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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004352
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/16 20060101AFI20240109BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240109BHJP
   B65H 23/10 20060101ALI20240109BHJP
   B65H 23/188 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B41J15/16
B41J2/01 305
B65H23/10
B65H23/188
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103979
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】深澤 洸貴
【テーマコード(参考)】
2C056
2C060
3F104
3F105
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056HA27
2C056HA28
2C060CA13
2C060CB01
2C060CB15
3F104AA01
3F104DA32
3F105AA01
3F105AB04
3F105BA02
3F105CA20
(57)【要約】
【課題】作業性を損なわず且つ比較的簡単な構成で、搬送部に送られる前の印刷媒体のしわの発生を抑制できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、搬送部14、印刷部27、支持部21及び吸引力付与部40を備える。搬送部14は、印刷媒体99に搬送力Ffを付与し、印刷媒体99を搬送する。印刷部27は、搬送された印刷媒体99に印刷する。支持部21は、搬送部14が印刷媒体99を搬送する搬送方向Y1において搬送部14より上流の位置において、印刷媒体99を支持する支持面21Aを有する。吸引力付与部40は、支持面21Aに沿って搬送される印刷媒体99に対して支持面21Aに引き付ける吸引力を付与することで印刷媒体99と支持面21Aとの間に吸引力に基づく面圧を発生させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
印刷媒体に搬送力を付与し、前記印刷媒体を搬送する搬送部と、
搬送された前記印刷媒体に印刷する印刷部と、
前記搬送部が前記印刷媒体を搬送する搬送方向において前記搬送部より上流の位置において、前記印刷媒体を支持する支持面を有する支持部と、
前記支持面に沿って搬送される前記印刷媒体に対して前記支持面に引き付ける吸引力を付与することで前記印刷媒体と前記支持面との間に前記吸引力に基づく面圧を発生させる吸引力付与部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記支持部は吸引孔を有し、
前記吸引力付与部は、前記吸引孔に負圧を発生させる吸引ファンを有することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記支持部の前記支持面が曲面又は平面であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送部よりも前記搬送方向の上流の位置で前記印刷媒体をロール状に巻き重ねたロールを支持し、前記ロールから前記印刷媒体を繰り出す繰出部を備え、
前記繰出部が前記搬送部及び前記支持部に対して鉛直方向の下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記吸引孔は、前記支持面に開口するか、あるいは前記支持面に凹設された溝の底面に開口することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記搬送部よりも前記搬送方向の上流の位置で前記印刷媒体をロール状に巻き重ねたロールを支持し、前記ロールから前記印刷媒体を繰り出す繰出部を備え、
前記吸引孔又は前記溝は、前記搬送方向において前記繰出部と前記搬送部との間における前記印刷媒体の経路の中央よりも前記搬送部側に位置することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷媒体の種類を判定する判定部を備え、
前記吸引力付与部は、前記印刷媒体の種類に応じた前記吸引力を前記印刷媒体に付与することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
制御部を更に備え、
前記制御部は、前記ロールから繰り出される前記印刷媒体にテンションを付与するように前記繰出部を制御するとともに、前記吸引力付与部を制御することで前記吸引力に基づく面圧に応じた摩擦力により前記印刷媒体のうち前記搬送部と前記吸引力付与部との間の部分のテンションを制御することを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の印刷装置。
【請求項9】
制御部を更に備え、
前記制御部は、前記繰出部を制御することで前記ロールから繰り出される前記印刷媒体に弛みを形成する弛み制御を行うとともに、前記吸引力付与部を制御することで前記吸引力に基づく面圧に応じた摩擦力により前記印刷媒体のうち前記搬送部と前記吸引力付与部との間の部分のテンションを制御することを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記吸引力付与部は、前記印刷媒体に静電気による前記吸引力を付与する静電気発生部であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記ロールの重量を推定するロール重量推定部を備え、
前記吸引力付与部は、前記ロールの重量に応じた吸引力を前記印刷媒体に付与することを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記ロールの径を推定するロール径推定部を備え、
前記吸引力付与部は、前記ロールの径に応じた吸引力を前記印刷媒体に付与することを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と、印刷媒体に印刷する印刷部とを備える印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール紙等の印刷媒体に印刷を行う印刷装置が開示されている。この印刷装置は、搬送中の印刷前のシートに対して張力(テンション)を付与する張力付与機構を備える。ロールから印刷媒体を繰り出す繰出機構と、印刷後の印刷媒体をロールに巻き取る巻取機構との間の経路にある印刷媒体に張力が付与される。搬送部に送られる印刷媒体に張力が付与されることで、搬送部に送られる前の印刷媒体にしわが発生することが抑制される。なお、この種の印刷装置においては、ロールから印刷媒体(ロール紙)を繰り出す繰出部と搬送部との間の経路の途中に中間ローラーを備える構成も知られている。この印刷装置では、搬送部の送り動作と中間ローラーの送り動作とを制御することで、搬送部と中間ローラーとの間の印刷媒体の部分に適度な張力が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-143147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の印刷装置は、シートに張力を付与する張力付与機構が複雑な構成であるので、機構が大型となり、ひいては装置の大型化に繋がる。さらに、張力付与機構がロールの周辺に取り付けられるので、ユーザーがロールを繰出部に装着又は取外しする際の作業性が悪化する。また、中間ローラーを備える印刷装置においては、ユーザーが印刷開始前に印刷媒体をセットするセット作業やジャム発生時に印刷媒体を除去する除去作業などの所定の作業を行うときに中間ローラーが邪魔になり作業性が悪化する。そのうえ、セット作業や除去作業の際に中間ローラーを印刷媒体から離間する位置へ移動させるレリース機構が必要になるので、比較的複雑な機構になる。機構の複雑化や大型化は機構のそのものが重くなり、これを支持するための装置フレームの剛性を高める必要があり、これによっても装置が大型化する。そのため、作業性を悪化させにくく且つ比較的簡単な構成で、搬送部に送られる前の印刷媒体に張力を付与できる印刷装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する印刷装置は、印刷媒体に搬送力を付与し、前記印刷媒体を搬送する搬送部と、搬送された前記印刷媒体に印刷する印刷部と、前記搬送部が前記印刷媒体を搬送する搬送方向において前記搬送部より上流の位置において、前記印刷媒体を支持する支持面を有する支持部と、支持面に沿って搬送される前記印刷媒体に対して前記支持面に引き付ける吸引力を付与することで前記印刷媒体と前記支持面との間に前記吸引力に基づく面圧を発生させる吸引力付与部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態における印刷装置の模式側断面図である。
図2】印刷装置の搬送ローラー対の周辺を示す模式側断面図である。
図3】第1実施例の吸引力付与部及び搬送ローラー対を示す部分斜視図である。
図4】第2実施例の吸引力付与部及び搬送ローラー対を示す部分斜視図である。
図5】印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6】媒体種と吸引力との対応関係を示す参照データの図である。
図7】媒体のしわの発生し易さと吸引力との関係を示すグラフである。
図8】ロール重量と吸引力との関係を示すグラフである。
図9】ロール径と吸引力との関係を示すグラフである。
図10】変更例における吸引力付与部を備える印刷装置の一部を示す模式側断面図である。
図11】変更例の印刷装置を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、印刷装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示す印刷装置11は、水平面上に置かれているものとし、幅方向と奥行方向は実質的に水平である。X軸、Y軸及びZ軸は、それぞれ幅方向、奥行方向及び鉛直方向と平行な座標軸である。印刷時に搬送される印刷媒体99(以下、単に「媒体99」ともいう。)に着目すると、X軸が印刷媒体99の幅方向と平行であるため、以下では、幅方向Xともいう。印刷媒体99に印刷される印刷位置において印刷媒体99が搬送される搬送方向は、Y軸と平行であるので、搬送方向Yともいう。印刷媒体99が搬送経路に沿って搬送される方向を搬送方向Y1ともいう。搬送方向Y1は、搬送経路上の位置によって方向が変化する。なお、幅方向Xは、搬送方向Y1と交差(例えば直交)する方向である。
【0008】
図1に示すように、印刷装置11は、例えば、用紙等の媒体99にインク等の液体を吐出することによって、媒体99に文字又は画像等を印刷するインクジェット式のプリンターである。印刷装置11は、筐体12と、筐体12を支持する基台13とを備える。
【0009】
図1に示すように、印刷装置11は、媒体99を搬送する搬送部14を備える。搬送部14は、搬送ローラー対24を含む。印刷装置11は、搬送部14よりも搬送方向Y1の上流の位置で媒体99をロール状に巻き重ねたロール101を支持し、ロール101から媒体99を繰り出す繰出部15を備える。搬送部14は、繰出部15から繰り出された媒体99に搬送力を付与し、媒体99を搬送する。
【0010】
本実施形態の搬送部14は、筐体12内に設けられ、媒体99を所定の搬送経路に沿って搬送する。印刷装置11は、未印刷の媒体99が巻き重ねられたロール101を支持可能な繰出部15を備える。繰出部15は、ロール101を回転可能な状態で支持する。繰出部15は、ロール101を繰り出し方向に回転させるときに駆動される給送モーター16を備える。搬送部14は、繰出部15がロール101から繰り出した長尺状の媒体99を搬送する。なお、本実施形態において、媒体99の搬送方向Y1とは、ロール101から繰り出された媒体99が、搬送路に沿って搬送される方向であり、搬送路上の位置に応じて変化する。
【0011】
印刷装置11は、搬送された媒体99に印刷する印刷部27を備える。印刷部27は、搬送部14により搬送される媒体99に液体を吐出する吐出部28を備える。本実施形態の印刷装置11は、吐出部28が媒体99に対して走査方向Xに走査するシリアルプリンターである。印刷部27は、搬送される媒体99の上方の位置で搬送方向Y1と交差する走査方向Xに走査されるキャリッジ29と、キャリッジ29の下部に備えられる吐出部28とを備える。吐出部28はノズル28Nから液体を吐出可能な吐出ヘッドである。吐出部28及びキャリッジ29は、筐体12内に配置される。なお、印刷装置11は、シリアルプリンターに限定されず、吐出部28が媒体99の幅方向に亘る範囲に一斉に液体を吐出可能な多数のノズルを有するラインプリンターでもよい。なお、走査方向Xは、搬送方向Y1と交差する方向であり、幅方向Xに等しい。
【0012】
印刷装置11は、媒体99を支持する支持面22A(図2参照)を有する支持台22を備える。本実施形態において、吐出部28と対向する印刷位置では、媒体99は支持台22に支持されてY軸に沿う方向に搬送される。このため、印刷位置における媒体99の搬送方向を、搬送方向Yともいう。
【0013】
図1に示すように、印刷装置11は、液体が吐出されることで文字又は画像が印刷された媒体99をロール102として巻き取る巻取部17を備える。巻取部17は、ロール102を巻き取る駆動源となる巻取モーター18を備える。巻取部17は、基台13を支持する移動台19上に支持されている。移動台19には、印刷装置11を移動させるための複数のキャスター19Aが設けられている。
【0014】
印刷装置11は、巻取部17に巻き取られる前の媒体99にテンションを付与するテンションバー20を備える。搬送部14が媒体99を送る送り量と、巻取部17が媒体99を巻き取る巻取り量との差に応じて、巻取部17と搬送部14との間の媒体99の長さが変わる。テンションバー20は、巻取部17と搬送部14との間の媒体99に接触して自重による力を媒体99に付与しながら変位することによって媒体99に適切なテンションを付与する。
【0015】
印刷装置11は、媒体99の搬送路を形成する、支持部の一例としての上流支持部21、支持台22及び下流支持部23を備える。上流支持部21は、搬送部14が媒体99を搬送する搬送方向Y1において搬送部14より上流の位置において、媒体99を支持する。
【0016】
上流支持部21、支持台22及び下流支持部23は、繰出部15と巻取部17との間で搬送路に沿って搬送される媒体99を支持する。搬送路の上流から下流に向かって、上流支持部21、支持台22及び下流支持部23の順に配置されている。上流支持部21は搬送路の上流部分を構成し、繰出部15から搬送部14までの範囲で媒体99を支持する。支持台22は搬送路の中流部分を構成し、搬送部14よりも下流において吐出部28の走査領域と対向する範囲で媒体99を支持する。下流支持部23は搬送路の下流部分を構成し、吐出部28により吐出された液体が付着した印刷後の部分で媒体99を支持する。
【0017】
図1に示す例では、支持台22は、筐体12内に水平に配置されている。支持台22に対して搬送方向Y1の両側には、上流支持部21(以下、単に「支持部21」ともいう。)と下流支持部23とが、支持台22に近づくほど高くなる向きに傾斜する状態で配置されている。
【0018】
本実施形態では、繰出部15が搬送部14及び支持部21に対して鉛直方向Zの下方に位置する。つまり、繰出部15の高さが、搬送部14及び支持部21のそれぞれの高さよりも低い。そのため、本実施形態では、支持部21の支持面21Aが曲面である。支持部21は、支持台22に近づくほど鉛直方向Zにおいて高さ位置が高くなるように上に凸の湾曲面よりなる支持面21Aを有する。
【0019】
図1に示すように、搬送部14は、駆動ローラー25と従動ローラー26とを有する。駆動ローラー25及び従動ローラー26は、媒体99を挟み込むニップ状態で回転することで、媒体99を搬送する。駆動ローラー25及び従動ローラー26は、支持台22に対して搬送方向Yの上流に位置し、媒体99を支持台22上へ送り込む。駆動ローラー25は、搬送モーター72(図5参照)を駆動源とする。
【0020】
印刷装置11は、支持台22に支持された媒体99に液体を吐出する前述の吐出部28を備える。吐出部28は、筐体12内において、支持台22と対向する位置に配置されている。そのため、吐出部28は、媒体99における支持台22に支持された部分に液体を吐出する。吐出部28は、支持台22と対向するノズル開口面28Aと、ノズル開口面28Aに開口する多数のノズル28Nを有する。キャリッジ29が走査方向Xに移動する過程で吐出部28はノズル28Nから媒体99に向かって液体を吐出する。
【0021】
図1に示すように、印刷装置11は、媒体99を支持台22に引き付けるように吸引する吸引機構30を備えてもよい。吸引機構30は、例えば、支持台22の下部に組み付けられている。支持台22は、媒体99を支持する面に開口する1つ又は複数の吸引孔32(図2参照)を有する。支持台22における吐出部28と対向する印刷位置に媒体99を吸着させることで、媒体99の印刷位置での浮きやしわの発生を抑制する。
【0022】
図1に示すように、印刷装置11は、支持面21Aに沿って搬送される媒体99に対して支持面21Aに引き付ける吸引力を付与することで媒体99と支持面21Aとの間に吸引力に基づく面圧を発生させる吸引力付与部40を備える。吸引力付与部40は、例えば、支持部21の下部に組み付けられている。
【0023】
吸引力付与部40は、負圧を発生させて媒体99を支持部21に引き付ける吸引力を発生させる。媒体99は支持部21に所定の面圧で吸着される。これにより媒体99のうち搬送ローラー対24へ搬入される前の媒体99の部分に浮きやしわが発生しにくくなる。
【0024】
なお、上流支持部21、下流支持部23及び支持台22の裏面には、不図示のヒーター及び加熱温度を検出する温度センサー(図示略)が取り付けられてもよい。ヒーターは、例えば、上流支持部21、下流支持部23及び支持台22の裏面に所定の経路で配線された線状ヒーター等であってもよい。
【0025】
また、筐体12の外面には、表示部51を有する操作パネル50が設けられている。表示部51には、各種のメニュー画面や印刷条件情報の入力画面などの他、ユーザーに対する各種のメッセージ等が表示される。
【0026】
また、印刷装置11は、筐体12内に制御部70を備える。制御部70は、搬送部14、繰出部15、巻取部17、吐出部28、キャリッジ29及び表示部51等を制御する。なお、印刷装置11は、装置周辺又は筐体12内の湿度を検出する湿度検出部60(図5参照)を備える。制御部70は、吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を、1つ又は複数のパラメーターに基づいて決定する。湿度情報はパラメーターの1として用いられてもよい。
【0027】
<吸引機構30及び吸引付与部40の構成>
次に、図2を参照して吸引機構30及び吸引力付与部40の詳細な構成を説明する。図2に示すように、支持台22は、媒体99を支持する支持面22Aに開口する吸引孔32を有する。吸引機構30は、搬送部14よりも搬送方向Y1の下流側の位置(印刷位置)に配置され、吸引孔32に媒体99を吸引する吸引力を作用させるための負圧を発生させる。吸引機構30は、支持台22の下側に第1負圧室33が形成された負圧室形成部材31と、第1負圧室33内の空気を排気する排気ファン34とを有する。負圧室形成部材31は、支持台22の下部に組み付けられている。支持台22と負圧室形成部材31とで第1負圧室33が囲み形成されている。
【0028】
吸引孔32は、支持台22を貫き、第1負圧室33に連通している。支持面22Aには、第1負圧室33に連通する複数の吸引孔32が開口している。なお、吸引孔32は、吸引機構30の一部を構成する。
【0029】
吸引機構30は、排気ファン34により負圧室33内の空気を排気することで第1負圧室33内を負圧とし、支持台22の支持面22Aに開口する吸引孔32に流入する吸引気流を発生させる。媒体99は、吸引気流による吸引力によって支持面22Aに所定の吸引力で吸着される。これにより支持面21Aと接触する状態で支持面21Aに沿って搬送される媒体99が、支持面22Aに吸引力に応じた面圧で支持面21Aに接触する。これにより、吐出部28と対向する印刷位置において支持面22Aからの媒体99の浮き等が抑制される。
【0030】
印刷装置11では、媒体99に画像等が印刷される印刷時において、媒体99に浮きやしわ等が発生するおそれがあると推定されるとき、吸引機構30が駆動される。第1負圧室33内には、圧力を検出する圧力センサー35が設けられている。制御部70は、圧力センサー35が検出した検出圧を基に、第1負圧室33内の圧力が設定負圧値になるように排気ファン34を制御する。
【0031】
また、図2に示すように、吸引力付与部40は、搬送部14よりも搬送方向Y1の上流側の位置に配置され、媒体99に吸引力を付与する。吸引力付与部40は、搬送方向Y1において搬送部14よりも上流側の経路の途中で媒体99に吸引力を付与する。支持部21は、媒体99を支持する支持面21Aを有する。支持部21は、1つ又は複数の吸引孔42を有する。図2に示す例では、支持部21は、支持面21Aに開口する複数の吸引孔42を有する。なお、吸引孔42は、媒体99を支持面21Aに所定の面圧で接触させられる必要な吸引力を発生させられる限りにおいて、その個数は1つでもよい。
【0032】
吸引力付与部40は、吸引孔42に媒体99を吸引する吸引力を作用させるための負圧を発生させる。吸引力付与部40は、吸引孔42に負圧を発生させる吸引ファン44を備える。
【0033】
詳しくは、図2に示すように、吸引力付与部40は、支持台22の下部に組み付けられた負圧室形成部材41と、負圧室形成部材41により形成された第2負圧室43を負圧にする吸引ファン44とを備える。支持部21と負圧室形成部材41とで第2負圧室43が囲み形成されている。吸引孔42は、支持部21を貫き、第2負圧室43に連通している。支持面21Aには、第2負圧室43に連通する吸引孔42が開口している。吸引ファン44は、第2負圧室43内の空気を外部に排出することで、第2負圧室43内を負圧とし、吸引孔42に負圧を発生させる。媒体99のうち支持面21Aに支持される部分は、複数の吸引孔42からの負圧による吸引力により支持面21Aに吸着される。
【0034】
印刷装置11では、媒体99において搬送部14よりも搬送方向Y1の上流の位置に浮きやしわが発生すると、その浮きやしわが搬送ローラー対24にニップ(挟持)されることで折れじわになる。媒体99の折れじわの部分は印刷不良になる。吸引力付与部40は、媒体99を支持面21Aに対して吸引力に基づく面圧で接触させることで、浮きやしわを潰す機能を有する。
【0035】
ここで、図2に示すように、媒体99は、搬送ローラー対24のニップ位置に搬入される前の媒体99は、吸引箇所SAにおいて吸引力に応じた面圧に基づく摩擦力fs(図2参照)を受ける。この摩擦力fsは、吸引孔42からの負圧に基づく面圧で支持面21Aに接触する媒体99が支持面21Aから受ける抗力Nと、搬送中の媒体99と支持面21Aとの間の摩擦係数μとを用いて、fs=μ*Nで表される。ここで、記号「*」は乗算演算子を示す。抗力Nは、媒体99の重量(自重)と吸引力の和で近似されるため、摩擦力fsは、吸引力が大きいほど大きな値になる。よって、吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を調整することによって、搬送中の媒体99に作用する反搬送方向-Y1の摩擦力fsが調整される。そして、搬送ローラー対24から搬送方向Y1の搬送力Ffを受ける媒体99に対して、吸引力付与部40が吸引力を付与する吸引箇所SAで反搬送方向-Y1の摩擦力fsが作用することで、媒体99のうち吸引箇所SAと搬送ローラー対24のニップ位置との間の部分にバックテンションBTが働く。そして、このバックテンションBTの大きさは、吸引力付与部40の吸引力を制御する制御部70によって調整される。
【0036】
制御部70は、印刷時に、搬送部14よりも搬送方向Y1の上流側で媒体99に浮きやしわが発生するおそれがあると推定されるとき、吸引ファン44を駆動する。このため、媒体99は吸引箇所SAで支持面21Aに吸着される。図2に示す第2負圧室43内には、圧力を検出する圧力センサー45が設けられている。制御部70は、圧力センサー45が検出した検出圧を基に、第2負圧室43内の圧力が目標負圧値になるように吸引力付与部40を制御する。本実施形態では、媒体99の搬送中と停止中との両方で吸引孔42に負圧を作用させ、搬送中及び停止中の媒体99に支持面21Aに引き付ける方向の吸引力を作用させる。媒体99を支持面21Aに引き付ける吸引力は、媒体99に浮きやしわが発生することを抑制するとともに、一旦発生したしわを消滅又は縮小させることが可能である。このため、制御部70は、媒体99にしわ等が発生するおそれがあると推定されるとき、しわ等の発生を抑えるために吸引力付与部40を駆動させる。
【0037】
ここで、媒体99のしわの発生し易さは、媒体99の種類である媒体種、及び印刷装置11周辺の環境などに依存する。このため、制御部70は、媒体種及び環境などの要因に応じて、吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を調整する。なお、吸引力の調整方法の詳細については後述する。
【0038】
<支持部21の構成>
次に、図3図4を参照して、支持部21の構成について説明する。図3は支持部21の第1実施例の構成を示し、図4は支持部21の第2実施例の構成を示す。
【0039】
支持部21は、搬送される媒体99を支持する支持面21Aに吸引孔42を有する。支持部21の裏面には、図2に示す前述の吸引力付与部40が組み付けられている。図3に示す第1実施例では、吸引孔42が支持面21Aに開口する。図4に示す第2実施例では、吸引孔42が、支持面21Aに凹設された溝21Bの底面に開口する。なお、図3図4に示すように、搬送ローラー対24は、1本の駆動ローラー25と、駆動ローラー25に対して幅方向Xに間隔を空けて対向配置される複数の従動ローラー26とを備える。従動ローラー26の間に相当する部分で媒体99はニップされない。このように媒体99の幅方向Xにおいてニップされない部分に相当する箇所に浮きやしわが発生し易い。しわは、搬送方向Y1に沿って延びるいわゆる縦じわが発生し易い。
【0040】
<第1実施例の支持部21の構成>
まず、図3を参照して、第1実施例の支持部21の構成について説明する。
図3に示すように、支持部21の支持面21Aには、媒体99が搬送される搬送方向Y1と交差する幅方向Xに間隔を空けて複数の吸引孔42が形成されている。吸引孔42は、例えば円孔である。
【0041】
複数の吸引孔42は、支持部21を貫通する貫通孔であり、支持面21Aにおいて幅方向Xにほぼ均一な位置に開口している。例えば、複数の吸引孔42が幅方向Xにおいて一定の間隔を空けて位置する。図3において二点鎖線で示す最大幅の媒体99が搬送される搬送領域よりも少し狭い範囲に亘って複数の吸引孔42は形成されている。なお、図3では、複数の吸引孔42を1列のみ示している。本実施例では吸引孔42を2列としてるが、1列又は3列以上の複数列でもよい。支持面21A上を搬送される媒体99は、吸引孔42の列(すなわち吸引箇所SA)を通過するときに吸引孔42に所定の吸引力で吸引されることで支持面21Aに所定の面圧で接触する。このとき、媒体99が受ける吸引力は、媒体99が塞ぐ吸引孔42の開口面積の総和と、吸引孔42に作用する負圧との積で表される。
【0042】
<第2実施例の支持部21の構成>
次に、図4を参照して、第2実施例の支持部21の構成について説明する。
図4に示すように、支持部21の支持面21Aには、媒体99が搬送される搬送方向Y1と交差する幅方向Xに沿って延びる1つ又は複数の溝21Bが凹設されている。溝21Bが複数である場合、複数の溝21Bは、搬送方向Y1に間隔を空けて位置する。溝21Bは、所定の深さを有する凹溝である。所定の深さは、例えば、0.1~5mmの範囲内の所定値である。溝21Bの底面には複数の吸引孔42が開口している。吸引孔42は、例えば円孔である。複数の吸引孔42は、溝21Bの底面において幅方向Xに例えば一定の間隔を空けて位置する。
【0043】
複数の吸引孔42は、支持部21を貫通する貫通孔であり、溝21Bの底面において幅方向Xにほぼ均一な位置に開口している。複数の吸引孔42は、溝21Bの底面に溝21Bの長手方向に沿って一定の間隔を空けた位置に開口する。図4において二点鎖線で示す最大幅の媒体99は、溝21Bの開口の全域を塞ぐサイズである。つまり、溝21Bは、最大幅の媒体99が支持面21Aに沿って搬送されるときに、その最大幅の媒体99によって塞がれる領域及びサイズに形成されている。媒体99が支持面21A上を搬送されるとき、媒体99と溝21Bとに囲まれた略閉空間が負圧空間となる。媒体99は、吸引孔42の開口面積に比べ広い溝21Bの開口面積で吸引力を受ける。つまり、媒体99に作用する吸引力は、媒体99が塞ぐ溝21Bの開口面積と、溝21B内に作用する負圧との積で表される。このため、図3に示す第1実施例の構成に比べ、媒体99は広いエリアで吸引力を受けるので、支持面21Aにより強い力で吸着される。図3に示すように支持面21A上に点在する吸引孔42の部分で媒体99が吸引力を受ける構成に比べ、図4では、媒体99が、幅方向Xに連続する長尺な溝21Bの開口エリアを介して吸引力を受ける。このため、媒体99の浮きやしわが一層抑制され易い。
【0044】
図1に示すように、吸引力付与部40は、搬送方向Y1において繰出部15と搬送部14との間における媒体99の経路の中央よりも搬送部14側に位置する。よって、図3に示す吸引孔42又は図4に示す溝21Bは、搬送方向Y1において繰出部15と搬送部14との間における媒体99の経路の中央よりも搬送部14側に位置する。これは、吸引箇所SAが経路の中央よりも繰出部15側にあると、吸引箇所SAの吸引孔42又は溝21Bを介した吸引力で浮き等を一旦潰してもその部分の媒体99が搬送部14に至るまでに再び浮き等が発生する頻度が高くなるからである。なお、吸引箇所SAは、このような経路の中央よりも搬送部14側の位置に限定されず、繰出部15と搬送部14との間における媒体99の経路の中央又は中央よりも繰出部15(つまりロール101)側に位置してもよい。
【0045】
<印刷装置11の電気的構成>
次に、図5を参照して、印刷装置11の電気的構成について説明する。
印刷装置11は制御部70を備える。制御部70には、通信部71、操作パネル50、湿度検出部60、第1圧力センサー35、第2圧力センサー45、第1ロータリーエンコーダー74、及び第2ロータリーエンコーダー75が電気的に接続されている。操作パネル50は、表示部51と操作部52とを備える。表示部51がタッチパネルである場合、操作部52はタッチパネルの操作機能部分により構成されてもよい。
【0046】
制御部70は、通信部71を介してホスト装置110と通信可能に接続される。ホスト装置110は、表示部111とユーザーにより操作される操作部112とを備える。ホスト装置110は、ユーザーから操作部112を介して印刷指示を受け付けると、印刷ジョブPJを生成する印刷ドライバー(図示略)を有する。制御部70は、通信部71を介してホスト装置110から印刷ジョブPJのデータを受信する。なお、ホスト装置110は、例えば、パーソナルコンピューター、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))、タブレットPC、スマートフォン、携帯電話等により構成される。
【0047】
湿度検出部60は、筐体12の外部の湿度を検出する。湿度検出部60は、印刷装置11の周辺又は筐体12内の相対湿度を検出する湿度センサー61と、筐体12外の温度を検出する温度センサー62とを有する。湿度検出部60は、湿度センサー61が検出した相対湿度RH(%)と、温度センサー62が検出した温度T(℃)との情報を用いて所定の計算式に従って絶対湿度AHを算出する。なお、湿度検出部60は、湿度センサー61のみを備える構成でもよい。また、湿度検出部60に替え、温度センサー62を備える構成でもよい。このように、印刷装置11周辺の環境を検出する検出部は、絶対湿度、相対湿度及び温度のうち少なくとも1つを検出するものであればよい。なお、制御部70は、湿度検出部60から絶対湿度検出値を入力してもよいし、湿度検出部60から入力した相対湿度情報と温度情報とに基づいて絶対湿度情報を算出してもよい。
【0048】
第1圧力センサー35は、吸引機構30の第1負圧室33の圧力を検出する。制御部70は、第1圧力センサー35から入力する第1圧力値に基づいて排気ファン34の回転速度を制御することで、第1負圧室33内の負圧値を目標負圧値に近づける制御を行う。
【0049】
第2圧力センサー45は、吸引力付与部40の第2負圧室43の圧力を検出する。制御部70は、第2圧力センサー45から入力する第2圧力値に基づいて吸引ファン44の回転速度を制御することで、第2負圧室43内の負圧値を目標負圧値に近づける制御を行う。
【0050】
第1ロータリーエンコーダー74は、繰出部15を構成する給送モーター16の回転を検出する。つまり、第1ロータリーエンコーダー74は、給送モーター16の駆動力で回転するロール101の回転を検出する。第1ロータリーエンコーダー74は、給送モーター16の回転量に比例する数のパルスを含むエンコーダー信号を制御部70に出力する。制御部70は、第1ロータリーエンコーダー74から入力する第1エンコーダー信号に基づいて繰出部15によりロール101から繰り出される媒体99の繰出し量(給送量)を検出する。
【0051】
また、第2ロータリーエンコーダー75は、搬送部14を構成する搬送モーター72の回転を検出する。第2ロータリーエンコーダー75は、搬送モーター72の回転量に比例する数のパルスを含むエンコーダー信号を制御部70に出力する。制御部70は、第2ロータリーエンコーダー75から入力する第2エンコーダー信号に基づいて搬送ローラー対24が媒体99を搬送する搬送量を検出する。
【0052】
また、制御部70には、給送モーター16、搬送モーター72、巻取モーター18、吐出部28、キャリッジモーター73、吸引機構30及び吸引力付与部40が電気的に接続されている。搬送モーター72は、搬送部14を構成する駆動ローラー25の駆動源である。キャリッジモーター73は、キャリッジ29の駆動源である。なお、印刷装置11は、シリアルプリンターに替えてラインプリンターでもよく、その場合は、図5からキャリッジモーター73をなくした構成となる。
【0053】
制御部70が、ホスト装置110から受信する印刷ジョブPJには、印刷制御に必要な各種のコマンドと、ユーザーにより指定された印刷条件情報と、印刷画像データとが含まれる。制御部70は、印刷ジョブPJに含まれる印刷条件情報に基づき各種のモーター16,18,72等を制御するとともに、印刷画像データに基づき吐出部28を制御してノズル28Nから液体を吐出することで、媒体99に液滴が着弾してできるドットで画像を描画する。
【0054】
また、制御部70は、図示を省略するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを含んで構成される。制御部70は、印刷装置11における媒体99の搬送や、印刷部27による媒体99への情報の印刷動作を制御する。詳しくは、制御部70は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、制御部70は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(例えば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、制御部70は、コンピュータープログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサー、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等の記憶部80を含み、記憶部80は、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。記憶部80すなわちコンピューター可読媒体は、汎用又は専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0055】
図5に示す制御部70のCPUは、記憶部80に記憶された制御プログラムを実行することにより、印刷制御を含む各種の制御を司る。記憶部80には、この制御プログラムの他、吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を決定する際に参照される参照データRDが記憶されている。
【0056】
また、制御部70は、CPUがプログラムを実行することで構成されるソフトウェアよりなる機能部分として、媒体種判定部81、ロール重量推定部82、ロール径推定部83、及び搬送負荷検出部84を備える。
【0057】
媒体種判定部81は、媒体99の種類である媒体種を判定する。媒体種判定部81は、印刷ジョブPJに含まれる印刷条件情報中の媒体種情報を基に媒体種を判定する。媒体種として、普通紙、光沢紙、マット紙などが含まれる。また、媒体種の情報には、媒体厚に関する坪量の情報が含まれる。このため、媒体種判定部81は、媒体種を、普通紙、光沢紙等の種類に限らず、坪量の情報を用いて媒体厚で分けた薄紙や厚紙などを区別して媒体種を判定する。
【0058】
制御部70は、吸引力付与部40を制御する。詳しくは、制御部70は、吸引力付与部40を制御することで媒体99に吸引力を付与するとともに、搬送部14よりも搬送方向Y1の下流の部分の媒体99にテンションを付与するように繰出部15を制御するテンション制御を行ってもよい。
【0059】
また、制御部70は、吸引力付与部40を制御することで媒体99に吸引力を付与するとともに、吸引力付与部40と繰出部15との間の部分の媒体99に弛みを形成する弛み制御を行ってもよい。
【0060】
制御部70は、媒体99の種類を判定する判定部の一例として媒体種判定部81を備える。制御部70により制御される吸引力付与部40は、媒体99の種類(媒体種)に応じた吸引力を媒体99に付与する。
【0061】
制御部70は、媒体種判定部81が判定した媒体種を基に参照データRDを参照することで、媒体種に応じた吸引力を決定する。制御部70は、その決定した吸引力で媒体99を吸引できるように吸引力付与部40を駆動制御する。詳しくは、制御部70は、決定された吸引力が得られるように、第2圧力センサー45の検出圧力値が目標圧力(目標負圧)に達するように吸引ファン44の回転速度を制御する。
【0062】
ロール重量推定部82は、ロール101の重量であるロール重量を推定する。作業者が媒体99の種類である媒体種と、ロール101の初期ロール径を入力する。媒体99の厚さは媒体種の情報から取得される。また、給送モーター16の回転を検出する第1ロータリーエンコーダー74からのエンコーダー信号に基づいてロール101の回転量を取得する。ロール重量推定部82は、媒体99の厚さとロール101の回転量とから、1回転ごとに厚さの2倍の値だけロール径は短くなる関係から決まる計算式に基づいてロール101のロール径を計算して推定する。そして、媒体99の幅寸法が既知であるので、ロール101の体積が算出され、媒体99の体積と比重とからロール重量が算出される。制御部70は、ロール重量推定部82が推定したロール101の重量に応じて吸引力付与部40の吸引力を制御する。このように、吸引力付与部40は、ロール101の重量に応じた吸引力を媒体99に付与する。
【0063】
ロール径推定部83は、繰出部15に支持されたロール101の径であるロール径を推定する。ロール径推定部83は、媒体99の印刷条件情報から媒体種及び坪量を取得する。また、ユーザーは、操作パネル50又はホスト装置110の操作部112を操作することで、繰出部15に装着された際の初期ロール径を入力しておく。ロール径推定部83は、給送モーター16の回転を検出する第1ロータリーエンコーダー74から入力したエンコーダー信号のパルスエッジの数を計数することで、ロール101の繰出し回転量を取得する。ロール径推定部83は、初期ロール径と繰出し回転量と媒体厚とを用いて現在のロール径を推定する。なお、ロール径推定部83は、繰出部15に装着されたロール101のロール径を計測するセンサーを備え、センサーの検出値を基にロール径を計測して推定する構成でもよい。制御部70は、ロール径推定部83が推定したロール101の径(ロール径)に応じて吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を制御する。このように、吸引力付与部40は、ロール101の径に応じた吸引力を媒体99に付与する。
【0064】
搬送負荷検出部84は、搬送ローラー対24が媒体99を搬送するときの搬送負荷を検出する。この搬送負荷は、搬送ローラー対24の駆動ローラー25を駆動する搬送モーター72が受けるモーター負荷として検出される。搬送モーター72を駆動する電流値(モーター電流値)を検出することで、その電流値を、モーター負荷、すなわち搬送負荷として検出する。
【0065】
なお、制御部70は、電源投入後、媒体99が搬送部14にセットされた状態の下で、リールメジャメント開始の指示を受け付けると、リールメジャメントを実行する。リールメジャメントでは、媒体99にテンションが作用していない状態の下で、巻取部17に媒体99を巻き取らせるときの巻取り負荷を測定する。そして、制御部70は、このリールメジャメントの測定結果から得られる巻取り負荷のトルク換算値に、媒体種及び媒体幅に応じた媒体99に作用させるべき目標テンションのトルク換算値を加算して、巻取モーター18の制御上の目標回転トルクを求める。制御部70は、求めた目標回転トルクで巻取モーター18を制御することで、巻取り中の媒体99における搬送部14とロール102との間の領域に作用するテンションであるフロントテンションを付与してもよい。
【0066】
また、制御部70は、搬送部14が媒体99を搬送する搬送量と、繰出部15がロール101から媒体99を繰り出す送り量とを制御することで、媒体99におけるロール101と搬送部14との間の領域に作用するバックテンションBTを付与してもよい。詳しくは、制御部70は、搬送量よりも繰出し量を僅かに少なく制御しローラーに微小な滑りを発生させつつ媒体99を搬送することで、媒体99にバックテンションBTを付与してもよい。
【0067】
湿度が高い場合、媒体99が大気中の水分を吸収してその含水率が増える。媒体99は、含水量が増えると、紙繊維が吸水して柔らかくなりしわが発生し易くなる。また、インク等の液体の付着後の媒体99は総水分量が多くなる。そのため、媒体99が膨潤・収縮する際の伸縮量が大きくなることに起因し、しわが発生し易くなる。そして、印刷前の部分と印刷後の部分とで収縮量が異なると、例えば、印刷領域で媒体99が膨潤・収縮することで発生したしわが搬送ローラー対24よりも上流へ伝播する場合もある。このように、湿度が高いことは、媒体99に対してしわを発生し易くする。このため、本実施形態では、印刷装置11の周辺の湿度を検出し、湿度により媒体99のしわの発生し易さを管理する。
【0068】
そして、制御部70は、しわの発生し易さの情報を基に吸引力付与部40を制御する。
また、制御部70は、ロール重量に応じて吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を制御する。詳しくは、制御部70は、ロール重量推定部82が推定したロール重量が大きいほど、媒体99に付与する吸引力が小さくなるように吸引力付与部40を制御する。換言すれば、制御部70は、ロール重量が小さくなるに連れて媒体99に付与する吸引力を大きくするように吸引力付与部40を制御する。
【0069】
また、制御部70は、ロール径に応じて吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を制御する。ここで、トルクを一定とすると、媒体99に作用する張力とロール径は反比例の関係にある。そのため、ロール径が変化しても媒体種に応じた適切な目標張力に保つためには、ロール径に応じてモータートルクを制御する必要がある。詳しくは、制御部70は、ロール径推定部83が推定したロール径が大きいほどモータートルクを大きくするように給送モーター16を制御する。換言すれば、制御部70は、ロール径推定部83が推定したロール径が小さくなるに連れてモータートルクを小さくするように給送モーター16を制御する。
【0070】
ここで、吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力が大きくなると、媒体99が支持面21Aから受ける抗力が大きくなるので、媒体99が支持面21Aから受ける摩擦力fs(図2参照)が大きくなる。この摩擦力fsは、搬送ローラー対24に対して搬送方向Y1の上流側の部分の媒体99に働くバックテンションBTを大きくする。
【0071】
但し、バックテンションBTが大きくなると、搬送ローラー対24と媒体99とが滑り易くなるので、搬送位置精度が低下する。一方、搬送位置精度を高めるためにバックテンションBTを小さくすると、搬送ローラー対24よりも搬送方向Y1の上流側の部分の媒体99が支持面21Aから浮きやすくなる。これが、媒体99にしわが発生し易くなる原因にもなる。つまり、搬送位置精度の向上のための対策と、しわの抑制のための対策は、トレードオフの関係にある。
【0072】
さらに、制御部70は、搬送負荷検出部84が検出した搬送負荷(モーター負荷)に基づいて搬送モーター72を制御する。搬送負荷検出部84が検出した搬送負荷が大きくなると、吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力を小さくする。つまり、吸引力を弱めて摩擦力fsを小さくすることで、搬送ローラー対24の搬送負荷を小さくする。
【0073】
次に、図6を参照して、参照データRDについて説明する。参照データRDは、例えば、媒体種と吸引力との対応関係とを示すテーブルデータである。媒体種ごとに吸引力が設定されている。図6に示す例では、媒体Aは吸引力aと対応付けられ、媒体Bは吸引力bと対応付けられ、媒体Cは吸引力cと対応付けられている。媒体種A,B,C,…は、例えば、普通紙、写真紙、光沢紙、マット紙、上質紙ななどである。吸引力a,b,c,…は、例えば、吸引力付与部40の吸引ファン44の回転速度を決める。なお、図6に示す参照データRDは、媒体種A,B,C,…と、吸引ファン44の回転速度Va,Vb,Vc,…との対応関係を示すテーブルデータであってもよい。
【0074】
また、しわ発生し易さは、媒体99の厚さ(坪量)、剛性(ヤング率)及び環境等に依存する。
図7は、媒体種の性質と、吸引力との関係を示すグラフである。このグラフで示される関係を満たすように、参照データRDは作成される。図7に示すグラフは、横軸がしわ発生し易さ、縦軸が吸引力である。
【0075】
図7に示すように、媒体99は、媒体種に応じてしわ発生し易さが異なる。このため、しわを抑制できる吸引力の範囲のうちなるべく小さめの吸引力が媒体種ごとに設定されてもよい。これは、吸引力が強くバックテンションBTが大きくなり過ぎると、印刷時の吐出部28と対向する印刷位置に搬送される媒体99の搬送位置精度が低下するからである。このグラフ線L1から分かるように、しわ発生し易さが大きい媒体種には大きな吸引力が設定され、しわ発生し易さが小さい媒体種には小さな吸引力が設定される。これにより媒体99の搬送位置精度の向上としわ抑制効果とを両立する。なお、しわ発生し易さが小さい媒体種には吸引力「0」が設定されてもよい。つまり、吸引力が付与されない媒体種がある設定でもよい。
【0076】
次に、図8図9を参照して、ロール径とロール重量に応じて吸引力を変化させる制御について説明する。図8は、ロール重量と吸引力との関係を示すグラフである。また、図9は、ロール径と吸引力との関係を示すグラフである。
【0077】
図8のグラフ線L2に示すように、ロール重量が大きいほど吸引力が小さな値に設定されてもよい。ロール101が新しく交換された初期は、ロール重量が最も大きい。そして、印刷が進むに連れてロール101のロール径及びロール重量が徐々に小さくなる。ロール101のロール重量は、媒体99に対してバックテンションBTを大きくするように働く。このため、バックテンションBTを適度な値に調整するために媒体99に付与される吸引力は、ロール重量が大きいうちは小さくし、ロール重量が小さくなるに連れて大きな値に調整される。
【0078】
図9のグラフ線L3に示すように、ロール径が大きいほど吸引力が小さな値に設定されてもよい。ロール101が新しく交換された初期は、ロール径が最も大きい。そして、印刷が進むに連れてロール101のロール径が徐々に小さくなる。印刷モードが同じ場合など同じ印刷条件の下では給送モーター16の駆動トルクが同じであるとすると、ロール径が大きいほど、媒体99の繰り出しを開始するときのロール101の角加速度が小さくなる。つまり、ロール径が大きいほどロール101の回転開始遅れが発生し易い。ロール101の回転開始遅れは、媒体99にバックテンションBTを大きくする方向の力を付与する。吸引力付与部40が吸引力により媒体99に付与する摩擦力fsが一定の下では、搬送部14の送り量とロール101の繰出し量とが同じであれば搬送部14とロール101との間の経路での媒体99のテンションは基本的に維持される。しかし、ロール101の回転開始遅れは、その遅れ発生期間で媒体99の繰出し量が少なくなることから、バックテンションBTを大きくする方向に作用する。そのため、制御部70は、ロール101の回転開始遅れによるバックテンションBTの増加分に相当する分だけ、吸引力付与部40の吸引力を小さくする。換言すれば、制御部70は、図9のグラフ線L3に示すように、ロール径が小さくなるに連れて吸引力を大きくするように吸引力付与部40を制御する。
【0079】
ロール101の角加速度は、ロール101及び繰出部15の回転系のイナーシャー(慣性モーメント)に依存する。このイナーシャーはロール径(半径)に依存するため、角加速度はロール径に依存する。つまり、ロール回転開始時の角加速度は、ロール径が大きいほど小さくなる。このため、ロール径(つまりイナーシャー)が大きいうちは、回転開始遅れに起因して発生するテンションを考慮し、吸引力付与部40の吸引力を小さくする。そして、ロール径が小さくなるに連れて、回転開始遅れに起因するテンションも小さくなるので、吸引力付与部40の吸引力を徐々に大きくする。このように、制御部70は、ロール101のロール径に応じて吸引力付与部40の吸引力を制御する。
【0080】
本実施形態の制御部70は、給送モーター16に対して、ロール101のロール重量及びロール径に応じてバックテンションBTを調整する制御は行わない。つまり、制御部70は、搬送部14の送り量及び送り速度に応じて、過度なテンションが発生しないように繰出部15の繰出し量及び繰出し速度を制御するものの、テンションを目標値に調整するバックテンション制御(BTC制御)は行わない。制御部70は、ロール101のロール重量及びロール径の変化に応じて、ロール101からの繰出し速度及び繰出し量がそれぞれの目標値(目標速度、目標量)になるような給送モーター16の駆動速度及び駆動量を算出し、これらの算出した制御値に基づいて給送モーター16を制御する。このため、繰出部15から繰り出される媒体99のテンションはある範囲内でばらつく。
【0081】
<実施形態の作用>
次に、印刷装置11の作用について説明する。
ユーザーが、ホスト装置110の操作部112又は印刷装置11の操作部52を操作することで、印刷条件情報を入力する。印刷条件情報には、媒体サイズ、媒体種、印刷色(カラー/モノクロ)、印刷回数(印刷層数)、印刷解像度などの情報が含まれる。なお、媒体種は、ユーザーが操作部を操作して入力してもよいし、印刷条件情報に含まれる情報から制御部70が媒体種を取得してもよい。なお、媒体種は、普通紙や写真紙のような紙質ごとに区分される一般的な媒体種でもよいし、更に厚さ(坪量)の情報を加え、厚さ(坪量)ごとにも区分された媒体種であってもよい。また、印刷装置11がカメラやイメージセンサー等の撮像部を備え、撮像部が撮像した媒体99の画像に基づいて制御部70が媒体種を判定することで媒体種の情報を取得してもよい。
【0082】
ユーザーは、例えば、繰出部15に新しいロール101を装着し、ロール101から引き出した所定長さの媒体99を搬送ローラー対24にニップさせることで、搬送部14に媒体99をセットする。なお、ユーザーは、印刷を開始する前に、ホスト装置110の操作部112又は印刷装置11の操作部52を操作して、事前に、制御部70にリールメジャメントを指示している。制御部70は、リールメジャメントにおいて、張力なしの状態で媒体99を搬送した際のモーター負荷を計測する。こうして、制御部70は、媒体99にテンションが作用していないときの給送モーター16及び搬送モーター72の負荷を検出する。
【0083】
そして、ユーザーは、ホスト装置110の操作部112又は印刷装置11の操作部52を操作して印刷ジョブPJを指示する。制御部70は、印刷ジョブPJに含まれるコマンドに基づいて、繰出部15、搬送部14、巻取部17、及び印刷部27を制御することで、媒体99に印刷画像データに基づく文字又は画像を印刷させる。
【0084】
印刷中においてロール101と搬送ローラー対24との間の媒体99の部分には、吸引力付与部40により吸引力が付与される。吸引箇所SAにおいて媒体99は吸引力に応じた面圧で支持面21Aに接触する。このため、吸引箇所SAに至る前に仮に浮きが発生してもその浮きは媒体99と支持面21Aとの面圧により潰される。この結果、媒体99の浮きを原因とするしわの発生が抑制される。
【0085】
また、吸引箇所SAにおける媒体99と支持面21Aとの間には吸引力に応じた面圧に基づく摩擦力fsが発生する。この摩擦力fsにより吸引箇所SAと搬送ローラー対24との間の媒体99の部分にバックテンションBTが作用する。
【0086】
仮に、吸引箇所SAと搬送ローラー対24との間の媒体99の部分に縦じわ等のしわが発生していた場合、バックテンションBTを受けた媒体99が搬送ローラー対24に対して幅方向Xに広がるように滑ることで、縦じわ等のしわは消滅又は縮小する。この結果、しわが搬送ローラー対24に挟まれてできる折れじわの発生が抑制される。よって、折れじわに起因する印刷不良の発生頻度が低下する。
【0087】
また、吸引力に応じた面圧の効果で、浮きの発生が抑制されるとともに一旦発生した浮きは潰されることから、仮にしわが発生してもそのしわが相対的に小さくなる。そのため、搬送ローラー対24に対して媒体99を幅方向Xに広げるように滑らせてしわを消滅又は縮小させるために必要なバックテンションBTが相対的に小さく済む。その結果、バックテンションBTによって媒体99が搬送ローラー対24に対して搬送方向Y1に滑る滑り量を抑制できる。よって、媒体99の搬送位置精度が向上するため、印刷画質が向上する。
【0088】
また、吸引力付与部40が媒体99に付与する吸引力は、図6に示す参照データRDに基づいて媒体種に応じて変化する。図7に示すように、しわ発生し易さの高い媒体種には相対的に大きな吸引力が付与され、しわ発生し易さの低い媒体種には相対的に小さな吸引力が付与される。換言すれば、しわ発生し易さの高い第1の媒体種には、第1の媒体種よりもしわ発生し易さの低い第2の媒体種よりも大きな吸引力が付与される。
【0089】
よって、が媒体種ごとにしわの消滅・縮小に必要な最小限度に近い吸引力が媒体99に付与される。例えば、吸引力が媒体種によらず一定である場合、しわ発生し易さの高い媒体種に吸引力を合わせる必要がある。この場合、しわ発生し易さの低い媒体種の媒体99には、過剰な吸引力による過度なバックテンションBTが付与される。その結果、過度なバックテンションBTにより搬送ローラー対24に対する不要な媒体99の滑りを誘発する場合がある。この場合、媒体99の搬送位置精度の低下及び印刷画質の低下がもたらされる可能性がある。
【0090】
本実施形態の印刷装置11では、媒体99に付与する吸引力が媒体種に応じた適切な値に調整される。よって、過度なバックテンションBTによる媒体99の搬送位置精度の低下及び印刷画質の低下が抑制される。
【0091】
また、吸引箇所SAに発生する摩擦力fsによって、ロール101から伝わるテンションが吸引箇所SAで遮断される。この結果、ロール101からのテンションが、吸引箇所SAと搬送ローラー対24との間の部分に影響しにくい。よって、制御部70が吸引力付与部40の吸引力を制御することによって、バックテンションBTをコントロールし易い。
【0092】
例えば、ロール101の重量や径の変化によって媒体99がロール101から受けるテンションが変化する。この変化するテンションが吸引箇所SAよりも搬送方向Y1の下流側に伝播すると、バックテンションBTをコントロールしにくくなる。しかし、本実施形態の印刷装置11では、ロール101からのテンションが吸引箇所SAで遮断されるため、吸引箇所SAより搬送方向Y1の下流側に伝わりにくい。ロール101からのテンションはばらつき易いが、吸引箇所SAで遮断され易くなるので、バックテンションBTをコントロールし易くなる。
【0093】
ただし、ロール101からのテンションはある比率で吸引箇所SAよりも下流側に伝わる。そのため、本実施形態の制御部70は、ロール101のロール重量を推定し、その推定値に基づいて吸引力付与部40の吸引力を制御する。詳しくは、ロール重量推定部82が、初期ロール重量と、初期ロール重量の時点から現在までの媒体99の繰出し量とに基づいて現在のロール重量を推定する。ロール重量が大きいうちはロール101の重量に起因するテンションがバックテンションBTに影響する比率が大きいので、その比率の分だけ吸引力付与部40の吸引力を小さな値に調整する。そして、制御部70は、推定されるロール重量が小さくなるに連れてロール重量に起因するテンションがバックテンションBTに影響する比率が徐々に小さくなるので、吸引力付与部40の吸引力を徐々に大きな値に調整する。
【0094】
また、ロール径推定部83が、初期ロール径と、初期ロール径の時点から現在までの媒体99の繰出し量とに基づいて現在のロール径を推定する。ロール径が大きいうちは、ロール101を含む回転系のイナーシャーが大きいため、ロール101の回転開始遅れが発生し易い。ロール101の回転開始遅れは、ロール101から過度なテンションが生じ易くなる。
【0095】
制御部70は、第1ロータリーエンコーダー74の検出信号に基づくロール101の回転速度と回転量と、第2ロータリーエンコーダー75の検出信号に基づく搬送ローラー対24の送り速度と送り量とを制御する。これによりロール101と搬送ローラー対24との間に過度なテンションが発生しない制御が行われる。しかし、ロール101の径が大きいうちは、ロール101の回転開始遅れに起因するロール101からのテンションがバックテンションBTに影響する比率が大きくなる。制御部70は、この比率に応じて吸引力付与部40の吸引力を制御する。詳しくは、制御部70は、図9に示すように、ロール径が大きいうちは、吸引力付与部40の吸引力を小さくし、ロール径が小さくなるに連れて吸引力付与部40の吸引力を大きくする。この結果、ロール101の回転開始遅れに起因するテンションが、バックテンションBTに悪影響を及ぼすことが回避される。
【0096】
また、図5に示す印刷装置11は、搬送負荷検出部84が搬送モーター72の負荷(搬送負荷)を検出する。制御部70は、検出された実搬送負荷が目標搬送負荷に近づくように吸引力付与部40の吸引力をフィードバック制御する。すなわち、実搬送負荷が目標搬送負荷よりも大きいときは、吸引力付与部40の吸引力を小さな値に変更する。一方、実搬送負荷が目標搬送負荷よりも小さいときは、吸引力付与部40の吸引力を大きな値に変更する。こうして搬送モーター72の実搬送負荷を目標搬送負荷に近づける。この結果、バックテンションBTのばらつき等があっても、媒体99は搬送ローラー対24によりほぼ一定の搬送負荷で搬送される。この結果、媒体99の搬送位置精度が高く維持される。
【0097】
従来、中間ローラーを備える構成の印刷装置では、ユーザーが媒体99をセットする際やジャム発生時に中間ローラーを移動させる必要があるため、作業性が低下する。また、中間ローラーを移動させる機構が必要になるうえ、その機構が重量物であれば機構を支持する装置フレームの剛性を高める必要がある。このため、印刷装置が大型化し易い。
【0098】
これに対して、本実施形態の印刷装置11は、作業の邪魔になる中間ローラーがないので、媒体99のセット作業及びジャム発生時の媒体除去作業が簡単に済む。そのうえ、中間ローラーを移動させる機構が不要なうえ、その機構を支持する装置フレームの剛性を高める必要もほとんどない。また、吸引力付与部40は、搬送経路を形成する支持部21の下側の空きスペースに配置できる。よって、本実施形態の印刷装置11は、作業性の確保と簡単な構成とを両立できる。
【0099】
<実施形態の効果>
実施形態の効果について説明する。
(1)印刷装置11は、搬送部14、印刷部27、支持部21及び吸引力付与部40を備える。支持部21は、搬送部14が印刷媒体99を搬送する搬送方向Y1において搬送部14より上流の位置において、印刷媒体99を支持する支持面21Aを有する。吸引力付与部40は、支持面21Aに沿って搬送される印刷媒体99に対して支持面21Aに引き付ける吸引力を付与することで印刷媒体99と支持面21Aとの間に吸引力に基づく面圧を発生させる。この構成によれば、搬送される印刷媒体99と支持面21Aとの間の吸引力に基づく面圧により生じる摩擦力fsにより、吸引箇所SAと搬送部14との間の印刷媒体99の部分にテンションを付与することができる。よって、作業性を損なわず且つ比較的簡単な構成で、搬送部14に送られる前の印刷媒体99のしわを抑制できる。
【0100】
(2)支持部21は吸引孔42を有する。吸引力付与部40は、吸引孔42に負圧を発生させる吸引ファン44を有する。この構成によれば、吸引孔42に発生する負圧による吸引力により印刷媒体99と支持面21Aとの間に吸引力に基づく面圧を発生させることができる。
【0101】
(3)支持部21の支持面21Aが曲面である。この構成によれば、支持部21の支持面21Aが曲面(弧状)であるので、吸引された印刷媒体99の浮きを効果的に潰すことができる。よって、印刷媒体99のしわを抑制できる。
【0102】
(4)搬送部14よりも搬送方向Y1の上流の位置で印刷媒体99をロール状に巻き重ねたロール101を支持し、ロール101から印刷媒体99を繰り出す繰出部15を備える。繰出部15が搬送部14及び支持部21に対して鉛直方向Zの下方に位置する。この構成によれば、ロール101の重量によって印刷媒体99を曲面に押し付けることができる。よって、平面と比べ印刷媒体99に浮きが発生しにくい。
【0103】
(5)吸引孔42は、支持面21Aに開口するか、あるいは支持面21Aに凹設された溝21Bの底面に開口する。この構成によれば、印刷媒体99を効率よく吸引することができる。
【0104】
(6)吸引孔42又は溝21Bは、搬送方向Y1において繰出部15と搬送部14との間における印刷媒体99の経路の中央よりも搬送部14側に位置する。この構成によれば、吸引孔42又は溝21Bが繰出部15よりも搬送部14に近い側に位置するので、搬送部14にしわが搬入されてできる折れじわの発生を抑制し易い。
【0105】
(7)制御部70は、印刷媒体99の種類を判定する媒体種判定部81を備える。吸引力付与部40は、媒体種判定部81が判定した印刷媒体99の種類(媒体種)に応じた吸引力を印刷媒体99に付与する。この構成によれば、印刷媒体99の種類に応じた適切なテンションを印刷媒体99に付与することができる。よって、印刷媒体99に過度な吸引力を付与することなく浮きやしわを抑制できる。
【0106】
(8)吸引力付与部40を制御する制御部70を備える。制御部70は、吸引力付与部40を制御することで印刷媒体99に吸引力を付与するとともに、吸引力付与部40と繰出部15との間の部分の印刷媒体99に弛みを形成する弛み制御を行う。この構成によれば、印刷媒体99により適切なテンションを付与することができる。よって、印刷媒体99に浮きやしわが発生しにくい。
【0107】
(9)印刷装置11は、ロール101の重量を推定するロール重量推定部82を備える。吸引力付与部40は、ロール101の重量に応じた吸引力を印刷媒体99に付与する。この構成によれば、ロール101の重量が変化しても、印刷媒体99に適切なテンションを付与することができる。よって、印刷媒体99に浮きやしわが発生しにくい。
【0108】
(10)印刷装置11は、ロール101の径を推定するロール径推定部83を備える。吸引力付与部40は、ロール101の径に応じた吸引力を印刷媒体99に付与する。この構成によれば、ロール101の径が変化しても、印刷媒体99に適切な張力を付与することができる。よって、印刷媒体99に浮きやしわが発生しにくい。
【0109】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・吸引力付与部40は、負圧により空気を吸引する吸引気流による吸引力を付与する構成に限定されない。吸引力付与部40は、例えば、図10に示す静電気発生部90でもよい。静電気発生部90は、印刷媒体99に静電気による吸引力を付与する。静電気発生部90は、支持部21に支持される印刷媒体99を帯電させる帯電部91を有する。図10に示す例では、帯電部91は、印刷媒体99の被支持面(裏面)とは反対側の面である表面に近接して位置する。帯電部91は、印刷媒体99に例えば正電荷を帯電させる。印刷媒体99を支持する支持部21は、負電荷に帯電されており、正電荷に帯電した印刷媒体99は、静電気に基づく吸引力(クーロン力)によって支持部21の支持面21Aに引き付けられる。制御部70は、静電気発生部90を制御することで印刷媒体99の種類である媒体種に応じた帯電量で印刷媒体99を帯電させる。これにより、制御部70は、印刷媒体99と支持面21Aとの間に働く吸引力(クーロン力)を媒体種ごとに制御する。そして、静電気による吸引力に基づく面圧により反搬送方向-Y1の摩擦力fsが作用することで、印刷媒体99のうち搬送ローラー対24よりも搬送方向Y1の上流の部分にバックテンションBTを付与することができる。つまり、印刷媒体99に媒体種に応じた強さのバックテンションBTを付与することができる。これにより印刷媒体99のしわの発生が抑制されるとともに、仮にしわが発生してもそのしわを搬送ローラー対24に搬入される前に潰すことができる。これにより、しわが搬送ローラー対24に挟まれてできる折れじわを抑制できる。さらに、媒体種に応じた適度なバックテンションに調整されるので、搬送ローラー対24における印刷媒体99の滑りを抑制できる。よって、印刷媒体99の搬送位置精度を高めることができ、ひいては印刷品質を向上させることができる。
【0110】
図11に示すように、単票紙である印刷媒体99に印刷する印刷装置100でもよい。印刷装置100は、印刷媒体99を載置する載置部93と、載置部93に載置された印刷媒体99を給送する給送ローラー94と、給送された印刷媒体99を支持する支持面95Aを有する支持部95とを備える。搬送部14を構成する搬送ローラー対24は、給送ローラー94よりも搬送方向Y1の下流に位置する。印刷媒体99のうち給送ローラー94と搬送ローラー対24との間の部分は、支持面95Aに支持される。搬送方向Y1において搬送ローラー対24よりも上流かつ給送ローラー94よりも下流の領域に印刷媒体99に吸引力を付与する吸引力付与部40が配置されている。吸引力付与部40は、搬送される印刷媒体99を支持面95Aに引き付ける吸引力を印刷媒体99に付与する。支持部95の支持面95Aは平面である。そして、図11に示す例では、支持面95Aは、水平方向に沿って延びる平面である。搬送ローラー対24の搬送方向Y1の下流には、印刷中の吐出部28と対向する印刷位置で印刷媒体99を支持する支持台22と、さらに支持台22よりも搬送方向Y1の下流位置で印刷媒体99を排出する排出ローラー対96とを備える。
【0111】
・制御部70は、印刷装置11がシリアルプリンターである場合、印刷媒体99の搬送中と停止中とで吸引力を異なる値に調整してもよい。例えば、印刷媒体99の搬送中の吸引力を、印刷媒体99の停止中の吸引力よりも弱くしてもよい。この構成によれば、印刷媒体99の停止中に行われる印刷時に印刷媒体99が外力等により位置ずれすることを抑制できるので、印刷位置精度の向上に繋がる。
【0112】
・ロール101から繰り出される印刷媒体99の部分に弛みを形成する弛み制御を行ってもよい。つまり、制御部70は、吸引箇所SAとロール101との間の印刷媒体99の部分に弛みを形成するように給送モーター16を制御する。詳しくは、制御部70は、繰出部15を制御することでロール101から繰り出される印刷媒体99に弛みを形成する弛み制御を行う。これと共に、制御部70は、吸引力付与部40を制御することで吸引力に基づく面圧に応じた摩擦力fsにより印刷媒体99のうち搬送部14と吸引力付与部40との間の部分のテンションを制御する。制御部70は、第1ロータリーエンコーダー74の検出信号に基づき取得される搬送部14の送り量と、第2ロータリーエンコーダー75の検出信号に基づき取得される繰出部15の繰出し量とを管理する。そして、制御部70は、送り量と繰出し量との各情報から印刷媒体99に弛みが形成されるように給送モーター16を制御する。この構成によれば、繰出部15の繰出し動作にさほど影響されず、印刷媒体99のうち吸引箇所SAと搬送部14との間の部分に適切なテンションを付与することができる。
【0113】
・制御部70は、ロール径に応じてロール101から印刷媒体99が繰り出される際の繰出しトルクが一定になるように給送モーター16を制御してもよい。給送モーター16が印刷媒体99を一定の角加速度で繰り出すために必要なトルク(繰出しトルク)は、ロール101及び繰出部15の回転系のイナーシャーとロール径(半径)の積に比例する。このため、ロール径が大きくロール101を含む回転系のイナーシャーが大きいうちは給送モーター16の電流値を増分値だけ大きくし、一方、ロール径が小さくなるに伴いロール101を含む回転系のイナーシャーが小さくなるに連れて給送モーター16の電流値を減分値だけ小さくする。これにより、印刷媒体99がロール101から繰り出される繰出しトルクが一定に近づくので、吸引力付与部40により調整されるバックテンションBTが安定する。なお、この制御において、ロール径に替えてロール重量の推定値を用いてもよい。ロール径とロール重量は一定の関係があるので、例えば、図9に示すグラフ線L3を、ロール重量と吸引力との関係を示すグラフ線に変換し、変換後のグラフ線に従って吸引力付与部40の吸引力を制御してもよい。
【0114】
・前記実施形態において、吸引力付与部40を用いてバックテンションコントロール制御(BTC制御)を行う構成において、さらに給送モーター16を用いたバックテンションコントロール制御(BTC制御)を行ってもよい。なお、ここでいう給送モーター16を用いたBTC制御とは、給送モーター16の制御によりバックテンションBTを適度な値に調整する制御である。印刷装置11の機種、印刷条件や媒体種によっては、吸引力付与部40の制御だけでは適切なバックテンションBTに対応できない限界がある場合に、その限界を超えた不足分を給送モーター16を用いたBTC制御により補う。換言すれば、制御部70は、ロール101から繰り出される印刷媒体99にテンションを付与するように繰出部15を制御する。これと共に、制御部70は、吸引力付与部40を制御することで吸引力に基づく面圧に応じた摩擦力fsにより印刷媒体99のうち搬送部14と吸引力付与部40との間の部分のテンションを制御する。これにより、制御部70にとって給送モーター16に対する制御が1つ増えるものの、吸引力付与部40のみでBTC制御を行う場合に比べ、搬送される印刷媒体99のうち吸引箇所SAと搬送部14との間の部分に適切なバックテンションBTを付与することができる。すなわち、繰出部15が繰り出す際の印刷媒体99のテンションを利用して、印刷媒体99のうち吸引箇所SAと搬送部14との間の部分に適切なバックテンションBTを付与することができる。
【0115】
・前記実施形態において、検出した実搬送負荷を目標搬送負荷に近づけるように吸引力を調整するフィードバック制御(TFB制御)を吸引力付与部40に対して行ったが、搬送モーター72に対してフィードバック制御(TFB制御)を行ってもよい。すなわち、制御部70は、搬送モーター72に対して、搬送負荷検出部84が検出した実搬送負荷を目標搬送負荷に近づけるように搬送モーター72の電流値を制御する。なお、吸引力付与部40に対するTFB制御に加え、搬送モーター72に対するTFB制御を行ってもよいし、吸引力付与部40に対するTFB制御に替え、搬送モーター72に対するTFB制御を行ってもよい。特に前者の場合、印刷媒体99における搬送部14よりも搬送方向Y1の上流側の部分に作用するバックテンションBTを一層適度な値に調整することができる。
【0116】
・前記実施形態では、媒体種に応じて吸引力付与部40の吸引力を変化させたが、媒体種によらず一定の吸引力を印刷媒体99に付与してもよい。この構成によっても、作業性を損なわず且つ比較的簡単な構成で、浮きやしわの発生抑制効果、バックテンションBTの付与によるしわの解消・縮小の効果が得られる。
【0117】
・前記実施形態では、ロール重量、ロール径、搬送負荷などに応じて吸引力付与部40の吸引力を変化させたが、これらによらず一定の吸引力を印刷媒体99に付与してもよい。この構成によっても、作業性を損なわず且つ比較的簡単な構成で、浮きやしわの発生抑制効果、バックテンションBTの付与によるしわの解消・縮小の効果が得られる。
【0118】
・前記実施形態において、支持台22は、吸引機構30を備えない構成でもよい。すなわち、支持台22は、吸引孔32を有しない支持面22Aで印刷媒体99を支持する構成でもよい。
【0119】
・吸引力付与部40は、エア吸引力や静電気力による吸引力を印刷媒体99に付与する構成に限定されず、他の原理を用いて吸引力を発生させるものでもよい。例えば、磁力を用いて吸引力を印刷媒体99に付与する構成でもよい。例えば、磁性を帯びた印刷媒体99を磁力による吸引力で支持部21,95に吸着させるものでもよい。
【0120】
・吸引孔42は、円孔に限らず、長孔であってもよい。例えば、長孔は、幅方向Xに延びていてもよいし、搬送方向Y1に沿って延びていてもよい。さらに長孔は、幅方向Xと搬送方向Y1との二方向に成分をもつ斜め方向に延びていてもよい。
【0121】
・複数の吸引孔42を幅方向Xに沿って1列に配置する構成に限定されず、複数の吸引孔42を搬送方向Y1に沿って1列に配置する構成でもよい。この場合、搬送方向Y1に沿う吸引孔42の列を、幅方向Xに複数列配置する構成でもよい。
【0122】
・支持部21の支持面21Aが水平面であってもよい。また、搬送部14よりも鉛直方向Zの上方に位置するロール101から下方に向かって印刷媒体99を支持する支持部21の支持面21Aが下に凸に湾曲する曲面であってもよい。前記実施形態のように、印刷媒体99の経路となる支持面21Aを上に凸の曲面にすることで、印刷媒体99の自重による面圧を利用して浮きを潰し易くなる。これに対して吸引力付与部40を備える構成では、浮きを防ぐために経路の形状をさほど工夫する必要がないので、経路の形状の自由度が高まる。このため、支持部21の経路は任意の面形状に変更してもよい。
【0123】
・印刷媒体99の幅寸法から決まる搬送領域が、吸引孔42又は溝21Bの幅方向Xの配置領域よりも短い場合、吸引孔42又は溝21Bのうち印刷媒体99により塞がれない箇所を塞ぐ機構を設けてもよい。塞ぐ機構は、例えば、吸引孔42を開閉する開閉式の蓋部材を備え、蓋部材を開位置に移動させることで吸引孔42が開き、蓋部材を閉位置に移動させることで吸引孔42が閉じる構成とする。例えば、幅方向Xに一番外側の吸引孔を塞ぐ一対の第1蓋部材と、外側から2番目の吸引孔を塞ぐ一対の第2蓋部材とを含む複数対の蓋部材とを備え、媒体サイズに応じて印刷媒体99により塞ぐことができない吸引孔42と対応する位置にある一対又は複数対の蓋部材を閉じる構成としてもよい。
【0124】
・印刷装置11は、シリアルプリンターに限定されず、ラインプリンター又はページプリンターでもよい。印刷装置11は、ラインプリンターである場合、印刷部27は、キャリッジ29を備えず、印刷媒体99の最大幅よりも長い範囲を一斉に印刷可能な印刷ヘッドを有する。印刷ヘッドは、搬送部14により所定速度で搬送される印刷媒体99に対して印刷する。この場合、印刷ヘッドは、インク等の液体を吐出する吐出ヘッド(吐出部)であってもよい。
【0125】
・印刷装置11は、インクジェットプリンターに限定されず、レーザープリンター等の電子写真式プリンターでもよい。また、印刷装置11は、ドットインパクト式プリンターや熱転写式プリンターでもよい。
【0126】
・印刷装置11は、インクジェット方式の捺染装置であってもよいし、他の印刷方式の捺染装置でもよい。
・印刷装置11は、画像読取部(スキャナー)を備えてもよい。印刷装置11は、画像読取部を備える場合、複合機であってもよい。
【0127】
以下に、前記実施形態及び変更例から導かれる技術的思想及びその作用効果を記載する。
(A)印刷装置であって、印刷媒体に搬送力を付与し、前記印刷媒体を搬送する搬送部と、搬送された前記印刷媒体に印刷する印刷部と、前記搬送部が前記印刷媒体を搬送する搬送方向において前記搬送部より上流の位置において、前記印刷媒体を支持する支持面を有する支持部と、前記支持面に沿って搬送される前記印刷媒体に対して前記支持面に引き付ける吸引力を付与することで前記印刷媒体と前記支持面との間に前記吸引力に基づく面圧を発生させる吸引力付与部とを備える。
【0128】
この構成によれば、搬送される印刷媒体と支持面との間に吸引力に基づく面圧が発生する。印刷媒体と支持面との間の面圧による摩擦力により吸引箇所と搬送部との間の印刷媒体の部分にテンションを付与することができる。よって、作業性を損なわず且つ比較的簡単な構成で、搬送部に送られる前の印刷媒体のしわを抑制できる。
【0129】
(B)上記印刷装置において、前記支持部は吸引孔を有し、前記吸引力付与部は、前記吸引孔に負圧を発生させる吸引ファンを有してもよい。
この構成によれば、吸引孔に発生する負圧による吸引力により印刷媒体と支持面との間に吸引力に基づく面圧を発生させることができる。
【0130】
(C)上記印刷装置において、前記支持部の前記支持面が曲面又は平面であってもよい。
この構成によれば、支持部の支持面が曲面(弧状)又は平面であるので、吸引された印刷媒体の浮きを効果的に潰すことができる。よって、印刷媒体のしわを抑制できる。
【0131】
(D)上記印刷装置において、前記搬送部よりも前記搬送方向の上流の位置で前記印刷媒体をロール状に巻き重ねたロールを支持し、前記ロールから前記印刷媒体を繰り出す繰出部を備え、前記繰出部が前記搬送部及び前記支持部に対して鉛直方向の下方に位置してもよい。
【0132】
この構成によれば、ロールの重量によって印刷媒体を曲面に押し付けることができる。よって、平面と比べ印刷媒体に浮きやしわが発生しにくい。
(E)上記印刷装置において、前記吸引孔は、前記支持面に開口するか、あるいは前記支持面に凹設された溝の底面に開口してもよい。
【0133】
この構成によれば、印刷媒体を効率よく吸引することができる。
(F)上記印刷装置において、前記搬送部よりも前記搬送方向の上流の位置で前記印刷媒体をロール状に巻き重ねたロールを支持し、前記ロールから前記印刷媒体を繰り出す繰出部を備え、前記吸引孔又は前記溝は、前記搬送方向において前記繰出部と前記搬送部との間における前記印刷媒体の経路の中央よりも前記搬送部側に位置してもよい。
【0134】
この構成によれば、吸引孔又は溝が、繰出部よりも搬送部に近い側に位置するので、搬送部にしわが搬入されてできる折れじわの発生を抑制できる。
(G)上記印刷装置において、前記印刷媒体の種類を判定する判定部を備え、
前記吸引力付与部は、前記印刷媒体の種類に応じた前記吸引力を前記印刷媒体に付与してもよい。
【0135】
この構成によれば、印刷媒体の種類に応じた適切なテンションを印刷媒体に付与することができる。よって、印刷媒体に浮きやしわが発生しにくい。
(H)上記印刷装置において、制御部を更に備え、前記制御部は、前記ロールから繰り出される前記印刷媒体にテンションを付与するように前記繰出部を制御するとともに、前記吸引力付与部を制御することで前記吸引力に基づく面圧に応じた摩擦力により前記印刷媒体のうち前記搬送部と前記吸引力付与部との間の部分のテンションを制御してもよい。
【0136】
この構成によれば、繰出部が繰り出す際の印刷媒体のテンションを利用して、印刷媒体のうち吸引箇所と搬送部との間の部分に適切なテンションを付与することができる。
(I)上記印刷装置において、制御部を更に備え、前記制御部は、前記繰出部を制御することで前記ロールから繰り出される前記印刷媒体に弛みを形成する弛み制御を行うとともに、前記吸引力付与部を制御することで前記吸引力に基づく面圧に応じた摩擦力により前記印刷媒体のうち前記搬送部と前記吸引力付与部との間の部分のテンションを制御してもよい。
【0137】
この構成によれば、繰出部の繰出動作にさほど影響されず、印刷媒体のうち吸引箇所と搬送部との間の部分に適切なテンションを付与することができる。
(J)上記印刷装置において、前記吸引力付与部は、前記印刷媒体に静電気による前記吸引力を付与する静電気発生部であってもよい。
【0138】
この構成によれば、静電気を利用して印刷媒体を支持部に接触させる吸引力を付与することができる。
(K)上記印刷装置において、前記ロールの重量を推定するロール重量推定部を備え、前記吸引力付与部は、前記ロールの重量に応じた吸引力を前記印刷媒体に付与してもよい。
【0139】
この構成によれば、ロールの重量が変化しても、印刷媒体に適切なテンションを付与することができる。よって、印刷媒体に浮きやしわが発生しにくい。
(L)上記印刷装置において、前記ロールの径を推定するロール径推定部を備え、前記吸引力付与部は、前記ロールの径に応じた吸引力を前記印刷媒体に付与してもよい。
【0140】
この構成によれば、ロールの径が変化しても、印刷媒体に適切なテンションを付与することができる。よって、印刷媒体に浮きやしわが発生しにくい。
【符号の説明】
【0141】
11…印刷装置、12…筐体、13…基台、14…搬送部、15…繰出部、17…巻取部、18…巻取モーター、19…移動台、19A…キャスター、20…テンションバー、21…支持部の一例としての上流支持部、21A…支持面、21B…溝、22…支持台、22A…支持面、23…下流支持部、24…搬送ローラー対、25…駆動ローラー、26…従動ローラー、27…印刷部、28…吐出部、28A…ノズル開口面、28N…ノズル、29…キャリッジ、30…吸引機構、31…第1負圧形成部材、32…吸引孔、33…第1負圧室、34…排気ファン、35…第1圧力センサー、40…吸引力付与部、41…第2負圧形成部材、42…孔の一例としての吸引孔、43…第1負圧室、44…吸引ファン、45…第2圧力センサー、50…操作パネル、51…表示部、52…操作部、60…湿度検出部、61…湿度センサー、62…温度センサー、70…制御部、71…通信部、72…搬送モーター、73…キャリッジモーター、74…第1ロータリーエンコーダー、75…第2ロータリーエンコーダー、80…記憶部、81…判定部の一例としての媒体種判定部、82…ロール重量推定部、83…ロール径推定部、84…搬送負荷検出部、90…静電気発生部、91…帯電部、93…載置部、94…給送ローラー、95…支持部、95A…支持面、96…排出ローラー対、99…媒体、100…印刷装置、101…ロール(印刷前)、102…ロール(印刷後)、110…ホスト装置、111…表示部、112…操作部、PJ…印刷ジョブ、SA…吸引箇所、RD…参照データ、Ff…搬送力、fs…摩擦力、X…幅方向(走査方向)、Y…搬送方向、Y1…搬送方向、-Y1…反搬送方向、Z…鉛直方向。
図1
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図11