(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043519
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ハイブリッドグラフト化超分岐アニオン交換体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/281 20060101AFI20240322BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20240322BHJP
B01J 20/285 20060101ALI20240322BHJP
B01J 20/288 20060101ALI20240322BHJP
B01D 15/04 20060101ALI20240322BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240322BHJP
B01D 15/20 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B01J20/281 X
G01N30/02 B
B01J20/285 M
B01J20/281 G
B01J20/288
B01D15/04
B01J20/26 L
B01J20/30
B01D15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023149821
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】17/932,840
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エー ポール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ ザティラカ
(72)【発明者】
【氏名】アナ ブランク
(72)【発明者】
【氏名】ジンホワ チェン
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4D017AA01
4D017BA03
4D017BA11
4D017CA13
4D017CA17
4D017CB01
4D017CB10
4D017DA03
4D017EA05
4G066AB13B
4G066AB21B
4G066AC12C
4G066AC14C
4G066AE10B
4G066BA05
4G066BA07
4G066CA11
4G066CA28
4G066CA31
4G066DA07
4G066EA01
4G066FA03
4G066FA07
4G066FA21
(57)【要約】
【課題】アニオンの分離に必要とされる高アルカリ性媒体中での安定性と共に、高効率及び選択性の両方を有するアニオン交換体を提供する。
【解決手段】本発明は、クロマトグラフィ媒体における使用に好適なコーティングされたイオン交換基材及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換クロマトグラフィ充填材料を作製するための方法であって、前記充填材料が、基材粒子に共有結合された縮合ポリマーを含み、前記縮合ポリマーを形成するための方法が、
(a)少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基とを含むモノマーを、極性溶媒中で開始剤と反応させることによって、及び任意選択で、加水分解によってアミノ基に変換することができる任意のペンダント官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を、線状ポリマー生成物上でペンダントアミノ基に変換することによって、ペンダントアミノ基を含む前記線状ポリマー生成物を形成することと、
(b)工程(a)の後の前記線状ポリマー生成物上に存在する前記ペンダントアミノ基を、
(i)前記ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
(ii)前記ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、
第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物を形成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記加水分解によってアミノ基に変換することができるモノマーの官能基、又は前記直接的若しくは間接的にアミンとの反応を介してアミノ基に変換することができる官能基が、アミド、イソシアネート、カルバメート、イソシアヌレート、エポキシド、ハライド、スルフィド、及びトシレートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記線状ポリマー生成物上の前記ペンダントアミノ基が、一級及び/又は二級若しくは三級アミン基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)における前記モノマーが、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、スチレンアミド、アリルアミン、アミノスチレン、及びビニルピリジンモノマーからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材粒子が、好ましくはエチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(EVB-DVB)、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される有機ポリマーを含む表面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも第1の多官能性化合物の前記少なくとも2つの官能性部分が、エポキシド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、トシレート、硫化メチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの官能性部分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも第1の多官能性化合物の前記少なくとも2つの官能性部分が、エポキシド部分を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)(i)又は(c)(ii)を更に含み、工程(c)(i)において、工程(b)(i)のCPRP上の前記未反応の過剰な官能性部分を、少なくとも第2のアミン化合物又は少なくとも第2の多官能性化合物及び少なくとも第2のアミン化合物の両方と、反応させて、第2のCPRPを形成することができ、かつ工程(c)(ii)において、工程(b)(ii)のCPRP上の前記未反応の過剰な官能性部分を、少なくとも第2の多官能性化合物又は少なくとも第2の多官能性化合物及び少なくとも第2のアミン化合物の両方と、反応させて、第2のCPRPを形成することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)(i)又は(ii)を少なくとももう1回繰り返し、外部縮合ポリマー反応生成物上のアミン反応性官能性部分をアミン含有カチオン官能性化合物と反応させて、前記充填材料をカチオン交換基材に変換することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1、第2、又は後の縮合ポリマーが、架橋されている官能基を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1、第2、又は後の縮合ポリマーが、分岐ポリマー鎖を含む官能基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)又は(c)が、(i)前記少なくとも第1の多官能性化合物、又は(ii)前記少なくとも第1の多官能性化合物及び少なくとも第1のアミン化合物を、工程(a)の前記線状ポリマー生成物又は工程(b)(i)若しくは(b)(ii)の前記第1の縮合ポリマー反応生成物を通過させて連続的に流すことによって、フロースルーチャンバ中で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基材が、フロースルーモノリス媒体を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基材が、フロースルー中空管の壁を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
更なるアミン化合物及び/又は多官能性化合物を、工程(b)又は(c)における前記第1又は第2の縮合ポリマー反応生成物からの未反応の過剰アミン化合物部分又は多官能性化合物部分と反応させることを更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)が、基材粒子の存在下で行われる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)又は(b)の前記生成物を、複数の基材粒子と反応させる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングされた粒子が、クロマトグラフィ充填物としての使用に好適な形態で提供される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン交換クロマトグラフィ充填材料が、陰イオン交換クロマトグラフィ充填材料である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法によって形成されたイオン交換クロマトグラフィ充填材料。
【請求項21】
イオン交換クロマトグラフィ充填材料であって、
(i)基材粒子と、
(ii)前記基材粒子に共有結合した基底層であって、
a.少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基と、を含むモノマーを、極性溶媒中で開始剤を用いて重合することによって形成されたペンダントアミノ基を含む線状ポリマーを含む、基底層と、
(iii)前記線状ポリマー上のペンダントアミノを、
i.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
ii.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって形成された第1の縮合反応ポリマー生成物と、を含むイオン交換クロマトグラフィ充填材料。
【請求項22】
前記多官能性化合物の前記2つの官能性部分が、エポキシド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、トシレート、硫化メチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの官能性部分を含む、請求項21に記載の充填材料。
【請求項23】
前記多官能性化合物の前記2つの官能性部分のうちの前記少なくとも1つが、エポキシド部分を含む、請求項22に記載の充填材料。
【請求項24】
前記基材が、好ましくはエチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(EVB-DVB)、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される有機ポリマーを含む表面を有する、請求項21~23のいずれか一項に記載の充填材料。
【請求項25】
前記基材が、フロースルーモノリス媒体又はフロースルー中空管の壁を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の充填材料。
【請求項26】
前記モノマーが、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、スチレンアミド、アリルアミン、アミノスチレン、及びビニルピリジンモノマーからなる群から選択される、請求項21~25のいずれか一項に記載の充填材料。
【請求項27】
前記充填材料が、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を使用して得られる、請求項21~26のいずれか一項に記載の充填材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィ媒体における使用に好適なコーティングされたイオン交換基材及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンクロマトグラフィは、様々な無機及び有機イオンを測定するための強力な技術である。しかしながら、アニオンの分離に必要とされる高アルカリ性媒体中での安定性と共に、高効率及び選択性の両方を有するアニオン交換体を提供することは、依然として課題を提起する。
【0003】
これは、陰イオン交換体によって提供される分離が、基材タイプ、粒径、サイズ分布、固定相の親水性、固定相の含水量及び充填手順を含む様々なパラメータに依存するためである。
【0004】
したがって、高い効率及び選択性の両方を提供する安定なアニオン交換材料に対する必要性が存在する。
【0005】
最近、負に帯電したスルホン化基材表面上に形成された静電結合超分岐機能層を使用するアニオン交換材料が、報告されている(C.Pohl,C.Saini,New developments in the preparation of anion exchange media based on hyperbranched condensation polymers,J.Chromatogr.A1213(2008)37-44など)。
【0006】
しかしながら、このアプローチを超分岐層の共有結合に適用することは困難であり、その理由は、このような層のための結合点として機能し得る任意の他の官能基をスルホン化基材に導入することが困難であるからである。
【0007】
共有結合を利用する際の重要な要素は、共有結合点が、基材の表面上にのみ見出され、表面下の高密度ポリマー内には非常に少ない、好ましくは全く存在しないことを、保証することである。高密度ポリマー相中のイオン交換部位は、不十分な物質輸送をもたらし、より低い効率及び不十分なピーク形状をもたらす。
【0008】
しかしながら、以下で考察されるように、これは達成するのが困難であることが分かっている。
【0009】
例えば、「Anion exchangers with negatively charged functionalities in hyperbranched ion-exchange layers for ion chromatography by Zatirkha et al J.of Chromatography A.1482(2017)pages 57-64」に記載されているように、負に荷電した官能基を含有する共有結合した超分岐官能性イオン交換層を有する新規なPS-DVB系アニオン交換体が得られ、試験されている。しかしながら、これらは、超分岐層のための結合点として使用されるアミノ基が、化学的誘導体化手順によって導入され、したがって粒子の内側及び外側の両方に位置し、カラム性能に悪影響を及ぼすという欠点を有する。
【0010】
「Hyperbranched anion exchangers prepared from polyethylene polyamine modified polymeric substrates for ion chromatography,J of Chromatography A.1655(2021)462508」において、容易なエポキシ-アミン重合法を介して、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミンを含むポリエチレンポリアミンでグラフトされた新規なポリマーアニオン交換体が、報告されている。しかしながら、エポキシド基は残念ながら粒子全体に均一に組み込まれてしまい、やはりカラム性能に悪影響を及ぼす。
【0011】
「Hyperbranched anion exchangers prepared from thiol-ene modified polymeric substrates for suppressed ion chromatography,Talanta 184(2018)pages 491-498」では、アリルメタクリレート-ジビニルベンゼン(allylmethacrylate-divinylbenzene、AMA-DVB)及びエチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(ethylvinylbenzene-divinylbenzene、EVB-DVB)上にシステアミン/システインを固定化するための、チオール-エン反応を介した容易かつ適切な方法が、報告されている。しかしながら、システアミン/システイン部分は最終的に粒子全体に組み込まれ、したがって、カラム効率はむしろ低い。
【0012】
最後に、「Covalent hyperbranched porous carbon nanospheres as a polymeric stationary phase for ion chromatography,Micochimica Acta,(2019)186,139」には、多孔質カーボンナノスフィア(porous carbon nanosphere、PCNS)の共有結合性四級化のための方法、及びイオンクロマトグラフィのためのアニオン交換固定相としてのそれらの適用が、記載されている。しかしながら、ポリアミン層は主に高いpHで加水分解されるアミド結合によって保持されており、その結果、カラム安定性が低下する。
【発明の概要】
【0013】
要約すると、共有結合した基材を使用するカラム充填物は、静電結合した基材よりも効率が低く、調製がより困難であることが見出されている。
【0014】
本明細書中の明らかに以前に公開された文書のリスト又は考察は、必ずしも、その文書が最新技術の一部であること、又は共通の一般知識であることを承認するものとみなされるべきではない。
【0015】
クロマトグラフィ選択性は、基材の特性によって影響されるだけでなく、機能層の構造及び基材へのその結合の方式にも依存するので、イオン分離のための更なる選択肢を提供するために、機能層が基材に共有結合される超分岐アニオン交換材料を提供することが有利である。
【0016】
本発明は、N-ビニルホルムアミドの使用などの高極性モノマーを使用して、基材上に共有結合したポリマーを形成することによって、上記の問題の少なくともいくつかを解決しようとするものであり、ポリマーは、アンモニア、一級及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含むアミン化合物、並びに/又は一級及び/若しくは二級アミン基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する多官能性化合物などの超分岐基材と、更に反応することができるペンダントアミノ基を有する。
【0017】
したがって、本発明は、イオン交換クロマトグラフィ充填材料を作製するための方法を提供し、充填材料が、基材粒子に共有結合された縮合ポリマーを含み、縮合ポリマーを形成するための方法が、
(a)少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基とを含む(少なくとも)モノマーを、極性溶媒中で開始剤と反応させることによって、及び任意選択で、加水分解によってアミノ基に変換することができる任意のペンダント官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を、線状ポリマー生成物上でペンダントアミノ基に変換することによって、ペンダントアミノ基を含む線状ポリマー生成物を形成することと、
(b)工程(a)の後の線状ポリマー生成物上に存在するペンダントアミノ基を、
(i)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
(ii)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、
第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物を形成することと、を含み得る。
【0018】
以下、この方法を、本発明の方法と称する。
【0019】
工程(a)において、ペンダントアミノ基を含む線状ポリマー生成物が形成される。この生成物は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応によって直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基と、を含むモノマーを、極性溶媒中で開始剤を用いて、反応させることによって、ペンダント官能基を含む線状ポリマー生成物を形成することによって形成される。ペンダント官能基は、工程(a)で使用されるモノマーに依存することになる。モノマーがアミノ基を含む場合、ペンダント官能基はペンダントアミノ基を含み、生成物をいかなる追加の改変もなしに使用することができる。しかしながら、モノマーが、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を含む場合、ポリマー生成物は、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基をアミノ基に変換する追加の工程を受けることになる。
【0020】
線状ポリマー生成物上のペンダント基は、ペンダントアミノ基のみを含んでもよく(例えば、線状ポリマー生成物上のペンダント基は、ペンダントアミノ基からなってもよく、又は本質的にそれからなってもよい)、あるいはペンダント基は、ペンダントアミノ基と、加水分解によってアミノ基に変換することができるペンダント官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基との混合物を含んでもよい。好ましい態様では、線状ポリマー生成物上のペンダント基は、アミノ基からなり得る。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「アミノ基」は、一級、二級、又は三級アミン基を含むことが意図される。本発明の一態様において、「アミノ」は、一級及び二級アミン、又は一級アミンのみを含み得る。アミノ基は、単一であっても多官能性であってもよく、すなわち、アミノ基は、単一の一級、二級、若しくは三級アミン基を含んでもよく、又は2つ若しくは3つの一級、二級、若しくは三級アミン基などの1つより多くの一級、二級、若しくは三級アミン基を含んでもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基」は、水(酸性溶液又は塩基性溶液)と反応した場合に、一級アミン基、二級アミン基、又は三級アミン基を提供する基を含むことが意図される。例えば、アミド基。
【0023】
本明細書で使用される場合、「直接的又は間接的にアミンとの反応を介してアミノ基に変換することができる官能基」は、アミン基と反応した場合に一級、二級、又は三級アミン基を形成する基を含むことが意図される。例えば、ハロアルカンの求核置換又は還元的アミノ化による。
【0024】
本発明の一態様において、工程(a)においてアミノ基に変換することができる官能基は、ヒドロキシル基を含まなくてもよい。
【0025】
加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を含むモノマーの例としては、アミド(例えば、N-ビニルホルムアミド又はスチレンアミド)、イソシアネート(例えば、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート又は3-イソプロペニル-ジメチルベンジルイソシアネート)、カルバメート、イソシアヌレート、エポキシド、ハライド、スルフィド、及びトシレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
工程(a)において使用され得る好ましいモノマーとしては、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、スチレンアミド、アリルアミン、アミノスチレン、及びビニルピリジンモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
工程(a)で使用されるモノマーは、好ましくは極性モノマー、好ましくは高極性モノマーであってもよい。
【0028】
極性モノマー又は高極性モノマーとは、モノマーが、使用される基材に不溶性又は実質的に不溶性であることを意味する。すなわち、モノマーは基材に溶解しない(又はわずかに溶解するのみである)。基材は、以下により詳細に定義される。
【0029】
工程(a)で使用されるモノマーは、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、上で定義した少なくとも1つの官能基とを含む。例えば、モノマーは、1つ、2つ、3つ以上の不飽和結合及び/又は1つ、2つ、3つ以上の官能基を含んでもよい。
【0030】
本発明の一態様において、モノマーは、メチルアクリレート系モノマーを含まなくてもよい。
【0031】
工程(a)で使用されるモノマーは、同じタイプであっても異なっていてもよい。例えば、同じ官能基を含む単一タイプのモノマーが使用されてもよく、すなわち、モノマーは同じアミノ基を含有してもよい。代替的に、少なくとも1つのモノマーが、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及び直接的又は間接的にアミンとの反応を介してアミノ基に変換することができる官能基から選択される異なる官能基を含む、2つ以上のタイプのモノマーが使用されてもよい。例えば、2つ、3つ、4つ又は5つの異なるモノマーの組み合わせを使用することができ、少なくとも1つは、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及び直接的又は間接的にアミンとの反応によってアミノ基に変換することができる官能基から選択される官能基を含む。
【0032】
開始剤と反応すると、工程(a)で使用されるモノマーは、アミノ基、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及び/又は直接的若しくは間接的にアミンとの反応を介してアミノ基に変換することができる官能基から選択されるペンダント官能基を含む線状ポリマー生成物を形成する。
【0033】
線状ポリマーの形成は、それが後の超分岐工程を助け、鎖中の全てのアミノ基で超分岐構造の基礎を提供する一方で、鎖間の架橋のための機構を提供し、更に架橋制御を増強するので重要である。
【0034】
開始剤は、熱重合開始剤であってもよく、又は光重合開始剤であってもよい。開始剤は、AIBN(2,2’-Azobisisobutyronitrile、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride、[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩及びACVA(4,4’-Azobis、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などの熱重合開始剤であることが、好ましい場合がある。
【0035】
極性溶媒は、重合反応において典型的に使用される任意の極性溶媒であり得る。例えば、極性溶媒は、カーボネート、アルコール、エチレングリコール、ホルムアミド、アセトアミド、及びDMSOから選択することができる。
【0036】
線状ポリマー生成物上のペンダント官能基が、加水分解によってアミノ基に変換することができるもの、又は直接的若しくは間接的にアミンとの反応を介してアミノ基に変換することができるものを含む場合、工程(a)は、ペンダントアミノ基を含む線状ポリマー生成物を提供するために、これらの官能基をアミノ基に変換することを含む。官能基がどのように変換されるかは、存在する官能基に依存することになる。例えば、アミド基は、任意の好適な加水分解反応を使用して加水分解され得る。例えば、アミド含有線状ポリマー生成物を酸又はアルカリ水溶液と共に加熱する。このような方法は、当業者に既知である。
【0037】
工程(a)の後に形成された線状ポリマー生成物は、最終的に基材粒子に結合しているので、「基底層」と称され得る。例えば、それは、工程(a)中に基材粒子に結合され得る。代替的に、ポリマーは、基材粒子の不在下で形成されてもよく、次いで、水素引き抜き法を使用して続いて結合され得る。基材粒子の存在下で基底層を形成することは、典型的には、最大鎖密度をもたらし、したがって、本発明の一態様では、基材粒子の存在下で線状ポリマー生成物を形成することが好ましい場合がある。
【0038】
基底層は、それが取り付けられる基材を必ずしも完全に被覆又はコーティングする必要はないことに留意すべきである。しかしながら、基底層が基材を完全に被覆又はコーティングすることが好ましい場合がある。被覆又はコーティングは、線状ポリマー生成物と共有結合を形成した基材上に存在する官能基の数に依存し得る。
【0039】
上記のように、工程(a)は、基材粒子の存在下で行われてもよい。工程(a)が基材粒子の存在下で行われる場合、共有結合は、この工程中に形成され、工程(a)又は(b)の生成物を更なる基材粒子と反応させる必要はない。
【0040】
例えば、イオン交換クロマトグラフィ充填材料を作製するための方法は、
(a)生成物が基材粒子に共有結合し、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基とを含む(少なくとも)モノマーを、極性溶媒中で基材粒子の存在下で開始剤と反応させることによって、及び任意選択で、加水分解によってアミノ基に変換することができる任意のペンダント官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を、線状ポリマー生成物上でペンダントアミノ基に変換することによって、ペンダントアミノ基を含む線状ポリマー生成物を形成することと、
(b)工程(a)の後の線状ポリマー生成物上に存在するペンダントアミノ基を、
(i)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
(ii)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級、及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、
第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物を形成することと、を含み得る。
【0041】
代替的に、工程(a)又は(b)の生成物を基材粒子と反応させて、粒子と工程(a)の生成物又は工程(b)の生成物との間に、共有結合を形成してもよい。上記のように工程(a)において基材が存在しない場合。
【0042】
例えば、イオン交換クロマトグラフィ充填材料を作製するための方法は、
(a)少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基とを含む(少なくとも)モノマーを、極性溶媒中で開始剤と反応させることによって、及び任意選択で、加水分解によってアミノ基に変換することができる任意のペンダント官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を、線状ポリマー生成物上でペンダントアミノ基に変換することによって、ペンダントアミノ基を含む線状ポリマー生成物を形成することと、
(i)工程(a)の生成物を基材粒子と反応させて、線状ポリマー生成物と基材との間に共有結合を形成することと、
(b)工程(a)の後の線状ポリマー生成物上に存在するペンダントアミノ基を、
(i)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
(ii)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級、及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、
第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物を形成することと、を含み得る。
【0043】
代替的に、イオン交換クロマトグラフィ充填材料を作製するための方法は、
(a)少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基とを含む(少なくとも)モノマーを、極性溶媒中で開始剤と反応させることによって、及び任意選択で、加水分解によってアミノ基に変換することができる任意のペンダント官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を、線状ポリマー生成物上でペンダントアミノ基に変換することによって、ペンダントアミノ基を含む線状ポリマー生成物を形成することと、
(b)工程(a)の後の線状ポリマー生成物上に存在するペンダントアミノ基を、
(i)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
(ii)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級、及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、
第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物を形成し、工程(b)(i)又は(ii)の生成物を基材粒子と反応させて、工程(b)(i)又は(ii)の生成物と基材との間に共有結合を形成することと、を含む。
【0044】
基材粒子は、有機ポリマーを含む表面を有する。本発明の方法の工程(a)で使用されるモノマーは、基材粒子中に不溶性又は実質的に不溶性である。例えば、粒子の表面上の有機ポリマーに不溶性又は実質的に不溶性である。
【0045】
「表面」という用語は、基材の残りの部分と同じ化学組成の基材の表面と、異なる化学組成の支持基材上の表面層を有する表面との両方を包含する。したがって、有機ポリマー表面は、基材粒子全体を含んでいてもよく、又は無機酸化物で作られたものなどの別の材料で形成され得る基材粒子の上面のみを含んでいてもよい。代替的に、基材粒子は、その表面上に無機材料(例えば、無機酸化物(例えば、シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、及び溶融シリカ)から作製されるものなどを含み得る。
【0046】
好適な基材粒子は、クロマトグラフィ粒子の充填床などの様々な市販のクロマトグラフィ媒体を含むことができ、好適に誘導体化された管及び表面を活性化するための単純な塩基加水分解処理後に使用することができる溶融シリカキャピラリを含む多くの他の形式も含むことができる。したがって、「基材粒子」という用語は、別段の指定がない限り、1つ以上の基材を包含する。更に、生物学的アッセイにおいて一般的に用いられる「チップ」及びアレイのような平面材料に基づく製品もまた、基材として用いられ得る。後者の場合、表面は、上記のような複数の層の適用によって改変され得るか、又はゲル形成試薬混合物の1つ以上の層が、生物学的分子のための結合部位を形成するために表面に適用され得る。
【0047】
好適な基材粒子としては、エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(EVB-DVB)、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、及びポリビニルアルコール(PVA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
共有結合は、粒子上の遊離二重結合と線状ポリマー生成物との間にある。
【0049】
本発明の一態様において、使用される基材粒子は、スルホン化されていないか、又は負に帯電していない。
【0050】
基材対モノマーの重量比は、約10:0.5~約2.5:2.5、例えば約3:1であってもよい。
【0051】
本発明の方法の工程(b)において、線状ポリマー生成物上に存在するペンダントアミノ基は、(i)一級及び/又は二級アミン基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は(ii)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級、及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と反応して、第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物(CPRP)を形成する。
【0052】
工程(b)における反応は、過剰の未反応(したがって反応性)官能性部分を提供するために行われる。これらは、第1のCPRP中の多官能性化合物上の未反応部分又はアミン化合物上の未反応部分であってもよい。「未反応」とは、官能性部分の1つ以上が未反応であること、例えば縮合反応に関与しておらず、したがって依然として反応性であることを意味する。
【0053】
少なくとも第1の多官能性化合物は、第1、第2以上の数のCPRP層を形成する基底層又は後のアミン化合物中のアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を含む。多官能性化合物中の好適な官能性部分としては、エポキシド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、トシレート、硫化メチル、及びこれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0054】
好適なエポキシドとしては、ブタジエンジエポキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、及び市販のエポキシ配合物において一般的に使用されるエポキシ樹脂を含む2つ以上のエポキシ基を含有する多数の他の化合物が、挙げられる。好適なハロゲン化アルキルとしては、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ジクロロブタン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、ジブロモブタン、並びに多数の他のハロゲン化アルキルが挙げられる。好適なハロゲン化ベンジルとしては、アルファ-ジブロモキシレン及びアルファ,アルファ-ジブロモキシレン、並びに多数の他のハロゲン化ベンジルが挙げられる。好適なトシレートとしては、エチレングリコールジトシレート、ジエチレングリコールジトシレート、並びに様々な他の脂肪族又は芳香族ポリオールのトシレートが挙げられる。好適なメチルスルフィドとしては、1,3-ビス(メチルチオ)プロパン及び1,4-ビス(メチルチオ)ブタン、並びに多数の他のポリメチルスルフィドが挙げられる。本発明のための多官能性化合物は、好ましくは、ポリマーを含む化合物中のモノエポキシド化合物、ジエポキシド化合物及び/又はポリエポキシド部分を含むように定義されるエポキシド多官能性部分を含む。
【0055】
多官能性化合物のサイズは、例えば、87未満の分子量を有する単純な非ポリマー化合物から、234~10,000の分子量を有する小さなポリマー化合物までの広い範囲にわたって変化し得る。好ましくは、多官能性化合物は水溶性であり、ポリオールのグリシジルエーテルからなるか、又はポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールなどの親水性ポリマーに結合したグリシジルエーテルを含有するか、又はグリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテルなどの3つ全ての組み合わせである。
【0056】
多官能性アミン又は多官能性エポキシドのいずれかと縮合ポリマーを形成することができる他の多官能性試薬も、アミンと反応するのに好適な材料若しくはエポキシドと反応するのに好適な材料と共に、又はその代わりに使用することができる。多官能性アミンと反応させるための好適な代替の多官能性試薬としては、2-メチル-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、塩化シアヌル、及び多官能性酸塩化物(例えば、ジメチルアジピミデートジヒドロクロリド)が挙げられる。多官能性エポキシドと反応させるための好適な代替多官能性試薬としては、多官能性チオールなどの化合物が挙げられる。好ましくは、好適な試薬はまた、水ベースの合成方法を容易にするために水溶性である。
【0057】
少なくとも第1のアミン化合物は、アンモニア、一級、及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む。少なくとも第1のアミノ化合物は、追加のアミン基を含んでもよく、一級及び二級アミンの両方、並びに三級アミンを含んでもよい。
【0058】
一級アミン型の好適なアミノ基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、アミルアミン、tert-アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-1-ブタノール、並びに追加の極性及び/若しくは親水性置換基を有するか又は有さない多数の他の一級アミンが挙げられる。
【0059】
二級アミン型の好適なアミノ基としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジ-tert-アミルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、モルホリン、並びに追加の極性及び/若しくは親水性置換基を有するか又は有さない多数の他の二級アミンが挙げられる。
【0060】
好適なアミン化合物としては、脂肪族ジアミン、例えばエチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、芳香族ベンジルジアミン、例えばm-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、脂肪族ポリアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及び高級ポリマー類似体、並びに単一化合物中に複数の一級、二級及び/又は三級アミン基を含有する様々な他の構造が挙げられる。
【0061】
一級アミン及び二級アミンの両方は、それらが各々、以下に記載されるように、多官能性基と反応してCPRPを形成することができる少なくとも2つの官能基を含むという点で、本質的に多官能性である。アミン化合物のサイズは、例えば、17未満の分子量を有する単純な非ポリマー化合物から、200~10,000の分子量を有する小さなポリマー化合物までの広い範囲にわたって変化し得る。好ましくは、アミン化合物中の各アミノ基は、各アミノ基に対する良好な反応性を達成するために、各アミノ基間の結合中に少なくとも3個の原子を有するべきであるが、ポリエチレンイミン及びn-ビニルホルムアミドポリマーの加水分解から誘導されるポリアミンなどのポリマー種も本発明において有用である。
【0062】
工程(b)において、大過剰の少なくとも第1の多官能性化合物又は少なくとも第1の多官能性化合物及び少なくとも第1のアミン化合物を使用することができる。
【0063】
工程(b)で使用される化合物は、唯一のアミン化合物としての第1のアミン化合物及び唯一の多官能性化合物としての第1の多官能性化合物を含んでもよい。代替的に、それは、第1のアミン化合物と1つ以上の追加のアミン化合物との混合物を含むことができる。更に、それは、第1の多官能性化合物を単独で第1若しくは追加のアミン化合物と共に含むことができるか、又は第1の多官能性化合物と1つ以上の追加の多官能性化合物との混合物を含んでもよい。このようにして、各縮合ポリマー反応生成物は、所望の官能基を含むように調整することができる。
【0064】
更に、各アミン化合物中のアミノ基及び多官能性化合物中の2つの官能性部分は、互いに同じであっても異なっていてもよい。例えば、第1のアミン化合物は、少なくとも一級アミン基のみ、二級アミン基のみ、1つ以上の一級及び/又は二級基などを含んでもよい。同様に、第1の多官能性化合物は、同じタイプ又は異なるタイプのアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を含むことができ、加えて、2つより多くの官能性部分を含むことができる。
【0065】
第1のCPRPの未反応の過剰な官能性部分を更なる多官能性化合物及び/又はアミン化合物と反応させることによって、工程(b)の後に連続CPRPを形成することができる。後のCPRPを形成するために使用される化合物は、前のCPRP上に存在する非反応性部分に依存することになる。例えば、第1のCPRPが工程(b)(i)を介して形成される場合、その後のCPRPは、過剰のアミン化合物又は過剰の多官能性化合物及びアミン化合物の両方を使用して、形成され得る。代替的に、第1のCPRPが工程(b)(ii)によって形成される場合、その後のCPRPは、過剰の多官能性化合物又は過剰の多官能性化合物及びアミン化合物の両方を使用して形成され得る。
【0066】
したがって、方法は、工程(b)(i)のCPRP上の未反応の過剰な官能性部分を、(過剰な)少なくとも第2のアミン化合物又は(過剰な)少なくとも第2の多官能性化合物及び少なくとも第2のアミン化合物の両方と反応させて第2のCPRPを形成する工程(c)(i)、又は工程(b)(ii)のCPRP上の未反応の過剰な官能性部分を、(過剰な)少なくとも第2の多官能性化合物又は(過剰な)少なくとも第2の多官能性化合物及び少なくとも第2のアミン化合物の両方と反応させて第2のCPRPを形成する工程(c)(ii)を含み得る。
【0067】
このようにして、多官能性化合物及びアミン化合物を逐次的に又はワンポットで添加して、連続的なCPRPを形成することができる。
【0068】
このプロセスは、典型的には基材粒子上の完全なコーティングの形態で、最終生成物に対して所望の特性を達成するために、所望の回数繰り返すことができる。
【0069】
工程(c)(i)又は(ii)、及び存在する場合にはその後の任意の繰り返しを参照すると、少なくとも第2のアミン化合物又は第2の多官能性化合物を、第1のアミン化合物及び第1の多官能性化合物と類似の様式で特徴付けることができる。したがって、第2のアミン化合物は、1つ以上の追加のアミン化合物との混合物であってもよく、第2のアミン化合物中に1つ以上の一級及び/又は二級アミン基を含んでもよい。
【0070】
工程(c)(i)又は(ii)における「第2のアミン化合物」及び「第2の多官能性化合物」という用語は、工程(c)(i)又は(ii)が工程(b)の後に起こることを示すために使用されることに留意すべきである。しかしながら、用語「第2のアミン化合物」の意味は、第1のアミン化合物と同じか又は異なるアミン化合物を包含する。同様に、「第2の多官能性化合物」という用語は、第1の多官能性化合物と同じか又は異なる第2の多官能性化合物を包含する。
【0071】
上記の方法を使用して、コーティングが少なくとも第1のCPRPを含むコーティングされたイオン交換基材が、形成される。第1のCPRPは、工程(a)で形成された線状ポリマーを介して支持基材粒子の表面に共有結合しており、前述のタイプの少なくとも第1のアミン化合物及び/又は第1のアミン化合物のアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物を含む。第1のアミン化合物又は第1の多官能性化合物と第2のアミン化合物又は第2の多官能性化合物との反応生成物を含む第2のCPRPが形成される。この生成物は、少なくとも第1及び第2のCPRP、加えて、上記のように第2のCPRPとの逐次反応において形成される第3又は任意の後のCPRPを包含する。
【0072】
反応工程(c)は、任意の所望の回数繰り返すことができる。上記プロセスのいずれの時点においても、縮合ポリマー反応生成物の外層は、アミン基のカチオン官能性を有する。この反応の生成物は、更に改変することなくこの形態で直接使用することができる。この場合、この反応の生成物は、いくつかの分離に有利であり得る強塩基アニオン交換部位及び弱塩基アニオン交換部位の両方を含むことになる。
【0073】
しかしながら、強塩基アニオン交換部位は、三級アミン基を含むキャッピング化合物と反応させることによるキャッピング反応によって縮合ポリマーの外層に導入されてもよい。このようにして、反応はキャッピングされるか又は停止され、イオン交換コーティングは、基材がクロマトグラフィカラムなどのためのアニオン交換充填物の形態で使用される場合のように、アニオンの分離のために従来使用される非常に増加した数の四級アミンを含む。
【0074】
コーティングされたイオン交換基材は、コーティングされた基材の外面上の過剰なアミン反応性官能基をアミン含有カチオン官能性化合物と反応させて、基材をカチオン交換基材に変換することによって、カチオン交換基材に変換することができる。上記のように、1つの好ましい実施形態において、基材は、粒子の形態の複数の基材を含み、コーティングされた粒子は、クロマトグラフィ分離のためなどのイオン交換充填粒子を含む。好適なアミン含有カチオン官能基としては、スルホン酸、ホスホン酸、及びカルボン酸、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、好適なアミン含有カチオン官能性化合物は、カチオン官能基の総数が先に形成されたアニオン交換部位の数を超えるように、2つ以上のカチオン官能基を含む。好適な化合物としては、γ-カルボキシグルタミン酸、ニトリロ三酢酸、3,3’,3”-ニトリロ三プロピオン酸、N-(2-カルボキシエチル)イミノ二酢酸、N-(ホスホノメチル)グリシン、2-アミノ-3-ホスホノプロピオン酸、イミノジ(メチルホスホン酸)、2-アミノエチルホスホン酸、ピペラジンー1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、ホモシステイン酸、及び2-アミノ-3-スルホプロピオン酸、並びに多数の他のアミン含有カチオン官能性化合物が挙げられる。
【0075】
コーティングされたイオン交換基材は、コーティングされた基材の外面上の過剰なアミン官能基をカチオン官能性化合物と反応させて、基材をカチオン交換基材に変換することによって、カチオン交換基材に変換することができる。上記のように、1つの好ましい実施形態において、基材は、粒子の形態の複数の基材を含み、コーティングされた粒子は、クロマトグラフィ分離のためなどのイオン交換充填粒子を含む。好適なカチオン官能基としては、スルホン酸、ホスホン酸、及びカルボン酸が挙げられる。好適なカチオン官能性化合物としては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、クロロプロピオン酸、ブロモプロピオン酸、2-クロロエタンスルホン酸ナトリウム、2-ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、又は1,4-ブタンスルトンが挙げられる。ホスホン酸カチオン官能基は、五塩化リン又はオキシ臭化リンなどの好適な試薬を使用して導入され、続いて加水分解することができる。
【0076】
縮合ポリマー官能基の1つ以上は、分岐及び/又は架橋されていてもよい。例えば、第2、第3以上のCPRPは、試薬を適切に選択することによって、試薬を選択することによって、及び試薬の比率を調節することによって、並びに以下に記載するアミン化合物及び多官能性化合物の一方又は他方を過剰にすることによって、分岐及び架橋することができる。
【0077】
例えば、工程(c)(i)又は(ii)の「第2のCPRP」は、多官能性アミン及び多官能性エポキシド化合物の混合物を使用して調製することができる。この層の組成を、混合物が「第2のCPRP」の適用条件下でゲルを生成しないように、調整することができる。例えば、メチルアミン(合計3つのエポキシ基と反応して四級イオン交換部位を形成することができる三官能性アミン)は、好ましくは、水溶性ジエポキシド(二官能性エポキシド)、好ましい実施形態ではブタンジオールジグリシジルエーテルと組み合わされる。これらの2つの成分が、2モルのメチルアミン対3モルのブタンジオールジグリシジルエーテルの比で組み合わされる場合、それらはそれらの官能性を補完する化学量論で一緒に組み合わされるので、それらは架橋ゲルを形成する傾向がある。スラリーモード又はフロースルー「充填カラム」モードのいずれかにおけるこのような反応混合物は、前者の場合、ゲル化が、液体クロマトグラフィにおける使用に好適でない安定なゲル中に懸濁された基材粒子を生じ、後者の場合、非常に高い圧力の発生を生じ、試薬を送達する手段としてのポンプの使用を排除し、材料を液体クロマトグラフィにおける使用に好適でないという点で、望ましくない場合がある。代わりに、ゲルが形成されないように(好ましくは、ゲル化可能な組成物を使用せずにゲル化可能な組成物に近い組成物を使用して)2つの試薬の比を調整する場合、溶液は、ゲル化の高圧特性を経験することなく「充填カラム」を通過することができる。更に、コーティング厚さは、この溶液がカラムを通過するにつれて増加し続けることになる。
【0078】
有用な「CPRPコーティング」、例えば第1の及び/又は第2の及び/又は後のCPRPコーティングなどの有用な「CPRPコーティング」は、1:1のモル比の好ましい試薬を使用しながら、試薬を工程(a)又は(b)の生成物の存在下で、65℃で1時間反応させることによって達成することができる。この組成物を使用することにより、工程(a)の生成物又は工程(b)(i)若しくは(b)(ii)の生成物上に、後のCPRPが形成される場合、大部分が線状CPRPを形成することが可能になる。
【0079】
この組成物を用いて形成される縮合ポリマーは、これらの条件下でアミン反応物が試薬の官能性に関して過剰であるため、かなりの数の反応性アミン部位を含有する。したがって、メチルアミン(三官能性試薬)及びブタンジオールジグリシジルエーテル(二官能性試薬)を1:1の比で組み合わせる場合、ポリマーは、平均して2つのブタンジオールジグリシジルエーテル試薬が各メチルアミン試薬に結合して形成され、大部分が線状ポリマーを形成し、得られるポリマーは主に、ポリマー鎖中で交互になっているアミン基及びブタンジオールジグリシジルエーテル基を有する交互ポリマーである。このようにして形成された全てのアミン基の大部分は、「CPRP」調製工程の完了時に三級であるが、この時点でのアミン基の一部は四級であり、アミン基の一部は二級である。これらの三級アミン基(並びに二級アミン基)は、更なる反応に依然として利用可能であり、各反応部位で四級部位を形成する。したがって、「第1のCPRP」又は「第2のCPRP」などの「CPRP」は、多官能性エポキシドによる後の処理のために利用可能である。
【0080】
本発明の方法の一態様において、工程(a)からの「線状ポリマー生成物」は、その後、大過剰(例えば、50~200%)の多官能性エポキシド(多官能性化合物)、好ましくはブタンジオールジグリシジルエーテルと反応させることができる。大過剰の多官能性エポキシドを利用することによって、「線状ポリマー生成物」は、ここでペンダント未反応エポキシド基で修飾される。大過剰(例えば、50~200%)の多官能性エポキシドで処理した後、次いで、基材を大過剰の多官能性アミン(アミン化合物)、好ましくはメチルアミンで処理することができる。これにより、2つの残留反応部位を有するアミン官能基を含有するペンダント基で修飾された表面が残る。
【0081】
大過剰の多官能性エポキシドを使用し、続いて大過剰の多官能性アミンを使用するサイクルを繰り返すと、分岐点に四級部位を有する全てのアミンに分岐点が生じる。理論的には、ブタンジオールジグリシジルエーテル及びメチルアミンを使用し、反応を交互に行うことにより、各層の分岐数が倍増する。この方法を利用することによって、サイクルを好適な回数(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8回以上)繰り返すことによって、非常に高い容量を達成することができる。実際には、分岐が増加するにつれて、分岐が一緒に架橋される確率も増加するので、状況はこれよりも著しく複雑である。したがって、好ましい実施形態を使用して生成される材料は、サイクル数が増加するにつれて増加する量の架橋を有する傾向がある(利用される試薬のうちの少なくとも1つが官能価>2を有すると仮定する)。しかしながら、層が二官能性アミン及び二官能性エポキシドの両方で交互にされる場合、鎖成長は主に線状であり、架橋副反応は大きく減少する。
【0082】
この反応化学における更なる可能性のある複雑さは、エポキシドが塩基触媒重合を受ける傾向である。この合成戦略を使用する縮合ポリマーは、水酸化物形態であるので、それらは、いくつかの条件下で、任意のアミンの不在下で多官能性エポキシモノマーの重合を誘導し得る。最終的な縮合ポリマーは、表面の修飾も行うこの重合副反応を介して形成されたポリエポキシドの画分を含有する可能性がある。これらの追加の反応経路の存在は、結合コーティングされた実施例において提供される例が示すように、それ自体で本方法の有用性を限定しない。有用な組成物は、各層中のアミン若しくはエポキシドのいずれか又は両方の性質を変化させることを含む異なる組み合わせを変えることによって、又は各層中のアミン若しくはエポキシドのいずれかの組み合わせを利用することによって作製することができる。
【0083】
特定の態様では、本発明は、イオン交換クロマトグラフィ充填材料を作製するための方法を提供し、充填材料が、基材粒子に共有結合された縮合ポリマーを含み、縮合ポリマーを形成するための方法が、
(a)極性溶媒中で、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、スチレンアミド、アリルアミン、アミノスチレン、及びビニルピリジンモノマーからなる群から選択される(少なくとも)モノマーを、極性溶媒中で、エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(EVB-DVB)、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、及びポリビニルアルコール(polyvinylalcohol、PVA)からなる群から選択される基材粒子の存在下で開始剤と反応させることによって、ペンダントアミド基をペンダントアミノ基に変換することによって、ペンダントアミノ基を含む線状ポリマー生成物を形成することと、
(b)工程(a)の後の線状ポリマー生成物上に存在するペンダントアミノ基を、
(i)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する、少なくとも第1の多官能性エポキシド化合物(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、又は
(ii)ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性エポキシド化合物(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、並びにアンモニア、一級、及び二級アミン(メチルアミンなど)からなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、
第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物を形成することと、を含み得る。
【0084】
正確な条件は、多官能性エポキシモノマー及び多官能性アミンの所定の混合物がゲル形成を生じるのに必要な濃度、温度及び時間に関して変化し得るが、以下に、この工程中のゲル形成を防止するために、「第1のCPRP」又は「第2のCPRP」の調製に好適な可能な方法論が示される。
【0085】
エポキシモノマーを使用して、水酸化物選択性材料を製造することができる。水酸化物選択性は、各アニオン交換部位の四級中心付近に位置するヒドロキシル官能基を必要とする。
【0086】
エポキシモノマーは、エポキシドとアミンとの反応の副生成物としてこのようなヒドロキシル基を提供する。したがって、このような縮合ポリマーは、水酸化物選択性アニオン交換相を製造するのに特に有用である。しかしながら、これは本発明の有用性をエポキシモノマー及びアミンに限定するものではない。実際、類似の縮合ポリマーは、例えば多官能性ハロゲン化アルキルを多官能性アミンと共に使用して製造することもできる。このような縮合ポリマーは、水酸化物選択的ではないが、それでもアニオン交換相の調製に有用である。
【0087】
上記のように、ゲル形成をもたらす条件は一般に回避されるべきであるが、特にスラリーグラフト化の場合、有用な合成方法は、曝露時間が反応混合物のゲル化時間より短くなるように、基材の反応混合物への曝露時間を単に減少させることによって最終的にゲル形成をもたらす組み合わせの使用を含む。
【0088】
本発明の1つの有用な態様において、このような溶液を工程(a)の基材又は生成物の充填床に通すことは、基材表面又は生成物へのグラフトを生じるだけでなく、充填カラム中の個々の粒子の結合も生じて、粒子ベースのモノリスを形成する。適切な条件を選択することによって、得られたモノリスは、それが形成されたカラム本体から除去することができる。ポリマーは一般に重合が進行するにつれて常に収縮するので、カラム内容物はカラム壁から離れて収縮し、カラムハードウェアからモノリスを除去することを可能にする。得られたモノリスは、十分に水和された場合、一般に可撓性である。モノリスを乾燥させ、それを好適な寸法のカラムハードウェアに再挿入することによって、得られたモノリスをクロマトグラフィ分離に利用することができる。
【0089】
また、本発明によれば、大量の粒子を床に充填し、大きなフロースルーカラムでコーティングし、充填されたより小さな分析カラムの供給物として大量に除去することができる。
【0090】
本発明の方法はメチルアミンを利用することができるが、上述したように、単純なジアミン、トリアミン、及び高級ポリアミンを含む多種多様な代替多官能性アミンも本発明に好適である。ポリマー成長工程の伝播は、アミンが少なくとも2つの利用可能な反応部位を含有することを必要とする。ポリマー成長の停止は、三級アミン含有化合物を用いる最終反応工程によって達成され得るか、又は反応は、このような停止反応なしで終了され得る。
【0091】
本発明の利点は、縮合ポリマーが、工程(a)の基材又は生成物で充填されたカラムに適用される場合、コーティングプロセスがカラム評価のために中断されることがあり、次いでプロセスが再開され得ることである。しかしながら、エポキシドはアルカリ性条件下で加水分解を受けるので、多官能性エポキシ含有試薬との反応直後ではなく多官能性アミン含有試薬との反応後に、反応を中断することが一般に好ましい。同様に、好ましい多官能性エポキシドは、ブタンジオールジグリシジルエーテルであるが、多種多様な多官能性エポキシドを本発明において使用することができる。理想的には、多官能性エポキシドは、水性条件下で縮合ポリマーの形成を容易にするために水溶性であるべきであるが、利用可能な多数の多官能性エポキシドのいずれかをこの目的のために使用することができる。更に、容易に入手できない多種多様なポリグリシジル試薬を、標準的な合成方法を使用して容易に合成することができる。縮合ポリマーの現場でのカラム調製は、異なる処方物を迅速に評価する便利な方式であるが、現場でのカラム調製は、一般的に、バッチ合成ほど効率的ではない。しかしながら、スラリーグラフト化技術又は好ましくは大型充填床反応器のいずれかを利用することによって、最適なコーティング化学をより大規模なバッチプロセスに容易に移すことができる。
【0092】
一般的には、エポキシドとアミンは、以下に示すように反応する。
【0093】
【0094】
また、本発明は、イオン交換クロマトグラフィ充填材料を提供し、
(i)基材粒子と、
(ii)基材粒子に共有結合した基底層であって、
a.少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換され得る官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換され得る官能基から選択される少なくとも1つの官能基と、を含む(少なくとも)モノマーを、極性溶媒中で開始剤を用いて、重合することによって形成されたペンダントアミノ基を含む線状ポリマーを含む、基底層と、
(iii)線状ポリマー上のペンダントアミノを
i.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
ii.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、を含む。
【0095】
上記で定義された充填材料において、基材粒子、モノマー、開始剤、極性溶媒、アミン化合物、及び多官能性化合物は、本発明の方法について定義された通りである。
【0096】
したがって、本発明はまた、本明細書で定義される本発明の方法を使用して得られるイオン交換クロマトグラフィ充填材料を提供する。
【0097】
本発明の特定の態様では、コーティングされたイオン交換基材は、
(i)エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(EVB-DVB)、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される基材粒子と、
(ii)基材粒子に共有結合した基底層であって、
a.N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、スチレンアミド、アリルアミン、アミノスチレン、及びビニルピリジンモノマーからなる群から選択される(少なくとも)モノマーを、極性溶媒中で開始剤と重合することによって形成されるペンダントアミノ基を含む線状ポリマーを含む、基底層と、
(iii)線状ポリマー上のペンダントアミノを
i.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性エポキシド化合物(例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)又は
ii.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性エポキシド化合物(例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)と、アンモニア、一級、及び二級アミン(例えば、メチルアミン)からなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、形成される第1の縮合反応ポリマー生成物と、を含む。
【0098】
疑義を避けるため、本明細書では、「備える(「comprising」又は備える「comprises」)という用語を使用する場合、記載された特徴は、列記された構成要素を含まなければならないが、任意選択的に、追加的な構成要素を含み得る。「~から本質的になる(consisting essentially of)」又は「~から本質的になる(consists essentially of)」という用語を使用する場合、記載された特徴は、列記された構成要素を含まなければならないが、任意の構成要素が特徴の基本的特性に影響を及ぼさないのであれば、他の構成要素も含み得る。「~からなる(consisting of)」又は「~からなる(consists of)」という用語を使用する場合、これは、記載された特徴が、列記された構成要素だけを収容しなければならないことを意味する。
【0099】
当業者には、荷電粒子顕微鏡に関して定義される特徴及び組み合わせが、上で定義された方法及び組み合わせにも同様にあてはまることが明らかであろう。
【0100】
詳細な説明は、限定するものではなく、一例として、本発明の原理を例示する。本明細書は、当業者が、本発明、並びに説明される本発明のいくつかの実施形態、改作例、変形例、代替物、及び使用法を作製し、使用することを明確に可能にする。本明細書で使用される場合、任意の数値又は範囲に関する「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、一部の又は一群の構成要素が、記載されたその意図する目的のために機能することを可能にする好適な寸法公差を示す。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】基材としてのEVB-DVB、モノマーとしてのN-ビニルホルムアミド、並びにメチルアミン(水中4%溶液)及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(水中10%溶液)を使用する6サイクルの超分岐を含む本発明の方法によって形成されたイオンクロマトグラフィ充填物を使用する無機アニオンの分離のクロマトグラムを示す。
【
図2】基材としてのEVB-DVB、モノマーとしてのN-メチル-N-ビニルアセトアミド、並びにメチルアミン(水中4%溶液)及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(水中10%溶液)を使用する6サイクルの超分岐を含む本発明の方法によって形成されたイオンクロマトグラフィ充填物を使用する無機アニオンの分離のクロマトグラムを示す。
【
図3】基材としてのEVB-DVB、モノマーとしてのN-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、並びにメチルアミン(水中4%溶液)及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(水中10%溶液)を使用する6サイクルの超分岐を含む本発明の方法によって形成されたイオンクロマトグラフィ充填剤を使用する無機アニオンの分離のクロマトグラムを示す。
【
図4】基材としてのEVB-DVB、モノマーとしてのN-ビニルホルムアミド、並びに1,3-ジアミノプロパン(水中10%溶液)及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(水中20%溶液)を使用する6サイクルの超分岐を含む本発明の方法によって形成されたイオンクロマトグラフィ充填物を使用する無機アニオンの分離のクロマトグラムを示す。
【
図5a】基材としてのEVB-DVB、モノマーとしてのN-ビニルホルムアミド、並びにメチルアミン(4%水溶液)及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(10%水溶液)を使用した2、3、4、5又は6サイクルの超分岐を含む本発明の方法によって形成されたイオンクロマトグラフィ充填物についての反応サイクル数に対する選択性プロットを示す。
【
図5b】基材としてのスルホン化EVB-DVB、静電結合ベース層、並びにメチルアミン(4%水溶液)及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(10%水溶液)を使用した2、3、4、5又は6サイクルの超分岐を含む本発明の方法によって形成されたイオンクロマトグラフィ充填物についての反応サイクル数に対する選択性プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0102】
本発明を説明するために、その実施の以下の非限定的な例が実施例1に与えられる:
ベースポリマー層の合成:
55%の架橋、6μmの平均直径及び25m2/gの表面積を有する15gのエチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン基材粒子を72gのメタノール中に分散させ、5gのN-ビニルホルムアミド(モノマー)をスラリーに添加し、十分に混合する。0.2gの4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を3gのメタノールに溶解することによって開始剤溶液を調製し、基材スラリーに添加する。混合物を回転タンブラー中のオーブンに入れ、65℃で19時間放置する。反応生成物を濾過し、500mLの水で洗浄し、次いで500mLの水に再分散させ、濾過し、500mLの水で再び洗浄する。
【0103】
加水分解:
グラフト化樹脂を315gの1M NaOHに分散させ、回転タンブラー中のオーブンに入れ、65℃で24時間放置する。次いで、樹脂を濾過し、500mLの水で洗浄し、500mLの0.2M炭酸ナトリウム中に再分散させ、濾過し、500mLの水で再び洗浄する。
【0104】
反応カラムを充填し、縮合ポリマーを形成する:
加水分解工程後に得られた樹脂を4×250mmカラムに充填し、65℃の水浴中に入れる。超分岐層は、1つの反応サイクルを実行するために次の手順を使用して形成される。1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの10%溶液を0.25mL/分の流量でカラムに20分間通し、カラム内で40分間反応させる。カラムを脱イオン水で10分間洗浄し、4%メチルアミン溶液をカラムに20分間通過させ、40分間反応させ、カラムを脱イオン水で10分間すすぎ、この反応サイクルを6回繰り返した後、カラムを20mM KOHですすぐ。
【0105】
20mMのKOHを溶離液として1mL/分の流量で使用して調製したカラムを用いた抑制イオンクロマトグラフィモードにおけるいくつかの一価無機アニオンの分離のクロマトグラムを
図1に示す。
【0106】
実施例2:
ベース層の合成:
実施例1と同じであるが、グラフト化に使用したモノマーは、実施例1のモノマーと同じモル濃度で使用したN-メチル-N-ビニルアセトアミドである。
【0107】
加水分解:
実施例1と同様である。
【0108】
反応カラムを充填し、縮合ポリマーを形成する:
実施例1と同様である。1mL/分の流量で溶離液として1mMのKOHを使用する調製されたカラムによる抑制イオンクロマトグラフィモードでのいくつかの一価無機アニオンの分離のクロマトグラムを
図2に示す。
【0109】
実施例3:
ベース層の合成:
実施例1と同じであるが、グラフト化に使用したモノマーは、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミドであり、実施例1のモノマーより5倍低いモル濃度を使用した。
【0110】
加水分解:
実施例1と同じであるが、0.2M炭酸ナトリウム中での再分散は必要とされない。
【0111】
バルクでの第1の反応サイクル:
7.5gの湿潤樹脂(加水分解工程後)を、6.7gの脱イオン水中に分散させ、スラリーを音波処理浴中で10分間音波処理する。1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル2.1gをスラリーに添加する。混合物を回転タンブラー中のオーブンに75℃で19時間入れる。19時間後、樹脂を濾過し、300mLの水で洗浄し、300mLの水に再分散させ、濾過し、300mLの水で再び洗浄する。次いで、樹脂を6.2gの4%メチルアミン水溶液に分散させる。混合物を予熱したオーブンに入れ、タンブラーで65℃で1時間混合し、次いで濾過し、300mLの水で洗浄し、300mLの水に再分散させ、濾過し、再び300mLの水で洗浄する。
【0112】
反応カラムを充填し、縮合ポリマーを形成する:
実施例1と同じであるが、反応カラムにおける反応サイクルの数は5である。1mL/分の流量で溶離液として5mMのKOHを使用する調製されたカラムによる抑制イオンクロマトグラフィモードでのいくつかの一価無機アニオンの分離のクロマトグラムを
図3に示す。
【0113】
実施例4:
ベース層の合成:
実施例1と同様である。
【0114】
加水分解:
実施例1と同様である。
【0115】
反応カラムを充填し、縮合ポリマーを形成する:
実施例1と同じであるが、超分岐サイクルで使用されるアミンは1,3-ジアミノプロパンの10%溶液であり、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルの20%溶液が使用され、反応サイクルの総数は5である。1mL/分の流量で溶離液として1mMのKOHを使用する調製されたカラムによる抑制イオンクロマトグラフィモードでのいくつかの一価無機アニオンの分離のクロマトグラムを
図4に示す。
【0116】
実施例5:
ベース層の合成:
実施例1と同様である。
【0117】
加水分解:
実施例1と同様である。
【0118】
ワンポット反応における縮合ポリマーの形成:
1.2gの湿式樹脂(加水分解工程の後)をバイアル中の10gの脱イオン水に分散し、スラリーを超音波処理バスで2分間音波処理する。10gの脱イオン水、1.8gの1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルと0.925gのジメチルアミンをバイアル中で混合し、10分間超音波処理浴に入れる。混合物を樹脂スラリーでバイアルに移し、バイアルをオーブン中の回転タンブラーに65℃で4時間入れる。反応後、樹脂を濾過し、300mLの水で洗浄し、300mLの水に再分散させ、濾過し、300mLの水で再び洗浄する。
【0119】
カラムを充填する:
調製した樹脂を4×250mmカラムに充填し、5mM KOHですすいだ後、クロマトグラフィの実行に使用する。
【0120】
実施例6:
実施例1、2及び3における加水分解工程の生成物を、4×250mmカラムに充填し、縮合ポリマーの形成前及び6回の反応サイクルを行った後にカラム容量の測定に供する。表1に示される結果は、グラフト化工程におけるモノマー反応性の差及び全ての場合におけるアミド基加水分解の容易さが、超分岐縮合ポリマーの更なる結合に利用可能な形成されたポリマー中のアミノ基の異なる量をもたらし、これが、得られるカラム容量に影響を及ぼすことを実証する。
【0121】
【0122】
実施例7:
実施例1に従って調製し、カラムに充填した樹脂を、超分岐縮合ポリマーを形成するプロセス中の2、3、4、5、及び6回の反応サイクル後に試験する。1mM~40mMの濃度範囲のKOHを、1mL/分の流速で溶離液として使用する。各反応サイクル後のこのグラフト化カラムの選択性を反応サイクル数に対してプロットし、プロットを
図5aに示す。超分岐縮合ポリマーの形成及びカラム試験の同じプロセスを、米国特許第7291395号に従って調製された静電結合した基底層に、適用する(55%架橋、6.45μmの平均径及び20m2/gの表面積を有する4.5gのスルホン化エチルビニルベンゼン-ジルビニルベンゼン基材粒子を、シンチレーションバイアルに入れ、0.368gの1.4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、3.277gの水、及び1.5gの4%メチルアミンを基材に加え、十分に混合する。混合物を65℃オーブン中のタンブラーに2時間入れ、次いでオーブンから取り出し、10~15分間冷却する。6gの脱イオン水をバイアルに加え、混合し、スラリーを4×250mmカラムに充填する)。各反応サイクル後の静電結合カラムの選択性を、反応サイクル数に対してプロットし、プロットを
図5bに示す。
図5aは、共有結合したアニオン交換体のための縮合ポリマーを形成するプロセスにおける反応サイクルの数からの全てのアニオンについての固定された溶出順序及び選択性の良好な線形依存性を示す。
図5bは、静電結合超分岐アニオン交換体の場合、塩素酸塩及び臭化物の溶出順序が反応サイクル数の増加と共に変化し、塩素酸塩の選択性が反応サイクル数の二乗関数であることを示す。これは、共有結合相が縮合ポリマーの架橋度にあまり依存しないことを示している。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換クロマトグラフィ充填材料を作製するための方法であって、前記充填材料が、基材粒子に共有結合された縮合ポリマーを含み、前記縮合ポリマーを形成するための方法が、
(a)少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基とを含むモノマーを、極性溶媒中で開始剤と反応させることによって、及び任意選択で、加水分解によってアミノ基に変換することができる任意のペンダント官能基及び/又はアミンとの反応を介して直接的若しくは間接的にアミノ基に変換することができる官能基を、線状ポリマー生成物上でペンダントアミノ基に変換することによって、ペンダントアミノ基を含む前記線状ポリマー生成物を形成することと、
(b)工程(a)の後の前記線状ポリマー生成物上に存在する前記ペンダントアミノ基を、
(i)前記ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
(ii)前記ペンダントアミノ基と反応性の少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって、
第1の未反応の過剰な官能性部分を有する第1の縮合ポリマー反応生成物を形成することと、を含む方法。
【請求項2】
前記加水分解によってアミノ基に変換することができるモノマーの官能基、又は前記直接的若しくは間接的にアミンとの反応を介してアミノ基に変換することができる官能基が、アミド、イソシアネート、カルバメート、イソシアヌレート、エポキシド、ハライド、スルフィド、及びトシレートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記線状ポリマー生成物上の前記ペンダントアミノ基が、一級及び/又は二級若しくは三級アミン基である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)における前記モノマーが、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、スチレンアミド、アリルアミン、アミノスチレン、及びビニルピリジンモノマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材粒子が、好ましくはエチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(EVB-DVB)、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される有機ポリマーを含む表面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも第1の多官能性化合物の前記少なくとも2つの官能性部分が、エポキシド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、トシレート、硫化メチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの官能性部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも第1の多官能性化合物の前記少なくとも2つの官能性部分が、エポキシド部分を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)(i)又は(c)(ii)を更に含み、工程(c)(i)において、工程(b)(i)のCPRP上の前記未反応の過剰な官能性部分を、少なくとも第2のアミン化合物又は少なくとも第2の多官能性化合物及び少なくとも第2のアミン化合物の両方と、反応させて、第2のCPRPを形成することができ、かつ工程(c)(ii)において、工程(b)(ii)のCPRP上の前記未反応の過剰な官能性部分を、少なくとも第2の多官能性化合物又は少なくとも第2の多官能性化合物及び少なくとも第2のアミン化合物の両方と、反応させて、第2のCPRPを形成することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程c)(i)又は(ii)を少なくとももう1回繰り返し、外部縮合ポリマー反応生成物上のアミン反応性官能性部分をアミン含有カチオン官能性化合物と反応させて、前記充填材料をカチオン交換基材に変換することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1、第2、又は後の縮合ポリマーが、架橋されている官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1、第2、又は後の縮合ポリマーが、分岐ポリマー鎖を含む官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)又は(c)が、(i)前記少なくとも第1の多官能性化合物、又は(ii)前記少なくとも第1の多官能性化合物及び少なくとも第1のアミン化合物を、工程(a)の前記線状ポリマー生成物又は工程(b)(i)若しくは(b)(ii)の前記第1の縮合ポリマー反応生成物を通過させて連続的に流すことによって、フロースルーチャンバ中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基材が、フロースルーモノリス媒体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記基材が、フロースルー中空管の壁を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
更なるアミン化合物及び/又は多官能性化合物を、工程(b)又は(c)における前記第1又は第2の縮合ポリマー反応生成物からの未反応の過剰アミン化合物部分又は多官能性化合物部分と反応させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)が、基材粒子の存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)又は(b)の前記生成物を、複数の基材粒子と反応させる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングされた粒子が、クロマトグラフィ充填物としての使用に好適な形態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン交換クロマトグラフィ充填材料が、陰イオン交換クロマトグラフィ充填材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法によって形成されたイオン交換クロマトグラフィ充填材料。
【請求項21】
イオン交換クロマトグラフィ充填材料であって、
(i)基材粒子と、
(ii)前記基材粒子に共有結合した基底層であって、
a.少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合と、アミノ、加水分解によってアミノ基に変換することができる官能基、及びアミンとの反応を介して直接的又は間接的にアミノ基に変換することができる官能基から選択される少なくとも1つの官能基と、を含むモノマーを、極性溶媒中で開始剤を用いて重合することによって形成されたペンダントアミノ基を含む線状ポリマーを含む、基底層と、
(iii)前記線状ポリマー上のペンダントアミノを、
i.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、又は
ii.少なくとも2つの官能性部分を有する少なくとも第1の多官能性化合物、並びにアンモニア、一級及び二級アミンからなる群から選択されるアミノ基を含む少なくとも第1のアミン化合物と、反応させることによって形成された第1の縮合反応ポリマー生成物と、を含むイオン交換クロマトグラフィ充填材料。
【請求項22】
前記多官能性化合物の前記2つの官能性部分が、エポキシド、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジル、トシレート、硫化メチル、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの官能性部分を含む、請求項21に記載の充填材料。
【請求項23】
前記多官能性化合物の前記2つの官能性部分のうちの前記少なくとも1つが、エポキシド部分を含む、請求項22に記載の充填材料。
【請求項24】
前記基材が、好ましくはエチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン(EVB-DVB)、ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される有機ポリマーを含む表面を有する、請求項21に記載の充填材料。
【請求項25】
前記基材が、フロースルーモノリス媒体又はフロースルー中空管の壁を含む、請求項21に記載の充填材料。
【請求項26】
前記モノマーが、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-[(4-ビニルフェニル)メチル]アセトアミド、スチレンアミド、アリルアミン、アミノスチレン、及びビニルピリジンモノマーからなる群から選択される、請求項21に記載の充填材料。
【外国語明細書】