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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043520
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】無限回転体
(51)【国際特許分類】
   B60B 21/12 20060101AFI20240322BHJP
   B60B 21/02 20060101ALI20240322BHJP
   B60C 23/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
B60B21/12 Z
B60B21/02 L
B60B21/02 J
B60C23/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149855
(22)【出願日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2022148423
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】津久井 慎吾
(57)【要約】
【課題】リムに圧電素子が配置された無限回転体において発電効率を高めることができるようにする。
【解決手段】金属製のリム11と、リム11の環の内側に配置され、且つ周回方向に周期的に配置された複数の飾り穴28aを備えるディスク12と、を備え、リム11は、外周面に周回方向に連続して延びる凹形状のドロップ部23を備え、ドロップ部23は、圧電素子33が飾り穴28aの位置に対して規則性を有するように周期的に間欠配置されている。金属は、鉄を含み、かつ引張強度が400MPa以上であることが好ましい。圧電素子33は、底部23bと内側サイドウォール部23aと外側サイドウォール部23cとに跨って配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のリムと、
前記リムの環の内側に配置され、且つ周回方向に周期的に配置された複数の穴部を備えるディスクと、を備え、
前記リムは、外周面に周回方向に連続して延びる凹形状のドロップ部を備え、
前記ドロップ部は、圧電素子が前記穴部の位置に対して規則性を有するように周期的に間欠配置されている
無限回転体。
【請求項2】
前記圧電素子は、前記ドロップ部において、前記リムの外周面側及び前記リムの内周面側のうち、少なくとも一方に設けられる
請求項1に記載の無限回転体。
【請求項3】
前記ドロップ部は、底部と、前記底部に繋がる内外のサイドウォール部と、を備え、
前記圧電素子は、前記底部に配置されている
請求項1に記載の無限回転体。
【請求項4】
前記ドロップ部は、底部と、前記底部に繋がる内外のサイドウォール部と、を備え、
前記圧電素子は、少なくとも、前記底部と内側サイドウォール部とに跨って、又は前記底部と外側サイドウォール部に跨って配置されている
請求項1に記載の無限回転体。
【請求項5】
前記底部と前記内側サイドウォール部とがなす内側のコーナ部、及び前記底部と前記外側サイドウォール部とがなす外側のコーナ部のうち、少なくとも一方のコーナ部を構成するR面は、半径(R)が8mm以上であり、
少なくとも、半径(R)が8mm以上のコーナ部を含む前記底部と前記サイドウォール部に前記圧電素子が配置される
請求項4に記載の無限回転体。
【請求項6】
前記圧電素子は、前記穴部に対応する位置、及び隣り合う前記穴部の間に対応する位置のうち、少なくとも一方の位置に配置されている
請求項1又は2に記載の無限回転体。
【請求項7】
前記圧電素子は、無機圧電薄膜である
請求項1または3に記載の無限回転体。
【請求項8】
前記圧電素子は、有機圧電薄膜である
請求項1または4に記載の無限回転体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤホイールなどの無限回転体に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤやホイールなどに圧電素子を配置する技術がある。例えば、特許文献1は、ホイールのリム外周面に圧電センサを取り付けることが記載されている。特許文献2は、タイヤの接地部裏面に塗布型圧電部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-163230号公報
【特許文献2】特開2022-47625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、リム外周面に圧電センサを配置する考え方は記載されているものの、実用化されているホイールのリム外周面は、複雑な形状を有している。このようなリム外周面の複雑形状に合わせて、如何なる位置に圧電素子を配置するのが良いかは、更なる技術的検討が必要である。
【0005】
特許文献2は、タイヤの接地面に生じた歪みに応じて電力を生成するものである。このため、繰り返しタイヤが変形するうちにタイヤの接地部裏面に配置された圧電部が破損してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための無限回転体は以下のような態様を有する。
〔態様1〕金属製のリムと、前記リムの環の内側に配置され、且つ周回方向に周期的に配置された複数の穴部を備えるディスクと、を備え、前記リムは、外周面に周回方向に連続して延びる凹形状のドロップ部を備え、前記ドロップ部は、圧電素子が前記穴部の位置に対して規則性を有するように周期的に間欠配置されている無限回転体。
【0007】
上記構成によれば、ドロップ部は、ドロップ部以外の場所よりも応力が集中する。したがって、圧電素子は、ドロップ部に配置することで発電効率を高めることができる。また、圧電素子は、ドロップ部に間欠配置することもできる。これにより、各圧電素子には、全体的に荷重が加わることで発電効率を高めることができる。
【0008】
〔態様2〕前記圧電素子は、前記ドロップ部において、前記リムの外周面側及び前記リムの内周面側のうち、少なくとも一方に設けられる〔態様1〕に記載の無限回転体。上記構成によれば、ドロップ部では、リムの外周面側及びリムの内周面側の何れであっても同じような応力分布を示すので、何れの面に配置しても同じように発電効率を高めることができ、両面に設けたときには更に一層発電効率を高めることができる。
【0009】
〔態様3〕前記ドロップ部は、底部と、前記底部に繋がる内外のサイドウォール部と、を備え、前記圧電素子は、前記底部に配置されている〔態様1〕又は〔態様2〕に記載の無限回転体。上記構成によれば、底部は、平面的な二次元形状を有していることから、圧電素子を容易に配置できる。また、応力が相対的に高い底部に圧電素子を配置することで、発電効率を高めることができる。
【0010】
〔態様4〕前記ドロップ部は、底部と、前記底部に繋がる内外のサイドウォール部と、を備え、前記圧電素子は、少なくとも、前記底部と内側サイドウォール部とに跨って、又は前記底部と外側サイドウォール部に跨って配置されている〔態様1〕又は〔態様2〕に記載の無限回転体。上記構成によれば、底部だけでなく、底部と内外のサイドウォールとで構成されるコーナ部にも圧電素子を配置できる。
【0011】
〔態様5〕前記底部と前記内側サイドウォール部とがなす内側のコーナ部、及び前記底部と前記外側サイドウォール部とがなす外側のコーナ部のうち、少なくとも一方のコーナ部を構成するR面は、半径(R)が8mm以上であり、少なくとも、半径(R)が8mm以上のコーナ部を含む前記底部と前記サイドウォール部に前記圧電素子が配置される〔態様4〕に記載の無限回転体。
【0012】
上記構成によれば、緩やかな曲面でコーナ部が構成されることで、当該コーナ部での応力集中を抑えることができる。これにより、圧電素子には全体に均一的に圧力を加えることができる。
【0013】
〔態様6〕前記圧電素子は、前記穴部に対応する位置、及び隣り合う前記穴部の間に対応する位置のうち、少なくとも一方の位置に配置されている〔態様1〕乃至〔態様5〕のうち何れかに記載の無限回転体。上記構成によれば、ドロップ部の応力分布は、ドロップ部の内側や外側に設けられた穴部の周期と規則性を有する。ドロップ部において、圧電素子を穴部の周期に合わせて間欠配置することで、発電効率を高めることができる。
【0014】
〔態様7〕前記圧電素子は、無機圧電薄膜である〔態様1〕乃至〔態様5〕のうち何れかに記載の無限回転体。上記構成によれば、発電効率の高い無機圧電薄膜を用いることができる。無機圧電薄膜は、柔軟性に乏しいので例えば平面的な二次元形状であるドロップ部の底部に配置することが好ましい。
【0015】
〔態様8〕前記圧電素子は、有機圧電薄膜である〔態様1〕乃至〔態様5〕のうち何れかに記載の無限回転体。有機圧電薄膜は柔軟性に優れる。したがって、ドロップ部の底部と内外のサイドウォールの少なくとも何れかに跨る三次元的形状を有する位置にも、圧電素子を配置できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リムに圧電素子が配置された無限回転体において発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態における車両用ホイールの正面図である。
図2図2は、実施形態における車両用ホイールの断面図である。
図3図3は、リムの外周面側における応力分布を示す図である。
図4図4は、リムの内周面側における応力分布を示す図である。
図5図5は、圧電素子の経過時間と電圧の関係を示す特性図である。
図6図6は、底部及び内側サイドウォール部に跨って圧電素子を設けた変形例となるホイールの断面図である。
図7図7は、底部と外側サイドウォール部に跨って圧電素子を設けた変形例となるホイールの断面図である。
図8図8は、穴部の位置に対応した位置に圧電素子を配置した変形例となるホイールの正面図である。
図9図9は、穴部と穴部の間の領域に対応した位置に圧電素子を配置した変形例となるホイールの正面図である。
図10図10は、リムの内周面側に圧電素子を設けた変形例となるホイールの断面図である。
図11図11は、底部に圧電素子を設けた変形例となるホイールの断面図である。
図12図12は、図8又は図9に示す圧電素子の位置から位相を半ピッチずらした位置に圧電素子を配置した変形例となるホイールの正面図である。
図13図13は、実施例1,2及び比較例1,2における、圧電素子の配置位置を説明するホイールの断面図である。
図14図14は、実施例1,2及び比較例1,2を説明する図である。
図15図15は、実施例3~5を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る無限回転体が適用された車両用ホイールについて図面を参照して説明する。
<ホイールの全体構成>
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車両用ホイール10は、トラック、バス、商用車等に用いられるホイールである。車両用ホイール10は、リム11と、ディスク12と、を備えている。リム11及びディスク12は、金属製である。リム11及びディスク12は、少なくとも鉄を含む金属である。又は少なくともアルミニウムを含む金属である。車両用ホイール10は、鋳造ホイール又は鋼板からプレス絞り成形された鍛造ホイールである。
【0019】
少なくともリム11は、少なくとも引張強度が360MPa以上である。これより小さい場合は、ホイールとしての機能を実現することが困難となるからである。好ましくは、引張強度は、380MPa以上である。更に好ましくは、400MPa以上である。更に好ましくは、440MPa以上である。また、引張強度は、800MPa以下が好ましい。これ以上の場合、ホイール10を製造するための金属加工等が困難となるためである。リム11は、引張強さが超高張力鋼ほど高い必要はないが、一般構造用圧延鋼材より高い鉄を含む金属を用いることが好ましい。
【0020】
<リム>
リム11は、内側フランジ部21と、内側ビードシート部22と、ドロップ部23と、外側ビードシート部24と、外側フランジ部25と、を備えている。ドロップ部23は、内側サイドウォール部23aと、底部23bと、外側サイドウォール部23cと、を備えている。内側フランジ部21、内側ビードシート部22、及び内側サイドウォール部23aは、外側サイドウォール部23c、外側ビードシート部24及び外側フランジ部25よりも、ホイール10を車両に装着した際にディスク軸方向(ホイール軸方向)で車両の内側に近い側(車幅方向中央側)に位置する。
【0021】
<ディスク>
ディスク12は、ハブ穴26と、ハブ取付部27と、ディスク中間部28と、ディスクフランジ部29と、を備えている。
【0022】
ハブ穴26は、ディスク12のディスク半径方向(ホイール半径方向)中央部に設けられる。
ハブ取付部27は、ハブ穴26の周囲に設けられている。ハブ取付部27は、平板状又は略平板状であり、ディスク軸方向(ホイール軸方向)と交差する平面内にある。ハブ取付部27のディスク半径方向中間部には、ボルト穴27aが複数設けられている。ボルト穴27aは、ディスク周方向(ホイール周方向)に同心円上等間隔に設けられている。車両のハブから延びてくるボルトをボルト穴27aに挿通し、ボルトにナットを締め付けることにより、ホイール10は、ディスク12を通じてハブに固定される。
【0023】
ディスクフランジ部29は、リム11に嵌入され接合される部分である。ディスクフランジ部29は、外側ビードシート部24に対して、溶接、リベット、接着等で接合される。ディスクフランジ部29は、ドロップ部23に対して接合されてもよい。
【0024】
ディスク中間部28は、ディスク半径方向でハブ取付部27とディスクフランジ部29との間に設けられており、ディスク半径方向にハブ取付部27とディスクフランジ部29とを繋ぐ部分である。ディスク中間部28は、ハブ取付部27及びディスクフランジ部29よりディスク軸方向外側に位置する部分を有する。ディスク中間部28の少なくとも頂部は、ハブ取付部27及びディスクフランジ部29よりディスク軸方向外側に位置する。
【0025】
ディスク中間部28には、穴部としての飾り穴28aが形成されている。飾り穴28aは、ディスク中間部28のディスク半径方向中間部に設けられている。飾り穴28aは、ディスク周方向に等間隔に複数設けられている。飾り穴28aの間は、ディスク中間部28における飾り穴28aよりも内周側の領域と外周側の領域とを繋ぐスポークとして機能する連結領域28bである。
【0026】
<ドロップ部>
リム11において、ドロップ部23は、外周面において、周回方向に延在する連続した凹形状の凹部である。ドロップ部23は、内側サイドウォール部23aと、底部23bと、外側サイドウォール部23cと、を備えている。
【0027】
ここで、図3は、車両用ホイール10に車両荷重が加わった状態におけるリム11の外周面側における応力分布を示す図である。また、図4は、車両用ホイール10に車両荷重が加わった状態におけるリム11の内周面側における応力分布を示す図である。
【0028】
図3及び図4において、薄い部分ほど、応力が高いことを示す。図3及び図4の何れにあっても、ドロップ部23は、他の領域よりも応力が集中する領域となる。すなわち、車両走行時において、車両荷重によって他の領域よりも弾性変形し易い領域となる。タイヤからホイール10に伝わる荷重は、リム11のホイール軸方向の両側に取り付けられるタイヤビードから伝わる。そして、ホイール10には、ホイール軸方向の中心を境に折り曲げられる方向に荷重がかかる。このため、ホイール軸方向の中心にあるドロップ部23は他の部分よりも応力が高くなる。
【0029】
なお、引張強度が360MPa以上である金属製のホイール10は、車輪が接地して回転している場合、車両荷重が加わっている下側部分だけでなく、その他の領域でも弾性変形する。
【0030】
ドロップ部23において、底部23bと内側サイドウォール部23aとがなす内側コーナ部31は、R面で構成されている。また、底部23bと外側サイドウォール部23cとがなす外側コーナ部32も、R面で構成されている。内側コーナ部31も外側コーナ部32も、共に、R面は、半径(R)が8mm以上であり、好ましくは、10mm以上であり、例えば16mmである。R面は、8mm以上にすることによって、ドロップ部23の中でもコーナ部31,32に局所的に応力が集中することを抑制する。
【0031】
<圧電素子>
ドロップ部23には、圧電素子33が配置される。圧電素子33は、圧力を加えることで電圧が発生するピエゾ素子である。圧電素子33は、圧電体に圧力を加えることで生じる歪みに応じて電圧が発生する。
【0032】
圧電素子33は、例えば圧電薄膜である。圧電薄膜として、無機圧電薄膜及び有機圧電薄膜が配置位置等によって選択されて用いられる。無機圧電薄膜は、セラミックス等を主たる構成要素とするため柔軟性に乏しい一方で発電効率が高い。有機圧電薄膜は、柔軟性に優れる一方で発電効率が低い。
【0033】
圧電素子33は、応力が集中する底部23bと内側サイドウォール部23aと外側サイドウォール部23cとに跨って配置される(図2参照)。又は、圧電素子33は、底部23bだけに配置される(図11参照)。又は、圧電素子33は、底部23bと内側サイドウォール部23aとに跨って配置される(図6参照)。又は、底部23bと外側サイドウォール部23cとに跨って配置される(図7参照)。
【0034】
底部23bと内側サイドウォール部23aとの間及び底部23bと外側サイドウォール部23cとの間は、湾曲した曲部を含んで三次元形状となっている。このため、底部23bと内外のサイドウォール部23a,23cに跨って配置する圧電素子33は、例えば柔軟性に優れる有機圧電薄膜を用いることが好ましい(図2図6図7参照)。一方で、底部23bは、平坦的な二次元形状である。このため、例えば発電効率の高い無機圧電薄膜を用いることが好ましい(図11参照)。
【0035】
また、圧電素子33は、飾り穴28aの位置に関連性を有するように配置される。具体的に、圧電素子33は、飾り穴28aに対応する位置、連結領域28bに対応する位置の両方に配置される(図1参照)。又は、圧電素子33は、飾り穴28aに対応する位置だけに配置される(図8参照)。更に、圧電素子33は、連結領域28bに対応する位置だけに配置される(図9参照)。更に、圧電素子33は、ピッチをずらして、飾り穴28aに対応する位置と連結領域28bに対応する位置とに跨るように配置される(図12参照)。
【0036】
そして、図1に示すように、飾り穴28aに対応する位置、及び連結領域28bに対応する位置の両方に圧電素子33を配置する場合、飾り穴28aに対応する位置に配置される圧電素子33と連結領域28bに配置される圧電素子33とは、同じ大きさのものである。すなわち、圧電素子33の長さは同じであり、隣り合う圧電素子33の間の間隔34も同じである。このように、圧電素子33は、周回方向に一定の周期35で間欠配置される。すなわち、1つの圧電素子33とこの圧電素子33に隣接する一方の間隔34を1周期としたとき、圧電素子33は、全周に亘って、同じ周期35で設けられる。
【0037】
飾り穴28aに対応する位置に配置される圧電素子33と連結領域28bに配置される圧電素子33は、別々の素子であり、非連続である。これにより、各圧電素子33は、全体的に均一な荷重が加わることになり、局所的に荷重が加わる場合よりも発電効率を高めることができる。圧電素子33は、同じ間隔34で間欠配置されることで、隣り合う圧電素子33が出力を打ち消し合うことを抑制できる。
【0038】
図5は、ホイール10において、飾り穴28aに対応する位置に圧電素子33(有機圧電薄膜)を配置した場合における出力電圧を示している。この際、圧電素子33は、底部23bと内側サイドウォール部23aと外側サイドウォール部23cとに跨って配置した(図2参照)。具体的な条件は次の通りである。
【0039】
<試験条件>
・商用車ホイール
・ホイール/タイヤ:17.5×6.00/225/80R17.5
・空気圧:600kPa
・試験荷重:15.2kN
・試験速度:10km/h
矩形枠33gで囲まれた範囲は、1回分の出力電圧を示している。図5からも、同周期の出力電圧を得ることができることを確認できる。圧電素子33は、出力電圧が高くなると、それに合わせて出力電流も高くなることで、発電電力(発電効率)も高くなる。
【0040】
車輪が接地して回転している場合、ホイール10は、車両荷重が加わっている下側部分だけでなく、その他の領域でも弾性変形する。したがって、圧電素子33は、接地している下側部分に位置する圧電素子33だけでなく、それ以外に位置する圧電素子33も効率的に発電することができる。
【0041】
圧電素子33で発電された電力は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などの二次電池に蓄電される。二次電池は、一例として、車載用であり、シャーシに配置される。この場合、圧電素子33で発電された電力は、シャーシに配置された二次電池に蓄電され、車両の動力の一部として使用される。また、二次電池は、ホイール10に配置されていてもよい。例えば、ホイール10には、LEDなどの発光素子を配置し、電飾を施したものがある。また、ホイール10には、ハブとの締結異常を検知するためのセンサなどの検出素子が配置されていることがある。これらの素子や、検出データや制御データのやり取りを他の通信機器と行うための通信素子等に対しては、ホイール10に配置された二次電池から電力供給する。圧電素子33で発電された電力は、ホイール10に配置された二次電池に蓄電される。
【0042】
<実施形態の効果>
以上のような車両用ホイール10は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)ドロップ部23は、ドロップ部23以外の場所よりも応力が集中する。したがって、圧電素子33は、ドロップ部23に配置することで発電効率を高めることができる。また、圧電素子33は、ドロップ部23に間欠配置される。これにより、各圧電素子33には、全体的に荷重が加わることで発電効率を高めることができる。
【0043】
(2)圧電素子33は、ドロップ部23に配置されることで、タイヤに配置される場合よりも故障しにくくなる。
(3)リム11の材料である金属に鉄を含ませるようにし、引張強度を360MPa以上とした場合、リム11として必要とされる強度を維持しながら、リム11を薄肉化することで、軽量化を実現することができる。加えて、リム11の薄肉化により、車両荷重などによってリム11が弾性変形し易い構成となることで、圧電素子33による発電効率を高めることができる。
【0044】
(4)応力が他の領域よりも集中するドロップ部23において、底部23bだけでなく、内外のサイドウォール部23a、23cとで構成されるコーナ部32,32にも圧電素子33を配置できる。これにより、圧電素子33を広範囲に配置できるため、発電効率を向上できる。
【0045】
(5)ドロップ部23において、圧電素子33が配置されるコーナ部31,32は、半径(R)を8mm以上とし緩やかなR面としている。したがって、応力の高いドロップ部23の中で、圧電素子33が配置されたコーナ部31,32に局所的に応力が集中することを抑えることができる。これにより、各圧電素子33には、全体に均一的に圧力を加えることができる。
【0046】
(6)ドロップ部23の応力分布は、ドロップ部23の内側に設けられた飾り穴28aの周期と規則性を有する。ドロップ部23において、圧電素子33を飾り穴28aの周期に合わせて間欠配置することで、発電効率を高めることができる。
【0047】
(7)ドロップ部23において、圧電素子33を配置する位置が底部23bのように二次元的形状を有する場合、柔軟性に乏しいが発電効率が優れる無機圧電薄膜を用いることができる。
【0048】
(8)ドロップ部23において、圧電素子33を配置する位置が底部23bと内外のサイドウォール部23a、23cに跨る位置のように三次元的形状を有する場合、柔軟性に優れる有機圧電薄膜を用いることができる。
【0049】
なお、車両用ホイール10は、更に、以下のように適宜変更して実施することもできる。
図6に示すように、圧電素子33は、底部23bと内側サイドウォール部23aとに設け、外側サイドウォール部23cに設けないようにしてもよい。この場合、圧電素子33は、有機圧電薄膜が好ましい。圧電素子33が配置される内側コーナ部31は、半径(R)を8mm以上であることが好ましい。このような構成は、外側コーナ部32が半径(R)を8mm未満のときに、特に有効な構成である。
【0050】
図7に示すように、圧電素子33は、底部23bと外側サイドウォール部23cとに設け、内側サイドウォール部23aに設けないようにしてもよい。この場合、圧電素子33は、有機圧電薄膜が好ましい。圧電素子33が配置される外側コーナ部32は、半径(R)を8mm以上であることが好ましい。このような構成は、内側コーナ部31が半径(R)を8mm未満のときに、特に有効な構成である。
【0051】
図8に示すように、圧電素子33は、飾り穴28aに対応する位置だけに設けるようにしてもよい。また、図9に示すように、連結領域28bに対応する位置だけに設けるようにしてもよい。図12に示すように、図8図9の圧電素子33の位置から周回方向に半ピッチずらして、各圧電素子33の配置位置が、飾り穴28aに対応する位置と連結領域28bに対応する位置とに跨るように設けるようにしてもよい。
【0052】
図10に示すように、圧電素子33は、リム11の内面に圧電素子33を設けるようにしてもよい。図3及び図4示すように、リム11の内周面側も外周面側と同じような応力分布となるからである。
【0053】
なお、リム11の内周面側において、圧電素子33は、底部23bと内側サイドウォール部23aとに設け、外側サイドウォール部23cに設けないようにしてもよい(図6参照)。これとは逆に、リム11の内周面側において、圧電素子33は、底部23bと外側サイドウォール部23cとに設け、内側サイドウォール部23aに設けないようにしてもよい(図7参照)。更に、圧電素子33は、リム11の外周面側及びリム11の内周面側の両方に設けるようにしてもよい。
【0054】
・圧電素子33は、穴部としてのハブ穴26と規則性を有する位置に周期的に設けるようにしてもよい。
・穴部として、リムの内周とディスクの外周端との間に窓部を設けるようにしてもよい。この場合、圧電素子33は、窓部と規則性を有する位置に周期的に設けるようにしてもよい。
【0055】
・車両用ホイール10としては、飾り穴28aと上記窓部とを設ける構成であってもよい。この場合、圧電素子33は、飾り穴28a又は窓部の少なくとも何れかの穴部と規則性を有する位置に周期的に設けることになる。
【0056】
・ホイール10の金属は、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金等であってもよい。例えば、鉄を含む金属とアルミニウム合金とでは、アルミニウム合金の方が引張強度が小さい傾向がある。このため、アルミニウム合金製のホイールは、鉄製の場合よりも厚肉に構成されることで撓みにくくなる。したがって、アルミニウム合金製の場合、ホイール10としての強度と圧電素子33で発電するための変位量のバランスをとって、設計が行われる。更に他の金属の場合にも、ホイールは、金属の強度と変位量とのバランスを考慮して設計される。
【0057】
・無限回転体としては、商用車等に使用される大型のホイールに限定されるものではない。例えば、乗用車用や作業用車両のホイールに適用することもできる。
<実施例>
ここでは、図13に示すように、(i)~(iv)の位置に圧電素子33を配置し、各位置での発電効率を確認した。ここで、圧電素子33は、図13に示すように、(i)~(iv)に示す位置に配置した。また、図9に示すように、圧電素子33は、連結領域28bに対応する位置に配置した。圧電素子33としては、無機圧電薄膜を使用した。そして、図14に示すように、各実施例及び各比較例について、ホイール/タイヤの回転時の出力電圧を測定した。波形図の中で、ハッチングが加えられた部分が1回転分で出力電圧であり、当該部分の面積比を算出した(実施例1を基準)。
【0058】
具体的な条件は次の通りである。
・商用車ホイール
・ホイール/タイヤ:22.5×7.50/275/80R22.5
・空気圧:775kPa
・試験荷重:7.6kN
・試験速度:15km/h
(i)内側ビードシート部22の内周面に圧電素子33を配置。
【0059】
(ii)底部23bの外周面に圧電素子33を配置。
(iii)底部23bの内周面に圧電素子33を配置。
(iv)外側ビードシート部の内周面に圧電素子33を配置。
【0060】
(実施例1)…(ii)の位置に圧電素子33を配置。
(実施例2)…(iii)の位置に圧電素子33を配置。
(比較例1)…(i)の位置に圧電素子33を配置。
【0061】
(比較例2)…(iv)の位置に圧電素子33を配置。
図14より、ドロップ部23では、出力電圧、すなわち発電効率が高く(実施例1,2)、特にドロップ部23の外周面(実施例1)よりも内周面(実施例2)に配置した方が発電効率が高いことを確認することができる。
【0062】
また、図15に示すように、実施例3~実施例5では、圧電素子33のリム11の周回方向の位置を変更した。実施例3では、図8のように、圧電素子33を飾り穴28aに対応する位置だけに配置した。実施例4では、図9のように、圧電素子33を連結領域28bに対応する位置だけに配置した。実施例5では、図12に示すように、圧電素子33を図8図9の圧電素子33の位置から周回方向に半ピッチずらして配置した。また、圧電素子33は、図2に示すように、底部23bと内側サイドウォール部23aと外側サイドウォール部23cとに跨って配置した。
【0063】
圧電素子33としては、有機圧電薄膜を使用した。波形図の中で、ハッチングが加えられた部分が1回転分で出力電圧であり、当該部分の面積比を算出した(実施例5を基準)。
【0064】
具体的な条件は次の通りである。
・商用車ホイール
・ホイール/タイヤ:22.5×7.50/275/80R22.5
・空気圧:775kPa
・試験荷重:7.6kN
・試験速度:15km/h
図15より、圧電素子33におけるリム11の周回方向における配置は、連結領域28bに対応する位置に配置する実施例2が最も出力電圧、すなわち発電効率が最も高いことが確認できる(実施例4)。次いで、飾り穴28aに対応する位置する実施例3が高く、次いで、図8図9の圧電素子33の位置から周回方向に半ピッチずらして配置する実施例5であることが確認できる。
【符号の説明】
【0065】
10…ホイール
11…リム
12…ディスク
21…内側フランジ部
22…内側ビードシート部
23…ドロップ部
23a…内側サイドウォール部
23b…底部
23c…外側サイドウォール部
24…外側ビードシート部
25…外側フランジ部
26…ハブ穴
27…ハブ取付部
27a…ボルト穴
28…ディスク中間部
28a…飾り穴
28b…連結領域
29…ディスクフランジ部
31…内側コーナ部
32…外側コーナ部
33…圧電素子
33g…矩形枠
34…間隔
35…周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15