(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043515
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】集積回路用の導電性圧縮接触子付きテストソケット
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20240322BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240322BHJP
【FI】
H01R33/76 505C
G01R31/26 J
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149523
(22)【出願日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】63/375,993
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/464,465
(32)【優先日】2023-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523352491
【氏名又は名称】アイアンウッド エレクトロニクス,インク.
【氏名又は名称原語表記】Ironwood Electronics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】イラヴァラサン エム.パラニアッパ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド エー.ストルイック
【テーマコード(参考)】
2G003
5E024
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AG01
5E024CA18
5E024CB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】BGAソケットにおいて電気信号経路の増加による信号損失を抑え、特に片持ち梁ソケット構造におけるインピーダンス整合、接触子の損傷などの課題を解決するソケット接触子構造を提供する。
【解決手段】突出した回路接触子11を有する電子回路デバイス13用のテストソケットであって、重なる側の電気絶縁性のハウジング7を備えた下地側のPCB基板5を含み、PCB基板5は、その中を貫通して延びる導電性ビア15のアレイを含み、ハウジング7は、PCBビア15と位置合わせされるソケット開口部9のアレイを含み、その中にPCB基板5の導電性ビア15と電気的に接続する弾力的に圧縮可能な導電性圧縮接触子17を含む。ソケット開口部9の各々は、テスト中に、電子回路デバイス13の突出した回路接触子11を、ソケット開口部9内の導電性圧縮接触子17と電気的に係合させて保持する、周縁保持フラップ27を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト用の電子回路デバイスの保持に使用するためのソケットデバイスであって、
(a)主に電気絶縁性材料で構成された基板であって、該基板の第1の面と第2の面との間に延びる導電性ビアのアレイを含む前記基板と、
(b)前記基板の前記第1の面の少なくとも一部に重なる電気絶縁性のハウジングであって、前記基板の前記ビアのアレイと位置合わせされる、前記ハウジングを貫通して延びるソケット開口部のアレイを有する前記ハウジングと、
(c)前記基板の前記ビアの1つと電気的に接触し、前記ソケット開口部の各々の中に着座する、弾力的に圧縮可能な導電性圧縮接触子と、
(d)前記ソケット開口部の各々の周縁部に沿って前記ハウジング内に形成された少なくとも1つの保持部材であって、前記電子回路デバイスの突出した回路接触子がその対応する前記ソケット開口部内に挿入されたときに、前記圧縮接触子に対して前記回路接触子を係合関係に保持するように構成されている前記少なくとも1つの保持部材と、を含むことを特徴とするソケットデバイス。
【請求項2】
前記圧縮接触子は、導電性粒子が埋め込まれたエラストマー材料で少なくとも一部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のソケットデバイス。
【請求項3】
前記圧縮接触子は、全体が概ね均一な円筒形断面と、前記ソケット開口部の実質的な部分を横断する接触面とを有する、小型の弾性ボタンの形態で構成されることを特徴とする請求項1記載のソケットデバイス。
【請求項4】
前記圧縮接触子は、前記電子回路デバイスの前記回路接触子の位置決め及び安定化を補助する輪郭接触面を有することを特徴とする請求項1記載のソケットデバイス。
【請求項5】
前記圧縮接触子は、前記電子回路デバイスの対応する前記回路接触子の周囲を取り囲む複数の可撓性部に分割されることを特徴とする請求項1記載のソケットデバイス。
【請求項6】
前記保持部材は、前記ソケット開口部の前記周縁部から内側に突出する複数の可撓性フラップを含むことを特徴とする請求項1記載のソケットデバイス。
【請求項7】
前記可撓性フラップの少なくとも1つは、寸法の異なる前記回路接触子を収容するために、他の前記フラップと異なる大きさを有することを特徴とする請求項6記載のソケットデバイス。
【請求項8】
前記フラップの少なくとも1つは、寸法の異なる前記回路接触子を収容するために、大きさの異なる複数のサブフラップを含むことを特徴とする請求項6記載のソケットデバイス。
【請求項9】
前記フラップの少なくとも1つは、前記ソケット開口部の前記周縁部における直径を、その中に受容される前記回路接触子の対応する最大直径よりも僅かに小さい直径に制限することを特徴とする請求項6記載のソケットデバイス。
【請求項10】
前記フラップのうちの1つは、前記回路接触子によって係合されるとき、前記圧縮接触子に向かって撓むように適合され、前記フラップのうちのもう1つは、前記ソケット開口部内で前記回路接触子を安定させるのを補助するために、前記圧縮接触子から更に間隔を空けた個所で前記回路接触子と係合するように適合されることを特徴とする請求項9記載のソケットデバイス。
【請求項11】
前記基板は、プリント回路基板の形態で構成され、その前記第2の面における前記ビアの各々が、突出した電気接触子に電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載のソケットデバイス。
【請求項12】
テスト用の電子回路デバイスの保持に使用するためのソケットデバイスであって、
(a)プリント回路基板の形態で構成された下地側の基板と、電気絶縁性材料で構成された重なる側のソケットハウジングとを有するソケット本体を含み、
(b)前記基板は、前記ハウジングを貫通して延びる複数のソケット開口部と合わせられる、前記基板を貫通して延びる複数の導電性ビアを含み、
(c)前記ハウジングの前記ソケット開口部の各々は、前記基板の対応する前記ビアに隣接して配置されて該ビアと連通する基部と、前記電子回路デバイスの突出した回路接触子を前記ソケット開口部の中に受け入れるように適合された反対側のソケット進入口とを有し、
更に、前記ソケットデバイスは、
(d)少なくとも一部がエラストマー材料で形成され、前記基部に隣接して前記ソケット開口部の各々の中に配置されて、前記下地側の基板の対応する前記ビアと電気的に接触する導電性接触子と、
(e)前記電子回路デバイスの対応する前記回路接触子を、前記ソケット開口部内に配置された前記導電性接触子と係合関係に保持するために、前記ソケット開口部の各々の前記ソケット進入口の周縁部に沿って前記ハウジングに形成された、少なくとも1つの保持部材と、を含むことを特徴とするソケットデバイス。
【請求項13】
前記導電性接触子は、全体が概ね均一な円筒形断面と、前記ソケット開口部の実質的な部分を横断する接触面とを有することを特徴とする請求項12記載のソケットデバイス。
【請求項14】
前記接触面は、該接触面に接触する前記電子回路デバイスの前記回路接触子の外周面に適合するように輪郭付けられることを特徴とする請求項13記載のソケットデバイス。
【請求項15】
前記導電性接触子は、該導電性接触子が係合する前記電子回路デバイスの前記回路接触子の周囲の少なくとも一部を取り囲むように適合される、複数の可撓性部に分割されることを特徴とする請求項12記載のソケットデバイス。
【請求項16】
前記保持部材は、前記ソケット開口部の各々の前記ソケット進入口の前記周縁部から内側に延びる、複数の可撓性突出部を含むことを特徴とする請求項12記載のソケットデバイス。
【請求項17】
前記突出部の少なくともいくつかは、寸法の異なる前記回路接触子を収容するために、他の前記突出部と異なる大きさを有することを特徴とする請求項16記載のソケットデバイス。
【請求項18】
前記突出部の少なくともいくつかは、長さの異なる一連のフィンガーを含み、該長さの異なるフィンガーは、前記回路接触子が対応する前記ソケット開口部内に挿入されたときに、前記ソケット進入口と前記ソケット開口部の前記基部との間で延びる軸に沿った異なる位置で、前記回路接触子の外周に係合することを特徴とする請求項16記載のソケットデバイス。
【請求項19】
テスト用の電子回路デバイスの保持に使用するためのソケットデバイスであって、
(a)電源層及び接地層を多層に有するプリント回路基板の形態で構成された下地側の基板と、電気絶縁性材料で構成された重なる側のソケットハウジングとを有するソケット本体を含み、
(b)前記基板は、前記ハウジングを貫通して延びる複数のソケット開口部と合わせられる、前記基板を貫通して延びる複数の導電性ビアを含み、前記ビアの少なくともいくつかが、前記基板内の前記電源層及び前記接地層の少なくともいくつかと電気的に接続され、
(c)前記ハウジングの前記ソケット開口部の各々は、前記基板の対応する前記ビアに隣接して配置されて該ビアと連通する基部と、前記電子回路デバイスの突出した回路接触子を受け入れるように適合された反対側のソケット進入口とを有し、
更に、前記ソケットデバイスは、
(d)前記基部に隣接して前記ソケット開口部の各々の中に配置され、前記下地側の基板の対応する前記ビアと電気的に接触する、弾力的に圧縮可能な導電性接触子を含み、
(e)前記導電性接触子は、概ね均一な断面形状と、前記導電性接触子が配置される前記ソケット開口部の実質的な部分を横断する接触面とを有する、小型のエラストマーボタンの形態で構成され、
更に、前記ソケットデバイスは、
(f)前記電子回路デバイスの対応する前記回路接触子を、前記ソケット開口部内に配置された前記導電性接触子と係合関係に保持するために、前記ソケット開口部の各々の前記ソケット進入口の周縁部に沿って、前記ハウジングから半径方向内側に突出している複数の保持部材を含み、
(g)前記複数の保持部材は、寸法の異なる前記回路接触子を収容し保持するために、長さの異なるフィンガー部分を有することを特徴とするソケットデバイス。
【請求項20】
前記電子回路デバイスの前記回路接触子は、はんだボール接触子であり、前記導電性接触子の前記接触面は、該接触面と接触する前記はんだボール接触子の外周面に適合するように輪郭付けられることを特徴とする請求項19記載のソケットデバイス。
【請求項21】
前記長さの異なるフィンガーは、前記はんだボール接触子が対応する前記ソケット開口部内に挿入されたときに、前記ソケット進入口と前記ソケット開口部の前記基部との間で延びる軸に沿った異なる位置で、前記はんだボール接触子に係合することを特徴とする請求項20記載のソケットデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「Test Socket With Conductive Compression Contacts For High Performance Integrated Circuits」と題する2022年9月16日出願の米国仮出願番号第63/375,993号の利益を主張する非仮特許出願であり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、集積回路のような電子回路デバイス用のテストソケットの技術に関し、より詳細には、より大きな導電性と設計の柔軟性とのために導電性圧縮接触子(contacts)を組み込んだ高性能集積回路用の改良されたテストソケットの構造に関する。
【背景技術】
【0003】
本節の記載は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術とみなされるものではない。
【0004】
ボールグリッドアレイ(BGA)技術は、集積回路をプリント回路基板(PCB)に永久的又は半永久的に接続するために使用される、特定のタイプの表面実装パッケージを指す。BGA実装では、従来のピングリッドアレイやデュアルインラインパッケージの導電性相互接続ピンが、集積回路の下面にある小さなはんだボールの形をした導電性回路接触子又はパッドのアレイに置き換えられる。これにより、接続ポイントが増え、パッケージリードへのトレース接続が短くなるため、高速での性能が向上する。
【0005】
技術の進歩に伴い、高性能集積回路を使用するために設計される製品がますます増えている。開発中にこれらの製品/回路の設計を分析し、完成させるために、被試験デバイス(DUT)とPCBとの相互接続を容易にするテストソケットが使用されている。テストソケットがなければ、このような回路の設計やテストには、複数のはんだリフローによる着脱が必要になる。このような厳しいニーズに応えるため、ソケットは、DUTとメインターゲットPCBとの半永久的な接続を可能にする。しかしながら、テストソケットを通してそのような相互接続を行うことは、必然的に電気信号経路を増加させ、潜在的な信号損失を本質的にもたらす。高性能アプリケーションでは、このような信号損失を最小限に抑えることが要求されるため、このようなソケットにBGA技術を使用することは有益であると考えられている。
【0006】
従来のソケットでは、BGA回路用の現在の接触子技術は、一般的に、ソケット本体を貫通して延び、DUTの各BGAはんだボールをメインターゲットPCBへ接続する、「グリッパー」として知られるプレス金属片持ち梁を採用している。このような「グリッパー」接触子と、それがはんだボールと係合する様子とを、図面の
図1A、
図1B、及び
図1Cに示す。図示されているように、DUTがテストソケット内に挿入されると、各プレス金属片持ち梁がDUTの関連するはんだボールを把持する。その後、各梁の反対側の端がメインPCBにはんだ付けされる。注目すべきは、この技術では、DUTのはんだボールに最小限の保持力を加えるために、プレス金属梁をある特定の長さにする必要があり、これは本質的にソケット本体を厚くし、システムに望ましくない信号損失をもたらす。特筆すべきは、この従来の接触子技術では、性能が一般に約24GHzに制限されることである。
【0007】
片持ち梁技術の使用は、特に高性能集積回路と共に使用する場合、さらなる問題も引き起こす。例えば、片持ち梁型接触子は、片持ち梁の細長い不規則な形状のために、望ましくない信号反射や挿入損失に悩まされる傾向がある。また、片持ち梁の不規則な形状は、信号の入口から出口までの誘電体面積にばらつきを生じさせ、インピーダンス整合をより困難にする。更に、片持ち梁型接触子は、ソケット開口部内で動いたり傾いたりする可能性があり、その結果、メインPCBにはんだ付けされる際に接触子の位置が不適切になり、新しいデバイスを挿入する際に接触子が損傷する虞がある。
【0008】
片持ち梁型接触子を有する従来のBGAソケットは、異なるサイズのはんだボールを有する集積回路に対応するための再構成も困難である。不規則な形状の片持ち梁は、金属からプレス成形する必要があり、高価な硬質工具を使用しなければ再構成できないため、このスタイルの接触子の使用は汎用性に欠ける。
【0009】
また、BGA回路のはんだボールは、片持ち梁型接触子が把持することを意図する明確な赤道部(equators)で常に良好に丸みを帯びているわけではない。現在のところ、はんだボールの赤道部が明確でない状況に対して、従来の片持ち梁型接触子を適合させて、あらゆるタイプの保持機能を組み込むための有効な手段は存在しない。
【0010】
最後に、多くの被試験デバイスは、適切な動作のためにコンデンサや抵抗を必要とする。これらの電気部品は、電源の完全性を維持するために、デバイスの近くに配置する必要がある。また、コンデンサは、高速電流を供給するために、必要な負荷の近くに配置する必要がある。しかしながら、既存の片持ち梁型のソケットシステムを使用してこれを提供することはできず、それは、このような部品はソケットアセンブリによってDUTから分離されたメインPCBに組み込まれなければならないためである。そのため、現在の接触子技術では、このような状況での有効性に限界がある。
【0011】
従来の片持ち梁型ソケット接触子に関連する前述の問題及びその他の欠点は、特に高性能集積回路の進歩に伴い、その使用の汎用性及び有効性を低下させている。従って、従来のテストソケットの多くの制限を解決し、高性能集積回路で使用するために強化された性能特性を提供する、改良されたソケット接触子ソリューションに対する業界の明確なニーズが存在することは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を念頭に置いて、本発明の1つの目的は、BGAテストソケットの片持ち梁型接触子アプローチを完全に回避し、また、DUTとメインPCBとの間にはるかに短いトレース接続を確立し、従って、従来のソケット接続に関連する固有の信号損失を低減し、回路の性能速度を大幅に向上させる、圧縮接触子ソケットソリューションを提供することである。
【0013】
別の目的は、インピーダンス整合能力を向上させ、従来の片持ち梁型接触子技術の細長い不規則な形状に起因する望ましくない信号の反射や挿入損失を抑制する、より均一な断面接触子形状を備えたこのような改良型圧縮接触子ソケットを提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、カントやその他の位置ずれの影響を受けにくく、テストソケットの電気接触子を損傷することなく電気部品のデイジーチェーンテストを容易にする、ソケット接触子を提供することである。この点で、異なるサイズ及び構成の回路接触子を有する集積回路に対応するため、より容易に再構成可能なこのような圧縮型接触子を提供することも目的である。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、このようなテストソケットをPCBそのものとして設計し、必要なコンデンサや抵抗をその中に埋め込んでDUTに近接配置することで、パワーインテグリティを改善し、高性能回路により大きな動作電流速度を提供することである。この方法では、本明細書で更に説明するように、各接触子が任意に同軸伝送構造の形態で構成されることも考えられ、これは現在の片持ち型接触子のアプローチでは利用不可能である。
【0016】
更に、このようなソケットを設計して、あまり明確でない又は不規則な形状の回路接触子要素を有する集積回路を固定するための保持機能を、含む又は組み込むことができるようにすることも目的である。DUTの必要なフットプリントを増加させることなく、前述の利点及び改良の全てを提供し、テストから最終生産へのスムーズな移行を保証することが更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明は、集積回路用のテストソケット技術に、従来の片持ち梁型のアプローチの代わりに導電性圧縮接触子を利用する新規なアプローチを組み込む。本発明において、テストソケットは、下地側の(underlying)PCB基板とその上に固定された重なる側の(overlying)絶縁ソケットハウジングとを含む本体部を有する。下地側のPCB基板は、BGA技術を組み込んだ集積回路のはんだボールのようなDUTから突出した電気回路接触子のアレイと位置合わせ(align with)するように配置された、PCB基板を貫通して延びる充填ビアのアレイを含む。各充填ビアの上面には、導電性圧縮接触子が付着されており、好ましくは、小型の導電性エラストマーボタン(例えば、厚さ~75μm)の形態で、弾性的に圧縮可能な材料で構成されている。各充填ビアの下端は、回路のメインPCBへのはんだ接続を確立するために使用される、小さなはんだボール取り付け部で終端する。
【0018】
絶縁ソケットハウジングは、PCB基板と重なり、PCB基板に付着される。ソケットハウジングは、PCB基板の充填ビア及び圧縮接触子のアレイと位置合わせするように構成された、本体を貫通して延びる概ね円筒形状のソケット穴又は開口部のアレイを含む。ハウジングの各ソケット開口部の上部周縁部に形成された1つ以上の可撓性保持部材は、その中に挿入されたとき、DUTの接触子をテストソケットの導電性圧縮接触子に対してしっかりと把持し保持するように機能する。従って、この構成により、電気的接続は、DUT接触子のアレイから、導電性圧縮接触子及びPCB基板内の対応する充填ビアを通して、メインPCBまで効果的に確立される。
【0019】
本構成では、電気的接続を行うために、細長く屈曲する片持ちアームは必要ない。ソケットハウジングは、DUTの突出した回路接触子を把持及び保持して、PCB基板の対応する圧縮接触子にしっかりと係合させる。従って、圧縮接触子は最小限の厚さに抑えられ、充填ビアは大幅に短くされ、DUTとメインPCBとの間の信号経路全体が効果的に短縮される。更に、圧縮接触子及び対応する充填ビアは、比較的均一な円筒形断面で構成することができ、必要に応じてインピーダンス整合を最適化するように容易に調整することができる。前述の特徴は全て、従来の片持ち梁型接触子に関連する信号損失及び信号反射を大幅に低減するのに役立ち、回路の性能速度を大幅に向上させることが判明している。
【0020】
上記に加えて、ソケット本体がPCB形態で構成されているため、電力層と接地層とを多層に配置することができる。これにより、抵抗やコンデンサをDUTに近いPCB基板内に埋め込むことができ、高性能回路の要求に応えるパワーインテグリティと電流速度を向上させることができる。また、このような接触子及びビアの円筒形は、望ましい場合に、充填ビアを同軸構造として構成することを容易にする。ここでも、従来の片持ち梁型接触子技術では、このようなことは不可能である。
【0021】
本構造では、導電性圧縮接触子は、対応する各ソケット開口部の基部でPCB基板の各充填ビアにしっかりと固定される。そのため、DUTの挿入時にソケット内で傾いたり動いたりすることがなく、従来の片持ち梁型接触子よりも損傷を受け難い。
【0022】
本発明の前記及び追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明からより容易に明らかになるであろう。しかしながら、本明細書における説明及び具体例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に記載された図面は、説明のためのものであり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。
【0024】
【
図1A】
図1Aは、集積回路用BGAテストソケットで現在使用されている先行技術の片持ち梁型電気接触子の斜視図である。
【0025】
【
図1B】
図1Bは、
図1Aに示す片持ち梁型接触子を組み込んだテストソケットを示すと共に、BGAデバイスのはんだボール接触子がそれらによって係合する様子を示す、一対の断面図である。
【0026】
【
図2A】
図2Aは、本発明に従って構築されたBGAテストソケットの断面図であり、BGAテストデバイスがそこに挿入されるように配置されている。
【0027】
【
図2B】
図2Bは、
図2AのBGAテストソケットの断面図であり、BGAテストデバイスが係合関係にある状態でそこに挿入されている。
【0028】
【
図3】
図3は、
図2Bのテストソケットの1つの導電性圧縮接触子のクローズアップ断面図であり、そのソケット開口部内に挿入されたBGAテストデバイスのはんだボールを示す拡大図が付随している。
【0029】
【
図4】
図4は、
図2Bに示したものと同様のBGAテストソケットのクローズアップ断面図であり、導電性圧縮接触子がPCB基板の充填ビアの上部に押されている一実施形態を示す。
【0030】
【
図5】
図5は、本発明の原理を組み込んだBGAテストソケットの別のクローズアップ断面図であり、導電性圧縮接触子がハウジングの各ソケット開口部に形成された別個のキャリアに保持される代替実施形態を示す。
【0031】
【
図6】
図6は、
図2Aから
図4に示したものと同様のソケットハウジングの分解透明クローズアップ透視図であり、各ソケット開口部の上部周縁に形成された可撓性保持部材と、その基部に配置された導電性エラストマー接触子とを示す。
【0032】
【
図7】
図7は、BGAテストデバイスのはんだボール接触子をスナップロック関係で受けるために各ソケット開口部の周縁に形成された複数の可撓性保持部材の一実施形態を示す、ソケットハウジングの一部のクローズアップ透視図である。
【0033】
【
図8A】
図8Aは、様々なサイズのはんだボールを収容するのに役立つように構成された、各ソケットハウジングに形成された可撓性保持部材の代替実施形態を示す上面図である。
【0034】
【
図8B】
図8Bは、様々な大きさのはんだボールを収容するのに役立つように構成された、
図8Aに示す可撓性保持部材の更に別の代替実施形態の上面図である。
【0035】
【
図8C】
図8Cは、
図8Aに示す保持フラップの上面図であり、フラップが様々な大きさの異なるはんだボールを収容し、それらに所望の保持力を提供するために、適切な大きさにされている様子を示している。
【0036】
【
図8D】
図8Dは、
図8A又は
図8Bのいずれかに示すサイズの異なる保持フラップによって、はんだボールがソケットハウジングのソケット内に保持される様子(部分図のみ)を示すクローズアップ側立面図である。
【0037】
【
図9A】
図9Aは、
図6に示すものと同様のソケットハウジングの透明クローズアップ透視図であり、はんだボールの受け入れに対応し、抵抗による押し戻し力を低減するための、中央スリットを有する導電性圧縮接触子の代替実施形態を示す。
【0038】
【
図9B】
図9Bは、
図9Aに示すものと同様の透明クローズアップ透視図であり、一対の交差中央スリットを有する導電性圧縮接触子の別の代替構成を示す。
【0039】
【
図9C】
図9Cは、
図9A又は
図9Bの代替導電性圧縮接触子を備えたソケットハウジングを組み込んだテストソケットのクローズアップ側立面図であり、ソケットハウジングを破断してそこに着座した圧縮接触子を見易くしている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の説明は、本質的に単に例示的なものであり、本開示、適用、又は使用を限定することを意図するものではない。図面全体を通して、対応する参照数字は、類似の又は対応する部品及び特徴を示すことを理解されたい。更に、以下の議論は、BGA接触子実装技術を利用する集積回路用のテストソケットに特に関連性があり、焦点を当てるものとするが、本発明は、突出した導電性相互接続接触ピンを有する他のピングリッドアレイタイプの回路を収容するように設計されたテストソケットにも、同様に適切であり、適用可能であることが認識され、理解されるであろう。
【0041】
上述し、
図1A~
図1Cに示したように、BGAテストソケットに使用される現在の接触子技術は、一般的に、ソケット本体を貫通して延び、DUTの各BGAはんだボールをメインPCBに接続する、「グリッパー」として知られるプレス金属片持ち梁を採用している。前述したように、細長い不規則な形状及び柔軟なカンチレバー動作により、この種の接触子の使用には、多くの性能問題やその他の問題が伴う。本発明は、従来の片持ち梁型接触子に関連する多くの問題を解決するために、導電性圧縮接触子及びPCB基板を組み込んだテストソケット技術への新しいアプローチを取り入れている。
【0042】
図2A及び
図2Bを参照すると、本発明のBGAテストソケット1は、PCBとして構成された下地側の基板5を含む本体部3を有し、その上にBGA絶縁ソケットハウジング7が取り付けられていることが確認できる。ソケットハウジング7は、概ね円筒形状のソケット穴又は開口部9のアレイを含み、これらの開口部9は、ソケットハウジング7の中を延び、特定の被試験デバイス(DUT)13のはんだボール接触子11のアレイと位置合せしてそれらを受けるように構成されている。
図2Aは、テストソケット1に接続される直前のDUT13を、ハウジング7のソケット開口部9と位置合わせした状態を示し、
図2Bは、DUT13のはんだボール接触子11がハウジング7の対応する開口部9内に挿入された状態で、テストソケット1に接続されたDUT13を示している。
【0043】
ソケット本体3の下地側のPCB基板5は、それを通過して延在した導電性充填ビア15のアレイを含み、これらは、ハウジング7のソケット開口部9、延いてはDUT13のはんだボール11のアレイと整合するように配置されている。
図3で最もよく確認できるように、PCB基板5の各充填ビア15の上面19には、導電性圧縮接触子17が付着されている。図面全体に見られるように、各充填ビア15の下端は、回路のメインPCB(図示せず)へのはんだ接続を確立するために使用される、小さなはんだボール取り付け部21で終端している。従って、DUTはんだボール接触子11のアレイから、PCB基板5内の導電性圧縮接触子17及び対応する充填ビア15を通って、メインPCBへと、効果的に電気的接続が確立される。
【0044】
本実施形態において、圧縮接触子17は、好ましくは、導電性エラストマー、例えば、銀粒子を埋め込んだシリコンゴム、銀メッキしたニッケル粒子を埋め込んだシリコンゴム、又は金メッキしたニッケル粒子を埋め込んだシリコンゴムなどの、弾力的に圧縮可能な弾性材料で構成されることが企図される。限定するものではないが、他の導電性エラストマーも考えられ、更に、このような圧縮接触子17は、本明細書の発明から逸脱することなく、任意の導電性バネ又はハイブリッドバネ/エラストマーの組み合わせ、或いは他の導電性圧縮機構の形態を取り得ることが企図される。
【0045】
図3及び
図4に示すように、好ましい一実施形態では、各接触子17が、厚さ約75μmの小型の概ね円筒形状の導電性エラストマーボタンの形態をとり得ることが考えられる。この実施形態において、接触子17は、PCB基板5の対応するビア15の上端19にスクリーン印刷することができる。エラストマーボタン17のサイズは、異なるDUTの様々なはんだボールサイズに対応するように容易に構成することもできる。接触子17は、より単純化された均一な円筒形状を有するので、このような再構成は、ソフトな工具のみを使用して比較的容易に達成することができる。一方、従来のプレス加工された片持ち梁形状の接触子は、高価な硬質工具を使用してのみ再構成することができる。
【0046】
代替の実施形態では、
図5に示すように、圧縮接触子17は、ハウジング7の各ソケット開口部9に形成された別個のキャリア23に保持され、PCB基板5に積層されてもよいことが更に企図される。このような導電性エラストマー接触子17を接続する他の態様も、本明細書の発明から逸脱することなく可能であろう。しかしながら、どのように固定されるかに関わらず、そのような接触子17のサイズは、特定の用途の特定の性能要件及び必要性に応じて変化し得ることが理解されるべきである。
【0047】
図3に最もよく示されるように、エラストマー接触子17の上面25は、DUT13の対応するはんだボール11の概ね球形状と一致して嵌合するように形成された、凹面又は他の輪郭面を有することができる。接触子17にはんだボール接触子11のためのこのような座を形成することは、標準的なボール形状のはんだ接触子に対して、改善された表面積接触及びより良好な電気的接続性を提供するのに役立つ可能性がある。しかし、はんだボール11に高さのばらつきがある場合、上面を平坦にして、より多くのコンプライアンス範囲を可能にすることも考えられる。
【0048】
図2Aから
図6に見られるように、テストソケット1の絶縁ソケットハウジング7は、PCB基板5と重なって付着されている。ハウジング7は、PEEK、ポリイミド、ポリアミド、FR4/5、G10、或いは他の絶縁材料などの、少なくとも摂氏約230度のリフロー温度に耐える電気絶縁材料で構成されることが好ましい。ハウジング7は、当業界で知られている任意の適切な手段によってPCB基板5に取り付けることができる。
【0049】
図6及び
図7に最もよく示されように、1つ以上の可撓性で弾力性のある保持部材又はフラップ27が、各ソケット開口部9の上部周縁部29においてハウジング7内に形成されている。保持フラップ(複数可)27は、ソケット開口部9への上部進入口の一部を、その赤道部におけるはんだボール11の最大直径より僅かに小さい直径に絞るように、周縁29から内側に突出している。このように、DUT13がテストソケット1に挿入されると、各ソケット開口部9に対応する保持フラップ(複数可)27は、圧縮接触子17に向かって下方に、及びボール接点11の赤道部を越えて外側に撓み、その結果、はんだボール11がソケット開口部9に入ることができる。
図3に最もよく示されているように、一旦挿入されると、保持フラップ(複数可)27は、弾力的に内側に撓んで戻り、はんだボールの赤道部に対して僅かにオーバーデッドセンター(over-dead-center)の位置ではんだボール接触子11を閉じる。このように、可撓性保持フラップ(複数可)27は、DUT13のはんだボール接触子11を、テストソケット1の導電性圧縮接触子17の上面25に対して、しっかりと掴み保持するように機能する。
【0050】
先の実施形態において、保持フラップ27は、実質的に等しいサイズ及び形状であり、含まれるフラップのサイズ及び数は、目下の用途に応じて変化し得る。しかしながら、
図8A~
図8Cを参照すると、様々な状況に更に適応するために、他の保持フラップ構成が有用であり得ることが企図される。例えば、サイズ公差のばらつきにより、典型的なはんだボール接触子の直径が、DUTアレイ自体で、またしばしば異なるDUT間で、異なる傾向があることが知られている。そのため、はんだボールのサイズは、直径公差、例えば公称φ0.3±0.025mmで表すことができる。
【0051】
様々なサイズのはんだボール接触子11に対応し、適切な接続と保持力を確保するために、フラップ27は、代替的に、ソケット開口部9の上部周縁29から半径方向内側に突出し、代表的なはんだボールの公差に基づいて異なる直径を確立する、異なるサイズの一連のフィンガー又はより小さなサブフラップ27a、27b、27c、及び27dとして形成することができる。このようなフラップは、
図8A及び
図8Bに示すように、サイズの異なる一連の個々のフラップ、又は一連のサブフラップとすることができる。もちろん、用途のニーズに応じて、より多くの又はより少ないフラップ/サブフラップを使用することもできる。
【0052】
図8A及び
図8Bは、異なるサブフラップ構成27a、27b、27c、及び27dを有する保持フラップ27の、2つの代替可能な適応を示している。
図8Aにおいて、サブフラップは、僅かに弓状で、それらの自由端がより尖った形状であり、より大きい/より長いサブフラップ27aは、残りのサブフラップ27b、27c、27dのそれとは反対に湾曲している。
図8Bの実施形態において、サブフラップは、湾曲が少なく、それらの自由端で僅かに角ばっており、ことによると
図8Aに示す実施形態のサブフラップよりも僅かに硬い。各実施形態では、サブフラップ27aが最も内側に延び、従ってソケット開口部9の小径を確立している。サブフラップ27b、27c、27dの各々は、次第に半径方向内側への突出が僅かに小さくなり、その結果、(典型的には所定のはんだボール公差に基づく)より大きな直径のはんだボール接触子11を収容するのに役立つように、その先端(point)で僅かに大きな直径の開口部を確立する。もちろん、サブフラップ27a、27b、27c、及び27dの各々は、本明細書における発明から逸脱することなく、個々の突出するフラップとして構成されてもよい。
【0053】
図8C及び
図8Dに最もよく示されているように、長めのサブフラップ27aは、ソケット開口部9内への挿入時に、最小径のはんだボール接触子11であっても適切な干渉嵌合を確保できるように、十分に内側に突出するように設計されている。例として、
図8Cは、0.3±0.025mmの公称直径を有するはんだボール接触子11を収容するための、1つの可能な構成を示している。より大きなはんだボール接触子11(例えば、φ0.325mm)は、サブフラップ27a~27dの1つ以上によって係合され、所定の位置に保持される。許容範囲の下限にある小さいはんだボール接触子11(例えば、φ0.275mm)の場合、サブフラップ27aは、小さい接触子11が保持フラップ27によって係合され、圧縮接触子17に対して十分な係合力で適切に保持されるように、ソケット開口部9への進入口の直径を十分に狭めていることがわかる。
【0054】
図8Dに示すように、ソケット開口部9内にはんだボール11が挿入されると、長めのサブフラップ(複数可)27a(及び、挿入されるはんだボール接触子11の直径によっては他のサブフラップ27b~27d)が、圧縮接触子17に向かって下向きに曲げられる。はんだボール11がソケット開口部9に挿入されると、サブフラップ(複数可)は、最終的にはんだボールの赤道部に対してオーバーデッドセンターを通過する。この時点で、はんだボール接触子11に到達するのに十分な長さのサブフラップ(複数可)は、接触子11に対向し、反対側の離脱方向へのカウンタームーブメントに抵抗する。その結果、
図8Dに示すように、少なくとも長めのサブフラップ27a(複数可)は、挿入されたはんだボール接触子11を、圧縮接触子17に対して安定した係合状態に保持するように機能する。
【0055】
図8Dに更に示すように、はんだボール接触子11のサイズに応じて、残りの短めのサブフラップ27b、27c、及び27dの少なくともいくつかは、弾力的に元の位置に戻るか、又は反対方向に僅かに曲がって、サブフラップ27aから僅かに間隔をあけた位置ではんだボール接触子11に対抗することができ、従って、長めのサブフラップと短めのサブフラップとの間ではんだボール接触子11を更に安定させ、所定の位置に固定するのに役立つ。それ故に、サブフラップ27a~27dは、はんだボール接触子11の外面上の複数の間隔を空けた位置ではんだボール接触子11に係合するように適合され、その間ではんだボール接触子11を実質的にカップのように覆う。このような設計は、はんだボール接触子11とソケット開口部9との間の干渉を最小にし、適切な保持力の下でソケット開口部9内ではんだボール接触子11を安定させるのに役立つ。サブフラップ27a~27dは、その直径公差のばらつきに応じて、はんだボール接触子11の挿入時に、ソケット開口部9の平面に対して0~90度撓む可能性があることも理解されよう。好ましいシステムにおいて、サブフラップ27a~27bは、はんだボール接触子11の必要な挿入力に等しいか好ましくはそれを超える、必要な引き込み力を確立する。
【0056】
ソケットハウジング7を使用して、DUT13のはんだボール接触子11を、PCB基板の対応する圧縮接触子17にしっかりと係合させて保持することにより、DUT13とメインPCBとの間の電気的接続経路が、実質的に簡素化される。従来技術の片持ち梁型接触子のように、電気的接続を行うために細長く屈曲する片持ち梁アームは必要ない。本構成では、圧縮接触子17の厚さを最小限に抑え(すなわち、~75μm)、PCB基板5の充填ビア15を大幅に短くすることができる。これは、DUT13とメインPCBとの間の全体的な信号経路を、効果的に短縮させる。これにより、従来の片持ち梁型接触子によく見られる信号損失や信号反射が大幅に低減されるだけでなく、50GHzを超える回路の性能速度も大幅に向上することが判明している。
【0057】
更に、本発明の構成では、ハウジング7の各ソケット開口部9に対応する圧縮接触子17及び充填ビア15の双方を、比較的均一な円筒形断面で構成することができる。ここでもまた、従来の片持ち梁型接触子技術とは反対に、この均一な円筒形断面構成は、信号の伝送及び回路の性能速度に著しい改善をもたらす。更に、従来の片持ち梁型接触子では不可能であったインピーダンス整合を目的として、圧縮接触子17及び充填ビア15のサイズを比較的容易に調整及び最適化することも可能である。
【0058】
図9A及び
図9Bに示すように、更に他の代替実施形態では、エラストマー圧縮接触子17を2分の1又は4分の1などの別々のセクションに分割して、柔軟性を高め、はんだボール接触子11に対する押し戻し力を低減することが考えられる。
図9Aの実施形態では、エラストマー圧縮接触子17が、2つの対向する導電性弾性接点部17a及び17bを形成するように、中央で分割されて形成されている。
図9Bでは、エラストマー圧縮接触子17が、4つの間隔を空けたエラストマー圧縮接点部17c、17d、17e、及び17fを形成するように、十字に分割されている。圧縮接触子17は、図示されているように、その本体を完全に貫通して分割されていてもよく、或いは、柔軟性を加え、より大きな把持能力を提供するために、部分的に分割されているだけであってもよい。
【0059】
図9Cに最もよく見られるように、はんだボール接触子11が圧縮接触子17に下向きの力で係合するとき、エラストマー半体17a、17b(
図9A参照)又は4分の1体17c~17f(
図9B参照)は、外側に、はんだボール11の低位置の外周を取り巻いて変形し、従って、ボールを把持し、フルボディのエラストマー圧縮接触子17よりもいくらか小さい押し戻し接続力を提供する。中央の分割により、より大きなゆとりと弛緩が可能になるため、仕様上このような低い接触力を必要とする用途に使用する場合、強制的に押し戻される力が低減される。もちろん、本明細書の発明から逸脱することなく、様々な押し戻し力及び安定化特性を達成するために、エラストマー圧縮接触子17の別の及び追加の構成が確実に考えられる。
【0060】
ソケット本体3は基本的にPCB、すなわちPCB基板5の形態で構成されるため、銅トレースや多層の電源層及び接地層を含むことができ、従来の片持ち型ソケット接触子技術に比べ、更なる利点や改善が得られる。PCBとして、抵抗器やコンデンサ(図示せず)をPCB基板5の内部に埋め込むことができ、このような部品を有利にDUT13の近くに配置することができる。これにより、高性能回路の要求に対して、パワーインテグリティ及び電流速度を向上させることができる。また、テストソケット1のPCB基板にキャパシタンスを埋め込むことで、性能及びEMC(電磁両立性)を向上させるだけでなく、更なる利点が得られる。これにより、組立製品のコスト削減、製造品質の向上、長期信頼性の向上、及びメインPCB全体の小型化が可能になる。
【0061】
PCBとして、PCB基板5の充填ビア15は、所望により同軸構造として構成することもできる。ビア15及び導電性圧縮接触子17の円筒形状のため、各接触子は、PCB基板の内部層にある専用接地層と外部層にあるフラッデッド(flooded)接地層とを使用して、接地シールドで囲まれる信号を形成することができる。ここでも、これは従来の片持ち梁型接触子技術では不可能である。
【0062】
本構造において、導電性圧縮接触子17は、ハウジング7内の対応する各ソケット開口部9の基部に隣接するPCB基板5の各充填ビア15に対して、しっかりと固定されている。そのため、DUT13の挿入時にソケットハウジング7内で傾いたり動いたりすることがなく、従って従来の片持ち梁型接触子に比べて損傷を受け難い。このため、テストソケット1は、損傷や位置ずれの問題を心配することなく、複数のDUTのデイジーチェーン試験に使用し、再利用することができる。更に、本発明のソケット構成は、実装に必要な追加のフットプリントがゼロであり、ソケットハウジング7は、様々な異なるスタイルの集積回路との接続を容易にするために、他の追加の保持機能を含むように完全に適応可能である。
【0063】
本明細書における開示は、本質的に単なる例示であることを意図しており、従って、本開示の要旨を逸脱しない変形は、本開示の範囲内であることを意図している。このような変形は、本明細書に示され、記載され、添付の特許請求の範囲に記載された事項からなる、本開示の精神及び範囲から逸脱するものとはみなされない。
【外国語明細書】