供給開口32は、硬化性媒体、具体的にはモルタルまたはセメントスラリを供給するように働き、それによって、硬化性媒体が、隔壁板20の下方でライン26を介して管状基体12の下方端部領域まで導かれ得る。そのために、導管26が、基体12の管状壁16を貫通して延出し、それぞれ、基体12の外周17において出口開口28を終端とする。このようにして、
図2に関連してより詳細に下記で説明されるように、硬化性媒体は、杭管10の内部領域13を介して下方端部領域まで導かれ得、出口開口28を介して杭管10の外側に出ることができる。
【0037】
図2では、地盤1の掘削孔4に挿入された、本発明による杭管10の下方端部領域が示される。掘削孔4の下方部分のみが示され、掘削孔4は、数メートル、通常5mから30mの間の深さを有し得る。掘削孔4は、支持のために、流体、具体的には水または他の支持流体によって充填され、その結果、掘削孔4は、大きな掘削孔深さであっても崩壊しない。支持管を、少なくともある領域に設けることもできる。
【0038】
隔壁板20を有する杭管10は、隔壁板20の貫通開口22が閉止装置24によって開放されている場合には、このように流体によって充満された掘削孔4に容易に挿入することができる。杭管10が最終位置に達した後、具体的には杭管10が掘削孔4の坑底5に配置されたとき、貫通開口22は、閉止装置24によって再び閉じることができる。次いで、硬化性媒体は、導管26を介して掘削孔4に導入され得、すなわち、硬化性媒体は、導管26によって杭管10内、下方領域に供給され、下方端部領域の管壁16を通り抜け、出口開口28を介して環状空間6内に出ることが可能になる。環状空間6は、管状基体12の外周17と掘削孔4の実質的に円筒形の壁8との間に形成される。その結果、硬化性媒体は、掘削孔4内の液体に比較して高い密度によって、底から上部に向かって環状空間6を充填することができる。液体は、環状空間6の底から上方へ、硬化性媒体によって置き換えられる。
【0039】
隔壁板20が設けられていることによって、杭管10の内部領域13の下方部分14は、通路開口22が閉じているとき、上方に向けて封止されている。したがって、杭管10の下方部分14内の液体は、上方へ移動することができず、その結果、硬化性媒体は全くまたは殆ど、杭管10の内部領域13に侵入することができない。このようにして、内部領域13は、確実に硬化性媒体無しに保つことができ、硬化性媒体またはスラリの無駄を省くことができる。
【0040】
図3を参照すると、
図1による杭管10の供給装置30が、より詳細に示される。供給装置30は、ポット形状の容器31を備え得、その容器は、隔壁板20の中央領域に装着されている。ポット形状の容器31内に、下方に延びて行く導管26用の供給開口32が形成されている。硬化性媒体を取り込むために、供給開口32は、それらの上部に導入漏斗34を備える。供給開口32は、さらに、概略的にのみ示されているチェックバルブ36を有するように形成することができ、そのチェックバルブは、例示されているライン26からの硬化性媒体の望ましくない逆流を防止する。
【0041】
本発明によれば、
図4に示されるハンドリング装置50を、硬化性媒体を供給するために使用することができる。ハンドリング装置50は、ベースフレームである基体52を備え、基体52は蓋板54を有する。蓋板54には、杭管10にハンドリング装置50を設置または配置するための取付要素58が配置されている。
【0042】
把持装置56を介し、ハンドリング装置50を、図示の実施形態の少なくとも1つのクランプまたは把持要素57によって杭管10の内側に取外し可能に取り付けることができ、その把持装置は、それに加えてまたはその代わりに非形状接続式クランプ装置として構成してもよい。好ましくは、複数の把持要素57が、ほぼ管状または樽形状の基体52の外周に沿って配列されている。
【0043】
ハンドリング装置50は、杭管10がまだ地上または船舶上にあるときに、杭管をその貯蔵場所から把持するのに使用することができる。ハンドリング装置50は、基体52の上端領域の保持要素55を介して、巻上装置、具体的にはクレーンに連結することができる。それにより、杭管10は、ハンドリング装置50によって、貯蔵場所から地盤1の掘削孔4に挿入することができる。
【0044】
さらに、ハンドリング装置50には、概略的にのみ示された送給装置60が設けられ、その送給装置は、図示の実施形態では、基体52の上端部の入口装置62から下方の出口装置66まで延在する搬送ライン64を備える。出口装置66は、硬化性媒体を供給するために、
図3に示された杭管10の供給装置30の入口漏斗34の上方に係合するように構成されている。さらに、それに関係する結合ユニットを、杭管10の供給装置30上の結合要素23と協働して正確な位置決めおよび位置の維持を確保するために、ハンドリング装置50に設けることができる。
【0045】
アンビリカルと呼ばれることもある供給ライン80は、取外し可能な接続装置70を介して、硬化性媒体、エネルギ、および/またはデータを供給するために使用することができ、それによって、硬化性媒体が、基体52の上端部の入口装置62へ移送される。
【0046】
環状空間6が硬化性媒体によって充填された後、接続ライン80および/または巻上装置は、基体52および/または保持要素55から取り外すことができ、杭管10に取り付けられたハンドリング装置50は、少なくとも、地盤1内に基礎要素を形成するための硬化性媒体が硬化する迄、追加の積載荷重として残される。その後、ハンドリング装置50を、杭管10からさらに取外し、回収することができる。